アース・ネゴシエーション・ブレティン (地球交渉速報)

第12巻第680号 - 2016年11月9日(水)


マラケシュ会議ハイライト

2016年11月8日(火) | マラケシュ、モロッコ


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モロッコ・マラケシュからのIISD/ENBレポートの リンク先: http://enb.iisd.org/climate/cop22/enb/

国連気候変動会議は8日(火)、モロッコ・マラケシュで開催された。午前にはAPAコンタクトグループが行われ、再開したCOP/CMP合同プレナリー(全体会合)では各国の声明発表が行われた。また、幾つかのコンタクトグループやSBI・SBSTA非公式協議、APA非公式協議が一日を通して開催された。

COP/CMPプレナリー

COP議長Salaheddine Mezouarが開会を行った。

タイは、G-77/中国の立場から、先進国に対し、プレ2020年の緩和目標を引き上げ、動員の取り組みを増やすよう呼びかけ、透明性枠組みは支援の透明性を強調するものであるべきだと述べた。

交渉から実施に向けて動く必要があるとしEUは、パリ協定の規則書に全員参加と質、緊迫感を求めた。

スイスは、EIGの立場から、実施における非国家主体の役割を強調し、今次会議の2週目もAPAの作業を非公式に続けるとする議長の方針を支持した。

オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、COP 22は実施と行動のCOPとすべきだと述べ、CMA 1をいったん2018年まで中断すべきだとする案を支持した。

マリは、アフリカ・グループの立場から、各国のINDCsの野心レベルの低さを鑑み、プレ2020年の行動を強化する必要があると強く主張した。

モルディブは、AOSISの立場から、議論開始のため議題に2018年促進ダイアログを追加するよう求め、WIMに関して堅牢なレビューを実施するよう提唱した。

コンゴ民主共和国は、LDCsの立場から、適応委員会やLDCs基金(LDCF)、適応基金で利用可能な資金の不足について懸念を示した。ニカラグアは、SICAの立場から、実施手段(MOI)アクセスに対して一貫したアプローチが必要だと主張した。南アフリカは、ブラジル、南アフリカ、インド、中国で構成するグループ(BASIC)を代表し、野心引き上げと支援に関する促進ダイアログにおける具体的な成果を出すとともに、2020年までの資金支援について1000億米ドルを達成するための具体的な道筋を示すよう求めた。

サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、LMDCsの立場にあるボリビアとともに、条約の諸原則を訴え、パリ協定の実施に関する交渉に全ての締約国を参加させることが重要であると主張した。ベネズエラは、ALBAの立場から、条約に則り、パリ協定に署名や批准を行っていない国々も資金を受け取れるようにすべきだと主張した。

コスタリカは、AILACの立場から、マラケシュにおけるPCCB及びWIMに関するレビューの委託条件(ToR)をまとめるよう求めた。

TUNGOsは、気候資金のコミットメントを現実に変えるという確約を与え、単なる移行期の要素を各国のNDCsへと統合するよう求めた。

現行のコミットメントでは2.9-3.4℃の地球温暖化を招くと指摘する2016年版UNEP排出ギャップ・レポートを想起し、女性とジェンダー団体は、CBDR原則に沿って、もっと大幅に排出削減を行うよう求めた。

若者代表のNGO団体(YOUNGOs)は、説明責任の担保における市民社会の役割を強調し、長期の脱炭素ロードマップを提示するよう締約国に求めた。

企業・産業団体(BINGOs)は、パリ協定のポテンシャルを発揮させるためには企業の関与が不可欠だと述べた。

農業団体は、COP 22が確実に農業関連の国際行動の動員をサポートするよう求めた。

先住民団体は、NDCsのプロセスへの先住民の全面的かつ効果的な参加を担保するよう要請し、GCFに対しては先住民に関する規約の採択を求めた。

CANは、“ドーハ改正さえ批准せずに締約国は自ずと失敗のお膳立てをしている”と嘆いた。

パリ協定の発効準備とCMA1会合: COP議長が午後から非公式協議を実施した。CMAを2017年、または2018年に延期するとの案について、そこから発されるメッセージや風評リスクが議論となった。2017年支持派は、進捗状況を評価し、おそらくは準備が整った相当数の決定書を採択できるメリットを強調した。一方、2018年支持派は、一部の国では“一連の規定”づくりや批准プロセスに時間がかかると主張した。また、2018年まで延期するか、全ての補助機関が決定書1/CP.21 (パリの成果)に規定された役割を果たすまでは、CMAを延期すべきだと提案するグループもあった。非公式協議が続けられる。

