Summary report, 25 March 2014

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会第10回会合及びIPCC第38回総会は、2014年3月25-29日、日本の横浜で開催された。この会議には115か国から271名以上が出席、国連、政府間組織、オブザーバー組織の代表も出席し、世界のマスコミの注目を集めた。

5日間の会議において、参加者は、プレナリー会合及び非公式会合を開催し、IPCC第5次評価報告書(AR5) WGII報告書について検討した。参加者を助けるべく、多様なセクション、及び政策決定者向けサマリー(SPM)の題目に関し、調整役筆頭執筆者(CLAs)の簡単な非公式プレゼンテーションが行われた。会議の終了時、WGIIはSPMを承認し、テクニカルサマリー及び付属書を含める報告書本文を受理した。

SPMは、序文及び3つの主要なセクションで構成される。序文は、気候変動のリスクの評価と管理を論じる。セクションAは、観測された影響、脆弱性、複雑かつ変化しつつある世界での適応を記述、この中には次の項目が含まれる:観測された影響、脆弱性、曝露;意思決定の概要。セクションBは、将来のリスクと適応の機会を記述、これには次の項目が含まれる:部門及び地域を横断する主要リスク;セクター別のリスク及び適応ポテンシャル;地域における主要なリスクと適応ポテンシャル。セクションCは、将来のリスクの管理及び回復力の構築に焦点を当て、次のサブセクションを含める:効果のある適応に関する原則;気候回復力のある経路と転換。加えて、SPMには、背景及び評価に関する少数のボックス、さらには多数の図表などの補足資料が含まれる。

WGIIの審議終了後、IPCC-38は会合し、AR5のWGII報告書を正式に採択した。承認されたSPM及びその元となる主文報告書は、右記IPCCウェブサイトに掲載される:http://ipcc.ch.

IPCCのこれまで

IPCCは、1988年、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された。その目的は、人間の諸活動が原因となっている気候変動に伴うリスク、今後の影響、適応策や緩和策の理解に関する科学、技術、社会経済情報を評価することである。IPCC自体は、新たな研究は行わず、気候関連データをモニタリングすることもない。その代わり、IPCCは発表済みの査読を受けた科学技術文献に基づき、知見を評価する。

IPCCは3つの作業部会(WG)を有する。WG-Iでは、気候系および気候変動の科学的な局面を扱う。WG-IIでは、気候変動に対する社会経済システムおよび自然システムの脆弱性、気候変動の影響および適応策を扱う。WG-IIIでは、温室効果ガス(GHG)の排出を抑制し、気候変動を緩和するための施策を扱う。各WGは、2名の共同議長、6名の副議長を有するが、WG-IIIは第5次評価サイクルの期間のみ、3名の共同議長を有する。共同議長は、パネルが各WGに課した義務が果たされるよう指導し、その任務遂行のため、テクニカルサポートユニット(TSU)の支援を受ける。

さらに、IPCCは、国別温室効果ガス(GHG)インベントリに関するタスクフォース(TFI)を有する。TFIは、IPCCのGHGインベントリ・プログラムを監督するが、このプログラムは、各国のGHG排出量および除去量の計算と報告書作成のため、国際的に合意された手法およびソフトウェアを開発、改善し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国による手法の利用を推進する。

IPCC議長団(ビューロー)は、パネルにより選出され、1つのIPCC評価報告書の期間(約6年間)を任期とする。議長団の役割は、IPCC作業計画の作成、調整、モニタリングについて、IPCC議長を補佐することである。 議長団は、全ての地域を代表する気候変動の専門家で構成される。現在、議長団は31名。IPCC議長、3つのWGの共同議長、TFI議長団(TFB)、IPCC副議長、3つのWGの副議長である。この議長団に加え、2011年、IPCCは、会合間隙中の作業ならびにWG間の調整を支援する執行委員会を設置した。執行委員会は、IPCC議長、IPCC副議長、WGおよびTFBの共同議長のほか、事務局の長やTSUの長4名を含める諮問メンバーで構成される。IPCC事務局は、スイスのジュネーブにあり、WMOがホスト機関となっている。

IPCCの成果:設立当初からIPCCは総合評価報告書、特別報告書、技術報告書を作成。専門家や政府による厳しい査読を受けた気候変動に関する科学情報を国際社会に提供してきた。これまでにIPCCは気候変動に関する4つの総合評価報告書を作成し、それぞれUNFCCCの交渉の進展に重要な役割を果たしたと評されている。第1次評価報告書は1990年に完成し、第2次評価報告書は1995年、第3次評価報告書は2001年、そして第4次評価報告書(AR4)が2007年に出された。2008年のIPCC-28は、第5次評価報告書(AR5)の作成と2014年の完成を決定した。

評価報告書は、各WGがそれぞれ作成した報告書をまとめた3部構成となっている。報告書にはそれぞれ、政策決定者向け要約(SPM)、技術要約(テクニカルサマリー)、そしてその根拠となる評価報告書の本体が収められる。報告書の評価セクションは全て徹底した3段階の査読プロセスの対象となる:第1段階は専門家による査読、第2段階は専門家と政府による査読、第3段階は政府による査読である。各SPMは、担当WGにより、一行ごとに承認を受ける。また、評価報告書には、統合報告書(SYR)も含まれるが、これは3つのWGの報告書の中で最も重要性の高い項目に焦点を当てたものであり、SYRのSPMは、IPCCパネルにより、一行ごとの承認を受ける。AR5の作成には、85カ国から800名以上の執筆者および査読編集者が参加している。

IPCCは、総合評価報告書のほか、特別報告書、手法論報告書、技術報告書(テクニカルペーパー)を作成、気候変動の個別の問題に集中的に取り組んでいる。IPCCが作成した特別報告書は以下の通り。「土地利用、土地利用変化、森林」(2000年);「二酸化炭素回収貯留」(2005年);「再生可能エネルギー源および気候変動緩和 (SRREN) 」 (2011年)。また、最近のものでは「気候変動への適応推進に向けた極端現象および災害のリスク管理に関する特別報告書(SREX) 」(2011年)がある。技術報告書としては、「気候変動と生物多様性」(2002年)や「気候変動と水」(2008年)などが作成されている。

IPCCは、各国のGHGの報告を支援する手法論報告書やガイドラインも作成する。グッド・プラクティス・ガイダンス報告書は、2000年、2003年、2013年にパネルの承認を得た。最新版のIPCC国別GHGインベントリ・ガイドラインは、2006年にパネルの承認を得た。

IPCCは、2007年12月、「人為的気候変動に関する知識の構築、普及、変動への対応に必要な基礎の構築」というIPCCの作業と努力に対し、米国元副大統領アル・ゴア氏とともに、ノーベル平和賞を受賞した。

IPCC-28:この会合は、2008年4月9-10日、ハンガリーのブダペストで開催された。議論の焦点は、WGの構成、将来の報告書のタイプとタイミング、IPCC議長団およびTFBの将来の組織構成など、IPCC作業計画の主な要素を含めたIPCCの今後の活動であった。IPCCは、AR5の作成と現在のWGの組織構造を維持することで合意した。AR5での新シナリオの顕著な利用を可能にするため、パネルは、議長団に対し、WG-I報告書を2013年の早い時期に提供し、他のWG報告書およびSYRを2014年の可能な限り早い時期に完成させるよう要請した。

IPCC-29: IPCC設立20周年の記念会合にもあたる本会合は、2008年8月31日-9月4日、スイスのジュネーブで開催された。この時点で、パネルは新しいIPCC議長団とTFBを選出しており、Rajendra Pachauri(インド)がIPCC議長に再選された。パネルは、IPCCの将来に関する議論を継続し、ノーベル平和賞の賞金を基に、開発途上国出身の若い気候変動科学者を対象とした奨学金制度の創設で合意した。

IPCC-30:この会議は、2009年4月21-23日、トルコのアンタルヤで開催された。パネルは、この会議では近い将来のIPCCのありかたを中心に議論し、AR5スコーピング会議の指針を提示した。スコーピング会議は2009年7月13-17日、イタリアのベニスで開催された。

IPCC-31: この会議は、2009年10月26-29日、インドネシアのバリで開催された。議論の焦点は、ベニスのスコーピング会議参加者が作成したAR5の各章の概要案の承認であった。さらに、パネルは、開発途上国および経済移行国の科学者の参加、電子技術の活用、IPCCの長期展望など、IPCC-30の決定の実施進捗状況を検討した。

インターアカデミーカウンシル(IAC)のレビュー:AR4の不正確な記述をめぐるIPCCへの批判や、こうした批判に対するパネルの対応ぶりを受けて、国連事務総長のBan Ki-MoonおよびIPCC議長のRajendra Pachauriは、IPCCのプロセスおよび手順について、第三者レビューを行い、IPCCの強化と報告書の質の確保を図る提案を提出するよう、IACに要請した。IACは、2010年8月、レビュー結果をまとめた報告書を提出。IACのレビューは特に次の点について勧告している:IPCCの管理体制;危機対応計画を含めたコミュニケーション戦略;参加者の選出基準や評価対象の科学技術情報のタイプを含めた、透明性;WG間の不確実性に関する定義の一貫性。

IPCC-32:この会合は、2010年10月11-14日、韓国の釜山で開催され、IACレビュー提案を審議した。パネルは、いわゆる「灰色文献」や不確実性の扱い、過去の報告書での誤記対応プロセスなど、提案に対する多数の決定を採択した。パネルは、さらなる検討が必要な提案を議論するため、プロセスと手順、利害相反(COI)政策、ガバナンスと管理に関するタスクグループを設立した。パネルは、AR5 SYRの概要改訂版を受理した。

SRREN:WG-IIIの第11回会合は、2011年5月5-8日、アラブ首長国連合のアブダビで開催され、SRRENとそのSPMを承認した。特に議論されたのは、持続可能な開発、バイオマス、そして政策を扱う章であった。SRRENの主な結論によると、再生可能エネルギーの技術ポテンシャルは予測される将来のエネルギー需要量を大きく上回るものであり、再生可能エネルギーが全ての緩和シナリオで重要な役割を果たすというものであった。

IPCC-33:この会議は、2011年5月10-13日、アラブ首長国連合のアブダビで開催され、主に、IPCCプロセスおよび手順に関するIACレビューのフォローアップに焦点が当てられた。パネルは、執行委員会を設立し、COI政策を採択し、IPCC報告書の手順に数件の変更を加えた。パネルは、SRRENおよびそのSPMに関するWGIIIの行動を承認し、AR5の進捗状況を検討した。

SREX:IPCC WG- I および WG- IIの第1回合同会議は、2011年11月14-17日、ウガンダのカンパラで開催され、SREXの受理およびSREXのSPMの承認を行った。SREXは、極端な気象現象や災害の悪影響に結びつく気候、環境、人間の各要素の相互作用の問題や、悪影響や災害といったリスクの管理策、さらには気候以外の要素が影響を決定づける上で果たす重要な役割について議論した。

IPCC-34:この会議は2011年11月18-19日、ウガンダのカンパラで開催され、IPCCプロセスおよび手順のIACレビューのフォローアップ、具体的には手順、COI政策、コミュニケーション戦略に焦点が当てられた。パネルは、IPCC報告書の作成、レビュー、受理、採択、承認、刊行の手順の改訂版を採択し、COI政策の実施手順および公表様式を採択した。また、パネルは、この会議の前に開催されたWGIおよびWGIIの合同会合の承認を受けていたSREXのSPMを正式に受諾した。

IPCC-35:この会議は、2012年6月6-9日、スイスのジュネーブで開催された。この会議は、IAC勧告に関するパネルの審議を締めくくるものであり、IPCC事務局とTSUの機能、そしてコミュニケーション戦略が承認された。さらに参加者は、IPCC報告書の手順改訂版、IPCC議長団ならびに全てのタスクフォース議長団の選出手順について合意した。

IPCC-36:この会議は、2013年9月23-26日、スウェーデンのストックホルムで開催され、WG-1が「気候変動2013:自然科学的根拠」と題した同作業部会のAR5 報告書を完成させた。その後、行われたパネルにおいて、WG-1のSPMが承認され、テクニカルサマリー(技術要約)と附属書を含む報告書の本体が受諾された。

IPCC-37:   この会議は、2013年10月14-17日、グルジアのバトゥミで開催され、パネルによって「2006年国別温暖化ガスインベントリ・ガイドラインに対する2013年追補:湿地」および「2013年議定書補足的方法論ガイダンス」の2つの方法論報告書が採択された。また、様々な手続き上の問題についても討議し、IPCCの未来図についても初期的な議論を行った。

IPCC-38 報告書

IPCCの Rajendra Pachauri議長は、3月25日(火)午前に開会宣言を行い、脆弱性や影響、適応などの問題について理解を深めることが有用であるとし、地域別の影響や脆弱性、対応策などについて詳細に評価することによって、本会合は各国の政府や地方自治体などが適応に関する意思決定を行う際に不可欠な情報を提供することになると述べた。また、本会合の成果がこの分野におけるUNFCCC交渉の科学的根拠を与えるものになると強調した。

昨今頻発している極端な気象現象について触れ、石原伸晃環境大臣(日本)は、日本のリーダーシップについて述べ、日本は、国連環境計画(UNEP)の世界適応ネットワークの議長国を務め、2020年以降の気候変動の枠組みに関する国際交渉を推進しているとし、環境技術や低炭素技術、再生可能エネルギー、環境にやさしいライフスタイルを推進すべく、外交を行っていると強調した。

世界気象機関(WMO)の Jeremiah Lengoasa事務局長代行は、ビデオメッセージを寄せて、政策決定者に対するIPCC独自の信頼性や、適応策や緩和策などの政策決定におけるWGII 報告書の貢献、今後のリスクや便益に対する役割、気候サービスが提供する機会やメリット等について強調した。

国連環境計画(UNEP)のAchim Steiner事務局長もビデオメッセージの中で、本会合が今後の展望やリスクについて情報を提供することにより、気候変動に対する人々の理解向上に役立つだろうと述べ、IPCCからのメッセージをしっかりと広く世界に知らしめるべきだと強調した。

国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)のChristiana Figueres事務局長は、ビデオメッセージの中で、IPCC報告書は、健全なる科学に基づいたソリューションを提供することにより、気候変動の課題に対峙するべく世界がやるべき事は何か光明を照らすとし、IPCCに賞賛の言葉を贈った。 また、AR5 のWGII報告書によって、これまで以上にUNFCCC にとっても行動の選択肢が広がるとし、なぜ今すぐ行動を起こす必要があるのか強調するとともに、地域を超えた総合対策に関する世界の全体像を俯瞰する内容となるだろうと述べた。

WGIIの Christopher Field共同議長(米国) は、報告書原案について、各国が利用できる幅広い一連のツールを含めて、あらゆるリスク管理の可能性について検討する必要があると評した上で、“科学的に大胆”だと指摘しつつ本会合で取り上げるべきテーマを強調するとともに、様々な課題の分析的な視点に焦点を当て、いかに適応と緩和を融合させていくべきかという機会を強調した。

WGIIのVicente Barros 共同議長(アルゼンチン) は、日本、およびWGIIの執筆陣の作業ならびに協調精神に対して感謝の意を示すとともに、参加者に対しては本会合で最善の成功を出すよう呼びかけた。

また、故Yuri Antonievich Izrael氏を追悼し、参加者は1分間の黙祷を捧げた。その後、IPCC-38の議題 (IPCC-XXXVIII/Doc.1) およびIPCC-37 報告書案 (IPCC-XXXVIII/Doc.2)が採択された。

WGII-10 報告書

政策決定者向け要約の承認

25日(火)午前、 WGII のBarros共同議長がWGIIのセッションを開会した。 WGII のField 共同議長は、SPM が報告書のポータルのみならず一つの文献として独立していると強調した。また、主要テーマとしては特に、リスク面の中核的な議論の枠組みや複数の負荷環境における気候変動の取組み、観察された変化に対する強いメッセージ、広範な前向きな未来やプラスの影響、緩和と適応の両面における潜在リスクの低減、“問題となる領域“と“解決できる領域”を定義すること、多様な価値観や時間尺を受け入れる必要性等を挙げた。

WGII 副議長 Neville Smith (オーストラリア) は、AR5における査読編集者の役割は 2011年の改訂ガイダンスノートで明記された通りであると紹介した上で、査読編集者の役割には、査読者の特定や、全コメントが確実に検討されるようにすること、物議を醸すような問題に対する執筆者向けの助言、真の論議が報告書に適切に反映されるようにすること等が含まれると述べた。また、作業プロセスの最後に査読編集者が作成する書面による報告書の価値を強調した。

序論(気候変動リスクの評価と管理): 参加者はSPM.1: [WGII AR5の主要概念図] を改めて検討し、審議にかかった。図の説明文について、ボリビアは、サウジアラビアの支持を受け、開発は“持続可能”と限定することを推奨し、 “ガバナンス”の意味を問いただした。これらの質問や他の質問に答える形で、調整主幹執筆者 (CLA)は、リスクの全体的な概念は、あらゆる個々のリスクを包含するものであり、図の中で災害リスクを明示する必要はないとし、「技術」は開発の一つの特性に過ぎず、持続可能な開発は開発の一つのタイプに過ぎないとした上で、ガバナンスについては、全てのカテゴリーを含み、様々なガバナンスのレベルを対象とするものだと説明した。

