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Summary report, 5 October 2015

気候変動に関する政府間パネルの第42回会合(IPCC-42)は、2015年10月5日から8日、クロアチアのDubrovnik(ドゥブロヴニク)で開催され、136か国から424名の代表が集合した。この会合の大きな焦点は、IPCC議長団及びタスクフォース議長団(TFB)の選挙であり、この中にはIPCC議長、IPCC副議長、作業部会(WGs)及びTFBの共同議長、WGs副議長、及び TFBのメンバーが含まれた。クロアチア政府主催の非公式会合では、IPCC議長候補者が紹介され、それぞれが自己紹介をするフォーラムもともに開催された。パネルは、Hoesung Lee (韓国)を第6次評価サイクルのIPCC議長に選出した。

同じくIPCC-42の議題となったのは次のとおり:IPCC-41報告書草案の承認;IPCCプログラム及び予算;IPCCの活動及び会合期間外会議に関する報告書;ワークショップ及びクリニック;選挙関連の手続き問題;IPCC誤謬プロトコル(IPCC Error Protocol)の実施;国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の関連事項;特別報告書(SRs)。

本会合の議長は、2月のIPCC-41会合直前のIPCC議長Pachauriの辞任を受け、IPCC-42での新議長選出までとの条件でIPCC議長代行に就任したIsmail El Gizouliが務めた。

IPCCのこれまで

IPCCは、1988年、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により設立された、その目的は、人為的気候変動とその影響可能性、及び適応と緩和のオプションへの理解を進めるため、関連する科学的、技術的、社会経済的情報を、総合的、開放的、透明性のある形で評価することである。IPCCは、政府間の科学機関であり、195か国が加盟する。新たな研究を行ったり、気候関連データをモニタリングしたりするわけではない。むしろ、公表されてピアレビューを受けた科学文献及び技術文献に基づき、知識を評価する。IPCC報告書は、政策関連性を有するが、政策規範的ではない。

IPCCには3つのWGsがある:作業部会I (WGI)は、自然科学に基づき、気候変動を評価する;作業部会II (WGII)は、気候変動の影響、適応、及び脆弱性を論じる;作業部会III (WGIII)は、温室効果ガス(GHG)の排出量を制限し、気候変動を緩和するためのオプションを扱う。各WGには2名の共同議長、6名の副議長がいるが、第5次評価サイクルのWGIIIは例外で、3名の共同議長を有した。各共同議長は、パネルが課したマンデートを達成すべく、WGを指導し、その任務においてはテクニカルサポートユニット(TSUs)の支援を受ける。

さらにIPCCには、国別温室効果ガス・インベントリに関するタスクフォース(TFI)があり、IPCC国別GHGインベントリ・プログラムを監督するが、これもTSUの支援を受ける。このプログラムは、各国のGHG排出量及び除去量の計算及び報告に用いられる国際的に合意された手法及びソフトウェアを開発し、改善し、UNFCCC締約国による利用を推奨することを目的とする。

パネルは、一つの評価サイクル全体を任期とする議長団を選出する、評価サイクルの期間は5年から7年であり、IPCC評価報告書の作成が含まれる。議長団の役割は、IPCCの作業の計画作成、調整、モニタリングでIPCC議長を助けることであり、全ての地域を代表する気候変動専門家で構成される。現在、議長団は、IPCC-41での本会合(IPCC-42)の選挙では31名から増員するとの決定を受け、34名で構成され、これにはIPCC議長と副議長、WG共同議長と副議長、TFI共同議長とそのメンバーが含まれる。2011年、IPCCは、WGsの会合期間外の作業及び協力を推進すべく、執行委員会(ExComm)を設立した。このExCommは、IPCC議長、IPCC副議長、WG及びTFIの共同議長、及びIPCC事務局長とTSUsの4名の長を含める諮問メンバーで構成される。IPCC事務局は、スイスのジュネーブにあり、WMOがホストとなっている。

IPCCの制作物:IPCCはその発足当初から、一連の総合評価報告書、特別報告書、テクニカルペーパーを作成してきており、気候変動の科学情報を国際社会に提供し、専門家及び各国政府による広範な査読を受けてきた。

IPCCの第1次評価報告書は1990年に完成、第2次評価報告書は1995年、第3次評価報告書は2001年、第4次評価報告書(AR4)は2007年、第5次評価報告書(AR5)は2014年に完成した。現在、評価報告書の構成は各WGで1部という3部構成になっている。各WGの報告書は、政策決定者向けサマリー(SPM)、テクニカルサマリー、その根拠となる評価報告書本文で構成される。各報告書の全セクションは、広範な査読プロセスを受ける、第1回の査読は専門家が、第2回の査読は専門家と政府が、第3回の査読は政府が行う。各SPMは、その後、当該WG報告書の行ごとの承認を受ける。その上で、評価報告書全体をまとめる統合報告書(SYR)が作成され、3つのWG報告書における最も関連性のある事項に焦点を当てる、その後、パネルは、SYRのSPMを行ごとに承認する。

IPCCは、総合評価報告書に加え、SRs、手法論報告書、テクニカルペーパーも作成、それぞれ気候変動関連の特定の問題に焦点を当てる。これまでのところ、SRsには次が含まれる:土地利用、土地利用変化、森林(2000年);二酸化炭素回収・貯留(2005年);再生可能エネルギー資源及び気候変動の緩和(SREN) (2011年);気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理(SREX) (2011年)。さらにテクニカルペーパーでは、気候変動と水(2008年)に関するものなどが作成されている。

加えて、IPCCは、各国のGHGs報告書作成を助けるため、手法論報告書またはガイドラインを作成する。グッド・プラクティス・ガイダンス報告書は、2000年と2003年にパネルの承認を受け、国別GHGインベントリに関するIPCCガイドラインの最新版は2006年に承認された。さらにIPCCは、国別GHGインベントリの2006年版ガイドラインに対する2013年補足文書:湿地(湿地補足書)も採択し、京都議定書から派生する2013年補足手法及びグッド・プラクティス・ガイダンス(KP補足文書)を採択した。

「人為的な気候変動に関し多くの知識を積み、これを普及し、そのような変化に対抗するために必要な基礎を築いた」というIPCCの作業及び努力に対し、2007年12月、IPCCは、米国のアル・ゴア前副大統領とともにノーベル平和賞を授与された。

IPCC-28この会合(2008年4月9-10日、ハンガリー、ブダペスト)において、IPCCは、AR5を作成し、当時のWGsの構成を保持することで合意した。パネルは、AR5における新しいシナリオの有意義な利用を可能にするため、評価サイクルの時間枠を5年から7年に延長し、IPCC議長団に対し、WGI報告書は2013年の早い時期までに提出し、他のWG報告書及びSYRは2014年の可能な限り早い時期に完成させるよう要請した。

IPCC-29この会合(2008年8月31日- 9月4日、スイス、ジュネーブ)は、IPCC20周年を記念する会合であった。パネルは、新しいIPCC議長団を選出、Rajendra Pachauri (インド)が議長に再任された。さらにパネルはIPCCの将来に関する議論を継続し、ノーベル平和賞の賞金を途上国の若い気候変動科学者のための奨学基金創設に充てることで合意した。

IPCC-30この会合(2009年4月21-23日、トルコ、アンタルヤ)において、パネルは、主にIPCCの近未来に焦点を当て、2009年7月13-17日、イタリアのベニスで開催されるAR5スコーピング会議向けのガイダンスを提供した。

IPCC-31この会合(2009年10月26-29日、インドネシア、バリ)では、提案されたAR5の各章の概要を承認した。さらにパネルは、途上国及び経済移行国の科学者の参加、電子技術の活用、IPCCの長期的な将来に関し、IPCC-30で行われた決議実施の進捗状況を検討した。

