Daily report for 4 June 2013

ダーバン・プラットフォーム特別作業部会 (ADP) の開会プレナリーと対応措置に関するイン・フォーラム・ワークショップが午前、開催された。午後には、キャパシティビルディングに関する第2回ダーバン・フォーラムとSBSTA研究ダイアログ及びワークストリーム 1: 行動の種類に関するADPラウンドテーブルが開催された。また、SBSTAの下で、各種コンタクトグループと非公式協議が午前と午後に行われた。

ADP

ADP 共同議長 Jayant Moreshver Mauskar (インド)がセッションを開会した。

開会ステートメント: G-77/中国は、第2約束期間に関するドーハ改正事項を出来るだけ早期に発効させる必要があると強調した。オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、国内行動と共同便益を促進し、約束のスペクトラムを定義する必要があると訴えた。

スイスは、EIGの立場から、CBDRと衡平性の原則に則った締約国間のダイナミックな差別化、及び実施手段と気候にやさしい投資の加速化の必要性を強調し、公式の作業モードに入る時期としてはワルシャワ会議が適切だと述べた。

EUは、変貌する経済情勢や開発の機会を反映した各国の緩和の約束; 2020年までの野心に関する具体的な進展; COP20前の交渉テキスト草案等を求めた。

スワジランドは、アフリカン・グループの立場から、持続可能な開発への衡平なアクセスを実現させる公平な多国間ルールに基づいたレジームと衡平性の参照枠組みを求めた。

ナウルは、AOSISの立場から、費用対効果が高く拡充可能な緩和行動を求め、実施のための障害を克服する必要があると強調した。また、2015年合意では、ルールに基づいた法的拘束力を有するレジームを強化し、損失・被害のメカニズムや遵守制度を盛り込むべきだと主張した。

ネパールは、LDCsの立場から、適応に関するワークショップを提案し、途上国の適応に対処するための新たな合意の付加価値を明記すべきだと強調した。

ニカラグアは、ALBAの立場から、実施手段なく法的拘束力を有する緩和の約束を重視することに警戒感を示した。

コスタリカは、SICAの立場から、緩和の野心レベル、適応、実施手段、透明性、行動のMRVと支援及び損失・被害に関して、具体的な成果を求めるとともに、公的資金には優先順位をつける必要があると述べた。

スーダンは、途上国有志国の立場から、合意済みの要素を反映していないテーマに懸念を示し、それらの要素としては、資金と技術の供与不足の問題から目をそらすような投資とそれを実現できる環境、及び途上国にさらなる負担を課すような選択的なセクター別の活動があると指摘した。

インドは、BASICの立場から、ADPの作業はIPCCの情報や、2013-15年レビュー、補助機関の情報を受けるべきであるとし、GCFや技術メカニズム、適応委員会の意味ある運用化を要請した。

チリは、AILACの立場から、締約国が国内事情や能力に基づき自国の貢献度を明確にできるようにする「ボトムアップ・アプローチ」と各国の取り組みを比較可能にするための「トップダウン・アプローチ」を統合することを提案した。

パプアニューギニアは、熱帯雨林諸国連合の立場から、REDD+が世界のGHG削減目標を達成するためのカギとなると主張した。

サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、2020年までの野心に関する議論への不満を示し、成果指向のアプローチを求めた。

ドイツは、サンクトペテルブルグで開催された最近の気候ダイアログでは、2015年合意に、CBDRに基づきながら気候変動の課題の流動的な性質ならびに各国の責任や能力、国情に配慮して様々な約束をどのような形で反映させられるのか参加閣僚が話し合いを行ったことを報告した。

FRIENDS OF THE EARTHは、米国の誓約とレビュー制度は受入れがたいとし、資金及び技術移転の拡充; 国際的な固定価格買取制度(FIT)の取り決め; 省エネ; 大気を汚染するエネルギーに関する補助金制度を求めた。

女性とジェンダーのNGOは、UNFCCCの枠組みの中で無差別主義の導入の検討、および2015年合意について、原子力やシェールガス、ジオエンジニアリング等、高いリスクを伴う技術のすべての除外を提案した。

若者代表のNGOは、2015年合意の前文の中に世代間の衡平性を盛り込むよう求めた。

ワークストリーム 1:行動の種類に関するADP ラウンドテーブル: ラウンドテーブルは、いくつかの締約国の提案の紹介から始められた。バングラデシュは、もう余裕は無いとし、合意は2015年までに成立させ、すべての締約国に適用できるものとし、ルールに基づき予測可能で、堅牢、大胆、明確で、実施可能かつ科学的にも健全な内容とし、長期的視点やCBDRと衡平性、損失・被害を考慮に入れるべきだと主張した。

