Daily report for 12 November 2016

Marrakech Climate Change Conference - November 2016

モロッコ・マラケシュで開催された国連気候変動会議は11月12日(土)も続けられた。午前には非公式のストックテイキング・プレナリーがCOP議長により開催され、COP、CMP、SBI、SBSTA及びAPAの下で、コンタクトグループの会合や非公式協議が終日開催された。

また、SBIとCOPの下で、国際評価レビュー(IAR)プロセスの第2回多国間評価プロセスが開始した。

ウェブキャストのリンク先: http://unfccc.cloud.streamworld.de/webcast/first-working-group-session-of-the-multilateral--2.

COP議長による非公式ストックテイキング・プレナリー

COP 22/CMP 12 議長 Salaheddine Mezouarが非公式のプレナリー(全体会合)を開会し、COP及びCMPの作業が“開始”したと述べ、11月16日(水)までに結果を出せるよう期待を示した。また、COP 22/CMP 12 議長は、CMA手続きルールの採択; アフリカの脆弱性; 地域のコミュニティーや先住民向けのプラットフォーム等に関する協議を執り行う代表団のメンバーを任命したことを伝えた。

COP等の下で行うCMA 1に関するオープンエンド非公式協議については、Mezouar議長が“うまく進展している”と述べた。

SBSTA 議長 Carlos Fuller (ベリーズ)はほぼすべての項目に関する作業は完了したが、WIMレビューやパリ協定6条(協力的アプローチ)等の項目の作業は依然継続中であると報告した。

SBI議長 Tomasz Chruszczow (ポーランド)は、今次会合のそれぞれの目的に基づく合意事項について、第1回FSVを経たものも含めたカンクンMRVシステムの完全稼働の実証、PCCB稼働等に伴うパリ協定の実施に関する作業の前進、条約および京都議定書の課題に係る実施の推進などがあると報告した。また、現在進行中の交渉としては、SCFの役割に関するレビュー向けToR等があると指摘した。

APA共同議長 Jo Tyndall (ニュージーランド)は、各項目について4~6回の協議が行われ、共同進行役のノート(覚書)の第1版を作成、11月14日(月)の午後までに作業を完了することを目指して作業を継続する予定になっている点などを挙げ、順調な進行ぶりを伝えた。

Global Climate Action ChampionのHakima El Haité (モロッコ)は、グローバルな気候行動アジェンダ(GCAA)のテーマ別イベントの成功、ならびに技術審査プロセスの指針に関する締約国との協議について報告した。

その後、Mezouar議長は、CMA 1、ハイレベル・セグメント、数多くのハイレベル・イベント等、第2週目の交渉計画案の概要を示した。

スイス(EIG)は、オーストラリア、EU、コスタリカ(AILAC)、コンゴ民主共和国、モンゴル、アルゼンチン、カナダの支持を受け、 第2週目もパリ協定の“ルールブック”に関する作業継続を求めたが、ボリビア(LMDCs)、モルディブ(AOSIS)がこれに反対した。Mezouar議長は本件を午後に予定される次回ビューロー会合で取り上げると述べた。

また、Mezouar議長は、“マラケシュ行動声明(Marrakech Call for Action)”について、“我々すべてが取り組んでいる価値観に基づく声明”であると称し、全締約国に対して、マラケシュ行動声明を支持するよう訴えた。

COPコンタクトグループ及び非公式協議

UNFCCCプロセスの意思決定: Azoulay Lahcen (モロッコ)が非公式協議の座長を務めた。プロセスの正当化に向けた手続きルール素案の支持が重要だと言及し、3つの国が、対話こそが有効で成文化の必要はないとする決定書素案を求めたが、あるグループがこれに反対した。今後の方針については、2017年5月の補助機関(SBs)会合での“異例なまでの作業負担”が発生したことを指摘し、COP 23で議論を継続するよう提案があり、締約国の合意が得られた。

資金に関する問題: パリ協定95項に則って締約国に提供される情報を特定するプロセスの開始: 非公式協議では、コンタクトグループ共同議長が作成したリストについて、メカニズムやパラメーターに関する意見を盛り込みつつ各国が見解を示した。

この議題項目が終了となった際にSCFを本件に関する“ホーム”とみなすかという問題に関しては、各国の意見が分かれた。情報よりもプロセスを重視すべきだとの意見が出る一方、事前情報をもっと明確にする必要があると強調する意見も出た。

いくつかの国は、報告内容として資金情報に関するタイムラインと頻度について議論すべきではないと考え、パリ協定は“隔年の報告書”について明確にしていると示唆した。一方、提出文書の中でどのようなタイムフレームを使うのかという情報が本文では欠如しているとの指摘もあった。共同議長は締約国との二国間ベースの協議を踏まえ、ノンペーパー改訂版を作成する。

