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アース・ネゴシエーション・ブレティン (地球交渉速報)

第12巻第634号 - 2015年6月8日(月)


ボン気候変動会議

2015年6月6日(土) | ボン、ドイツ

英語 (HTML - PDF) | フランス語 (HTML - PDF) | アラビア語 (HTML - PDF) | 日本語 (HTML - PDF)

ボン(ドイツ)からのIISD/ENB会議の報道については、下記のリンクをご参照ください: http://enb.iisd.org/climate/sb42/


ボン気候変動会議は、6月5日(土)も議論が続けられた。ADP主催のグループ会合では、午前に適応・緩和、午後に資金、技術、実施・遵守、夕方に透明性についての討議が行われた。また、都市環境における省エネの取り組みに関するTEMの審議も引き続き午前中に行われた。

SBIでは午前にコンタクトグループ会合があり、SBI及びSBSTAでは終日非公式協議が行われた。また、SBI/SBSTA/資金に関する常設委員会(SCF) では、附属書I締約国の資金情報の報告方法に関するインセッションワークショップが午前に開催された。

ADP

促進グループ: 緩和: 緩和の約束/貢献/行動に関するパラグラフ 21を焦点を当て、Franz Perrez共同進行役は、表の各サブパラグラフのコンセプトを特定し、文書化するよう提案した。 米国 と EU  は、このパラグラフをいかに分類できるか各国が意見書を提出することを提案した。

手続きに関する議論に入ると、共同進行役が提案したコンセプトを出発点として、各サブパラグラフの主要コンセプトを取り上げる方が良いとの意見が幾つかの締約国から出された。また、コンセプトを特定してから、それらのコンセプトを包含するサブパラグラフの作業を行う案が一部の締約国に支持された。

その後、共同進行役が提案した表形式のコンセプトを足掛かりに、パラグラフ21 と 21.1締約国の議論が行われた。

パラグラフ 21の柱書については、ブラジルが法的効力や差別化、UNFCCCの条文の参照が重要なコンセプトであると確認した。チリは、AILACの立場から、“国家のスケジュール”という用語 に内包されるコンセプトとして“アンカリング(係留、定着)”について特定した。

南アフリカ は、同パラグラフの動詞を“簡略化”に用いることを提案した。中国は、オプション 1、2、4、5 、6を一塊、オプション3 と 7を一塊として、2つのグループに分類するよう提案したが、米国は、“約束/貢献/行動の確立”だけにする方が良いと主張した。

数値化の可能性に関するパラグラフ 21.1については、ブラジルが、数値化の可能性、比較可能性 と 透明性に関する提案を行った。中国は、差別化を含む数多くの要素を特定した。インドは、歴史的責任について主張した。米国は、1つか2つの コンセプトに集中するよう求めた。アルゼンチンは、 “what” と “how” の要素を区別すべきだと提案した。

ツバルは、日本 と ケニアの支持を受け、表の中身に関する交渉に入っていることへの懸念を示したが、Perrez共同進行役が懸案の表には何ら法的資格は無いと請け合った。アラブ首長国連邦(UAE) は、共同進行役に妥協案づくりを託すべきだと提案した。

オーストラリアは、セクション内のリンケージ(関係性)に関する表に新たな欄を設けるべきだと提案したが、中国はパラグラフを“分裂”させるものだとして反対を唱えた。 Perrez共同進行役は、コンセプトとリンケージに関する締約国からの提案ならびにパラグラフの順序に関する提案を盛り込んだ表を共同進行役が6月8日(月)までに準備することを発案し、締約国の賛同を得た。

適応: Corea Guerrero共同進行役が司会を務めた議論では、①G-77/中国、②EU、③オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、ノルウェー及び米国の3クラスターからの提案に集中的に取組んだ。

作業方式の議論で長時間が費やされたが、各パラグラフ中のサブテーマを特定し、 後の段階でテーマやサブテーマの表記を削除するとの理解のもとでこれらのサブテーマ表の欄に明記することや、複数のサブテーマがあるパラグラフの分断を避ける等の点で合意が成された。

幾つかのセクションのパラグラフについて、どのような標題をつけるかという点については、米国がクラスター化に関して3提案に大きな乖離が見られるとし、すべてのパラグラフを“支援”という標題でまとめることを提案した。すべての締約国による非公式協議の後で、G-77/中国が、3提案と会議中に出されたコメントを踏まえてセクション再構成を行う作業を共同進行役に託すことを提案し、締約国がこれに同意した。

