Daily report for 21 May 2016

Bonn Climate Change Conference - May 2016

ボン気候変動会議は土曜日も、SBI及びSBSTAならびにAPAの下で数多くの非公式協議が続けられた。午前中は技術メカニズムと資金メカニズムのリンケージに関するインセッション・ワークショップやICAプロセスに基づくFSVが開催され、午後からはストックテイク・イベントが開催された。

APA

組織上の問題: Jo Tyndall共同議長が共同議長提案について以下の概要を説明した。〔議題項目3-7について検討する単独コンタクトグループを5月23日(月)に開催。集中的な議論、および、技術的な議論を5月24日(火)と25日(水)に行うための基本的な質問事項を23日夕方までに提供。早期発効の法的な意味合いに関して事務局がブリーフィングを行った後、議題項目8について検討。25日(水)に今次会合の成果について議論し、意見の募集や会期と会期の間の作業について技術ワークショップ開催を含めて話し合う。〕

提案は概ね歓迎された。パラレルでコンタクトグループを2つ開催する案も出されたが、2つ以上の会合を同時開催することへの警戒感も示された。会期と会期の間にワークショップを開催する案については支持もあったが、資金面の影響や参加の問題をめぐって懸念も示された。また、APAワークショップ開催によってAPAの項目と整合する形で補助機関(SBs)の議題項目の審議が進まないのではないかとの不安の声があがった。作業方式について共同議長が5月23日午前に連絡し、作業開始となる。

COP議長のストックテイク

実施上の整合性と包括性を確保する目的で開催された“ストックテイク・イベント”では、COP 21議長Ségolène Royalより、「どこが進み、どこが進んでいないのかを明確にするためのロードマップ策定」という提案があり、このロードマップによって、一部の分野における進展が遅い理由を明らかにした上で、全ての問題を一貫した方法で進めるための方法論を確立する案が示された。

また、次期COP 22の議長を務めるHakima El Haitéは、COP 22は“アクションのCOP”になると称し、さまざまな機関で現在行われている作業間の調整やバランスが図られることを締約国が再確認する場としてCOP 22議長が非公式協議を行うと述べた。

SBSTA議長Carlos Fullerは、APAでグローバル・ストックテイクが議論できるよう定期点検(レビュー)の範囲に関する審議を延期することで参加者の意見が一致したことを指摘した。SBI議長Tomasz Chruszczcowは、そのように定められたイベントは、クロスカッティング・イシュー(横断的な問題)に対する一貫性向上の一助になると述べた。

APA共同議長Sarah Baashanは、適応報告書とその登録簿等の問題に関して補助機関の協調的なアプローチを求めた。

UNFCCC、GEF、IPCCの構成機関は、パリでの成果に関する各機関の作業について報告した。

タイは、G-77/中国の立場から、APA及びSBs間のバランスと整合性を図るよう求め、同グループがCOP 22での採択を目指してPCCBが“実質的に”精緻化されることを期待すると述べた。コロンビア(AILAC)及びマレーシア (LMDCs)は、2018年の促進的対話(ダイアログ)に関する作業について強調した。

オーストラリアは、アンブレラグループの立場から、迅速に発効させる必要があると強調しつつ、モルディブ(AOSIS)とともに、早期発効に関する議論を呼びかけた。

EUは、更なる作業が必要となる問題を明確にするよう呼びかけ、コンゴ民主共和国(LDCs)とともに、進展の経過をチェックする方法を明確にする必要があると明言した。スイスは、EIGの立場から、会期と会期の間のワークショップ開催を支持し、後発開発途上国(LDCs)は技術ワークショップ向けの分野を特定した。

SBI議題項目5 (NDC登録簿)および、項目6 (適応報告書登録簿)について触れ、マリは、アフリカグループの立場から、これらの項目は連続で審議すべきであり、同じ共同進行の下で審議すべきであるとし、“我々は2つではなく、1つのNDC登録簿(レジストリ)作成に向かって作業している”と述べた。

YOUNGOsは、今次会合でのACE及びキャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラムの作業を歓迎した。