長期気候資金: 非公式協議では、 今後の決定書の文案について、フィリピン(G-77/中国)、EU、オーストラリア、日本、ニュージーランド、ノルウェー、米国を代表してカナダが、書面による意見書を提出した。

これを受けて、締約国からは、インセッション・ワークショップの有用性やSCFの第2回隔年評価を歓迎する意見など提出された意見書に幾つかの類似点があったとの指摘があった。

他方、実現した進展について強調すべきか否かという点や適応資金のギャップならびに資金支援の拡充に関する取り組み方について注目させるかという点については、各国の見方が分かれた。非公式交渉の後、共同議長は各国から提出された意見書や今後の審議に対する意見をベースに構成した素案文を作成する。

GEFCOPへの報告及びGEFへのガイダンス: 非公式協議では、決定書草案の文言について各国が簡単に所感を述べ、“さらに簡略化する必要がある”との見解で一致した。共同議長は、事務局の支援を受けつつ、簡略化した文案を作成予定。

技術開発・移転: 条約の技術メカニズム及び資金メカニズムのリンケージ: El Hadji Mbaye Diagne (セネガル)及びElfriede More (オーストリア)が非公式協議の共同進行役を務めた。多くの国が、SBI 44インセッション・ワークショップや相互の会合におけるGCF、GEF、TECの存在、UNFCCC諸機関の連携強化に向けてGCFが開催した年次会合などの進展について評価した。

連携を強化すべき分野としては、年次報告書における進展の伝達やメカニズム調整部門の設置等の意見が挙がった。協議は継続する。

CMPコンタクトグループ及び非公式協議

JIに関する問題: コンタクトグループでは、Dimitar Nikov (フランス)及びArthur Rolle (バハマ)の両共同議長が、JISCの年次報告書に関する提言案(FCCC/KP/CMP/2016/5)及びJI関連の指針に対する各国の意見を募った。

EU、スイス、中国、ニュージーランドは、報告書について言及することを支持した。EUは、ネット上の参加をJISC会合の定足数としてカウントすべきだと強調したが、ウクライナは技術及び時差による制約があると指摘して懸念を示した。日本は、パリ協定に基づく新メカニズムの発足のために実施する作業を予断することに警戒感を示した。議論は続行する。

CDMに関する問題: コンタクトグループでは、共同議長のKaroliina Anttonen (フィンランド)及びHlobshile Shongwe (スワジランド)が CMPへのCDM理事会の報告書(FCCC/KP/CMP/2016/4)に関する意見を求めた。

ブラジルは、ICAO(国際民間航空機関)のCORSIA(国際民間航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム)との関連で、CERsの活用について強調した。インドは、小規模プロジェクトの検討を求めた。EUは、段階的プロジェクトの利用拡大によるモニタリングコスト削減の可能性を模索するよう求めた。

セントルシアは、AOSISの立場から、CER登録簿の透明性、二重カウント、CDM融資スキームに関する進展を期待すると述べた。議論は続けられる。

適応基金に関する問題: 適応基金理事会の報告書: 非公式協議では、結論書草案と決定書が締約国の歓迎を受けた。ただし、一部の参加者からは、利用可能な基金の現況、キャッシュフローに関するレポーティング、稼働しているプロジェクト・パイプラインの現況、及び適応基金に提出されたプログラム提案; 資金調達戦略; パリ協定の運用化に向けた適応基金の付加価値に関するAFB報告書補遺、等々の記載を盛り込むべきだとの提案があった。共同議長は締約国からの意見を基に素案の文章を修正する予定。

SBIコンタクトグループ

事務管理、資金、制度上の問題: 2016-2017年の二ヶ年予算収支: 前日に検討を行ったCOP決定書草案を元にコンタクトグループの議論が行われた。

特に、未だ貢献をしておらず報告を返していない締約国へのフォローアップ作業と報告を行うよう事務局に要請するかという問題や、“さらなる貢献”や “さらなる貢献を行うよう締約国に”要請するか、UNFCCCプロセスへの参加をめざして信託基金向けに“さらなる貢献を行うよう附属書IIの締約国に対して”奨励するかという問題などが話し合われた。

議長の島田久仁彦(日本)は、本件を議長レベルで取り上げることを示唆し、コンタクトグループではCOPに提起する決定が出なかったことに言及した。

ニュージーランドは、事務局内の2017年作業計画用の資金が不足する可能性を受けて、2016-2017年の貢献規模の改訂に関するパラグラフを受理するよう締約国に促したが、サウジアラビアが同意しなかった。

