Summary report, 1 October 2018
48th Session of the Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC-48)
気候変動に関する政府間パネルの第48回会合(IPCC-48)は、2018年10月1-6日、韓国のIncheonで開催され、130か国以上から500名を超える参加者が集まった。
10月6日土曜日、パネルは、1.5℃の地球温暖化に関する特別報告書(SR15)の政策決定者向けサマリー(SPM)ならびにその基礎となる評価報告書本文を採択した。この週一杯、最終日は夜を徹して、作業部会(WGs)のI、II、IIIの第1回合同会合が開催され、SPMの行ごとの議論を行い、合意達成を図った。
IPCC-48は、10月1日月曜日の朝に開会し、韓国のMoon Jae-in大統領のビデオメッセージを含める開会式典が開催された。その後、IPCC-48は、合同作業部会会合の審議を開始すべく中断、金曜日に短時間会合し、追加の議題項目について議論した。土曜日午後、IPCC-48は、SR15 SPMの採択に向け再度会合した。
合同のWG会合は、三つのIPCC WGsが協力し、学際的な形で一つの報告書を作成することを実証する初めての機会となった。SPMは、プレナリー形式で査読されたが、一部の小項目やパラグラフ、図及び定義づけは、非公式な集まり(ハドル:huddle)、あるいは必要に応じ設置されるコンタクトグループで議論された。
SPMは、4つのセクションで構成される:
- 1.5°Cの地球温暖化の理解;
- 予想される気候変動、影響可能性、これに伴うリスク;
- 1.5℃の地球温暖化と合致する排出経路及びシステムの転換;
- 持続可能な開発及び貧困撲滅努力の観点からみた世界的な対応の強化。
- 当該報告書は、2015年に、パリ協定を採択した決定書において、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国から出された招請に応じて作成された。
IPCC-48は、下記に関する決定書も採択した:
- IPCC奨学金プログラムの決定書、このプログラムの資金に関し決議する評議理事会に対し、新しく評議員4名を任命することで合意する;
- 資金安定性に関する特別タスクグループ(ATG-Finance)の決定書、IPCCの資金安定性に対応するため外部専門家の採用を検討することで合意する。
さらにパネルは、次に関する報告書に留意した:
- グローバルストックテイクの観点からみたIPCCの将来業務の構成に関するタスクグループ(TG-FWLGST)の進捗状況;
- 国別温暖化ガス・インベントリのガイドライン2006年版に対する2019年精緻化(2019年精緻化)の進捗状況;
- 気候変動と都市に関する国際会議;
- 地域別の気候情報評価に関する専門家会議;
- 短寿命気候強制力に関する専門家会議;
- 国別温室効果ガス・インベントリに関するタスクフォース(TFI)。
IPCC-49は、2019年5月、日本の京都で開催の予定、特に2006年版ガイドラインの2019年精緻化版を承認する。
IPCCの簡略史
IPCCは、1988年、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により設立された組織で、人為的な気候変動、その影響可能性、適応及び緩和のオプションに関する科学的、技術的、社会経済的情報を、総合的、客観的、開放的、透明性のある形で評価する。IPCCは、政府間の科学組織であり195の加盟国を有する。気候に関する新しい研究を行なう、あるいはデータをモニタリングすることはなく、公表されてピアレビューを受けた科学文献及び技術文献に基づき、気候変動に関する知識の状況を評価する。IPCCの報告書は、政策関連性を意図するが、政策規範性は意図しない。
IPCCは、三つの作業部会(WGs)を有する:
- 作業部会I (WG I)は、気候変動の自然科学的な根拠を扱う;
- 作業部会II (WG II)は、気候変動の影響、適応、脆弱性を扱う;
- 作業部会III (WG III)は、温室効果ガス(GHG)排出量を削減し、気候変動を緩和するためのオプションを扱う。
各WGは2名の共同議長及び7名の副議長を擁する、ただしWG IIは例外的に8名の副議長を擁する。共同議長は、WGsが技術支援ユニット(TSUs)の支援を受け、パネルから付与されたマンデートを達成するよう指導する。
さらにIPCCは、IPCC国別GHGインベントリ・プログラムを監督するTFIも有し、同じくTSUの支援を受ける。このプログラムは、国別のGHG排出量及び除去量を計算し、報告するソフトウェアおよび国際的に合意された手法論を作成し、推敲し、UNFCCC締約国による手法論の利用奨励を目指す。
パネルは、IPCC評価報告書の作成を含める評価報告サイクルの全期間を担当する議長団を選出する。この議長団は、IPCCの作業を計画、協調、モニタリングし、全地域を代表する気候変動専門家で構成される。現在、議長団は、IPCC議長及び副議長、WG共同議長及び副議長、並びにTFI共同議長を含める34名のメンバーで構成される。
2011年、IPCCは、会合期間外の作業を支援し、WGs間の協調を図るため、執行委員会を設置した。IPCC事務局は、スイスのジュネーブにあり、WMOがホストを務める。
IPCC制作物
IPCCは、その発足以来、国際社会に対して気候変動に関する科学情報を提供するための一連の包括的評価報告書、特別報告書(SRs)、並びにテクニカル・ペーパーを作成してきた。
IPCCは、1990年、1995年、2001年、2007年、2014年のそれぞれで、合計5件の評価報告書を完成させた。第6次評価報告書(AR6)は、2022年の完成が見込まれる。評価報告書は、各WGで一冊の三部構成である。各WGの提供する報告書は、SPM、テクニカル・サマリー、及びその基礎となる評価報告書本体で構成される。各報告書は、専門家及び各国政府による徹底した集約的な査読プロセスを経ており、これには次の三段階が含まれる:一段目は専門家による査読、二段目は専門家と政府による査読、三段目は政府による査読。
その後、各SPMは、担当のWGによる行ごとの承認を受ける。統合報告書(SYR)は、評価報告書全体を対象に作成され、三つのWG報告書の中で最も関連性の高い部分、及びその評価報告サイクルにおける特別報告書(SRs)の関連部分を統合する。パネルは、その後、SYRのSPMに関し、行ごとの承認を行う。
IPCCは、気候変動に関係する問題について、一連のSRs及びテクニカル・ペーパーを作成、これには次のものが含まれる:
- 土地利用、土地利用変化、森林 (2000年);
- 二酸化炭素(CO2)回収貯留 (2005年);
- 気候変動と水 (2008年);
- 再生可能エネルギー資源及び気候変動の緩和 (2011年);
- 気候変動への適応を推進するための極端な現象及び災害リスクの管理 (2011年)。
第6次評価報告書サイクルにおける特別報告書には下記を含める:
- 1.5℃の地球温暖化;
- 変化する気候における海洋及び氷雪圏(SROCC);
- 気候変動と土地(SRCCL)。