インターアカデミー・カウンシル(IAC)のレビュー:AR4の不正確さ及び批判に対するパネルの対応への一般からのIPCC批判に対応するため、国連事務総長のBan Ki-moon及びIPCC議長のPachauriは、IACに対し、IPCCプロセス及び手順の第三者レビューを行い、IPCCを強化し、その報告書の質を確保するための提案を提示するよう要請した。

IACは、2010年8月にレビュー結果を提出、特に次の事項を推奨した:IPCCの管理体制;危機対応計画を含めるコミュニケーション戦略;参加者の選出基準、評価する科学技術情報のタイプなどでの透明性;WGsの不確実性の定義における一貫性。

IPCC-32この会合(2010年10月11-14日、韓国、釜山)では、IACレビュー提案が議論された。パネルは、この事項に関し多数の決定を行ったが、これには灰色文献や不確実性の扱い、これまでの報告書での誤謬を議論するプロセスに関する決定などが含まれる。さらなる検討が必要な提案を話し合うため、パネルは、プロセスと手順、コミュニケーション、利益相反政策(COI)、ガバナンスと管理に関するタスクグループを設置した。さらにパネルは、AR5 SYRの概要に関する改定案を受け入れた。

IPCC-33この会合(2011年5月10-13日、アラブ首長国連合、アブダビ)は、主にIACレビューのフォローアップ行動に焦点を当てた。パネルは、ExComm(執行委員会)を設置、COI政策を採択し、IPCC報告手順に数件の変更を加えた。さらにパネルはAR5の進捗状況も検討した。

IPCC-34この会合(2011年11月18-19日、ウガンダ、カンパラ)は、IPCC報告書の作成、査読、受理、採択、承認、及び発行の手続き改定案を採択し、COI政策の実施手続き及び公開様式も採択した。

IPCC-35この会合(2012年6月6-9日、スイス、ジュネーブ)は、IPCC事務局及びTSUsの機能、及びコミュニケーション戦略を承認し、IACレビューの提案に対するパネルの考察を終了した。

WGI-12及びIPCC-36これらの会合(2013年9月23-26日、スウェーデン、ストックホルム)において、WGIは、AR5のWGI報告書「気候変動2013年:自然科学の根拠」を最終決定した。その後、パネルは、WGI SPMを承認し、テクニカルサマリー及び附属書を含める報告書本文を受理した。

IPCC-37この会合(2013年10月14-17日、ジョージア、バトゥーミ)において、パネルは、IPCCの将来作業に関するタスクグループの設立を決定した。さらに、二つの手法論報告書、国別GHGインベントリの2006年版IPCCガイドラインの2013年補足文書、湿地に関する補足書とKP補足書を議論し、これらを採択した。さらにIPCCは、IPCCの将来マップ作成に関する初期の議論を開始した。

WGII-10及びIPCC-38これらの会合(2014年3月25-29日、日本、横浜)は、AR5のWGII報告書「気候変動2014年:影響、適応、脆弱性」を最終決定した。その後、パネルは、WGII SPMを承認し、テクニカルサマリー及び附属書を含める報告書本文を受理した。

WGIII-12及びIPCC-39これらの会合(2014年4月7-12日、ドイツ、ボン)は、AR5のWGIII報告書「気候変動2014年:気候変動の緩和」を最終決定した。その後、パネルは、WGIII SPMを承認し、テクニカルサマリー及び附属書を含める本文報告書を受理した。さらにパネルは、特にCOI及びIPCCの将来作業についても議論した。

IPCC-40この会合(2014年10月27日から11月1日、デンマーク、コペンハーゲン)は、SYRを検討し、最終決定した、SYRは3つのIPCC WGsの結論をまとめたもの。パネルは、SYRのSPMを行ごとに承認し、セクションごとの長文SYRを採択した。

IPCC-41この会合(2015年2月24-27日、ケニア、ナイロビ)では、IPCC将来作業に関するタスクグループ設置の提案などIPCCの将来作業が議論され、IPCC議長団及びTFBの人数規模、組織構造、構成について決定を行った。さらにパネルは、次の事項に関する決定を採択した:IPCC制作品、そのタイミングと有用性;IPCCの組織構造;IPCC事務局とIPCC TSUsのそれぞれの役割;調整役筆頭執筆者及び筆頭執筆者の選出と支援のためのオプション;執筆及び査読プロセスの改善。IPCC議長Pachauriの辞任に伴い、IPCC-42での新議長選出を条件に、Ismail El Gizouli (スーダン)がIPCC議長代行に任命された。

IPCC-42 報告書 

IPCC議長代行に就任したEl GizouliがIPCC-42開幕の挨拶を行い、今次総会の主たる目的は新たな議長団(ビューロー)選挙であると指摘した上で、開催国クロアチア政府に謝意を表した。また、今回離任する議長団の業績については、これまでに作成した気候変動に関する科学報告書の中でも最も詳細な評価文書となったとする第5次評価報告書(AR5)の作成を挙げ、UNFCCC第20回締約国会議 (COP 20) でAR5は正式にUNFCCCプロセスの重要な資料であると認識されると述べ、AR5 作成期間にIPCC史上前例を見ないほどの情報提供が行えたと強調した。

UNFCCC適応プログラム・マネージャーのFlorin Vladuは、2015年はUNFCCCとIPCCにとって重要な一年だと強調し、今年12月にフランス・パリで開催されるCOP 21における新合意への期待を挙げた。また、総量ベースの排出削減に関する進捗モニタリングや科学を踏まえた地球規模の排出経路の管理などに関連するものも含め、IPCCによる分野別の特別報告書(SRs)はUNFCCCのニーズの変化に対応するものだとしてSRs支持を表明するとともに、IPCC報告書はUNFCCC締約国の野心レベルの継続的な引上げを支援するものだと述べて、期待感を示した。

UNEP 事務局長 Achim Steiner 代理のMerlyn Van Vooreは、持続可能な開発目標が無事採択の運びとなった最近の勢いをもって、COP21でも変革の力をもたらす合意を成立させるよう呼びかけた。また、気候変動が社会、政治、経済の問題であるとの国際的な認知度を高めたことがIPCCの功績であるとし、世界で必要とされる投資は途方もない水準ではないと強調した。

WMO副事務局長 Jeremiah Lengoasaは、気象予報士向けのワークショップや2015-2016年のエルニーニョ・南方振動に関する最新情報を含むWMOの取組みに脚光を当て、エルニーニョ現象については年末にかけて活発化し、1950年以降、最も強力になるとの予報が出ていることを示した。また、IPCCに対しては、IPCCの成果を明快にして広く活用してもらえるようにすることが重要であるとし、大局観から考えるよう求めた。

クロアチア環境・自然保護省のMihael Zmajlović大臣は、気候変動は人類にとって現在の最重要課題であると強調し、排出大国による野心的な目標や著しい貢献を含め、パリでは多面的な合意を成立させることを支持するとともに、クロアチアによる省エネ効率化・回収事業に脚光を当てた。

議題採択: IPCC書記代理の Bruce Stewartは、今次総会の議題(IPCC-XLII/Doc.1 Rev.2 and Add.1)を紹介した。

TFI 共同議長のTaka Hiraishiは、2016-2018年のTFI 作業計画及び予算に関するIPCC-XLII/INF.9について、TFIの今後の活動に関する行動案が含まれていると言及し、IPCCパネルに対してINF.9を予算問題の討議決定の際に必要な“sDOC”扱いにするよう求めた。

モナコ、ノルウェー、アイルランド、スペイン、米国、ニュージーランド、ドイツ、カナダ、スイスは、SRsのための提案に関する議題項目に関する初期の討議を開始させるよう要請したが、サウジアラビア、セネガル、マリ、アルゼンチン、ブラジル、タンザニア、スーダンは、この件は新任の議長団が担当するのが一番良いと述べて反対に回った。