ボリビアとニカラグアは、図説の文章について、人間本位のアプローチではなく、宇宙観を中核とすべきであるとし、「脆弱性」および「母なる地球の曝露度」についての記載を入れるべきだと強調した。ベネズエラは、 「母なる地球」とは国連の普遍的な概念であり、SPMに盛り込むことができると述べた。パナマは、この懸念に対応するには “社会生態系”という用語を使うべきだと述べた。 メキシコは、開発に対する人類と自然の影響を強調すべきだと述べた。カナダは、 オーストリアの支持を受け、「母なる地球」という言葉を本文中に入れることに反対した。 あるCLAは、この点を解決するため、 “相互に関連する人間と自然系に対する影響”という言葉を入れるよう提案した。Field共同議長は、 “気候関連の影響リスク”という文言はリスクと影響の両方を表しており、すでに報告書の諸側面の中で様々な価値や世界観が提示され、母なる地球という概念も盛り込まれていると指摘するとともに、この報告書が扱っている文献の中にある概念以上のものに踏み込むことはできないと述べた。これらの改定案は採択しないということが決まった。

ノルウェーは、パナマの支持を受け、「気候関連のリスク及び影響」は脆弱性と曝露の危険の相互作用が原因であると記載するよう提案した。オーストリアは、カナダ、サウジアラビアとともに、リスクが必ずしも影響に及ぶのではないと述べた。Field共同議長は、リスクが潜在的な影響であると明示する一文を追加することを提案した。 英国は、気候のリスクと気候変動のリスクを混同しないよう注意した。スイスは、気候に影響を及ぼすものは全て「影響」であり、「リスク」は時として定量化できる不確実は結果を伴う「影響」であると説明した。結局、図説の文章は、これらの改定案を除外した上で採択された。

SPM.1: WGII AR5主要概念図について英国は、カナダの支持を受け、この図に気候変動のシステムと影響は不可分であることを示すフィードバックのループを示す矢印を入れるよう提案した。 カナダは、排出量だけが気候変動の源なのではないと述べ、土地利用変化の役割を示す矢印を挿入するよう主張した。図 SPM.1の図説について、英国は、気候系と “開発プロセス”の両方における変化が、危険や曝露、脆弱性の要因であると記載することに懸念を示し、 “開発プロセス”という文言は途上国を対象にしているようであり、これは変更すべきだと述べた。オーストリアは、“人間のシステム”という言葉を用いるよう提案した。 英国は、図の文言を変更し、図説については“開発プロセス”から“社会経済プロセス”という言葉に変更する案を支持し、参加者の合意を得た。

SPM序論の本文については、Field共同議長が、「気候変動リスクの評価と管理」というタイトルを挿入することを提案し、参加者の合意を得た。「人類の気候系に対する干渉が生じており、気候変動は人類と自然系にリスクをもたらしている」と記したSPM序論の冒頭文について、ノルウェーは、人類の干渉と気候変動が及ぼすリスクを結びつけるべきだと述べた。カナダは、米国、サウジアラビア、オーストラリア、オーストリアとともに、報告書には単に人為起源の気候変動以上の内容があるとして、この意見に反対した。スロべニア、ロシアは、気候変動が人類の干渉の“結果(consequence)”または人類の干渉“に起因する”と記載することを提案した。ボリビアは、 “母なる地球”という文言を入れるよう求めた。インドは、“自然系” ではなく“生態系”と記載すべきだと提案したが、ノルウェーは、広義に解釈できる“自然系”の方が良いと主張し、参加者がこれに同意した。

気候“変動”の関連リスクをいかに軽減できるか考察するという英国提案については、受け入れられた。負の影響は現在ますます切迫しているとし、中国は、適応について、緩和の前に記述することを提案した。

リスク、適応、緩和の関係性について記すパラグラフについては、広範囲な議論が展開された。英国は、イタリアの支持を受け、“適応を通じて地域的に、緩和を通じて国際的に” リスクを軽減という文言を提案し、こうしたプロセスが様々な形でリスクを緩和すると主張した。英国提案は、持続可能な開発ならびに適応及び緩和を通じてリスクは軽減することができると記すものだった。 サウジアラビアは、 “リスク”という文言の代わりに “悪影響”と記載することを提案した。 インドは、「適応に対する制約」という語句を削除するよう提案したが、スイス、 ボリビア、 フランス、 オーストラリア等がこれに反対した。代替案として、ドイツが、“悪影響に関わる一部のリスクは回避不可能であると認識”という文言を提案した。また、ボリビアは、さらに適応を損ねる損失被害についての言及を挿入するよう提案した。オーストリアは、適応に対する制約を明示する文言は、緩和に対する制約が存在しないような意味を示唆しかねないと釘を刺した。セントルシアは、適応と緩和の両方に対する制約を認識するよう提案した。南アフリカ、チリ、 フランス、ルクセンブルグをはじめとする多くの参加者は、緩和を扱うのはWGIIIの方が適切だと強調した。また、リスクが“気候に関連する”のか “気候変動に関連する”のかという点や影響は“管理”すべきか、“軽減すべき”なのかという問題が特に議論の焦点となった。

Field共同議長は、気候変動の様々な影響の複雑な相互作用や可能性の変化について取り上げた新しいパラグラフを紹介した。ここでリスクを重点的に取り上げることが意思決定者に情報を提供するとし、世界の人々がリスクや潜在的なメリットをさまざまに認識し、順位づけを行えるようになるかもしれないと強調した。ボリビアは、影響を重点的に扱うべきだと強調した。英国は、スイスの支持を受け、この一文は、気候変動.に関する意思決定の枠組みを提供することに特化すべきだと述べた。カナダは、サウジアラビアの支持を受け、この変更案が意思決定者や政策決定者にとって価値あるものとなるか疑義を呈した。カナダとオーストラリアは、気候変動と関係しない政策環境において重要な決定が多く成されるものだと強調した。タンザニアは、評価報告書の中でリスク重視を示す文言が“新しい”との言及は混乱を招くとし、削除を求めた。スイスは、リスクを重視することが適応に関する意思決定の際の知識となりうると記す文言を求めた。

米国は、リスクに基づくアプローチを用いて報告書を組み立てることに警戒感を示した。Field共同議長は、リスクに着目するのはこの報告書の中で新しい試みであり、気候変動関係の意思決定を支援する可能性があると示唆した。 サウジアラビアは、この一文は、影響に焦点をあてることを犠牲にして、リスクに焦点をあてるという新たな概念を紹介していると述べた。非公式協議を経て、報告書の中でリスクを重視することは、気候変動との関係で意思決定を支援するという文言にすることで合意が成された。数名の参加者は、リスクと影響は補完性があると指摘した。作業部会は、リスクと影響については同じパートで扱い、適応については別のパートで取り上げることを決定した。

価値の多様性に関する一文については、 ボリビアが、報告書の別のところで取り上げられているため、この問題を取り上げる必要性があるのか疑問を投げかける一方で、もし取り上げる場合は異なるビジョンやアプローチへの配慮ということに焦点を当てるべきだと指摘した。 スイスは、オーストリアの支持を受け、この一文は、適応が異なるビジョンに配慮し、政策の処方箋のようにしないために重要であると強調した。

その次のAR5 WGII 報告書の知識基盤に関するパラグラフについては、これまでのWGIIの評価報告書と比べて重要な文献が多数、評価され、知識基盤になっていると記載する一文が受諾された。また、特定地域のデータに見られる知識ギャップへの対応法が討議され、文献量は“全地域で”増加したと記した一文は削除されることとなった。

背景囲み記事(ボックス) SPM.1: 評価のためのコンテクストに関する議論は、“中所得国”という用語の使用をめぐり賛否両論が巻き起こった。中国とアルゼンチンは “途上国”という用語を使う案を支持した。Field共同議長は、不均等な分布となっているものの、すべての地域で対象範囲は増加していることを指摘し、 “中所得国”の方が文献との整合性は高いと提案した。 オーストリアは、この用語は、公表されている気候変動の文献の執筆者のギャップを反映していないと危惧した。カナダは、“公表されている気候変動文献の執筆者の数は増加したが、先進国の執筆者の割合が多すぎる”と示唆した。

背景囲み記事(ボックス)SPM.2: 要約の理解に重要な専門用語について、 Field共同議長は、囲み記事の中にある重要な専門用語はそのまま用語集に収められており、すでにWGIで合意済みであると指摘した上で、評価報告書の一貫性を守るためにも、これらの用語を受諾するよう要請した。ベネズエラ、ボリビア、エクアドルは、政府コメントに配慮する必要があるとし、登録簿に関して、すべての提案を付記するよう求め、この点の合意が成立しない場合には、付属書として正式に公表すべきだと強調した。 また、ボリビアは、“環境サービス”という用語は若干、自然の商品化を推進しているような意識が働いている概念であるとして、ボリビアはこれを承認しなかったと述べ、それに代わる“環境機能”という用語を提案した。さらに、 “変革(transformation)”という語は国家主権を損ねるもので受け入れがたいとし、ベネズエラの支持を受けつつ、SPM及び報告書原案の全体を通して、この用語に関する記載を削除するよう求めた。 ベネズエラは、総合的な概念枠組みの一部として、SPM 全体にUNFCCC に基づく適応の約束についての記載を盛り込むよう求めた。 オーストリアは、UNFCCCの下で生じる政治論争を回避すべきだと提案し、スイスやオーストラリアとともに、科学文献の中で提起されたものを尊重するよう参加者に訴えた。ナイジェリアは、報告書本体ですでに定義されている用語について同意するよう求めた。

気候変動の定義については ブラジルが土地利用という記述を入れる必要があるか疑問を呈した。ボリビアは、共通するが差異ある責任や歴史的責任の原則を反映させるよう、気候変動の定義を改めるよう求めた。 Field共同議長は、UNFCCCの気候変動に関する定義の重要性を指摘した。 ベネズエラは、「極端な気象現象」を意味する、 “climate extremes”, “extreme climate phenomena”, “extreme events“,” climate shocks”といった特定の用語がSPMから排除されていることに疑義を唱えた。

危険(hazardの定義については、これまで記載されている通り、用語集に盛り込むことで合意。 ノルウェー提案の通り、生態系についての記述を追加し、いくつか編集上の微修正を入れることで合意となった。

曝露(exposure) の定義については、 ボリビアが、マイナスの影響を及ぼす可能性があるものとして、“環境サービス”と “環境作用(functions)”について併記するよう要請し、参加者も合意した。サウジアラビアは、“places(場所)”という記述の代わりに、あるいは同様に、“situations”(状況)”と記述することを提案したが、スイス、オーストラリアがこれに反対した。あるCLAは、 “situations”というのは“脆弱性”という用語に含まれていると説明した。その後の非公式協議を経て、悪影響を及ぼす可能性があるものについては“places”ではなく“places and settings(場所および状況)”という用語にすることで合意がなされた。

脆弱性については、メキシコが、悪影響を受けうる“propensity(傾向)” および“predisposition(素因)” について明記するよう要請したが、あるCLAは、一般的な定義とすることが目的だと応じた。様々な“概念”を内包している脆弱性については、スイスが、コスタリカの支持を受け、“概念”を“要素”という用語に変更するよう要請したが、サウジアラビアは反対した。  “概念”と“要素”の両方を記載することで参加者が合意した。

影響については、 ボリビアが、 経済社会文化の問題を“資産”として表現すべきではないと述べ、影響による結果についての文言に対する懸念を示した。スイスは、“資産”と定める修正を削除するよう提案し、作業部会の合意を得た。 ベネズエラは、 “環境サービス”の記載を削除するよう提案した。 ノルウェーは、このパラグラフの中で“環境サービス”という用語が削除された場合でも、用語集の中に入れておくべきだと提案した。 こうした条件付きで、“環境サービス”の語が削除された。

リスクについては、 インドネシアが「何等かの人間の価値 (人間の存在自体を含めて)が危うくする結果を招く可能性」という表現に対して、“人間の価値(human values)”という言葉は狭義に過ぎると疑義を示し、“生態学的な価値(ecological values)”という広い意味をもつ用語にすべきだと述べた。米国は、“人間の”という語を削除し、シンプルに“価値”という語だけ残すことを提案したが、 ボリビアの反対に遭った。リスクは “価値の多様性を認識しつつ、何等かの価値を危うくし、不確実な結果を招く可能性”と定義することで、合意をみた。 ドイツは、リスクの定義と、図SPM.1のリスク概念図に盛り込まれた危険や曝露、脆弱性といった構成要素との相関関係をもっと上手く表現するよう求めた。 カナダは、「“影響”のような事象が発生する場合は、その“影響”によって倍増する“危険に対する曝露”の確率として、リスクが示されることが多い」と記載することを提案し、ドイツとノルウェーの支持を受けた。また、ノルウェーは、危険な事象と “トレンド”の両方の影響について言及することを推奨した。リスクについては、 “脆弱性、 曝露、および危険にかかわる作用”という文言を追加し、カナダ案とオーストラリア案をまとめた表現にすることで合意がなされた。「報告書で気候関連のリスクを評価する」との一文については、“気候関連のリスク”という文言の代わりに“気候変動関連の影響”という文言にすることで参加者が合意した。 サウジアラビアは、報告書は気候変動の影響だけを評価しているのではないと参加者に訴えたが、オーストリアが反対した。 リスクという用語は主に気候変動の影響に係わるリスクについて言及するために用いられると記載することで合意がなされた。ドイツは、評価は“客観的な評価基準と専門家の判断に基づく”と明記するよう求めた。 オーストリアは、この情報を図SPM.1の図説に入れることを提案した。

適応については、メキシコが、適応向けのキャパシティビルディング という文言を入れ、地域、国、個人のレベルを含め、適応が生じる様々なスケールを明示するよう提案した。Field共同議長は、具体的な規模を列記することが必ず他の重要な要素を除外することになると説明し、全てを包含するような、もっと一般的な定義の方が適応についての記述には望ましいと述べた。参加者は、より一般的な文言を維持することで合意した。損害を抑える適応については、スロべニアが、適応も損害の回避をめざすとの文言を追加することを提案した。コンゴ共和国は、人間の干渉がすべての自然系を調整することができると暗示するような文言だと懸念を示し、“一部の”自然系という文言に微修正することとなった。

変革transformationについては、複雑で曖昧なテーマであり、規範的で処方箋的な側面を帯びているとして、ボリビアが、SPM中のこの用語の記載をすべて削除すべきだとの要請を繰り返し表明した。 オーストリアは、基礎的な文献には「変革」という記載が複数出ていると強調した上で、いかなる変革も国が望むように決定しているため処方箋的ではないとした。ノルウェーと英国は、定義を入れる案を支持した。フィリピンは、資金が潤沢な先進国にとって重要性が高い項目であるとして、「変革」が起きるような具体的な制度や体制を挙げる一文を削除することを提案した。ボリビアとベネズエラは、一行目の文章は“植民地的科学史観”を反映したパラダイム転換について言及しているとして、定義全体を削除すべきだと述べた。 非公式のグループ協議の後、「変革」を定義する文章について次のような形で合意した。:“自然および人類のシステムに関する根本的な属性における変化。この要約の中で、「変革」は貧困撲滅を含む、持続可能な開発に向けた適応を促進するためのパラダイム、ゴール、または価値観の強化、変更、調整を反映しうる。”

サウジアラビアは、レジリエンス(回復力)について、適応における重要性と持続可能な開発との直接的な関係を強調し、それを定義に加えることを提案し、参加者が合意した。その後、サウジアラビアは、「持続可能な開発」に合わせる形で社会経済環境システムの能力を反映するように修正した形で定義を記載するよう提案し、参加者の合意を得た。

 背景囲み記事(ボックス)SPM.3: 評価報告書の知見における確信度の伝達 :修正なしで、参加者の承認を得ることができた。

セクション A:複雑に変貌を遂げる世界で観測された影響、 脆弱性、および適応: CLAのWolfgang Cramerは、気候変動の影響の検出および属性について紹介し、影響の属性についての記述が欠如しているからといって、何も影響が起こらなかったという意味ではないと強調した。 CLAのPetra Tschakertは、“この問題における人間”について紹介し、多面的な変動性や動的な生活、脅威の増幅装置としての気候変動などについて議論した。

A-1. 観測された影響、脆弱性、および曝露: 気候変動の自然および人類のシステムに対する影響についてのパラグラフに関しては、 英国が、米国の支持を受け、“気候以外の要因の影響を凌駕する”気候変動の人間システムに対する影響の一部は“他の原因と区別できる”と記述するよう要請したのに対して、オーストリアとベルギーは、元の文章の方が良いと主張した。オーストラリアは、影響の一部が気候変動だけに因るものだと暗示することに警戒感を示した。結局、「人間のシステムに対する一部の影響は、ある程度他の影響とは区別できる気候変動に、その寄与度の多少はあるものの、その原因を帰すことができる」と記述した一文に改訂することで合意となった。

