Daily report for 21 October 2014

ADPの議題項目3に関するコンタクトグループは21日(火)、適応と資金の話を中心に、ワークストリーム1 (2015年合意)について取り上げた。また、炭素回収利用貯留 (CCUS) に関する技術専門家会合(TEM)が終日開催された。夕方からは、両共同議長によるオブザーバー組織とのスペシャルイベントが行われた。

ADP 議題項目3に関するコンタクトグループ

適応: ADPのKishan Kumarsingh共同議長は締約国に対して特に以下の点(緩和と適応の均衡; 世界目標; 共通のコミットメント及び行動と個別のコミットメント及び行動; 制度的アレンジ等)を検討するよう要請した。

ボリビア(G-77/中国の立場から)及びイランは、適応は国家に固有の問題であると認識するよう求めた。東ティモール及びセネガルは、適応と長期的な緩和の措置をリンクさせるよう強く求めた。メキシコは、メキシコとAILACグループの共同提案について紹介し、ヨルダンとともに、野心的なビジョンを盛り込んだ世界目標を支持した。

G-77/中国、 メキシコ、 南アフリカ、コロンビアは、緩和とMOIとのリンケージについて言及した。 スーダンは、アフリカン・グループの立場から、適応とMOIの数値目標は国家適応計画(NAP)から積み上げることが可能だと述べたが、ノルウェーと米国がこれに反対した。タンザニアは、G-77/中国とともに、持続可能な開発という文脈の中で適応について認識することを提案した。

スイス、カナダ、EUは、世界目標は質的な内容であるべきだとし、スイス、ニュージーランド、日本とともに、適応を国家政策の中に組み込むことによってレジリエンスを促進することに主眼を置くべきだと強調した。

米国は、目標は各国の計画立案プロセスの中で適応を“強化”しなければならないと述べた。

ツバルは、 LDCの立場から、南アフリカとともに、すべての国が適応計画を策定するよう奨励されるべきだとし、途上国向け適応のためのMOIに関する2ヵ年報告書を作成することを提案した。

G-77/中国は、バングラデシュ、アフリカン・グループ、セントルシアとともに、適応の支援にはNAPがカギになると述べた。 スイスは、すべての締約国がNAPを策定し、国家戦略や国家計画を報告すべきであると述べた。

オーストラリアは、適応行動は緩和の代用にはならないと強調した。ナイジェリアは、Annex II 締約国のための強力かつ明確なコミットメントを求めた。アルジェリアは、適応のニーズは変化すると主張した。

G-77/中国、スイス、コスタリカ(AILAC)、 ナウル(AOSIS)、EU、ノルウェー 日本、ニュージーランド、 ブラジル、トルコは、カンクン適応枠組みのような既存の制度メカニズムに立脚するよう求めた。 AOSIS及び中国は、UNFCCCの適応の取り組みを監督する適応委員会の役割を強化する案を支持した。LDCは、2015年合意は既存の制度組織に根ざすものにすべきだと強調した。 AILACは、2017年に適応の制度組織を強化するよう求めた。エジプトは、UNFCCCと他の国際機関との間の相乗効果を構築するよう提案した。

LDCは、国際クリアリングハウスと登録簿を提案した。サウジアラビアは、アルジェリア、中国、インドとともに“NAMAのような” 登録簿を求めたが、カナダが反対を唱えた。スイスは、ベストプラクティスを共有する場を求めた。

AOSISとLDCが適応のための地域別プラットフォームを求めたが、ニュージーランドが既存の地域的なイニシアティブの強化を提案した。 南アフリカは、メキシコ-AILAC提案からの適応に関する技術と知識のプラットフォーム構築案を支持した。シンガポールは、適応のMRVのための“監視制度の巨大化”に反対した。

G-77/中国、LDC、AOSIS、中国、セントルシアは、損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズムを2015年合意に組み込むよう強く求めたが、オーストラリアとカナダがこれに反対した。ニカラグアは、“途上国が今後も負担を担うべきだ”というメッセージは不公平であり、リマ会議までの道程において信頼を築くものにはならないと述べた。

ADP共同議長は、世界目標や、今後の登録簿や支援を伴う連携などの制度的アレンジに関する非公式協議に関して、Franz Perrez(スイス)とJuan Hoffmaister(ボリビア)をコーディネーターとすることを提案した。 G-77/中国は、議長の提案を受入れられるかどうかグループ内で調整する必要があると述べた。

資金: ADPのArtur Runge-Metzger共同議長は、意見がまとまりそうな分野としてUNFCCCの資金メカニズムを合意に組み込むかという問題や、資金に関する常設委員会 (SCF)の役割強化のテーマが挙げられると述べた。GCFの役員を務めるAyman Shasly(サウジアラビア)とSCFの委員を務めるSeyni Nafo(マリ)より、GCFとSCFが実施した作業に関する最新情報が伝えられた。次期COP 20議長国のペルーからは、資金関連の作業について報告があった。