 IPCC書記代理のStewartは、この議題項目について、時間が許せば討議するという注意書き付きで“その他の問題(Other Matters)”の中で扱うことを提案した。また、現在の議長団の任期は今次総会の会期末までであることを指摘した。

パネルにより修正通り議題が採択された。

第41回IPCC総会報告書案の採択

10月5日(月)午前、IPCC議長代行 El GizouliとIPCC書記代理 StewartからIPCC-41報告書案 (IPCC-XLII/Doc.3)の紹介があった。ベネズエラは、追加協議の時間が不足したことから、IPCC-41 で地域グループI (アフリカ) 及び II (アジア)の代表メンバー増員で妥協したことを想起し、次の評価報告書の作成期間に地域グループIII (南米)についても同様の改正を検討することを条件としたことを指摘した。報告書はパネルによって受諾され、ベネズエラの意見は報告書に添付する形で盛り込まれた。

IPCC 事業予算

10月5日(月)午前、IPCC議長代行 El Gizouliがこの議題項目 (IPCC-XLII/Doc.2 Rev.1 and IPCC-XLII/INF.2)を紹介した。IPCC書記代理Stewartは、今年の財政状況について150万スイスフランを受領したものの預金の純減という資金の傾向が見てとれると述べ、この傾向が続けば第6次評価報告書(AR6)の作成期間終了までにIPCCは財政難に陥る可能性があると指摘した。

米国は、この情勢に対する懸念を示し、資金タスクチーム(FiTT)に対して、資金拠出国数の減少を反転させ、必要な資金を増やすべく取り組むよう呼びかけた。会期中、IPCC事業予算を審議するためのFiTT会合が行われた。

10月8日(木)午後、Nicolas Beriot (フランス)がFiTT代表として、FiTTに関する報告を行い、AR6作成期間に関するスコーピング終了後に 2016年度予算がまとめられると述べた。また、資金拠出額の減少対策案に焦点を当て、他の機関の資金モデルの模索や経費節減措置の特定や新たな資金動員の取組み、非政府系の基金を含めた支援に関する他の財源の模索などに脚光を当てた。

さらに、FiTT報告書について、おそらくはWMOかUNEPの支援を受けつつ、AR5 作成期間のコストならびに貯蓄残高の減少を点検するよう勧告し、IPCC-43でIPCCの財務状況に関する特別議題を設定し、資金計画に不可欠なSRsの決定を下すよう呼びかけると述べた。

サウジアラビアは、特別なトピック毎の会合を設定するよりも手続き規則上義務付けられた議長団の最低人数を保証するよう要求した。米国は、議長団会合の開催コストについて言及し、IPCCの定例会合と同じ場所で議長団の会合を交互に開催してコスト圧縮を図ることで支払は可能だと提案した。事務局は、年間2回の議長団会合の予算は計上されていると指摘したものの、年2回の議長団会合と2回の総会のための事務局の作業負荷と時間的な縛りについても言及した。

米国は、新しい議長団と新議長で必要な資金集めの方策を検討することや民間慈善団体に接近することを提案した。カナダは、議長と事務局の双方に拠出金の減少傾向の打開策を図る責務が課されていると述べた。

WGI 共同議長 Thomas Stocker (スイス)は、TSUホスト国からの現物寄付に関する情報を求めた。Beriotは、現物寄付の額を算定することは困難だと指摘したが、IPCC-43に推計額を出すことは必要だとの点で同意した。

FiTT 報告書は修正案の通りに採択された。

オブザーバー組織の認可

10月5日(月)午前、IPCC議長代行 El Gizouliは、今のところ新たな認可要請が出されていないとパネルに通知した。

各種報告

コミュニケーション及びアウトリーチ活動: 10月5日(月)午後、IPCC 事務局コミュニケーション/メディアリレーションズのトップを務めるJonathan Lynnから本項目 (IPCC-XLII/INF.11)の紹介があった。今年の主眼はAR5関連のアウトリーチ活動にあると指摘した上で、これまでにアウトリーチが強化され、AR5へのアクセス改善を狙ったAR5に関するIPCCの新たなウェブサイトの概要説明を行った。また、AR5のSPMのダウンロード数が150万件を超えたと強調した。

米国は、アウトリーチの重要性を強調した上で、同活動に対する事務局及び協力国の取組みに賛辞を送った。マリ、ペルー、ロシア、アルゼンチンは、具体的な地域レベルのアウトリーチ活動を歓迎した。パネルが報告書について留意した。

IPCC スカラーシップ事業: 10月5日(月)午後、IPCC書記代理のStewartからのこの項目 (IPCC-XLII/INF.10)の報告があり、モナコ大公アルベール2世及び Cuomo財団からの寄付に対する感謝の辞が述べられた。また、スカラーシップの受賞者の出身国が、コロンビア、スリランカ、ウガンダ、ネパール、モロッコ、アルバニア、ケニア、ベニン、エチオピア、バングラデシュからの研究者からなり、世界的な多様性があることにスポットを当てた。パネルはこの報告に留意した。

シナリオ専門家会合: WGIII 共同議長 Ramón Pichs-Madruga (キューバ)から、2015年5月にオーストリア・ラクセンブルグで開催されたシナリオ専門家会合 (IPCC-XLII/INF.15)について、IPCCとシナリオ研究者コミュニティー双方に対する提言書に結びついたとの報告があった。また、IPCCへの提言に関しては、シナリオの統合活用に関するIPCC SRの作成を含め、AR6作成期間に3つの作業部会(WG)を横断する知識一元化に向けた改良を進めるためにはシナリオが重要な役割を担うことを指摘し、シナリオに関する諸問題に関するWG合作章の挿入や執筆プロセスを通じたシナリオの利用を調整する“執筆者シナリオグループ”の創設などの提案が持ち上がったことを明らかにした。Pichs-Madrugaは、専門家会合では、IPCCがシナリオ作成及びキャパシティビルディング活動に対する途上国の参加を増やし、シナリオ分析に関心のある他の機関や評価団体との相乗効果を追求するべきだとの結論に達したと述べた。

米国は、専門家会合の成果について歓迎し、WG間のシナリオ利用の向上を図ることが決定的に重要だとコメントした。パネルはこの報告に留意した。

気候変動・食糧・農業に関する専門家会合: WGII 共同議長 Chris Field (米国) は、2015年5月27-29日にアイルランド・ダブリンにて開催された同専門家会合について報告(IPCC.XLII/INF.12、Corr.2)し、CGIARの同会合に対する要望について言及した。また、これほどまでに気候変動の強制力の原因となった部門は無く、気候変動から多くの影響も受けているとし、健康や持続可能な開発といった他の問題とも関連が深く、気候変動に取り組むための機会は数多いと述べた。

また、同会合にはIPCC関係者及び外部からの参加者も含めて55名が出席し、そのうち24名が途上国からの参加であったと報告し、新たな研究への集中や今後のSR作成、AR6のスコーピングにおける同問題領域に関する新たな知見や知識の採用など、将来にわたる本議題の審議のための機会やオプションに関する提案について検討したと述べた。パネルはこの報告に留意した。

影響・気候分析のためのデータ及びシナリオ支援に関するタスクグループ (TGICA): 10月5日(月)午後、TGICAの活動に関する報告書 (IPCC-XLII/INF.14)についてパネル審議が行われ、TGICA-22や気候変動情報の活用に対する決定重視型アプローチに関する専門家会合、出席者から提示された“Clinic to Work Through Real World Cases” について検討した。

TGICA 共同議長 Timothy Carter (フィンランド)は、データ配信センター(DDC) に関する最新情報として、異常気象に関する情報配信について述べ、DDCユーザー調査を通じて利用者がフィードバックを行うチャンスがまだ残されていることに言及した。さらに、一般的な活動内容として、結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP:Coupled Model Intercomparison Project)フェーズ6準備へのTGICA参加やシナリオモデル相互比較プロジェクトに関する執筆陣のフィードバック、シナリオに関するIPCC専門家会合等を挙げた。また、IPCC-43で、TGICAの活動規定を再点検するとのIPCC-41決定について指摘し、科学運営委員会メンバーが選出され、こうした議論のための準備を行うと述べた。