加えて、IPCCは、手法論報告書を作成、各国のGHGs報告作成を助けるためのガイドラインを提供する。グッドプラクティス・ガイダンス報告書は、2000年及び2003年にパネルの承認を得た。国別GHGインベントリに関するIPCCガイドラインの最新版は、2006年に承認され、第6次評価報告書サイクルには、これらのガイドラインを精緻化する手法論報告書(2019年精緻化版)が含まれる。加えてIPCCは、2013年に、2006年IPCCガイダンスの補足書(湿地補足書)を採択したほか、京都議定書から派生する補足手法書改訂版及びグッドプラクティス・ガイダンス(KP補足書)を採択した。
2007年、IPCCは、「人間が作り出した気候変動に関しさらなる知識の構築、普及を図り、そのような変化に対抗するため、必要な基礎を敷く(to build up and disseminate greater knowledge about manmade climate change, and to lay the foundations needed to counteract such change)」努力をしたとして、米国のAl Gore元副大統領と共に、ノーベル平和賞を授与された。
第六次評価報告サイクル
IPCC-41からIPCC-43:IPCC-41 (2015年2月24-27日、ケニア、ナイロビ)では、IPCCの将来業務を議論し;IPCC及びTFI議長団の人数、組織構造、構成を決議し;第六次評価報告サイクルに関する決議を採択した。IPCC-42 (2015年10月5-8日、クロアチア、ドブロブニク)では、第六次評価報告サイクルの議長団メンバーを選出した。IPCC-43 (2016年4月11-13日、ケニア、ナイロビ)では、第六次評価報告サイクルにおいて三件のSRs及び2019年精緻化版の作成で合意した。SR15は、第21回締約国会議(COP 21)がIPCCに対し、産業革命前の水準より1.5℃の地球温暖化の影響に関するSRを2018年に作成するよう招請したのに応じて作成された。IPCCは、2016年の第43回会合でこの招請を受け入れている。
さらにパネルは、都市に関するSRを、第七次評価報告サイクルの一環として作成することでも合意した。
IPCC-44:この会合 (2016年10月17-21日、タイ、バンコク)において、パネルは、SR15の概要及び2019年精緻化版の概要を採択した。さらにIPCCは、特に次に関係する決定書を採択した:緩和、持続可能性、気候安定化シナリオに関する専門家会議;コミュニケーション及びAR 6スコーピング・プロセス;気候変動及び都市に関する会議。
IPCC-45:この会合 (2017年3月28-31日、メキシコ、グアダラハラ)では、SRCCL及びSROCCの概要が承認され、特に次の項目を議論した:第六次評価報告サイクルの戦略計画スケジュール;短寿命気候強制力(SLCFs)の考察を提案;IPCCの資金調達オプション、これはATG-Financeの設置決定に結び付いた。
IPCC-46:この会合 (2017年9月6-10日、カナダ、モントリオール)において、パネルは特に次を行った:AR6に対する三つのWG報告書の各章について、概要を承認した。さらにパネルは、ATG-Financeの進捗状況に関する最新情報を聞き、IPCCの多様な資金調達オプションについて議論し、ATGのマンデートをIPCC-47まで延長することで合意した。
IPCC都市と気候変動の科学会議(CitiesIPCC Conference):この会議(2018年3月5-7日、カナダ、エドモントン)には、科学、政策、実務分野から約750名が参加、各都市による、現在及び将来の排出源の特定を推進し、排出削減及び回復力戦略を探る道筋を示した。この会議では、気候変動とそれが都市に与える影響に関する理解を深め、気候のチャレンジに対し地方当局がどれだけ重要な役割を果たせるかという研究課題が策定された。
IPCC-47:この会合 (2018年3月13-16日、フランス、パリ)で、パネルは、特に次の項目に関し合意した:
- ATG-Financeのマンデート延長;
- ジェンダーに関するタスクグループの設置;
- パリ協定の下でのグローバルストックテイクの観点から見た、IPCCの将来の業務構成に関するタスクグループの委託条件;
- IPCC奨学金プログラムを拡大し、各章の科学者への資金供与を含める;
- IPCCの活動に対する途上国の参加強化。
パネルは、AR6のWG貢献文書(報告書本文)に関する調整役筆頭執筆者、筆頭執筆者、査読編集者の選任状況、並びに特別報告書及び2019年精緻化版の作成での進捗状況に関するWG議長団の報告について、WG共同議長がプレゼンテーションを行った。この会議に先立ち、フランス政府主催のIPCC発足30周年祝典が開催された。
IPCC-48及びWGs I、II、IIIの合同会合の報告
10月1日月曜日、IPCC事務局長のAbdalah Mokssitは、本会合の開会を宣言した。IPCC議長のHoesung Leeは、「IPCCの歴史において最も重要な会議の一つ」への参加を歓迎し、今回初めて、パネルの三つのWGsによる合同会議が開催されることに注目、この会議ではSR15のSPMを行ごとに検討すると述べた。同議長は、SR15 に関するIPCCの作業の概要を説明し、この報告書の最終草案には6000件の参考資料が含まれるとし、報告書の全ての草案に対し、のべ42000件ほどのコメントを検討したと述べた。同議長は、各国政府に対し、IPCCの科学的十全性を堅持すると共に、強力で確固とした明解なSPMを確保するよう求めた。同議長は、IPCCの資金状況は改善したと指摘、IPCCは報告書に200万米ドルを費やし、多様な国々が追加コストを負担したと報告した。
韓国のMoon Jae-in大統領は、ビデオの中で、特に途上国及び脆弱な人口が極端な異常気象現象の脅威を受けていると指摘した。同大統領は、IPCCの科学的な作業は環境の正義及び民主主義を守る世界の行動の強化に貢献しているとの認識を示した。さらに同大統領は、国内排出量取引プログラム、及び脆弱な途上国への支援など、韓国が行っている努力を強調した。
WMOの次席専務理事のElena Manaenkovaは、IPCCの資金面の改善を賞し、SRsに対する資金援助、及び各国国内の気象機関の貢献に対し、寄付を確保するよう求めるWMOのIPCC加盟国に対する呼びかけを再度述べた。同次席専務理事は、国連総会において、気候の動向に関し「地球上で最高の科学者の声に耳を傾ける」よう国連事務総長のAntónio Guterresが呼びかけたと強調し、IPCC及びWMOの影響力が高まっていると指摘した。
UNDPの首席科学者のJian Liuは、気候行動に伴う重要な共同便益に注目、特に屋内大気汚染など、日本の国内総生産(GDP)を上回る大きな損害をもたらす汚染、さらには年間1万種を超える生物種の喪失といった、喫緊の課題を指摘した。
UNFCCC適応計画のディレクターであるYoussef Nassefは、科学には、パリ協定の実施など、気候政策立案者に緊急に情報を提供するニーズがあると指摘した。同氏は、SR15作成というUNFCCCの招請に速やかに対応したとして、IPCCへの感謝の意を表し、このSRは2018年12月にポーランドのカトヴィチェで開催されるUNFCCC COP 24でのタラノア・ダイアログ及びスペシャルイベントに直接フィードインされると述べた。同氏は、UNFCCCの透明性枠組及びグローバルストックテイクなど、UNFCCCの他のメカニズムとこの報告書との関連性について説明した。
