Daily report for 1 September 2015

ドイツ・ボンにて開催中のADP 2-10は9月1日(火)も審議が続けられた。促進グループの中で、午前は、適応と損失・被害、行動と支援の透明性、資金、キャパシティビルディングについて、午後は、適応と損失・被害、ワークストリーム 2 (プレ2020年野心)、緩和、手続き及び制度に関する条項について、夕方からは、資金と時間枠についての討議が行われた。また、一日を通して、ワークストリーム 2、 キャパシティビルディング、 緩和 (差別化・市場以外のメカニズム・共同実施)、資金 (制度的アレンジ) に関する促進グループの非公式会合も行われた。

ADP 促進グループ

適応と損失・被害: 午前と午後のセッションは、Andrea Guerrero (コロンビア)が共同進行役を務めた。

午前には、ボリビアが、G-77/中国の立場から、特に既存の制度を強化し、損失・被害を合意に盛り込む必要性があると強調した。

どのような損失・被害の対策が最善かという問題については多様な見解があることを指摘し、マーシャル諸島は、AOSISの立場から、週内に本件に取り組むよう求めた。イランは、既存のメカニズムの欠陥に対処するために新たなメカニズムが必要であると述べた。

アルゼンチンは、UNFCCCの諸原則を反映させた長期的なビジョンが必要であると強調した。インドは、合意の中に、適応向けの資金供給と支援のMRVを盛り込むべきだと主張した。

合意の中で、 南アフリカは、適応の資金; 気温目標と適応の関連; 定期的なサイクルの中での適応ニーズの表現等を反映させるよう要請した。オーストラリア は、緩和と適応の合同アプローチをさらに明確にする必要があると強調した。

今後の方策に関する議論の後、適応、及び損失・被害という問題を分けて議論することで合意し、分科会(スピンオフ・グループ)を設置して議論する可能性についても模索することとなった。

午後からは、共同進行役が昨日配布した問題について質疑応答が行われた。適応については、G-77/中国が、意見を集約できる分野を指摘し、集団の取組みと個々の取組みの関係性について焦点を当てた。 EUは、目的(ゴール)/ビジョンと集団的な取組みとの違いについて更に検討するよう要請した。

米国は、適応の資金と世界で達成する緩和のレベルを関連づけることに対して懸念を表明した。マーシャル諸島は、持続可能な開発目標や各種指標の関連性を強調した。スーダンは、適応に関する注目度を高めることが共通の関心事であると指摘した。

損失・被害については、G-77/中国が、問題点の“認識(recognition)”を超えていくよう要請し、制度的アレンジを求めた。ツバルは、LDCsの立場から、移転施設や技術パネル等の同グループが提案している制度的アレンジについて論じた。サウジアラビアは、LMDCsの立場から、ワルシャワ国際メカニズムを合意の中にしっかり位置づける必要があると述べた。米国は、COP 決定書を通じて、損失・被害に対応することを提案し、ワルシャワ国際メカニズムが “斜陽”のものになるとは見ていないと言い添えた。

ジャマイカ、 ガーナ(アフリカン・グループ)、LDCsは、合意の中で、脆弱な国々に係わる諸問題を恒久的に対処するべきだと強調した。

Guerrero共同進行役は、9月2日(水)に 、長期ビジョン・ゴール・集団的な取組み、及び損失・被害に関する2つの分科会を開催すると発表した。

行動と支援の透明性:  Fook Seng Kwok (シンガポール)が会合の共同進行役となり、合意またはCOP 決定書に盛り込むべき要素に関して8/31(月)夕方から開始した討議を継続した。

ボリビアとベネズエラは、8/31(月)夕方に出された中国(LMDCsの立場で)の提案を支持し、共同議長ツールに記載された決定書テキストについて、- 緩和行動に関する透明性;  適応行動に関する透明性; 支援のMRVに関する全般的な担保; 支援に関する報告; 支援の検証; 支援の供与と受け入れに関する情報-という“論理的な”順序で再編成するよう求める案に賛同した。

ボツワナは、アンゴラとともに、LDCsの立場から、MRVを実施するためのキャパシティビルディング に対する資金供給の重要性を強調した。マレーシアは、支援のトラッキングの難しさを指摘した。パナマは、熱帯雨林連合 (CfRN)の立場から、REDD+のように実施準備ができている行動と農業等のように更に内容を詰める必要がある行動を区別するよう求めた。