特定の約束のタイプについての数値化と標準化を示唆しつつ、オーストラリアは、約束のスペクトラムの設計について、ハイブリッド型のアプローチの利点に焦点を当てつつ述べて、それによって締約国は国内でボトムアップ方式で決定した約束と堅牢な国際合意に基づくルールを主導できるようになると説明した。また、この方式の場合、追加交渉をすることなく各締約国がスケジュールを更新したり強化したり流動的に行えるようになると述べた。

ブラジルは、1997年ブラジル提案は、現在の排出量ではなく地球温暖化への寄与度をベースに各国の責任について区分するマトリックスを作成することだったと説明した。

エクアドルは、国際気候裁判所の設立; 地球とその生態系保護のための法としての「自然の権利に関する国連宣言」の促進; MRVを実現する資金支援の権能付与およびそのための2015年合意での登録簿の構築、等を提案した。

EUは、ワルシャワ会議におけるプロセスの履行の必要性を訴え、緩和の約束を策定するための段階的アプローチを提案。様々な方策や2020年以降の約束を事前に明確にすることを模索しつつ、締約国が自国の約束を作成・提出できるようにし、2℃目標に向かって順調に進展しているか提出した約束のレビューを実施し、2015年合意に約束を記載することを提案した。また、透明性のルールや国際的に合意済みのアカウンティングの枠組み、レビュー・プロセスや、約束を策定するために各締約国に通知するための指標について検討するよう提案した。

アラブ首長国連邦(UAE) は、公平な約束の全体像を見られる指標など存在しないと述べ、各締約国がそれぞれの目安で自国の約束について説明する方が良いと提案した。また、新たな合意については、気候変動の影響に対処している国や自国の経済多角化に取組んでいる国を支援するものでなければならないと述べた。

その後の議論で出された意見としては、実施手段、タイムフレーム、共通アカウンティング・ルールを新合意に盛り込む必要性; 信頼醸成および完全な約束のレビューの必要と時間的制約との調整の観点から現在提案されている行動について省察すること; 経済全体での排出削減目標への移行等のアイディアが挙がった。

SBSTA

SBSTA研究ダイアログ: 全球気候情報における最近の進展: IPCCのJean-Pascal van Yperseleは、第5次評価報告書 (AR5)では、適応と緩和の統合、リスク管理アプローチ、不確実性への対応などの面で改善されると紹介した。地球圏生物圏国際共同研究計画(IGBP) と世界気候研究計画(WCRP)のSybil Seitzingerは、地域再編によって平均気温記録の急上昇が発生しているとし、短寿命の大気汚染物質に取組めば世界気温上昇を2℃以下に抑制することは可能だと述べ、持続可能性アプローチについて考慮する新たな包括的富裕指標について報告した。

中心的に議論されたテーマは以下の通り:炭素周期のフィードバック効果、短寿命大気汚染物質の気温以外の影響、緩和におけるブラックカーボンの役割、津波などの地震活動。

新たな科学的知見: Dmitry Zamolodchikov(ロシア)は、ロシアの事例を元に生態系管理について紹介し、人間と気候が起こした変化がGHG排出量に重大な影響を及ぼしていると述べた。

Mitsuru Osaki(日本)は、炭素排出の推計と熱帯泥炭地における変動について論じ、リアルタイムの監視制度や統合MRV制度、リアルタイムのCO2排出量マッピングなどに向けたプロジェクトの成果について焦点をあてた。

Sybil Seitzinger(地球環境変化の人間的側面国際研究計画:IHDP、及び生物多様性科学国際共同プログラム:DIVERSITAS)は、さらに注目するべき分野として、都市化による炭素排出量; 種の適応力を超えるスピードで発生している気候変動; 複数の世界気候目標の特定などを挙げた。

Arturo Sanchez-Azofeifa(全アメリカ地球変動研究機関:IAI) は、熱帯乾燥林やサバンナ地域の炭素の流れについて話し、気候変動が熱帯乾燥林に住む人口約6千万人に影響を及ぼすとし、これまでほとんど軽視されてきたそれらの森林が気候変動のバロメーターになると述べた。