韓国のKim Eun-kyung環境大臣は、SR15はパリ協定の長期目標達成に向けた「飛び石(stepping stone)」となると指摘した。同大臣は、韓国政府が気候変動への対応で採用している「飛び石」の中でも、特に次の項目に焦点を当てた:2030年のGHG削減目標;脆弱な人口を守るための先駆的適応措置;世界緑の成長研究所及び緑の気候基金などを通す、途上国援助。
韓国気象庁(KMA)のKim Jong-seok長官は、2018年の韓国での極端な天候現象に注目するよう求め、KMAはIPCCの韓国窓口として貢献し続けているとし、IPCC-48に対し、ポスト2020年の気候ガバナンスに貢献できる措置の実施を促した。
Incheon市のPark Nam-chun市長は、国際機関や国際会議のホスト都市として、あるいはエコフレンドリーな都市として、気候変動問題に取り組む世界的なハブという、この会議を主催する同市の立場を指摘した。
IPCCは、暫定議題書(IPCC-XLVIII/Doc.1)及びIPCC-47報告書案 (IPCC-XLVIII/Doc.2)を、改定することなく採択した。
合同WG会合によるSR15 SPMの承認
WGs I、II、IIIの第1回合同会合は、月曜日の午後に開会、土曜日午後まで連続して会合し、SR15のSPMを承認すべく、行ごとの議論を行った。合同会合では、会議前日に提供されたSPMの最終草案を検討した、この草案は6月4日付の最終政府案(FGD)に各国政府から受理した3600件以上の政府コメントを取り入れて改定した。参加者が二つの草案を比較できるよう、両者を併記した比較文書、及び変更箇所追跡バージョンも作成された。この一週間を通し、多数の問題が非公式なハドル(huddles)で議論され、あるいはコンタクトグループに送られた。
各小項目(Subsection)に関し、WG共同議長は、最初に冒頭ステートメントを提示、続いてその小項目内のパラグラフに関し、小項目全体で一貫性を確保して合意に達した後、再度、冒頭ステートメントに戻り議論した。
WGs I、II、IIIの合同会合の開会
月曜日午後、WG I共同議長のValérie Masson-Delmotteは、合同会合を開会、SR15は三つのWGsが初めて統合的に協力しあう機会であったと指摘した。同共同議長は、報告書は91名の執筆者、133名の気候執筆者の努力の結晶であると指摘し、SPMのFGDには3600件を超えるコメントを受け取ったと強調した。
サウジアラビアは、タンザニア、エジプト、パキスタン、インド、マリ、ボリビアの支持を得て、最終草案がこの会議に十分先立つ形で公表されなかったとして、懸念を表明し、自国の代表団はこのFGD査読に時間も努力も費やしたと指摘した。
参加者は、変更点追跡バージョンをスクリーンに映し出し、執筆者から修正点の説明を受け、最終草案の真っ新なバージョンに新しいコメントを取り入れることで合意した。
サウジアラビアは、米国、中国、ベルギーの支持を得て、1.5℃に関する知識の現状をまとめ、既存の知識面でのギャップに注目する一般的なステートメントを、SPMの中に入れるよう提案した。同代表はさらに、SPM草案でのギャップ及び短所を指摘、特に次の点を指摘した:
- 合意された報告書の概要からの乖離;
- 適応に関する情報不足;
- 1.5℃地球温暖化を達成するコストに関する情報不足;
- 実施手段への言及欠如。
序文
WG合同会合は、月曜日の午後、SPMの序文について議論した。サウジアラビアは、報告書作成上の課題となった知識面、文献上のギャップを説明するパラグラフの導入を提案した。Masson-Delmotteは、ギャップに関するいかなる説明も、それぞれの内容に特有のものであると指摘、報告書の多様なセクションは既に確実性レベルに言及し、知識のギャップに関連すると指摘した。
欧州連合(EU)は、ルクセンブルグの支持を得て、IPCC報告書の序文の中にそのような一般的な資格基準などを含めることは通常ではないと論じ、題目についての文献がないなら、評価はできないと指摘した。セントルシアは、セントキッツ・ネイヴィスの支持を得て、そのようなパラグラフの挿入に異議を唱え、このSRのために6000件もの研究論文を調査したことを想起した。
WG III共同議長のJim Skeaは、妥協案として、報告書の章で根拠となった部分に関係する知識のギャップを各セクションにおいて特定するとの文章の追加を提案した。多数の国がこれを支持した。この追加部分は、多少の改定を経て、受け入れられた。
最終的なSPMの文章:この序文ではSR15作成の背景を紹介、UNFCCC締約国からの2015年の下記のような招請を受け入れるとして2016年のIPCCの決定書を指摘した:「気候変動の脅威や持続可能な開発及び貧困撲滅の努力への世界的な対応を強化するとの観点から、産業革命前の水準比で1.5℃の地球温暖化の影響、並びに関係するGHG排出経路に関し(on the impacts of global warming of 1.5°C above pre-industrial levels and related GHG emission pathways, in the context of strengthening the global response to the threat of climate change, sustainable development and efforts to eradicate poverty)」報告書を2018年に作成する。最終的な文章は、SPMがSRの主要な結論を示すと記述する。
A. 1.5℃の地球温暖化を理解する
月曜日、参加者は、このセクションに関する議論を開始し、ある執筆者は、SR15の最初のセクションの要素、枠づけ及び内容に関する要素と、その後の章の要素とを組み合わせていると説明した。この執筆者は、このセクションはFGDと比較し修正されており、修正部分には緩和及び適応のバランス改善、実施可能性の枠づけ、及び可能にする状況の明確な叙述が含まれると述べた。
A1:このセクションは、地球温暖化の観測レベル及び予想レベルに焦点を当て、月曜日午後に第一回の審議を行った。冒頭ステートメントに関し、ベルギーは、ノルウェーの支持を得て、地球温暖化の定義づけを含めるよう提案、冒頭ステートメントの地球温暖化は最近の温暖化の進み具合が継続すると想定した場合の2017年を中心とする30年間の平均値を指していることを明示する脚注の挿入で合意した。サウジアラビアは、この冒頭ステートメントの下となっているサイエンスの信頼性に疑義をとなえ、執筆者たちは、1000件を超える研究論文がこの文章を支持していると報告した。英国は、エストニアの支持を得て、産業革命前の時点から2017年までの関連ある日付がどの範囲か、明らかにするよう求め、これを反映させる文章が挿入された。これらの変更を加えた上で、このパラグラフと脚注は合意された。
