Summary report, 31 August 2015

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のボン気候変動会議は、2015年8月31日から9月4日、ドイツ・ボンにおいて開催された。この会議には、政府、オブザーバー組織、メディアを代表し、2,000名を超える出席者が参加した。

ボン気候変動会議は、2015年11月-12月にフランス・パリで開催予定のパリ気候変動会議の準備を行うUNFCCCの数回の会議では、最後から2番目の会議である。パリ会議は、2020年に発効する「全ての締約国に適用可能な条約の下での議定書、別の法的文書、または法的効力を有する合意成果」の採択が義務付けられている。このパリ合意文書の作成を託された組織が強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)である。ボンにおいて、ADPはその第2回会合第10部(ADP 2-10)を開催した。

2014年12月、UNFCCCの第20回締約国会議(COP 20)は、2015年5月までに全ての締約国に適用可能な条約の下での議定書、別な法的文書、または法的効力を有する合意成果の交渉文書を提示するとの観点から、ADPの作業を一層強化するようADPに要請した。2015年2月、スイス・ジュネーブで、ADPは、2015年合意の交渉の土台となるジュネーブ交渉文書(GNT) (FCCC/ADP/2015/1)を採択した。GNTは、締約国の提案及びオプションをとりまとめたもので、90頁の長さがある。

ADP共同議長のAhmed Djoghlaf (アルジェリア)とDaniel Reifsnyder (米国)は、2015年7月24日付の共同議長シナリオノート(ADP.2015.4.InformalNote)において、ボン会議の目的はワークストリーム1(2015年合意)及びワークストリーム2(プレ2020年野心)に関する「パリ・パッケージ」の要素を明確にし、詳細を定めることであると指摘、これには橋渡しとなる提案を作成し、さらなる交渉のためのオプションを明確にすることが含まれると述べた。

ADP共同議長は、ADP 2-9における締約国からの要請を受け、ADP 2-10での作業の指針とすることを目指し、2015年7月24日付シナリオノートに付随する「ツール」を作成した。このツールは、ADP 2-9における締約国のGNTスリム化努力の成果である6月11日付文書をスリム化し、統合した文書に基づくものである。ツールは、締約国の立場やオプションを省略も削除もせずにGNTを再編成する。共同議長は、ADPワークストリーム2(プレ2020年野心)に関する決定書草案の要素を記載する文書(ADP.2015.5.InformalNote)も発表した。

ADP 2-10での1週間、参加者は、ツールの多様なパートを促進グループ(facilitated groups)やスピンオフ会合で議論したほか、促進グループの非公式会議でも議論した。議論されたセクションは次の通り:前文;総則/目的;緩和;適応及び損失・被害;資金;技術開発及び移転;キャパシティビルディング;透明性;時間枠;実施と遵守;手続き及び制度の条項。各グループは、ツールの中のパラグラフの位置付けについても検討し、重要問題では概念論も議論し、場合によっては、文章案の作成も開始した。

UNFCCC及び 京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。UNFCCCは、気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため、大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度安定化を目指して、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効し、現在は196の締約国を有する。

1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国の政府代表は、先進工業国及び市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に、6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことを約束し、合意が成立した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉:カナダ・モントリオールで2005年に開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)で、議定書3.9条に則り、京都議定書の下、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することをその役割と定めた。

2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP 13及び CMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP 13は、「バリ行動計画」(BAP)を採択するとともに、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会」(AWG-LCA)を設立して、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割付けた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す期限については、2009年のコペンハーゲン会議までと定められた    。

コペンハーゲン:2009年の国連気候変動会議は、デンマーク・コペンハーゲンで12月7-19日に開催された。世間の大きな注目を浴びることとなった同会議は、透明性の問題やプロセスをめぐる論争が目立った。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成立し、その後、COPプレナリーでの採択に向けて提出された。それから13時間にわたる議論の末、各国の政府代表がコペンハーゲン合意に「留意する(take note)」ことで最終的に合意。さらに、AWG交渉グループの期限をそれぞれ 2010年のCOP16及びCMP 6まで延長することで合意した。2010年には140カ国を超える締約国がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家の緩和目標または行動に関する情報を提出した。

カンクン:2010年11月29日‐12月10日、メキシコ・カンクンで国連気候変動会議が開催され、「カンクン合意」がまとまった。また、2つのAWGの期限をさらに一年延長することでも合意が成立した。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃以内に抑えるために世界の排出量を大幅に削減する必要があることが認識された。また、2013年-2015年のレビュー期間中に世界の長期目標の妥当性について検討することで締約国が合意し、その際に気温上昇幅1.5℃目標案を含めて世界の長期目標の更なる強化を検討するということでも合意した。なお、決定書1/CP.16には、MRV (測定・報告・検証)や、REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減並びに森林保全の役割、持続可能な森林管理、森林炭素貯蔵量の強化)等、緩和に係わるその他の側面についても記載された。また、カンクン合意によって、新たな制度やプロセスがいくつか創設された。その中に、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムがあり、技術メカニズムの下に技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。また、緑の気候基金 (GCF)の新設が決まり、条約の資金メカニズムの運用機関と指定された。議定書の交渉トラックでは、総排出削減量を達成するべく、CMPが附属書Ⅰ国に対して野心レベルを引き上げるよう促し、土地利用・土地利用変化・林業(LULUCF)に関する決定書 2/CMP.6を採択した。

ダーバン:2011年11月28日-12月11日、南アフリカ・ダーバンにて国連気候変動会議が開催された。ダーバン会議の成果としては広範なトピックが挙げられるが、特に2013年から始まる京都議定書の第二約束期間の制定や、条約の長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意等があった。また、「条約の下で、全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新組織として、ADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)を発足させることでも合意が出来た。ADPでの交渉は2015年中に完了させることとし、2020年には新合意の発効を目指すこととした。さらに、2℃目標との関連で、2020年までの野心ギャップを埋めるための行動を模索する役割もADPに課された。

ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、国連気候変動会議はカタール・ドーハにて開催。「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成され、京都議定書の第二約束期間(2013年―2020年)を定めるための議定書の改正事項やAWG-KPの作業を最終的にドーハで完了させるための合意等が盛り込まれた。また、AWG-LCAの作業完了やBAPの下での交渉終了についても合意が成立した。一方、世界目標の2013-15年のレビューや、先進国と途上国の緩和、京都議定書の柔軟性メカニズム、国別適応計画(NAP)、MRV、市場及び市場以外のメカニズム、REDD+等、さらなる議論が必要とされる多くの問題については、補助機関会合(SBs)に付託することとなった。

ワルシャワ: 2013年11月11日-23日、国連気候変動会議はポーランド・ワルシャワにて開催された。ADPの作業続行を含め、これまでの会議で成立した合意項目の実施が交渉の焦点となった。この会議では「各国の約束草案」(INDCs)のための国内準備の開始や強化を締約国に招請すること等を盛り込んだADP決定書が採択された。また、「損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズム」の設立を定めた決定書、ならびにREDD+の資金や制度的アレンジ、方法論の問題等について定めた一連の7つの決定書が「ワルシャワREDD+枠組み」として採択された。

リマ: 2014年12月1-14日、国連気候変動会議はペルー・リマで開催された。リマ交渉の焦点は、2015年にフランス・パリで開催されるCOP 21の合意に向けて進展を図るために必要なADPでの成果であり、2015年の出来るだけ早い時期にINDCs提出用の情報やプロセスを明確にし、交渉文書草案の要素に関する議論を進展させること等であった。COP 20では、長丁場の交渉の末、「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for Climate Action)が採択されたが、これはINDCsの提出やレビューのプロセスの議論を含め、2015年合意に向けた交渉をスタートさせるためのものだった。また、19件の決定書も採択されたが、そのうち17件がCOP、2件がCMPのものであり、「損失と被害のためのワルシャワ国際メカニズム」の運用推進、「ジェンダーに関するリマ作業計画」の設置、「教育や啓発に関するリマ閣僚宣言」の採択を定めるものであった。リマ気候変動会議は、2015年合意の交渉文案の要素に関する細目詰めの作業における進捗を把握し、INDCsの範囲や事前情報、INDCs提出後に事務局がとるべき行動等、INDCsに関する決定書を採択したことで、パリ会議に向けた基礎固めを行うことができた。

ADP 2-8: 2015年2月8日-13日、スイス・ジュネーブでADP 2-8が行われた。会合の目的は、COP 20で定められた通り、決定書1/CP.20 (気候行動のためのリマ声明)に付属する交渉テキスト草案の要素に基づく交渉テキストを作ることであった。ADP 2-8で採択されたジュネーブ交渉テキスト(GNT)(FCCC/ADP/2015/1)は、2015年合意に関する交渉の土台となる。

ADP 2-9: 2015年6月1日-11日、ドイツ・ボンでADP 2-9が開催され、ジュネーブ交渉テキスト(GNT)のスリム化や統合作業に加え、前文や総則/目的、緩和、適応と損失・被害、資金、技術開発と移転、キャパシティビルディング、透明性、時間枠(タイムフレーム)、実施と遵守、手続き・制度に関する条項等に関する分類や概念的な議論を行った。また、ADPでワークストリーム 2に関する議論も行い、特にワークストリーム 2の役割やこれに関する決定書を構成する要素の素案について話合いを行った。さらに、ワークストリーム 2で、都市環境でのエネルギー高効率化と再生可能エネルギー供給に関する技術専門家会合(TEMs)も開催された。

adp 2-10レポート

2015年8月31日(月)に行われた短い開幕プレナリー(全体会合)の後は、5日間の会期を通じて促進グループの会合があり、9月1日(火)~9月4日(金)には非公式会合やGNTの様々なセクションに関する促進グループの“スピンオフ会合” が開催された。交渉のベースとなったのは、「共同議長ツール」と呼ばれるGNT(ジュネーブ交渉テキスト)のパラグラフを3部構成にした文書であり、パート 1にはパリ合意に盛り込むのが相応しい特徴をもつ条項、パート 2には決定書に盛り込むのが相応しい特徴をもつ条項、パート 3には、どこに盛り込むかさらなる明確化が必要な条項を記載したものである。共同進行役が各グループに提供した情報は、基本的な質問リストや表から、これまでの議論の要旨まで多岐にわたった。会期中、ADP共同議長は毎日のように各グループの共同進行役と会合し、グループ間の整合性を保つべく、進捗状況の報告を受けた。

9月1日(火)と9月2日(水)、促進グループとスピンオフグループでは、その作業方式やスピンオフグループの役割、手続き事項等をめぐる議論が浮上した。一部の国から作業方式や今後の方針を明確にするための会合を開いてほしいとの声が上がり、9月2日(水)夕方にストックテイキング会合と呼ばれるADPの中間見直し会合が行われた。ストックテイキング会合では、速やかに作業を加速する必要性について全ての締約国の考えが一致した。多くの国が今次会議でめざす成果を明らかにするよう求めるとともに、共同進行役の役割をもっと明確にするよう要請した。

Djoghlaf共同議長は、2015年8月30日に公開されたADP 共同議長のシナリオノートと作業方式の明確化に関する文書で会合の目的は既に明示されていると指摘し、共同議長が10月会合の作業方式を討議するため今次会議が終わるまでに二者会談を行う旨を明らかにした。

9月3日(木)、4日(金)には交渉のペースに僅かな変化が見られ、締約国または複数の締約国グループから数多くのテキストに関する提案が出され、それ以外の参加国から意見をまとめられる分野が浮上してきた。