マレーシアは、G-77/中国の立場から、先進国がUNFCCCに基づく義務に則った資金的な支援を供与すべきだと述べた。ヨルダンは、LMDCの立場から、先進国による野心的なコミットメントと2020年までとそれ以降に続く明確なロードマップとタイムテーブルを求めた。

ノルウェーは、 EUとともに、すべての締約国からのコミットメントと排出量価格制度を求めた。また、ノルウェーとニュージーランドは、資金の約束を数値で示して法的に縛ることに反対した。ノルウェーとブラジルは、プロジェクトベースの資金アプローチからの脱却を求めた。ニュージーランドは、資金に関する政治宣言を提案した。

G-77/中国、 コスタリカ(AILACの立場)、EUは、GCFを合意に組み込むべきだと述べた。韓国は、SCFの役割強化を求めた。メキシコ、ブラジルは、既存の制度を踏まえることを強調した。モルディブは、AOSISの立場から、現在の資金アーキテクチャーに存在するギャップを解決するような合意を求めた。

LMDCは、先進国は公的資金のうち各国のGDP(国内総生産)の1%を動員するよう提案した。南アフリカは、先進国の拠出金をGDPベースで評価するようなメカニズムを求めた。ケニアは、レビュー・メカニズムを支持し、メキシコは堅牢なMRVを求めた。AILACは、緩和に関する野心のレビューと同じタイムラインで資金的なコミットメントを点検(レビュー)し、引き上げを図って改訂するよう求めた。

韓国は、民間セクターの関与が重要であるとし、強力な官民パートナーシップを求めた。EUは、民間セクターにシグナルを送れるような合意を求めた。LMDCは、公的資金こそ気候資金の主要な資金源であるべきだと述べた。

閉会セッションで、Runge-Metzger共同議長は、GCFやSCFの中心性などは意見が収斂した分野であると強調し、予測可能性や数値で示すコミットメント等が意見のばらつきのある分野であると述べた。

CCUSに関するTEM

Ulrika Raab(スウェーデンエネルギー庁)がTEMの進行役を務めた。 Juho Lipponen(国際エネルギー機関:IEA)は世界のCCUSの現状を紹介し、様々な技術の中でも炭素回収貯留(CCS) が気候変動対策に必要な唯一の技術であり、CCS を推進するための強力な政策が必須であると強調した。

CCS: オプション・障害・機会に関する様々な視点: Martin Aubé(カナダ)及び Matthew Billson(英国)がCCSに関する経験を披露し、明確な政策枠組みや政府の関与や国際協力、政府の支援、魅力的な投資環境等が必要であると強調した。また、緩和のためのオプションとしてだけではなく、電源構成の一部として、企業のCCSの事例を改良する必要があると指摘し、知識の共有と相互学習の重要性について強調した。

行動の実施に関する専門家パネル: Olav Skalmerås(スタットオイル)は、ノルウェー・スライプナーの天然ガス田におけるオフショアCCSの経験を紹介。CO2税がプロジェクトの促進要因の一つであったと述べ、安全なCO2の海底貯蔵の実証に成功したと語った。

Scott Mc Donald(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)は、米国におけるCCSプロジェクトの現状やCCSの促進要因と障害について述べ、CCSプロジェクトは複雑でコスト高であるため、連邦政府による優遇制度の増加や長期的な債務計画が必要であると強調した。

David Hone(シェル) は、カナダ・アルバータ州のクエスト・オイルサンドプロジェクトについて紹介。CCSが蓄積する排出量を直接取り扱い、正味ゼロ排出を実現できる唯一の技術であると主張した。

議論: 参加者からはCCSに関する規制の分断による影響; 政府支出と産業のニーズとの乖離の可能性; 長期的なリーケッジのリスク、非永続性や環境十全性; 天然ガスパイプライン再利用の可能性; LDCによる資金アクセス; CCSプロジェクト件数の少なさ; 2015年合意に基づくCCS分野での締約国の協力法などについて特に質問が寄せられた。これに対し、パネリストは、明確な規制枠組みが不可欠であり、今のところリーケッジの問題は見られず、CCSにとって市場環境は不十分であるとの説明があった。

炭素回収貯留・利用 (CCU): オプション・障害・機会に関する様々な視点: Majid Al Suwaidi (UAE:アラブ首長国連邦)は、UAEのグリーン経済イニシアティブについて述べ、経済多角化とエネルギー集約的な活動への投資を進める中で、CCSは重要であると強調した。

Angelina Prokofyeva(バイエル)は、ドイツ連邦教育研究省に代わって、グリーン経済に向けたドイツのCO2利用計画について述べ、研究と実施の乖離を埋める必要があると強調した。