A.1.1:このパラグラフは、観測された地球温暖化を産業革命前と比較するほか、現在の上昇速度を議論する。サウジアラビアは、ブラジル、エジプト、インドの支持を得て、地球平均表面温度(global mean surface temperature (GMST))は産業革命前からの長期的な傾向の結果であると指摘する表現の挿入を要請したが、参加者は、この要請に沿う多様な表現を提案した。スイス及び他の諸国は、AR5及びSR15の下となった評価報告書で用いられている関連の表現の引用を提案した。非公式協議の後、参加者は、「産業革命前以後の長期的な温暖化傾向を反映する(reflecting the long-term warming trend since pre-industrial times)」という文章を前に付けることで合意した。
現在の人為的な地球温暖化の上昇速度に関する文章で、参加者は、引用された人為的な地球温暖化は推計値であると明記するとの、WG II副議長のSergey Semenovの提案を受け入れた。執筆者たちは、フランス、アイルランド、ノルウェー、米国の提案を受け、地球温暖化の速度に関する文章を、新しい文章の中に移し、この速度は過去の排出量及び現在の排出量の結果であると明記するよう提案した。その後、このパラグラフで合意した。
A.1.2:このパラグラフは、多数の陸地域及び季節的な温暖化の程度上昇を議論する。温暖化レベルの変動に関する文章における季節への言及について、ケニアとニカラグアは、多数の国が季節を経験しないと指摘した。WG I副議長のPanmao Zhaiは、年平均気温からの季節的な変動を記載する表現とするよう提案した。
北極における温暖化の程度上昇に関する文章で、ウクライナは、南極のホットスポットも含めるべく、「多数の極域(many polar regions)」という表現を入れるよう提案した。
スイスは、エクアドルと共に、山岳地帯の方が低地よりも大きな地球温暖化を経験していると指摘し、温暖化は一般に陸地の方が海洋よりも大きいとの文章の背景にある数値の記載を要請した。
非公式協議の後、執筆者たちは、多数の陸地域で経験している地球の「年間(annual)」平均を上回る温暖化への言及追加を提案したが、同時に次のように述べた:
- 特定の陸地域の数値は、均質性に欠けており記載できない;
- 北極への言及を含めることには、経験上、広範な支持があるが、南極はそうではない;
- 山岳地帯及びそのコミュニティの評価は、SROCCにおいて考察される。
その後、参加者は、執筆者の提案するパラグラフを承認した。
A1.3:火曜日の午後に第1回の審議が行われたこのパラグラフは、0.5°Cの温暖化に対応する一部の極端な天候現象の強度及び頻度の傾向に焦点を当てる。WG I共同議長のMasson-Delmotteは、このパラグラフは予想される変化、影響、リスクに関するセクションBから、その前のセクションAに移されたもので、確信度を含めるべく改定されたほか、過去の温暖化のどのような観測が追加の温暖化の影響を示唆するか示すかについての明確なリンクを含めるよう改定されたと説明した。
サウジアラビアは、このパラグラフにおいて、最近の数十年間の温暖化効果に言及することに反対し、SR15のマンデートは、産業革命前と比較した1.5℃温暖化に焦点を当てることだと指摘した。タンザニア、マリ、ザンビア、ニカラグアは、地球規模の気候変動という現実を反映させるべく、干ばつに言及するよう求めたが、ある執筆者は、0.5℃のさらなる温暖化に限定した文献がないことから、この報告帆では干ばつでの変化を評価していないと説明した。
水曜日の朝、非公式協議から得られた新しい表現が提示されたが、この表現では、0.5℃の温暖化追加による影響可能性への言及は保持し、その一方で極端な天候現象の具体例は省略された。ドイツは、この提案を支持したが、サウジアラビアは、パラグラフ全体の削除を希望し、主に一つの情報源に依存していると指摘した。
水曜日午後、サウジアラビアは、さらなる温暖化の影響への言及を削除するなら、新しい妥協的な表現を支持する可能性があると述べた。ドイツ、セントルシア、グレナダ、マーシャル諸島、フランス、アンゴラ、その他は、この文章がSPMの別な場所に記載される保証がない中での削除に異議を唱えた。参加者は、地域的な気候特性における確固とした違いに関するセクションB1.1にこの表現を含めるとし、このパラグラフに同意した。
A.2:水曜日の朝、WG I議長のMasson-Delmotteは、将来の温暖化に対する過去の排出量の影響に関する小項目の議論を開始した。当初のコメント発表後、この小項目の三つのパラグラフを議論すべくコンタクトグループの会合が行われた。
過去の排出量のみが地球温暖化の原因である可能性は低いとするステートメントに関し、スウェーデンは、韓国の支持を得て、この文章は1.5℃及びそれ以上の温暖化は主に現在の排出量と将来の排出量に依存するとの冒頭ステートメントの意図が適切に反映されていないと警告した。
ブラジルは、インド及びエクアドルと共に、過去の排出量は現在の温暖化に責任があるが、過去の排出量だけでは、GMSTを上昇させる可能性は低いとの認識を示すよう求めたが、サウジアラビアは反対した。
コンタクトグループでの協議の後、改定された冒頭のステートメントが木曜日に承認された、この改定されたステートメントでは産業革命前から現在までの人為的排出量を原因とする温暖化は継続し、気候系に更なる長期的な変化をもたらすが、これらの排出量だけが1.5℃の地球温暖化の原因である可能性は低いと記載する。
A2.1:このパラグラフは、現在までの排出量を原因として予想される地球温暖化効果を論じているが、もともとは人為的排出量を直ちに排除した場合に予想される効果に注目していた。サウジアラビアは、即時排除のシナリオは実用的でないと強調し、SPMの下となった報告書からこの効果に関するステートメントを追加するよう要請した。
フランスは、オーストラリア、マリ、中国、スペイン、セントキッツ・ネーヴィス、フィンランド、グレナダの支持を得て、このシナリオを「思考実験(thought experiment)」と特徴づけるよう提案した。
ある執筆者は、このパラグラフは過去の排出量のみで1.5℃の気温上昇に達するのは不可避なものではなく、このため、将来の温暖化を1.5℃の気温上昇で抑えることには実現の潜在的可能性があると伝えることが目的だと指摘した。
コンタクトグループでの議論の後、ある執筆者は、このステートメントは仮想のシナリオであり、短期的には、このシナリオにおいて、「過去の排出量を原因とする1℃の地球温暖化に追加的(in addition to the 1°C caused by past emissions)」な地球温暖化が0.5℃以下であるとの確信度は高く、一世紀の間では中程度の確信度であると指摘する表現の追加を提案した。
このパラグラフは、多少の編集を加え、シナリオの仮説特性を示す資格基準は伴わない形で、承認された。
A2.2:このパラグラフは、正味ゼロのCO2排出量の達成及び維持、さらには非CO2放射強制力の正味の低下を議論する。ある執筆者は、「非CO2の放射強制力(non-CO2 radiative forcing)」への言及に関するオーストラリアの発言に応え、この表現は地球のエネルギー強制力におけるCO2以外の全てのものの全体的影響であると説明し、地球温暖化を止めるには、世界の人為的な正味排出量をゼロにする必要があると指摘した。この執筆者は、非CO2放射強制力の「正味の(net)」低下(declining non-CO2 radiative forcing)でどうかと提案した。
ドイツは、チリ、カナダ、英国の支持を得て、残余の炭素バジェットの内数に留めるには、正味マイナスのCO2排出量が必要と説明する表現の挿入を要請した。