APAコンタクトグループ及び非公式協議

パリ協定の実施に関するさらなる問題: 非公式協議議では、パリ協定のための適応基金の役割に焦点があたった。バハマ(G-77/中国)への返答として、米国は、京都議定書の締約国ではない国々の運営組織への参加を担保するかという問題; 適応基金をパリ以降の資金アーキテクチャに適合させるかという問題; 適応基金の実効性の評価; 資金供給源すべてに関する合意; セーフガード指針のレビュー等に関する懸念を明確にした。さらに、EUは、適応基金はCMPの監督下にあり、他にCMAの監督下にある資金関連機関はないとし、基金に関する第3回レビューは“通常業務ではない”と述べ、基金の業務協定を検証すべきだと言い添えた。また、EUは、タイムラインと終了日、解決すべき課題などを盛り込んだ明確な作業計画への合意を求めた。

ツバル(LDCs)、アルゼンチンは、法的な問題に対して講じうる解決策について強調した。アルゼンチンは、第3回レビューも前回、前々回と同様であり、セーフガードの指針や実施期間との取り決めはGCFのそれと類似していると指摘した。G-77/中国は、遅くとも2018年までにCMAで必要な取り決めを策定可能だと指摘した。

APA共同議長は、この議題項目の下にある諸問題についての先の議論に関する締約国の見解をまとめた覚書付きの省察録を配布した。非公式協議が続く。

決定書1/CP.21の緩和セクションに関する追加指針: 共同進行役のGertraud Wollansky (オーストリア)が非公式協議で、ごくごく非公式に行われた前日の非公式会合について伝え、もっと焦点を絞った意見書提出を要請することに対して全般的な合意があったことを指摘しつつ、現段階では追加の技術的な作業については全く合意がなかったことに触れ、これが今後の選択肢として残ると報告した。

その後、NDCs向けの会計処理に関する意見交換が行われた。決定書1/CP.21 パラグラフ31 (NDCs会計処理指針)が指針策定の基礎となることで多数の意見が一致した。ケニアは、アフリカ・グループの立場から、指針に柔軟性をもたせるよう求め、EUとともに、漸進を促すよう要求した。多くが条約および京都議定書の下の既存の取り決めを土台とし、途上国向けに柔軟性付与する案を支持した。サウジアラビアは、アラブ・グループを代表し、途上国の方法論とアプローチは国ごとに決定すべきだと述べた。

アルゼンチンは、異なるNDCタイプには“説明責任の異なるレイヤー”が必要だと示唆した。ニュージーランドは、指針策定に向けたオプションの幅を提案し、NDCタイプの特定や各タイプの指針策定; CDM方法論パネルに類似したパネルに基づく評価; それらのアプローチがパリ協定4条13項(NDCsの会計処理)の諸原則と合致している理由と方法についての締約国向けの説明をする等といったオプションを示唆した。

また、リンケージの特定については、特にこのAPA議題項目の下の他の小項目やパリ協定6条(協力的アプローチ)及び13条(透明性枠組み)との関連を特定するよう提案が挙がった。

中国は、LMDCsの立場から、会計処理について定義するよう要求した。さらに、技術とキャパシティビルディングの支援のための会計処理指針の策定を求めたが、EUがこれに反対を唱えた。

実施を推進し、遵守を促進する委員会の効果的な運用を目的とするモダリティ及び手続き: 非公式協議で、共同進行役を務めたJanine Felson (ベリーズ)が、意見書を提出して委員会の効果的な運用手順や手続きを規定し、そうした手順や手続きを通じて対応可能な要素を詰めるべきだと提案し、いくつかの国が支持を表明した。また、本件が他の問題に関する意見書の提出を妨げるものではないとも言及した。

ガンビアは、LDCsの立場から、今次会議で作業計画を策定するよう要請した。こうした提出意見が作業計画の一部になるのかという質問があがった。ノルウェーは、意見提出を踏まえて統合文書を作成するよう提案したが、イランが反対した。

Felson共同進行役は、意見書提出でもさらなる作業について取りあげることを提案し、セントビンセント及びグレナディーン諸島(AOSIS)、ノルウェーをはじめとする国々が支持した。イランは、2017年5月の議論との関係において、今後の方針に関する議論を始めるよう提案した。

非公式協議が続く。

NDCsの一要素としてのものも含む、適応報告書に関する追加指針: 共同進行役Beth Lavender (カナダ)は、前日のインプットを踏まえて、適応報告書の異なる側面に関する各国の意見をまとめた表が更新されたと指摘した。

アルゼンチン(G-77/中国)の要請を受け、非公式な無交渉ノート(non-negotiated note)素案が締約国に提供されると進行役が伝え、意見の収束・分裂がみられる諸問題に関する共同進行の省察を盛り込み、報告書に上記の表を添付することを提案した。