促進グループで行われた共同議長ツールの個別セクションに関する議論の概要、及びADP共同議長に提起したグループの最終文書は以下の通り。グループの議論の詳細についても以下サイトを参照。

http://enb.iisd.org/vol12/enb12640e.html

http://enb.iisd.org/vol12/enb12641e.html

http://enb.iisd.org/vol12/enb12642e.html

http://enb.iisd.org/vol12/enb12643e.html

開幕プレナリー

2015年8月31日(月)、ADP 共同議長 Reifsnyderが開会し、速やかに実質交渉を開始しなければならないという切迫性が高まっていると強調した。UNFCCC事務局長のChristiana Figueresは、条約プロセス参加のための信託基金が120万ユーロの赤字になっていると報告した。COP 20/CMP 10議長のAntonio García Revillaは、2015年は気候目標と開発目標をともに実現する機会であると述べた。COP 21/CMP 11議長のLaurence Tubianaは、2015年7月の非公式閣僚協議について報告した。

Adp コンタクトグループ

8月31日(月)、南アフリカ(G-77/中国)、オーストラリア(アンブレラ・グループ)、ドミニカ(米州ボリビア同盟:ALBA)、グアテマラ(独立中南米カリビアン諸国連合:AILAC)、スーダン(アフリカン・グループ)、エルサルバドル(中米統合機構:SICA)等が、それぞれの属する交渉グループの立場から、全体的な意見陳述を行った。その他のグループの意見は、UNFCCCウェブサイトに掲載予定。口頭で行われた全体の意見陳述の内容は下記ウェブサイト参照。

http://enb.iisd.org/vol12/enb12640e.html

促進グループ: 前文(preamble): セクション A (前文)に関するグループは、 George Wamukoya (ケニア) 及び Aya Yoshida (日本)が共同進行役を務め、8月31日(月)、9月3日(木)、9月4日(金)に会合を行った。

締約国は、合意前文の重要性や合意文書を簡潔にする必要があるとの点で合意した。また、共同議長ツール パート 3のうち、合意前文にどのコンセプトを盛り込むべきか意見交換を行った。

グアテマラ(AILAC)、サウジアラビア (有志国連合:LMDCs)、スイス、アンゴラ(後発開発途上国:LDCs)、リヒテンシュタイン、ノルウェー、オーストラリア、トルコは、ジェンダー平等と世代間の衡平性を盛り込むよう求めた。 LMDCs は、歴史的な排出量と現在の排出量について言及し、実施手段 (MOI)や持続可能な社会経済開発についても盛り込む案を支持した。

ボリビア、 キューバ、ベネズエラは、母なる地球の十全性(integrity)と発展する権利について言及する案を支持した。スーダン(アフリカン・グループ)、LDCs、トルコは、科学がいかに合意の指針となるのか記載するよう求めた。

欧州連合(EU)、米国、ノルウェー、日本、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドは、セクションの内容が固まってきてから前文について議論すべきと提案したが、反対意見が出た。

9月2日(水)の非公式会合で、前文に盛り込みたい5つの概念について、UNFCCC(条約)、科学、持続可能な開発アジェンダ、十全性(integrity)、SIDS (小島嶼開発途上国)やLDCs(後発開発途上国)に関する問題であると特定した。

9月3日(木)の促進グループで、Wamukoya共同進行役は、9月2日(水)スピンオフ会合の最後に、5つの概念について非公式ベースで議論するよう参加者に勧めたことを思い起こさせた。そうした非公式な議論について、ボツワナは、作業方式について合意できない締約国グループがあり、実質的な議論に入っていないと報告した。ボリビア、グアテマラは、いくつかの締約国は、前文の中に概念に関するリストを盛り込むことを合意していると報告した。手続きに関する議論の後、十全性に関する概念について意見が提示された。

Wamukoya 及び Yoshida 共同進行役は9月3日(木)夕方、合意前文の草案に盛り込む可能性ある要素について、ノンペーパーを配布した。 このノンペーパーに含まれるパラグラフは次の通り: UNFCCC(条約)の規定を指針とする必要性; リオ+20会議の成果と持続可能な社会経済開発の目標; 環境十全性への配慮;生態系の十全性とその他の権利; 気候変動の悪影響によるLDCs及びSIDSの個別のニーズや特殊事情への配慮。

9月4日(金)、共同進行役 Wamukoyaは、共同進行役のノンペーパーの狙いは、これまで議論した 5つの概念を整理することであり、ADP 2-11の交渉のたたき台とする含意はないと説明した上で、前文に関する今回の議論を練り上げるのは締約国が期待するADP共同議長の役割次第だと強調した。

サウジアラビア(LMDCs)、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン等、様々な国が共同進行役のノンペーパーに対する懸念を表明し、様々な要素が欠落していると指摘した上で、今後どのようにノンペーパーを位置づけるか明確にしてほしいと要請した。 オーストラリアは、パリCOP決定書と合意自体の両方に前文にあたる文言が入っているが、ノンペーパーは合意の前文に入れる要素が入っているだけだと強調した。

グアテマラは、AILACの立場で、ノンペーパーには会期中に話し合った概念のほとんどが反映されていると述べた。様々な締約国が、ノンペーパーの欠落している問題を指摘した。パナマは、CfRNの立場から、前文で、森林減少と森林劣化に対する取組みについて記載し、REDD+の役割について認識するよう求めた。ベネズエラ、中国は、歴史的な排出量やMOI、共通だが差異ある責任原則 (CBDR)について言及した。カナダは、国家以外の主体について述べた。スーダン(アフリカン・グループ)、ベネズエラは、経済開発の権利について言及した。アンティグア・バーブーダは、小島嶼国連合 (AOSIS)の立場で、人権に関する記載をさらに明確にするよう要請した。

EU、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルは、ノンペーパーは十分に簡潔になっているとは言えないと述べた。また、 EUは、ノンペーパーを共同議長に送るという選択肢を示唆したが、ノルウェーは共同議長には送らない方が良いと主張した。

米国は、ノンペーパーで特定された5つの概念はコンセンサスを得ていないと強調した。

共同進行役による議論の総括や締約国のコメントや意見書等を、前文に関して共同進行役からADP共同議長への申し送り内容とすることで締約国が合意した。

定義: セクション B (定義)については、今次交渉会合で取り上げられなかった。

総則/目的: セクション C (一般/総則) に関するグループは、Diann Black-Layne (アンティグア・バーブーダ) 及びArtur Runge-Metzger (EU) が共同進行役を務め、8月31日(月)、9月3日(木)に会合を行った。

米国は、別のセクションを設けるよりも、前文の目的の欄で記載するよう求め、先進国の数カ国が支持したが、多くの途上国とEUが反対を唱えた。

トルコ、ノルウェー、EU、スーダン(アフリカン・グループ)、アンゴラ(LDCs)、マレーシア、クウェートは、このセクションでUNFCCC 第2条 (目的)について記述する案を支持した。

ブラジルは、 EU、LDCs、ノルウェー、アルゼンチン、インドネシア、マレーシア、エクアドル、コロンビアとともに、気温目標を記載するよう求めた。シンガポール(AOSIS)とボリビアは、1.5°C目標について記載する案を支持した。

AOSISは、特に脆弱な国々の特殊事情を認識し、損失・被害について盛り込むよう主張した。サウジアラビアは、LMDCsの立場で、ヨルダンとともに、CBDRと衡平性を反映させるよう求めた。

グアテマラ(AILAC)、メキシコ(環境十全性グループ)、EU、フィリピン、バングラデシュ、ドミニカ共和国、ベトナム、ベネズエラ、スーダン(アフリカン・グループ)は、ジェンダー平等を盛り込むべきだと主張したが、人権や世代間衡平性、先住民の権利についても記載する等、一部の締約国から様々な要望があがった。

ノルウェーは、人権については前文の中で記載すべきだと述べた。サウジアラビアは、“ジェンダー平等(gender equality)”ではなく、“ジェンダー対応(gender responsiveness)”という用語を入れるよう求め、人権について無制限に盛り込むことに反対した。

エクアドルは、アルゼンチンとともに、持続可能な開発や貧困撲滅、食料安全保障について記載すべきだと唱え、ボリビアとともに、母なる地球の十全性保護についても言及すべきだと主張した。

インドネシアは、目的の欄で財政支援やキャパシティビルディング、技術移転について取り上げ、合意の包括的な特徴を示すよう求めた。AILACは、気候レジリエント(耐性のある)開発や温室効果ガス(GHG)正味ゼロ排出の実現等を包含する長期的なアプローチに関する記載に勇気づけられると述べた。

ボリビア、アルゼンチン、キューバ、ヨルダン、インド、クウェート、ロシア、スーダン、ヨルダンは、正味ゼロ排出や気候レジリエントな開発等、UNFCCCに記載のない問題を盛り込むことに反対を唱えた。コロンビアは、パリ合意の目的は、UNFCCC(条約)に立脚し、全ての締約国に対する適用可能性よりも、これらの概念を幅広い文脈の中で捉えることにあると主張した。

多くの国が、目的の欄を短く、単純に、簡潔にまとめるべきだと強調し、ニュージーランドが前文の中で諸原則が取り上げられていることを指摘した。

共同進行役は議論の内容をワーキング文書にまとめ、共同議長に送付した。この文書には2つのオプションが記載され、Option Iに合意の目的に関する具体的な条文のための要素案、Option IIに前文の条項の中でこれを取り上げられるとの見解が示された。

上記文書には、決定書または合意の文書のどちらに当該要素を盛り込むべきかという問題に関する共同進行役の提案が付記されたが、共同進行役は、同文書を締約国からの意見書を添付して共同議長に提出すると述べた。

緩和Franz Perrez (スイス) ・Fook Seng Kwok (シンガポール)が共同進行役を務めるセクション D (緩和)に関するグループ会合が8月31日(月)~ 9月4日(金)に行われた。まず、このセクションに盛り込むべき合意の要素について8月31日(月)に議論し、その後、9月2日(水)、9月3日(木)、9月4日(金)に集団での取組み(パート 1のパラグラフ 3 )について取り上げ、最終的に9月4日(金)に個々の取組み (パート 1のパラグラフ 4 ) について検討した。さらに議論を進めるべく、9月2日(水)には、共同議長ツールに記された共同進行役の緩和問題に関する表についての紹介があったが、セントルシアから、合意文書の附属書について議論する時間が欲しいとの要請があった。

8月31日(月)に、1)市場以外のメカニズムに関する条項の明確化(座長:ボリビア)、2)個々の取組みの下での差別化の実施に向けた取組み(座長:南アフリカ)、3)共同実施(JI)の 概念の絞りかた(座長:ブラジル)という3つのスピンオフグループが設置された。

9月1日(火)、 南アフリカは、差別化に関するスピンオフグループについて報告し、討論の中での関心事項や意見の多様性があったことを伝えた。ボリビアは、市場以外の問題に関するスピンオフグループについて報告し、本件に関する合意は形成されていないことを指摘した。

9月1日(火)のセッションの大半は、スピンオフグループの有効性を含め、議論の進め方に関する意見の隔たりについての議論で費やされた。

9月2日(水)、ブラジルは、共同実施(JI)に関するスピンオフグループについて報告し、締約国によるINDCsの準備、連絡(コミュニケーション)、実施に関する2つのパラグラフ案とINDCs向けの調整事項について紹介した。また、南アフリカは、差別化に関するスピンオフ会合について報告し、差別化のテーマが交渉の中核にあるという点で合意があり、これは政治決定によってのみ解決可能だと指摘した。さらに、対応措置(座長:アラブ首長国連邦(UAE)、市場メカニズム(座長:コロンビア)、土地利用・REDD+(座長:英国)という3つのスピンオフグループが追加で発足した。

