Curtain raiser
Bonn Climate Change Conference - May 2017
ボン気候変動会議が本日開幕。5月8日-5月18日までの日程で開催される。この会議は、実施に関する補助機関第46回会合 (SBI 46)、科学的・技術的助言に関する補助機関 第46回会合(SBSTA 46)及びパリ協定第1回特別作業部会第3部 (APA 1-3) で構成される。
APA 1-3 では、2018年までに策定予定のパリ協定作業計画の要素に関する作業を行うというAPAに託された業務を再開させる。各国が決定する国別目標(NDCs)、適応報告書、行動と支援の透明性枠組み、グローバルストックテイク、実施推進と遵守促進のメカニズムがこれらの要素となる。また、APA 1-3は、適応基金に関する項目の検討を開始し、今後の諸問題を取り上げる予定だ。
SBI 46は、報告(レポーティング)、クリーン開発メカニズムに関する問題、後発開発途上国、国別適応計画、適応基金第3回レビュー、キャパシティビルディング、対応措置をはじめとする多くの議題をかかえる。パリ協定作業計画との関連では、NDC向け公開登録簿の運用手順・手続や技術メカニズムの定期的アセスメントの範囲と手順等がSBIの議題として審議される予定だ。
SBSTA 46では、ナイロビ作業計画や農業、科学とレビュー、対応措置、条約及び京都議定書に基づく方法論上の問題等を中心とした議論が行われる予定だ。パリ協定との関連では、技術枠組みや第6条(協力的アプローチ)に関する問題、公的介入を通じて供与・動員された資金源に関する会計手順等いくつかの問題がSBSTAで検討される。
UNFCCC 及び 京都議定書のこれまでの経緯
気候変動に対する国際政治の対応は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。UNFCCCは、気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため、大気中の温室効果ガス(GHGs)の濃度安定化を目指して、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効、現在197の締約国を有する。1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国の政府代表は、先進工業国及び市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で「附属書Ⅰ国」と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)に6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、国ごとに異なる個別目標を担うことを約束し、合意が成立した。京都議定書は2005年2月16日に発効し、現在192の締約国を有する。
2005-2009年の長期交渉:カナダ・モントリオールで2005年に開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP 1)では議定書3.9条に則り京都議定書の下で附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することをその役割として定めた。
2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP 13及び CMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップの合意に至った。COP 13は「バリ行動計画」(BAP)を採択するとともに、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会」(AWG-LCA)を設立し、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割付けた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す交渉期限については、2009年のコペンハーゲン会議までと定められた。
コペンハーゲン:2009年12月の国連気候変動会議は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。世間の耳目を集めた同会議は透明性の問題やプロセスをめぐる論争が目立った。長丁場の議論の末、各国の政府代表は「コペンハーゲン・アコード」に「留意する(take note)」ことで合意し、2010年のCOP 16及びCMP 6まで各交渉グループの期限を延長することで合意した。2010年には140カ国を超える締約国がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が緩和に関する数値目標または行動に関する情報を提出した。
カンクン:メキシコ・カンクンで開催された2010年12月の国連気候変動会議で「カンクン合意」が採択され、2013年-2015年のレビュー期間に世界の長期目標の妥当性について検討することでも合意した。また、カンクン合意によって、緑の気候基金 (GCF)やカンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズム(技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)を含む)等いくつかの新たな制度やプロセスが創設された。
