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国連気候変動枠組み条約(UNFCCC) の交渉が本日開幕。ドイツ・ボンにて、2015年6月1日から11日までの日程で開催される。この会議では、「実施に関する補助機関」第42回会合(SBI 42)、「科学的・技術的助言に関する補助機関」第42回会合(SBSTA 42)、ならびに「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会の第2回会合第9セッション」 (ADP 2-9)もすべて開催される。

ADP 2-9は、 ADP 2-1で採択された議題 (ADP/2013/Agenda)を踏まえ、ワークストリーム 1 (2015年合意)及びワークストリーム 2 (プレ2020年野心)を中心に進められる。2015年合意の策定という同作業部会のテーマは、2015年2月のADP 2-8で採択された交渉テキストがベースとなる。

同部会のシナリオノート (ADP.2015. InformalNote)の中で、ADP 共同議長のAhmed Djoghlaf (アルジェリア)及びDaniel Reifsnyder (米国)は、今次会合の目的について、ジュネーブ交渉テキストに盛り込まれたポジション(訳注:各位の見解)を元に交渉することだと記している。ワークストリーム 2では、再生可能エネルギー供給や都市環境におけるエネルギー効率改善の加速化をテーマに技術専門家会合 (TEMs) が行われる。

UNFCCC 及び 京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。UNFCCCは、気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため、大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度安定化を目指して、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効し、現在は196の締約国を有する。

1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国の政府代表は、先進工業国および市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に、6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことで合意した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉: カナダ・モントリオールで2005年に開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)では、議定書3.9条に則り、京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することを役割として定めた。

インドネシア・バリで2007年12月に開催されたCOP 13及び CMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP 13は、「バリ行動計画」(BAP)を採択するとともに、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会」(AWG-LCA)を設立し、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割付けた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す期限が、2009年のコペンハーゲン会議と定められた。

コペンハーゲン:2009年12月の国連気候変動会議は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。世間の大きな注目を浴びることとなった同会議では、透明性の問題やプロセスをめぐる論争が目立った。

12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成立し、その後、COPプレナリーでの採択に向けて提出された。それから13時間にわたる議論の末、各国の政府代表は、コペンハーゲン合意に「留意する」ことで最終的に合意。また、AWG交渉グループの期限をそれぞれ 2010年のCOP6及びCMP 6まで延長することで合意した。 2010年には140カ国を超える締約国がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家の緩和目標または行動に関する情報を提出した。

カンクン:メキシコ・カンクンでの国連気候変動会議は2010年12月に開催され、締約国は「カンクン合意」を成立させた。また、2つのAWGの期限をさらに一年延長することで合意した。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16の中で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃以内に抑えるには世界の排出量を大幅に削減する必要があると認識した。2013年-2015年のレビュー期間中に、世界の長期目標の妥当性について検討することで締約国が合意。また、その際に気温上昇幅1.5℃目標案を含めて、世界の長期目標の更なる強化を検討するということでも合意した。さらに、決定書1/CP.16には、MRV (測定・報告・検証)やREDD+(途上国における森林減少や森林劣化からの排出削減や、森林保全、持続的な森林管理、森林炭素吸収源の強化策の役割)等、緩和に係わるその他の側面についても記載された。

また、カンクン合意で、いくつかの新たな制度やプロセスも創設された。その中には、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムがあり、技術メカニズムの下では技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。また、緑の気候基金 (GCF)が新設され、条約の資金メカニズムの運用機関と指定された。

議定書の交渉トラックでは、CMPが、附属書Ⅰ国に総排出削減量を達成するべく野心レベルを引き上げるよう促し、土地利用・土地利用変化・林業(LULUCF)に関する決定書 2/CMP.6を採択した。また、両AWGの交渉期限は、さらに一年延長されることとなった。

ダーバン:2011年11月28日-12月11日、南アフリカ・ダーバンにて、国連気候変動会議が開催された。ダーバン会議の成果として、広範なトピックが網羅されたが、特に京都議定書の第二約束期間(2013年-2020年)の制定や、条約の長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意などが盛り込まれた。締約国は、「条約の下で、全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新たな組織として、ADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)を発足させることでも合意した。ADPでの交渉は、2015年中に完了させることとし、2020年には新合意の発効を目指すこととした。さらに、ADPは2℃目標との関連で、2020年までの野心ギャップを埋めるための行動を模索する役割も課された。

ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、カタール・ドーハにて、国連気候変動会議は開催。「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成され、京都議定書の第二約束期間を定めるための議定書改正や、AWG-KPの作業を最終的にドーハで完了させるための合意等が盛り込まれた。また、AWG-LCAの作業完了やBAPの下での交渉終了についても合意が成立した。一方、世界目標の2013-15年のレビューや、先進国と途上国の緩和、京都議定書の柔軟性メカニズム、国別適応計画(NAP)、MRV、市場及び市場以外のメカニズム、REDD+等、さらなる議論が必要とされる多くの問題については、SBIとSBSTAに付託されることとなった。