9月4日(金)、スピンオフグループから促進グループに対する報告が行われた。差別化については、 南アフリカが、差別化のオプションを抽出した表について紹介した。市場以外の問題については、 ボリビアが、まだ意見が分かれていると報告した。対応措置については、アラブ首長国連邦(UAE) が、合意や決定書の項目に文章を入れるか、入れないかという問題から、どちらの文書に盛り込むのか、両方の文章に盛り込むのかという問題まで、多岐にわたる一連の選択肢があると紹介した。市場については、コロンビアが、用語の相違点について触れ、経済メカニズム、市場メカニズム、柔軟性メカニズム、協力メカニズムまで様々なものがあることを指摘した。土地利用・REDD+については、英国が、合意の中で特定のセクターを別途取り上げることに対する一部の懸念を指摘し、REDD+と他のアプローチとのバランスを図るべきだとの声があがったと報告した。

8月31日(月)、合意の緩和セクションの要素に関する討議の中で、問題の多様性について盛り込むべきか否か話合いが行われた。すなわち、長期目標の運用、進捗、会計ルール、市場メカニズム、国際運輸、共同実施(JI)、登録簿または附属書、緩和・適応に関する合同の行動、差別化、セクター別の行動、市場以外のメカニズム、対応措置等の問題である。

9月2日(水)、9月3日(木)、9月4日(金)、集団での取組みについて議論し、気温目標の記載やその運用; 数量化された排出削減; 気温目標に関する文言の配置について緩和 (セクション D)、 総則/目的 (セクション C)、または前文 (セクション A)に入れるかという問題;このセクションに差別化をどのように入れるかという問題等、様々な課題が取り上げられた。

9月4日(金)、個々の取組み (共同議長ツール パート 1のパラグラフ 4)についての検討が始められた。中国は、幾つかのオプションは緩和について具体的に言及しておらず、したがってセクション C (総則/目的)に入れるべきだと強調した。中国、インド、LMDCsは、 このパラグラフでは締約国の行動に関する差別化の側面について取り上げるべきだと述べた。

アラブ・ グループは、先進国と途上国という概念を捉えるべきだと主張した上で、衡平性に力点を置き、緩和中心の合意には反対を唱えた。ブラジルは、総則/目的のセクションに全分野のテーマに係わる個々の約束を盛り込むべきだとする一方で、緩和セクションでは個々の約束について緩和に特化した要素を詳細に記すべきだと主張した。

EU、米国、ニュージーランド、AILACは、締約国は約束について連絡・維持すべきだとし、実施について盛り込むよう求めた。メキシコは、約束の内容を更新・維持・報告する義務を課すよう求めた。

日本は、報告・レビューについて強調した。また、オーストラリア、米国、メキシコ、 日本、ニュージーランドとともに、EUは、数値化について把握するよう求めた。

EU、米国は、事前情報について記載する案を支持し、オーストラリアとともに、事前情報の手順は執行機関で策定可能だと述べた。

EUは、米国、ニュージーランドとともに、各国は最低限、自国の約束を無条件で提示すべきだと強調した。メキシコは、全ての国が無条件で約束を示すことはできないと主張した。エチオピア(LDCs)、AOSISは、LDCs とSIDSの特殊な事情を認識するよう求めた。EU、メキシコ、日本、ニュージーランドは、市場について記載するよう求めた。オーストラリアは、時間枠について記載することを求めた。カナダは、進捗と野心の概念を把握するべきだと提案した。AILACは、5カ年サイクルと “退行不可”という概念を盛り込むべきだと主張した。ロシアは、継続的な調整によって実施が損なわれることに釘を刺した。

“作業文書 [セクション D - 緩和] 2015年9月4日1:00版”で一部記されたように、締約国からの意見書を含め、共同進行役が議論の内容を会期中に総括し、幅広い支援を伴う要素や、文書に記載するか更なる検討が必要な要素、理解を深めるために更に議論が利する問題、議論の概要といった内容をそこに入れることで締約国が合意した。

適応および損失・被害: Georg Børsting (ノルウェー) ・Andrea Guerrero (コロンビア)が共同進行役を務め、8月31日(月)~ 9月4日(金)にセクション E (適応および損失・被害)に関するグループ会合が行われた。

8月31日(月)、主要な問題に関わる概念について議論を行った。個々の取組みに関しては、集団及び個々の取組みの関連;  INDCsとMOIの関係; 国家開発計画に適応を組み込む必要性等が検討された。

機関については、既存の機関を強化する必要があるとの点では各国の意見がまとまったが、そのやり方については様々な意見が出た。G-77/中国 と LDCsは、合意における損失・被害の扱いが限定的なのは残念だと述べた。米国とEUは、これを“盛り込むべきか”ではなく“どのように盛り込むか”が問題であるとの見方を示した。チリは、 AILACの立場から、既存のコミュニケーション・チャネルを活用することが重要だと主張した。ツバルは、LDCsの立場から、追加的に報告の負担を課すことがないようにする必要があると指摘した。

Guerrero共同進行役は、次回グループ会合で、検討事項に対する7つの疑問点を明確にすることを提案した。

9月1日(火)午前、マーシャル諸島は、AOSISの立場から、どのように損失・被害に対応することがベストなのか意見の一致が見られないと指摘した。また、UNFCCC(条約)の諸原則を反映させた長期ビジョンの必要性; 適応や支援のMRV向けの資金供給; 気温目標と適応の関係;緩和・適応の合同アプローチ等、様々な問題提起がなされた。

締約国は、適応と損失・被害の議論を分けることで合意した。

9月1日(火)午後、共同進行役が8月31日(月)に配布した問題について締約国がフィードバックを行った。適応については、特に、集団及び個別の取組みの関連;「目標/ビジョン」と「集団での取組み」の違い; 適応資金と世界全体で達成する緩和レベルをリンクさせることに対する懸念について議論を行った。

損失・被害については、 G-77/中国が、この問題が“認識”するというレベル以上に進むよう求め、制度的なアレンジが必要だと主張した。LDCsは、避難施設や技術パネル等の制度的なアレンジに関するLDCsのグループ案について論じた。米国は、COP決定書で損失・被害に対応することを提案し、ワルシャワ国際メカニズム(WIM)が “斜陽”の産物になるとは予見していないと言い添えた。

また、長期のビジョン、目標・集団での取組み、損失・被害について、それぞれスピンオフ会合が設置された。

9月3日(木)、損失・被害のスピンオフ会合からの報告として、 グレナダは、2つの提案に焦点を当てた。1つがG-77/中国の提案で、合意の中で、損失・被害のメカニズムと気候変動移動調整ファシリティーを合わせて盛り込むべきだとするもので、このメカニズムを2020年以降はWIMの代替機関とする案。もう一つが、米国、EU、スイス、オーストラリアの提案で、COP決定書で、損失・被害を取り上げ、WIMを恒久的な機関として扱うという案だったが、これらの提案については非公式ベースで追加討議が行われた。

9月2日(水)、適応に関する様々な側面について議論が行われ、利用可能な最善の科学の利用; 適応と支援の関係; モニタリング及び評価に対する国家主導のアプローチ; “主流化(mainstreaming)”という用語にまつわる懸念; 適応に関する報告書に関する規範的な文言の不使用; ジェンダー配慮型の人権に基づくアプローチ等の問題が議論となった。

9月3日(木)、Guerrero共同進行役が、適応分科会の議論を総括し、脆弱性の低減や適応力の増強に向けた長期世界目標やビジョンの可能性; 知識共有やMOI、科学の進歩を含めた、今後のビジョン実現策等のテーマがあったとまとめた。

9月4日(金)、チリは、個々の取組みに関する分科会について報告し、国家主導型の国家適応行動の必要性については意見が集約できた分野だとした上で、柔軟性や各国の状況に対する配慮について強調した。

ドイツは、資金グループの交渉担当者が招かれた適応支援に関する議論について報告し、適応支援の独自性や既存の資金ルートの活用についての意見が集約されてきたと強調した。

その後、Guerrero 共同進行役が、既存の適応に関する組織リストを提示し、これらの組織を合意によっていかに強化できるか質問を投げかけた。G-77/中国は、ジャマイカ(AOSIS)とともに、リストに損失・被害を反映させるべきだと主張した。ニュージーランドと米国は、COP決定書で、既存の制度的なアレンジを点検する必要があると主張した。LDCsは、損失・被害や知識創生といたテーマに関する新制度の設置に価値があると説き、 これに反対を唱えた。

米国は、損失・被害に関するカナダ、スイス、ノルウェー、日本、ニュージーランドによる共同橋渡し提案について紹介し、特に2020年以降はWIMが新合意としての役割を果たすと述べた。 EUは、さらに検討を要するとしながらも、この提案に概ね支持する意向を示した。ボリビアは、 G-77/中国の立場で、この提案はG-77/中国グループの意見との“橋渡し”にはなっていないと述べた。

 Guerrero 共同進行役は、引続き締約国には意見書を提出するよう促し、それらを共同議長に送ることを伝えた。 

9月4日(金)夕方、共同進行役は、今会期に行われた作業に対する考えをまとめたワーキング文書を発表。各国の意見が収斂した箇所については、国ごとに定められた国家主導型の国家適応行動の必要性、コミュニケーション手段の柔軟性、緩和-適応の相乗効果や共同便益の活用、国家主導型の柔軟なMRV制度等であると同文書に記された。

資金: 9月1日(火)~9月4日(金)、Georg Børsting (ノルウェー)・Diann Black-Layne (アンティグア・バーブーダ)を共同進行役として、セクション F (資金)に関するグループ会合が行われた。

9月1日(火)、Børsting共同進行役は、ADP 共同議長ツールに対する全般的な所感を尋ねた。ボリビアは、G-77/中国の立場で、このセクションの構成要素に関するビジョンや義務と約束、資金源の規模、MRVについて要点を説明した。エクアドルは、 LMDCsの立場で、規模と資金源の内容が欠落していると懸念を示した。いくつかの国が、既存の基金と新合意の間の制度的なアレンジを明確にすべきだと指摘した。

カナダとボリビアが共同座長となり、制度的アレンジに関するスピンオフグループが発足した。

9月1日(火)、カナダは、スピンオフグループについて報告し、既存のUNFCCC(条約)の資金メカニズム運用機関を今後も活用していきたいとする締約国の希望があり、必要に応じて締約国に指針を提供し、資金に関する常設委員会の重要性は今後も変わらない旨を伝えた。ボリビアは、 G-77/中国の立場で、制度的なアレンジに関する文章案を提供したいとの意向を伝えた。

9月2日(水)、終日のスピンオフグループが行われ、2つの促進グループはスピンオフグループからの報告を受けた。資金拡充については、エクアドルが、INDC 行動とそうした行動のための支援とのバランスの欠如; 締約国間の差別化の議論に焦点を当てた。約束/義務/行動については、 スウェーデンが、合意に新たな約束/義務/行動を盛り込む必要性や、実現しやすい環境と関連する国家主権をめぐる懸念などについて指摘した。

9月3日(木)、スピンオフ会合についての報告を受けた上で、諸提案に関する議論を行った。規模については、エクアドルが、横断的な問題の整理は困難だと指摘した。資金源については、スイスが、単独のオプションに限らないと述べた。