行動の実施に関する専門家パネル: Michael Monea(サスクパワーCCSイニシアティブ)は、バウンダリーダムCCSプロジェクトに関してビデオ講演を行い、 様々な課題やプロジェクトで得た教訓などについて述べ、コストを下げるためにはCCSを拡充する必要があると強調した。

また、バイエルのChristoph Guertlerの代理でAngelina Prokofyeva(バイエル)は、原料として従来利用される石油の一部をCO2使った高品質の気泡で代替するドリーム生産研究イニシアティブについて説明した。

議論: CCSに関する省庁間の力配分; CCUのエネルギー集約度;途上国におけるCCS技術アクセスの拡充等についての質問が寄せられた。

今後の方策に関する議論: 状況説明プレゼンテーション: Andrew Purvis(グローバルCCSインスティテュート)はCCSに対する融資額が減少しているとし、政策支援や政治的意思、政策均衡、国連によるCCSの制度的なキャンペーン等が必要であると強調した。

Tim Dixon(IEA GHG)は、現在進行中の各種CCUプロジェクトを紹介し、国際標準化機構(ISO)が現在、CCSの規格を作成中であることを伝え、CCSは“サイエンス・フィクション”ではなく “サイエンス・ファクト”(事実)であるとプレゼンを締めくくった。

Ellina Levina(IEA)は、IEAのCCSロードマップで今後7年間のCCS普及に向けて重要な7つの行動を策定していることを紹介した。

議論: 途上国のCCS技術へのアクセス; トランスバウンダリーおよび賠償責任の問題; UNFCCCの下でCCSに対応するための今後の方策などの問題が取り上げられた。パネリストは、情報共有;国家間の協力; CCS支援のためのNAMAsやGCFといった既存UNFCCCメカニズムの活用等について強調した。TEC副議長の島田久仁彦(日本)は、TECやクリーン技術センター・ネットワークがCCSについて作業するためには締約国からの権限付与が必要であると説明した。 

廊下にて

初日は“遅いスタート”と評されたADP2-6だが、第二日目はギアチェンジをかけて始まった。とはいえ、適応に関する議論が始まると、長時間のステートメント発表が相次ぎ、共同議長の発案で自由着席での議論が可能になったものの、スピードアップにはあまり役立たなかった。

建設的な対話も見られたものの、一部の参加者は “自明な事柄の繰り返し”で多くの時間が失われ、ADPのアジェンダの多数の項目を取り上げる時間がだんだんと遅れていってしまうと嘆いていた。

交渉は次第にいつものパターンに嵌っていき、共同議長が発表した2015年4月の交渉期限に間に合わせるには交渉時間がもっと必要なのは明らかだという声が多くあがった。

参加者の最大の関心を集めたのはADP議題項目3に関するコンタクトグループで、一日を通して行われたCCUSに関するTEMへの参加者は少なかった。TEMの方式は認知度アップには有効だが、突っ込んだ議論を行うための余地は少ないのが残念だという感想もあがった。しかし、2015年合意にCCSに盛り込むための入り口としては、これが千載一遇のチャンスになると多くの参加者が指摘していた。

This issue of the Earth Negotiations Bulletin © <enb@iisd.org> is written and edited by Alice Bisiaux, LLM, Mari Luomi, Ph.D., Annalisa Savaresi, Ph.D., and Anna Schulz. The Digital Editor is Brad Vincelette. The Editor is Pamela Chasek, Ph.D. <pam@iisd.org>. The Director of IISD Reporting Services is Langston James “Kimo” Goree VI <kimo@iisd.org>. The Sustaining Donors of the Bulletin are the European Commission (DG-ENV and DG-CLIMATE) and the Government of Switzerland (the Swiss Federal Office for the Environment (FOEN) and the Swiss Agency for Development Cooperation (SDC)). General Support for the Bulletin during 2014 is provided by the German Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation, Building and Nuclear Safety (BMUB), the New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade, SWAN International, the Finnish Ministry for Foreign Affairs, the Japanese Ministry of Environment (through the Institute for Global Environmental Strategies - IGES), the United Nations Environment Programme (UNEP), and the International Development Research Centre (IDRC). Specific funding for coverage of this meeting has been provided by the Kingdom of Saudi Arabia Ministry of Petroleum and Mineral Resources and Aramco. Funding for translation of the Bulletin into French has been provided by the Government of France, the Wallonia, Québec, and the International Organization of La Francophonie/Institute for Sustainable Development of La Francophonie (IOF/IFDD). The opinions expressed in the Bulletin are those of the authors and do not necessarily reflect the views of IISD or other donors. Excerpts from the Bulletin may be used in non-commercial publications with appropriate academic citation. For information on the Bulletin, including requests to provide reporting services, contact the Director of IISD Reporting Services at <kimo@iisd.org>, +1-646-536-7556 or 300 East 56th St., 11D, New York, NY 10022 USA. The ENB team at the Bonn Climate Change Conference - October 2014 can be contacted by e-mail at <alice@iisd.org>.

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