Daily report for 28 November 2012
水曜日、参加者は、CMP、COP、SBIのプレナリー会合に集った。条約及び議定書の各組織では、コンタクトグループ会合および非公式協議が一日中開催された。
CMP
適応基金:適応基金理事会議長の Luis Santos (ウルグアイ)は、適応基金理事会報告書をCMPに提出した。同議長は、資金供与を受けた適応プロジェクトの件数および認証を受けた国内実施組織の数が大きく増加したと強調した。さらに同議長は、CERs価格の値下がりを指摘し、これは基金の存在自体を脅かす可能性があるとの観測を述べた。同議長は、附属書I締約国に対し、同基金が脆弱な諸国のニーズを満たすための能力が削がれないよう、資金の拠出を求めた。
ジャマイカは、CMPがCMP 8会合期間中に追加資金の拠出を進めるよう求め、スーダン、フィリピン、バヌアツ、ザンビアもこれを支持した。ブルキナファソは、炭素市場の限界を指摘し、予測可能な資金源を制度化する方法を探るよう提案した。インドは、附属書I諸国の実績からすると、適応基金への資金拠出を自主的に増額する意思があるかどうか、「楽観する理由はない(no reason for optimism)」と指摘した。また、同代表は、共同実施(JI)と排出量取引の収入の一部徴収分を適応基金に割り当てるよう提案した。ニュージーランドは、CERsは基金の重要な資金源であると指摘し、締約国に対し、適格性について議論し、基金に資金を与えられるだけの十分なCDMの需要を喚起するよう提案した。
更に議論を進めるため、コンタクトグループが設置された。
CDM:CDM理事会議長のMaosheng Duan (中国)は、同理事会の作業について報告し、CDMの成功を強調し、CDMが投資インセンティブを提供するツールであり続けてほしいとの希望を表明した。また、同議長は、締約国に対し、CDMの将来について明確なシグナルを出すよう求めた。
ザンビアは、アフリカでの認定運用機関の認証を追加するよう求め、CDMの改革を続けて、透明性や信頼性を高め、手法論を簡素化することを提案した。ボリビアは、技術移転やキャパシティビルディングに対するCDMの貢献度や、非追加性の可能性について、懸念を表明した。
スイスは、CDMの継続を支持する一方、特定のタイプのプロジェクトについては追加性や環境十全性の面でさらなる作業が必要であると述べた。ニュージーランドは、京都議定書の対象範囲は排出量の15%にすぎないと指摘し、第2約束期間に参加する締約国のみがCDMにアクセス可能とする場合、十分なCDMプロジェクト需要がでてこない可能性が高いと指摘した。
多数の締約国が、CER価格の値下がりについて懸念を表明し、対応方法を提案した。ベネズエラは、CDMは野心レベルとリンクしているとし、「単なるビジネス機会」ではないと強調した。Climate Marketと投資協会はBINGOsの立場で発言し、締約国がメカニズムのセーフガードに積極的に参加するよう求めた。
共同実施に関する問題:共同実施監督委員会(JISC)議長のWolfgang Seidel (ドイツ)は、JIは重要な転換点にあり、「不確実な将来」に直面していると述べた。また、同議長は、JIガイドライン(FCCC/KP/CMP/2012/5)改定に関するJISCの提案に焦点を当て、これには次のものが含まれると述べた:JIが単独の「最適化された」トラックで運用されること; JIプロジェクト活動の登録はホスト国に帰すること; JIは新しい統治組織の監督を受けること。
グレナダは、多数の提案について懸念を表明した。この中には、検証責任をホスト国に帰することや、2013年以降、各国が第2約束期間のQELROs を約束するまでの移行期間に排出削減単位(ERUs)を発行するオプションなどが含まれた。
遵守委員会報告書:遵守委員会共同議長のKhalid Abuleif (サウジアラビア)は、同委員会の報告書(FCCC/KP/CMP/2012/6)を提出し、2012年はこれまでのところ、委員会の執行部にとり最も多忙な年であったとし、促進部にとっては「極めて重要な年」であったと指摘した。また、同共同議長は、レビュー作業での一貫性が重要であると強調し、これにより衡平性が得られ、報告やレビュー、遵守の信頼性が生まれると指摘した。非公式協議が続けられる。