その後、制度的なアレンジに関する1)G-77/中国案、2) 韓国案、3) EU案、4) 米国・日本・カナダ合同提案という4提案の議論に移った。各提案に共通する考え方は、UNFCCC第11条(資金メカニズム)に基づく資金メカニズムをもって新合意の資金メカニズムとして機能させる考えやGCFを“メイン(主な)”の運用機関と指定することをめぐる問題、今後もCOPに指針を出す権限を持たせる必要性等であった。

9月4日(金)午前の非公式な討論の焦点は、テーマ別資金供給及び合意の資金セクションとの関係性、責任や資金源を含む気候資金のダイナミズムであった。

9月4日(金)午後、 Børsting共同進行役は、南アフリカが座長を務めた目的/約束に関するスピンオフグループの議論を総括し、趣旨や分野、文脈、その目標等、気候資金の目的をめぐる問題点を指摘した。

その後はいくつかの意見書について議論した。ボリビアは、G-77/中国の立場で、中核合意のための資金に関する目的/約束についての意見書の内容を紹介し、気温上昇の抑制は主要な目的であり、先進国は新規に追加的で拡大可能な資金を提供する必要がある旨を示す条項について触れた。

EUは、投資に係わる変革が必要であり、全ての締約国が資金を動員し資金の流れを促進することが重要だとの見解を示した2つのパラグラフからなる目的/約束に関する提案を紹介した。

また、G-77/中国は、資金源の規模と拡充についての提案内容を紹介し、明確な負担分担方式により2020年までに最低限1,000億米ドルを供給する必要があるとし、UNFCCCの諸原則について認識することが重要だと強調した。

EUは、中核合意に盛り込むための実現しやすい環境の概念についてのメモを紹介し、特に、全ての締約国がそれぞれ“気候耐性のある“全ての投資を含む、実現環境や政策枠組みを改善するよう要請する内容を盛り込んだと説明した。

カナダは、実現しやすい環境に関する、オーストラリア・日本・ニュージーランド・米国との合同提案について紹介し、途上国の資金アクセス改善を可能にして、締約国が実現しやすい環境を改善するべく協力することが必要だと強調した。

米国は、このセクションを構成する要素についての提案を紹介し、各種資金源からの資金動員や最も資金を必要とする国々向けに優先順位を設定すること、開発援助に気候という項目を統合させること、炭素集約度が高い投資に対する国際支援の縮小等の内容を挙げた。

ボリビアは、G-77/中国の立場で、中核合意の文章案を紹介し、損失・被害に関する国際メカニズム向けに利用できる十分な支援が必要だと強調した。

Børsting共同進行役は、会期中に行われた議論の内容はワーキング文書に反映させ、意見書と併せてADP共同議長に伝達すると伝えた。

技術移転及び技術開発:Tosi Mpanu-Mpanu(コンゴ民主共和国)及びArtur Runge-Metzger(EU)が共同進行役を務めるセクションG(技術移転及び開発)グループは、8月31日(月)及び9月2日(水)から9月4日(金)にかけ会合した。締約国はスピンオフグループでも会合した。

促進グループ会合で、締約国は、実質的審議の前に、まず手続きについて議論した。議論では、意見収斂分野、強化された行動の枠組み、制度に焦点が当てられた。途上国数か国は、技術のセクションとMOIとのリンク付けを求めた。米国は、資金メカニズムと技術メカニズムのリンク付けに関し、COPで審議が進行中であると指摘した。

意見収斂分野に関し、アラブ首長国連合は、議論の指針となりうる「高度な分類(higher-level categories)」を提案した、これには次が含まれる:技術の重要性を認識;制度及びメカニズムの整備と強化;一定期間でのレビュー及び更新;途上国の障壁対策支援に関する先進国の約束を含める;技術の展開を強化、推進するとの各国の約束を含める。

日本は、技術開発及び移転の重要性、既存メカニズムを認めることでの意見の収斂を強調した。米国は、このセクションには次のものが含まれるとの見解を示した:ポジティブな開発の認識;協力行動:制度アレンジ。

9月3日(木)、カナダは、9月2日(水)開催のスピンオフグループについて報告した。同代表は、合意に入るものと考えられている下記の概念に焦点を当てたが、このリストは共通の認識を示すものではないと強調した:目標/目的/最終目標(objectives/purpose/goal); 技術の役割と重要性;強化された行動の枠組み及びギャップ捕捉計画;基礎となる制度及び枠組み;制度及び枠組みの強化;一定期間でのレビュー及び更新;障壁対応の約束及び技術の展開強化の約束の再度の議論。

枠組みに関し、スワジランドはアフリカン・グループの立場で発言し、強化された行動枠組みに関する同グループの提案は新たな制度を設置するものではないが、既存の制度に対し中長期のガイダンスを提供し、レビューを行うものだと明言した。同代表は、この枠組みを設置したCOP 7の決定書、及びCOP 13とCOP 16での同枠組みの改定に注目するよう求めた。

EUは、この枠組みは新たな制度を制定するものではないと明言した上で、枠組みに関する更なる議論を支持した。G-77/中国は、この枠組みは技術開発及び技術移転に対する障壁及びMRVを含める「土台(foundation)」であると述べた。

日本は、強化された行動枠組みをCOP決定書に入れるよう求めた。インドは、合意は枠組みの「最終的な強化(final reinforcement)」であり、永続性を反映するものだと強調した。アラブ首長国連合は、枠組みを合意とCOP決定書の両方に入れることも可能だとし、前者は「何であるか(the what)」を説明し、後者は「どうやって(the how)」を説明すると述べた。

制度に関し、スワジランドはアフリカン・グループの立場で発言し、制度アレンジの定期的な評価について、COP決定書で更に議論するよう提案した。EUは、COP決定書は制度を強化できると述べたが、イランは、合意でこれを行うことを希望した。

ベリーズは、9月4日(金)の促進グループにおいて、スピンオフ会合の結果を報告した。同代表は、締約国は技術へのアクセスや発明、グローバル目標に関し更なる審議を行ったと指摘した。同代表は、締約国はこれらの項目に関し意見交換を行ったが、意見の収斂や文書草案には至らなかったと報告した。

9月4日(金)のスピンオフ会合で、締約国は、強化された行動枠組み、協力行動、制度に関する文章案を作成した。締約国は、枠組み及び制度の文章草案を作成したが、COP決定書ではなく合意に入れる場合、どの程度の詳細を盛り込むかでは意見が一致しなかった。締約国は、協力行動に関するオプションを作成した。

共同進行役は、このグループの議論と結果を取りまとめ、共同議長に提出すると述べた。共同進行役は、ワーキングペーパーにおいて、特に下記の締約国の意見を記述する:

• 合意草案では技術の重要性を認識するとともに、このセクションの一層の強化が可能との認識も示す;

•協力行動は、技術を推進し、促進する上で重要という点では意見が一致した、一部の締約国は、現在の文章を強め、他の側面を含めることも可能だと指摘した;

• 制度アレンジは合意にとり重要であるとの意見が表明されたが、制度アレンジを強化する方法については意見の違いが見られた;

•強化された行動枠組の議論では、この枠組で新しい制度を設置する意図はないことが明らかにされ、中長期的に見た既存の制度の役割に方向性を持たせ、全体指針を示してその強化を図るものであることが明らかにされた。

文章案に関し、ワーキングペーパーは次の点も指摘する:協力行動に関し、文章作成作業を進めるため、どの提案を用いるかについては意見が一致しなかった;基礎となる制度アレンジに関し、締約国は、時間的制約のため、2番目の文章案を議論する機会がなかった;強化された行動枠組みに関し、一部の締約国は、この問題を合意の中に置くことには同意できないとの意見を表明した。

キャパシティビルディング:Artur Runge-Metzger(EU)及びTosi Mpanu-Mpanu(コンゴ民主共和国)が共同進行役を務めるセクションH(キャパシティビルディング)は、9月1日(火)から9月4日(金)にかけて会合した。

9月1日(火)午前中、締約国は、ツールにある文章の位置付け及び含まれていない要素について意見交換した。多数の締約国は、プレ2020年の期間を含め、キャパシティビルディングを強化することが重要で、これはCOP決定書で行えると強調した。多数の途上国は、新しいキャパシティビルディング・メカニズムを合意の中に盛り込むよう求め、キャパシティビルディング努力には協調や一貫性が必要だと強調した。多数の先進国は、新しいメカニズムの設置に反対し、米国は、代案として、キャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラムを強化する可能性を提案した。

共同進行役のRunge-Metzgerは、スワジランドに対し、9月1日(火)午後にプレ2020年の機能的キャパシティビルディング作業計画に関するCOP決定書要素を議論するスピンオフグループ会合を開催し、進行役を務めるよう要請した。

9月2日(水)午後、スワジランドは、プレ2020年のスピンオフ会合について報告した。締約国は、強化されたキャパシティビルディングの必要性に関する意見の収斂を指摘し、「どうやって(how)」という問題の議論を開始した。締約国は、9月3日(木)午前中に、プレ2020年のスピンオフ会合を再度開催し、サウジアラビアがこれを主導することで合意した。

EUは、キャパシティビルディング枠組みの第3回総合レビューの成果に基づき、COP決定書で制度アレンジの強化を図ることを提案した。中国はG-77/中国の立場で発言し、バランスのとれた文章に基づいた交渉開始のため、新しいキャパシティビルディング・メカニズムの提案をツールのパート3からパート1に移すと保証するよう求めた。

9月2日(水)午後、日本主導のスピンオフ会合では、制度上のキャパシティビルディングのアレンジ強化が議論された。

9月3日(木)午後、両スピンオフグループは、「橋渡し(bridging)」の段階にはないと報告した。一部の国は、どの既存制度をどのように強化するかに特定した議論を提案し、多数の途上国はキャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラムで既存のギャップを議論できるか、疑問視した。

締約国は、共同進行役が議論を文書に取りまとめ、9月4日(金)に締約国の反応を集めることで合意した。

9月4日(金)午後、共同進行役のRunge-Metzgerは、共同進行役のワーキングペーパーを提出、このペーパーには何の立場もないと強調した。同共同進行役は、このペーパーは交渉を次の2つのオプションに絞り込もうとするものだと説明した:条約の下で設置された制度アレンジのキャパシティビルディングに関する作業を強化し、強める;そして/または国際的なキャパシティビルディング・メカニズムを設置する。

ワーキングペーパーは、プレ2020年キャパシティビルディング作業計画にまつわる議論について、共同進行役の考えを文章案の形で示す。提案された文章では、特に:締約国に対し、長期予測を念頭に、自国のキャパシティビルディングのニーズを評価し、これにより合意の全要素の実施を可能にするよう求める;作業計画では、現在の及び今後のギャップやニーズを扱い、さらにキャパシティビルディング条項においては、既存の制度アレンジにあるものも含め、その協調及び一貫性の強化を図ると決定する;さらに、キャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラムの第3回総合レビュー及びサマリー報告書の結果を考慮に入れ、追加の活動及び作業ブログラムの様式を検討する手段を構築する。

メキシコは、制度の新旧に係わらず、途上国のキャパシティビルディングのニーズを達成する制度能力は、作業計画で定まると強調した。数か国の締約国は、挿入や削除を提案し、G-77/中国とともに、作業計画は新制度に代わる2020年で終了させるべきと付言した。