その後の議論の主なトピックは、炭素変動量の概要をまとめる必要性; REDD+に関する堅牢な方法論策定の可能性; 政策決定および協同作業における知識の統合などである。

Andrew Matthews(アジア太平洋地球変動研究ネットワーク:APN)は、政策の優先課題や地域の若い研究者グループ支援を含めた地域別のキャパシティビルディング行動を特定するための支援活動について訴えた。

Sybil Seitzinger(IGBP、WCRP、地球変動の解析・研究・訓練システム:START)は、食料の安全保障、農業、気候変動、ならびに若いアフリカ人研究者向けの執筆活動の場等を含む数々のキャパシティビルディング計画における応用事例のため気候モデルの成果を小規模展開するための取り組みなどについて述べた。

Cynthia Rosenzweig(気候変動による脆弱性・影響・適応に関する研究プログラム:PROVIA)は、政策的な意思決定を支援するための研究上の優先課題の特定およびとりまとめを行う必要があると強調し、IPCC第6次評価報告書の作成準備に向けて研究面でのギャップ特定のためのトラッキング・システム開発計画について述べた。

SBi

キャパシティビルディングに関する第2回ダーバンフォーラム: Helen Plume (ニュージーランド) と Kishan Kumarsingh (トリニダード・トバゴ)が共同で進行役を務めた同フォーラムでは、プレゼンテーション発表と、緩和と適応のためのキャパシティビルディング及びジェンダーと気候との相関関係についての議論が行われた。

緩和のための能力醸成について、Ben Good(グローバル・ヴィレッジ・エネルギー・パートナーシップ)は、緩和と適応のソリューションを開発する中小企業を支援するビジネス・インキュベーターとして活動するケニア気候イノベーション・センターについて焦点をあてた。その他、資金保証や、スキームに含める事業選択、適格性基準、イニシャティブの規模などが議論となった。

Christina Colon(UNDP)は、低排出キャパシティビルディング計画について紹介し、NAMAs やLEDS特定のための公的部門のキャパシティ強化、民間部門の理解促進などについて述べた。その後の議論では、同計画へのSIDSの取り込みや成果の鎖、利害関係者の関与、障害撤廃などについて話し合いが行われた。

Chizuru Aoki(GEF)は、プロジェクトの中に組み込まれたGEF支援の根本的な要素の一つとしてキャパシティビルディングがあるとし、国別報告書のアンブレラ・プログラムを一例に挙げた。

Alexia Kelly(米国)は、低排出開発戦略グローバル・パートナーシップについて、戦略開発を支援し、途上国やNGO、民間部門と支援国との協同のためのプラットフォームとなっていると述べた。議論のなかで、プロジェクトにキャパシティビルディングを組み込む規模や専門家を支援するための能力などについて話し合いが行われた。

ジェンダーと気候変動との相関関係に関する能力醸成について、Meena Khanal (ネパール) は、ジェンダー行動計画を取り上げ、ネパール国内の気候とジェンダーに関する啓蒙プログラムについて焦点をあてた。議論のなかで、人的資本移動や気候変動と適応の関係、関係者間のタイムリーな情報共有などについて話し合いが行われた。

適応能力の醸成については、Darrel Danylukと David Lapp(世界工学団体連盟:WFEO) は、工学と科学専攻者の間のプラスの相関関係や経済学と社会開発について焦点をあてた。

Batu Krishna Upretiと Lava K.C.(ネパール)は、気候変動の影響に関する理解を高め、適応行動を実施するため策定された国家的および地域の適応行動計画について紹介した。

Daouda Ndiaye(適応基金)は、適応プロジェクトへのキャパシティビルディング要素の統合と学んだ教訓について紹介した。

議論のなかで、プロジェクトへの融資、適応能力のギャップ、キャパシティビルディングを含む適応プロジェクトの監視と評価等に関する諸問題がとりあげられた。

SBSTA/SBI

経済多角化と変革に関する対応措置フォーラム: SBSTA 議長Richard MuyungiとSBI議長Thomasz Chruszczow がワークショップの進行役を務め、経済多角化と変革のための機会について意見交換や経験の共有が行われ、今後の勧告や貿易問題、補助金問題を中心に議論が行われた。

プレゼンテーション: 事務局は、気候変動対策に弱いセクターとして在来型燃料やエネルギー集約型の貨物、観光業などを挙げ、マクロ政策を適切に合わせた産業政策によって市場の失敗を是正し、支援をめざすことが可能となると指摘した。