観測された影響と、自然および人間のシステムが気候変動に及ぼす影響に係わる反応との因果関係を論じた一文については、 オーストリアが、観測された気候変動に人為起源および自然の変化を含めるというカナダ案を支持した。米国は、“人為起源”の気候変動について具体的に言及するよう求め、ベルギー、オランダ等ともに、気候系に対する人間の影響に関するWGIの評価についての言及を支持し、気候変動への対応を強調するWGIIの文言と区別するよう求めた。サウジアラビアは、カナダ、米国、ロシアの支持を受け、WGIの主眼とは対照的に、WGIIでは、自然と人間のシステムにおける反応と観測された気候変動 を、人為起源の気候変動のみならず“その原因にかかわらず”結びつけていると指摘した。オーストラリアは、気候変動は人為起源のものだけではないと明示した一文を求めたが、チリがこれに反対した。カナダは、各WGの報告書を比較対照する場としてはSYRが適切であると述べた。その後の非公式グループ協議を経て、 “attribution (起因)”という言葉はWGIとWGIIで異なる使い方をしているという点で合意がなされ、「観測された影響の起因」に関する一文が、修正なしで、承認された。

その後は「起因」に関する脚注部分が審議対象となった。 “attribution”の用語はWGIとWGII で使われ方が異なると記した一文と、この語に関する部分がWGII で、どのように検討されたかということを記述した一文が、ともに承認された。WGI では“attribution”がどのように検討されたかという一文について、 カナダが、 WGIは観測された気候変動と、人間活動を含む外部要因との結びつきを定量化していると記載するよう提案した。WGIのStocker共同議長は、「WGI は観測された気候変動、人間活動、ならびに、その他の外部要因との間の結びつきを定量化する」と記載することを提案し、合意がなされた。

英国は、WGI報告書から引用した人為起源についての文言を脚注に入れる必要があると強調し、フィンランド、 ノルウェー、欧州連合 (EU) 、カナダの支持を受けた。参加者は、WGI AR5の主要な知見は「20世紀半ば以降に観測された温暖化の主因が人間の影響であった可能性は極めて高い」と脚注に記載することに合意した。

「降雨量の変化や雪氷の融解が水文系を変え、水資源に影響を与えている」と記した一文については、 英国が、これらの変化に関する影響をもっと明確に広範に言及することを提案した。日本、ルクセンブルグ、コンゴ共和国、スウェーデン等の国々が、水質についても言及するよう求めた。 Barros共同議長は、“水の量と質”についての言及を加えることを提案した。スロべニアが、水質ではなく、“利用可能性”とすることを提案したが、日本と中国がこれに反対した。ノルウェー、マリ、クック諸島は、水資源についてもっと一般的に記載する方が良いと主張した。インドは、“水サイクル全体”について言及することを提案したが、ガーナとセントルシアは、パターンの変化についての言及を追加することを提案した。クック諸島は、土砂の移動について言及するよう求めた。フランスは、“量と質の面で水資源に影響を与える”との文言を提案し、参加者の合意を得た。

氷河の縮小が続いていることについては、 米国、 英国、 EU、 ニュージーランド等が、河川流水量の増加、増水や、土砂流出、下流の水資源の問題などが氷河縮小による現実の影響であると言及する案を支持した。結局、 “流水量や下流の水資源に影響を与える”との言及を追加することで合意した。

その次の「気候変動が“永久凍土温度上昇と高緯度および高地の地域における凍土融解”を起こした」と記載した文章については、 スロべニアが、温度上昇と融解が今なお発生しているとする文言を提案し、参加者の合意をみた。オーストリアがこの記述の確信度について質問したのに対して、執筆陣が本文に“高い確信度”という文言を加えることを提案し、参加者もこれに同意した。

気候変動に反応して多くの種が移動したことを指摘する生物種の移動に関するパラグラフの冒頭文については、議論なしで合意となったが、昨今の温暖化が絶滅種の原因となっているとした、その後の2つの文章が多くの議論を招いた。ドイツ、オーストリア、英国、スイス等の数カ国が、樹木の致死率の増加についての前の言及がなぜ削除されたか質問を投げた。これに対して、Field共同議長は、個別の影響についての記載は、総合的なリストを載せた表SPM.1及び図 SPM.2.C部分に移動させた為だと説明した。コスタリカは、中米の多くの両生類の絶滅種についての事例を削除する案を支持したが、スペインとパナマが反対を唱えた。スイスは、オーストラリアの支持を受け、“観測された種の絶滅のごく一部は気候変動に起因するものだ”と明記することを提案した。その他、さまざまな国から数々の疑問があがった。米国は、何年間にわたって種の絶滅が発生しているのかと質問。 日本は、陸上生物と同様に海洋生物の種についても含めた記載とするのかと質問。スイスは、“生態系変化”には、生態系の変化、空間移動だけを含めるのか、あるいはタンザニアの提案のように一時的な移動も含めるのかと質問した。カナダは、絶滅のスピードが実際に変化したのか、タンザニアは、この知見に関する確信度について質問した。最終的に「今のところ気候変動に起因した生物種の絶滅は二、三例に過ぎないが(高い確信度)、現在の人為起源の気候変動よりも緩やかに起こった過去何百年という期間における地球上の自然の気候変動によって、著しい生態系の変化や種の絶滅を招いている(高い確信度)。」と記載することが合意された。 

干ばつと高温による樹木の死と森林の枯死を示す図については、、スーダンとタンザニアが、「アフリカがアメリカやヨーロッパよりも干ばつの影響が少ないような誤解を招く図になっている」として反対を唱えた。しかし、あるCLAが、この図は、利用可能な研究に基づくものであり、アフリカにおける関連研究が欠如していることを示すものだと説明した。その後、これは誤解を生む可能性があるとの認識に立って、 ドイツ、 ノルウェー、 ボリビア、 ぺルー、 Field共同議長、およびCLAが、編集上の様々な変更を入れることを提案し、タンザニアもこれを受け入れた。会議室に出席しているアフリカの代表者がいないと指摘し、 スーダンは、図の削除を求め、参加者も合意した。

また、気候の変動性に対する不公平や、脆弱性、生態系や人間のシステムの曝露を招いている社会プロセスの役割についての一文についても合意が得られた。気候関連の異常の影響については、 ボリビアが、 「適応の取組みにも拘わらず、気候変動による損失被害が生じることを示唆する証拠がある」と記す一文を挿入することを求めた。Field共同議長は、報告書の他の場所に残余的な被害についての記述は見つかるとした上で、このパラグラフは脆弱性の影響だけに特化したものだと述べた。 適応の影響による損失額と気候関連の危険が他のストレス要因を悪化させているとの記述についても合意が得られた。生活における気候関連の危険の影響については、ボリビアが、食料の安全保障についての言及を追加することを提案したが、これは既存の文章の中ですでに暗示されているとCLAが述べた。また、貧困者や社会から疎外されている人々に対する限定的で間接的な場合が多い気候のプラス効果について言及し、暴力的な紛争が気候変動の脆弱性を大きくするとした文章についても合意がなされた。適応を促す財産を損ねる暴力的な紛争の役割については、ボリビアが、“自然資本”という言葉の代わりに“天然資源”という言葉を使うよう求め、参加者が合意した。

SPM.2A: 気候変動に起因する観測された影響については、 非公式協議の上、すべての国に対する影響が示されてはいないとの懸念に対応するため図に文言を追加することが合意された。タンザニアは、南アフリカ、ガーナ、ガンビアとともに、沿岸浸食やサンゴの白化などの海洋生態系への影響がアフリカの図に盛り込まれていないとの懸念を表明したのに対して、CLA陣は、認識された各種の影響は、検出および原因とされた観測された変化としての評価に耐えるものではなく、この図はAR4以降の評価済み文献だけについて言及しているのだと説明した。 また、図示されないことが、すなわち影響がなかったという含意になるのではないと指摘した。

海洋生物分類群の分布における平均変化率および正の分布変化に関する図 SPM.2B および1960-2013年の主要作物4種の収穫高について観測された気候変動により推定される影響に関する図SPM.2Cについては、修正なしで承認された。また、ヒマラヤの氷河消失に関する図は複雑すぎるとして、削除することが決まった。

A-2. 適応の経験: 歴史を通して、気候の変動性と極端現象に順応し、対処していく人々や社会について触れた冒頭文について、 サウジアラビアが、 “対処する”という言葉に代えて、“適応する”という文言を使うことを提案した。 英国は、これでは意味が変わってしまうとして、 オーストリアとともに、原文を支持した。ドイツは、ベルギー、ニュージーランドとともに、文章の削除を提案した。最終的に、この文章を序文とすることに合意し、文言の修正なく承認された。

気候変動の観測された影響および予測される影響への人間の適応的な対応について焦点をあてたセクションを説明する一文は、少し手直しを入れて承認を受けた。 影響、 脆弱性、適応計画に限定された適応に関する大半の評価について記した一文については、 カナダが、 “評価(evaluations)”という語について尋ねた。 ある CLAは “評価(assessments)”の語に変更することを提案し、これが受理された。 英国は、フランスの支持を受けながら、適応プロジェクトや適応プログラムについて言及することを提案したが、CLA陣は原文の幅広い記述を維持することを推奨した。

地域別の適応事例については、ヨーロッパに関して、EUが、“環境保護および土地計画”についての言及を挿入するよう要請し、参加者も合意した。アジアについては、韓国が、アジアにおける適応は、気候の適応行動を地方レベル開発計画に組み入れる”ことによっても推進されていると記載することを提案し、合意が得られた。残りの地域の事例についても、わずかな修正込みまたは修正なしで合意された。

A-3. 意思決定のコンテクスト: 気候変動性および極端現象はずっと意思決定の様々な文脈で重要な意味をもっており、気候変動と開発によって気候関連のリスクが変遷してきると記す冒頭文が承認された。

また、このセクションに記載される、気候関連リスクへの対応、 適応と緩和の選択肢、リスク評価、不確実性といった4つの知見について検討が行われ、気候関連のリスクへの対応というテキストについては、注釈なしで承認された。 承認された文言は以下の通り:「気候変動の影響の深刻さとタイミングについての不確実性が継続し、適応の効果に制約が伴う中、気候関連リスクの対応は、変化する世界の意思決定に係わる; 反復的なリスク管理は大きな潜在的影響、永続的な不確実性、長期の時間枠、 学習の潜在力および時間とともに変化する気候と気候以外の複数の影響に特徴づけられる複雑な状況下の意思決定の枠組みとして有効である;可能性は低いが甚大な影響をもたらす結果を含めた今後の影響の可能性の最大幅の評価が代替的なリスク管理行動の利点とトレードオフの理解に不可欠である; スケールやコンテクストを超えた適応行動の複雑さは、モニタリングや制度的な学習を要する。」

緩和と適応の選択については、若干の議論の後に合意がなされた:短期的な適応と緩和の選択が21世紀を通して気候変動リスクに影響を与える;今後数十年間の世界の気温上昇は複数の排出シナリオで同じように予測されている;短期的には社会経済的なトレンドが気候の変化との相互作用に応じてリスクは変化していく。特に、21世紀後半の短期的な成果に適応が影響を及ぼす;世界の気温上昇は排出シナリオによって異なる;長期的には、短期および長期の適応と緩和、および開発の経路が、気候変動のリスクを決定づける。

WGII AR5のリスク評価については、 特に以下の内容が記された文言が合意を受けた。

「気候変動関連の将来のリスクは妥当と思われる代替開発経路ごとに大きく異なる。 開発と気候変動の重要性は、業種や地域、時期によって異なる。未来に起こりうる社会経済の経路や気候変動、気候変動のリスクおよび政策的意味合いを特徴づけるには、シナリオは有効なツールである。」

不確実性については、 以下が合意された。 将来の脆弱性、 曝露、相互に関連する人間のシステムおよび自然系の反応に関する不確実性は大きい;それが、リスク評価における広範な社会経済的な将来の探求を促す;相互に作用する社会的、経済的、文化的な多くの要因のため、将来の脆弱性、曝露、人間のシステムおよび自然系の対応力について理解することが課題となる;こうした要因としては特に、社会全体の富の分配、人口統計学、移住、情報アクセス、社会の価値観、ガバナンス制度と紛争解決機関;および貿易などの国際分野も、地域レベルの気候変動リスクの理解に重要だ。 

SPM.3: 複合的フィードバックを成す反復的リスク管理プロセスとしての気候変動の適応については、注釈なしで参加者の承認が得られた。

SPM.4: 年間平均地上気温において観測された変化および予測される変化については、 カナダおよび米国が、WGI 報告書と類似した図の使用を支持した。一つの代替案として、 カナダは、米国の支持を受けつつ、2℃と4°Cの急な目盛りをなくして色の分類バーを調整するとともに、北極圏の温暖化を図示するために拡張するよう求めた。これらの修正を行った後、図と図説は承認された。

セクションB. 将来のリスク及び適応の機会:序文パラグラフの文章に関し、米国は、このセクションは適応及び緩和によるリスク管理の機会を示すと指摘し、このグループで合意した「リスク軽減(reducing risks)」にも言及すべきだと述べ、カナダ、アイルランド、インド、EU、サウジアラビアもこれを支持した。

B-1. 部門及び地域を横断する主要リスク:序文パラグラフに関し、カナダは、主要リスクとはUNFCCC第2条記載の気候系への危険な人為的干渉を指すのではない、このパラグラフを第2条にリンクさせるべきでないと述べたが、ドイツ、スロベニア、スイス、ブラジル、その他はこれに反対した。この問題を解決するため、ニュージーランドは、「記載する(described in)」を「言及する(refers to)」に置き換えるよう提案し、参加者もこれに同意した。合意された文章は次のとおり:「主要リスクは、気候系への危険な干渉に言及するUNFCCC第2条に関連性のある深刻な影響の可能性があるものである(main risks are potentially severe impacts relevant to Article 2 of the UNFCCC, which refers to dangerous interference with the climate system)」。米国は、主要リスクの定義を次のような文章にするよう提案し、参加者もこれに同意した:「リスクは、社会、及びリスクに曝されるシステム、或いはその両方に対し、高い危険性、もしくは脆弱性を持つことから重要と考えられるものである(Risks are considered key due to high hazard or high vulnerability of societies and systems exposed, or both)」。

考察を必要とする気候変動のリスクに関するパラグラフについて、ドイツは、このパラグラフでの主要リスクの順序やその比重に懸念を表明し、インドは、影響のタイミングに懸念を表明した。CLAsは、この基準は比重の概念を導入することで、かなり明確なものになると説明した。スイスは、主要リスクの特定に「専門家の判断(expert judgments)」が用いられたと指摘する文章に関し、「専門家の判断」という表現の削除を提案し、この表現は信頼性を下げると指摘したが、米国、オーストリア、ドイツはこれに反対した。サウジアラビアは、「専門家が推理する判断(expert inferred judgment)」という表現を提案した。ドイツは、次の表現を提案した:「どのリスクが重要であるかの決定は、次の特定基準を用いた専門家の判断に基づく(Determination of which risks are key was based on expert judgment using the following specific criteria)」。サウジアラビアは、「決定(determination)」を「評価(assessment)」に置換するよう提案した。参加者は、「特定(identification)」という用語を用いるとのカナダの提案に同意した。日本、タンザニア、その他は、基準の適格化に対する提案を行った。カナダは、この基準は既に執筆者が適用しているものであり、変更できないと述べた。

参加者は、主要リスクについて議論した、その全ては、高い確信度を持って特定され、一つもしくはそれ以上の懸念の理由(reasons for concern: RFC)に寄与する。

 高潮、沿岸部の洪水、海面上昇を原因とする、低地沿岸地帯及び小島嶼開発途上国での死亡、負傷、生活の中断のリスクという主要リスクが、長時間の議論の的となった。米国は、「小島嶼開発途上国」を「小島嶼」に置き換えることを提案し、その理由としてこれらの諸国の分類は地理的なもので、政治的なものではないことを挙げた。ブラジル、フィリピン、EU、オーストラリアもこれを支持した。さらにオーストラリアは、他の小島嶼国のリスクを強調した。セントルシア、モルディブ、ツバル、中国、キューバ、その他は、「小島嶼開発途上国」という表現の保持を支持した。オーストリアは、「小島嶼開発途上国及び他の小島嶼国」という表現を提案し、メキシコ、アイルランド、スイス、セントルシア、米国、その他もこれを支持した。

チャド、マリ、南スーダン、スーダン、セネガル、その他は、後進開発途上国(LDCs)への言及を支持したが、オーストラリアとドイツは反対した。マリは、ニジェールの支持を受け、LDCsを対象とする文章の妥協案として、「他の脆弱な地域(other vulnerable areas)」を提案した。カナダ及びCLAsは、このリストに新たなリスクを付け加えることに警告を発し、これは科学研究成果を損なう可能性があると述べた。ニュージーランド及びEUは、リスクは LDCsに「特にあてはまる(especially pertinent)」ことを明確にする文章を追加するとの提案を支持した。米国は、後進開発途上国及び最も脆弱な諸国においてはその発展状況から生じるものも含め、曝露や脆弱性のレベルが高く、このためリスクと最も関係性があると冒頭で明記することを提案した。オーストラリアは、「脆弱なグループ(vulnerable groups)」を付け加えるよう提案した。

