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2013年ワルシャワ気候変動会議が本日開幕した。2013年11月11日―22日まで2週間の日程でポーランド・ワルシャワにて行われ、 国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP 19)及び京都議定書第9回締約国会合(CMP 9)が開催される。また、3つの補助機関の会合、すなわち、実施に関する補助機関(SBI)、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)、及びダーバン ・プラットフォーム特別作業部会 (ADP)も並行して開催される。  今次会議で、資金、緩和、適応、技術に係わる様々な議題項目が審議される。COPでは、発足2年となったADPが “条約の下で全ての締約国に適用可能な、議定書、新たな法的文書、または法的拘束力を備えた合意成果”を2015年までに策定、2020年までに発効させるという任務の進捗に関する報告を行う予定だ。

UNFCCCと京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため温室効果ガスの大気濃度安定化を目指し、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効、現在は195の締約国を有する。 1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国政府の代表らは、先進工業国および市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で、附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことで合意した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在、192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉: 2005年、カナダ・モントリオールで開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)では、議定書3.9条に則り、京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することを、その役割と定めた。また、COP 11では、4回のワークショップ開催を通じて、条約の下での長期的協力を検討するための「条約ダイアログ」と称されるプロセスも創設された。

2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP 13及び CMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP 13は、バリ行動計画を採択するとともに、条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)を設立し、緩和、適応、資金、技術、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割づけた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。2つの交渉トラックが結論を出す期限は、2009年12月のコペンハーゲン会議と定められた。

コペンハーゲン:デンマーク・コペンハーゲンでの国連気候変動会議は2009年12月に開催された。非常に大きな注目を浴びる会議となったが、透明性やプロセスをめぐる論争が目立った。ハイレベル・セグメントでは、主要な経済国や様々な地域の代表、その他の交渉グループの代表で構成されるグループによる非公式交渉が行われた。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成され、その後、採択のためにCOPプレナリーに提出された。それから13時間にわたる議論の末、参加者は、コペンハーゲン合意に「留意する」ことで合意した。2010年には140カ国以上がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家緩和目標または行動に関する情報を提出した。また、締約国はAWG-LCAおよびAWG-KPの役割をそれぞれ 2010年のCOP 16及びCMP 6まで延長することで合意した。

カンクン:メキシコ・カンクンでの国連気候変動会議は2010年12月に開催され、締約国はカンクン合意を成立させた。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16において、世界の平均気温の上昇を2℃以内に抑えるには世界の排出量の大幅な削減が必要であると認識された。締約国は、世界の長期目標を定期的にレビューし、2015年までのレビュー期間中に目標の強化を更に検討するということで合意し、その際に1.5℃を目標とする案についても検討することで合意した。また、締約国は、先進国と途上国がそれぞれ通知した排出削減目標や国別適切緩和行動(NAMA)に留意した。決定書1/CP.16には、測定・報告・検証(MRV)や途上国の森林減少や森林劣化・森林保全や持続可能な森林管理の役割・途上国の森林貯蓄の強化(REDD+)等、緩和に係わる他の側面についても記載された。

さらに、カンクン合意は、いくつかの新たな制度やプロセスを創設した。その中には、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムがあり、技術メカニズムの下では技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。また、緑の気候基金(GCF)が新設され、24人のメンバーから成る理事会が統治する条約の資金メカニズム運用機関と指定された。締約国は、この基金の設計を課題とする移行委員会や、資金メカニズムに関してCOP を支援する常設委員会の設置についても合意した。さらに、締約国は、先進国が2010-2012年に早期開始資金300億米ドルを供給し、2020年までに年間1000億米ドルを合同で動員するとの先進国の約束についても認識した。

議定書の交渉トラックでは、CMPが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書に明記されたレンジに合わせた総排出削減量を達成するべく附属書Ⅰ国に対して野心度を引き上げるよう促し、土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)に関する決定書 2/CMP.6を採択した。また、両AWGのマンデートはもう一年延長されることとなった。 ダーバン:南アフリカ・ダーバンでの国連気候変動会議は、2011年11月28日から12月11日に開催された。ダーバンの成果として、広範なトピックが網羅されたが、特に京都議定書の第二約束期間の設置や、条約の長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意などが盛り込まれた。締約国は、「条約の下で全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新組織としてADPを発足させることでも合意した。ADPでの交渉は2015年中に完了させることとし、2020年には新合意を発効させることを目指すこととした。さらに、ADPは2℃目標に絡んで2020年までの野心ギャップを埋めるための行動を模索する役割も付与された。

ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、カタール・ドーハにて、国連気候変動会議が行われ、「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成された。その中には、第二約束期間を定めるための京都議定書改正やドーハでAWG-KPの作業を最終的に完了させるための合意が盛り込まれた。また、AWG-LCAの作業完了やバリ行動計画の下での交渉終了についても締約国の合意がなされた。世界目標の2013-15年のレビューや先進国と途上国の緩和、京都議定書の柔軟性メカニズム、国別適応計画(NAP)、MRV、市場及び市場以外のメカニズム、REDD+等、さらなる議論が必要とされる数多くの問題については、SBI及びSBSTAに付託されることとなった。また、ドーハの成果の重要な要素は、途上国の中でも特に気候変動の悪影響に脆弱な国々における損失・被害を検討する制度メカニズム設立のための合意が盛り込まれたことである。

ADP 2:2013年4月29日-5月3日、ドイツ・ボンでADP 2が開催された。この会議は、ワークショップとラウンドテーブルでの議論を中心に構成され、ADPの2つのワークストリームもカバーされた。ADPの議論を進展させるには、この会議方式が有効だという印象を多くの参加者が抱いた一方で、今後のADPはもっと焦点を絞って双方向的なものとすべきだと意見が数名の政府代表から寄せられた。

