Curtain raiser

気候変動に関する政府間パネル第40回会合(IPCC-40)は、デンマーク・コペンハーゲンのチボリ会議場で2014年10月27-31日の日程で開催され、3つの作業部会(WG)の報告書の内容をとりまとめる統合報告書(SYR)の検討とIPCCの第5次報告書(AR5)の最終作業が行われる。IPCCでは、SYRの意思決定者向け要約(SPM)について、一行ずつの承認を行い、その後で分量の多いSYR本体についてセクションごとの採択を行う予定だ。過去6年にわたり、世界85ヶ国の800名以上の執筆者及び査読編集者がAR5の作成に携わった。 SPMの承認とSYR採択の他、IPCC40では、特に2017年までのIPCCの事業予算や今後の作業、コミュニケーション及びアウトリーチ活動、気候変動・食糧・農業に関する技術報告書に対する要請、IPCCの利害相反(COI)ポリシー等について審議する。また、IPCC40に先立つ10月26日、IPCCの将来の作業に関するタスクグループ(TGF)第3会合も開催され、タスクグループ共同議長が準備したオプション・ペーパーの推敲について検討した。

IPCCの経緯

IPCCは、人間の諸活動が原因となっている気候変動に伴うリスク、今後の影響、適応策や緩和策の理解に関する科学、技術、社会経済情報の評価を目的として、1988年、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された。 ただし、IPCC自体では、新たな研究は行わず、気候関連データをモニタリングすることもない。その代わりに、IPCCは発表済みの査読を受けた科学技術文献に基づき、知見を評価する。 IPCCは3つの作業部会(WG)を有する。WG-Iでは、気候系および気候変動の科学的な局面を扱う。WG-IIでは、気候変動に対する社会経済システムおよび自然システムの脆弱性、気候変動の影響および適応策を扱う。WG-IIIでは、温室効果ガス(GHG)の排出を抑制し、気候変動を緩和するための施策を扱う。各WGは、2名の共同議長、6名の副議長を有するが、WG-IIIは第5次評価サイクルの期間のみ、3名の共同議長を有する。共同議長は、パネルが各WGに課した義務が果たされるよう指導し、その任務遂行のため、テクニカルサポートユニット(TSU)の支援を受ける。 さらに、IPCCは、国別温室効果ガス(GHG)インベントリに関するタスクフォース(TFI)を有する。TFIは、IPCCのGHGインベントリ・プログラムを監督するが、このプログラムは、各国のGHG排出量・除去量の計算と報告書作成のため、国際的に合意された手法およびソフトウェアを開発、改善し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国による手法の利用を推進する。 IPCCパネルはビューロー(議長団)を選出し、1つのIPCC評価報告書の期間の任期を務める。議長団の役割は、IPCC作業計画の作成、調整、モニタリングについて、IPCC議長を補佐することである。 議長団は、全ての地域を代表する気候変動の専門家で構成される。現在、議長団は31名。IPCC議長および副議長、3つのWGの共同議長および副議長、TFIの共同議長である。この議長団に加え、2011年、IPCCは、会合間隙中の作業ならびにWG間の調整を支援する執行委員会を設置した。執行委員会は、IPCC議長、IPCC副議長、WGおよびTFiの共同議長のほか、事務局やTSUの長4名を含める諮問メンバーで構成される。IPCC事務局はスイスのジュネーブにあり、WMOがホスト機関となっている。 IPCCの成果:設立当初からIPCCは総合評価報告書、特別報告書、技術報告書を作成。専門家や政府による厳しい査読を受けた気候変動に関する科学情報を国際社会に提供してきた。第1次評価報告書は1990年、第2次評価報告書は1995年、第3次評価報告書は2001年、第4次評価報告書(AR4)は2007年に公表された。 現在、評価報告書は、各WGがそれぞれ作成した報告書をまとめた3部構成となっていて、それぞれの報告書の中に、政策決定者向け要約(SPM)、技術要約(テクニカルサマリー)、そしてその根拠となる評価報告書の本体が収められている。報告書は全て徹底した3段階の査読対象となる。第1段階では専門家による査読、第2段階では専門家と政府による査読、第3段階では政府による査読が行われる。各SPMは、管轄のWGにより、一行ごとの承認を受ける。また、評価報告書には、統合報告書(SYR)も含まれるが、これは3つのWGの報告書の中でも最も重要性の高い項目に焦点を当てたものであり、SYRのSPMは、IPCCパネルにより、一行ごとの承認を受ける。 IPCCは、総合評価報告書のほか、特別報告書、手法論報告書(メソドロジー・レポート)、技術報告書(テクニカルペーパー)を作成し、気候変動の個別の問題に集中的に取り組んでいる。これまでにIPCCが作成した特別報告書は以下の通り。「土地利用、土地利用変化、森林(lulucf)」(2000年);「二酸化炭素回収貯留」(2005年);「再生可能エネルギー源および気候変動緩和 (SRREN) 」 (2011年)。「気候変動への適応推進に向けた極端現象および災害のリスク管理に関する特別報告書(SREX) 」(2011年)等がある。技術報告書としては、「気候変動と生物多様性」(2002年)や「気候変動と水」(2008年)等が作成されている。 さらに、IPCCは、GHGに関する各国の報告を支援する手法論の報告書やガイドラインも作成する。グッド・プラクティス・ガイダンス報告書は、2000年、2003年にパネルの承認を得た。また、最新版のIPCC国別GHGインベントリ・ガイドラインについては、2006年にパネルの承認を得た。さらに、2013年には、「国別GHGインベントリ:湿地のための2006年ガイドラインに対する2013年版追補」、ならびに「京都議定書の手法およびグッド・プラクティス・ガイダンス2013年改訂版」も採択された。 IPCCは、2007年12月、「人為的気候変動に関する知識の構築、普及、変動への対応に必要な基礎の構築」というIPCCの作業と努力に対し、米国元副大統領のアル・ゴア氏とともに、ノーベル平和賞を受賞した。 IPCC-28: 2008年4月9-10日、ハンガリー・ブダペストで開催され、現在のWG体制の維持とAR5の作成について合意した。また、AR5での新シナリオの顕著な利用を可能にするため、WG-I報告書を2013年の早期に、他のWG報告書およびSYRを2014年の出来るだけ早い時期に完成させるよう、パネルが議長団に要請した。 IPCC-29: IPCC設立20周年の記念会合となった本会合はスイス・ジュネーブで、2008年8月31日-9月4日に開催。新たなIPCC議長団が選出され、Rajendra Pachauri(インド)はIPCC議長に再選された。また、IPCCの将来に関する議論が続けられ、ノーベル平和賞の賞金を基に、途上国出身の若い気候変動科学者を対象とした奨学金制度の創設が決まった。 IPCC-30:トルコ・アンタルヤで2009年4月21-23日に開催され、近い将来のIPCCのありかたを中心に議論し、同年7月13-17日にイタリア・ベニスで開催されるAR5スコーピング会議に対する指針を示した。 IPCC-31: 2009年10月26-29日、インドネシア・バリで開催され、ベニスのスコーピング会議の参加者が作成したAR5各章の概要案の承認を主に行った。さらに、途上国や経済移行国の科学者の参加、電子技術の活用、IPCCの長期展望など、IPCC-30での決定事項の進捗状況について検討が行われた。