共同進行役のRunge-Metzgerは、このような最初の反応を反映する形で、ワーキングペーパーを更新するとし、締約国には十分な議論をする時間的余裕がなかったと共同議長に連絡することを強調した。

透明性:Fook Seng Kwok(シンガポール)とFranz Perrez(スイス)が共同進行役を務めるセクション I(透明性)に関するグループは、8月31日(月)から9月3日(木)にかけ会合した。

8月31日(月)、締約国は、共同議長のツールに反応し、次の議論が重要であると強調した:行動の説明責任;途上国締約国のMRV体制参加に対する支援;行動と支援の透明性及び他のセクションとのリンク;市場及び土地利用に関するものも含める計算問題。一部の締約国は、ツールの中の各問題の位置づけに対する懸念を指摘した。

9月1日(火)、共同進行役は、文章作成作業を進められる分野として次の3つの分野を挙げた:ポスト2020年枠組みにおける差異化そして/または柔軟性、但し、能力の多様性を認識する;既存のアレンジに基づく透明性枠組みの進化;途上国のMRV体制参加に対する支援を合わせ、行動及び支援のMRVを強化する必要性。多数の途上国は、ツールの中の決定書文章を次の「論理的な(logical)」順番で再構成することを支持した:緩和行動の透明性;適応行動の透明性;支援のMRV;支援の報告作成;支援の検証;供与し、受理した支援に関する情報。

9月2日(水)、締約国は、共同進行役が指摘した3つの分野の一つである透明性枠組みへの途上国の有効参加に対する支援に焦点を当て、ツールの中のこの問題に関する表現をどう改善するか、検討した。多数の国は、MRVシステムへの有効参加には途上国への追加支援が必要との考えを支持した。数か国の先進国は、多様な手法を可能にし、能力を構築し、継続的に改善するための「統一システム(unified system)」が必要だと強調した。

締約国は、差異化/柔軟性、及び計算/説明責任に関する2つのスピンオフグループ結成でも合意した。

9月3日(木)も議論が続けられ、少数の締約国は文章案を提示した。シンガポールはAOSISの立場で発言し、合意の該当セクションに枠づけするためのパラグラフを提出し、先進国は(途上国の)効果的な参加に対し適切な支援を提供するものとした。中国はLMDCsの立場で発言し、途上国によるMRVアレンジの実施範囲は先進国からの資金援助により異なることを反映する文章案を提出した。EUは、このような提案は他の締約国の現在の立場に適切に対応するものではないと指摘した。

締約国は、スピンオフグループの報告も受けた。米国は、差異化/柔軟性のスピンオフ会合では特に次の点を検討したと報告した:既存のシステムに則り構築する必要性;透明性の面で柔軟性を持たせること、これに対し、異なる諸国グループ間で別々のトラックとする場合;支援;進化する手法。

EUは、計算/説明責任スピンオフグループは多様な計算方法を利用可能としたが、説明責任の展望では対立とは言えないまでも食い違いがあったと指摘した。

締約国は、ツールの多様なパートの要素における提案を受けるため、最終非公式会合を開催することで合意した。

その非公式会合で、締約国は、促進グループ作業報告書を共同議長が作成し、それをADP共同議長へのインプットとすることで合意した。共同進行役作成のワーキング文書では、次を論じている:途上国によるポスト2020年枠組みへの参加には引き続きの支援が必要との認識;異なる能力及び国情に合わせた柔軟性の重要性;合意の中で、支援のMRVの目的、原則、範囲の位置づけを図る必要性;適応と支援のMRVの調和がとれていないこと。さらにワーキング文書では、合意の中での透明性要素の位置づけについても意見が分かれ、一部のものは透明性要素パッケージを求めたが、他のものは透明性要素を緩和や適応、支援等の題目別の項目に統合するよう要望したと指摘する。

時間枠:Roberto Dondisch(メキシコ)及びGeorge Wamukoya(ケニア)が共同進行役を務めるセクションJ(時間枠)グループは、9月1日(火)から9月4日(金)にかけ会合した。さらに非公式会議でもこの問題を議論し、マーシャル諸島及びノルウェー主導のセクションL(手続き及び制度の条項)との合同スピンオフグループでは、約束の位置づけの問題を議論した。

締約国は、9月1日(火)と9月2日(水)、共同議長のツールへの反応を示し、約束/貢献/行動(commitments/contributions/actions)の範囲、タイミング、報告(communication)の問題、進捗状況報告及びハウジング(housing)の問題に焦点を当てた。

範囲(scope)に関し、日本は、時間枠は緩和と最も関係が深いとの観点で、緩和貢献分の提出及び更新における共通のサイクルを求めた。オーストラリアは、緩和と適応ではプロセスが異なる可能性があると指摘した。米国は、適応と緩和は別々に扱う一方、同等の重要性を保持すべきと強調した。シンガポールは、このセクションでは緩和、適応、資金にも言及すべきと述べた。EUは、緩和、適応、資金の進化する特性を理解する必要があるとし、それぞれに合わせたシステムにする必要があるとの認識を示した。

ツバルはLDCsの立場で発言し、緩和とMOIの様式は異なる可能性があるとし、締約国は個別でも集団でも野心を引き上げるべきだと述べた。コロンビアはAILACの立場で発言し、資金に関する約束を集団のものにするか、それとも個別のものにするかは、資金のセクションで扱われていると指摘した。スーダンはアフリカン・グループの立場で発言し、適切性の議論を求め、同グループ加盟国による実施の法的効力は先進国からの資金供与により異なると説明した。

約束/貢献/行動の報告(communication)及び調整に関し、カナダは、事前情報条項は決定書に盛り込むべきと述べた。米国は、5年ごとの継続貢献を支持し、トップダウンレビューなしでINDCsを検討する単純協議期間を提案した。AILACは、進展ありで後退なしの原則を強調した。サウジアラビアはアラブグループの立場で発言し、多数の途上国はMOIの提供に基づきINDCsを作成していると強調した。アフリカン・グループは、報告(communication)条項に柔軟性を持たせる必要があると指摘し、透明性、明確性、及び効果的な集団での考察を確実なものとするため、提供されるべき情報及び個別の努力の両方の定義づけを求めた。

約束のハウジングに関し、AILAC及びEU等、多数の締約国は、ハウジングは時間枠問題ではないと述べた。中国は、決定書に盛り込まれる手続き及び制度問題のセクションでハウジング条項を扱うよう提案した。スーダンは、手続き及び制度問題のセクションとのリンク、特に記銘及び発効とのリンクを指摘した。ブラジルは、貢献を附属書に置くことに反対した。

進捗状況報告/レビューに関し、ニュージーランドは、過去の行動及び将来の約束/貢献を含めた、集団努力のレビューを支持した。ブラジルは、集団評価は各締約国による貢献分の再考及び更新を可能にすることが目的であると強調した。マレーシアはLMDCsの立場で発言し、包括的集団レビューを求めた。同代表は、中国とともに、支援のレビューは野心引上げのカギであると強調した。インドは、レビューは参照ツールになりうるが、個別の努力を指示すべきではないと述べた。

中国は、「名前を公表し、恥をかかせる手法(a naming and shaming approach)」に警鐘を鳴らした。同代表は、実施のギャップを明らかにし、ベストプラクティスを共有し、協力努力を含めるよう提案した。米国は、集団レビューには次を含めることが可能だと述べた:締約国が集団で実施したのは何か;課題のタイプ;可能にする環境の観点からみて、国際協力及び支援を強化する機会。

タイミングに関し、マーシャル諸島は、緩和貢献での共通の時間枠が重要であると強調した。同代表は、緩和に関し次の4つのステップを提案した:約束提案の報告(communication);集団の効果を評価する、12か月前の事前評価プロセス;記銘プロセス;約束の進捗状況報告。数か国の締約国は、5年サイクルの緩和貢献分世界レビューを支持した。LMDCsは、個別貢献分の時間枠を5年にするか、10年にするかは、各締約国が決めることを提案した。シンガポールは、集団レビューを共通の報告サイクルとリンク付けることが現実的かどうか、疑問視した。

参加者は、セクション相互のリンク付けに鑑み、他のグループの共同進行役を招請し、合同のスピンオフ会合開催を検討することで合意した。

9月3日(木)、参加者は、適応及び資金の共同進行役から、それぞれのグループでの時間枠関連の議論について説明を受けた。さらに締約国は、約束のハウジング問題に関し、手続き及び制度条項のセクションと合同のスピンオフグループを設置、マーシャル諸島及びノルウェーがモデレーターを務めた。

多数のものは、合意の中に、世界の進展状況に関する全般報告を盛り込むことを支持した。ブラジルは、合意の中での進捗状況報告プロセスの設置を提案し、締約国が約束草案(NDCs)改定版を提出する少なくとも1年前にアウトプットを出すよう提案した。EUは、統合報告書を進捗状況報告の「アウトプット」とし、最新の科学をその「インプット」に含めるよう提案した。

NDCsの調整に関し、数か国の締約国は、NDCsの調整の自主的特性を強調し、EUは、合意の中の長期目標に向けた進展と一致させるべきと強調した。

ジンバブエはアフリカン・グループの立場で発言し、異なるタイプの実施に関する報告(communication)についての規定条項を求め、能力に限界がある締約国に柔軟性をもたせることを求めた。ツバルはLDCsの立場で発言し、次を提案した:「NDCs」という用語は緩和に関するものとする;「貢献(contributions)」は適応には適用されない;MOIでは、並行タイミング・プロセスが必要である。

9月4日(金)、マーシャル諸島は、合同スピンオフグループ会合での議論について報告し、多様なハウシングのオプションが焦点となり、これには合意の附属書、スケジュール、登録簿、貢献文書、付録とするオプションが含まれたほか、それぞれの法律、政治、実際上の意味合いも議論されたと報告した。セントルシアは、共同進行役に対し、締約国の国家決定緩和約束を附属書IIIに入れるという自国提案に留意するよう要請した。

共同進行役のDondischは、その後、時間枠セクションの主要要素リストを提出し、参加者はこれについてコメントした、このリストには次の事項に関する同グループの議論をまとめた箇条書きが含まれる:進捗状況報告/レビュー;約束/貢献/行動の保持;連続する約束/貢献/行動のアップグレード;NDCsの調整。リストでは次の点にも留意する:考慮されるべき問題としての野心、進捗、ポジティブな集団プロセス、透明性、ダイナミズム、差異化;さらに、一層の明確化が必要な問題として、初期のINDCs及びハウジング。

締約国は、共同議長のツールからの用語を使いたいと希望した。共同進行役は、このセクションの要点リストに締約国のコメントを添え、ADP共同議長へ提出することに同意した。

実施と遵守:Sarah Baashan(サウジアラビア)とAya Yoshida(日本)が共同進行役を務めるセクションK(実施及び遵守の推進)グループは、8月31日(月)と9月3日(木)に会合した。

8月31日(月)、多数の締約国は、新しい合意には実施及び遵守に関するアレンジの設置条項を盛り込む必要があると強調した。多様な諸国は、遵守メカニズムの様式の一部を合意に記載することを提案、LMDCsの立場で発言した中国は、様式を作成する組織向けの作業計画を提案した。

差異化と遵守に関し、ツバルはLDCsの立場で発言し、国家経済規模目標を有する諸国のための執行部(enforcement branch)、及び目標を持たない諸国のための促進部(facilitative branch)を提案した。LMDCsは、先進国のための執行部、途上国のための促進部を提案した。先進国は、全てのものに適用可能なメカニズムを求めた。