セントキッツ・ネーヴィスは、アンゴラの支持を得て、海洋酸性化の逆転及び世界の海水面の上昇停止にも、正味マイナスのCO2排出量が求められる可能性があるとの認識を示すよう要請した。
コンタクトグループの議論を経て、このパラグラフは、「正味の(net)」非CO2放射強制力を指すよう修正され、さらに排出量が地球規模であると言及するよう訂正された。水曜日夕方、参加者はこのパラグラフで合意した。
A3:この小項目は自然系及び人類の気候関連リスクに関するもので、プレナリーで提起され、続いて非公式ハドルで議論された。土曜日のプレナリーでは、非公式グループが提示する通りの冒頭ステートメントで合意した。このステートメントは、自然系及び人類の気候関連リスクが温暖化の程度や速度、地理上の位置、開発の程度及び脆弱性、適応と緩和オプションの選択及び実施に依存すると伝えている。
A3.1:このパラグラフは、自然系及び人類の間で既に観測されている地球温暖化の影響を議論する。エジプトは、セントルシア、モルディブ、トリニダードトバゴの支持を得て、自然系への影響を特に強調するよう求めた。土曜日、このパラグラフは上記の提案を入れることなく、合意された。
A3.2:このパラグラフは、将来の気候関連リスクを論じる。長期の不可逆的なリスクに関するステートメントについて、サウジアラビアは、短期的で可逆的な「多数のその他の(many other)」リスクへの言及を支持した。執筆者たちは、SPMの下となる報告書では可逆的なリスクは評価されておらず、このためSPMで言及できないと応えた。参加者は、1.5℃を超える地球温暖化に伴う大きな「集団の(aggregate)」リスクに言及するという米国の提案で合意した。さらなる編集上の変更を行った後、このパラグラフで合意した。
A3.3:リスクへの対応における適応及び緩和に関するこのパラグラフの第1回の審議で、米国は、サウジアラビアの支持を得て、緩和と適応の便益とリスクをバランスよく記載する文章を求めた。土曜日の朝、非公式協議で出てきた文章が、変更されることなく、合意された。
図SPM 1:この図は、CO2の累積排出量及び将来の非CO2放射強制力に関するもので、1.5℃の温暖化で抑えられる機会を明らかにする、さらにこの図は、観測された世界平均気温の変化及び様式化された排出経路を図示しており、火曜日にこの図の第1回の審議が行われた。
ノルウェーは、オーストラリア及びチリの支持を得て、「非CO2放射強制力(non-CO2 radiative forcing)」の定義づけをSPMに入れるよう提案した。米国は、現在の傾向がGMSTの1.5℃上昇に結び付く時期を示すため、特定の日付より範囲を用いるよう求めた。サウジアラビア及び米国は、この図と表題は複雑すぎ「専門用語ばかり(full of jargon)」であると論じた。
コンタクトグループは、多数の変更を行ったが、この中には文章及びグラフの簡素化も含まれた。この図は、水曜日の夜に承認された。
最終のSPMの文章:このセクションの最終文書は次を記載する:現在の地球温暖化及び0.5℃の(追加)温暖化にともなう傾向;現在までの人為的排出量は地球温暖化とどう関わるか;異なる温度シナリオにおける気候関連リスク。
小項目A1は、0.5℃の温暖化に伴う傾向及び現在の地球温暖化を議論し、特に次の点を強調する:
- 人間の活動は、産業革命前より約1.0℃の地球温暖化の原因であったと推計され、可能性の高い範囲は0.8°Cから1.2°Cである;
- 地球温暖化は、現在の速度で上昇を続けるなら、2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性が高い;
- 人為的な地球温暖化は、過去の排出量及び現行の排出量のため、現在、10年間に0.2℃(0.1℃から0.3℃の間の可能性が高い)の割合で上昇していると推計される;
- 多数の陸地域及び季節によっては、地球の年平均値より大きな温暖化が経験されている;
- 一部の極端な気候現象及び天候現象の強度及び頻度の傾向は、0.5℃程度の地球温暖化が起きても、一定の期間、検知されている。
小項目A2は、現在までの人為的排出量が地球温暖化とどう関係しているかを議論し、次の項目を強調する:
- 産業革命前から現在までの期間における人為的排出量を原因とする温暖化は、あと数世紀及び数千年続くとみられ、たとえば海水面の上昇など、気候系へのさらなる長期的な変化及びこれに伴う影響の原因であり続ける、しかしこのような排出量だけで1.5℃の地球温暖化を招く可能性は低い;
- 現在までの人為的排出量は、今後20年、30年の間に0.5℃を超えるさらなる温暖化の原因となる可能性は低く、これは世紀規模でも同様である;
- 正味ゼロの人為的CO2排出量を達成し、これを保持する、さらには正味の非CO2放射強制力を低下させるなら、数十年の時間規模で人為的な地球温暖化を止める。
小項目A3は、現在の気候関連リスク、1.5°Cの温暖化及び2°Cの温暖化における気候関連リスクを議論するもので、下記を強調する:
- 1.5℃の地球温暖化における、自然系及び人類の気候関連リスクは現在のリスクよりも大きいが、2℃の温暖化のそれよりも小さい;
- これらのリスクは、温暖化の規模や速度、地理的な位置、開発の程度及び脆弱性、さらには適応及び緩和オプションの選択及び実施により異なる;
- 地球温暖化が自然系及び人類にもたらす影響は、既に感知されている;
- 将来の気候関連リスクは、温暖化の速度、ピーク時、期間の長さに依存し、広範でマルチレベル、部門横断的な気候緩和策の規模拡大及び加速化により、緩和されるほか、適応の増進及び変革の両方によっても緩和される。
このセクションには図SPM.1も含まれる、この図は、異なる様式の人為的排出量及び非CO2放射強制力を通し、CO2の累積排出量及び将来の非CO2放射強制力による1.5℃の温暖化での抑制可能性を決定することを伝える。
B. 予想される気候変動、その影響可能性、これに伴うリスク
このセクションでは、予想される変化や影響及びリスクを論じており、水曜日に第1回の審議が行われた。サウジアラビアは、知識面でのギャップに関する懸念を表明したことから、ある執筆者は、ステートメントの多くが高い確信度を持っていると強調し、いかなるギャップも関連のパラグラフに記述されると述べた。
B1:この小項目は、地域別の気候特性にある確固とした違いを論じる。冒頭のステートメントは、異なる温暖化シナリオの下での地域別気候特性の違いを記述するが、トリニダードトバゴが、地域別の気候特性で予想される違いのリストに干ばつ「及び降水不足(and precipitation deficit)」の両方を記述するよう提案したのを受け、脚注に編集上の変更を行い、このステートメントは、木曜日に承認された。
B1.1:0.5°Cのさらなる地球温暖化で予想される影響に関し、「観測された(observed)」変化という記述は削除された。地球温暖化が気候変動をもたらすとの表現は、サウジアラビアからの懸念の提起を受け、そのような変化に「伴う(associated)」という表現で置き換えられた。米国及びスイスからのインプットを受け、確信度(中程度)が引用された。