ボン: 2013年6月3日-14日、ボン気候変動会議が開催された。SBI 38では、COP及びCMPの意思決定に関する法的・手続き的な諸問題を新たな議題項目として導入しようという、ロシア、ベラルーシ、ウクライナからの提案をめぐる議題論争が引き起こされた。この論争に対する解決策は見つからず、SBIでは実質的な討議に入ることができなかった。 一方、SBSTA 38では、特にREDD+や幾つかの方法論の問題などの分野において、多くの参加者が素晴らしいと認めるような進展があった。ADP 2再開会合は、ワークショップやラウンドテーブルを中心に構成されたが、一部の作業をもっと公式的な場に移すためのコンタクトグループの数を1つまたは複数設置するかという点で合意に至れなかった。とはいえ、多くの参加者は、今後の会合でADPが確実に進展を図るためにも交渉モードに転換することが重要だとの所感をもった。

今次会議までのハイライト

技術執行委員会 第6回会合 (TEC 6): 2013年6月26-28日、ドイツ・ボンで開催された同会合では、CTCN諮問委員会の初会合の結果に関する報告や、国連環境計画(UNEP) および事務局の技術ニーズアセスメントに関する現在の作業状況や活動支援についての最新情報の報告が行われた。また、TECとその他の関連機関との間で開始された協働作業や今後の協調などのテーマが取り上げられ、2つの技術ブリーフ素案について議論が行われた。

長期資金に関する第1回専門家会合(LTF): 2013年7月16-17日、フィリピン・マニラで開催された同会合では、気候資金の拡充を動員するための今後の経路やそうした経路を特定するためのパラメーター、途上国における気候資金の動員と効果的な配備を実現させるための環境や政策枠組み等について審議された。

LTF2回専門家会合: 2013年8月19-20日、ドイツ・ボンで開催。気候資金の効果的な配備を実現させるための環境や政策枠組み、途上国の緩和と適応活動向けの資金動員を促進するための公共政策や金融システム、気候資金拡充の動員のための経路を特定するパラメーターなどについて討議された。

LTF総括イベント: 2013年9月10-12日、韓国・仁川で開催された同イベントは、3つのテーマ(①気候資金の拡充を動員するための経路、②気候資金の効果的な配備を実現させるための環境や政策枠組み、③気候資金の拡充を動員させるための環境や政策枠組み)で構成された。これまでの進展を認識する一方で、気候資金の定義や資金供給の予測可能性、民間部門の役割といった側面については更なる作業が必要とされると多くの参加者が強調していた。

IPCC1作業部会(WG I) 12回会合およびIPCC36回総会: 2013年9月23日-26日、スウェーデン・ストックホルムで開催された。 IPCC WG Iでは、第5次評価報告書 (AR5)に盛り込まれる「気候変動 2013: 自然科学的根拠」と題されたWGI報告書の最終作業が行われ、WGIの政策決定者向けサマリー(SPM)の承認、及びその根拠となるテクニカルサマリー及び附属書を含めた報告書の受理が行われた。

GCF理事会第5回会合: 2013年10月8-10日、フランス・パリで開催された理事会の会合で、途上国による気候変動対策の取組みを支援するための資金調達を目指したロードマップが策定された。また、基金が資金の受け取りと管理を行えるようにするための合意の採択後3ヶ月以内に基金向けの最初の資金動員を実施することが理事会で決定された。

モントリオール議定書 MOP 25: 2013年 10 月 21 -25 日、オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書の第25回締約国会議がタイ・バンコクで開催され、モントリオール議定書がハイドロフルオロカーボン類(HFC)について検討する役目を有しているか否か等の問題が議論された。議定書の下でHFCを規制するための改正案については合意に至ることが出来なかったものの、技術経済評価パネル (TEAP)でモントリオール議定書及びそのメカニズムを活用しつつHFCの管理に係わる技術的、資金的、法的な側面に対応するということで合意がなされた。また、HFC に関しては、2014年にワークショップを開催するということでも合意がなされた。

This issue of the Earth Negotiations Bulletin © <enb@iisd.org> is written and edited by Jennifer Allan, Beate Antonich, Alice Bisiaux, Elena Kosolapova, Ph.D., Kati Kulovesi, Ph.D., Mari Luomi, Ph.D., and Annalisa Savaresi, Ph.D. The Digital Editor is Francis Dejon. The Editor is Pamela S. Chasek, Ph.D. <pam@iisd.org>. The Director of IISD Reporting Services is Langston James “Kimo” Goree VI <kimo@iisd.org>. The Sustaining Donor of the Bulletin is the European Commission (DG-ENV). General Support for the Bulletin during 2013 is provided by the German Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation and Nuclear Safety (BMU), the Ministry of Environment of Sweden, the New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade, SWAN International, the Swiss Federal Office for the Environment (FOEN), the Finnish Ministry for Foreign Affairs, the Japanese Ministry of Environment (through the Institute for Global Environmental Strategies - IGES), and the United Nations Environment Programme (UNEP). Funding for translation of the Bulletin into French has been provided by the Government of France, the Wallonia, Québec, and the International Organization of La Francophonie/Institute for Sustainable Development of La Francophonie (IOF/IFDD). The opinions expressed in the Bulletin are those of the authors and do not necessarily reflect the views of IISD or other donors. Excerpts from the Bulletin may be used in non-commercial publications with appropriate academic citation. For information on the Bulletin, including requests to provide reporting services, contact the Director of IISD Reporting Services at <kimo@iisd.org>, +1-646-536-7556 or 300 East 56th St., 11D, New York, NY 10022 USA. The ENB Team at the Warsaw Climate Change Conference - November 2013 can be contacted by e-mail at <kati@iisd.org>.

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