インターアカデミーカウンシル(IAC)のレビュー:AR4の中の不正確な記述をめぐるIPCC批判や、それに対するIPCCパネルの対応ぶりを受け、国連のBan Ki-Moon事務総長とIPCCのRajendra Pachauri議長は、IPCCのプロセスと手順について第三者レビューを行い、IPCCの強化と報告書の質の確保を図るための提案を提出するよう、IACに要請した。IACは2010年8月にレビュー結果をまとめた報告書を提出。IPCCの管理体制や危機対応計画を含めたコミュニケーション戦略、参加者の選出基準や評価対象の科学技術情報のタイプを含めた透明性、WG間の不確実性に関する定義の一貫性等について勧告した。 IPCC-32: 2010年10月11-14日、韓国・釜山で開催され、IACのレビュー提案を審議した。いわゆる「灰色文献」や不確実性の扱い、過去の報告書での誤記対応プロセスなど、レビュー提案に関連する多数の決定書を採択した。また、さらに検討が必要な提案事項を議論するため、プロセスと手順、利害相反(COI)政策、ガバナンスと管理に関するタスクグループを設立した。また、改訂版のAR5 SYR概要が受理された。 IPCC-33: 2011年5月10-13日、アラブ首長国連合・アブダビで開催され、IACレビューのフォローアップに焦点が当てられた。パネルは、執行委員会を設立し、COI政策を採択し、IPCC報告書の手順に数件の変更を加えた。また、AR5の進捗状況についても検討された。 IPCC-34: 2011年11月18-19日、ウガンダ・カンパラで開催され、IPCC報告書の作成、レビュー、受理、採択、承認、公表に関する手順の改訂版を採択した。また、COI政策の実施手順や公表様式も採択した。 IPCC-35: 2012年6月6-9日、スイス・ジュネーブで開催され、IPCC事務局とTSUの機能、コミュニケーション戦略の承認をもって、IAC勧告に関するパネルの審議を完了させた。  WGI-12およびIPCC-36: 2013年9月23-26日、スウェーデン・ストックホルムで開催。WGIでは、「気候変動2013:自然科学的根拠」と題した第1作業部会のAR5 報告書を完成させた。その後、行われたパネルでWG-1のSPMが承認され、技術要約と附属書を含む報告書本体が受諾された。 IPCC-37:   2013年10月14-17日、グルジアバトゥミで開催され、2つの方法論に関する報告書として「2006年国別GHGインベントリ・ガイドラインに対する2013年追補:湿地」と「2013年議定書補足的方法論ガイダンス」が採択された。また、IPCCの未来像に関する初期的な議論も行われた。 WGII-10およびIPCC-382014年3月25-29日、日本・横浜で開催され、WGIIで「気候変動2014:影響・適応・脆弱性」と題した第2作業部会によるAR5報告書を完成させた。その後、WGIIのSPMが承認され、技術要約と附属書を含む報告書本体も受理された。 WGIII-12およびIPCC-392014年4月7-12日、ドイツ・ベルリンで開催され、WGIIIで「気候変動2014:気候変動の緩和」と題した第3作業部会によるAR5報告書を完成させた。その後、WGIIIのSPMが承認され、技術要約と附属書を含む報告書本体も受理された。IPCCの今後の作業やCOI等についても検討が行われた。また、TGFの初会合が4月6日に行われた。