南スーダンは、LDCsの脆弱性の高まりは開発状況が理由ではなく、むしろ資源不足が原因であると明言した。カナダは、曝露レベルは開発状況に依存しない可能性があると強調した。ケニアは、たとえば沿岸地帯のリスクは開発状況とは関係なく、全ての国が対象であると発言した。南スーダンは、資産の損害及び破壊も、リスクのリストの対象にすべきだと述べた。

セントルシアは、全てのリスクがLDCsに関係するわけではないことを反映する的確な表現を求めた。米国は、「一部の(some)」主要リスクは、後進開発途上国及び脆弱な諸国に特に大きな課題となる可能性があるとの表現を提案した。オーストリアは、リスクは各国国内でも多様で異なると指摘し、各国国内の脆弱なグループへの言及を提案した。

カナダは、この文章に関する多様な形式の提示や議論を受け、「一部の主要リスクは、LDCs及びコミュニティーにとり、特に課題が大きい可能性がある、これはその脆弱性が高く、対応能力が限定されているためである(some key risks may be particularly challenging for LDCs and communities, given their higher vulnerability and limited ability to cope)」との文章を提案し、これに対し英国は「脆弱な(vulnerable)」コミュニティーにするよう提案した。

マリは、スーダンの支持を受け、主要リスクはLDCsにとり課題が「ある可能性がある(may be)」ではなく「ある(are)」とすることを求めたが、オーストリアは、LDCsにおける主要リスクに特化した評価は行われておらず、このためそのような確定的言明は評価にそぐわないと指摘し、カナダもこれを支持した。フランスは、「一部(some)」という言葉の削除を提案したが、南スーダンは、LDCsにとり課題であるのは「これら主要リスクの大半である(most of these major risks are)」を提案した。

スイスは、「多数の(many)」主要リスクは特に大きな課題を「構成する(constitute)」を提案し、参加者もこれに同意した。最終文案は次のとおり:LDCs及び脆弱なコミュニティーにおいては、その限定的な対応能力のため、多数の主要リスクが特に大きな課題を構成する。

この議論の後、次の問題に関する文章が受諾された:高潮、沿岸の浸水、海面上昇による、低地沿岸地帯と小島嶼開発途上国及び他の島嶼国における死亡、負傷、健康の悪化、あるいは生活の破たん。

一部地域において、内陸型洪水を原因とする深刻な健康の悪化及び生活破たんが大規模都市部人口で起きるという主要リスクに関し、数件の変更提案は、当該主要リスクを引用した章の記述と一致しないことを理由に却下された。内陸型洪水の影響に、「移動(displacement)」を加えるとするパキスタンの提案は、既にある表現に含まれるとして却下された。このサブパラグラフは記述通りで受諾された。

極端な天候現象を理由とする構造的リスクに関し、参加者は、この現象で影響を受ける重要なサービスに、基礎報告書からの事例を加えるとのマダガスカルの提案を受諾した。最終文章は次のとおり:「極端な天候現象を原因とする構造的リスクは、インフラ網、ならびに電力、水の供給、健康、救急サービスなど重要なサービスの破たんを招く(systemic risks due to extreme weather events leading to breakdown of infrastructure networks and critical services, such as electricity, water supply, health and emergency services)。

極端な熱波期間における過剰な死亡率及び罹患率という主要リスクに関し、タンザニアとカナダの要請を受け、「過剰な(excess)」が削除された。参加者は、最後の節で「都市部及び農村部において屋外で労働するもの(those working outdoors in urban and rural areas)」に言及するというエクアドル及びエチオピアの要請に同意した。最終文章は次のとおり:「極端な熱波期間における死亡率及び罹患率、特に脆弱な都市部人口及び都市部及び農村部の屋外で労働するものの死亡率及び罹患率におけるリスク(risk of mortality and morbidity during periods of extreme heat, particularly for vulnerable urban populations and those working outdoors in urban or rural areas)」。

特に都市部及び農村部の貧困層人口における、温暖化、干ばつ、洪水、降水現象の変動及び極端な現象と関係する食糧の不安定という主要リスクに関し、ボリビアの要請を受け、食糧の不安定に、基礎の報告書本文から「食糧システムの破たん(breakdown of food systems)」を加えて拡大された。

農村部の生活及び所得における損失という主要リスクに関し、「乾燥(arid)」地帯の農業従事者への言及を加えるというインドの提案は、報告書と一致しないとの理由で拒否され、この主要リスクの文章は変更なしで承認された。最終の文章は次のとおり:飲料水及び灌漑用水へのアクセスの不十分さを理由とする農村部の生活及び所得の損失、特に準乾燥地帯で最小限の資本しか有しない農業従事者及び牧畜業者における損失(loss of rural livelihoods and income due to insufficient access to drinking and irrigation water and reduced agricultural productivity, particularly for farmers and pastoralists with minimal capital in semi-arid regions)

海洋生態系及び生物多様性の喪失という主要リスクに関し、生態系の物品及びサービスに「機能(functions)」を加えるとのボリビアの提案は受諾された。湿地に関するニカラグアの懸念を取り入れ、「沿岸(coastal)」生態系への言及が加えられた。最終文章は次のとおり:海洋及び沿岸の生態系、生物多様性、沿岸部の生活、特に熱帯及び北極部の漁業コミュニティーの生活に対する生態系の物品、機能、サービス(marine and coastal ecosystems, biodiversity, and ecosystem goods, functions and services for coastal livelihoods, especially for fishing communities in the tropics and the Arctic)喪失のリスク。

陸上及び内陸水系における生態系の喪失という主要リスクに関しては、タンザニア及び米国の要請を受け、「陸上(terrestrial)」の生活という概念への言及が削除された。共同議長のFieldは、コンゴ共和国の質問に応え、内陸水系における生態系には草原及び森林が含まれると明言した。ノルウェーは、他の箇所で用いられる「淡水(freshwater)」という表現は、「内陸水系(inland water)」と調和させるべきだと指摘した。最終文章は次のとおり:「陸上及び内陸水系の生態系、生物多様性、及びこれらが生活用に提供する生態系の物品、機能及びサービス(terrestrial and inland water ecosystems, biodiversity, and ecosystem goods, functions and services they provide for livelihoods)」の喪失というリスク。

その後、参加者は、温暖化規模の拡大は、深刻、広範、課題の大きい影響を与える可能性を高めるとするパラグラフについて議論した。ドイツ、英国、ルクセンブルグ、セントルシア、ベルギー、フィンランド、その他は、重要な閾値として4ºCが明記されているが、これ以下の気温上昇にも多数の深刻なリスクが伴うとして、懸念を表明し、4ºC以下の気温上昇の影響は管理可能であるとの印象を与えると警告した。

ベルギーは、確実性の高い単独の数値を求めるのではなく、一般的な記述を示し、多様な閾値ごとに特定の影響を付け加えるよう提案した。ベルギーの提案を支持したドイツ、フィンランド、セントルシア、フィリピン、その他も、産業革命前より2ºCの気温上昇に伴うリスクなど、より低いレベルの温暖化に伴う詳細な影響も付け加えるよう求めた。セントルシアは、1.5-2ºCの気温上昇での影響に言及するよう求めた。共同議長のFieldは、こういった言及の中には、RFCsにおける気候系への人為的干渉に関する評価ボックスSPM.1及び地域の主要リスクの表に含まれるものがあると指摘した。

英国は、ベルギー、ルクセンブルグ、オーストラリア、セントルシア、米国の支持を得て、主要な影響に関する基礎報告書本文の表現を提案した。「産業革命前の水準(preindustrial levels)」への言及に関し、オーストラリアは、WGIのベンチマークとの一貫性を確保するため、1850-1900年の期間へ言及するよう提案した。共同議長のFieldは、評価を受けた文献では産業革命前の水準としていると指摘した。英国は、「課題の大きい(challenging)」という表現を「不可逆的(irreversible)」に置き換えるよう提案し、参加者も同意した。

サウジアラビア、中国、英国は、このパラグラフは極めて高い気温上昇のリスクの考察に限定されるべきだと主張した。セントルシア、ドイツ、ジャマイカ、オーストリア、スウェーデン、ベルギー、ツバルは、より低い気温上昇であってもそれに伴うリスクの例を挙げるよう求めた。スイスは、WGsを横断して一貫性があるようにするため、気温ではなく、WGI報告書で用いられたRCPsへの言及を提案した。スウェーデンは、この表現をパラグラフの序文に移動させるよう提案し、転換点を超えさせる気候変動のレベルがどのくらいか、正確なレベルは不確実なまま残されているが、地球系あるいは人間社会と自然のシステムの相互作用が転換点を超える可能性は、GHG濃度の高まりと共に高くなると述べた。メキシコは、表SPM.4において、強力かつ正確な影響の例が示されていると指摘した。ボリビアは、1850-1950年の気温の比較を脚注に入れるよう求めた。

サウジアラビアは、このパラグラフは文章ごとではなく、一つのパッケージとして検討されるべきであり、産業革命前と比較し4℃の気温上昇に焦点をあてておくべきだと繰り返し、スイスはこれに反対した。非公式協議の後、参加者は、低い気温上昇から高い気温上昇へとの記述の順序付け、及び転換点への言及方法について議論した。承認されたパラグラフは次のとおり:「温暖化の程度は、深刻で広範、不可逆的な影響の可能性を増大させる;一部のリスクは、産業革命前のレベルより1-2ºCの上昇でも相当大きくなる;産業革命前比で4℃もしくはそれ以上、世界の平均気温が上昇する場合、世界の気候変動のリスクは、高いから極めて高いものとなり、特に、相当数の生物種の絶滅、食糧安全保障に対する大きなリスク、一部の地域において季節により通常の人間の活動を行う場所としては居住不可能になる可能性が含まれる;地球系において複数以上の転換点を超えることに伴うリスクは、気温の上昇と共に高まる(magnitudes of warming increase the likelihood of severe, pervasive and irreversible impacts; some risks are considerable at 1-2ºC above preindustrial levels; global climate change risks are high to very high with a global mean temperature increase of 4ºC or more above preindustrial levels and include, inter alia, substantial species extinctions, large risks to food security, and the potential for some areas to become seasonally uninhabitable for normal human activities; and the risk associated with crossing multiple tipping points in the earth system increases with rising temperature)」。

評価ボックスSPM.1:気候系に対する人間の干渉は、部門を横断する主要リスクの概要枠組を示す5つのRFCsを記述し、人間や経済、生態系に対する温暖化及び適応限界の影響を図示する、この評価ボックスに関し、このグループは、序文パラグラフ及び冒頭部分に多少の改定を行った上で合意した、この文章では特に、地球平均気温の変化は1986-2005年レベル比で記述する。

その後、参加者は、特異かつ脅威を受けるシステムに関する最初のRFCについて議論した、このRFCは次の通り論じる:当該システムでは気候変動からのリスクがある;温暖化が約1°C加わるごとにリスクは増加する;多数の生物種及びシステムは、2°Cの温暖化で極めて高いリスクに曝される。議論の大半は、現在及び将来のリスクを説明するため、1986-2005年比の気温変化を用いるかどうか、さらに米国の提案にあるとおり「最近の気温を上回る(above recent temperatures)」という表現を使うかどうかに関するものであった。オーストリアと米国は、1-2°Cの温暖化への言及は、継続的気温上昇を反映しようとするものであり、リスク増大での閾値を示すものではないと強調した。サウジアラビアは、気温上昇の比較対象は産業革命前のレベルとすべきであると促し、これにより既に直面しているリスクの説明がつくとし、「最近の気温(recent temperatures)」を特定する言及に反対した。スペインは、WGIでは1986-2005年のベースラインを使用し、産業革命前からの温暖化と1986-2005年ベースラインとの違いに言及したことを想起した。共同議長のFieldは、WGs間の一貫性保持の重要性を強調し、全ての評価は最近の気温に基づくものだと繰り返した。ルクセンブルグは、WGI SPMの表現、すなわち1850-1900年から1996-2005年で観測された温暖化は0.61°Cであるとの表現を付け加えるよう提案した。このグループは、これを脚注に入れることで合意したが、サウジアラビアは、「最近の気温を上回る(above recent temperatures)」という表現の削除を条件とした。この削除は認められたが、ノルウェーは、冒頭部分で既に1986-2005年ベースラインに言及していると繰り返し述べた。

極端な天候現象のRFCに関し、英国は、極端な現象の「一部(some)」のタイプに伴うリスクは気温上昇と共に増加するとの文章に疑問を呈し、「全ての(all)」極端な現象に伴うリスクは気温上昇と共に増加すると指摘した。CLAは、極端な現象の一部のタイプについては十分なデータがないと述べた。英国は、それは発生する可能性があるリスクについての記述ではなく、むしろ評価を受けたリスクについての記述だと述べた。この文章は、改定なしで合意された。

影響の分布に関するRFCについて、英国は、リスクの分配は不均一であり、一般に「低、中間、高所得国(low-, middle- and high-income countries)」の「不利な状況(disadvantaged)」にある人々及びコミュニティーにおいて「最大(greatest)」であるとの文章に懸念を表明し、この分類に適合しない国が存在するかどうかを問うた。さらに同代表は、「不利な状況(disadvantaged)」という表現を用いるのが適切かどうかを問うた。CLAsは、「全ての国(all countries)」とし、「不利な状況の(disadvantaged)」を「脆弱かつ曝露された(vulnerable and exposed)」に置き換えるよう提案した。スイスはこの提案に反対し、リスクは脆弱性と曝露を構成すると定義されており、この文章は理由づけの堂々巡りだと表明し、リスクが最も大きい人々とは、最大のリスクを抱える人々だと述べた。米国は、セントルシアとフィリピンの支持を受け、不利な状況の人々は脆弱かつ曝露された人々に限定されないと述べ、変更案に反対した。中国は、リスクは一般に低緯度及び開発の遅れた地域で最大になるとの表現を希望した。メキシコは、この文章ではLDCsについても取り上げるべきだと述べた。米国は、この文章はリスクの分配は不均一であり、最も経済的に弱い状況の人々に最も大きなリスクを課すのが通常であるという事実を薄める表現だとして懸念を表明し、ニュージーランドとEUはこれを支持したが、アルゼンチンは反対した。メキシコは、リスクと脆弱性は必ずしもリスクへの曝露に依存するわけではなく、対応能力についても議論すべきだと述べた。共同議長のFieldは、「全ての開発レベルにある全ての国(all countries at all levels of development)」を用いるよう提案し、参加者もこれに同意した。タンザニアは、「最大(greatest)」を「より大きい(greater)」に置換するよう提案し、参加者もこれに同意した。一部では、次の文章に関する議論を続けた:「一部の国における地域作物生産及び水資源に対するリスクに基づく場合、2℃を超える追加温暖化のリスクは高い(based on risks for regional crop production and water resources in some countries, risks are high for additional warming above 2ºC)(確信度は中程度)」。英国は、リスクを特定することの重要性を強調し、米国もこれを支持した。米国は、基礎報告書本文の文章に記述するとおり、収穫率減少や水不足のリスクに言及するよう提案し、参加者もこれに同意した。影響の配分に関し、ベルギー、スイス、英国からは明確化を要請し、スイスはこれを受けて「不均等に配分された影響のリスクは高い(risks of unevenly distributed impacts are high)」との記述を提案し、参加者もこれに同意した。

世界の集約的影響に関するRFCについて、参加者は、次の文章を議論した:「世界全体の経済及び地球の生物多様性に対するリスクは、1-2℃の追加温暖化において中程度であり(確信度は中程度)、3℃の追加温暖化では高い、これは経済的影響のリスクは温暖化依存性が高く(確信度は低い)、生物多様性の喪失拡大に伴う生態系物品及びサービスの損失(確信度は高い)を反映する(risks to the overall global economy and Earth’s biodiversity are moderate for additional warming between 1-2°C (medium confidence) and high around 3°C, reflecting warming-dependent increases in risks of economic impacts (low confidence) and extensive biodiversity loss with concomitant associated loss of ecosystem goods and services (high confidence))」 。サウジアラビア, オーストラリア、米国は、この文章における異なる確信度の混在について質問した。CLAsは、この違いは二つの異なる文献類、すなわち生物多様性と経済に関する文献が関係するためだと説明した。CLAsは、研究では特定の影響について見解が分かれている(このため確信度は低い)が、その動向軌跡では見解が一致している、このため、たとえ文献のデータポイントからすると関係する確信度が低い場合でも、気温の上昇に伴いリスクが高まるのは明らかだと指摘した。英国、米国、オーストラリアは、生物多様性と経済の文章を分けるよう提案した。ベルギーとベネズエラは、集約的指標の保持を支持した。米国はオーストラリアと共に、3ºCの気温上昇における経済的影響に関する知識は少ないが、それはリスクがないことを暗示するものではないとする基礎報告書本文の章の表現を用いるよう提案した。