APA

項目3-8: APA共同議長Jo Tyndallは午前のコンタクトグループで、APAの全項目に関する単独コンタクトグループの会合を11月10日(木)に開催し、進捗状況の評価を行い、必要に応じて追加会合を実施し、進行役を置いた非公式協議で成果を検討することを提案した。

会議2週目にAPAで作業する可能性について質問が挙がると、Tyndall共同議長は、公式には実質的作業を11月14日(月)に終了しなければならないが、その後で技術的な作業を行うことは物理的に可能であると説明し、参加者の意見を求めた。

共同議長シナリオノート(APA.2016.1.InformalNote)で提案されていた通り、非公式協議における作業構成について締約国の合意が得られた。APAのTyndall共同議長は、“締約国だけの議論”が将来的に必要になる場合はオブザーバーに議論の内容に関する情報提供を行うものとし、これら全ての非公式協議をオブザーバーに開放すべきだと述べた。

決定書1/CP.21の緩和セクションに関する追加指針: Gertraud Wollansky (オーストリア)とSin Liang Cheah (シンガポール)が共同進行役を務めた協議で、今後策定すべき指針、3つの小項目間に想定される関係性、成果に関する期待及び進捗状況の記録法及び追加のインプットに関するオプションと2017年に目標とする作業について焦点を当てつつ、COP 22の作業に関する意見交換が行われた。

今後策定すべき指針に関しては、議論すべき各小項目下のサブトピックの特定; 全ての締約国に共通する全般的な情報とNDCのタイプ別に固有の情報への重点化; NDCs全体のインパクトを総集する能力の重要性を留意; さらなる議論の出発としての決定書1/CP.21の利用等の提案があった。

中国は、LMDCsの立場から、サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、NDCsのスコープを定義し、運営指針に横断的な問題として差異化を反映させる必要があると強調したが、ニュージーランドが反対を唱えた。

成果については、モルディブ(AOSIS)をはじめとする国々が、2018年までの作業計画の策定を求めた。APA 1-2の進捗状況の把握が重要だと多くの国が同調した。非公式協議は続けられる。

行動・支援の透明性枠組みのためのモダリティ・手続き及びガイドライン: Andrew Rakestraw (米国)とXiang Gao (中国)が共同進行役となり、透明性枠組みのモダリティ、手続き、ガイドライン(MPGs)の主要素の特定; MPGs策定に際して既存の測定・報告・検証(MRV)の調整経験に関する情報提供を行い、これを必要とする途上国向けに柔軟性を反映させること; 予定どおりMPGsを完成させるための2017年、2018年の作業構成を策定等、骨組みとなる問題についての非公式協議が行われた。

シンガポールは、G-77/中国の立場から、MPGsの要素は、13条(透明性枠組み)の“shall”や“should”に沿って素案を作るべきだと主張した。ブラジルは、パリ協定には、この議題項目に影響を与える要素が他にも多くあると強調した。多くの締約国は、平行して行われる関連の議論で作業が重複することに警戒感を示した。

ニュージーランドは、ガイドラインの各要素に取り組む際の柔軟性の問題提起に支持を表明した。

COP 22で最も重要な成果は、今後2年間の作業計画になるとの意見があった。EUは、報告や技術専門家レビュー、多国間の検討に向けて3組のガイドラインに関する締約国の意見書(サブミッション)における全般的な合意を定義すべきだと指摘し、まずは報告ガイドラインについて、おそらくはワークショップの中で取り上げる案を支持した。非公式協議が続けられる。

グローバル・ストックテイク: Nagmeldin G. Elhassan (スーダン)とIlze Prūse (ラトビア)が非公式協議の共同進行役を務めた。モダリティについては、プロセスには技術と政治の局面があると多数の参加者が指摘した。コロンビアは、AILACの立場から、政治局面の成果を出すために技術的な局面に対処するような特別作業部会を設置することを提案した。マーシャル諸島は、これらの局面の分離に関する見解や構成化された専門家ダイアログ(SED)から学んだ教訓、共通タイムフレーム等について議論することを提案した。イランは、LMDCsの立場から、行動と支援のつながりを強化し、追加的な負担を防止することを求め、中国とともに、実施への潜在的な障害を特定することを要求した。グレナダは、グローバル・ストックテイクやタイムライン、プロセス、各種機関からのインプット、他のUNFCCCプロセスとの連携を実施するような機関を特定することを求めた。

インプット情報源としては、主にIPCCの科学情報とすることに多数の参加者が合意した。数カ国からインプットに関する非網羅的リストの提案があり、EUはインプット管理法についての審議を要請した。モルディブは、AOSISの立場から、適応と損失・被害に関する情報が有用であると示唆し、1つのインプット情報として、“衡平性に対する規範的なアプローチの交渉すること”に危惧を示した。マリは、アフリカ・グループの立場から、衡平性枠組みに関する先の同グループの意見書を想起した。