CANは、促進ダイアログのモダリティを含め、COP 22に向けた成果物を特定するよう求めた。

CJN! は、適応と緩和に同等の重要性を与えるよう主張した。

COP 21議長のLaurence Tubianaが、COP 22の作業計画に関する明確なビジョンをもつ必要があると述べた一方で、El Haitéは全ての補助機関の平等と協力が重要であると強調した。

SBSTA

パリ協定9条7項に則った財源会計処理のモダリティ: 非公式協議で共同議長の結論書草案について些少な編集上の変更を行った後、事務局がこれから実施すべき活動の財源について利用可能な度合いについて確認を行い、同草案は締約国の合意を受けた。この結論書草案は特に、締約国及びオブザーバーによる8月29日迄の意見募集、SBSTA 45でのワークショップ開催、ワークショップの情報や提出意見をまとめたテクニカルペーパーをSBSTA 46までに事務局が作成する事の要請事項を盛り込んでいる。

SBI

作業構成: ICAプロセスに基づくFSV: マケドニア・旧ユーゴスラビア共和国は、一貫したデータフローの欠如を受け、一連のGHG測定を確保し、国内MRV制度を整備することは難しいと強調した。

チュニジアは、1994年以降の炭素集約度が年率平均2.2%減になったと報告し、ICAプロセスの有用性について言及した。また、データアクセスについては、ほとんど不自由をしていないと述べ、データ収集に民間部門の効果的な関与があったことを指摘した。

ベトナムは、2020年までに国内MRV制度が運用開始となる予定だと発表し、BUR作成の課題としてタイムリーな資金調達の確保や技術及びキャパシティビルディングにおける支援の定量化等があると列挙した。

パリ協定7条12項に記載された公的登録簿の運用・利用のモダリティ及び手続き: 非公式協議では作業構成に関する議論が行われた。この適応報告書登録簿及びSBI議題項目5 (NDC登録簿)に関する項目を単独のコンタクトグループで取り上げるべきか否かという問題について、締約国の意見が分かれた。取り組みの重複がないよう釘を刺した上で、NDCsは適応報告書に関する報告ツールとすべきだとの意見が出された。他方、SBIの議題は“デリケートなバランス”の問題であるとして、適応報告書を提出するためのツールは他に存在することを指摘しつつ、議論の場を2つ別にすることを求める意見も出された。共同進行役Georg Børsting (ノルウェー)は、これらの意見をSBI議長に伝えると述べた。非公式協議が続けられる。

パリ協定4条12項に記載された公的登録簿の運用・利用のモダリティ及び手続き: 非公式の議論の中で、登録簿用のモダリティ及び手続きや作業構成について意見交換が行われたが、本項目について単独のコンタクトグループを設置し、適応報告書の登録簿に関する作業を行うべきだとの要請が数カ国から繰り返された。

登録簿については、透明性やユーザー利便性、一般からのアクセスしやすさ等を強調する参加者が多かった。登録簿は締約国のNDCsの重要な局面のスナップショットを提供するべきだととの意見や、登録簿の趣旨は情報を記録することにあり、情報を再構成することではないとの意見もあった。

適応と緩和に関する情報を盛り込んだ一つの登録簿を作成し、場合によっては二部構成にするという案が出されたが、ある国からは形式論の前に目的について議論するべきだとの意見が出された。

Gertraud Wollansky共同進行役(オーストリア)は、締約国からの意見をSBI議長に伝えると述べた。非公式協議が続けられる。

国別適応計画: NAP作成に向けてGCF即応資金にアクセスするための経験についての意見提出を締約国に招請するとしたパラグラフ案に関する議論を中心に、非公式協議では結論書草案に関する審議を行った。適応委員会で予想される作業や、2017年中に自国の経験に関するインタビュー実施の可能性があることを受け、意見提出の要請について反対意見もあがった。一方で、2016年に経験を収集することが役立つとして、インタビューよりも意見提出の方がより包括的だとの提案もあった。Beth Lavender共同進行役(カナダ)は、このパラグラフに関する決議がない為、他の会合枠が確保できない場合はSB 44で本件決着が難しいと指摘した。

キャパシティビルディング: 結論書草案に向けて、第5回ダーバン・フォーラムの成果とキャパシティビルディング枠組みに関する第3回包括レビューに関するテクニカルペーパー(FCCC/TP/2016/1)の結果から、どのような結論を導くかという点について、非公式協議で締約国の意見交換が行われた。