議論の要点の中では、既存の制度からの移行に関する管理についてKwok 共同進行役が強調し、支援の強化だけを確保するという点で、1) 支援の供与と受け入れに関するMRV、2) MRVに関する既存のシステムと2020年以降のMRVのレジームに途上国が効果的に参加するための支援という2段階での議論が行われているとの所見を示した。9月2日(水)午前からMRV に参加するための支援についての議論を開始することで締約国が合意した。

資金: Georg Børsting (ノルウェー) が共同進行役を務めた。ボリビアは、G-77/中国の立場から、構成要素の骨子は、義務とコミットメント(約束)、資金規模、資金源、MRVであると述べた。マラウィは、LDCsの立場から、補助金ベースの投資を含めるよう求めた。南アフリカ(アフリカン・グループの立場)、コスタリカ(AILACの立場)は、特に資金規模に関するコミットメントを盛り込むよう強調した。

エクアドルは、 LMDCsの立場から、資金規模と資金源が入っていないことに懸念を表明し、途上国の数カ国とともに、適応向けの資金に関する記載と資金に関する常設委員会の役割を明確にすることを求めた。カナダ、ニュージーランドは、今後も既存の制度を続行させるべきだと述べた。

いくつかの先進国は、資金動員に参加する国がもっと必要であり、資金はすべての資金源から動員しなければならないと強調した。ベリーズは、 AOSISの立場から、動員において“ダイナミズム”が入ることに遺憾の意を示した。ノルウェーは、“ダイナミズム”は定期更新を伴うもので、すべての資金源を包含するものだと主張した。AILACは、公的資金こそ主たる資金源であり、民間資金と代替資金は補完的な資金源だと強調した。ブラジルは、資金の予測可能性を求めた。

日本は、開発プロセスに対する資金供給について、民間資金の動員が含まれるものであると強調した。アフリカン・グループ、インド、サウジアラビアは、外部のプロセスに対する記載について反対した。いくつかの締約国は、透明性について議論することに前向きであるとの姿勢を示した。

制度的アレンジに関する分科会が設置され、カナダと G-77/中国が促進グループに対して報告を行うこととなった。

キャパシティビルディング: Artur Runge-Metzger共同進行役(EU) は、共同議長ツール内の文章の配置について関する意見を求め、何か遺漏はないか参加者に尋ねた。多くの締約国は、COP 決定書を通じて定められるプレ2020年の規定も含め、キャパシティビルディングの重要性を強調した。

中国(G-77/中国)、ジャマイカ(AOSIS)から、スワジランド(アフリカン・グループ)、 サウジアラビア(LMDCs)、セネガル(LDCs)は、合意によって、キャパシティビルディングに関するメカニズムを新設するよう求めた。

米国は、新合意に基づくキャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラム を活用する方が良いと意見した。EUは、新メカニズムの創設については、現行の取組みのレビューが完了した時点で検討すべきだと述べた。多くの締約国は、国際的なキャパシティビルディングの取組みと現場レベルの結果につながっていないことやキャパシティビルディング 活動を実施する団体間の連携が不足していることに懸念を示した。

Runge-Metzger共同進行役は、プレ2020年の期間のキャパシティビルディングに関する実務作業計画に関するCOP決定書について、スワジランドを進行役として分科会を行うよう要請し、9月2日(水)に制度的アレンジの強化を新たなメカニズムで実施するか、別の措置を講じて実施するかという問題について議論すると伝えた。

ワークストリーム 2: 共同進行役 Aya Yoshida (日本)は、2015年7月24日に配布された決定書草案の要素に関して、特に技術検証プロセス(TEP)について、意見を述べるよう求めた。多くの締約国は、議論の出発点になるとして、この草案に歓迎の意を示した。

インド は、TEP拡大を求め、その中で、適応や 技術、資金の技術専門家会合 (TEMs)を入れるよう求めた。 コロンビアは、AILACの立場から、地域別のTEMsの実施を提案した。

韓国、ノルウェー、米国、ニュージーランド、スイス、カナダは、緩和に対する決定書草案の範囲を絞る案を支持し、緩和行動が適応の共同便益を生むような適応に関する限定的なアプローチを例に挙げた。また、適応に取り組むとともにTEMsに類似した会合の開催も可能となる、既存の適応関連団体や専門家の活用を主張した。ニュージーランドとスイスは、新組織を設立するのではなく、不適切だと見なされる場合に限り他の団体の規定(役割)を修正するよう要請した。