 G-77/中国は、パラグラフ間のリンケージ、ならび諸原則と支援に関する重要不可欠な要素を維持することが重要だと指摘した上で、適応措置を講じるためのNAPsや約束、量的・質的側面を含む幾つかのサブテーマがなし崩しになる可能性があるとの見方を示した。カナダは、量と質に関するサブテーマを切り離す方が良いと主張した。EUは、いかなる締約国も置き去りにすべきではないと強調した。

G-77/中国提案を支持しつつ、タンザニア と エジプトは、促進グループ別の議論のペースや方式の違いによって齟齬が生じるのではないかとプロセスに対する不安感を示した。チリは、米国の支持を受けつつ、促進グループ毎に議論の進展スピードに違いがあるものの、ジュネーブ交渉テキストをもっと実際的な内容にしようという目的は共通していると述べた。

Guerrero共同進行役は、共同進行役が全員で確実に一貫性ある成果を出せるよう定期的に調整を図ると述べた。

資金: Georg Børsting共同進行役がパラグラフごとの議論の采配をとり、文章をさらに簡潔にまとめるための意見を募った。

米国は、基本理念に関するパラグラフ 79を貢献/約束/行動の下に移動させることを提案し、ボリビア(G-77/中国)はオプション5の提案は基本理念の下に位置づけられるものだと指摘した。

米国 と EUは、炭素集約度の高い投資への支援を減らすという内容のパラグラフ 81を約束/貢献/行動の下に移動させる案を支持した。

合意の実施に関する協力についてのパラグラフ83、および透明性の共通枠組みについてのパラグラフ84に関しては、EUが、両パラグラフを約束/貢献/行動の下に移動させることを提案したが、自国の立場で発言したボリビアがこれに反対を唱えた。スイスは、パラグラフ 84と透明性に関するパラグラフをグループ化する意見を出し、ベリーズの支持を得た。

米国は、国以外の主体の取り組みに関するパラグラフ 85は、貢献/約束/行動に属するとの見解を示した。

EU は、資金拡充の明瞭化についてのパラグラフ 86を拡張可能な資金の項目の下に位置づけることを提案した。スイスは、ナウルの支持を受け、動的な要素の下のパラグラフに位置づけることを提案した。

 G-77/中国は、定期的なレビュー・プロセスに関するパラグラフ 87と支援メカニズムのMRVに関するパラグラフ 88を「目的」に移すことを提案した。オーストラリアは、パラグラフ 88とパラグラフ 84をまとめることを提案した。米国は、パラグラフ 88 について、ジュネーブ交渉テキストの透明性のセクションに入れることができると述べた。

資金メカニズムに関するパラグラフ 89については、パナマが、スイスの支持を受けつつ、SCFに関する文章を、新たな制度的なアレンジに関するパラグラフ 90に移すことを提案した。

G-77/中国は、MOIを提供するための気候資金の拡充および資金規模に関するパラグラフ 91 と 92の文章をまとめることを提案した。しかし、ノルウェーと EUは、パラグラフの内容と文脈が異なっていると反対を唱えた。

その後、会合中に提出された締約国の意見書を考慮に入れた簡略テキストの文書作成を共同進行役に託すことで締約国が合意した。

技術: Tosi Mpanu Mpanu共同進行役が進行役を務めたセッションでは、先進国の支援を受けた途上国の技術ニーズの評価に関するパラグラフ 132.5をまとめることで合意が成立した。

テキストの配置に関する議論では、国際協力に関するパラグラフ 132.6を決定書ではなく合意文書の中に入れる方が良いという点で多くの締約国の意見が一致した。ツバルは、インドとともに、現行制度を合意の中に係留(定着)させる案を支持したが、オーストラリアが反対した。

南アフリカは、 アフリカン・グループの立場から、技術の開発・移転を拡大するための枠組みに関するパラグラフ 131の挿入位置を換えるための文章を提案した。

米国とインドは、知的所有権(IPR)と長期的な技術目標に関する文章について意見交換を行うという案を支持した。

長期的な技術目標に関するパラグラフ 129については、中国が、技術の“流通プロセス”を構築するための動機づけになると説明したが、ニュージーランドは、技術はUNFCCCの目的を実現するための道具として理解する方が良いと述べ、長期目標に反対した。米国は、移転準備ができている技術に関する定期評価についての文言を明確にするよう求めた。また、指摘された問題点に関する議論を続けることで締約国が合意した。