ロシアは、すべての執筆者のアクセスを保証し、AR6の成功を確実にするためのe-Libraryの完成を呼びかけた。

TGICA 共同議長 Carter は、情報へのアクセスのしやすさは、TGICAの関心領域であると強調し、DDC資料にすべての国がアクセスできるよう担保することがTGICAの業務拡大の際の最優先事項だと指摘した。

TGICA 共同議長 Bruce Hewitson (南アフリカ) は、2015年6月30日-7月2日に米ニューヨークで開催された決定重視型アプローチに関する専門家会合について報告し、46名の出席者のうち21名が途上国や経済移行国からの参加者だったと述べ、同会合では気象情報を適応支援や気候リスクの管理にどのように役立てるかというテーマを中心に話し合い、各種アプローチの紹介や模索において参加型プロセスを採用したと説明した。Hewitsonは主要メッセージの概要を説明し、民間部門のパートナーシップや気象サービスにおける “知的投資”拡大の機会や大型の評価報告書を補完するような小型レポートに対する強いニーズ、他の関連機関との情報共有拡大などについて述べた。パネルは報告について留意した。

TFI: 10月5日(月)午後、IPCCインベントリ・ガイドラインの技術評価(エネルギー、産業プロセス、製品利用、廃棄物部門)に関する専門家会合(IPCC-XLII/INF.7 Corr.2 and IPCC-XLII/INF.9 Corr.2)、IPCC インベントリ・ガイドラインの技術評価に関する専門家会合(農業、林業、その他の土地利用部門) (IPCC-XLII/INF.8 Corr.2 and IPCC-XLII/INF.9 Corr.2) ならびに排出係数データベース収集及びソフトウェア利用フィードバックに関する専門家会合(IPCC-XLII/INF. 6、Corr. 2) が合わせてTFI のThelma Krug共同議長 (ブラジル) 及びHiraishi 共同議長によって取り上げられ、紹介された。共同議長の報告によると、専門家会合では、2006 IPCC GHG インベントリ・ガイドラインの特定部門の改善を図るため一定の方法論上の改良が必要だとの結論に至り、現行メソッドで多くの改良は講じられるものの、一部は2019年に作成予定となっている方法論報告書の完了を待つことになるとの判断を示した。TFI 共同議長は本件に関する審議を行うためのスコーピング会合の開催を提案した。

ドイツは、デンマーク、ノルウェーとともに、UNFCCCで採用されるか分からないと述べ、そうした方法論報告書の作成に反対し、もっと採用されやすいガイドライン補足に取り組むよう要請した。2006年以降の著しい改善について指摘しつつ、TFI 共同議長が提案する作業計画については歓迎しながらもオーストラリア、米国は賛同しなかった。日本は、 TFIの業務やガイドラインの重要性を強調し、ガイドラインの更なる改良に期待すると述べた。

IPCC議長代行 El Gizouliは、報告書及び締約国から出された意見について留意し、今後の総会への報告やTFI作業計画の策定時にこれらの意見を検討するよう新任TFI議長に要望を出し、FiTTで予算の影響を検討するよう要請することを提案した。

地域別気候予測・影響リスク分析における利用に関するワークショップ: 10月5日(月) 午後、WGI 共同議長 Stockerから、2015年9月15-18日にブラジル・サンパウロで開催された同ワークショップ(IPCC-XLII/INF.18)について報告があり、同会合はWGIとWGIIとの連携と協働を図るべく科学者が参集したユニークなワークショップとなったことを伝えた。また、ここで特定された提案やニーズについては、AR6へ情報を提供するための資料を作成すると強調し、1)学生への気候変動についての広報、2)ブラジルの科学者が地球気候モデルや地域別モデル、ダウンスケールについての疑問に答える場、3)気候モデル・シミュレーション情報にアクセスするためのツール検証、4)AR5についての広報メディアという4つのアウトリーチ活動を目指していることを示した。パネルはこの報告に留意した。

非公開情報や会合にアクセスするための研究者の要望を検討するための決定経路に関する最新情報:  10月5日(月)午後、WGIII 共同議長 Pichs-Madrugaより、WGIII共同議長が作成し、IPCC書記代理から提出された本件に関する最新情報 (IPCC-XLII/INF.17)が伝えられた。共同議長は、そうした要望が承認された場合に講じられる各種行動の概要を伝えた。ドイツからの質問を受けて、事務局は本項目をそのまま受けつけた通り紹介した上で、パネルは希望する通りに最新情報をベースに行動することができると述べた。カナダは、今後の会合で本件について決定することに賛同し、政府や科学者の特権と考えられる情報に関してデリケートなバランスについて言及しつつ、IPCCの対外的な研究を奨励した。パネルは本件について議長団でさらなる審議を図ることを決定した。

手続き事項

COI: 10月5日(月)午前、IPCC議長代行 El Gizouli は、IPCC COI 委員会 (IPCC-XLII/INF. 3)の会合があり、議長団の候補者推薦に関して提出された公開状について検討が行われたことを伝えた。その中で、いくつかの軽微な問題が見つかったが、候補者との話合いにより解決できるだろうとの見通しを示した。

サウジアラビアは、委員会に対して更に指針を提供するようパネルに要請した。パネルは初期の報告書について留意した。会期中にCOI 委員会の審議は続けられ、さらなる候補指名に関するCOIの可能性について検討した。

指名委員会: 10月5日(月)に下記のメンバーから成る指名委員会が設置された: Alab Sile Sikhosans (スワジランド)、Lamin Mai Touray (ガンビア)、Abdullah Tawlah (サウジアラビア)、Syed Atif Raza (パキスタン)、José Luis Remedi (ウルグアイ)、Jacqueline Spence (ジャマイカ)、Antonio Cañas Calderón (エルサルバドル)、Dan Zwartz (ニュージーランド)、Gary Theseira (マレーシア)、Ivan Čačić (クロアチア) and Katrine Krogh Andersen (デンマーク)。委員会の議長にはGary Theseira (マレーシア)が指名された。指名委員会は、その他の候補者の任命について審議するため、会期中を通して続けられた。

信任状委員会: 下記の6名から成る信任状委員会が 10月5日(月)に発足した。Djé Kouakou Bernard (コートジボワール); Ali Shareef (モルジブ); Liliam Ballon (ペルー); Alessandro Nardi (米国); Arona Ngari (クック諸島); and Dovilė Vaitkutė (リトアニア)。委員会の議長にはAlessandro Nardi (米国)が指名された。委員が提出した信任状を検討するため10月6日(火)午後まで信任状委員会が続けられた。

ビューロー 及びタスクフォースビューロー(TFB)メンバーの選挙

10月5日(月)午後、IPCC書記代理Stewartが本項目 (IPCC-XLII/INF.16 and IPCC-XLII/INF.19)を紹介した。IPCC業務運営指針・付録Cに記載された通り、IPCCビューロー(議長団)及びTFB(タスクフォース議長団)全員の選挙手続き規則に則り、IPCC議長、ビューロー及びTFBのメンバーの選挙が執行された。

この手続き規則は、2006年4月モーリシャス・ポートルイスで開催されたIPCC-25 で採択されたもので、2012年6月にスイス・ジュネーブのIPCC-35 でIPCCの3名の副議長のうち最低1名は先進国、1名は途上国とし、3つの異なる地域の代表者とする旨の改訂が行われた。また、この規則によると、各WG(作業部会)とTFB の共同議長のうち1名は先進国、1名は途上国の出身としなければならない。2015年2月にケニア・ナイロビで行われたIPCC-41では、さらに手続き規則の改訂を行い、ビューローの規模を31名から34名へと拡大。アフリカ地域の代表を5名から7名へ、アジア地域の代表を5名から6名へ増やし、「これらの追加ポジションが3つの作業部会で均等に配置される」ようにした。