CLAsは次の文章を提案した:「1-2℃の追加温暖化においては、世界の集約的影響のリスクは中程度であり、これは地球の生物多様性及び世界経済への影響を反映する(確信度は中程度)。生物多様性の喪失拡大及びこれに伴う生態系物品及びサービスの損失は、3℃近くでは高いリスクを生む(確信度は高い)が、3℃を超える場合の経済的集約影響については知識が少ない(Risks of global aggregate impacts are moderate for additional warming between 1-2ºC, reflecting impacts to both Earth’s biodiversity and the overall global economy (medium confidence). Extensive biodiversity loss with associated loss of ecosystem goods and services results in high risks around 3ºC (high confidence), but little is known about aggregate economic impacts above 3ºC)」。CLAsは、この文章における「中程度(moderate)」とは、検知可能かつ気候変動への起因可能を意味することを想起した。ノルウェーは、脚注に「中程度(moderate)」の定義を入れるよう提案したが、サウジアラビアはこれに反対した。非公式グループでの協議後、参加者は、次の文章で同意した:「1-2℃の追加温暖化では、世界の集約的影響は中程度であり、これは地球の生物多様性及び世界経済全体の両方での影響を反映する(確信度は中程度);生物多様性の喪失拡大及びこれに伴う生態系物品及びサービスの損失は、約3℃の追加温暖化において高いリスクを招く(確信度は高い);集約的経済損害は、気温の上昇と共に加速化する(証拠は限定的、意見の一致度は高い)しかし、約3℃またはそれ以上の追加温暖化については、数件の量的推計が終了したに過ぎない(global aggregate impacts are moderate for additional warming between 1-2°C, reflecting impacts to both the Earth’s biodiversity and the overall global economy (medium confidence); extensive biodiversity loss with associated loss of ecosystem goods and services results in high risks around 3°C additional warming (high confidence); and aggregate economic damages accelerate with increasing temperature (limited evidence, high agreement), but few quantitative estimates have been completed for additional warming around 3°C or above)」。 IPCC議長のPachauriは、ルクセンブルグ及び英国の支持を受け、SREXで以前合意された文章を脚注に加えるよう提案し、災害による損失の推計値は下限の推計値であり、これは人命や文化伝統、生態系サービスの損失など、多数の影響の価値化、貨幣価値化が困難なことから損失の推計値に十分反映されないためであると指摘した。参加者は、脚注に入れることで合意した。更なる議論及び編集上の変更、さらに用語集に所得の定義を追加し、この文章は承認された。

大規模単独現象のRFCに関し、カナダは、突発的、劇的、不可逆的変化のリスクがある自然系及び生態系に関する文章から「劇的(drastic)」を除去するよう要請した。オーストリアは、「転換的(transformational)」という用語の使用を提案し、オーストラリアは、「広範囲(far-reaching)」を提案した。ノルウェーは、WGI報告書との一貫性を求め、WGIでは「突発的(abrupt)」と「不可逆的(irreversible)」としていると述べた。ペルーは、「劇的(drastic)」は規模を指しているのかと尋ね、CLAは、これは速度を指しており、このため過度な表現であることを明らかにした。この文章は、「劇的(drastic)」を削除し、受諾された。温暖な水域におけるサンゴ礁及び北極の生態系での不可逆的なシステム変換の経験という早期警告型兆候に関する文章について、スイスは、「北極の生態系(Arctic ecosystems)」の意味を尋ねた。CLAは、これは氷や陸上のシステム、人間などを組み合わせたシステムを指すと説明した。この文章は変更なしで受諾された。

気温上昇に伴うリスクの増加及びグリーンランドなどでの氷床の喪失による大規模かつ不可逆的な海水面上昇の可能性に関する文章は、多くの議論を呼んだ。日本とタンザニアは、1-2°Cの気温上昇に伴うリスクの不均衡な増加を明確にするよう求めた。CLAは、WGIIは最後の間氷期における海水面に関するWGIの結論を取り入れており、このことは1-2℃の気温上昇でリスクが大きく増加することを意味すると説明した。日本、中国、オーストラリアは、WGIとWGIIが用いた温度範囲の不一致を指摘した。CLAは、WGIは極地の温度(少なくとも2℃の温暖化)を指すが、WGIIの記述は、世界の平均気温(1-2℃の温暖化)を指すと説明した。ルクセンブルグは、世界の平均海水面の上昇は「7メートルまで(up to 7 meters)」と特定するよう提案した。

この文章は、WGI報告書に合わせ、高いリスクについては産業革命前より1-4℃の気温上昇と特定し、リスクの不均衡な増加については1986-2005年比1-2℃の上昇と特定した。オーストラリア、米国、EU、スウェーデン、その他は、2つの異なる時間枠を用いることに反対した。参加者は、WGIとWGII個々の評価で用いられたベースラインが異なる(WGIでは産業革命間のレベル(preindustrial levels)、WGIIでは1986-2005年)ことから、両者の数値を一致させる必要があるかどうか議論した。米国は、二つのベースラインの関係を明確にするため、脚注に文章を追加するよう要請した。ニュージーランドは、RFCsの冒頭で、既にRFCsで用いられる温度は全て1986-2005年のベースラインに基づくと記述していることを想起し、脚注は変更されることなく残された。

追加の温暖化で気温が1℃から2ºC上昇する場合の不均衡なリスクを記述する文章に関し、米国は、英国の支持を受け、「最近の温度を超える(above recent temperatures)」を追加するよう提案した。最終の文章では、1-2℃の追加の温暖化で気温が上昇するばあい、リスクは不均衡な形で増大し、3℃を超える場合は、高いリスクとなる、これは氷床の喪失による大規模かつ不可逆的な海水面の上昇の可能性があるためであると指摘する。さらに、一定の閾値を超える温暖化が持続する場合、グリーンランドの氷床のほぼ完全な喪失が、1千年紀もしくはそれ以上の期間内に発生し、7m以下の世界の平均海水面上昇に寄与すると記述する。この文章には、説明的な脚注が付され、現在の推計によると、この閾値は産業革命前と比し約1℃を超えるが4℃を下まわる地球平均温暖化が持続する場合であることを示している。WGI SPMを参照いただきたい。

評価ボックスSPM.1 1:気候関連リスクに関する世界的展望に関し、セントルシアは、気温の変化が低い場合を含める一定範囲の温度シナリオを設定することが重要だと強調した。中国は、「産業革命前(preindustrial)」という用語のあいまいさに懸念を表明し、政策決定者が混乱しないよう、WGIで用いられた用語と一貫性をもたせることを求めた。オーストラリアは、この図は非対応リスクを示し、一部の地域では適応によりリスクを緩和する可能性があることを、解説に記載すべきだと述べた。この懸念に対応し、ノルウェーは、この図を基礎報告書本文の図19.4と合体させるよう提案した。英国は、関係するリスクレベルを正確に反映する図であるかどうか疑問視し、保守的な予想にするよう提案した。CLAは、執筆者は信頼性を保持する目的で、保守的な手法をとったと述べた。マリとガーナは、この図は単純なものにし、説明しやすいものにする必要があると述べた。サウジアラビア、ボリビア、インドは、使用する目盛りは最近の温度に基づいており、産業革命前のベースラインに基づいていないのは何故かと尋ねた。エクアドルは、この図は代表的なものではないとして、削除を希望したが、スロベニアとスペインはこれに反対した。温度の目盛りは産業革命前ベースラインに基づかせるべきだとのサウジアラビアの懸念表明に対し、オーストリアは、最近の排出量のベースラインは、政治的なベースラインではなく、科学的な根拠があると述べた。

サウジアラビアの懸念を考慮に入れるべく、IPCC副議長のJean-Pascal van Yperseleは、図の右側に温度計の情報を示すよう提案した。コスタリカは、代表的な濃度経路(Representative Concentration Pathways (RCPs))の用語は全ての政策決定者が熟知しているわけではないと指摘し、その説明を加えるよう提案し、スウェーデンとスイスもこれを支持した。スイスは、この図の重要性と価値を強調し、独立したそれ自体で説明のつく図として使うため、必要とされる全ての情報を含めるよう促し、図自体にRCPsまたはシナリオの説明を含めることを提案した。

サウジアラビアは、Y軸を「1850-1900年」ではなく「産業革命前」とラベルするよう要請した。WGI共同議長のThomas Stockerは、「産業革命前」への言及は、「近似(approximation)」という用語の使用を必要とすると述べ、オーストリアとオーストラリアは、これを脚注に含めるよう提案した。参加者は、Y軸を次の表題に、その説明を脚注に入れることを検討した:「世界平均気温の変化(産業革命前レベルの近似値として1850-1900年と比較した℃)(Global mean temperature change (°C relative to 1850-1900, as an approximation of preindustrial levels))。中国は、1850-1900年であれば早期のデータが利用可能だが、「産業革命前の時点」は1750年前後から始まると指摘する文章にするを求めた。

非公式協議後、参加者は、評価ボックスSPM.1 図1の文章に「産業革命前の時点」の説明を入れることで合意し、この文章は次の通りとなる:「地球表面温度のデータセットで利用可能な最長期間のデータセットに基づき、1850-1900年の期間の平均値及びAR5参照期間(1986-2005年)の平均値との間で観測された変化は、0.61℃(確信度範囲は5-95%、信頼度間隔は0.55-0.67℃)であり、これは1750年以前からの期間とされる産業革命前の期間の後における世界平均表面温度の変化の近似値として用いられる(Based on the longest global surface temperature dataset available, the observed change between the average of the period 1850-1900 and of the AR5 reference period (1986-2005) is 0.61°C (5-95% confidence interval: 0.55 to 0.67°C), which is used here as an approximation of the change in global mean surface temperature since preindustrial times, referred to as the period before 1750)」。

IPCC副議長のvan Yperseleは、ノルウェーの支持を受け、この図と、WGIの作業に基づく「産業革命前」の概念とのリンクを示す脚注の挿入を提案した。サウジアラビアは、脚注を示す*字を付した「1850-1900年」よりも「産業革命前」の用語の使用を希望した。参加者は、脚注を次の通りとすることで合意した:「地球表面温度のデータセットで利用可能な最長期間のデータセットに基づき、1850年から1900年の期間の平均値及びAR5参照期間の平均値との間で観測された変化は、0.61℃(確信度範囲は5-95%、信頼度間隔は0.55-0.67℃)[WRI AR5 SPM.2.4]であり、これは産業革命前の期間以後の世界平均表面温度の変化の近似値として用いられる(Based on the longest global surface temperature dataset available, the observed change between the average of the period 1850 to 1900 and of the AR5 reference period is 0.61°C [0.55-0.67°C][WRI AR5 SPM.2.4], which is used here as an approximation of the change in global mean surface temperature since preindustrial times)」。

参加者はこの図に次の変更を行うことで合意した:気温の変化を「産業革命前」ベースライン比ではなく、「1850-1900年」比とする;RCPsを説明する文章を解説文に付け加える;IPCC副議長のvan Yperseleが提案するとおり、温度計を付す。このような変化を取り入れて改定された図が提示され、これにはスロベニアの提案通りY軸に「世界の温度変化(global temperature change)」というラベルが付け加えられ、1850-1900年比の世界平均気温の変化を示す既存の温度計に合わせ、1986-2005年レベル比の世界の平均気温変化を示す温度計も加えられた。ドイツ、オースリア、スウェーデンは、産業革命前比2℃及び4℃の気温変化を示す点線の除去に反対した。エチオピアとサウジアラビアは、「低い(low)」ではなく「ニュートラルな(neutral)」リスクレベルの利用に反対した。ノルウェーは、リスクレベルを区別する基準について説明を挿入するよう求めた。共同議長のFieldは、類似のリスクの確率や結果の組み合わせは多数あり、リスクを「低い(low)」から「高い(high)」の間で示す必要がある、「低いリスク(low risk)」とは気候変動によるリスクがニュートラルもしくは無であることを意味し、「高いリスク(high risk)」とは深刻な影響、顕著な不可逆性、または気候関連の害の持続、限定的な適応能力を意味すると説明した。オーストラリアは、この説明を解説文の中に入れるよう求めた。

セントルシアは、この図において、1.5℃の温度間隔を示す点線を含めるよう要請し、マリ、ドミニカ、ジャマイカ、ツバル、キューバ、フランス、その他はこれを支持したが、オーストラリアは反対した。同代表は、これはUNFCCCの2015年レビューに政策関連性があると指摘した。ドイツは、1.5℃の点線を含めることを支持し、2℃と4℃の点線にこの点線を加えることは政策規範的ではないと述べた。英国は、スロベニアの支持を受け、全ての点線を除去し、科学的にニュートラルなものにするよう提案した。CLAsは、0.5℃きざみの全ての点線を加えるよう提案し、ベルギー、米国、オーストリア、その他はこれを支持したが、セントルシアは反対した。非公式協議後、参加者は、全ての点線を除去し、Y軸に0.5℃間隔のマーカーを挿入することで合意した。

サウジアラビア、バハマ、ベネズエラ、スロベニア、ドイツ、ロシアは、図の中での「ニュートラルな(neutral)」リスクレベルへの言及に疑問を呈した。CLAは、「ニュートラル(neutral)」は検知と起因に結び付くことを明らかにし、執筆者が評価できる影響が無いことを意味すると述べた。ドイツは、既に極端な天候現象による影響があると指摘した。CLAは、それらの影響はグラフの中に含まれていると説明し、参加者は、「ニュートラル(neutral)」を「検知不能(undetectable)」に置き換えることで合意した。

ロシアは、気温上昇ゼロでの追加リスクに関する説明を求めた。CLAは、ベースラインは1986-2005年の期間に関するもので、この期間においては現象を気候変動に起因できたが、現時点に関するベースラインではないと明言した。WGI報告書と一貫性をもたせるため、参加者は、1986-2005年以後の0.78°Cという平均気温上昇値を示すマーカーを付け加えることで合意した。

この図を紹介する文章の大半は、コメントなしで承認されたが、「深刻な影響のリスクが極めて高い(very high risk of severe impacts)」ことに関係する「限定的な適応能力(limited adaptive capacity)」への言及では、議論が行われた。サウジアラビアとマリは、「極めて高いリスク(very high risk)」の分類のみが限定的な適応能力とリンクしているように見えるため、ここでのリンクは誤解される可能性があるとして懸念を表明した。CLAは、「極めて高いリスク(very high risk)」の分類は、適応ポテンシャルを上回るものと定義されると指摘した。メキシコは、「極めて高いリスク(very high risk)」が適応能力を超えるものと定義されるのであれば、図の中で適応能力を「限定的」と示すことには問題があると指摘した。

B-2.部門別のリスクと適応のポテンシャル:このセクションの冒頭において、参加者は、モデル、予測、将来シナリオあるいは専門家の判断に基づく表現に関し、相対的な確実性を表す最善の方法が何かについて議論した。受諾された冒頭部分は次のとおり:気候変動は気温の気候関連リスクを増大させ、自然系及び人間のシステムに新たなリスクを加えると予想される;これらのリスクの一部は、特定の部門または地域に限定されるが、他のリスクには波紋効果の可能性があり、さらに気候変動には、程度は劣るが、一部の気候関連リスクを軽減し、有益な可能性があることも予想される。

淡水資源:非公式グループは協議を行い、特に次のとおりの文章にすることで合意に達した:世界の人口のうち水不足の状態となる割合、及び主要な河川の氾濫の影響を受ける割合は、21世紀中の温暖化レベルで増大し、21世紀における気候変動は、乾燥亜熱帯地域の大半において再生可能な表面水及び地下水資源を大幅に削減し、他の一部の地域においても、程度は劣るが同様な削減を招き、水をめぐる部門間の競争が激化する;現在乾燥化にある地域では、RCP8.5において、21世紀末までに干ばつの頻度が増加する可能性が高い;高緯度では再生可能な水資源が増加する;気候変動は、多数の要素を原因として、生水の質を劣化させ、飲料水の質にリスクを課す;適応型水管理技法は、気候変動を原因とする不確実性への対応を助ける可能性がある。

陸上及び淡水の生態系:陸上及び淡水の生態系に関する文章で承認されたものは、特に次のとおり記述する:陸上及び淡水の両方の生物種の大部分は、予想される気候変動の下で、絶滅のリスクの増加に直面する、特に気候変動が他の抑圧要素と相互に作用する場合にはそうである;中から高の排出シナリオに伴う気候変動の大きさ及び速度は、陸上及び淡水の生態系において、突然の、かつ不可逆的な地域規模の変化をもたらすリスクが高い。参加者はさらに次の図を採択した、SPM.5:予想される気温の移動速度と比較し、異なる景観を横断して生物種群が移動できる最大速度。