さらに締約国は、遵守メカニズムの特性と目的について議論した。多様な先進国は、合意は主に促進的であるべきだと述べたが、ボリビアは、裁判的なものを提案した。

締約国は、差異化及び範囲に関する質問事項を作成するよう共同進行役に要請した。スピンオフグループは、遵守メカニズムの設置を議論した。共同進行役は、8月31日(月)夜、議論をまとめたワーキング文書を配布した。

9月3日(木)午前中、米国は、多国間協議プロセスに関する自国の提案に注目するよう求めた。コロンビアはAILACの立場で発言し、バーゼル条約の実施及び遵守委員会の促進的な特性に言及した。オーストラリアは、新たな資金支援アクセスへの道筋を提供するような非遵守体制では、逆インセンティブになりかねないと警告した。

EUは、締約国の実績を検討し、適切なきっかけ(trigger)を与えるメカニズムを求めた。同代表は、透明性及びMRVシステムとのリンクを指摘した。バハマは、促進的手法には過去と将来の両方における努力の評価を含めるよう提案した。

9月3日(木)午後、共同進行役は、議論をとりまとめた最新文書を配布、これには次のセクションを含める:設置条項と関係要素;遵守メカニズムの促進特性と目的;透明性と遵守;差異化と遵守。この文書では、締約国はこれらの問題に関する意見交換を開始したが、時間不足から終了しなかったと指摘する。次のステップに関し、共同進行役のサマリーでは、今後の進め方に関する多様な意見を紹介、ADP 2-11での議論に向けた準備作業においては、この問題に関する更なる非公式対話が有用との締約国の認識を報告する。

ここでの議論をとりまとめたものが、共同進行役から共同議長へのインプットとなる。

手続き及び制度の条項:Sarah Baashan(サウジアラビア)及びRoberto Dondisch(メキシコ)が共同進行役を務めるセクションL(手続き及び制度の条項)グループは、9月1日(火)と9月2日(水)に会合した。9月2日(水)、締約国は、マーシャル諸島とノルウェーが主導する、セクションJ(時間枠)との合同スピンオフグループを結成、9月3日(木)に会合し、貢献のハウシング問題を議論した。合同スピンオフグループでの議論は、時間枠に関するセクションにまとめられた。

新しい合意の統治組織に関し、数か国の締約国は、ツールのパート1のパラグラフは新しい合意に十分な基礎を提供するとして合意した。AILACの立場で発言したコロンビア、ノルウェー、カナダは、合意を批准しない国は統治組織の意思決定に関わるべきでないと指摘した。

手続き規則に関し、スーダンはアフリカン・グループの立場で発言し、統治組織の手続き規則及び会合開催について議論することを提案した。インドはLMDCsの立場で発言し、詳細は後の段階でも決定できると述べた。サウジアラビアは、新しい合意でもCOPの手続き規則を適用すべきだと述べた。EUは、合意独自の手続き規則作成を提案した。AILACは、ツールのパート1にある投票パラグラフの内容を議論するよう提案した。

基本的な制度に関し、米国、AILAC、オーストラリア、その他は、合意の関連セクションにおいて、新しい合意の制度として機能する既存制度を、事例ごとに定めることを希望した。

ノルウェー、LMDCsの立場で発言したインド、アフリカン・グループは、一般的な基本条項を支持した。ジャマイカはAOSISの立場で発言し、強化された制度のための新たな制度アレンジが求められる可能性があると指摘した。ブラジルは、一般的な基本条項は既存制度の重複を避けられると述べた。

暫定的な適用事項を、合意の明確な規定策定の対象とすべきか、それとも合意を採択する決定書の裁量に任せるべきかの問題に関し、オーストラリア、ノルウェー、カナダ、AILACは、後者を支持した。インドとニュージーランドは、暫定的な適用に関する文章の削除を提案した。アフリカン・グループは、発効と暫定的運用の法律上の違いについて質問し、事務局は背景を説明した。

合意の期間に関し、AILAC、EU、AOSIS、米国、オーストラリア、カナダ、インドネシア、アンゴラ、ニュージーランド、日本は、合意の最終日を規定する必要性を認めなかった。LMDCs、サウジアラビア、中国は、期間条項の挿入を支持し、2021年から始まる10年または20年の期間を考慮した。

附属書に関し、数か国の締約国は、多国間環境条約で用いられる共通用語の使用を支持した。セントルシアは、NDCsを合意の附属書IIIに記載する案を提出した。

投票に関し、大半の締約国は、標準的な表現を支持したが、AILACは、学習事項に基づいた表現の作成を勧めた。出席と意思決定に関し、マレーシアとインドは、締約国の現在の緩和約束参加とリンクさせる、緩和中心の規定に反対した。同代表は、先進国が途上国にMOIを提供しない場合、途上国は緩和約束を達成できず、参加も妨げられると指摘した。

メキシコは、「約束(commitments)」を「INDCs」に置き換えるよう提案し、米国、ノルウェー、オーストラリアはこれを支持したが、アフリカン・グループとセントルシアは反対した。AILACは、このパラグラフの削除を支持し、締約国の貢献は既に批准の必要条件になっていると指摘した。セントルシアは、自国の場合、適応は貢献の問題ではなく、むしろ必要性の問題だと強調した。オーストラリア、EU、米国は、締約国が意思決定プロセスに参加する場合は「何らかのものを提出する(bring something to the table)」必要があるとの考えを共有した。

合意の供託(depository)に関し、数か国の締約国は、合意の中に保留オプションを設けることに反対し、脱退手順を説明する条項の挿入を支持した。

締約国は、共同進行役からADP共同議長に対し、今週の会議で締約国が表明した意見に関する情報を伝えることで合意した。共同進行役は、9月4日、議論を取りまとめた文書を配布した。

ワークストリーム2Aya Yoshida(日本)とGeorge Wamukoya(ケニア)を共同進行役とするワークストリーム2のグループは、8月31日(月)から9月3日(木)にかけて会合した。実施に関するスピンオフグループ及び技術検証プロセス(TEP)に関するスピンオフグループの両方は、主要な意見対立点に関する議論を深めた。

8月31日(月)、それぞれCOP 20議長国及び次期COP 21議長国であるペルーとフランスは、ワークストリーム2をリマ-パリ行動アジェンダとリンク付けし、ワークストリーム2の決定について検討すべき疑問点を提示した。

促進グループでは、ADP 2-9での議論に基づいて作成された、共同議長の決定書草案要素に基づき議論した。共同進行役は、ADP 2-10で表明された意見を、毎日発行されるワーキング文書にとりまとめた。

多数の締約国は、野心の強化及び緩和ギャップの縮小の必要性については全体的に意見が一致していると指摘し、この目標を達成するには「どうするか(how)」の議論を求めた。G-77/中国の立場で発言したマリ、LMDCsの立場で発言したサウジアラビア、そして中国とブラジルは、要素草案には特定の行動が記載されていないと指摘し、締約国に対し、「強化された」行動に対する一般的な要求以上のものにするよう求めた。

モルディブはAOSISの立場で発言し、政治的な視界を広げるため3名の共同チャンピオン(co-champions)を任命するよう提案し、次の3つのステップを提案した:技術面の作業と政治協力とを結びつける;条約組織の作業の規模拡大;COP議長職が行う作業の継続。

メキシコは、ハイレベルな参加が重要との認識を示す一方、それだけで求められる行動が導かれるわけではないと警告した。

中国及びアラブグループの立場で発言したクウェートは、ワークストリーム2において、適応及びMOI等、緩和以外の問題を取り上げるよう提案した過去のCOP決定書を想起した。インドは、これら全ての要素の観点から、プレ2020年のギャップを考えるよう、締約国に求めた。

EUは、例えばドーハ改定文書の批准を求めるもの等、草案要素の中で緩和に焦点を当てたパラグラフを歓迎した。同代表は、米国及びオーストラリアとともに、緩和以外の問題も重要だが、そのような問題は関連の専門家が適正な場で議論すべきと明言した。

多数の先進国は、草案の範囲を緩和に限定し、適応への言及を緩和行動の適応面の共同便益等に限定することを支持した。これらの国は、適応への取組みにおける既存の適応組織及び専門家の活用を強調した。

ニュージーランドとスイスは、新しい組織を作る前に、他の組織で不適切とみなされるものを「立て直す(fixing)」よう促した。

LMDCsとAOSISは、信頼構築を優先する必要があると強調した。ブラジル、中国、イランは、ワークストリーム2はワークストリーム1と同等に重要であるとともに、補足するものでもあると強調し、ワークストリーム2での合意はパリ合意の効果を裏打ちすると指摘した。

実施に関し、G-77/中国は、実施プロセス加速化に関する同グループの提案が草案に含まれていないことへの失望感を表明した。数カ国の先進締約国及びAILACの立場で発言したコロンビアは、非国家行動者の役割が強調されたことを歓迎した。

メキシコは、共同進行役が主導した実施に関するスピンオフグループについて報告し、特に次の項目に関し、数件の文章案が提出されたと指摘した:プレッジ/約束;自主行動及び共同便益;資金;国別適切緩和行動;ワークストリーム2の範囲外と考えられるパラグラフの削除。

TEPに関し、一部の途上国は、TEPが緩和に限定されていることを嘆いた。LMDCs及びG-77/中国は、適応のTEPを求め、プレ2020年の緩和ギャップはプレ2020年の適応ギャップを残したと強調した。インドは、TEPを拡大し、技術及び資金のTEMsを含めるよう求めた。AILACは、地域TEMsを提案した。

LDCsの立場で発言したバングラデシュと南アフリカは、TEMsのアウトプットを実際行動に転換するよう求めた。EUは、TEPとハイレベル利害関係者及び実地プロジェクト実施行動者との明確なリンク付けを求めた。

日本は、適応に関する現在の作業や、既存の報告ツール及び要求事項の多さを指摘し、適応のTEMsの開始及び実施を加速化する場合の作業の重複を警告した。サウジアラビアは、ワークストリーム2のマンデートに関する意見対立を認識する一方、適応のTEPに反対する合理性を問うた。

南アフリカは、TEPのスピンオフ会合について報告し、TEPの範囲、制度アレンジ、及びガバナンスに関する議論に焦点を当てた。同代表は、意見の収斂がみられる分野には、次のニーズが含まれると述べた:緩和TEPの継続;非国家行動者とのつながり改善;政治モーメンタムの高まり;途上国の参加強化。制度アレンジについては意見の不一致が残ったが、これには、実施加速化フォーラムの提案、範囲拡大が含まれる。同グループは、既存の適応の制度アレンジで、適応のTEPの必要性を議論できるかどうか、一部の適応の題目はワークストリーム2で扱われるべきかどうかを議論する、適応専門家会議の開催を提案した。

提出文書、ワーキング文書、質問、意見発表を、共同議長への共同進行役のインプットにすべきかどうか議論した後、締約国は、ADP 2-11に先立ち、全てのインプットを形式にこだわることなく考慮する新しい文書の作成において、共同進行役が共同議長を助けることで合意した。

閉会会合

ADPコンタクトグループ:9月4日(金)午後、ADP 共同議長のDjoghlafは、コンタクトグループの閉会会合を開会した。締約国は、共同議長が共同進行役及び事務局の助力を得て、締約国の意見及び立場を考慮し、交渉文書を構成するノンペーパーを作成して、これを10月のADP 2-11における議論の基礎とすることで合意した。共同議長のDjoghlafは、10月第1週に、共同議長のノンペーパー及び新しい作業モードを提案するシナリオノートを配布すると指摘した。同共同議長は、交渉をオープンエンドの草案作成グループで行い、必要な場合はスピンオフ会合を開催すると説明した。