また、手続き規則は、ビューロー内で、WMO の6地域:地域 I (アフリカ); 地域 II (アジア); 地域 III (南米); 地域 IV (北米、中米、カリブ海); 地域 V (南西太平洋); 地域 VI (欧州)の地域バランスを図るよう定めている。現在、各地域のメンバー数については下記のように定められている。アフリカ7席; アジア6席; 南米4席; 北米・中米・カリブ海4席; 南西太平洋4席; 欧州8席(IPCC-XLII/INF.5)。IPCC-42開催前に、メンバーによって殆どのビューロー候補者の推薦が行われていたが、総会の会議場でも直接、候補者の推薦が行われた。手続き規則により、ビューローのメンバー候補の選挙では地域グループ内で合意形成を行うことを奨励している。合意が欠如した場合、当該ポストは規則により全体会合における無記名投票で決定する。ビューロー選挙が行われる総会では、付録Cに則り、信認状委員会および指名委員会が設置される。信認状委員会は、IPCCメンバーが推薦した代表者の信任状を審査し、IPCCビューロー及びTFBを選出するため、当該代表者がIPCCの一構成員として唯一の正当な代表であるか否かを決定する。指名委員会は、選挙が行われる各職の推薦者リストを作成、パネルに提出する。COI 委員会は、執行委員会(ExComm)及びWMO とUNEP出身の2名の法律専門家で構成される常設委員会であり、候補者がビューローやTFB選挙に立つ資格を有するか決定するべく、COI書類を精査する。

Leo Meyer (オランダ)及び Elisabeth Holland (ミクロネシア連邦)は投票集計係に選出された。10月7日(水)、Elisabeth Holland (ミクロネシア)に代わって、Suzana Khan (ブラジル)が係に選ばれた。

10月5日(月)午後の時点では、これまでWMO議会での利用が成功しており、段階的に投票箱単位で投票行動を再現することを目指した電子投票システムを採用することがパネル決定(IPCC-XLII/INF.1)しており、それによって無記名方式の独立投票が迅速化できると考えられていた。しかし、6日(火)午後に行った最初の運用テストと議論の結果、技術的な不具合が生じる可能性が浮上し、IPCC議長代行 El Gizouliが提案したのは、IPCC 議長及び IPCC副議長ポストの選挙を紙ベースの投票で行い、残りのビューロー及びTFBメンバーの選挙を電子投票方式で行うというもので、この議長代行案がパネル合意を得た。

10月8日(木)午後、投票結果について、パネルで承認された。個々の選挙結果の概要については以下の通り。

IPCC議長の選挙:10月6日(火)夜、パネルは、第6次評価サイクルのIPCC議長の選挙を実施した。IPCC議長候補者は:Ogunlade Davidson (シェラレオーネ);Hoesung Lee, (韓国);Chris Field (米国);Nebojsa Nakicenovic (オーストリア・モンテネグロ);Jean-Pascal van Ypersele (ベルギー);Thomas Stocker (スイス)。

第1回目の投票は総数135票、結果は次の通り:Davidson、1票;Field、19票;Lee、45票;Nakicenovic、8票;Stocker、30票;Van Ypersele、32票。

単純過半数がなく、2回目の投票はLeeとvan Yperseleの決選投票となり、結果は、Van Yperseleが56票、Leeが78票。このため、Hoesung LeeがIPCC議長に当選した。

IPCC副議長の選挙:10月7日水)朝、IPCC議長代行のEl Gizouliは、IPCC副議長選挙の投票を開始した。

スイスは、ハンガリーの支持を得て、地域協議の時間追加を要請、さらにスイスは、地域VIと他の地域間で振り分ける候補者パッケージを検討する時間が必要だと指摘した。同代表は、会場において、Andreas FischlinをIPCC副議長候補者に指名した。

米国は、会場からKo Barrettを候補者に指名し、科学機関におけるBarrett氏の経験、及び途上国世界における同氏の努力に焦点を当てた。同代表は、米国の指導的な役割はパネルにとり重要なサービスを提供する能力の確保を助けると強調した。

TFI共同議長のTaka Hiraishiは、COI行動規範の内務規定によると、IPCC ExCommのメンバーは、IPCCの外部における交渉で重要な役割を果たすことは控える必要があると指摘し、この内務規定を公式に記録するよう要請した。

地域グループ間の追加協議の後、スイスは、Fischlinの副議長立候補を取り下げ、ハンガリーもDiana Ürge-Vorsatzの立候補を取り下げた。このため、議長は、Ko Barrettが拍手をもって先進国副議長に選出されたと宣言し、途上国副議長の選挙を開始した。

IPCC事務局長代行のStewartは、Barrettが今現在、地域IVを代表していることから、本来候補者に指名されていたキューバのPichs-Madrugaは(同じ地域ということで)副議長選挙に出ることができないと発表した。会場から新たな候補者の指名がなかったことから、残る2つの副議長席をめぐる候補者、Youba Sokona (マリ)、Thelma Krug (ブラジル)、Fredolin Tangang (マレーシアMalaysia)について選挙が行われた。

第1回の投票では、Krugが53票を獲得、Sokonaは49票、Tangangは29票を勝ち取った。いずれの候補者も単純過半数に達しなかったことから、上位2名の候補者をめぐり第2回の投票が行われた。第2回の投票で、Krugは73票を、Sokonaは61票を獲得した。Thelma Krugが(途上国側)副議長の宣告を受けた。

第3の副議長をめぐり第3回の投票が行われ、Sokonaは89票、Tangangは45票を獲得した。このため、Youba Sokonaが、第3のIPCC副議長であると宣言された。

作業部会及びタスクフォース議長団の選挙:WG共同議長の選挙は10月7日(水)午後に開催された。

選挙の前に、立候補者リストで数件の変更が行われた。妥協の精神で、インドは、2名(WGII共同議長候補のAnand Patwardhan、TFB共同議長候補のAmit Garg)の立候補を取り下げ、タンザニアは、1名(TFB共同議長候補のJamidu Katima)の立候補を取り下げた。アルゼンチンも、一人の候補者(WGI共同議長候補のCarolina Vera)が辞退したが、Darío GómezをWGIII共同議長候補者に指名した。

WGIでは、Valérie Masson-Delmotte (フランス)が先進国側共同議長として拍手をもって選出された。途上国側共同議長の選挙は2名の候補者、Panmao Zhai (中国)とFredolin Tangang (マレーシア)の間で行われ、ZhaiがWGI共同議長に当選した。

WGIIでは、Hans-Otto Pörtner (ドイツ)が先進国側共同議長として拍手をもって選出された。その後、途上国からの次の4名の候補者に関する投票が行われた:Debra Roberts (南アフリカ);Joy Jacqueline Pereira (マレーシア);Eduardo Calvo Buendía (ペルー);Ramón Pichs-Madruga (キューバ)。第2回の投票は、RobertsとPereiraの間で行われ、Robertsが途上国側 WGII共同議長に選ばれた。

WGIIIでは、Jim Skea (英国)が先進国側共同議長として拍手をもって選出された。途上国側では次の4名の候補者をめぐり投票が行われた:P.R. Shukla (インド),lCheikh Mbow (セネガル), Eduardo Calvo Buendía (ペルー)、Darío Gómez (アルゼンチン)。ShuklaとMbowをめぐる第2回投票で、参加者はShuklaを選んだ。.

