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2012年の国連気候変動会議は本日カタール・ドーハにて開幕し、カタール国立会議場で12月7日迄の日程で開催される。今次会議は、国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP 18)、及び京都議定書第8回締約国会合(CMP 8)の他、5つの補助機関の会合すなわち、実施に関する補助機関 (SBI)、科学上及び技術上の助言に関する補助機関 (SBSTA)、京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)、条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)及び強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)も同時開催される。

今次会合では、第2約束期間に向けた京都議定書改正の採択が中心テーマとなる。UNFCCCの下ではAWG-LCAが最終的な成果を提示し、その役割を終える予定となっている。また、COPは “UNFCCCの下で全ての締約国に適用可能な新たな法的文書としての議定書、または法的拘束力を備えた合意された成果”を2020年までに発効するべく2015年までに準備するという任務に関する初年度の進捗状況についてADPから報告を受けることになっている。

UNFCCCと京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため温室効果ガスの大気濃度安定化を目指し、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効、現在195の締約国を有する。

1997年12月、日本の京都で開催された COP 3の参加者は、UNFCCCの議定書に合意。この議定書において先進工業国および市場経済移行国は排出削減目標の達成を約束している。UNFCCCの下では附属書 I 締約国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第1約束期間)の間に6種の温室効果ガスの排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別の目標を担うことで合意した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在、192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉:2005年末、カナダのモントリオールで開催されたCMP第1回会合は、議定書3.9条に則りAWG-KPの設立を決定し、第1約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書 I 締約国の更なる約束を検討することを、その役割として定めた。またCOP 11は、「条約ダイアログ」と呼ばれる4回のワークショップを通じて、条約の下での長期的協力を検討するプロセスも創設した。

2007年12月、インドネシアのバリで開催されたCOP 13及び CMP 3で長期問題に関するバリ・ロードマップが合意された。COP 13は、バリ行動計画を採択し、緩和、適応、資金、技術、長期的協力行動の共有ビジョンを中心に対応することを役割としたAWG-LCAを設立した。AWG-KPの下では、附属書 I 締約国の更なる約束に関する交渉が続けられた。2つの交渉トラックが結論を出す期限は、2009年12月のコペンハーゲン会議であり、その準備作業として両AWGは2008-2009年に数回の交渉会議を開催した。

コペンハーゲン:デンマーク、コペンハーゲンでの国連気候変動会議は2009年12月に開催された。この会議は世間の大きな注目を浴びたが、透明性やプロセスをめぐる論争が目立った。ハイレベルセグメントでは、主要経済国や地域代表、その他の交渉グループ代表で構成されるグループが非公式交渉を行った。12月18日深夜、その会議の成果として政治的な合意である「コペンハーゲン・アコード」が成され、その後、採択のためにCOPプレナリーに提出された。それから13時間にわたる議論の末、参加者は、コペンハーゲン合意に「留意する」ことで合意した。2010年には140カ国以上がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家緩和目標または行動に関する情報を提出した。また、締約国はAWG-LCAおよびAWG-KPの役割をそれぞれ COP 16及びCMP 6まで延長することで合意した。

カンクン:メキシコ、カンクンでの国連気候変動会議は2010年12月に開催され、締約国はカンクン合意を成立させた。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16において、世界の平均気温の上昇を2℃以内に抑えるには世界の排出量の大幅な削減が必要であると認識した。締約国は、世界の長期目標を定期的にレビューし、2015年までのレビューで更に目標の強化を検討するということで合意し、その際に1.5℃目標案のレビューも含めることでも合意した。また締約国は、先進国と途上国がそれぞれ通知した排出削減目標や国別適切緩和行動(NAMA)に留意した。(FCCC/SB/2011/INF.1/Rev.1及びFCCC/AWGLCA/2011/INF.1。ともにカンクン会議後に発行)。決定書1/CP.16には、計測、報告、検証(MRV)ならびにREDD+など、緩和の他の側面も記載した。

さらに、カンクン合意でいくつかの新しい制度やプロセスを創設した。その中には、カンクン適応枠組、適応委員会、技術メカニズムが含まれ、技術メカニズムの下には技術執行委員会と気候技術センター・ネットワークが含まれた。また、緑の気候基金(GCF)が創設され、24人のメンバーによる理事会が統治する条約の新たな資金メカニズムの運用機関として認定された。締約国は、この基金の設計を課題とする移行委員会や、資金メカニズムに関してCOP を支援する常任委員会の設置でも合意した。さらに、締約国は、先進国が2010-2012年に早期開始資金300億米ドルを供給し、2020年までに合同で1千億米ドルを動員する約束を行ったと認識した。

議定書の交渉トラックでは、CMPは、附属書 I 締約国が、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書に明記するレンジに合わせて合計排出削減量を達成するべく野心度を引き上げるよう促し、土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)に関する決定書 2/CMP.6を採択した。

両AWGのマンデートはもう一年延長されることとなった。

ダーバン:南アフリカ、ダーバンでの国連気候変動会議は、2011年11月28日から12月11日に開催された。ダーバンの成果は、広範な題目を網羅し、特に京都議定書の下での第2約束期間の設置、条約の下での長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意が含まれた。締約国は、「条約の下で全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果の作成」をその目的とする新たな組織ADPの発足でも合意した。2020年に発効させることを目指す新たな交渉プロセスは、2015年末で交渉完了というスケジュールになっている。

