Daily report for 8 February 2015

ADP開幕プレナリーは、2月8日(日)午前に開催された。また、議題項目3(決定書1/CP.17のすべての要素の実施)に関するADP コンタクトグループが午前と午後に行われた。

ADP開幕プレナリー

COP 20 議長のManuel Pulgar-Vidal(ペルー環境相)は、リマの会議で生まれた勢いを維持し、責任をもって、効率的に、歩み寄りの精神をもって、取り組むよう締約国に求めた。 また、ADP 共同議長 Ahmed Djoghlaf (アルジェリア) は、参加者に対して、“子供たちのためにダーバンで交わした約束を守る“よう呼び掛けた。

議題項目 3: 共同議長 Daniel Reifsnyder (米国)は13日(金)に交渉テキストを出す目的について強調し、ADP コンタクトグループの主な任務は、交渉テキストに確実に各国のポジションを十分反映させられるようにすることだと述べた。作業構成案は締約国の合意を受けた。

南アフリカは、 G-77/中国の立場から、決定書 1/CP.20 (気候行動のためのリマ声明)に付属する交渉テキスト原案の要素については十分に話し合いが出来ていない点、オプションの簡素化はコンセンサスに基づくものとすること、また締約国の見解をテキストにバランスの良い方法で反映させなければならない点などを指摘した。

EUは、野心の定期点検を通じた2015年合意のダイナミズム確保; 合意における緩和に関する透明性と 説明責任の実現方法の明確化; 適応と気候 資金を通じた気候レジリエンスの実現;  プレ2020年の緩和の強化等について交渉を進展させるよう求めた。 オーストラリアは、 アンブレラ・グループの立場から、COP決定書に含めることが相応しい内容と法的合意に含めるべき内容とを区別することを提案した。スイスは、環境十全性グループの立場から、 個別の課題に取り組むための分科会の設置を提案し、テキストを整理することに集中するべきだと主張した。

ADPコンタクトグループ

総則・目的: セクション C の“総則・目的” については、Reifsnyder共同議長が、これを括弧に入れ込み、一部の締約国が同セクションの必要性を感じていることを反映させることを提案した。

テキストに追加する文言について複数の締約国から提案があり、これらをとりまとめる機会も確認された。

米国は、目的に関するセクションを別途設ける必要性があるか疑問視した。ブラジルは、同セクションは、新たな合意が求められる理由を説明するのに必須だと主張した。サウジアラビアは、セクション省略を提案したものの、これを残す場合には、その目的を1~2パラグラフに反映させるべきだと述べた。数カ国が、 セクションは、合意の全体的な目的の言及に絞り、この目的の達成方法については別のところで詳しく記載する案を出した。シンガポールは、条約と新合意との関係について取り上げるよう求めた。

モルジブは、 AOSISの立場から、平均気温の上昇を1.5 °C未満に抑制する科学について記載するよう求めた。ジャマイカは、 2050年までに世界の温室効果ガス(GHG)排出量を少なくとも70-90%削減するという大幅かつ迅速な排出削減を担保するテキストを提案した。EUは、IPCC第5次評価報告書との整合性を確保すべく、今世紀末までにCO2や長寿命のその他の温室効果ガス(GHGs)を正味ゼロ排出にする必要があると強調した。スイスは、GHG正味ゼロ排出を達成する目的について記載する必要があるとの意見に賛同した。一方、ブラジルは、IPCCの記載を入れることは政治化につながりうると釘を刺した。

スーダンは、 アフリカン・グループの立場から、 損失・被害に関する新提案にスポットを当てた。AOSISは、すべての 締約国が高い野心を掲げる必要性や、緩和と適応の相関関係、損失・被害への対応などがあると強調した。

ブラジルは、テキストの記載の一部に“進化しつつある CBDR”等、リマの成果に沿っていない内容になっているのは遺憾だと述べた上で、すべての 締約国による取組みに賛同の意を示した。米国は、 先進国と途上国の分類を2つの附属書として新たに入れることを提案した。

マレーシアは、 LMDCsの立場から、緩和と同じ緊急性をもって適応に対応するよう求めるとともに、特に途上国の緩和 行動と先進国からの支援強化との関係について強調し、気候変動に対して先進国がいかなる単独的な(ユニラテラルな)措置に訴えるべきではないとの主張を入れることを提案した。サウジアラビアは、 “レジリエンスと適応力の確保に関するテキスト”と“すべての投資は気候変動に対するレジリエンスを確保する”という内容のテキストを合体させる案を提起した。

いくつかの締約国が、ジェンダーの平等に関するテキストを入れる案に賛同した。ツバルは、 LDCsの立場から、 さまざまな提案の類似点について指摘した。メキシコも、ウガンダ、チリ、ボリビアの支持を受け、 人権に関するテキストを提案した。また、ツバルは、LDCsの立場から、 すべての締約国の参加、人権、障がい者の権利などについての文言を入れるよう求めた。

Reifsnyder共同議長 は、後の段階で非公式協議を行ってセクションに関する再検討を行うとし、これまでの議論の進展については満足感を示しつつ、締約国からの諸提案についてはセクション Cの改定案とともに速やかにインターネット上で掲示すると述べた。