TFBでは、Kiyoto Tanabe (日本)が先進国候補者として拍手で選出された。途上国側の席を巡っては2名の候補者での投票となった:Eduardo Calvo Buendía (ペルー)とFrancis Yamba (ザンビア)。パネルはCalvo Buendíaを選出した。

ニュージーランドは、地域V (南西太平洋)の立場で発言し、ExCommでは同地域が代表されていないとして懸念を表明した。IPCC議長代行のEl Gizouliは、同地域が1名の代表を候補者として指名し、その人物をExCommにも参加することを提案した。パネルは、この提案に同意し、10月8日(木)午後、WG副議長の選挙(下記セクション参照)の後、マレーシアがWGIII副議長に新たに当選したJoy Jacqueline Pereira (マレーシア)を当該地域代表候補に指名、パネルもこれに同意した。

アルゼンチンは、WGsまたはTFBのいずれにおいても全ての地域から1名を参加させるよう求める規則があるにも拘わらず、地域IIIは、IPCC副議長のKrugとTFB議長のBuendíaという2名の当選で、地域IIIに割り当てられた4つの地位のうち2つが既に埋まり、作業部会に代表を送り込めないとして懸念を表明した。

ベネズエラは、アルゼンチン、中国、ペルー、チリ、その他の支持を得て、地域IIIに割り当てられる席の数を増やす必要があると強調した。米国は、このような場合に問題を解決する多様な可能性を提案、既に議長団に入っている地域IIIの代表が、別な立場を務める、もしくは当該地域を代表する追加メンバーを出すが、この代表は議長団の一部とはならないこととする、などである。ニュージーランドが進行役を務めるオープンエンドのコンタクトグループ会合が開催され、この疑問点について議論した。

10月8日(木)午前中、ニュージーランドは、コンタクトグループでは全体的な地域代表性に関する懸念について議論し、事務局は、米国の2件の提案はIPCC手続き規則と合致すると報告したと報告した。

追加の地域協議の後、アルゼンチンは地域IIIの立場で発言し、同地域は、議長団メンバーではない代表というオプションを支持するとし、Walter Oyantacabal (ウルグアイ)を候補者に指名した。

10月8日(木)午後、アルゼンチンは、OyantacabalがWGIIIにおいて同地域を代表できる委任条件を提案、これに次の項目を含めることを提案した:執筆者リストに関する地域IIIからの貢献;専門査読者、この場合、専門性、地理的対象範囲や性別のバランスに配慮する;広範な科学者社会への参画; WGIII製作品の科学的な質に関するコメント。カナダは、OyantacabalがIPCC議長団に参加しないことを明記するよう求めた。米国は、この解決策を前例にすべきでないと発言した。パネルは、これらの点を明らかにした上で、アルゼンチンの提案に同意した。

WGS及びTFBの副議長選挙:10月8日(木)朝、パネルはWG副議長を選出した。WGIの7名の副議長、WGIIの8名の副議長、WGIIIの7名の副議長をめぐり、多数の国が立候補を断念もしくは立候補者の差し替えを行った。

WGI副議長立候補者で残ったのは:Noureddine Yassaa (アルジェリア);Fatima Driouech (モロッコ);Muhammad Tariq (パキスタン);Carolina Vera (アルゼンチン);Gregory Flato (カナダ);Edvin Aldrian (インドネシア);Jan Fuglestvedt (ノルウェー);Serhat Sensoy (トルコ)。

WGII副議長立候補者で残ったのは:Pius Yanda (タンザニア);Taha Zatari (サウジアラビア);Carlos Méndez (ベネズエラ);Roberto Sanchez-Rodriguez (メキシコ);Mark Howden (オーストラリア);Joy Jacqueline Pereira (マレーシア);Morgan Wairiu (ソロモン諸島);Lučka Kajfež Bogataj (スロベニア);José Moreno (スペイン);Andreas Fischlin (スイス)。

WGIII副議長立候補者で残ったのは:Nagmeldin Mahoud (スーダン);Diriba Korecha Dadi (エチオピア);Amjad Abdulla (モルディブ);Ramón Pichs-Madruga (キューバ);Andy Reisinger (ニュージーランド);Carlo Carraro (イタリア);Jan Fuglestvedt (ノルウェー);Natasa Markovska (FYRマケドニア);Diana Ürge-Vorstaz (ハンガリー)。

IPCC議長代行のEl Gizouliは、地域I-IVは議長団メンバーで残っていた地域候補者枠と同数に達しているとパネルに伝えた。同議長代行は、地域VI (欧州)は議長団の残余枠である5つの席に10名が立候補しており、地域V (南西太平洋)はWGIIの2つの残余枠に対し3名が立候補していると説明した。更なる地域協議が行われた。新たな立候補辞退者の発表はなかった。

このため、地域VI (欧州)出身のWGI副議長候補者に関する選挙が開始された。第1回目の投票でJan Fuglestvedt (ノルウェー)がWGI副議長に当選した。他のWGI副議長は、拍手で選ばれた、この中には、Noureddine Yassaa (アルジェリア)、Fatima Driouech (モロッコ)、Muhammad Tariq (パキスタン)、Carolina Vera (アルゼンチン)、Gregory Flato (カナダ)、Edvin Aldrian (インドネシア)が含まれた。

地域VI (欧州)での短時間の協議後、WGII副議長の選挙が開始された。地域V (南西太平洋)の3名の候補者の中から2名の副議長を選ぶ選挙が行われ、3回の投票の結果、Joy Jacqueline Pereira (マレーシア)とMark Howden (オーストラリア)が当選した。地域VI (欧州)4名の立候補者の中から2名の副議長を選ぶ投票が行われ、3回の投票の結果、Sergey Semenov (ロシア)とAndreas Fischlin (スイス)が当選した。他のWGII副議長は拍手で選ばれた、この中には、Pius Yanda (タンザニア)、Taha Zatari (サウジアラビア)、Carlos Méndez (ベネズエラ)、Roberto Sanchez-Rodriguez (メキシコ)が含まれた。

その後、WGIII副議長の選挙に移り、ノルウェーは、Jan Fuglestvedt (ノルウェー)がWGIの副議長に選ばれたとして立候補を取り下げた。残った3名の候補者の中から、地域VI (欧州)の2名の副議長を選ぶ投票が行われた。3回の投票の結果、Diana Ürge-Vorsatz (ハンガリー)とCarlo Carraro (イタリア)がWGIII副議長に当選した。他のWGIII副議長は拍手で選ばれたが、この中には、Nagmeldin Mahoud (スーダン)、Diriba Korecha Dadi (エチオピア)、Amjad Abdulla (モルディブ)、Ramón Pichs-Madruga (キューバ)、Andy Reisinger (ニュージーランド)が含まれた。

10月8日(木)午後、各地域2名というTFBメンバーの選挙が開始された。当初立候補していた候補者が辞退する国が相次いだ。チャドとフィンランドは新しい候補者を指名した。

3つの地域では、それぞれ2名しか立候補しなかった。地域IIIではDarió Gómez (アルゼンチン)とYasna Rojas (チリ)、地域IVではDominique Blain (カナダ)とThomas Wirth (米国)、地域VではRob Sturgiss (オーストラリア)とFahmuddin Agus (インドネシア)であり、このため拍手をもってTFBメンバーに選出された。

地域Iでは、Batouli Said Abdallah (コモロ諸島)とSabin Guendehou (ベニン)が3回の投票でTFBに選出された。地域IIでは、Irina Yesserkepova (カザフスタン)とBundit Limmeechokchai (タイ)が同じく3回の投票で選出された。地域VIでは、Riitta Pipatti (フィンランド)とFatma Betül Baygüven (トルコ)が2回の投票で選出された。

IPCC誤謬プロトコルの実施

10月6日(火)夜、IPCC事務局長代行のStewartは、本項目の文書(IPCC-XLII/Doc.4)の概要を説明し、IPCC-41以後、IPCC誤謬プロトコルを通し、AR5で16件の誤謬の指摘が報告されたと述べた。同事務局長代行は、各WG報告書及びSYRの誤謬(errata)リストとのリンクを示す文書を指摘し、オンラインでアクセス可能だと述べた。同事務局長代行は、この文書は発行前に修正された誤謬を示すほか、電子版に示された発行後の誤謬を反映し、翻訳に関する誤謬を扱う追加のプロセス及び手続きも示していると述べた。

