Daily report for 5 December 2015
12月5日、土曜日。午前に開催されたADP コンタクトグループでは、ADP 閉幕プレナリーを迎え、結論書を採択し、COPへ合意草案と決定書草案を送った。また、夕方からはCOPが開催され、ADPからの報告が行われた。 COPとCMPの下では終日、非公式協議が続けられた。
ADP
コンタクトグループ: 午前、ADP共同議長 Daniel Reifsnyderは、ADPの結論書草案 (FCCC/ADP/2015/L.6) を紹介し、付属書 Iでワークストリーム 1 及び 2 に関する合意草案 及び 決定書のテキスト、付属書 IIで議長の覚書である「考察ノート(reflection note)」を提示した。また、共同議長は、草案文について橋渡し案を併記した「とりまとめ文書」から修正を入れていないと説明し、「考察ノート(reflection note)」には議論の間に出された意見を盛り込んだことを伝えた。さらに、時間的制約のために意見提出が間に合わなかった場合や「考察ノート」について不正確な点や遺漏がある場合は、12月5日(土)午後1時までに締約国は意見を提出できると伝えた。
締約国はADP プレナリーに結論書草案を送ることで合意した。
閉幕プレナリー: ADPのReifsnyder共同議長がプレナリーを開会した。締約国と共同進行役の激務と努力に感謝しつつ、ADP 共同議長 Reifsnyderは、ADP 議題項目 3 (決定書 1/CP.17の全ての要素の実施)に戻り、締約国の主張の隔たりを埋めるという点で著しい進展があったとし、ADPは今ようやく“最終行程を完走”するCOPへとバトンを渡したのだと述べた。
ADP 共同議長 Reifsnyderが、特に考察ノートについて、12月4日(金)にコンタクトグループで提起された全ての定義を含む、締約国の残りの意見を盛り込むべく改訂されることを改めて保証し、損失・被害の問題を含め“決定事項または取り残しは一切無い”と請け合って、ADPの結論書 (FCCC/ADP/2015/L.6)が採択され、更なる審議のためCOPへと送られた。
COP 21 議長 Laurence Tubianaは、合意済みのADP テキストを土台として交渉が続けられると明言し、 締約国主体で進展させることが重要だと強調した。
南アフリカ、G-77/中国の立場から、ADP テキストを土台として積極的に取り組む意欲を示し、ダーバンの任務として定められた全要素のバランスの取れた公平な取扱いを求めるとともに、 条約の原理原則や条項に則った条約に基づく成果を出すよう求めた。
スイスは、EIGの立場から、コペンハーゲンCOP15と比べて、“我々には今や全ての締約国が一緒に作成した強力な交渉基盤がある”と述べ、解決すべき重要な政治的なポジションを反映させた文書を手にしていることを強調した。
オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、多くのINDCsは “我々が結集させた約束の証”であるとし、 いまの現実に即した差異化を反映させる道筋を探るものだと述べた。
EUは、各国には、全ての締約国に適用可能で全ての締約国の合意を受けた野心的なパリ合意を実現するための責任があることを改めて訴えた。
パリで歴史的合意に至る可能性を示唆しつつ、スーダンは、アフリカン・グループの立場から、同グループのCOP 議長への信認を改めて表明した。
モルディブは、AOSISの立場から、プロセスが締約国の主体性を確保したと述べ、条約の原則を尊重し、脆弱な人々の生活にプラスの効果を及ぼせるような合意を成立させるべきだと強調した。
アンゴラは、LDCsの立場から、“幾つかの政治的な意思決定に加え、草案文に関して残りのやるべき作業” に取り組みたいと述べた。トルコは、 “今回の合意は、どの国も置き去りにされないような包摂的な合意にしなければならない”と強調した。
パナマは、熱帯雨林連合の立場から、REDD+ メカニズムを合意に盛り込むべきだとし、各国首脳が演説の中で熱帯雨林と生物多様性の役割について“強い” 政治的なシグナルを送ったことを想起した。