沿岸システム及び低地:今世紀中及びそれ以後の海水面上昇のため、沿岸システム及び低地は、悪影響を経験する場合が増すと記述するパラグラフに関し、スイス、米国、カナダ、サウジアラビアは、悪影響を経験すると「見られる(will)」ではなく「予測される(are projected to)」とすることを提案した。オーストラリアとバハマは、「予測される(projected)」は十分決定的な表現とは言えないと指摘し、これに反対した。参加者は、両方の意見に配慮した表現で合意した。

象牙海岸とガーナは、適応がない場合、特にアジアにおいて、2100年までに数億人もの人間が沿岸の洪水の影響を受け、土地の流失で移住することになるとする文章について、アフリカに言及するよう求めた。一部の参加者はこの表現に懸念を表明し、米国は「効果的な(effective)」適応がない場合とし、アジアを特定する表現の削除を提案した。オーストラリア、カナダ、米国は、この文章の正確さ、さらにはその暗示するものについて、懸念を表明した。参加者は、この文章を削除することで合意した。

参加者は、沿岸においてリスクに曝されると予想される人口及び資産、さらには沿岸生態系に対する人為的圧力は、人口の増加、経済発展、及び都市化を原因として、今後数十年間、大きく増加するとの文章表現で合意した。

参加者は、一部の低地開発途上国及び小島嶼諸国が直面する影響に関し、国内総生産(GDP)の数%に及ぶ関連の損害や適応コストがかかるとする文章で合意した。

海洋システム:参加者は、海洋システムに関する文章を承認した、この文章では特に次のとおり記述する:気候変動に敏感な地域においては、気候変動を原因とする世界の海洋生物種の再配分及び海洋生物多様性の削減は漁業生産性の持続に課題を課す;中から高の排出シナリオにおいては、海洋システムに対し、海洋の酸性化が相当なリスクを課すことになる。さらに参加者は、SPM.6:漁業における気候変動のリスクについて、乱獲された魚類の数(「約1000種(approximately 1000)」ではなく1060種とする)を変更するとの米国の提案、及びμatm(マイクロ大気)を明確にするため、「大気中のppmとほぼ同等(approximately equivalent to ppm in the atmosphere)」との記述を挿入するとのスウェーデンの提案に基づく変更を加え、採択した。

食糧安全保障及び食糧生産システム:適応がない場合、主要作物に対し予想される気候変動が与える影響に関する文章について、CLAは、タンザニア及び英国の質問に応え、次のように説明した:特定の作物及び地域に対する予測に限定するなら確信度は低下する;局地的な温度の使用は文献と合致させている。ドイツは、参照温度として2℃を用いた理由を尋ね、CLAは、この数値は分析した全ての作物を控えめに反映させるためのものだと説明した。この文章は、多少の文章上の変更を行い、承認された。

英国、スロベニア、オーストリアを含む多数の参加者は、気候変動は気候変動なしのベースラインと比較し、収穫率を低下させるとの文章について、政策決定者にとり透明性に欠ける文章であると指摘した。参加者は、次の文章を盛り込み、明確化を図ることで合意した:「予想される影響は作物や地域を横断して異なり、適応シナリオによっても異なる、2030-2049年の期間における予測の約10%では、20世紀後半と比較して10%以上の収穫率の増加を示すが、予測の約10%では25%以上の収穫率の低下を示す。」英国、オーストラリア、セントルシアは、農業分野の適応で収穫率が改善するとの文章は、誤解を招くと述べ、この部分は削除された。

局地的な気温上昇と食糧需要の増大の組み合わせは世界のそして地域の食糧安全保障に大きなリスクを課すとする文章について、長時間議論された。インドは、局地的な温暖化は地球温暖化を上回るのが通常であると指摘した。ドイツは、「食糧システムの非生産要素(non-production elements of the food system)」を明確にするよう提案した。参加者は、次の文章で合意した:「食糧安全保障の全ての要素は、気候変動の影響を受ける可能性があり、この中には、食糧へのアクセス、利用、価格の安定性が含まれる(All aspects of food security are potentially affected by climate change, including food access, utilization, and price stability)(確信度高)」。

食糧安全保障上のリスクに関する文章について、サウジアラビアは、「熱帯(tropical)」を「低緯度(low latitudes)」地域に置き換え、食糧安全保障の全要素が影響を受けるとの記述にするよう提案した。参加者は次の文章で合意した:「食糧安全保障に対するリスクは低緯度地域において大きいのが一般的である(Risks to food security generally are greater in low-latitude areas)」。ノルウェーは、食糧の安全を、海洋漁業での漁獲ポテンシャルの変化と結びつけるよう提案し、同意された。

SPM.721世紀における気候変動を原因とする作物収穫率で予想される変化のサマリーに関し、ブラジルは、この図は世界の合計生産量を指すものかどうかを質問し、スロベニア、ガーナ、スウェーデンは、適応ありの場合となしの場合を分けていないことに懸念を表明した。 CLAは、この図は世界の合計生産量を指すものではないと確認し、この図は適応ありの場合となしの場合を正確に区別できていないと説明し、そうするためには、追加の図が必要になるだろうと述べた。スロベニアは、この図は適応が収穫率に影響しないことを暗示しており、誤解を招く可能性があと警告した。英国は、この図は、食糧に対するリスクが気温でどのように変化するかを記述していないとして懸念を表明し、オーストリアと共に、収穫率削減のリスクの情報は重要であると強調した。オーストリア、インド、スウェーデンは、解説文に説明を加えるよう提案した。共同議長のFieldは、この図はデータの総合評価を示すものであり、分解されると、組織だった結論を引き出す能力が失われる可能性があると説明した。IPCC議長のPachauriは、この図は希望する全てのものを提供するわけではないが、将来、何が期待されるかを優れた形で広範に示すものだとし、これは政策決定者にとり価値のあるものだとの意見を述べた。英国は、次の文章を加えるよう提案し、参加者もこれに同意した:「地球の平均気温が4℃またはそれ以上、上昇するシナリオにおける作物収穫システムへの影響を考察した研究は比較的数が少ない(Relatively few studies have considered impacts on cropping systems for scenarios where global mean temperatures increase by 4°C or more)」。参加者は、この図を承認した。

都市部:都市部に関するセクションは、エクアドル、ベネズエラ、ノルウェー、パナマからの追加事項を加えた後、承認された。この文章は次のとおりである:世界の気候変動リスクの多くは都市部に集中する;回復力を築き、持続可能な開発を可能にする措置は、適応を加速化できる;熱ストレス、極端な降水現象、内陸及び沿岸部の洪水、土砂崩れ(エクアドル、ベネズエラ、ノルウェーによる挿入)、大気汚染(ノルウェーによる挿入)、干ばつと水不足及びび昆虫媒介性疾病(パナマによる挿入)は、都市部にリスクを課す;基本インフラを欠く場合、劣悪な質の住宅及び曝露された地域ではリスクが増大する;基本サービスの欠陥を削減し、住宅を改善し、回復力のあるインフラシステムを構築するなら、脆弱性及び曝露は大きく削減できる。さらに参加者は、都市部の適応では特に効果のあるマルチレベルの都市部リスクガバナンス及び政策やインセンティブの調整が有益であり、低所得グループ及び脆弱なコミュニティーの能力、発言力、影響力の増大は特に適応において有益であるとすることで合意した。

農村部:このセクションに関し、ボツワナは、水の供給への影響に関する文章に「利用可能性(availability)」という言葉を加えるよう提案した。承認された文章は特に次のように記述する:将来農村部での主要な影響が近未来及びそれ以後で予想されるのは、特に、水の利用可能性や供給及び食糧安全保障への影響を原因とする;これらの影響は、農村部の貧困層に不均衡な影響を与えることが予想される、たとえば、近代的な農業インプットへのアクセスが限定されているものなどの貧困層である;農村部の意思決定の概念に配慮する政策であれば、さらなる適応が起きる可能性がある;貿易改革及び投資は、小規模農場の市場アクセスを改善する可能性がある。

主要経済部門及びサービス:参加者は、経済多角化を強調するとのサウジアラビアの提案に同意した上で、このセクションを承認した。最終的な文章は次のとおり:特に、人口、所得、規制及びガバナンスでの変更といった推進要素の影響は、気候変動の影響と比較し大きいと予想される;気候変動は、資源や技術プロセス及び関係する場所により、エネルギー資源及び技術に異なる影響を与えると予想される;深刻そして/または頻度の高い極端な天候現象そして/または危険のタイプは、多様な地域において損失及び損失の多様性を増大させ、安価な保険填補を提供する保険システムに課題を課し、その一方でリスクベースの資本を増やすことが予想される;大規模な官民のリスク軽減イニシアティブ及び経済多角化は、適応行動の例である。

人間の健康:このセクションに関する議論では、主にCLAsによる明確化及び編集上の修正提案が関係した。参加者は、特に次のように記述する文章で合意した:予想される気候変動は、既に存在する健康問題に影響を与え、多くの地域、特に開発途上国において、不健康を増大させる結果となる。

人類の安全:サウジアラビア、米国、英国の質問に対し、CLAsは、気候の変動性と対立を関係づける証拠には複数以上の線があると指摘する文章の根拠を説明した。さらに次の文章の明確化が求められた:「多数の国家の重要インフラ及び領域上の統合性に関する気候変動の影響は、国家安全保障政策に影響すると予想される(the impacts of climate change on the critical infrastructure and territorial integrity of many states are expected to influence national security policies)」。参加者は、些少な編集上の修正を行い、このセクションについて合意した。

生活と貧困:参加者は、気候変動の影響は経済成長を遅らせ、貧困の削減を困難にし、食糧安全保障をさらに損なうとの文章で合意し、気候変動の影響は貧困を悪化させると見られるとの文章でも合意した。さらに、食糧の正味の購入者である貧困世帯は、食糧価格の値上がりで部分的な影響を受ける可能性があり、保険プログラム、社会的な保護措置、災害リスク管理は、貧困層及び限界貧困層の人間の長期的な生活回復力を強化する可能性があるとの文章でも合意した。

B-3. 地域の主要リスク、及び適応ポテンシャル:冒頭部分に関し、オーストリアは、次の通り指摘する文章の追加を要請した「リスク評価は、将来行われる可能性がある適応行動を考慮に入れていない(the assessment of risk does not take into account adaptation action that may be taken in the future)」。参加者は、文章のいかなる場所で適応と緩和が出てくる場合でも、「適応と緩和(adaptation and mitigation)」の順序にすることで合意した。

地域のリスク及び限定的な利益ポテンシャルを含める拡大サマリーへの参照を勧める文章について、オーストラリアとカナダは「限定的(limited)」な利益可能性の削除を求めた。この要請は受諾され、パラグラフは承認された。

評価ボックスSPM.2:地域の主要リスクに関し、参加者は、社会経済経路の違いから、主要リスク及びリスクレベルが地域を横断して異なることに関する文章について議論した。タンザニアは、「リスクの受け止め方(risk perception)」という用語は、リスクレベルを決定するには適切でないとして懸念を表明した。共同議長のFieldは、受け止め方というのは、世界の異なる地域でリスクがどう動くかを決定する上では重要な要素であると答えた。カナダは、リスクレベルが「一定時間内で(over time)」異なるとの表現を提案し、これが受諾された。アフガニスタン及びパナマは、「回復力(resilience)」への言及挿入を提案した。共同議長のFieldは、回復力の重要性を認める一方、回復力は決定要素というよりは結果であると述べた。参加者は、残りの文章に関し、提示されたとおりで合意した。

評価ボックスSPM 2 1:気候変動による主要な地域リスクおよび適応と緩和によりリスクを軽減する可能性に関し、共同議長のFieldは、この表はSPMにおいて地域情報を示す基幹情報の一部であると指摘した。共同議長のBarrosは、地域規模での気候情報の相当量が現在利用可能になっているとし、これは一貫性の高い図を示すが、異なる地域の貢献分では大きな乖離が残ると述べた。この表では、世界の各地域において3つの主要リスクを設定し、それぞれのリスクについて、適応問題と展望を示しており、アイコンは気候推進要素を示し、棒グラフはリスクの時間枠及び適応ポテンシャルを示す。共同議長のFieldは議論を開始し、参加者に対し、リスクを追加することはせず、政策決定者へのメッセージを明確化するよう求めた。参加者は、世界の各地域の主要リスクについて議論し、同時に表に記載する主要リスクと合致する問題や展望についても議論した。

アイコンについても議論し、多様な諸国は、推進要素の一部の定量化あるいは新しい推進要素の追加を提案した。参加者は、異なる地域のリスクを図示したように、アイコンも単純なものにすることで合意した。

アフリカに関し、タンザニアは、マリ、スーダン、ケニア、ボツワナ、ガーナ、ガンビア、チャド、南アフリカと共に、干ばつへの言及がないこと、過剰な採掘や劣化による水資源への複合ストレスに関する主要リスクにおいて、社会経済に与える影響への言及がないことに異議を唱え、ロシア、ニカラグア、サウジアラビアもこれを支持した。その他、欠落が指摘されたのは次のとおり:砂漠化(スーダン);洪水、海水面上昇、サイクロン(ケニア);津波(ガーナ)。IPCC副議長のIsmail El Gizouliは、アフリカに関する情報が欠けている場合、誤解の可能性がある文章よりも、文章を省略する方が良いと指摘した。サウジアラビアとロシアは、砂嵐に関する文章がないと指摘し、この表に暗示するか省略するか検討すべきだと述べた。CLAは、干ばつはアフリカに関する文献から出てきたものではないが、干ばつはこの表に示したとおり、水ストレスリスクでもあり、作物の生産性削減という別な主要リスクの両方の構成要素であると応じた。

マダガスカルは、SPMの別な表に言及し、その表では干ばつを主要な観測された影響の一つとして示していると述べた。CLAsは、「アフリカの干ばつが起きやすい地域では干ばつが悪化する(with drought exacerbated in drought-prone regions of Africa)」との表現を含めることを提案し、参加者も同意した。南アフリカは、水資源ストレスのリスクに関し、適応問題及びその展望として持続可能な都市開発への言及を加えるよう提案し、参加者もこれに同意した。

アフリカでの作物生産性の削減に関する主要リスクについて、共同議長のFieldは、「熱及び干ばつストレスに伴う(associated with heat and drought stress)」作物生産性の削減を特定するよう提案した。タンザニア、マリ、その他は、生活、社会経済的側面、及び生命に対するリスクへの言及を含めるよう提案した。参加者は、生活への言及を加えることで合意した。ボツワナは、農業生産の質への影響に言及することを提案した。CLAsは、文献では生産の質は論じていないと説明した。セネガルは、影響の中で畜産に明確な言及をするよう求めたが、CLAsは、それは食糧安全保障に含まれると明言した。タンザニア、南アフリカ、ガンビア、ケニア、マリ、その他は、適応問題及び展望として観測システムの強化への言及を含めるよう提案し、参加者もこれに同意した。スーダンは、南スーダン、ケニア、スワジランドと共に、適応対応として農林業及び再植林への言及を加えるよう提案した。CLAsは、根拠になる文献が十分でないと述べた。非公式協議の後、参加者は適応展望として、「農学上の適応対応(例、農林業及び保全農業)」を設定する新しい箇条書きを入れることで合意した。

虫媒介疾病及び水媒介疾病における変化のリスクに関し、南アフリカは、適応問題及び展望として持続可能な都市開発を含めるよう提案し、参加者もこれに同意した。

欧州に関し、非公式グループは、湿地回復及び「欧州の河川流域管理の実施及び欧州令に従う総合水資源管理の実施(implementation of European river basin management and integrated water resources management following European directives)」に関する文章を提示した。IPCC副議長のEl Gizouliは、「欧州令(European directives)」への言及に懸念を表明し、カナダと共に、政策規範的表現の使用に反対して警告した。オーストリアは、EUの支持を受け、「欧州の法制(European legislation)」の使用を提案し、スイスは、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国と共に、「欧州の法律(European legislations)」という中立的な表現を提案した。スウェーデンは、欧州の法制への言及を全て削除するよう求めた。オーストラリアは、「欧州内部において、ベストプラクティスを示す実施方法(practices showing to be best practices in the European context)」という表現を提案した。参加者は、「ベストプラクティス(best practices)」の用語使用で合意した。

極地域に関する議論において、ロシアは、北欧及び北部アジアの森林火災に関するリスク分類を、北米に関する表にあるとおり、別の分類にするよう要請した。参加者は、欧州に関するセクションにおいてそのような表現を含めることで合意した。