来年にかけての技術作業を進めるべく、ニュージーランドは、共通のテーマ周辺で本項目に関する各国の提出意見書を事務局が統合するよう要請することを提案した。EUは、適応報告書に関する現行の指針を編纂したものも含めた技術文書の作成を事務局に要請する意見に支持を表明した。

Lavender共同進行役は、締約国に対し、共同進行役の覚書案を検討するよう要請し、14日(月)に今後の作業計画に関してさらに意見を出すよう募った。

行動・支援のための透明性枠組み向けMPGs: 共同進行役の作業計画に関する非公式覚書原案が非公式協議で議論された。

作業構成に基づき、中国は、現在のメカニズムと差異化の原則を土台とすべきだと強調した。

モダリティー(手順)に関するセクションについては、技術文書や統合文書は2017年下半期および2018年からの活用については合意に至っていない事項だとの数カ国からの懸念を受けて、EUと南アフリカは、今後の会議でそうした文書の価値を概ね認識することを提案した。

今後のステップのセクションにおける意見書提出については、ブラジル、EU、ニュージーランド、韓国、ペルー(AILAC)、米国が、MPGsの前に“共通”を挿入すべきだと主張したが、中国とインドが反対した。

ワークショップについては、今後のステップの下欄の記載だが、ブラジルが、技術専門家レビュー及び促進的な多国間審議に関するワークショップの議論をレポーティングの議論と“同時/補完的に”実施することを明記すべきだと提案した。ニュージーランドは、ブータン、米国、ノルウェーの支持を得て、ワークショップへのインプットとして文書を事務局作成すべきだと提案したが、ブラジルが反対を唱えた。

ブラジル案の挿入やその他の些少な修正と合わせて、本項目に関するAPA結論をめざして、締約国は今後のステップを受け入れた。作業構成及び手順のセクションはAPA共同議長のための共同進行役の省察メモに盛り込まれる。

議題項目3-8に関するコンタクトグループ: APA共同議長 Sarah Baashan (サウジアラビア)は、改訂版のAPA結論書草案が作業構成を含めて提供され、APA閉幕プレナリー前の11月14日(月)も非公式協議が続けられることを連絡した。その後、コンタクトグループでは非公式協議の共同進行役による報告が伝えられた。

Baashan共同議長は、修正された結論書草案についての意見を募った。2017年5月にAPAが第2回会合または再開会合を行うか否かという問題については、再開会合を支持する意見が多かった。ツバルは、いくつかの問題は速やかに対応可能であるとし、“バランスのとれた”方法で全項目について進展させる必要があると言及しない方がいいと主張したが、中国と米国がこれに反対した。

ブラジルは、米国の支持を受け、南アフリカや中国、サウジアラビアの反対に遭いながら、CMA 1に託された課題でありながら現在はAPAの作業計画に入っていない問題のためのプレースホルダ―(後に挿入する箇所を示す仮の編集枠)を入れるよう求めた。Baashan共同議長は、本件に関して、APA項目8b (CMA 1開催準備)の下の議論からのアウトプットを待つよう締約国に提案した。スイスと南アフリカは、 予想される各国の意見の相違を反映させるか否かを含めて、追加作業に関するプレースホルダーをいかに投入するか疑問を投げかけた。

廊下にて

COP 22の第1週が終了し、参加者は技術論から政治論へと思考の再調整をし始めた。各国の閣僚がぞくぞくと到着する中、Mezouar議長が“我々すべてが取り組んでいる価値観に基づく訴え”だとして紹介した“マラケシュ行動声明”がどう受け止められるかという疑問が残る。このイニシアティブを歓迎する声もあるが、従来の厄介な問題を再浮上させるのではないかと危惧する声も聞かれた。

歴史に残るCMAの初回会合への期待を胸に、参加者はいかに事の重大性や緊急度を伝えるシグナルを送るか議論したものの、手続き論争が勃発すれば、メッセージの効果は失われる。CMAを2017年に再び開催するか、“ルールブック”全体が仕上がるのを待って2018年に開催するかという問題をめぐり、各国が自らのポジションに固執する様子を見て、ある参加者は“2017年の決定を頼りにするのがコツ”だという。しかし、これにもリスクがある。仮に決定書が準備できない場合、ある参加者曰く、今回の第1週目の議論のように「ルールブックの中身より方法論の議論を続ける」ことを世界にどうやって説明するのか頭をひねる羽目になる。

“赤い街”の日が暮れて、きっとマラケシュですべてが実現するよう願いを込め、多くの参加者は来週からの実施と行動・支援に関するCOPへの期待を滲ませた。

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