実施と遵守: この セッションの進行は共同進行役Sarah Baashanが行い、本項目の内容を分解するべく、オーストラリア、EU 、コロンビア(AILAC)、中国(LMDCs)が行った提案を中心に議論が行われた。

これらの提案に関しては質疑応答の時間が設けられた。ツバルは、LDCsの立場から、LMDCs、AILAC、日本とともに、共同進行役が提案内容をまとめた上で文書に起こすべきだと提案した。

EUは、提案の趣旨が異なると強調し、同作業の有用性について疑問を呈し、インドの支持を受けた。AILACは、共同進行役が各提案の共通項を見つけ、統合させるべきだと提案し、締約国が合意した。

スーダンは、アフリカグループの立場で発言し、決定書の文章に何を移すべきか決定する前にセクションを再構成するべきだと主張し、AILACとLDCsの支持を得た。次回のグループ会合までに共同進行役が提案とコメントをまとめた文書を作成する。

都市環境における省エネ行動に関するTEM: 都市環境における拡張・反復可能な変革行動の実施の加速化: 都市の照明と分散化エネルギーや省エネ建築、持続可能な都市交通について、3つの分科会が並行して開催された。

 “アクセラレータ・パートナーシップ”を通じた、より多くの、より早い、エネルギー効率化行動の現状 :潜在力を現場の行動に移す:分科会の会合について報告が行われた。

都市の照明と分散エネルギーについては、モデレーターのJohn Christensen(国連環境計画:UNEP)が、フランス・パリの地域冷房ネットワークの運営やインド・ラージコートの分散エネルギーシステムに関するパイロット事業、スペイン・カタルニアの照明と分散化エネルギー、中南米の都市環境における省エネ事業への融資等のプレゼンについて報告した。

省エネ建築については、モデレーターのJames Drinkwater(世界グリーンビルディング協会:WGBC)が、南アフリカ・ツワネの省エネ建築政策の実施に関する法的枠組み、ブラジル・レシフェの屋上緑化(グリーンルーフ)に関する法規制、オーストラリア・バイロンベイの「エネルギー・フリーダム・プロジェクト」、省エネ政策の推進策と行動に関するVELUXの視点、欧州復興開発銀行(EBRD)の建築・エネルギー資源効率化のソリューションに関する経験などのプレゼンについて報告を行った。

持続可能な都市交通については、モデレーター Karl Peet(持続可能な低炭素交通に関するパートナーシップ)が、インドネシア・ボゴールの持続可能な都市交通計画や公共交通の電気化、都市交通の交通手段選択・燃料利用・排出量、グローバル燃費イニシアティブ(Global Fuel Economy Initiative)についてのプレゼンに関する報告を行った。

未活用エネルギーのエネルギー効率改善、政策の実行と既存の実施のための取り組みの拡充におけるUNFCCCの今後の役割についての議論があり、都市環境における省エネ行動のための政策や行動、技術的な検証のための今後の方策といったテーマに取組んだ。

補助機関

SBSTA/SBI/SCF 資金情報の報告に関するワークショップ: Seyni Nafo (マリ) と Roger Dungan (ニュージーランド)が共同進行役を務めたワークショップでは、気候資金に関する報告についての食い違いや透明性の欠如が見られ、ADPの透明性の枠組みに関する議論との関連も見られた。

隔年報告書の共通計算様式(CTF)の適用とCTFに対する修正に関する指示や非附属書I締約国が受けた支援や報告内容の目録作成のための簡素化検証様式に関する作業に集中すべきだとの提案があった。

廊下にて

6月6日(土)の会議場では、同時開催された多数の会合がさまざまな結果を示していた。SBでは大躍進が見られた議題項目もあり、ある政府代表などは、金曜夕方農業に関する非公式会合が“このプロセス史上最高”の議論であったと表現した。 他方で、ADP交渉テキストに関する各種部会の作業ペースはまちまちだった。

この二日間のうちに、新合意のためのADP交渉テキストをどのように再構成していくべきか十数件の提案が出されたが、ある関係者は「昨年のように何を交渉テキストとするかという議論で各国が言い争う場面はないかもしれないが、明らかに議論の前進に手こずっている」という見方を示し、不安を滲ませた。

いくつかの交渉グループは、テーマごとに交渉文のセクションをクラスター化するというデリケートな作業を共同進行役に委ねた。締約国が明確な期待を抱くような争点もあれば、それほど明確ではない争点もある。ある政府代表は、日曜日の中休みは「交渉テキストだけでなく、自分達の考えをまとめるためにも役立つだろう」と希望的な観測を示した。

(IGES-GISPRI仮訳)