アジアに関し、洪水の増大という主要リスクにより、インフラ及び居住に広範な損害を招くことについて、インドネシアは、経済的リスクあるいは生活に関する表現を求めた。CLAは、洪水による損害のリスクがある事項のリストに、「生活(livelihood)」を加えることで合意した。日本は、海面上昇や高潮、台風など沿岸地帯のリスクを追加するよう提案した。CLAsは、「特にアジアの沿岸地帯で(particularly in coastal areas of Asia)」を加えることを提案した。インドは、冒頭に「河岸洪水及び沿岸洪水の増加(increased riverine flooding and coastal flooding)」を入れるよう希望し、これに対しサウジアラビアは「都市での洪水(urban flooding)」を追加した。パキスタンは、洪水によるリスクには食糧安全保障及び水の安全保障のリスクも含まれると指摘した。この文章は、これらの追加事項を含めて承認された。対応する適応問題及び展望に関し、インドは、モニタリング及び早期警戒システムの「建設(construction)」を「委託(commissioning)」に変更するよう求めた。サウジアラビアは、別な適応措置として、「回復力構築のための経済の多角化(economic diversification to build resilience)」を含めるよう求めた。共同議長のFieldは、経済多角化及び生活を、脆弱な分野及び世帯を支援する方法の例ではなく、挿入句として指摘することを提案した。サウジアラビアは、「経済多角化(economic diversification)」の適応面での展望に関する別な箇条書きとするよう促し、CLAsとの協議後、参加者はこれに同意した。

死亡率でのリスク増大に関し、インドは、熱関連の死亡率への言及に「寒さ関連の死亡率(cold-related mortality)」を加えるよう要請し、日本、シンガポール、インドネシアと共に、「気温上昇を原因とする虫媒介疾病及び水媒介疾病(vector- and water-borne disease due to increase in temperature)」を加えるよう提案した。CLAは、これに応じて、執筆者は虫媒介疾病の主要リスクを含めないと決定したと述べ、SPMにおける3つの主要リスク決定の基準は、基礎となる文章、確信度、緊急性に基づいていると指摘した。

干ばつ関連の水不足及び食糧不足の主要リスクに関し、パキスタンは、水不足で可能性が高くなる「エネルギー」不足を加えるよう要請した。サウジアラビアは、タジキスタンの支持を受け、砂嵐、水のストレス、人口の増加と組み合わせた水資源の減少、砂漠化を含めるよう求めた。インドは、ヨルダンの支持を受け、地下水の不足を強調した。CLAは、次のように応じた:評価した文献には、エネルギーを主要リスクに含めるだけの記述がない;執筆者は砂嵐について評価を行ったが、これを文章に含めるだけの証拠はなかった;地下水の場合、顕著な変化がある証拠はなく、それが気候変動を原因としているとの証拠もなかったため、評価を受けていない。共同議長のFieldは、文章に記述する「干ばつ関連の水不足(drought-related water shortage)」は、サウジアラビアの懸念を対象とすることを意図したものであり、砂漠化は対応する評価の章の10の主要リスクに含まれていると指摘した。この文章はその後承認された。

インドは、インドネシアの支持を受け、気候回復力のある農業を適応問題に含めるべきだと述べた。参加者は、これを水の効率的な利用の例として含める文章にすることで合意した。

サンゴ礁及び山岳部生態系のコミュニティー構成及び構造の顕著な変化という主要リスクに関するオーストラルアジアのセクションについて、オーストラリアは、焦点を薄めないため、山岳部生態系への言及を削除するよう要請した。CLAは、これを基礎報告書の主要リスクのリストにおけるサンゴ礁の表現に置き換え、主要地域リスク表のアイコンやリスクバーも同様に変更することを支持した。この文章は、このような修正を行い、合わせて適応問題及び展望において記述するサンゴ礁の自然の適応能力の限界及び不足に関する同等の表現も修正した上で、承認された。沿岸インフラに対する洪水の被害の頻度及び強度増加、及びリスクの増大という主要リスクの文章は、コメントなしで承認された。

北米に関し、参加者は、「生態系の十全性喪失(loss of ecosystem integrity)」のリスクへの言及を修正し、「野火を原因とする損失(wildfire-induced loss)」を加えることで合意した。

中南米に関し、ニカラグアは、脅威の一つとして土砂崩れを含めるべきであり、水の利用可能性リスクに脆弱な地域として、農村部を含めるべきだと提案し、参加者もこれに同意した。さらに参加者は、適応の展望として「農村部(rural)」の洪水管理を含めるとのエクアドルの案にも同意した。ニカラグアは、総合水資源管理への言及も適応の展望に含めるべきだと付け加えた。食糧生産及び食糧の質の低下のリスクから生じる適応問題に関し、ボリビアとニカラグアは、伝統知識及び実施方法の利用に言及し、新たな作物種開発が必要な理由として「炭素」を「気候変動」に置き換えることを提案し、参加者もこれに同意した。パナマは、デング熱などの虫媒介疾病の蔓延をリスクの一つとして記載すべきだと述べた。参加者は、人間の健康に対する新たなリスクを加えることで合意した。

極地域に関し、カナダは、「土地所有権の交渉(negotiation of land claim rights)」の適応展望は、「土地所有権問題の解決による適応型共同管理(adaptive co-management through the settlement of land claims)」と明記すべきだと提案し、参加者も同意した。このセクションの残りの部分は提示された通りで受諾された。

小島嶼に関し、参加者は、経済的安定性を失うリスク、及び生態系の機能、水の安全保障及び食糧の安全保障を保持し、強化する展望への言及を加えることで合意した。このセクションの残りの部分は提示された通りで受諾された。

海洋に関し、参加者は、この文章について合意し、海の酸性化をリスクの一つとして含め、「持続可能な」養殖業及び「別な生活様式の開発(development of alternative livelihoods)」を適応の展望に含めると指摘した。このセクションの残りの部分は提示された通りで受諾された。

セクションC. 将来リスクの管理及び回復力の構築:このセクションの序文パラグラフは、SPM.8:解決スペースと共に、提示された通りで受諾された。

C-1. 効果的な適応の原則:「各国政府は、たとえば脆弱なグループを保護する、情報、政策、法的枠組、資金援助を提供するなど、地方政府及び他の国内政府が行う適応努力の調整をすることができる(national governments can coordinate adaptation efforts by local and subnational governments, for example, by protecting vulnerable groups, and by providing information, policy and legal frameworks, and financial support)」との記述文に関し、サウジアラビアは、経済多角化への言及を求めた。インドは、公共投融資への言及を提案した。サウジアラビアは、地方政府及び他の国内政府への言及を削除するよう求めたが、オーストラリアは反対した。

中国は、国際協力への言及を求め、サウジアラビア、インド、ガーナもこれを支持したが、米国とドイツは反対した。地方政府及び民間部門の役割に関する文章について、英国は、市民団体への言及を含めるよう提案し、参加者もこれに同意した。地方政府及び他の国内政府の努力を各国政府が調整するとの文章に関し、参加者は、経済多角化への支援に関する表現で合意した。

「将来の気候変動への適応に向けた第一歩は現在の気候に対する脆弱性と曝露を削減することであり、これには他の目的(後悔が少ない措置と呼ばれる場合が多い)の共同便益を伴う行動によるものも含める(a first step towards adaptation to future climate change is reducing vulnerability and exposure to present climate, including through actions with co-benefits for other objectives (often called low-regrets measures))」と記述する文章に関し、タンザニアとスロベニアは、「現在の気候への曝露(exposure to present climate)」という文節の意味を明確にするよう求めた。ジャマイカとサウジアラビアは、「脆弱性と曝露(vulnerability and exposure)」及び「後悔の少ない措置(low-regrets measures)」に代わる表現を提案し、参加者もこれに同意した。合意された文章は次のとおり:「将来の気候変動に対する適応に向けた第一歩は、現在の気候変動性に対する脆弱性と曝露を削減することである。(確信度は高)戦略には他の目的の共同便益を伴う行動も含まれる。(A first step towards adaptation to future climate change is reducing vulnerability and exposure to present climate variability (high confidence). Strategies include actions with co-benefits for other objectives)」。

参加者は、文章を二つに分け、脆弱性と曝露の削減を第一歩とし、他の目的の共同便益を伴う戦略に関する次のステップと明示することで合意した。共同議長のBarrosは、これらの文章の最初の文末に記述する高い確信度レベルは、このパラグラフ全体に適用されることを明らかにした。サウジアラビアは、「後悔の少ない措置」としての共同便益への言及を削除するよう要請し、この表現は範囲が狭すぎると述べた。二つの文章は、訂正されたとおりで受諾された。

利用可能な戦略及び行動に関する文章について、コンゴ共和国は、他の生物種はそれぞれ独自の適応戦略を有し、それに関する人間の知識は完全ではないと指摘した。この文章は修正なしで承認された。

適応を計画策定及び意思決定に組み込むことで開発と災害リスク軽減とのシナジーを高めることができるとの文章に関し、開発の前に「持続可能な」を加えるとのボリビアの要請は、概念を狭めすぎるとしてCLAが拒否し、この文章は変更なしで承認された。

適応の計画及び実施は、価値観や目的、リスクの受け止め方に左右されるとのパラグラフに関し、ボリビアは「世界の観点(world views)」という概念の導入を提案した。サウジアラビアはこれに反対し、国内の見方に注目する必要があると強調し、「世界の観点(world views)」ではなく「各国の事情(national circumstances)」に言及するよう提案した。オーストリアは、社会及び文化の背景が世界の観点に情報を与えると強調した。メキシコは、「文化的な違い(cultural differences)」を認識するよう提案し、ペルーは「文化的な実施方法(cultural practices)」を提案、ニカラグアは「社会及び文化の背景(social and cultural backgrounds)」を提案した。サウジアラビアは、各国の事情には、特に、価値観、目的、社会的、宗教的、文化的価値観が含まれると強調した。アルゼンチンは、環境や条件は、各国国内でも大きく異なると述べた。先住民の、地方の、そして伝統的な知識は適応の資源であるとの文章に関し、ボリビアは、母なる大地という先住民の世界観を明確に認識するよう求めた。参加者は次の文章で合意した:「多様な利益、状況、社会―文化的内容及び期待感を認識することは意思決定プロセスにおいて有益である可能性がある。コミュニティーや環境に関する先住民の全体的な見方など、先住民、地方、及び伝統の知識システムや実施方法は、気候変動への適応において主要な資源であるが、既存の適応努力ではこれらを一貫性のある形で活用されていない。既存の実施方法にこのような知識の形を取り入れることは適応の効果を高める。(Recognition of diverse interest, circumstances, socio-cultural contexts and expectation can benefit decision-making processes. Indigenous, local, and traditional knowledge systems and practices, including indigenous peoples’ holistic view of community and environment, are a major resource for adapting to climate change, but these have not been used consistently in existing adaptation efforts. Integrating such forms of knowledge with existing practices increases the effectiveness of adaptation.)」

参加者は、決定支援メカニズム、気候関連知識のコミュニケーション、移転、開発、経済的手法の活用に関する文章を承認した。 適応促進の目的で利用できる可能性がある経済的手法を説明する文章に関し、サウジアラビアは、「資金インセンティブ(financial incentives)」の代わりに、「料金及び助成金(charges and subsidies)」の用語を一貫して用いるよう求めた。参加者は、リスク資金メカニズム、最終的な規制当局者、提供者、保証人としての政府の役割、適応の計画策定及び実施を妨げる制約要素に関する文章についても合意した。実施に対する制約について、メキシコ、パナマ、コスタリカは、研究の必要性への言及を求め、スイスと共に、観測やモニタリングを改善する必要性への言及を要請した。参加者は次の文章を加えることで合意した:「他の制約条件には、研究、モニタリング、観測が不十分であること、さらにはこれらを保持するための資金の不足が含まれる(Another constraint includes insufficient research, monitoring and observation and the finance to maintain them)」。さらに参加者は、適応の複雑さの過小評価、貧弱な計画策定、不適応、近未来の対応に関する文章でも合意した。

適応のコストに関し、カナダは、オーストリア及びドイツと共に、文章を背後にある科学データの質に対し、懸念を表明した。カナダは、次の表現を提案した:「推計値は、データ及び手法において重要な欠落そして/または欠点があることから、極めて予備的なものであるが、…世界の適応コストは極めて広範であることを示唆する(確信度は中)(Estimates, which are highly preliminary due to important omissions and/or shortcomings in data and methods suggest global 適応 costs range very broadly from … (medium confidence))」。インド、中国、パナマは、以前に削除された次の文章を戻すべきだと強調した:「最近の途上国における世界的適応コストの推計は、2010年から2050年において年間700億から1千億米ドルの範囲を示している(確信度は低い)(The most recent global adaptation cost estimates for developing countries suggest a range from 70 to 100 US$ billion per year from 2010 to 2050 (low confidence).)」。ルクセンブルグは、相応する気候変動シナリオを記述すべきだと述べた。ノルウェーは、SPMの数値は健全な科学に基づくべきだと述べ、米国は、確信度の低い数値群の利用はSPMでは場違いであると述べた。ブラジル、マリ、ペルー、南アフリカは、この文章の根拠に関する更なる情報及び議論を求めた。非公式グループでの更なる議論の後、参加者は、確証に沿ったものとするため、表現を和らげ、適応コストに関する具体的な数値への言及を削除することで合意した。

最終的な文章では、世界的な適応のニーズと適応のために利用できる資金との間のギャップを示す確証は限定的である(確信度は中)と記述する。さらにこの文章では、世界の適応コスト、資金、投資に関するさらなる評価が必要であるとし、適応の世界コストを推計する研究は、データや手法、対象範囲において欠点があるのが特徴である(確信度は高い)と記述する。

参加者は、共同便益を伴う行動の例として、持続可能な農業及び林業、炭素貯留及び他の生態系サービスのための生態系の保護を追加することで合意した後、緩和と適応の間、及び異なる適応対応における顕著な共同便益、シナジー、トレードオフに関するパラグラフを承認した。

SPM.1:気候変動のリスク管理方法に関し、CLAは、この表は報告書において適応のタイプ及び脆弱性軽減プロジェクトの例を挙げるようにとの要請に応じて記載されたことを明らかにした。同CLAは、次のことを付言した:この表の手法は、区別するよりも重複する形で考慮されるべきであり、記載した例は一つ以上の分類に関連する可能性がある。

非公式グループはこの表について検討し、用語や記述の順序について多少の調整を行うことで合意し、基礎の報告書から数件の例を追加した。参加者は、提示された手法の重複や継続性を見やすくするため、この表の描写を修正したと指摘し、基礎の報告書から数件の例を追加し、解説文に緩和という言葉を入れ、表題からは外したことを指摘した。

更なる変更提案が提起され、この中には生物学的回路(biological corridors)への言及に関するコスタリカの提案、水道料金などの微妙な問題の埋め合わせとして「各国の政策及び状況に則り(in accordance to national policies and circumstances)」を挿入するとのボリビアの提案が含まれた。この文章では何の変更も行われなかった。

SPM.A1AR4以降の科学文献で報告された気候変動に起因するものとして観測された影響に関し、共同議長のFieldは、基礎の報告書のアフリカに関する章では、一部の研究が執筆者の下に届かず、処理されなかったが、その後これらの研究も評価を受けたと述べた。CLAは、サンゴ礁に関する研究を反映させるよう提案し、参加者もこれに同意した、この文章は次のとおり:「熱帯アフリカ地方及びそれを超える海域における、人間の影響を原因とするサンゴ礁の減退(decline in coral reefs in tropical african waters beyond due to human impacts)(確信度は高、気候変動の主要な寄与)」CLAは、スイスからの質問に応え、「人間の影響を原因とする(due to human impacts)」には人為的気候変動も含まれることを明らかにした。

C-2. 気候回復力のある経路と転換:参加者は、持続可能な開発のための気候回復力のある経路は気候変動の緩和において世界が何を達成するかに本質的に関係するものだとの展望に関するパラグラフで合意した、この中には、緩和は適応のために利用可能な時間を延長するが、緩和行動の遅れは将来の気候回復力のある経路に向けたオプションを減らす可能性があるとの文章も含まれる。

気候変動の速度及び規模の拡大は適応限界を超える可能性を高めるとのパラグラフに関し、参加者は、許容できないリスクを回避するため適応行動がとれない場合、限界が発生するとの文章について議論した。英国は、適応限界は必ずしも許容できないリスクを意味するものではないと指摘した。カナダは、限界は自然界のみで起きるわけではないと繰り返した。この文章は、これらの懸念を反映するよう修正された。さらに参加者は特に、許容できないリスクを構成するものは何かに関し、異なる価値観での判断を記述する文章で合意した。登場しつつある影響への現在の対応失敗は持続可能な発展の土台を崩しているとの文章に関し、英国は、「現在の失敗(current failures)」と「登場しつつある影響(emerging impacts)」を詳しく記述するよう求めた。用語に対する他の懸念表明の後、参加者は、「現在の対応失敗(current failures to address)」ではなく、「登場しつつある影響に対する不十分な対応(insufficient responses to emerging impacts)」とする文章で合意した。

適応と緩和を推進し、持続可能な開発を推進するための政治、経済、社会、技術のシステム転換に関するパラグラフについて、ボリビアは、転換の定義に合わせる表現にすべく書き直すよう求めた。サウジアラビアは、政策規範的でない表現にすべきだと強調し、政治的に敏感なものにするため、「メッセージのまとめ直し(repackaging the message)」を求めた。非公式協議の後、参加者は、転換は気候回復力のある経路を可能にし、生活を改善するとし、持続可能な開発達成に向けた各国の国内ビジョンを反映する場合に最も効果があると考えられているとする文章で合意した。