成果については、LMDCsが包括性と国際協力の強化を提案した。AOSISは、気候融資の統合に期待を示した。AILAC及びEUは、行動を活性化し、より大きな野心を抱くべきだと強調した。

実施推進及び遵守促進に関する委員会の効果的な運営のためのモダリティ及び手続き: 午前と午後にJanine Felson (ベリーズ)とPeter Horne (オーストラリア)が共同進行役を務める非公式協議が開催され、主に委員会のスコープに関する議論が行われた。多くの国が、罰則を科すよりも実施を促す一般的なアプローチが必要だと強調した。また、多くがスコープは包括的であるべきだと強調した。米国は、様々な問題が新たに浮上しているため先見的に考え、実効性ある説明責任を担う必要があると主張した。

アンティグア・バーブーダは、AOSISの立場から発言し、法的拘束力を有する条項にするには、委員会は遵守に特化するか、さもなければ促進的な行動に特化すべきであると主張した。カナダは、各国にとって第一義の法的義務はNDCの提出及び報告だと指摘した。マリは、アフリカ・グループの立場から、個々の国の評価と全体的な進捗評価は並行して行う必要があると強調した。

ニュージーランドは、自国のNDCsの実施について、全ての締約国は等しく説明責任を負うべきだと提案した。イラン(LMDCs)、チリ(AILAC)、中国、フィリピン、マリ(アフリカ・グループ)、ニュージーランドが、各国がコミットメントを実施するための国家の能力とのつながりについて強調した。EUは、このメカニズムの運営は透明性をもつべきであり、他のプロセスの法的な取り決めを尊重しなければならないと強調した。協議は継続する。

パリ協定の実施に関する更なる問題: 非公式協議では、APA共同議長Baashanは、適応基金に関して、APAの作業完了のため取り組むべき重要課題や本件に関してAPAの役務遂行のため講じるべき手段、この役務に関するAPAの作業着手にあたって検討すべき関係性(リンケージ)等の問題を検討するよう要請した。

中国、フィリピン、バハマをはじめとする国々は、適応基金をパリ協定に役立てるよう要請した。EUは、ノルウェー、米国、オーストラリアは、この問題がさらなる議論を正当化していると示唆し、全体的な気候ファイナンス・アーキテクチャの観点から検討することがベストであり、学んだ教訓を考慮する必要があると提案した。

参加者はパリ協定の発効を歓迎し、協定に未だ批准国していない国々に対してはこれを行うよう奨励することで意見が一致した。9日(水)にCMA 1の準備手続き面、10日(木)に適応基金についての審議が行われる予定だ。

SBSTA

パリ協定6条に関する問題: パリ協定62項に記載された協力的アプローチに関する指針: 共同進行役のKelley Kizzier (EU)とHugh Sealy (モルディブ)が提起した基本課題に対し、各国が反応を示した。基本課題は以下の通り: 環境保全と持続可能な開発を確保するためのオプション; 対応する調整に関する機能;指針を提供する範囲; パリ協定6条2項と6条4項(GHG排出量の緩和と持続可能な開発の支援に寄与するメカニズム構築)の関係性、及び6条2項と4条13項(NDCsアカウンティング)の関係性の処理。

指針のスコープに関しては、オープンな移転が可能な範囲に収めるよう多数の参加者が提案したが、CMAの下で集中的なガバナンスと適切な機関を求める意見もあった。いくつかの国が、SBSTA 45で議論するには「対応する調整」の問題はあまりに技術的だとの声もあった。“関係性”については、緩和の成果は“6条2項に基づき”移転されるが、国際移転された緩和成果(ITMOs)は、6条4項で創設されたものも含めいかなるメカニズムからも創出可能だとの指摘があった。会期と会期の間の進め方については締約国の合意が成立しなかった。

パリ協定68項に記載された非市場アプローチの枠組みに基づく作業計画: Kelley Kizzier (EU)とHugh Sealy (モルディブ)が共同進行役を務める非公式協議では、ガバナンス、定量化、アカウンティング(会計処理)、国際協力が、非市場アプローチに関連性が高いかどうかという基本課題について各国から意見が述べられた。

非市場アプローチのNDCsに対する貢献量のトラッキングを検討する上で、ガバナンスの重要性が指摘された。また、多くの締約国は可能な場合は定量化が有効だとし、現在の報告チャネルやGHGインベントリがこの目的に役立つとの提案があった。

「アカウンティングは必須でも義務でもないが、自主的な利用のために手続きやガイドラインが整備されれば参考になる」との意見もあった。パリ協定6条2項と6条4項間の相乗効果を期待する声や重複を指摘する声もあり、こうした重複は二重カウント防止のためのアカウンティングを必要とすると危惧するグループもあった。