2012年ボン気候変動会議:ボン気候変動会議は、2012年5月14-25日、ドイツのボンで開催され、SBI及びSBSTAの第36回会合やAWG-LCA 15、AWG-KP 17、ADP第1回会合も同時開催された。AWG-KPの下では、京都議定書の下での第2約束期間の最終的な採択の問題、そしてAWG-KPのCMP 8での作業完了に焦点が当てられた。多数の疑問点が保留のまま残され、この中には京都議定書の下での第2約束期間の長さや余剰ユニットの繰越の問題が含まれた。

AWG-LCAでは、COP 18でAWG-LCAの作業を完了可能にするために検討すべき問題についての論争が続いた。先進国は「大きな進展」を強調し、カンクン及びダーバンでさまざまな新制度が設置されたことを強調した。一方、途上国の多くは、バリ行動計画の目的を遵守するために必要とされる問題の議論を続けるべきだと指摘した。

ADPで議論の中心となったのは、議題と役員選出だった。約2週間の議論ののち、ADPプレナリーでは、議題書を採択し、2つの作業の流れを開始。一つが決定書 1/CP.17 (ポスト2020年体制)のパラグラフ2-6に関する問題の議論、もう一つがパラグラフ7-8(2020年までの時間枠における緩和の野心引き上げ)に関する問題の議論であり、また、役員の選出についての合意も成された。

2012年バンコク気候変動交渉:2012年8月30日-9月5日にかけてタイ・バンコクで非公式の交渉が行われた。ADPの下では、ADPに対するビジョンや期待、希望する成果、成果の達成方法などについて議論する円卓会合が行われた。また、野心の強化や実施手段の役割、国際協力イニシャティブ強化の方策、ならびにADPの作業の骨組みを成す諸要素などについても議論が行われた。

AWG-KPでは、ドーハでCMPに対する改正案を勧告し、AWG-KPの作業を確実に成功させて完結できるよう、懸案事項の解決に焦点があてられた。これによって、2013年1月1日から議定書の第2約束期間がすぐさま開始できるようになるのである。AWG-KPは、京都議定書改正を採択するドーハ決定書の要素について概要をまとめた非公式文書を作成した。

AWG-LCAでは、COP 17からの具体的な要請を実現するための現実的な解決策について引き続き作業が行われた。とりわけ、ドーハでAWG-LCAの作業を解決するために必要とされる成果や、AWG-LCAの最終的な成果に諸要素をどのように反映させるのかという問題や、COP 18以降も追加的な作業が必要になるかどうかという点について集中的な討議が行われた。

会合期間外のハイライト

気候変動に関するBASIC12回会合: ブラジル、中国、インド、南アフリカ(BASIC)閣僚会合がブラジル・ブラジリアにて2012年9月20-21日に開催された。また、BASICプラスという形で、アルジェリア、アルゼンチン、バルバドス、カタールも会合に出席した。共同声明では、京都議定書の第2約束期間を最終的に採択することが“ドーハに向けた重要な成果であり、レジーム枠内における野心の根幹を成す” ものとして重要であることが強調された。また、第2約束期間の排出抑制・排出削減のための数値目標が明記されるようにするため、附属書I締約国には具体的な情報を提起するよう要請した。

長期資金に関するUNFCCC2回ワークショップ: 南アフリカ・ケープタウンにて2012年10月1-3日に開催された。民間部門や市民社会の利害関係者は、気候資金の新規および革新的な資金源や気候資金を動員するための各種アプローチや戦略、気候資金へのアクセス改善に向けた途上国のキャパシティビルディングの手法などについて詳細な議論を行った。

GCF2回会合: 2012年10月18-20日に韓国、仁川市・松島にて開催され、GCF役員会で仁川市・松島を同基金の受入れ都市とすることを決定した。また、役員会の長期作業計画や優先順位; 資金のステータスや暫定事務局及び暫定受託者の管理予算; 事務局長の選任を含めた独立した事務局を設置するための各種調整; 及びCOPと基金との間の協定などについても議論が行われた。GCFでの決定はCOP 18の承認を受けるべくCOPに提出される。

プレCOP 18/CMP 8閣僚会議: “挑戦と変革-バランスある視点をもった前進” (Meet the Challenge, Make the Change - Moving Forward with a Balanced Perspective)”をテーマに掲げ、韓国ソウルにて2012年10月21-23日に開催された。約50か国からの閣僚を含む250名ほどが参加し、京都議定書の第2約束期間への対応等について予備作業を行い、数多くの問題での進展をめざした。

気候変動に関する第13回BASIC会合: 中国、北京で2012年11月19-20日に開催された。BASICプラス方式で、会合には、アルジェリア、エジプト、フィジー、ネパール、カタールもオブザーバー参加した。共同声明では「京都議定書の締約国ではない先進国や第2約束期間に参加しない先進国は京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)の恩恵を受けないものとする」という理解が確認された。また、EUの排出量取引制度(EU-ETS)の国際的な側面の実施について1年間“時計を止める”というEU側の意向についても言及がなされた。さらに、条約の諸原則と諸規定に則った気候変動対策におけるマルチラテラリズム(多国主義)の重要性があらためて確認され、国際航空・海運部門におけるユニラテラル(一方的)な措置ならびに他部門での類似措置には強硬に反対する姿勢をあらためて示した。

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