G-77/中国は、途上国が直面している調整コストの高さや先進国で実施される政策が経済多角化に悪影響を及ぼすという障害について検討する必要があると強調した。

サウジアラビアは、緩和行動が途上国の多角化を妨げてはいけないと強調し、経済多角化は有益なツールではあるが、それだけでは不十分であるとも述べた。

EUは、その経験から、経済多角化政策が気候変動対策としての共便益をもたらしうると述べた。貿易と持続可能な開発国際センター(ICTSD)は、再生可能エネルギー開発とエネルギー効率向上、適応支援のための機会について訴えた。

OPEC は、経済多角化には技術移転とキャパシティビルディングの支援が必要であるとし、最も悪影響を受けるOPEC加盟国には、支援メカニズムを設計する必要があると強調した。

対応措置に関する報告とCOP 19への今後の勧告内容については、G-77/中国が、各国の事情への配慮や高い調整コストへの対応が挙げられると指摘した。米国とEUは、多角化のための数々の根拠は気候変動と無関係のものだと強調した。アルゼンチンは、ユニラテラルな措置が、対応措置における横断的問題になりうると示唆し、中国の支持を受けたが、EUと米国の反対を受けた。

貿易問題については、ライフサイクル全体を考えた場合、輸送は必ずしも排出量の上昇を含意するものではないと、ある締約国が指摘した。気候変動に関する貿易問題を議論する場としてUNFCCCまたはWTOのどちらが適切かという議論については意見が分かれた。

補助金については、農業補助金の負の影響や、近代的なエネルギーサービスへのアクセスにターゲットを絞った補助金の必要性について、いくつかの途上国が言及した。一方、エネルギー需要が増大するなかで、エネルギーへのアクセス確保や再生可能エネルギー比率引き上げ、移行での負の影響の緩和などが課題であると多くの締約国が指摘した。

廊下にて

初日の不安定さに比べて2日目のMaritimはすべてに十分な落ち着きが見えた。ADPでは、「建設的な提案をしている国もあって、トップダウンとボトムアップのアプローチの中間地点を探そうとする努力がみられた」との声があがる一方で、「前進があったかは少々疑わしい」と議論には先月の交渉ポジションから殆ど新味が感じられなかったとの意見もあった。

SBSTAにおいても作業は続けられた。草案作成グループの会議室から夜遅く帰ることになったあるREDD+の交渉官の話では、多くのグループ会合で「参加者が腕まくりをして気合いを入れて仕事にかかっている」光景が見られたようだ。一方、SBIでは引続き交渉が難航している。水曜の交渉について、2013-2015年レビューのワークショップ開催はタイムリーであり、400ppm というCO2大気濃度が観測された今、レビューには格別厳粛な意味が与えられたと、ある参加者が話していた。

This issue of the Earth Negotiations Bulletin © <enb@iisd.org> is written and edited by Jennifer Allan, Beate Antonich, Asheline Appleton, Rishikesh Ram Bhandary, Elena Kosolapova, Ph.D., and Eugenia Recio. The Digital Editor is Leila Mead. The Editor is Pamela S. Chasek, Ph.D. <pam@iisd.org>. The Director of IISD Reporting Services is Langston James “Kimo” Goree VI <kimo@iisd.org>. The Sustaining Donor of the Bulletin is the European Commission (DG-ENV). General Support for the Bulletin during 2013 is provided by the German Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation and Nuclear Safety (BMU), the Ministry of Environment of Sweden, the New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade, SWAN International, the Swiss Federal Office for the Environment (FOEN), the Finnish Ministry for Foreign Affairs, the Japanese Ministry of Environment (through the Institute for Global Environmental Strategies - IGES), and the United Nations Environment Programme (UNEP). Funding for translation of the Bulletin into French has been provided by the Government of France, the Belgium Walloon Region, Québec, and the International Organization of the Francophone (OIF and IEPF). The opinions expressed in the Bulletin are those of the authors and do not necessarily reflect the views of IISD or other donors. Excerpts from the Bulletin may be used in non-commercial publications with appropriate academic citation. For information on the Bulletin, including requests to provide reporting services, contact the Director of IISD Reporting Services at <kimo@iisd.org>, +1-646-536-7556 or 300 East 56th St., 11D, New York, NY 10022 USA. The ENB Team at the Bonn Climate Change Conference - June 2013 can be contacted by e-mail at <asheline@iisd.org>.

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