ドイツは、誤訳については、翻訳者ではなく専門家が最終決定するとの改定案を提案した。パネルはこの提案に同意した。

UNFCCC及び他の機関に関係する問題

10月6日(火)夜、UNFCCC事務局のFlorin Vladuは、最近のUNFCCCのイベントにおけるIPCCの参加について報告した。同氏は、IPCCはUNFCCCの科学的技術的助言のための補助機関 (SBSTA)に対し、AR5の気候科学、シナリオ、及び新しい計算方法の情報を提供したほか、科学知識の状況に関する最新情報も提供し、SBSTAの研究ダイアログと情報交換を行ったと述べた。その上で、同氏は、コミュニケーションに関するサイドイベント及びIPCC WGsとSBSTAとの合同会議など、IPCCとSBSTAの将来の協力計画について報告した。

IPCC事務局長代行のStewartは、UNFCCC COP 21及び関係会合でのIPCCの参加について報告した。同事務局長代行は、強化された行動のためのダーバンプラットフォーム特別作業部会(ADP)の次回会合への新しいIPCC議長の出席を準備しており、新しい議長団と過去の議長団メンバーにはCOP 21に参加してもらい、AR5及びIPCCの将来作業計画を議論すべく準備を進めていると指摘した。さらにIPCCのアウトリーチ及び刊行に関する作業全般も指摘した。

その他の問題

10月8日(木)、パネルは、議題書の「その他の問題」に記載されるSRsの問題に立ち戻り、IPCC議長代行のEl Gizouliは、この問題の議論に残された時間は少ないと指摘した。米国は、多数のSR提案の中でも新しく登場した5つの主題を指摘した:砂漠化;氷雪圏;海洋;食料と農業;緩和と適応のリンク。同代表は、提案のスリム化と提示方法の改善について、議長団で検討することを提案した。

ノルウェーは、議長団によるこの問題の考察続行を要請、提案スリム化という議長団のマンデートを求めた。スイスは、この問題を第6次評価サイクルのスコーピングで議論するよう求めた。

メキシコは、適応と緩和のリンクに関するSRを支持し、長寿命気候汚染物質及び人為的な操作が可能な物質に関するSRsの検討を求めた。

パネルは、この項目を議長団の議題書に記載した。

IPCC-43の場所と日付

パネルは、IPCC-43を2016年4月11-15日、ケニアのナイロビにあるUNEP本部で開催すると指摘した。

会合の閉会

閉会にあたり、ニカラグアは、気候変動の影響結果に直面する諸国への補償を求め、気候変動の歴史的責任を決定して、気候資金供与の客観的根拠を示すというIPCCの役割を強調した。

IPCC副議長のVan Yperseleは、AR5チームに感謝し、IPCCの責任に関する元IPCC議長のBert Bolin教授の発言を引用した、すなわち:独立した開放的な科学研究努力;公平性や社会正義の欠如が蔓延する世界の観点から影響を考える;行動の緊急性;協力の必要性。

WGI共同議長のStockerは、スイスとWGI TSUの支援に感謝した。同共同議長は、新しい指導部を歓迎し、Hoesung Lee氏及び新しい議長団の第6次評価サイクル遂行での幸運を祈ると述べた。

ハンガリーのAR5執筆者は、退任する前議長団全体に対し、その指導力に感謝した。

中国は、新しく議長団に選ばれたメンバーを祝し、効果的で透明性のある形での業務遂行が期待されると述べた。

次期IPCC議長のHoesung Leeは、新しい議長団は一つのチームとして務めることになるとし、AR5での素晴らしい実績の上に則り、IPCCの原則と伝統を受け継ぐべく最善を尽くすと述べた。同議長は、IPCCメンバーの支援と支持に感謝した。

IPCC事務局長代行のStewartは、参加者は同じ立場にあるという雰囲気であったことに感謝し、新しい議長団を祝し、議長団に選出されなかったものも、他の役割でIPCCのため努力を続けてほしいとの希望を述べた。

マリ、サウジアラビア、米国など多くの参加者は、IPCC議長代行のEl GizouliのIPCCへの献身を全会で賞賛し、2015年2月にIPCC議長の役割を担う個人的な犠牲を払ったことが指摘された。

IPCC議長代行のEl Gizouliは、閉会の辞で、パネルは強力で多様性のある新しい議長団を選出したと指摘、この第5次評価期間を終了に導き、光栄であったと述べた。その後、パネルは、同議長代行の指導力とIPCCへの献身、そしてIPCC-42での有能な議長職遂行にスタンディングオベーション(拍手喝采)を贈った。

IPCC-42は、午後6時42分、閉会の槌が打たれた。

IPCC-42の簡易分析

第5次評価報告書(AR5)の完成、及び第6次評価報告書における作業継続というIPCC-41の決定を受け、気候変動に関する政府間パネルの第42回会合は、有能なIPCC議長代行のIsmail El Gizouliの下で開会した。本会合では、次期評価サイクル期間を通してパネルの作業遂行を担う議長団の選出が大半を占めた。この分析では、選挙プロセス及び今後のIPCCの課題の一部を簡単に紹介する。

IPCCには多数の特異点があるが、各評価サイクルにおける議長団の全員交代という特異点もある。新しいIPCC議長、作業部会s (WGs)議長及び副議長、タスクフォース議長団(TFB)が選出され、各総合評価報告書及びこれに伴う文書の作業を担当することになる。今回の場合、議長団の交代と時を同じくして、IPCC事務局長のRenate Christも2015年7月に引退した。このため第6次評価サイクルでは、IPCC事務局長も新任となった。

この選挙を極めて複雑なものにしているのは、議長団の地位を先進国及び途上国でバランスさせなければならないこと、WMOの地域グループ間においても、合意された割当システムに則り配分する必要があるという事実である。異なる地位の選挙が進むにつれ、たとえ出身国政府の指名を受けた候補者も、一部のものは被選挙権を失う可能性がある、例えば、出身地域に割り当てられた分が既に満たされている場合などである。地域に割り当てられた数に達していない場合、当該地域は、その場で、即座に、適正な資格があり該当する特定の地位に関連する専門知識を持つ候補者を見出す必要がある。各候補者は、メンバー1名につき1票の秘密投票で行われる有効投票数の単純過半数で選ばれる。第1回の投票で過半数に達しなかった場合、上位2名の候補者による決選投票が行われる。

パネルが従うことになる(議長の)影響力を暗示してか、IPCC議長の席は熱のこもった選挙戦となった。非常に遅く候補指名が発表されたOgunlade Davidsonを除き、IPCCで最高位の資格を有し、経験を有する6名の候補者が指名され、全ての候補者が集中キャンペーンを行った。秘密投票であること、優れた候補者が多数いたことから、勝利の可能性を予測するのは容易ではなく、さらに欧州の候補者が3名、米国の候補者が1名であった事実から、先進国間で票が割れる可能性も伝えられていた。韓国のHoesung Leeの当選は、多くのものにとり驚きと受け止められた。Lee氏は母国から膨大な支援支持を受けており、これは気候変動分野での一部のアジア諸国の力の高まり、リーダーシップをとりたいとの希望の高まりの証拠を示すものである。それほど明確でないのは、途上国が票の大多数を占めるこの選挙で同氏が勝利した最大の要因は何かということである。

事実、新しい議長が対応すべき重要問題の一つは、途上国出身科学者の広範かつ意味のある参加から、評価報告書の情報対象範囲を途上国世界、特に一部のアフリカ地域に拡大することまで、IPCCの作業における途上国の更なる参画を求める持続的な要請に対応することである。評価報告書の分量が多くなり、その範囲が拡大するにつれ、このような要請の声は大きくなり、今会合までの、及び今会合中に配布されたキャンペーン資料、さらには10月6日(火)午前中、IPCC-42の傍らで行われた候補者フォーラムの両方においても、繰り返し述べられた。しかしこのためには、IPCCの有意義なリーダーシップが求められているだけではなく、途上国出身の科学者をこのプロセスに誘導するため、途上国政府の更なる参画が求められる。