会合間ハイライト

  TGF2回会合:2014年9月16-17日、スイス・ジュネーブで開催。IPCCの今後の成果物や報告書の作成体制、今後のIPCCの作業における途上国の参加や貢献の促進策などについて、科学者やオブザーバー組織、TSU、事務局から提出された意見書の検討が行われた。また、TGF共同議長が作成したオプション・ペーパーについても検討された。

TGF3回会合:2014年10月26日、デンマーク・コペンハーゲンで開催。IPCCの今後の成果物に関するオプションや提案、そうした成果物の作成にふさわしい体制や方式、今後のIPCCの作業における途上国の参加や貢献の促進策などが討議された。TGFは2015年前半のIPCC-41で作業を完了させ、次期IPCC議長団の規模や体制、公正などの合意を目指すことになっている。

This issue of the Earth Negotiations Bulletin © <[email protected]> is written and edited by Deborah Davenport, Ph.D., María Gutiérrez, Ph.D., Elena Kosolapova, Ph.D., Leila Mead, and Mihaela Secrieru. The Digital Editor is Mike Muzurakis. The Editor is Pamela Chasek, Ph.D. <[email protected]>. The Director of IISD Reporting Services is Langston James “Kimo” Goree VI <[email protected]>. The Sustaining Donors of the Bulletin are the European Commission (DG-ENV and DG-CLIMATE) and the Government of Switzerland (the Swiss Federal Office for the Environment (FOEN) and the Swiss Agency for Development Cooperation (SDC)). General Support for theBulletin during 2014 is provided by the German Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation, Building and Nuclear Safety (BMUB), the New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade, SWAN International, the Finnish Ministry for Foreign Affairs, the Japanese Ministry of Environment (through the Institute for Global Environmental Strategies - IGES), the United Nations Environment Programme (UNEP), and the International Development Research Centre (IDRC). Specific funding for the coverage of this meeting has been provided by the IPCC Secretariat, IGES, the Kingdom of Saudi Arabia Ministry of Petroleum and Mineral Resources and Aramco. Funding for translation of the Bulletin into French has been provided by the Government of France, the Wallonia, Québec, and the International Organization of La Francophonie/Institute for Sustainable Development of La Francophonie (IOF/IFDD). The opinions expressed in the Bulletin are those of the authors and do not necessarily reflect the views of IISD or other donors. Excerpts from the Bulletin may be used in non-commercial publications with appropriate academic citation. For information on the Bulletin, including requests to provide reporting services, contact the Director of IISD Reporting Services at <[email protected]>, +1-646-536-7556 or 300 East 56th St., 11D, New York, NY 10022 USA. The ENB team at IPCC-40 can be contacted by e-mail at <[email protected]>.

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