ワルシャワ: 国連気候変動会議は、2013年11月11日-23日、ポーランド・ワルシャワにて開催された。ADPの作業続行を含め、これまでの会議で成立した合意項目の実施が交渉の焦点となった。この会議では、「各国の約束草案」(INDCs)に向けた国内準備の開始や強化を締約国に招請すること等を盛り込んだADP決定書が採択された。また、「損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズム」の設立を定めた決定書や「ワルシャワREDD+枠組み」としてREDD+資金や制度的アレンジ、方法論の問題等について定めた一連の7つの決定書が採択された。

リマ: 2014年12月1-14日、国連気候変動会議がペルー・リマで開催された。リマ交渉の焦点は、パリで2015年に開催されるCOP 21の合意に向けた進展を図るために必要なADPでの成果であり、2015年の出来るだけ早い時期にINDCs提出に向けた情報やプロセスを明確化し、交渉文書草案の要素に関する議論の進展を図ること等であった。COP 20では、長丁場の交渉の末、「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for Climate Action)が採択されたが、これは2015年合意に向けた交渉をスタートさせ、INDCsの提出やレビューのプロセス、プレ2020年野心の強化の取組みを始動させるものであった。

また、19件の決定書も採択されたが、そのうち17件がCOP、2件がCMPのものであり、「損失と被害のためのワルシャワ国際メカニズム」の運用の推進、「性差別に関するリマ作業計画」の設置、「教育や啓発に関するリマ閣僚宣言」の採択を定めるものであった。

リマ気候変動会議では、2015年合意の交渉文書草案の要素についての細目を詰める作業における進捗を把握し、INDCsの範囲や事前情報、及びINDCs提出後に事務局がとるべき行動など、INDCsに関する決定書を採択したことで、パリ会議に向けた基礎固めを行うことができた。

ADP 2-8: 2015年2月8日-13日、スイス・ジュネーブで、ADP2-8が行われた。同会合の目的は、COP 20で定められた通り、決定書1/CP.20(気候行動のためのリマ声明)に付属する交渉テキスト草案の要素に基づいた交渉テキストを作ることであった。ADP 2-8で採択されたジュネーブ交渉テキスト(FCCC/ADP/2015/1)が2015年合意に関する交渉の土台となる。

直近の関連会合ハイライト

INDC 提出: 決定書 1/CP.19 及び 1/CP.20で、準備のできる締約国は2015年の第一四半期までにINDC(約束草案)を提出し、条約の目的を達成するために実施予定の行動について概要を示すよう招請された。現在までに、38の締約国がINDCを提出している。

IPCC-41: 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第41回総会は、2015年2月24-27日、ケニア・ナイロビで開催され、IPCC 報告書のタイミングと活用法、IPCCの体制、IPCC事務局やIPCC技術支援ユニット(TSU)の役割、CLA(調整主幹執筆者)やLA(主幹執筆者)の選定・支援に関する選択肢、執筆やレビュー作業のプロセス改善等に関する決定書が採択された。また、IPCCのプロセスにおける途上国の関与などの問題も決定書の中で取り上げられた。

ポスト2015年の開発アジェンダに関する交渉: 2015年2月から5月にかけて、ポスト2015年の開発アジェンダに関する第2回、第3回、第4回、第5回政府間交渉が米国・ニューヨークの国連本部で開催された。これらの交渉は、2015年9月25-27日のSDGサミットで採択が予定されている、「新たな持続可能な国際開発アジェンダ」の構成要素の準備のための会合であり、4つの構成要素として、「宣言」、持続可能な開発目標(SDGs)の一連の目標および指標、実施手段や、開発のための新グローバル・パートナーシップ、実施のフォローアップ及びレビューの枠組みなどが盛り込まれることが予想される。また、SDG 13として、気候変動が盛り込まれ、「気候変動及びその影響と闘うために速やかな行動を起こす」“Take urgent action to combat climate change and its impacts”という一文が「気候変動に対する地球規模の対応を交渉する場としては、条約(UNFCCC)が一義的な国際、政府間フォーラムであることを認識」 “acknowledging that the [UNFCCC] is the primary international, intergovernmental forum for negotiating the global response to climate change.”という注釈がつけられる。

GCFB 9: GCF理事会の第9回会合 (GCFB 9)が2015年3月24-26日に開催。初期の投資枠組みや、利害相反(CoI)や倫理に関する指針、独立技術諮問パネルへの付託事項、理事会メンバーの最初の任期、GCFの期待される役割や影響に関する分析、ジェンダーに関する暫定的な指針や行動計画、基金の法的文書に係わる金銭的条件や状況、認定団体との法的・公式の取り決め、民間セクターの融資の動員および中小企業との協働、任命委員会への付託条件、事務局の活動に関するレポート等に関する決定が採択された。

CCACハイレベル会合: 短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)の作業部会が2015年5月19-20日、スイス・ジュネーブで開催された。同部会で、CCAC 5ヶ年戦略計画(HLA/ MAY 2015/03) の枠組みが承認され、実施と計画のための仕組みが構築されることとなった。また、これまでのCCACの進展を見直し、CCAC作業部会が作成した「パリまでの道程戦略」“Road to Paris”への支持を表明した。

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Participants

National governments
US
Democratic Republic of the Congo
Negotiating blocs
European Union

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