南アフリカはG-77/中国の立場で発言し、断片化の経験に学ぶよう求め、多数のスピンオフ会合は少人数の代表団に負担を与えると指摘し、分野横断問題は中心会合で取り上げるべきと強調した。同代表は、締約国の提案や「橋渡し文書(bridging text)」及び議論等で進展がみられたと強調した。

共同議長のDjoghlafは、ADP 2-11における、一つのオープンエンドな草案作成グループの設置は交渉の断片化の懸念を一部の国が指摘したことへの対応であり、分野横断問題の議論を容易にすることも目的とすると強調した。同共同議長は、ADP 2-11の前に開催される二者協議は準備会合を意図すると明言した。

閉会プレナリー:ADPコンタクトグループ会合の閉会に続き、閉会プレナリーが開催された。共同議長のDjoghlafは、条約プロセスへの参加に対する信託基金の赤字に関する事務局からの連絡を想起した。事務局長のFigueresは、今週中、締約国から資金供与を受けたとして、これに感謝し、ADP 2-11及びCOP 21への途上国の全面参加に向けた資金供与を報告した。

共同議長のDjoghlafは、少人数の代表団の柔軟性に感謝し、今週中、174の促進グループ及びスピンオフグループの会合が開催されたと指摘した。

COP 20議長国であるペルーのJorge Voto-Bernalesは、包括交渉という集約化された作業モードに移行する必要があるとの締約国の認識に共鳴した。同代表は、ADP 2-11において、COP 20議長国は次期COP 21の議長国フランスとともに各代表団の長と協議すると伝えた。

COP 21議長国であるフランスのLaurence Tubianaは、10月の会議は「一つのチーム、一つのゴール(one team, one goal)」をモットーに開催する計画であると説明し、10月の次回ADP会合における「作業の効果的な組織だて(effectively organize our work)」には、どのようなタイプの文書が必要かについて共通の理解があるとして、これを歓迎した。

ADP報告官のYang Liu(中国)は、会合報告書(FCCC/ADP/2015/L.3)を提出し、締約国はこれを採択した。共同議長のAhmed Djoghlafは午後4時39分、ADP 2-10の中断を宣言した。

adp 2-10の簡易分析

それは最も良い時代でもあったが、最も悪い時代でもあった

- チャールズ・ディケンズ、「二都物語」

パリまでの道筋は、今やボンとパリの二都物語であり、強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会の第2回会合第10部(ADP 2-10)は、その道筋がいかに険しくとも通行可能であることを明らかにした。さらに3つのレベルで同時にしかし別々に行われた交渉の物語でもあり、それをどうやって縦方向に積み上げピラミッドを作るかの物語でもある。広範な政治プロセスは、政治的意思やビジョンを生み出すべく各国首脳が交渉するピラミッドの頂点に位置するプロセスであり、閣僚会合は、差異化や資金等意見対立のある政治問題を解決すべく努力する。ピラミッドの基礎部分を構成するのは、国連気候変動枠組条約の下での技術交渉であり、この技術交渉でパリ合意の大半が築かれ、政治レベルで決定されるべきオプションを明らかにしていくことが期待される。このボン会議での進展は、COP20議長職の言では、「不十分かつ不均衡(insufficient and uneven)」であったが、共同議長による新しい交渉文書案作成を義務付けるだけの進展があり、これは今後の政治交渉にとっても特に重要な成果である。

この簡易分析は、ADP 2-10における現実と、多数の者が事前に抱いていた大きな期待感とを比較した。作成途中のパリ・パッケージに関する締約国間の深い意見対立、さらには技術交渉をより広範な政治プロセスから切り離すことの限界、多数の交渉担当者の眼から見た限界を探求する。

橋の物語

それは確信の時代でもあり、不信の時代でもあった

ADP 2-10会合の前には、12月のパリ会議で合意に達するため、緊急な進展が必要であるという点で、全体の意見が一致していた。期待感は多種多様で、簡潔な文書草案を手にしてボンを離れることをイメージしたものもいれば、それぞれの立場や意見の一致点が明らかになるとの淡い希望を抱いていたものもいた。共同議長は、妥協点を求め、交渉を早めるべく「橋渡しできる提案を出し、必要な場合は、将来の交渉に向け、オプションを絞り、明確にする(to develop bridging proposals, and, where required, narrow and crystallize options for further negotiations)」よう、締約国に求めた。

ADP 2-10の現実は、橋渡し提案やオプションの明確化を求める共同議長の呼びかけで進展に向けた熱意が高まったことを示しており、交渉文書の各セクションを議論する促進グループの間では、不均衡で段階的ながら、明らかな進展が見られた。全体として、橋渡し提案は「希少な一角獣(rare unicorns)」であり、ある参加者は、提案の多くは橋渡しというより、本来似通った見解を持つもの同士の立場の統合にすぎないと嘆いた。

少数のセクションでは、締約国が文章案を作成、それぞれの立場を明確にし、他のものと調整する方法を見出していた。適応、資金、キャパシティビルディングのグループでは、一部の問題のオプションや立場が明らかになったとして、数名の参加者が喜んでいた。かなりのアウトリーチ活動を行ったことにより、アフリカン・グループは、技術開発及び移転に関する強化された行動枠組みというアイデアについて、EU及び他の諸国を説得できた、少なくとも関心を抱いてもらえたとしている。緩和及び時間枠等、他の促進グループの進展は、段階的で小さいものであり、例えば緩和の共同実施では橋渡し文書が作成された。時間枠の促進グループでは、分野横断的問題について、他の促進グループ及びその共同進行役の参画を求めた。前文及び総則/目的のセクションは、袋小路に陥ったままであったが、合意文書に何が含まれるかわからない段階で前文の交渉をするのは時期尚早と感じるものもいた。

ADP 2-10は、多くのものが正しいと感じる方向に動き、「文書でなくても、題目では進展した(making progress on the headings, if not the text)」が、あるNGOはこれを「壊れやすい進展(fragile progress)」と称した。このADP 2-10会合で見られた不均衡で段階的な進展には次の二つのトレンドが影響した:技術交渉では、パリ・パッケージに対する各締約国のビジョンに深い意見対立のあることが明らかになった;UNFCCC内の技術交渉とUNFCCCの外部で進行中の政治プロセスとが切り離されていた。

12のセクションの物語

目の前に全てがある、目の前には何もない 

ADP 2-10会合の開始時、締約国は、パリ・パッケージのビルディングブロックを目の前にしていた、すなわち全締約国の見解を記載する取りまとめ文書、そして文書を3つのパートに分類する共同議長のツールである。後者のパート1は、2015年合意の条項を含め;パート2は、COP決定書の条項をまとめ;パート3は、その位置づけについて更なる明確さが求められる条項をリスト化する。多数のものは、当初、締約国の要請に基づき作成されたツールを称賛していた。しかし会議終了時までには、ツールは、パリ・パッケージの要素や合意の構成、分野横断的問題の扱い方での締約国間の深刻な意見対立を解決できるものではないとして、手元にある課題に取り組むには不適切なツールであるとされた。

現実には、このツールは、ジュネーブ交渉文書を補うものと目されたに過ぎず、その利用方法においても締約国の意見は一致しなかった。締約国は、この会合の最初の2日間、かなりの時間を割いて次の問題の可否を議論した:ツールのパート3の問題(更なる明確さが求められる条項)を合意のセクションに位置づけるか、あるいは決定書のセクションに入れるか;題目別に問題を議論するのか;パラグラフごと、文書中を移動させるのか;理解を深めるため分科会を利用するのか。特に、ツールのパート3(更なる明解さが求められる条項)の項目の位置づけの問題は、このような意見対立の大きい問題が「ゴミ箱(dustbins)」行きになるとの恐れをかきたてた。このため、パート3の要素の再分類を求める声も聞かれたが、ある参加者は、これを「再分類するための再分類(resorting to re-sorting)」と称した。他のものは、パート1(合意)に焦点を当てることを希望し、困難な問題を議論する余地を見出せるほか、摺合せもできると述べた。ツールの全般的な利用戦略が明解でないことから、会議の最初の2日間は、手続き問題で遅れを生じ、締約国は取り返しのできない貴重な時間を失った。あるオブザーバーが説明したとおり、「新しい材料がない中で、固い不動のブロックから彫刻を刻もうとするようなもの(it is like trying to mold a sculpture from rigid, fixed blocks, with no new material)」であった。

文章の位置付けの議論は、パリ・パッケージの全体像に関する締約国間の深い、解決できない意見対立を浮き彫りにしていた。先進国は、国際合意改定の困難さを指摘し、制度や重要事項のみを規定する簡潔な合意として、運用上の詳細は一定期間の間に改定しやすいCOP決定書に盛り込むことを希望したが、途上国は異なる基準を持っていた。途上国は、重要要素を合意に入れるべきと確信していたが、これはCOP決定書を一時的で前面に出てこない文書であるとする途上国の懸念を反映していた。さらに、パリ会議の最後の数日間は極めて多忙になる可能性が高いことから、途上国は、COP決定書が次のCOPに持ち越されるのではないかとの懸念を表明した。ある参加者は、このことで、パッケージの合意がいかに複雑なものになるかを指摘した:「何がを合意に記載し、どうやるかを決定書に記載するとして、どうやるかを知らずにいったいどうやって何がの合意ができるのか?(if the what is in the agreement and the how is in the decisions, how can we agree to the what without knowing the how?)」

セクション別の作業方法や2015年合意の構成に関する意見対立も、順位づけの問題を一層複雑なものにした。例えば、多数の国は、総則/目的のセクションを包括的なもの、題目別セクションは簡単なものにすることを希望した。他のものは、総則/目的セクションを簡単なものにするか、セクション自体をなくし、大半の条項をそれぞれの題目別セクションに位置させることを求めた。

加えて、多数の問題が分野横断的問題として登場し、これを問題別に行われる促進グループで議論する方法についても、締約国間で混乱が見られた。時間枠グループは、手続き及び制度のグループの枠内で約束に言及させようとしたが、手続き及び制度のグループは、約束は時間枠の問題だと指摘した。適応資金は、戦略的な分野横断的問題として登場し、資金と適応の両方のグループの議論を遅らせた。コンタクトグループの最後の会合で、共同議長は、全締約国は10月に新しい文書全体の読みあわせを行うと発表、各問題のセクション間のたらいまわしに苛立っていた多くのものにとり、歓迎すべき展開となった。

現在行われているプロセスのピラミッドの基礎をなす技術交渉における作業手法の変更は、分野横断的問題の作業に希望を与え、締約国間のパリ・パッケージの要素を明確にする。技術交渉に対するこのような機械的ともいえる調整作業は、交渉を必要なペースに乗せるのに役立つ手段の一つである。しかし、現在行われている政治プロセスも、パリ会議で成功を収める上で欠かせない要素である。

3つのプロセスの物語

賢い時代でもあり、愚かな時代でもあった

多くのものは、高度な政治ガイダンスのない中で最終合意に達成するには、パリ合意の形を整える技術交渉では不十分であるとの認識を示した。数名のベテランオブザーバーは、UNFCCC内外のプロセスは国の首脳と閣僚、そして技術レベルで構成されるピラミッドであると説明した。閣僚たちは、この線に沿い、10月7日の国際通貨基金(IMF)と世界銀行とのリマ会合と並行して「資金パッケージ(finance package)」で合意することが期待される。