各国からの主張内容としては、国家主導のアプローチや当事者意識、インパクト・アセスメント(影響評価)、制度的なキャパシティビルディング、国内調整;資金アクセスのためのキャパシティビルディング等があった。また、実施の支援における先住民や女性、民間部門の役割について強調する意見もあった。

また、PCCBへの要請としては、ダーバン・フォーラムの成果の考慮、UNFCCCとUNFCCC以外の諸機関によるキャパシティビルディング活動の調整、報告・評価用の標準化ツールの作成等が挙げられた。協議継続。

SBSTA/SBI

対応措置: 共同進行役が提起した作業計画案および今後の技術専門家グループ特別作業部会のための全般的なToRについて非公式協議での議論が行われた。

作業計画については、特にキャパシティビルディング及び支援に関するケーススタディ; まともな仕事や質の高い雇用の創出も含む労働人口への公正なる移行作業; 途上国の懸念やニーズの評価のための組織間パートナーシップ; これらの懸念に配慮した方法論策定; 等々の要望を計画案に反映させるべきだとの意見が一つのグループから出された。

同時にあまりに多くの資料や意見提出が出されることへの反対意見がいくつかの締約国から出された。ある締約国は、利害関係者とのオープンな対話や一部の機関ですでに進行中の実質的な作業を中間点検することの利点等を強調した。

全般的なToRについては、経済・エネルギー・開発・気候・労働・社会政策などの関連分野の専門家名簿を含む、技術専門家グループ特別作業部会のモダリティと構成について提案がある締約国から寄せられ、同作業部会の構成メンバーとして国際機関から2名の専門家と各地域グループ、ならびにLDCs及びSIDSから各1名を入れることが提案された。

技術メカニズムと資金メカニズムのリンケージに関するワークショップ

TEC、GCF理事会、CTCN諮問委員会、GEFより、各組織の作業ならびに組織横断的なリンケージ(連携)についての紹介があった。

TEC、CTCN、資金メカニズム運用機関の間の協力・連携の強化に関するセッションでは、アンティグア・バーブーダは、適切にリンケージが練り上げられた場合、技術メカニズムが市場ベースのメカニズム(パリ協定 6条)の中核になりうると示唆した。セネガルは、国内機関のキャパシティビルディングの重要性を強調した。UNEPは、TNAsが技術機関と資金メカニズム運用機関の間に不可欠な幹線であると指摘。TECは、ポリシー・ガイダンスを提供するというTECの役割が協力面で重要なチャネルとなると強調。CTCNは、シナジー効果の活用と重複防止のための技術オプションを特定するために国レベルでの連携が必要だと示唆した。GCFは、リンケージが同機関のビジネスモデルをいかに支援できるか検討するよう求めた。GEFは、技術移転の障壁を克服するためのパイロットプロジェクトから学んだ教訓を生かす必要があると強調した。

出席者が議論したテーマは以下の通り: 資金アクセスにおいてSIDSが直面している課題; 収益可能性とプロジェクトデザイン; 委員会によるリンケージ調整のニーズ; 資本集約的な研究開発実証(RDD)への支援; TNAsを収益力あるプロジェクトに変える“仲介役”としてのCTCNの役割; 技術に関するGEFとGCFの連携等。

廊下にて

土曜日。夕方にはボン世界会議場外で過ごせそうだとの見込みから参加者は満足気な表情で会場入りした。それは膨れ上がるSBIやSBSTAの議題項目に対応した結論書草案に関する合意を促す動機づけになったかもしれない。

作業構成について着実に進展したことを受け、APAが“ADPモード”に陥らずに済んだとして、安堵する声も聞かれた。 一方で、SBIの公開登録簿に関する議論は、さながら森林の獣たちの “ジャングル”だという例え話も飛び出した。緩和と適応の“獣”は同じ登録簿の“森”の中で生きられるのかという議論に発展したが、果たして2つの“種”が共生できるものかとの疑問もあがった。

COP 21と22の議長が共催したストックテイクのイベント会場をあとにして、参加者2~3名から、今までのところSB 44は“リマ、そしてパリから継続している連帯意識”を維持するのに役立っているとの認識を受けた。

(IGES-GISPRI仮訳)

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