SPM.9:機会の余地と気候回復力のある経路に関し、参加者は、多少の変更を行ったのち文章を承認した。この文章では、特に次のように記述する:我々の世界は多数のストレス要素の脅威を受けており、この中には、気候変動、気候変動性、土地利用変化、生態系の劣化、貧困と不平等、文化的要素が含まれる;機会の余地とは、異なる回復力レベル、リスクレベルを伴う一連の可能な将来に至るための意思決定ポイント及び経路を指す;意思決定ポイントでは、機会の余地全体を通して、行動に至る場合もあれば、行動を怠る場合もある。

基礎となる科学的技術的評価

基礎となる評価報告書及びSPMは、議論なしでWGIIに受諾された。

中国は、中国の自治区、自治州、行政区の不当表示及び異論のある地図の利用について、懸念を表明した。同代表は、中国はこれについてWGに連絡したが、この懸念は取り上げられないままであると指摘し、報告書に記載する地図は地理的な参考のみを目的するとの表現の挿入を求め、WGII報告書の最終版ではこれらの問題に対応するよう求めた。

IPCC事務局長のRenate Christは、事務局はこの問題に関する国連事務局の助言を待っているところであると説明し、SPMには国連の標準陳述が記載されていると強調し、引用された記載事項の是認を意味するわけではないと指摘した。

WGII-10の閉会

WGII共同議長は、閉会の挨拶において、参加者、執筆者、WGII TSU、ホスト国、翻訳者、その他のものの献身と素晴らしい仕事に感謝した。WGII会合は、3月30日日曜日、午後3時9分に閉会した。

再開IPCC-38報告

IPCC議長のPachauriは、WGII-10の閉会後、直ちにIPCC-38会合を再開した。

ipcc-37会合の報告書草案

IPCC事務局長のChristは、パネルメンバーの提案した変更を取り入れた改訂版の報告書 (IPCC-XXXVIII/Doc. 2)の配布を想起した。この報告書はパネルにより承認された。

WGiI-10において取られた行動の承認

共同議長のBarrosは、AR5基礎報告書に対するWGIIの報告書承認を提案した。

ブラジルは、基礎報告書におけるバイオエネルギー及びバイオ燃料の扱い、特に間接的な土地利用変化への言及に対し、留保する考えを表明した。同代表は、気候変動と戦う一方、食糧生産を補う可能性のあるバイオエネルギー及びバイオ燃料の役割を強調し、評価の完成に間に合うよう、バイオエネルギー及びバイオ燃料への言及を修正することを求めた。IPCC事務局長のRenate Christは、ブラジルの発言は要請通りこの会議の報告書に含まれることになると述べた。

その後パネルは、AR5 WGII SPMの承認及びその基礎となる科学的技術的評価の受諾に関するWGII-10の行動を受諾した。

IPCC副議長のEl Gizouliは、IPCC閉会会合への全面的な参加を可能にするような旅行の手配に関し、事務局に一層の柔軟性を求めた。さらに同副議長は、アフリカ大陸を襲うリスクを含められるだけの十分な研究がなされていないと指摘し、先進国に対し、研究支援を求めた。

パネルは、WGII SPMを、Yuri Antonievich Izrael教授のIPCCへの不屈の貢献を記念して同教授にささげることで合意した。

IPCC副議長のvan Yperseleは、報告書全文の最終的な発行に間に合うよう、査読編集者の提案する変更を全報告書に含めるプロセスの明確化を求めた。WGII共同議長のFieldは、全ての実質的な誤謬及び品質管理の表を利用可能にし、最終印刷の前の修正で考慮に入れることになると述べた。

IPCC議長のPachauri及び事務局長のChristは、日本政府の歓待、さらには現地スタッフの激務に感謝した。さらに、通訳、著者、WGII TSU、共同議長、及び全ての参加者にも感謝した。

その他のビジネス

韓国は、日本列島の西にある特定の地理上の海に対する名称に異議を唱え、自身の言明を会議報告書に含めるよう求めた。日本も、日本海はこの地域を指す国際的に確定した名称であるとして、自身の言明を加えるよう要請した。IPCC事務局長のChristは、UNEP及びWMOはこの用語の使用について助言しており、日本海の名称を提案していると指摘した。

次回会合の時期と場所

次回のIPCC会合は2014年4月7-12日、ドイツのベルリンで開催される。

IPCC-38の閉会

IPCC議長のPachauriは、2014年3月30日日曜日午後3時23分、会議の閉会を宣言した。

 

IPCC会議の簡易分析

「花の蔭 赤の他人は なかりけり」(Under the cherry tree there is no stranger

小林一茶 (1763-1827)

長い5日間と深夜の会議の末、IPCC作業部会IIは、IPCC第5次評価報告書の影響、適応、脆弱性に関するWGII報告書を採択した。115か国の政府及び執筆者、査読者は、詳細にわたる1行ごとの議論をし、2500頁以上の政策決定者向けサマリー(SPM)に記載された結論の絞り込みを行った。IPCC議長のRajendra Pachauriが発言したとおり、この報告書は「この惑星のいかなる人間も気候変動の影響を受けないものはいない」ことを明らかにした。花の蔭に赤の他人はいないように、この問題に関係しない「赤の他人」はおらず、皆、同じ問題を共にしている。

この報告書は、AR5を構成する4つの報告書の2番目にあたる。2013年9月、気候変動の自然科学の根拠に関するWGI報告書が承認されたのに続くもので、さらにこの後には、2週間以内に承認予定の気候変動の緩和オプションに関するWGIII報告書が続く。3部のWG報告書を統合する統合報告書は、2014年10月にパネルの審議を受ける予定である。全体として、AR5は、世界の気候政策に科学的根拠を提供することを意図しており、その中には、2015年、パリ会議での採択が期待されるUNFCCC締約国の新しい気候変動に関する国際合意が含まれる。

この簡易分析では、報告書の主要な結論を紹介し、SPM承認プロセスを振り返り、現在進められている世界的政策という大きな観点から、この会議を位置づける。

主要な結論

AR5のWGI報告書において、気候系に対する人間の影響が明確に確定したのを受け、WGIIは、評価にリスクベース手法を取り入れ、IPCCの主要目的、すなわち政策に関連するが、政策を規定することはないという目的を論じた。共同議長のFieldが説明するとおり、「将来について賢い手法を取ろうとするなら、可能性ある影響結果の全範囲を検討する必要があり、これは可能性が高い影響結果だけでなく、たとえ確率は低くても、真に破滅的な影響を与える影響結果も検討する必要があることを意味する。」

この報告書で明らかにされたことは次のとおりである:評価を受けた科学文献の大多数によると、(気候変動の)影響は大半が負の影響であり、気候変動の進行で悪化するばかりであり、都市、生態系、生物種、人間の健康、食糧生産など、ほぼ全てのものに影響が及ぶ。この結論は、関連する科学文献において顕著に拡大した知識ベースに基づくものである。さらに、世界の一部の地域、特にアフリカにおいて、情報面での明らかなギャップが、たとえなかったとしても、この結論は、むしろ厳然さを増す可能性が高い。

しかし、共同議長のFieldの発言どおり、この報告書は、「恐るべきシナリオ、滅亡、暗鬱」だけではなく、気候変動の悪影響に適応する行動としてとられる措置や、存在しうる機会、さらには将来のリスクを管理し軽減する上で役立つ可能性がある措置についても、慎重ながら楽観的な注目を寄せている。

AR5 WGII報告書をこれまでの報告書と比較した場合、おそらく最も明確な特色と言えるのは、脆弱性を進行させる多数のストレスの中でも、気候変動を真正面に据え、多数の異なる規模やレベルにおけるリスクへの曝露を強調していることである。この報告書は、貧困の役割、食糧安全保障の無さ、適切なインフラの欠如、浸食、人口密度、都市化、対立、その他の脆弱性要素は気候変動の影響可能性を評価するカギであると強調する。多面性という特徴は、リスクをさらに深刻なものにするが、その一方で、脆弱性軽減の道筋をより明確にする、簡単に言えば持続可能な発展ということである。

言葉は変えても、失われることのない本質

気候変動及び適応に関する科学文献の組織が累乗的に拡大するにつれ、学術用語も増え、概念もより複雑かつ相互に関連しあうものになる。横浜での作業の大半は、専門の科学用語を政策決定者やマスコミ、一般人でも容易に理解できる言葉にどう翻訳するかに費やされた。ある科学者が述べたとおり、科学者には完全に適正な表現も、政策決定者にはそれほど適切でない可能性がある。このことが繰り返しおきたのは、SPMの表現を、科学者は十分正しいと考えるものに保持すると、SPMを行動の根拠にしようとする政策決定者にはおそらくあまり役に立たない表現になるという課題に直面したときである。この意味で、横浜での会議は、建設的かつ率直な意見交換を特徴とする会議であり、多くのものの見解では、長時間の議論により、科学的な十全性を損なうことなく明確な文章に到達できた会議である。

横浜会議の先にあるもの

WGII報告書の影響と普及は、国際的な環境問題、開発問題で特に活発な議論が起きているタイミングで起きた。自然科学ベースのWGI報告書、さらには緩和に関するWGIII報告書と合わせ、この報告書は、わかっているものだけを挙げても次の会議の場に情報を提供する:9月、ニューヨークで、国連事務総長のBan Ki-moonが開催する国連気候サミット;UNFCCCの交渉、これは2015年パリ会議において新しい気候合意に至ると期待される;今年後半、サモアでの、小島嶼開発途上国に関する第3回国際会議;2015年の災害リスク軽減に関する世界会議;そして持続可能な開発目標及びポスト2015年開発議題に関する議論。さらに、国家や都市、地方政府レベルでも、多数の政策決定者や意思決定者がこの報告書の結論に注目するとみられる。

日本の詩人(俳諧師)小林一茶の句に、「花の蔭 赤の他人は なかりけり」というのがある。これは、人間社会そして自然界全てに共通する何かがあるとの意味にも解釈できる:何があろうと、皆、気候変動の影響を受けるのである。どれだけ適応できるか、リスクを管理するか、緩和するかは、影響やリスクの深刻さで定まるが、完全に無くせるわけではない。今週、繰り返し強調されてきたとおり、被害は既に発生しており、その一部は不可逆的である。このため、実際には、科学者であり調整役筆頭執筆者でもあるMichael Oppenheimerの発言のとおり、花の蔭で、「だれもが(悪影響の)標的になっている」のである。

WGII評価報告書は、政策決定者による適応のための新しいツール及び戦略の策定に重要な根拠を提供し、気候変動とリスク、そして開発の関係の理解を助ける。SPMは、より一般的なものにせざるを得なかったが、氷山の一角を示しているに過ぎない;詳細や定量化については、根拠となる評価報告書本文に十分な情報が提供されており、どのレベルの政策決定者も、特定の疑問に直面した際には利用することができる。

WGII報告書は、気候変動とリスク、開発の相互関係を強調し、明確にし、何をすべきかの理解を深める上でかなり有用な報告書であり、同時に、行動を取らない場合の破滅的な影響も明らかにした。

今後の会議予定

IPCC WGIII12回会合及びIPCC-39IPCC WGIIIはAR5のWGIII報告書の承認、受理のため会合を開催する。WGIIIは気候変動の緩和に焦点を当てる。これに続いて、IPCC-39が開催され、AR5のWGIII報告書の承認を行う。  日付:2014年4月7-12日  場所:ドイツ、ベルリン  連絡先:IPCC事務局  電話:+41-22-730-8208  ファクシミリ:+41-22-730-8025 電子メール:IPCC-Sec@wmo.int  www: http://www.ipcc.ch/

3回国際気候変動適応会議:「適応の未来、2014年(Adaptation Futures 2014)」と題する会議は、研究者社会と地域レベル、世界レベルの気候変動適応情報の利用者とを結びつける予定。  日付:2014年5月12-16日  場所:ブラジル、フォルタレザ  連絡先:事務局  電子メール: adaptationfutures2014@inpe.br www: http://adaptationfutures2014.ccst.inpe.br/

46GEFカウンシル会議及びGEF総会:地球環境ファシリティー(GEF)の総会は、第46回GEFカウンシル会議に続き、メキシコで開催される。CSOコンサルテーション、GEFカウンシル及びLDCF/SCCFカウンシル会議は、5月25-27日に開催され、カウンシル会議は5月25日から開始、5月27日にはCSOコンサルテーションと半日重なる形で行われる。総会は、5月28-30日に開催される。 日付:2014年5月25-30日  場所:メキシコ、カンクン  連絡先:GEF事務局 電話:+1-202-473-0508  ファクシミリ:+1-202-522-3240 電子メール:secretariat@thegef.org wwwhttp://www.thegef.org/gef/5th_assembly

回復力のある都市、2014年:都市の回復力及び適応に関する第5回世界フォーラム:このイベントでは、リスクのデータ及び分析、適応の計画策定及び政策、包括的な適応手法、協調的かつコミュニティベースの適応、回復力のあるインフラ及び都市部支援システム、ガバナンスとキャパシティービルディングについて話し合う予定。  日付;2014年5月29-31日  場所:ドイツ、ボン  連絡先:Alice Balbo、ICLEI World事務局  電話:+49-228-976-299-28  ファクシミリ;+49-228-976-299-01  電子メール:resilient.cities@iclei.org  www:http://resilient-cities.iclei.org/bonn2014/resilient-cities-2014-home/ 

UNFCCC40回補助機関会合:SBI 40及びSBSTA 40は、2014年6月に開催される。ADPの第2回会合第5部も開催される予定。  日付:2014年6月4-15日  場所:ドイツ、ボン  連絡先:UNFCCC事務局 電話:+49-228-815-1000  ファクシミリ:+49-228-815-1999  電子メール:secretariat@unfccc.int unfccc.int/meetings/upcoming_sessions/items/6239.php

UNFCCC COP 20及びCMP 10のプレ・プレCOP閣僚会議:この会議はベネズエラ政府が開催するイベントで、次の項目の審議が目的:気候変動における地方政府の役割;地方政府及び現地の市民の参画を図る方法;地方の行動を世界規模の議題にどう組み込めるか。  日付:2014年7月15-18日  場所:ベネズエラ、カラカス  連絡先:Cesar Aponte Rivero、総合コーディネーター  電子メール:precop20@gmail.com

2014年気候サミット:このイベントは国連事務総長のBan Ki-moonが計画、UNFCCCプロセスでの野心的な法的合意のため、政治的意思を高めることが目的。  日付:2014年9月23日  場所:米国、ニューヨーク、国連本部 www: http://www.un.org/climatechange/summit2014/

気候シンポジウム2014年:このイベントでは、次の表題に焦点を当てる「地球観測による気候プロセスの理解を高める」。効率的で持続的な国際宇宙ベース地球観測システムの開発を進め;気候の観測、研究、分析、モデル化の国際的な専門家を集める;地球規模及び地域規模での気候の知識改善、及び気候予測に用いるモデルの評価において、宇宙ベースの地球観測が果たす役割を強調する。  日付:10月13-17日 場所:ドイツ、ヘッセン州、ダルムシュタット  www: http://www.theclimatesymposium2014.com

持続可能性の科学会議:この会議は、地球規模の課題に対し持続可能な解決策で協調を図るため、多様な分野の専門家を招請し、科学と政策のインターフェース及び解決策を話し合う場を提供する。  日付:2014年10月22-24日  場所:デンマーク、コペンハーゲン  www: http://www.sustainability.ku.dk/iarucongress2014

UNFCCC ADP 2-6ADPは、2014年10月、第2回会合の第6部を開催する。  日付:2014年10月20-24日(仮)  場所:ドイツ、ボン  連絡先:UNFCCC事務局  電話:+49-228-815-1000  ファクシミリ:+49-228-815-1999  電子メール:secretariat@unfccc.int  www: http://unfccc.int

IPCC-40このIPCC会合は、AR5統合報告書を採択し、その政策決定者向けサマリーを承認する目的で開催される。  日付:2014年10月27-31日  場所:デンマーク、コペンハーゲン  連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208  ファクシミリ:+41-22-730-8025  電子メール:IPCC-Sec@wmo.int  www: http://www.ipcc.ch/

UNFCCC COP 20及びCMP 10のプレCOP閣僚会議:このイベントは、ベネズエラ政府が計画、UNFCCC交渉における市民社会の参画について再度議論することが目的である。  日付:2014年11月4-7日  場所:ベネズエラ、カラカス  連絡先:Cesar Aponte Rivero、総合コーディネーター  電子メール:precop20@gmail.com

UNFCCC COP 20及びCMP 10UNFCCC第20回締約国会議(COP 20)及び京都議定書第10回締約国会合(CMP)は、ペルーのリマで開催される。  日付:2014年12月1-12日  場所:ペルー、リマ  連絡先:UNFCCC事務局 電話:+49-228-815-1000  ファクシミリ:+49-228-815-1999  電子メール:secretariat@unfccc.int  www: http://unfccc.int

このほかの会議及び最新情報については、右記を参照:http://climate-l.iisd.org/

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