異なるレベルの交渉担当者が、それぞれパリ合意のため努力していることから、ボンに到着した多数のものは、7月にパリで開催された非公式閣僚会議の報告書を歓迎した。差異化や野心レベルに関係するもの等、一部の厄介な問題に対するガイダンスが非公式閣僚会議の「覚書(Aide-Mémoire)」に記載された。しかしこれらの問題での進展を希望していたボン会議の参加者は失望した。このような閣僚会議がADPでも行われたかどうか、証拠は極めて少ない。

ADP 2-10は、高度な政治プロセスと技術交渉の不連続性を結ぶ作業の課題の大きさを実証した。一部のものは、閣僚級会合は差異化問題の取り扱い方法についてガイダンスを提供したが、題目別要素の下での運用方法を特定できなかったことに注目した。各セクションでの差異化の取り扱い方法が、政治レベルで明解にされなかったのは、ボン会議での技術レベルにおける促進グループの議論を特徴づけるものであった。

しかし会合終了時までには、緩和セクションでの差異化に関する分科会において、7月の差異化に関するモーメンタムの一部が、ゆっくりとではあるが浸透し始めた。締約国は、少なくとも、文書中で差異化に言及する方法を全て明らかにすることができた。技術交渉を政治交渉にフィードすべきか、逆も行うべきかどうかが未解決の問題として残っている。一部の者の意見では、技術交渉の参加者には過去の実績もあれば専門性もある、問題の解決や政治的な議論に情報を提供することができる貴重な人材である。他のものの意見では、政治レベル(プロセス)こそ、技術交渉にガイダンスを提供すべきであり、政治的なトレードオフの特定や妥協案の作成はその一環である。

2つの都市の物語

 光あふれる季節でもあり、闇に閉ざされる季節でもあった 

多くのものにとって、この会合の最も重要な成果の一つは、金曜日に、交渉文書を構成する新しいノンペーパーを作成するとの広範なマンデートを共同議長に負わせたことである。この1週間を通し、段階的な進展があったことから、このマンデートの必要性は増していた。この点において、ADP 2-10は確かに成功であった。締約国は、「簡素な一つの取りまとめ文書で…アンバランスを直し、内容的に包含性をもち、制約的でなく、明確かつ管理可能なオプションを含め、根本となる合意及びCOP決定書との間で、全ての重要な問題の明確化を図る(concise single consolidated document… that corrects imbalances, which is inclusive and not restrictive in terms of content, includes crystallized, manageable options, and creates better articulation for all central issues between the core agreement and COP decisions)」文書の作成を共同議長に要請することで、速やかに合意した。

締約国は、パリで採択されることを希望する文書に近似する単一の交渉文書の作成においては、段階的な進展が主であることから、共同議長の抱える課題は圧倒的となる。締約国が求める簡素な単一の文書というのは、ジュネーブ交渉文書、及びADP 2-10会合後も大きな変更なしで残された共同議長のツールとは程遠いものである。10月のボン会議までに、その会議で議論が可能な内容で、ポスト2020年のパリ合意草案となるべき交渉文書を作成すべく、(現在の)各国の意見とりまとめ文書から飛躍的な発展を遂げるには、一部の問題では文書草案を作成し、大きな意見対立のある他の問題では、オプションを明らかにする必要がある。

このような文書の作成にモーメンタムを与えるとすると、それは、9月23日のBan Ki-moon国連事務総長招集の首脳会合、近く行われる財務大臣会合、10月7日のリマでの会合で期待される「資金パッケージ」での合意、さらにはインド及びブラジル等、一部主要国によるINDCsの提出であろう。

多くのものは、政治レベルと技術レベルの協調関係の発展を希望した。政治交渉は、厄介な政治問題について技術レベルに対し方向性を示し、交渉を進めさせる。逆に、技術レベルの交渉は、COP 21における最後の最後での妥協的な決定を避けるべく、明確なオプションを示すことで政治レベルに情報を提供し、オプションの影響についても助言する。

パリ会議までの最後の数週間、これらのレベルの統合が必要であり、政治的な合意とともに文書に関する技術面においても、進展が見られることが望まれる。ある参加者は、ADP共同議長のDjoghlafの緊急性感覚の発言を借り、「用意できていようがいまいが、パリにおける歴史的な一日はやってくるのだ(whether we are prepared or not, we have a date with history in Paris)」と強調した。

今後の会議予定

CCAC作業部会会議:短寿命気候汚染物質削減を目的とする気候及び大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)作業部会は、2015年9月8-9日に開催される。CCACは、国連環境計画(UNEP)の組織、環境及び人間の健康を守り、食料及びエネルギーの安全保障を推進し、近未来の気候変動対策を目的とし、短寿命気候汚染物質対策に焦点を当てる、自主的国際パートナーシップである。CCAC作業部会は、CCACの協力行動を監督する。日付:2015年9月8-9日  場所:フランス、パリ  連絡先:CCAC事務局 電話:+33-1-44-37-14-50  ファクシミリ:+33-1-44-37-14-74  電子メール:ccac_secretariat@unep.org wwwhttp://www.ccacoalition.org/

2015年中南米カリブ海カーボン・フォーラム:2015年中南米カリブ海カーボン・フォーラムは、中南米及びカリブ海地域のカーボン・ニュートラル化への動きに必要な地域オプション、及び可能にする環境、これに伴う課題に関し、議論の場を提供する。 日付:2015年9月9-11日  場所:チリ、サンチャゴ  連絡先:Leontina Barrera  電子メール:Leontina.BARRERA@cepal.org www http://www.ieta.org/latin-american-and-caribbean-carbon-forum-2015

排出削減に関する世界航空パートナーシップ(E-GAP)―環境行動の増進:このフォーラムは国際民間航空機関(ICAO)の主催、国際航空輸送によるGHGの排出削減に焦点を当てた、ICAO、各国政府、他の組織とのパートナーシップでのこれまでの成果に注目する。このセミナーの結果として設立されるイニシアティブは、2015年12月のUNFCCC COP 21でプレゼンテーションを行う予定。  日付:2015年9月16-17日  場所:カナダ、ケベック州、モントリオール  連絡先:ICAO  電話:+1-514-954-8219  ファクシミリ:+1-514-954-6077  電子メール:e-gap@icao.int wwwhttp://www.icao.int/Meetings/EGAP/Pages/default.aspx 

2015年国連持続可能な開発サミット:国連持続可能な開発サミットは、新しい開発アジェンダを正式採択する予定で、このため世界各国の指導者150名以上の出席が見込まれる。ポスト2015年開発アジェンダ「我々の世界の変革:2030年持続可能な開発アジェンダ(Transforming Our World: The 2030 Agenda for Sustainable Development)」には次のものが含まれる:宣言;持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)とターゲット;実施方法及び新しい開発のためのグローバルパートナーシップ(Global Partnership for Development);フォローアップ及びレビューの枠組。  日付:2015年9月25-27日  場所:ニューヨーク国連本部  連絡先:国連持続可能な開発局  ファクシミリ:+ 1-212-963-4260   電子メール:dsd@un.org wwwhttp://www.un.org/sustainabledevelopment/summit/

アフリカ気候会議:西/中央/北アフリカ及び西アフリカのSIDS「グローバルな気候変動ガバナンスの民主化、及びCOP 21とそれ以後に向けたアフリカのコンセンサス作り(Democratizing Global Climate Change Governance and Building an African Consensus toward COP 21 and Beyond)」をテーマに開催されるアフリカ気候会議(Africa Climate Talks (ACT!))は、アフリカにおける開発環境(Climate for Development in Africa (ClimDev-Africa))プログラムの主催。ClimDev-Africaは、アフリカ連合委員会、国連アフリカ経済委員会(UNECA)、アフリカ開発銀行の共同プログラム。 日付:2015年10月1-3日  場所:セネガル、ダカール  連絡先:UNECA、アフリカ気候政策センター、コミュニケーション・オフィサー、Jacqueline Chenje  電話:+251-11-544-3489  電子メール:JChenje@uneca.org wwwhttp://climdev-africa.org/cop21/act  

IPCC42回総会:気候変動に関する政府間パネルの第42回総会(IPCC 42)は、2015年10月に開催され、新議長の選任などを行う予定。  日付:2015年10月5-8日  場所:クロアチア、ドブロニク  連絡先:IPCC事務局  電話:+41-22-730-8208/54/84  ファクシミリ:+41-22-730-8025/13  電子メール:IPCC-Sec@wmo.int wwwhttp://www.ipcc.ch

適応基金理事会第26回会合:適応基金理事会は、京都議定書締約国の権限及びガイダンスの下、適応基金を監督し、運営する。  日付:2015年10月6-9日  場所:ドイツ、ボン  連絡先:適応基金事務局、Cathryn Poff   電話:+1-202-473-7499  ファクシミリ:+1-202-522-2720  電子メール:cpoff@adaptation-fund.org wwwhttp://www.adaptation-fund.org

世界銀行グループ及び国際通貨基金の年次会合:2015年世界銀行グループ及びIMF年次会合には、同基金の188の加盟国から財務大臣及び中央銀行総裁が集まる予定、市民社会、民間部門、学界、その他にも経済問題を議論する場を提供する。 日付:2015年10月9-11日  場所:ペルー、リマ  連絡先:世界銀行、David Theis  電話:+1-202-458-8626  電子メール:dtheis@worldbank.org wwwhttps://www.imf.org/external/am/2015/index.htm

ADP 2-11強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)第2回会合第11部は、ドイツのボンで開催される予定。  日付:2015年10月19-23日  場所:ドイツ、ボン  連絡先:UNFCCC事務局  電話:+49-228-815-1000  ファクシミリ:+49-228-815-1999  電子メール:secretariat@unfccc.int wwwhttp://unfccc.int/bodies/body/6645.php

アフリカの気候変動と開発に関する第5回会議(CCDA–V)アフリカの気候変動と開発(Climate Change and Development in Africa (CCDA))の会議シリーズは、気候及び開発に関係するコミュニティーの主要利害関係者による透明性ある議論を推進し、気候の科学と開発政策を連携できるようにするため企画されたフォーラム、毎年開催される。 場所:ジンバブエ、ビクトリア・フォールズ  連絡先:アフリカ気候政策センター  電話:+251-11-551-7200  ファクシミリ:+251-11-551-0350  電子メール:info@climdev-africa.org wwwhttp://www.climdev-africa.org/ccda5 

2015G20指導者サミット:G20議長国のトルコは、トルコのAntalyaにおいて、G20指導者サミットを開催、G20の代表を迎える予定。今回のG20会議は、開発、気候変動、気候変動のための資金、貿易、成長、雇用など、優先分野で実質的成果を挙げての会議終了を目指す。 日付:2015年15-16日  場所:トルコ、Antalya  連絡先:トルコ外務省  電子メール:G20info@mfa.gov.tr wwwhttps://g20.org/  

UNFCCC COP 21UNFCCCCの第21回COP及び関連の会議は、パリで開催される。  日付:2015年11月30日―12月11日  場所:フランス、パリ  連絡先:UNFCCC事務局  電話:+49-228-815-1000  ファクシミリ:+49-228-815-1999  電子メール:secretariat@unfccc.int wwwhttp://www.unfccc.int

他の会議については次を参照:http://climate-l.iisd.org/

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