パネル及びその議長は、コミュニケーション及びアウトリーチ活動改善という別な要請にも留意する必要がある。IPCCの異常なまでの複雑さは、世界の大半のものにとり理解しがたいものだが、パネル内部の作業も、多くのものにとり謎のままである。例えば、選挙は閉ざされた扉の向こうで行われ、ソーシャルメディアも通常のメディアも報道管制を受けることから、煙突から白煙が立ち上るのを待つバチカンの法王の選挙と一部似通い、中で何が行われているか知るよしもない。それでも選挙が最高の透明性を持ち、だれもが参加できるという開放性をもって行われているのは事実である。パネルの特異な構造及び手続きに対する一般の理解を進めるなら、その信頼性を高めることが可能である。

参画性及び開放性は、新しい議長団が対応していかなければならない課題である。気候変動の科学において、新しい議長団に問われる重要な質問は何かというと、AR5で課されたものと異なってくるのかであり、例えば「既知の未知」(我々は知識がないが、おそらく恐れる必要があると判明している事柄)の明確化、及び効果のフィードバックの可能性など、起因するものが何かという質問を超えたところに踏み込む必要があるかどうかである。加えて、パネルは、そのマンデートの一端として政策関連性が求められており、AR5の指摘するとおり、近未来に脱炭素化を行なわなければならないが、そのような転換を確保するに足るだけの被験技術が不足している世界で、どのような解決策が可能かを議論する必要がある。

このような作業は全て、これまで以上の学際性のある手法を必要としており、さらに協力して作業でき、各人が最も熟知する専門分野及びネットワークを超越する指導力を必要としている。新しい議長団、WGs及びその技術サポートユニットは、このような事柄に応えて欲しいと多くのものが希望した。一部のものが言う通り、参画性の高まり、特に質問事項の枠づけに広範な手法を含めることは、一方ではサイクルの終わりの政策立案者向けサマリーの承認プロセスを困難なものにする可能性があるが、報告書を、広範な聴衆や政策決定者に関連性のあるものにすることが可能となる。さらにパネルは、男女比のバランスでも努力する必要がある。新しいIPCC議長団のメンバーに選ばれた34名のうち女性は8名いたが、31名のメンバーを選出した前回の議長団では5名であった。TFBでは、前回、女性4名であったのに対し、今回は6名の女性が選出され、組織内の男女比は50%となった。今回の会合で選出された議長団は、この点で前回より改善されたことになるが、科学者の世界全般と同様、パネルにはまだ長い道のりが残されている。

最も重要なことは、議長団、特にIPCC議長は、気候変動の最も権威ある情報源として期待されるこの組織を指導していく上で、確実な科学理解力があることを実証しなければならないことである。新しい議長は、全ての地域から選ばれた34名の議長団の一部である副議長及びWG共同議長の強力なチームに頼ることができる。

2か月足らずのうちに、パリで、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP 21)が開催され、必要な努力からすると不適切とみられているとはいえ、全ての国が目標を持つ新しい気候変動の合意が出てくると予想される中、IPCCの課題は見つけるのには事欠かない。海洋、砂漠化、適応と緩和のリンクなど、多様な専門的特別報告書の提案が既に机上に上がっており、今回の会合で議論する時間はなかったが、次回会合など可能な限り早期に迅速な決定を行う必要があるものも含まれる。どれも、UNFCCCプロセスに有用なインプットを提供するほか、実地の意味のある行動を生むことが望まれる。

どれも簡単な作業ではない。必要とされるのは、会合中に想起された初代IPCC議長のBert Bolinの言葉を借りると:「国際科学者社会が信頼できるものとして受け入れ」、「世界では公平性及び社会正義の欠如が蔓延しているとの観点から見た」、「事実に対する洞察力のある検証」である。

今後の会議予定

UNFCCC ADP 4UNFCCCのADP-4は、COP 21におけるパリ合意の交渉文書に関し、更なる進展をつけるため会合する。日付:2015年10月19-23日 場所:ドイツ、ボン 連絡先:UNFCCC事務局 電話:+49-228-815-1000

ファクシミリ:+49-228-815-1999 電子メール:secretariat@unfccc.int wwwhttp://unfccc.int/

アフリカの気候変動と開発に関する第5回会議(CCDAV)アフリカの気候変動と開発(Climate Change and Development in Africa (CCDA))の会議シリーズは、気候及び開発に関係するコミュニティーの主要利害関係者による透明性ある議論を推進し、気候の科学と開発政策を連携できるようにするため企画されたフォーラム、毎年開催される。 場所:ジンバブエ、ビクトリア・フォールズ  連絡先:アフリカ気候政策センター  電話:+251-11-551-7200  ファクシミリ:+251-11-551-0350  電子メール:info@climdev-africa.org  wwwhttp://www.climdev-africa.org/ccda5

2015G20指導者サミット:Group of 20 (G20)議長国のトルコは、G20指導者サミットを開催、G20の代表を迎える予定。今回のG20会議は、開発、気候変動、気候変動のための資金、貿易、成長、雇用など、優先分野で実質的成果を挙げての会議終了を目指す。 日付:2015年11月15-16日 場所:トルコ、Antalya 連絡先:トルコ外務省  電子メール:G20info@mfa.gov.tr  wwwhttps://g20.org/

TGICA 23次回のTGICA会議はケープタウンで開催される予定。 日付:2015年10月26-28日  場所:南アフリカ、ケープタウン  連絡先:IPCC事務局  電話:+41-22-730-8208/54/84  ファクシミリ: +41-22-730-8025/13  電子メール:IPCC-Sec@wmo.int wwwhttp://www.ipcc.ch

NGGIP会議:国家温室効果ガス・インベントリ・プログラム(NGGIP)の第27回会議、IPCC排出要素データベース(EFDB)のための第13回NGGIP編集理事会、及びIPCC EFDBのデータに関する第11回及び第12回のNGGIP専門家会議は、11月の後半に開催される予定。 日付:2015年11月16-20日  場所:日本、葉山  連絡先:IPCC事務局  電話:+41-22-730-8208/54/84  ファクシミリ+41-22-730-8025/13  電子メール:IPCC-Sec@wmo.int wwwhttp://www.ipcc.ch

UNFCCC COP 21COP21及び関連の会議は、パリで開催される。 日付:2015年11月30日-12月11日 場所:フランス、パリ 連絡先:UNFCCC事務局 電話:+49-228-815-1000 ファクシミリ:+49-228-815-1999 電子メール:secretariat@unfccc.int wwwhttp://www.unfccc.int

CCACハイレベル・アセンブリー:短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)のハイレベル・アセンブリーは、CCACの閣僚とCCACの進捗状況を評価するパートナー組織の長の集まりで、CCACの将来作業の方向性に関し、インプットを入れるほか、短寿命気候汚染物質に関係する最新の施策及び科学面の進展について学習する。 日付:2015年12月8日  場所:フランス、パリ  連絡先:CCAC事務局  電話:+33-1-44-37-14-50  ファクシミリ:+33-1-44- 37-14-74  電子メール:ccac_secretariat@unep.org wwwhttp://www.ccacoalition.org/  

IPCC-43IPCC第43回会合は、ケニアのナイロビで開催予定。  日付:2016年4月11-15日  場所:ケニア、ナイロビ  連絡先:IPCC事務局  電話:+41-22-730-8208/54/84  ファクシミリ:+41-22-730-8025/13  電子メール:IPCC-Sec@wmo.int wwwhttp://www.ipcc.ch

他の会議については、次を参照:http://climate-l.iisd.org/

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