マレーシアは、LMDCsの立場から、“あらゆる局面、形態において、衡平性とCBDRの諸原則は維持されるべきだ”と強調し、締約国に今日的な現実を評価するため利用可能な最高の社会科学を見つめるよう求めるとともに、市民社会も交渉に参加させるべきだと述べた。
第1週の交渉で新たな箇所を追加するために草案文が再検討されたことを嘆きつつ、サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、COP議長と取り組む構えだと述べ、 “公平な成果を導く公平なプロセス” への期待を示した。
ベネズエラは、米州ボリバル同盟の立場から、“COP閉幕までの最後の一秒まで” 締約国主導、透明性、包摂性といった原則を維持するよう求めた。
グアテマラは、AILACの立場から、これまでに締約国がここまで野心的な成果実現に近づいたことは無かったと述べ、各国の主張を乗り越え、“我々の相対的な関心事を認識した解決策”を出すよう求めた。
マーシャル諸島は、“いま地球規模の危機”にあると改めて強調した上で、“ここでは「各国ごとに決定」という言葉が人気”だが、 パリで各国は“地球が必要なもののために闘うのだ”と述べた。
閉会にあたって、ADP 連絡係のYang Liuは、ADP会合報告書(FCCC/ADP/2015/L.5)を紹介し、締約国によって採択された。
ADP 共同議長 Ahmed Djoghlaf は、“言葉では感情が伝えきれないこともある” と述べ、これまでの締約国の成果に賛辞を送り、締約国が議長に信頼を示してくれたことに感謝を述べた。
UNFCCC 事務局長 Christiana Figueresは、各国がこの“複雑な”任務に全力を尽くしてくれたと謝意を表明しつつ、来週も作業を続ける必要があると述べた。
全ての参加者に感謝を述べつつ、ADP 共同議長 Reifsnyderは午後1時7分、全体会合の閉幕を告げる槌音を鳴らした。
COP プレナリー
ADPの報告:COP 21 議長 Laurent Fabiusが夕刻から議長を務めた。ADPのReifsnyder 及び Djoghlaf両共同議長は、COPに対して、合意と決定書の草案(FCCC/ADP/2015/L.6/Rev.1)及び修正提案(FCCC/ADP/2015/L.6/Rev.1/Add.1)を紹介した。
草案文書で進展を図り、妥協を導くため、COP 21 議長が委員長を務めるオープンエンド型で単一セッティングの“パリ委員会”を含め、COP 21のFabius議長が概要をとりまとめた作業方式について、締約国の合意が得られた。と述べた。 COP 21のFabius議長は、委員会が特に“全てが合意されるまで何も合意は無い” という原則に則り作業を行い、透明性を促進するため、議事内容は会議場のスクリーンに映し出すと述べた。
COP 21議長はさらに閣僚らが進める非公式作業部会について、下記の横断的なテーマについて議論すると概要を伝えた: 支援、進行役はEmmanuel Issoze-Ngondet (ガボン) 及び Jochen Flasbarth (ドイツ); 緩和、透明性 2020年までの資金を含む、資金との関連における差異化、進行役は Izabella Teixeira (ブラジル) 及び Vivian Balakrishnan (シンガポール); 野心、長期目標と定期点検、進行役は今後発表予定; 2020年までの 野心の加速化、進行役は今後発表予定。また、法律と言語の面に関してレビュー・グループが関連問題を検討するため、12月11日(金)までに最終的な成果を出さなければならないと議長が伝えた。
南アフリカは、G-77/中国の立場から、交渉プロセスの明瞭さと予測可能性が重要であると強調し、今も欠落している提案内容を含めた「考察ノート」を更新するよう求めた。
モルディブは、AOSISの立場から、適応や損失・被害などの問題にどのように対応するのか明確にするよう求めた。
ロシアからの要請を受け、COP 21のFabius議長は、ロシア語版の準備が最終段階にあると伝え、全ての言語が尊重されると述べた。
スーダンは、アフリカン・グループの立場から、重要課題が合意から抜け落ちていると指摘したものの、締約国がこうした問題に対処することを明確に示した。 マーシャル諸島は、特にパリ合意に1.5°C気温目標を記すとともに、長期的な気候資金について保証するよう求めた。
オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、ADP テキストが締約国主導で締約国主体になっていると述べた。サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、各国の取組みに関する目標設定について、IPCCが提供しているような“実証済みの科学によって具体化されなければならない”と強調した。
グアテマラは、AILACの立場から、実効性ある合意を実現させるには、“これは我々の原案であり、お互いの意見を聞き入れ、我々のニーズを明確に示すのは我々の能力次第だ”と認識することが必要だと呼びかけた。アンゴラは、LDCsの立場から、 LDCs諸国を除いてレビュー・グループを発足させるというCOP議長団の“公式”が使われたことに失望感を示した。
マレーシアは、LMDCsの立場から、同グループの善意の取組みを強調した上で、 “世界は変化した”というフレーズが繰り返し聞かれることに不安感を示した。中国は、先進国の主導を求め、パリ会議の野心的な成果には、ダーバンの任務の全ての構成要素に対して等しい重みをつけるべきだと強調した。
アゼルバイジャンは、自国の主張を「考察ノート」に盛り込むよう求めた。トルコが何の交渉グループにも属していないことを指摘し、トルコも交渉に関する協議の一グループとして扱ってほしいと述べた。ネパールは、山岳の生態系の脆弱さを強調した。
COP 21のFabius議長は、2013-2015年レビュー、条約と京都議定書に基づくキャパシティビルディング、対応措置の実施による影響という3項目が未解決で残されている他は、SBSTAとSBIが全業務を完了したと伝えた。なお、2013-2015年レビューについては、長期目標に関する非公式作業部会で審議されるとCOP 21議長より伝えられた。また、残りの2項目については、議長が協議を行い、今後の方針を提案すると述べた。
12月6日(日)には、4つの作業部会が始まり、作業方式に関して、閣僚級会合が行われる予定だ。
COP 21 Fabius議長はその後、会合をいったん終了させた。
廊下にて
12月5日、土曜日の会議は、大方の“予想に反して和やかなムード”で始まった。 金曜の緊張感ある意見のやりとりは、有り難くない過去のCOPの亡霊がル・ブルジェに取り憑こうとしているのだと思わせた。これから手続きの議論とお決まりの台詞が飛び交うことを予想しながら会場入りした参加者の多くは、土曜日の会場の雰囲気がガラッと変化したことに驚いていた。透明性欠如が問題となったコペンハーゲンの“亡霊退散”に何とか成功したのだ、とある政府代表は言う。
締約国の作業を集約した新たなADP原案や締約国の意見をまとめた考察ノートと合わせて共同進行役の橋渡し提案を歓迎する締約国もいくつかあった。大半の参加者が期待する程の先進性はなかったものの、数名の参加者は自国の意見が反映されたことに改めて安堵していた。
閣僚が現地入りする第2週目を見据え、閣僚級協議とともに、締約国が合意したパリ委員会を中心とする作業方式が全員参加型の交渉の強力な基盤になることを多くの参加者が願った。とはいえ、小さな政府代表団の交渉官は、最重要課題の交渉の舞台が委員会を離れ、結局は密室交渉になってしまうのではと不安を憶えずにはいられなかった。
注目を集める問題とそうでない問題があると懸念する参加者は少なくない。いま閣僚らの関心事は作業部会のたった4つの課題に集中しているが、自分達にとっての重要問題が“山の底辺”に取り残されていると一部の参加者が心配していた。
それでも閣僚の“やる事リスト”にある課題は、パリ合意での成否を左右する問題か否かという基準で選び抜かれているようだと、あるオブザーバーは指摘する。他にも基本的な重要な問題は沢山あるが、資金、緩和、そして– 差異化– という名の“最古の幽霊”が、第2週目の交渉では間違いなくスポットライトを浴びるだろう。
とはいえ、透明性については、総じて参加者もCOP議長に安心したようであり、合意に基づく作業方式によって亡霊の再登場も食い止められるよう願っていた。
(IGES-GISPRI仮訳)