1.5℃の温暖化における気候の地域的な変化に関し、ベルギー、アンゴラ、ポルトガルは、「干ばつでの変化(changes in draught)」という記述を明確にするよう求め、その後この文章は、一部の地域における干ばつの強度もしくは頻度の上昇という記述に修正された。改定されたパラグラフは承認された。
B.1.2:土地に関する極端な温度現象において予想される増加に関するパラグラフは、多少の編集上の変更を経て合意された。
B1.3:干ばつ及び降水量不足並びに豪雨豪雪の観点からみた1.5℃シナリオと2℃シナリオの違いを説明するこのパラグラフは水曜日に審議され、タンザニアは、ボツワナ、トリニダードトバゴ、南アフリカ、アルジェリア、エジプト、バハマ、ザンビアの支持を得て、このパラグラフの「豪雨豪雪(heavy precipitation)」という表現は小項目B1.1.の「極端な(extreme)」現象の強い表現と対比した場合、「アンバランス(unbalanced)」であると述べた。これら諸国は、干ばつ及び砂漠化を含めるよう求めたが、他のものは、リストに熱帯サイクロンを加えるよう要請した。ジンバブエは、エジプトの支持を受け、1.5℃と2℃の違いを強調することに反対論を展開し、マンデートは単に1.5℃シナリオを評価することだと想起した。
一部の参加者は、SPMで承認された概要にはこの二つのシナリオの比較も含まれていたと想起した。サウジアラビアは、全ての地域を含めるよう求めた。非公式協議で、これら多くの問題を論じる改定された文書が作成された。
マリは、ナイジェリア、WG II副議長のTaha Zatari、サウジアラビア、イラク、その他の支持を得て、このパラグラフには西アジア及びアフリカの一部地域が書かれていないと抗議し、干ばつに関しては豊富なデータが利用可能であると指摘した。執筆者たちは、1.5℃シナリオの下では、2℃シナリオと比べ、干ばつ及び他の現象のリスクに関するデータが極めて少ないと説明した。1.5℃シナリオの下では一部地域の干ばつの可能性が少なくなっているとの文章に関し、参加者は、干ばつの項では頻度も強度もある干ばつのリスク、及び干ばつの影響から生じるリスクの両方を対象としていると説明する表現で合意した。改定されたパラグラフは承認された。
B2:2100年まで、及びそれ以後の海水面上昇の予測に焦点を当てるこの小項目の冒頭ステートメントは、水曜日の午後に第1回の審議が行われた。エジプトは、ジンバブエの支持を得て、このステートメントの開始点は1.5℃の影響であるべきで、2℃と比較した1.5℃の地球温暖化の違いではないと述べた。
ドイツ、オランダ、ルクセンブルグは、あとに続くパラグラフの「数メートルの海水面上昇を引き起こす可能性(the possibility of triggering multi-meter sea level rise)」の文章を冒頭に持ってくることを支持した。インドは、冒頭ステートメントを中程度の確信度から採ることに警告したが、EUは、この箇所の確信度が中程度である理由は、古い研究論文が不完全な手法を採用していたことに関係すると説明した。
「パニックを起こしかねない表題(panic-inducing headlines)」に関する一部の諸国の懸念表明に対応し、協議のための世界の友人委員会(Friends World Committee for Consultation)は、「何がパニックを起こし得るかというと、それは政策決定者が科学の結論に十分な対応をしないときだ(what can bring panic is when decision makers do not respond sufficiently to scientific findings)」と述べた。
非公式協議の後、この冒頭ステートメントは木曜日に承認された。
B2.1: 水曜日の夜に第一回の議論が行われたこのパラグラフでは、予想される海水面の上昇及び影響可能性を論じている。参加者は、特に、産業革命前レベルではなく1986-2005年のベースラインが用いられた理由を議論し、執筆者たちは、産業革命前のデータが不適切なことから、IPCCの第5次評価報告書(AR5)でも同様の手法が使われたと想起した。エジプトは、1.5℃シナリオと2℃シナリオの違いよりも、1.5℃の影響に焦点を当てるべきだと再度述べ、インドはこれを支持したが、シンガポールは反対した。
木曜日の朝、ある執筆者は、1.5℃または2℃シナリオの下での海水面の上昇のリスクを受ける人口について、確固とした推計値は出せないが、二つのシナリオの間で、リスクを受ける人口にどれだけの違いがあるかは推計できると説明、その執筆者は、違いは1千万人であると述べた。インドは、このメッセージは政策立案者に伝え難いと指摘した。エジプトは、このステートメントは数メートルの海水面上昇が発生しつつある可能性を反映していないと述べ、このような海水面の情報は数億人もの人々を危険にさらすとし、報告書の本文ではこのことが議論されていると指摘した。WG II共同議長のHans-Otto Pörtnerは、B2.2で数メートルの海水面上昇を議論していると述べ、このパラグラフは提示されたとおりで承認された。
B.2.2:たとえ地球温暖化が1.5℃で抑えられても海水面の上昇は2100年以後も継続することに関するこのパラグラフは、コンタクトグループで議論された。木曜日、出席者は、南極における海の氷床の不安定さそして/またはグリーンランドの氷床の不可逆的な喪失は「1.5℃から2℃程度の地球温暖化を引き起こす可能性がある(could be triggered around 1.5°C to 2°C of global warming)」というコンタクトグループ提案の表現を入れることで合意した。このパラグラフでの合意がなされた。
B.2.3:この新しいパラグラフは、温暖化により海水面上昇に伴うリスクが増大し、そのリスクは1.5℃の温暖化よりも2℃の温暖化の方が大きいことに関するもので、水曜日のコンタクトグループでの議論に続き、木曜日にも提起された。インドは、1.5℃の温暖化での海水面上昇の速度低下はそれに伴うリスクを軽減し、適応の機会を拡大すると指摘する文章に関し、適応コストに言及するよう要請した。WG II共同議長のPörtnerは、これらのコストに関する情報の欠如を指摘し、インドは、文献の中のギャップのセクションにおいて、これを指摘するよう要請した。パラグラフは、その後、多少の編集を経て合意した。
B3:このセクションでは、気候に起因する生物多様性及び生態系への影響を議論する。冒頭ステートメントについて、ドイツは、ベルギー、スウェーデン、EU、ルクセンブルグの支持を得て、排出経路の「オーバーシュート(overshoot)」(すなわち、温度目標を超えた後に目標値に戻る)による不可逆的な影響可能性を警告するFGDの文章について、その再挿入を提案した。ハイチは、ドミニカ共和国、キューバ、セントルシア、セントキッツ・ネーヴィス、トリニダードトバゴの支持を得て、1.5℃シナリオ保持の「利益(benefits)」への言及に反対し、政策決定者が混乱しないよう、1.5℃経路を「有益(beneficial)」と位置付けないよう希望した。執筆者たちは、1.5℃シナリオの「影響(impacts)」に言及する文章の改定を提案、この改定をもって、パラグラフは承認された。