カザフスタンの附属書B改定案:締約国は、この項目に関して短時間議論し、その後は非公式協議で検討する。
特権と免責:締約国はこの項目に関して短時間議論し、その後は非公式協議で検討する。
COP
IPCC報告書:IPCC議長のRajendra Pachauriは、第5次評価報告書作成の進捗状況について、最新情報を伝えた。
今後の会合時期と場所:ポーランドは、COP 19のワルシャワでの開催を申し出た。COP 20および 21の開催場所を議論するコンタクトグループが設置された。
条約17条(議定書)に関する締約国の提案:締約国は、日本、ツバル、米国、オーストラリア、コスタリカ、グレナダの提案に留意した。締約国は、この問題をオープンなまま残しておき、閉会プレナリーで再度議論することで合意した。
条約15条に基づく改定案:ロシア連邦は、条約4条(約束)改定に関する自国の提案について、附属書IとIIに記載する国のリストを定期的に見直す必要があると説明した。この問題に関するコンタクトグループが設置された。
メキシコは、パプアニューギニアと共に、条約7条および18条の改定案を提出し、満場の意見の一致が見られない場合の議事進行方法を明確化する必要があると強調し、コロンビアもこれを支持した。この問題に関し、非公式協議が開催される。
資金関連問題:長期資金作業プログラムの報告:長期資金作業プログラム共同議長のZaheer Fakir (南アフリカ)とGeorg Børsting (ノルウェー)は、長期資金作業プログラムに関するワークショップ報告書(FCCC/CP/2012/3)を提出した。フィリピンは、COP決定書草案を作成するためコンタクトグループを設置するよう提案した。バルバドスはAOSISの立場で発言し、長期資金に関する作業では次の点に焦点を当てるべきだと提案した:資金規模の拡大;途上国の資金アクセス改善;適応活動と緩和活動とのバランス確保。インドは、長期資金に関する作業ではCBDRとの一貫性を確保し、条約の他の組織での議論とも一貫性を持たせるべきだと述べた。締約国は、この問題について、コンタクトグループ会合で議論する。
常任委員会報告書:常任委員会議長のDiann Black Layneと副議長のStefan Schwagerは、COPに対する常任委員会報告書(FCCC/CP/2012/4)を提出した。
フィリピンは、途上国に提供される支援のMRVなど、AWG-LCAの下で議論される常任委員会のマンデート達成におけるギャップに焦点を当てた。締約国はこの問題をコンタクトグループで議論する。
GCF報告書とGCFへのガイダンス:GCF議長のZaheer FakirとEwen McDonald (オーストラリア)は、COPに対するGCF報告書 (FCCC/CP/2012/5)を提出した。両議長は、基金運用開始への里程標として、韓国のSongdoを基金の本部を置く都市に選出する決定をしたと強調した。
バルバドスはAOSISの立場で発言し、COPは基金の運用開始を早める方法に関し、GCF理事会に追加ガイダンスを提供し、早期の適切な資金追加プロセスを開始すべきだと強調した。
コロンビアは、チリ、コスタリカ、ペルーの立場を代表して発言し、ボリビア、ウルグアイ、トーゴと共に、GCF運用開始を推進するための資金拠出を求めた。韓国は、GCFホスト国として、可能な限り早期の暫定事務局設置を進めるべく、最善を尽くすと発言した。締約国は、コンタクトグループ会合でこの問題を議論することで合意した。
COPとGCF間のアレンジ:この問題は、短時間議論された後、コンタクトグループでさらに議論される。
その他の問題:EUは、多数の締約国の支持を得て、決定書36/CP.7 (UNFCCC組織内の女性の参加推進)の実施を強化する決定書草案を提出した。この問題はSBIで議論する。
SBI
UNFCCC組織内の女性の参加:この問題は、短時間の議論の後、非公式協議で議論される。
コンタクトグループと非公式協議