緩和: 午後からのコンタクトグループでは、緩和に関する セクション Dについて集中的な議論が行われた。

アルゼンチンは、 LMDCsの立場から、特に、約束、 貢献 、行動は、条約の原則と義務を順守する内容とすべきであるとし、先進国の 締約国は数値化された排出抑制削減目標(QELROs) を比較可能、検証可能なものとし、いかなる付帯条件も付けずに実施すべきだと強調した。また、先進国締約国の行動として、各国の特殊事情やニーズに合わせて、REDD+ や合同での適応と緩和等を組み込むことは可能だとの見解も示した。

チリは、AILACの立場から、すべての 締約国が継続的に緩和の約束を行うことを提唱するとともに、INDCsに関する事前および事後の点検(レビュー)を区別するテキスト を 提案した。また、土地利用セクターの市場メカニズムの活用については、環境十全性や二重カウント防止、途上国における候変動 レジリエンス支援に対する課徴金などについて記載することを提案した。

パナマは、CfRNの立場から、新合意におけるREDD+枠組みの反映・定着、セーフガード条項の適用、途上国による森林セクターの緩和活動の実施支援に関する決定書 10/CP.19を踏まえた条約下の制度的なアレンジの強化等を求めた。

EUは、特に会計ルールについて強調し、行動 と支援の透明性に関するセクションでの記載内容を緩和セクションに入れることを提案した。また、土地利用と市場メカニズムについては、文章を分けることを提案した。 さらに、締約国が自国の約束を定期的に点検し、更新させていく必要があると強調した。オーストラリア は、執行機関が今後承認する予定のモダリティーに従って、締約国がそれぞれの国内スケジュールを更新するという内容を盛り込んだ、各国のスケジュールと緩和の貢献草案に関する文言を提案した。

ケニアは、 アフリカン・グループの立場から、先進国はMOIを提示する義務があると主張し、途上国にとっては社会経済開発と貧困撲滅が第一の最優先課題であると強調した。モルジブは、 SIDSの立場から、特に、市場メカニズムの活用による収益金を最も脆弱な途上国の適応費用に充当することを提案した。

できるだけ早期に世界のGHG排出量のピーク期を迎えるようにするとのテキストの重要性を強調しつつ、タンザニアは、そのための取組みに関しては、先進国には定量的かつ期限を設け、途上国には希望的な内容にすると明記することを提案した。

米国は、草案文全体にわたる先進国または途上国の記載を新たな附属書y及びxに変更する 案を提示するとともに、締約国が各サイクル開始の6カ月前までにINDCsを提出することを明記し、締約国が貢献に関する今後のサイクルに関する協議にどのように参加するか明確に示す文言を入れるべきだと主張した。カナダは、すべての締約国がIPCCの指針に沿ってインベントリに関する報告書を作成するという文章を提案した。

ブラジル は、排出量取引制度(ETS)を成す経済メカニズムに関する文章とクリーン開発メカニズムの強化(CDM+)に関する文章を提案し、これは数値化された緩和 目標がある締約国はETSやCDM+を活用して国内行動を補完し、  途上国は自主ベースでCDM+プロジェクトに参加可能とする趣旨だと説明した。 また、環境十全性を高める目的で行う認証排出削減量 (CERs)の自主的な取り消しについては、数値化された資金供給の目標や誓約を達成するために取り消したCERsは活用できるが、緩和目標のためには活用できない旨を強調した。

セネガルは、市場メカニズムや土地利用セクターの行動について、ホスト国の持続可能な開発に貢献させるべきだとし、既存の市場メカニズムをベースとし、条約に基づく集中管理による市場メカニズムを提案した。エチオピアは、2015年合意の中で市場メカニズムの詳細を明記するという新たな意見書を発表した。

南アフリカは、ダイナミックな貢献サイクルに不可欠なのは「点検」であると強調し、COPが策定した共通会計ルールに関する文章を提案した。

ニュージーランドは、会計ルールについてはセクション Dでもっと明示的に扱うべきだと指摘し、ノルウェーとともに、二重算定の防止の重要性を記載する必要があると主張した。

ボリビアは、代替案や市場原理以外の方策、緩和と適応の合同アプローチの必要性について記載すべきだと説き、「母なる地球の保護と十全性」に関する文章の追加を求めた。地球規模の排出予算については、 エチオピアが、歴史的な排出量を考慮に入れつつ、人口1人あたりの排出量について記載することを提案した。

廊下にて

寒いながらも日差しのある日曜の朝、 パリ会議に至る交渉会合の第一弾に向け、各国の政府代表が歴史的な建築のPalais des Nationsに到着。今回の交渉会合は良いスタートを切ったと多くの参加者が感じたようだ。開幕プレナリー は“驚くべき速さ”で終了。多くの交渉グループが時間節約のために開幕ステートメントを電子的に送信した姿勢に対して、多方面から評価する声があがった。

午前の ADPコンタクトグループ会合は好調な滑り出しで予定時間前に終了。一方、午後のコンタクトグループでは、草案文の緩和に関するセクションが、合計52の提案が新たに加わって分量が肥大したものの、会合自体は予定の1時間前に終了した。この会議の進展ぶりに、Reifsnyder共同議長は「この調子で効率良く進めば、パリ合意を確実に成立させられる。ひょっとするともっと合意時期を早められる事もあるかもしれない」と冗談めかして喜びの感情を表現した。また、各交渉グループの代表と協議を終えた共同議長は、残り時間で交渉草案の整理に集中できるよう、作業をスピードアップして2月9日(月)までに文言に関する新たな提案をすべて回収することを 提案した。これに関連して、夕方遅い時間に新しい文章に関して交渉グループ内の調整を完了することになるだろうと多くの参加者が話していた。

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