ダーバン:南アフリカ・ダーバンで2011年11月28日-12月11日、国連気候変動会議が開催された。ダーバン会議では「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会」(ADP)の発足について合意し、「条約の下で全ての締約国に適用可能な議定書・法的文書・もしくは法的効力を有する合意成果の形成」をその目的とし、2020年の発効を目指し、2015年中にADPの交渉を完了させることが定められた。さらに、2℃目標との関連で、2020年までの野心ギャップを埋める行動を模索するという役割もADPに課された。
ドーハ: カタール・ドーハで2012年11月26日-12月8日に開催された国連気候変動会議は、その成果として「ドーハ気候ゲートウェイ」と称する決定書のパッケージをまとめた。この一連の決定書には京都議定書の第二約束期間(2013-2020年)を定めるための議定書の改正事項やAWG-KPやAWG-LCAの作業完了、BAPの交渉終了についての合意も盛り込まれた。
ワルシャワ: 2013年11月11日-23日、国連気候変動会議はポーランド・ワルシャワで開催され、「各国の約束草案」(INDCs)の作成に向けた国内準備の開始や強化を締約国に要請するADP決定書が採択された。また、気候変動の影響に係る「損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズム(WIM)」や「ワルシャワREDD+枠組み」の設立を定める決定書が採択された。
リマ:2014年12月1-14日、国連気候変動会議はペルー・リマで開催された。COP 20は「気候行動のためのリマ声明 (Lima Call for Climate Action)」を採択。プレ2020年の野心の強化に取り組む一方、2015年合意の交渉原案文の要素やINDCsの提出や合成のプロセス等の細目詰め作業を行い、2015年合意交渉のさらなる進展を図った。さらに、WIMの運用推進や「ジェンダーに関するリマ作業計画」の策定を目的とする計19件の決定書が採択され、「教育や啓発に関するリマ閣僚宣言」が採択された。
パリ: 2015年11月29日から12月13日にかけてフランス・パリで開催されたパリ気候変動会議は、気候変動に関するパリ協定の採択という成果を上げた。パリ協定は、各締約国が達成を目指すNDCsを継続的に報告することを定めた。2025年までという期間をNDCに盛り込んだ締約国に対しては2020年までに新たなNDCの通達、2030年までという期間を盛り込んだ締約国に対しては貢献に関する連絡や更新を行うことが要請された。また、2023年以降、グローバルストックテイクの中で緩和、適応、実施手段に関する集団的な取り組みの進捗を5年毎に点検することになった。
マラケシュ:モロッコ・マラケシュで2016年11月7日-18日に開催された国連気候変動会議では、パリ協定第1回締約国会合(CMA1)も開催された。同会議では、パリ協定に基づく作業計画に関連するいくつかの決定書を含む35件の決定書が採択され、2018年までの作業完了や適応基金がパリ協定向けに機能すること、キャパシティビルディングに関するパリ委員会の委託条件、協定9条5項(先進国の隔年資金報告書)に則り提出された情報を特定するプロセスの開始等について合意が成立した。また、COP 22では、WIMの5化石燃料作業計画の承認や技術メカニズムの強化、ジェンダーに関するリマ作業計画の継続・強化等、条約の実施に関連する決定書が採択された。
直近の関連会合ハイライト
IPCC-45:メキシコ・グアダラハラで2017年3月28-31日に開催されたIPCC第45回総会では「気候変動と土地:気候変動、砂漠化、土地劣化、持続可能な土地管理、食料安全保障、陸上生態系GHGフラックスに関するIPCC特別報告書」や「変動する気候の下での海洋及び雪氷圏に関するIPCC特別報告書」、IPCC信託基金プログラム及び予算に関する決定書が採択された。また、パネルは、IPCCの資金安定化に関する特別タスクグループの設立についても決定し、その委託条件でも合意した。
行動と支援に向けた透明性枠組に関するインターセッションAPAワークショップ:2017年3月16-18日にドイツ・ボン開催された本ワークショップでは、IPCCの合意を受けたグッドプラクティスの方法論を用いて作成され、CMAでの合意を受けた「排出源からの人為的排出量及び吸収源からの除去量に関する国別インベントリ報告書」に関する議論が行われた。また、NDCの適応に関する局面の実現に向けた進捗管理に関する情報や損失被害に係る気候変動の影響と適応、ならびに途上国締約国向けとして供与・要請・受取が行われた資金・技術移転・キャパシティビルディングの支援等に関する議論も行われた。その他、技術専門家レビューや進捗に関する促進的な多国間審議等の問題についての検討も行われた。
決定書1/CP.21 緩和セクションに関する追加指針についてのAPA会期前ラウンドテーブル:本ラウンドテーブルはドイツ・ボンで2017年5月6日に開催され、NDCsの特徴に関する追加指針やNDCの明瞭性・透明性・理解を推進する情報に関する追加指針ならびにNDCsの会計処理に関する指針について議論が行われた。
適応報告書に関するAPA会期前ワークショップ: 2017年5月7日にドイツ・ボンで開催され本ワークショップでは、目的、要素、リンケージ、手段、柔軟性等、マラケシュで特定された全テーマに関する議論がプレナリー形式で行われた。午後からの分科会では各テーマについて突っ込んだ議論が行われた。