ADP:ラウンドテーブル:ADPのビジョン:参加者はこの議題の議論の中で、次の方法に関する疑問点を取り上げた:新しい合意における条約の原則の適用方法;各国の国情への配慮;新しい合意は実質上全ての国に適用可能とし、これには差異のある約束の決定方法を含めること;全面的かつ野心的な参加に向けたインセンティブを提供し、効果的な実施や遵守アレンジを確保すること。締約国は、これらの疑問の審議の中で、ADP作業計画作成への影響についても議論した。
多数の開発途上国が、各締約国は約束をすべきであり、それぞれの国情に則った行動をとるべきだと強調した。シンガポールとパキスタンは、先進国は指導力を発揮すべきだと述べた。オーストラリアは、条約の原則の弾力的な解釈を推奨し、各国の国情に則り実施されるべき約束の表記方法に共通の法的プラットフォームを設けるよう求めた。ニュージーランドは、緩和に関する義務を全ての締約国に適用する一方で各国の決定要素に則ったものにするため、ボトムアップとトップダウンの手法の組み合わせを提案した。マーシャル諸島は、共通の検証方法が必要だと強調した。エクアドルは、開発途上国の再分類に各国の国情という考えを取り入れることに対し警鐘を発し、歴史的責任は償うべき「エコロジーの債務」であると評した。EUは、ADPの下で来年に遂行すべき作業を明確に理解した上で、ドーハ会議の席を離れることがEUの優先課題であると強調した。また、同代表は、条約の原則は進化しつつある中身の観点からみるべきだと述べ、統一性は遂行すべき約束の観点からではなく、義務の性質の観点から理解すべきだと付け加えた。パキスタンは、CBDRの原則と各国の国情への配慮が実際には異なっていることを反省した。また、同代表は、インセンティブの性質を明らかにするよう求めた。インドは、衡平性の基本原則において行動の差異化をすべきであり、各国の国情への配慮では、各国が取るべき行動の形や特性を選べるようにすべきだと述べた。また、同代表は、特に貧困撲滅など、開発途上国の優先課題に焦点を当てた。議論が続けられる。
AWG-KP:第2約束期間に関する問題についての非公式協議: 非公式協議では、交渉推進のためのAWG-KP議長提案(FCCC/KP/AWG/2012/CRP.1)をベースに議論された。締約国は、この文書の第1回の読み合わせを行い、京都議定書改定のCMP決定書草案における実質的な条項に焦点を当てた。
締約国は、次の点に関する文章のオプションについて議論した:第2約束期間の長さ;第2約束期間の運用開始;CDMの下での収入の一部徴収額の増額、およびこの制度の他の柔軟性メカニズムへの拡大、締約国による第2約束期間採択の推進方法など、その他の問題。締約国数カ国は、文書草案に含める文章案を提案した。
非公式協議が続けられる。
廊下にて
水曜日の会議では、第2約束期間の長さやAAUsの繰越しというAWG-KPでの問題を、閣僚到着後の会議に回す必要があることが明らかになった。ある参加者曰く、「ハイレベルの感触(a high-level touch)」となっている。別なものは、「今できることは、閣僚会議までにオプションのスリム化をはかることだ。単に時間の経過を見ているだけのように感じる」とコメントし、これまでのところ、「既に明確にされているそれぞれの立場の明確化」しかしていないと指摘した。
AWG-LCAの側では、緊急性の感覚がAWG-LCAでの交渉を導くはずと期待してドーハに来た交渉担当者は、ソウルのCOP前会議では楽観的な見方が出ていたと述べたが、残念ながらこのような楽観主義は雲散霧消したようで、今や交渉はほぼ停滞した状態であり、多数のものが議長文書ベースの交渉継続を拒否していると嘆いた。
ある参加者は、締約国が「目を覚まし、このように行きつ戻りつしていたのではどこにも行きつけないと認識してほしい」と、真に希望しており、「共に努力する必要がある」と述べた。また、同参加者は、COP 17議長のNkoana Mashabaneが良く口にしていた新しい人気フレーズを想起した:「早く歩きたいときは一人で歩くことだ。遠くまで歩きたいときは、他のものと一緒に歩くことだ。」さらに同参加者は、全ての締約国はものごとをゆっくりと進める必要が多分あるのだろうが、少なくとも2015年に向け安定した道を進むべきであり、長く歩く中で何か良い結果が得られることを希望すると述べた。