バングラデシュ( LDCs)、南アフリカは、TEMsの成果を現場の行動へと変換するよう求めた。

韓国、AILAC、ノルウェー、米国、ニュージーランド、カナダは、国家以外の主体の役割の強調を歓迎した。

TEPについて集中討議するため、南アフリカを進行役として、9月2日(水)に非公式会合を開催することが決まった。

緩和: Franz Perrez (スイス)共同進行役は、議長ツールに記載された諸問題の討議を続けるとともに、共通理解を深めるために分科会での議論を行うことを提案した。また、さらに議論が必要なトピックとして、対応措置、集団的な取組みと長期目標との関連、合意と決定書のバランスとマッピング、進展、土地利用とREDD+、国際運輸等を挙げた。

南アフリカは、差別化に関する分科会について報告し、討議の関心事項と意見の多様性について言及した。ボリビアは、市場以外の問題に関する分科会について報告し、本件に関する合意は欠如していると述べた。

COP 21までの交渉時間が少なくなっていることは遺憾だとしながらも、分科会の効用や交渉の進め方に関して締約国の意見は分かれた。理解を深めるための分科会の活用、議長ツール・パート3(配置について、もっと明確にする必要がある条項)から合意または決定書のセクションに移動させる項目、テーマ別の課題への取組み、テキスト全体にわたるパラグラフ単位の移動等の提案が出された。集中的な討議の末、差別化に関する分科会を続け、共同実施(JI)に関する分科会は予定通り実施することとなった。また、共同進行役は、共同議長ツールからの見出しをつけたスライドを見せ、次回の促進グループの会合で、その配置について伝えると述べた。

手続き ・制度に関する条項: Sarah Baashan (サウジアラビア) が会合の共同進行役を務めた。

いくつかの国が、議長ツールのパート1 (合意に関する部分) の執行機関について記載されたパラグラフは、新たな合意のベースとしては十分であると同意した。コロンビア( AILAC)、ノルウェー、カナダは、合意に批准していない国は執行機関の下での意思決定プロセスに参加すべきではないと明言した。

スーダンは、アフリカン・グループの立場から、手続き規定や執行機関の会合の間隔について議論すべきだと示唆した。インドは、LMDCsの立場から、詳細については後の段階で決めることも可能だと述べた。

サウジアラビアは、新合意でもCOPの手続き規定を適用すべきだと主張した。EUは、合意独自の手続き規定を定めることは可能だと示唆した。AILACは、この問題は、投票に関する議長ツール・パート1の中のパラグラフとの兼ね合いで議論すべきだと提案した。

諸制度のアンカリング(anchoring)については、米国、 AILAC、 オーストラリアをはじめとする国々が、関連セクションの中で、新合意の中で機能を果たせるような既存の制度をケースバイケースで特定するのが良いと主張した。.

ノルウェー、LMDCs 、アフリカン・グループは、一般的なアンカリング条項を支持した。ジャマイカが、 AOSISの立場から、制度強化のために新たな制度的アレンジが必要かもしれないと指摘した。ブラジルは、このアンカリング条項は重複を回避すると述べた。

Baashan共同進行役は、発効に関しては次回会合で議論すると述べた。

廊下にて

9月1日(火)に分科会の初会合が行われた。分科会の発足を歓迎する声があがり、より少人数の非公式な会合による議論のスピードアップや、明確なオプションの具体化、差別化に関する問題を含む重要問題に関する諸提案の一本化さえも実現させたいとの期待も浮上した。

一方で、乱立する非公式会合には、特に少人数の政府代表団にとっては、信託基金から参加費用に充当できる財源が不足していることもあって悩ましい問題となっている。ある政府代表は「今日の午後行われている会合の数は、自国の政府代表団のメンバー総数よりも多い」と嘆いていた。

初日の分科会の終盤は、そうした会合の有効性に関する議論で緩和交渉官が泥沼にはまっていた。促進グループの開始時点では議論の進展に希望を抱いていたという某オブザーバーは、今回の交渉で「交渉官は手続き論の砂地獄へと突っ走っていった」と嘆息を漏らした。始まったばかりの分科会の行方は分からないものの、多くの参加者は「まだまだ長くて複雑すぎる」交渉テキストに関して本当に必要とされる進展を図っていけることを期待しつつ、本日会議場を後にした。

(IGES-GISPRI仮訳)

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