Daily report for 31 August 2015

ADP 2-10は、2015年8月31日(月)、ドイツ・ボンで開会した。午前中の開会プレナリーの後、参加者は、次のADP促進グループ会合に集合した:午前中は、適応及び損失と被害、総論/目的;午後は、緩和、合意の前文、実施と遵守、技術開発と移転;夕方には、行動及び支援の透明性、ワークストリーム2(プレ2020年野心)。

ADP開会プレナリー

ADP共同議長のDaniel Reifsnyder (米国)は、実質的交渉開始の緊急性を強調した。UNFCCC事務局長のChristiana Figueresは、条約プロセス参加のための信託基金が120万ユーロの赤字になっていると報告した。

COP 20/CMP 10議長のAntonio García Revillaは、2015年は気候目標と開発目標をともに実現する機会であると述べた。COP 21/CMP 11議長のLaurence Tubianaは、2015年7月の非公式閣僚協議について報告した。

ADPコンタクトグループ:南アフリカはG-77/中国の立場で発言し、共同議長のツールは諸問題の位置付けがアンバランスであるとして懸念を表明し、プレ2020年野心の進展を求めた。

オーストラリアはアンブレラ・グループの立場で発言し、締約国に妥協のためのアイデアを出すよう勧め、合意なしで、各セクションの行ごとの議論を進めないよう求めた。EUは、技術に関する交渉がハイレベルな政治的議論に後れを取っているとして、懸念を表明した。

ドミニカは米州ボリビア同盟(ALBA)の立場で発言し、ハリケーン・エリカによる被災に注目して、適応及び損失と被害に関する行動の強化と、条約の原則に沿わすことを求めた。

グアテマラは独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)の立場で発言し、短い期間での約束サイクルとするよう求め、緩和、適応、損失と被害のリンク、更には実施手段(MOI)とのリンクを求めた。スーダンはアフリカン・グループの立場で発言し、損失と被害、さらには緩和と約束のリンクを議論する必要があると強調した。

エルサルバドルは中米統合機構(CENTRAL AMERICAN INTEGRATION SYSTEM (SICA))の立場で発言し、共通だが差異のある責任及びそれぞれの能力 (CBDR-RC)の原則を認めるよう求めた。同代表は、1.5℃目標は科学に沿うものだと述べた。他のグループは、それぞれのステートメントはUNFCCCウェブサイトに掲載されると指摘した。

ADP促進グループ

総論/目的:Diann Black-Layne (アンティグア・バーブーダ)は、このグループの進行役を務めた。米国、ニュージーランド、オーストラリア、カナダは、目的を別なセクションではなく、合意の前文の中に入れることを提案したが、他の多数の諸国は反対した。

トルコ、ノルウェー、EU、アフリカン・グループの立場で発言したスーダン、後発開発途上国(LDCs)の立場で発言したアンゴラ、マレーシア、クウェートは、条約第2条(目的)への言及を支持した。グアテマラはAILACの立場で発言し、長期手法への言及に励まされたと述べた。

ブラジル、EU、LDCs、ノルウェー、アルゼンチン、インドネシア、マレーシア、エクアドル、コロンビアは、気温目標を含めるよう求めた。ボリビア、及び小島嶼国連合(AOSIS)の立場で発言したシンガポールは、1.5°C目標への言及を支持した。

AOSISは、特に脆弱な諸国の特殊事情を認識し、損失と被害を含めることを強調した。サウジアラビアは有志途上国 (LMDCs)の立場で発言し、ヨルダンとともに、CBDR及び衡平性を反映させるよう求めた。

EUとメキシコは、性の平等、人権を加えるべきと述べた。ボリビア、アルゼンチン、キューバ、ヨルダン、インド、クウェートは、正味ゼロの温室効果ガス排出量及び気候回復力のある経済等、条約にない点を含めることに反対した。コロンビアは、条約に則ったパリ合意の構築を目指すと述べた。

ボリビアとエクアドルは、母なる大地の健全性保護、及び開発する権利の追加を支持した。共同進行役のBlack-Layneは、このフィードバックをADP共同議長に伝えると指摘した。