非市場アプローチに係る国ごとの特徴に関する意見交換も行われ、国家行動を増進しうる国際協力の分野について多くの指摘があった。制度的なアレンジについては、作業計画にワークショップを含めるとの提案や、クリアリングハウス創設や非市場アプローチのタイプ別分類化、アプローチに関するマッピング作業の実施などの案が挙がった。

パリ協定97項に則り公的介入を通じて供与・動員された資金源の会計処理のモダリティに関するインセッション・ワークショップ: SBSTA議長Carlos Fullerがワークショップを開き、本件に関してSBSTAの作業に情報提供するという重要な役割があると指摘した。Outi Honkatukia (フィンランド)とRafael da Soler (ブラジル)が共同議長を務めた同会合は、状況設定プレゼンテーション、パネルディスカッション、分科会のディスカッション、報告セッションの4部構成で行われた。

状況設定プレゼンテーションは、UNFCCC事務局、EU、モルディブ(AOSIS)、国際援助透明性イニシアティブ(IATI)によって行われた。取り上げられたテーマは、条約の下で現在実施されている会計処理; 会計のモダリティ; コアの原則を含めて気候資金としてカウントされる項目に関する相互理解の到達; 情報の透明性向上のためのIATIの経験等。

パネルディスカッションは、エクアドル(LMDCs)、スイス、米国、マリ(LDCs)、OECD(経済協力開発機構)が行い、支援がいかに国家主導の戦略に対応しているかという情報を盛り込む必要性、複数の主体による二重カウント防止、多国間の資金の流れや動員された民間資金に関する方法論の改善、1000億米ドルの目標をめざす先進国全体の取り組みに関する報告、レポーティングとアカウンティングの区別、追加性の明確化、新たに登場する行為主体の把握等必要性が強調された。

分科会のセッションでは、現行のモダリティをベースとすることや、動員された民間資金の会計処理、パリ協定の透明性枠組みに会計のモダリティをいかに統合するかという課題を含めたパリ協定向けのモダリティ等が中心的なテーマとなった。非公式協議での議論が午後も続けられた。

SBI

技術の開発・移転: 技術移転に関するポズナニ戦略計画: 非公式協議はElfriede-Anna More (オーストリア)とWashington Zhakata (ジンバブエ)が共同進行役を務めた。進行役のMoreは、ポズナニ戦略計画の実行における進展に関するGEFの報告書(FCCC/CP/2016/6)を検討することが、この協議の目的であると指摘した。

再編集されたGEF報告書について、数カ国から歓迎する声があがった。GEFに対しては、課題や教訓に関する更なる報告書の作成を促し、GEFとCTCNとの連携に関する追加情報を奨励または要請するとともに、技術行動計画の試行を検討するよう締約国が要請した。9日(水)午後も共同進行役が作成した素案を踏まえてグループ審議が続けられる。

SBSTA/SBI

WIM執行委員会のレポート: Alf Wills (南アフリカ)とBeth Lavender (カナダ)が非公式協議の共同進行役を務めた。レビュー対象にCOP 19で定められたWIMの役務、構成、実効性を含めるという点では一般的に意見が一致した。上記3要素のそれぞれの下で検討すべき課題について議論が行われた。レビューに関する“後進的な”要素とパリ協定を考慮する“先進的な”要素を切り離すべきだとの提案もあった。共同進行役は、後進的な”要素と“先進的な”要素を区別して、レビューの課題リストをまとめる。次回の非公式協議では、WIM執行委員会の報告書について議論する。

廊下にて

2日目のBab Ighli会議場に到着した参加者は、会場内の多くの会議室に入る準備を整えていた。APAでは史上初となる課題別の非公式協議が行われた。共同議長のアドバイスに従って、来週月曜のAPA閉会後にも非公式ダイアログを実施し、作業を進めるという案について、ランチタイムにも数名の政府代表が意見を交わしていたが、そうしたダイアログによって果たして前進させられるものかとの疑問も出ていた。“時間は最大限活用すべき”との意見が大半を占めていたが、高官レベルのイベントが目白押しとなれば専門家の時間がとられてしまうとの声もあった。2週目のリマ会議では「ADPで要素に関する実質的な作業を遂行できた体験」に思いを馳せ、当地のAPAでも同様の進展を期待する政府関係者もあった。一方で、 NGO団体は今週のAPA非公式協議を危惧していた。開かれた交渉にするという事前の取り決めにもかかわらず、各団体に2つのバッジが割り当てられるとの件に失望感を示していた。

アメリカの大統領選の結果がポツポツ漏れ聞こえてくると、「明日目覚めるとまったく様変わりした気候の現実に直面することになるのではないか」と多くの参加者が思案していた。