B3.1:木曜日、サウジアラビア及びインドは、地理的な生息範囲を失うと予想される生物種の特定割合に注目する このパラグラフに係わる確信度が「中程度(medium)」とされることへの懸念を表明した。サウジアラビアは、根拠となる研究論文が1件であると認めるよう求めた。多くの議論の後、明示された数値は1件の最近のメタスタディから採用されたと説明する脚注が追加された。この改定及び他の多少の改定を加えた後、このパラグラフで合意された。
B3.2:1.5℃及び2℃の地球温暖化シナリオの下での陸上生態系の転換に関するパラグラフは、水曜日に第一回の審議が行われた。サウジアラビアは、パキスタン及びインドの支持を得て、基礎と成る分析では1.5℃と2℃シナリオの違いに実際に焦点を当てていると説明する文章を求め、このような脚注が提案された。米国は、その根拠への違和感を表明した。ベルギーは英国、ドイツ、スペイン、オーストリア、カナダ、アイルランドの支持を得て、脚注の挿入に反対し、SPMはそれほどの詳細を入れるべきでないと論じ、このような要請はIPCCの方針に則り証拠を評価するという科学者に委任された役割への干渉に近いと警告した。
木曜日、非公式協議の後、各国は、1℃シナリオを説明するパラグラフを改定し、1.5℃の影響を書き足して、四分位範囲(interquartile)で影響を受ける土地の割合について定量化を行うことで合意した。
B3.3:高緯度ツンドラ及び寒帯林地帯のリスクに関するパラグラフは、非公式協議で議論され、予想される土地への影響に関し、単一の数字よりも範囲を特定するパラグラフの草案が作成された。フランスは、この文章及びSPM全体では陸上吸収量の研究に対する言及がみられないと指摘した。ペルーは、エクアドルとボツワナの支持を得て、熱帯雨林及びサバンナ区域でも同様のギャップがあると強調した。執筆者たちは、これらのギャップの重要性について同意すると共に、これらの分野での1.5℃と合致する経路の研究は、報告書またはSPMに入れるだけのメリットがないと指摘した。非公式グループの提示するパラグラフ改訂版で合意された。
B.4:海水温及び酸性度の上昇、並びに海洋の酸素含有量の減少、及び海洋の生物多様性、漁業と生態系へのリスクに関する小項目の冒頭ステートメントは、多少の編集を経て合意された。
B4.1:夏季の北極海の海氷消滅の可能性に関するパラグラフを提示したWG II共同議長のPörtnerは、この文章はFGDに対する政府コメントに対応して執筆者が改定し、温度(目標)のオーバーシュート効果及び時間規模が含まれると説明した。スイス、EU、セントルシア、フィジー、その他は、これらの追加を支持し、このパラグラフは提示された通りで合意された。
B4.2:海洋生物種の生息範囲、沿岸部の資源、漁業及び水産養殖業の生産性に関するこのパラグラフは、多少の改定を受けて合意された。
B4.3:木曜日、海洋酸性化に関するパラグラフについて、参加者は、温暖化の悪影響増大が「期待される(expected)」との表現に代えて、「予想される(projected)」とすることで合意した。ベルギーは、海洋酸性化は地球温暖化というよりもむしろCO2排出量に伴うものだと指摘し、このことは、継続的なCO2排出に係わる特定の地球工学的な手法にも影響すると指摘した。参加者は、これに応じて、地球温暖化に「伴うCO2濃度(CO2 concentrations associated with)」という表現を入れることで合意した。さらに参加者は、マリの要請に応え、2℃ではさらなる悪影響が予想されると指摘することで合意した。このパラグラフは合意された。
B4.4:このパラグラフは、海洋における気候変動の影響に伴う漁業及び水産養殖業のリスクを扱う。木曜日、米国は、海洋漁業における世界の年間漁獲量で予想される減少について、中程度の確信度とされるのは疑問だとし、このパラグラフは単一の研究に依存していると指摘した。参加者は、これに応じて、「モデル(models)」ではなく「一つの世界漁業モデル(one global fishery model)」に言及することで合意した。その後、このパラグラフは、多少の編集上の修正を経て合意された。
B5:この小項目全体は、木曜日のコンタクトグループで議論された。金曜日午後、健康、生活、食糧及び水の供給、人間の安全、経済成長に対する気候関連のリスクに関する冒頭ステートメントで合意された。
B5.1:このパラグラフは、地球温暖化の悪影響のリスクが不釣り合いなほど大きい人口及び地域を論じており、金曜日の午後に審議された。コンタクトグループでは、追加事項として「一部の(some)」先住民への言及を含める、及び後発開発途上国(LDCs)への言及を含めることが提示された。ボツワナからの疑問に対し「乾燥地(dryland)」は全てのタイプの乾燥地を指すことが明確にされ、その後「人口(populations)」への言及を「地方社会(local communities)」に置き換えられたところで、このパラグラフは承認された。
B5.2:このパラグラフでは、地球温暖化が人間の健康に与える影響結果を論じており、コンタクトグループから送られたものに多少の改定を行った後、金曜日の午後に承認された。
B5.3:このパラグラフは、異なる温度シナリオが食料の入手可能性に与える影響シナリオに関するもので、金曜日の午後に審議された。インドは、東南アジアでは異常な降水量の増加が予想されていると指摘し、コメ及びコーンの収率低下が予想される地域のリストにこの地域が入っている理由を尋ねた。この文章は降雨量ではなく作物の熱許容量に関するものであり、気候変動の影響の多様性は「正味の(net)」の収率減少への言及で捕捉されていることが明らかにされ、その後、このパラグラフは、承認された。
B5.4:このパラグラフは、地球温暖化が水不足に与える影響結果を論じており、多少の変更の後、金曜日の午後に合意された。
B5.5:このパラグラフは、地球温暖化が世界全体の経済成長に与える影響結果を扱うもので、金曜日の午後に議論された。参加者は、経済成長に対するリスクから、緩和コスト、適応投資、適応の便益を除外するという新しい資格基準を受け入れた。この観点からみた、経済成長への影響はGDPの変化を指すことが説明され、人間の命や文明遺産、生態系サービスなどの喪失といった多数の影響は、貨幣価値に直すのが難しいとする脚注が受け入れられた。
B5.6:このパラグラフは、異なる温度シナリオの下での多数の複合的な気候関連リスクへの曝露を扱うもので、多少の変更の後、金曜日の午後に受け入れられた。
B5.7:このパラグラフは、懸念の五つの理由(RFCs)のうち4つにおけるAR5以後のリスクレベル評価の上昇に関するもので、記載された確信度レベルの数件を改定した上で、合意された。
B6:このセクションは、適応ニーズ、オプション、適応の限界及び適応能力の限界を扱う。冒頭ステートメントに関し、米国は、「適応(adaptation)」ではなく「適応能力(adaptive capacity)」の限界に言及するよう求めた。セントキッツ・ネーヴィスは、「適応及びそれにともなう損失の限界(limits to adaptation and associated losses)」がその後のパラグラフから削除されたことから、「伴う損失(associated losses)」への言及は必要だと述べた。トリニダードトバゴは、元となる報告書では適応及びそれに伴う損失の限界が議論されていると指摘した。インドは、「伴う損失(associated losses)」に関する文献の欠如をSPMでの知識のギャップとして示すべきだと述べた。WG II共同議長のPörtnerは、元となる報告書の章において、ステートメントの確信度が示されていない場合は、そのステートメントはSPMにはふさわしくないと明言した。非公式協議の後、1.5℃の地球温暖化に対する一部の人間及び自然系の適応及び適応能力には限界があり、これに伴う損失もあると指摘する文章を冒頭ステートメントに追加した。