適応と損失・被害:Andrea Guerrero (コロンビア)は、この議論の共同進行役を務めた。

個別の努力に関し、メキシコは、規範的な義務に警告した。サウジアラビアはLMDCsの立場で発言し、適応努力を行動もしくは貢献と位置づけること、及び約束草案(INDCs)とMOIとのリンクを強調した。中国は、合意に先進国の適応支援約束を含めるべきだと述べた。EUは、既存の約束に則り行動するとの約束を構築して、全ての締約国に適用し、国家開発計画に適応を盛り込むことは可能であると強調した。

制度に関し、モルディブはAOSISの立場で発言し、適応委員会を指導的組織と認めるよう求め、AILACの立場で発言したチリとともに、既存のコミュニケーションチャンネルの活用を求めた。中国は、合意の中で既存制度強化に言及することを支持したが、EUは COP決定書の方を希望すると表明した。

モニタリング及び評価に関し、AOSIS及びLDCsの立場で発言したツバルは、報告義務の追加負担は避ける必要があると強調した。米国は、教訓を得た事項について定期的に報告するプロセスを求めた。EUは、モニタリングと評価は、測定、報告、検証(MRV)体制の一部ではないと指摘した。

損失と被害に関し、G-77/中国は、AOSIS及びLDCsとともに、損失と被害を合意に盛り込むよう求めた。米国とEUは、これらを入れるかどうかではなく、どのように入れるかが問題であると強調した。LDCsは、次の項目に焦点を当てた:合意において、新しいメカニズム及び気候変動移動調整ファシリティーを設置する;COP 決定書において、早期警戒システムを奨励し、資金技術パネルを設置する。

今後の進め方の議論で、共同進行役のGuerreroは、明確化が必要な7つの疑問点を提示し、このグループは火曜日に再度会合すると述べた。

緩和:この会合の共同進行役はFranz Perrez (スイス)が務めた。マーシャル諸島はAOSISの立場で発言し、多数の締約国による全面的または部分的な支持を受け、新しい合意における次の項目の追加を提案した:長期目標の運用;緩和約束のパラメーター;約束の計算方法;野心引上げを進めるシステム;算定規則;市場メカニズムの明確化。

EUは、実施義務及び無条件の約束に関し、強い拘束力のある表現を求めた。同代表は、LDCsの立場で発言したツバルとともに、国際輸送も論じることを提案した。アルゼンチンは、セクター別緩和に関する表現に反対した。米国は、 特に国家が決定する約束草案のレジストリ、共同実施、及び報告とレビューの要素を求めた。

マレーシアはLMDCsの立場で発言し、制度アレンジの中に、持続可能な開発に関する協力メカニズム、及び共同での緩和と適応の取り決めを含めるよう求めた。同代表は、経済問題及び社会問題に関する条項を強調する一方、市場、土地利用及び定量性は歴史的に追跡不能であり、削除されるべきだと指摘した。多数の締約国は、個別の努力の下での差異化を論じる必要があると強調した。

アフリカン・グループの立場で発言したアルジェリア及びボリビアは、非市場ベースメカニズムへの言及を強調した。アフリカン・グループ、LMDCs、及びアラブグループの立場で発言したサウジアラビアは、合意の中に対応措置を含めるよう求めた。

締約国は、次の3つのスピンオフグループを設置することで合意した:非市場ベースメカニズムに関する条項を明確にするボリビア主導のグループ;個別の努力の下で差異化をどう取り入れるかを議論する南アフリカ主導のグループ;及び共同実施の概念を絞り込むブラジル主導のグループ。

合意の前文:このグループの共同進行役は、George Wamukoya (ケニア)が務めた。締約国は、合意の前文の重要性、それを簡潔なものにする必要性で意見が一致した。締約国は、ツールの第3部(挿入箇所のさらなる明確化が求められる条項)の概念のどれを合意の前文に入れるか、それぞれの意見を表明した。

AILACの立場で発言したグアテマラ、LMDCsの立場で発言したサウジアラビア、スイス、LDCsの立場で発言したアンゴラ、リヒテンシュタイン、ノルウェー、オーストラリア、トルコは、性の平等と世代間の平等を含めるよう求めた。LMDCsは、歴史的な排出量と現在の排出量、MOI、持続可能な社会及び経済の発展への言及を支持した。

ボリビア、キューバ、ベネズエラは、母なる大地の健全性、開発の権利への言及を支持した。アフリカン・グループの立場で発言したスーダン、LDCs、トルコは、科学がいかにして合意の指針になるかを記載するよう求めた。

EU、米国、ノルウェー、日本、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは、実質的なセクションの形が整ったところで、合意の前文を議論するよう提案したが、他のものはこれに反対した。共同進行役のWamukoyaは、締約国に対し、含めてほしいと考える題目の記述方法について作業するよう求め、水曜日に非公式非公式会議(informal informal)を開催すると発表した。

実施と遵守: Sarah Baashan (サウジアラビア)がこの会議の共同進行役を務めた。

AILACの立場で発言したコロンビア、LDCsの立場で発言したツバル、EU、ノルウェー、アフリカン・グループの立場で発言したスーダン、その他は、新しい合意においては遵守メカニズムを設定する必要があると強調した。AILAC、LDCs、ノルウェー、トリニダード・トバゴは、合意の中に遵守メカニズムの様式を含めることを提案し、LMDCsは、様式を作成する組織の作業計画を提案した。

差異化に関し、LDCsは、国内経済規模の目標を有する諸国のための執行部、及び目標を持たない諸国のための促進部を提案した。中国はLMDCsの立場で発言し、先進国のための執行部、及び途上国のための促進部を提案、先進国のみがMOIを提供する義務を有すると指摘した。

EU、オーストラリア、ニュージーランド、米国、ノルウェー、日本は、全てのものに適用可能なメカニズムを求めた。EU、オーストラリア、ニュージーランド、米国は、合意は主に推進を目的とすべきだと述べたが、ボリビアは裁きの場とすることを提案した。

参加者は、非公式非公式会議を開催し、遵守メカニズム設置の記述方法を議論することで合意し、共同進行役が差異化と範囲(scope)に関する疑問点を作成することでも合意した。

技術開発と移転:Tosi Mpanu-Mpanu (コンゴ民主共和国)がこの会合の共同進行役を務めた。共同進行役のMpanu-Mpanuは、合意草案における技術の要素と他の要素との「アンバランス」についてインドと中国が表明した懸念に応え、これはADP共同議長が「過剰に慎重(overly cautious)」であったためであろうと述べた。

中国はG-77/中国の立場で発言し、技術移転に関する全てのパラグラフを、合意ツールの第3部に移すことを提案し、LMDCsの立場で発言したインドはこれを支持したが、米国は反対した。 G-77/中国は、制度アレンジ及びその定期的評価に関するパラグラフを、COP決定書から合意に移すことも提案した。アルゼンチン、ベネズエラ、イラン、AOSISの立場で発言したベリーズ、セネガルは、技術のセクションとMOIとのリンク付けを求めた。

スワジランドはアフリカン・グループの立場で発言し、技術開発及び移転に対する資金供与を合意に含めるよう求め、新しいメカニズムの設置を求めた。

日本は、技術に関するグルーバルな目標に反対した。EUは、合意の文章を簡潔な長さにすることを支持し、協力行動の役割に注目した。米国は、資金メカニズムと技術メカニズムのリンクに関しては、COPで議論が進行中であると指摘した。

廊下にて

月曜日、参加者は、議論を進めるべく共同議長が提供した新しい「ツール」を携えて、ボンに到着した。多数のものは、ツールに対する感謝の意を表明し、速やかに使用を開始した。ある参加者は、「午前中は手続き上の議論に終始する可能性があったことから、前向きなサイン」であると指摘した。

しかし、ツールに全く瑕が無かったわけではなく、一部の途上国出身の参加者は、ハリケーン・エリカがドミニカに被災の爪痕を残す中、損失と被害の規定が、合意の一部としてツールに明確に位置付けられていないことで、明らかに衝撃を受けていた。

参加者は、本会合に先立ち開催された非公式の2者協議についてコメントし、締約国の信頼を得ようとする努力を歓迎する一方、「ジュネーブ交渉文書を再度整理する」よりも、実際の交渉を行う時期に来ていると述べた。パリ会議まで残された交渉期間は9日間、このツールが2015年合意の主な特色を削りだしていけるかどうかは、まだ不確かである。

(IGES-GISPRI仮訳)

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