B6.1:自然の生態系及び管理された生態系のリスク軽減で利用可能な適応オプションの範囲に関するパラグラフでは、ニカラグアの提案する「森林の劣化(forest degradation)」回避が、適応オプションリストに追加された。その後、このパラグラフは、受け入れられた。
B6.2:生態系、食糧、健康システムでの適応上の課題に関するパラグラフは、提示された通りで受け入れられた。
B6.3:1.5°Cの地球温暖化における適応能力の限界に関するパラグラフについて、ある執筆者は、元となる報告書では適応能力に関する文献が相当数あるが、適応の限界に関するものはないとされると説明した。このため、適応及びそれに伴う損失の限界ではなく「適応能力の限界(limits to adaptive capacity)」に言及するというある執筆者の提案が承認され、このパラグラフでの合意がなされた。
図SPM 2:懸念の理由:この図は、地球温暖化のレベルが、RFGs及び選ばれた自然系や管理された生態系、人間のシステムに伴うリスクにどう影響するかを論じている。金曜日、参加者は、この図と表題を各RFCに伴うリスク及び特定の影響を明示するというコンタクトグループの修正通りで承認した。
最終のSPM文書:このセクションの最終文章は、予想される気候変動、その影響可能性、地球温暖化、特に2℃と比較した1.5℃の温暖化に伴うリスクを論じる。
小項目B1は、地域的な気候特性での違いを予想する気候モデルに焦点を当て、特に次に関するパラグラフを有する:
- 温暖化は極端な天候現象の変化が伴うという証拠;
- 極端な気温の地域別の差異;
- 極端な天候現象、干ばつ、豪雨・豪雪の強度または頻度で予想される増加傾向;
- 一部の地域では、2°Cの地球温暖化におけるリスクが、1.5℃でのリスクと比較し高くなる。
小項目B2は、2100年以後の海水面の上昇に焦点を当てるが、その大きさ及び速さは将来の排出経路に依存する、この小項目には、次に関するパラグラフが含まれる:
- 1.5°Cの地球温暖化における地球平均海面水準のモデルベース予測では、2℃と比較し、関係リスクにさらされる人数が1千万人まで減少することを示す;
- 海水面の上昇が2100年以後も継続する場合の、海洋の氷が不安定になる潜在可能性そして/またはグリーンランドの氷床の不可逆的な喪失;
- 小島嶼、沿岸の低地、三角州は、海水面上昇に伴うリスクにさらされる。
小項目B3は、陸地、淡水、沿岸の生態系に関する影響に焦点を当て、次に関するパラグラフを含める:
- 生物多様性関連のリスクに伴う影響;
- 2℃までの地球温暖化における生態系の変化;
- 高緯度ツンドラ及び寒帯林にはリスクがある。
小項目B4は、海洋資源への影響に焦点を当て、次に関するパラグラフを含める:
- 1.5°C及び2°C地球温暖化において、夏季に海氷のない北極海が出現する確率;
- 地球温暖化の進展による、サンゴ礁など、多数の海洋生態系及び沿岸生態系が不可逆的に喪失するリスク;
- CO2濃度上昇による海洋酸性化レベル;
- 漁業及び水産養殖業へのリスク増大。
小項目B5は、健康、暮らし、食糧安全保障、水の供給、人間の安全、経済成長に対する気候関連リスクに焦点を当て、特に下記に関するパラグラフが含まれる:
- 1.5℃及びそれを超える地球温暖化が、人間の健康に与えるリスク;
- 穀類作物、食糧の利用可能性、飼料の品質、水資源の利用可能性の減少;
- 水資源の抑圧増大に曝される可能性がある人口が世界人口に占める割合;
- 世界全体の経済成長に対するリスク、及び熱帯および南半球亜熱帯地域の経済成長に対するリスク;
- 気候関連リスクの影響を受けやすい人々の割合、特にアフリカ及びアジアにおいて貧困の影響を受けやすい人々、並びにエネルギー、食糧、水部門を横断して影響を受けやすい人々;
- AR5以後、5つのRFCsのうち4つにおいて、評価されたリスク水準が増加しているという相当の証拠。
小項目B5には、地球温暖化の水準がRFCsに伴う影響及び/またはリスクにどう影響するかを示す図も含まれる。
小項目B6は、適応のニーズ、適応オプションの範囲、適応及び適応能力の限界に焦点を当てると共に、これに伴う損失にも注目し、次の項目に関するパラグラフを含める:
- 特に自然の生態系及び管理された生態系に対するリスク軽減に利用できる適応オプションの範囲;
- 生態系、食糧、健康システム、特に小島嶼地域及びLDCsなど脆弱な地域でのこれらの適応上の課題;
- 1.5℃の地球温暖化及びそれを超える地球温暖化での適応能力の限界。
C. 1.5℃の地球温暖化と合致する排出経路及びシステムの転換
WG III共同議長のJim Skeaは、木曜日午後にこのセクションを提起した。ある執筆者は、政府コメントの結果として行われたFGDの変更点を提示した、この中には、炭素バジェットとAR5との比較、非CO2排出量に関する情報などが含まれる。
C1:木曜日午後、参加者は、経路、非CO2排出量、炭素バジェットを議論するこの小項目について一般的なコメントを述べた。一部のパラグラフを論じるため、一つのコンタクトグループが設立された。冒頭ステートメントに関し、執筆者たちは、四分位範囲の概念を導入し、数件の編集上の変更を経て、このパラグラフで合意した。
C1.1:異なる排出経路及びシナリオを論じるこのパラグラフに関し、サウジアラビアは、オーバーシュートの経路を含め、全ての経路に言及するよう求め、この意見が主流を占めた。セントキッツ・ネーヴィスは、オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートに注目するよう希望した。金曜日、このパラグラフは審議され、受け入れられた。
C1.2:非CO2排出量の削減を論じるパラグラフについて、オーストラリアは、一部の経路で想定されるエネルギー需要量の多さに疑義を呈した。ブラジルは、一部の経路ではバイオエネルギーの需要量を高く想定していると指摘し、これらの需要が持続可能となるような適切な管理方法を議論することが重要だと強調した。
セントキッツ・ネーヴィスは、メタン及び非CO2ガスの精密な定量化を求めた。メキシコは、SPMにおいて非CO2排出量を定義し、この点に関する脚注をつけることなどを求めた。
金曜日午後、WG I副議長のNoureddine Yassaaは、このパラグラフに関するハドル会合の結果、バイオエネルギーに関する管理手法を含めること、及び全てのモデル経路について管理手法を含めることになったと報告した。これらの変更を行い、さらに2件の明確化を行った上で、このパラグラフは合意された。
C1.3:炭素バジェットの残高に関するこのパラグラフでは、当初、最終草案に示された三件のパラグラフが含まれていたが、最終的なSPMでは、これらを一つに圧縮した。木曜日のプレナリーでは一般的なコメントが出され、その後、コンタクトグループで議論された。
炭素バジェットの残高に関し、日本及びサウジアラビアは、この文章の二件のバジェットの数字は1.5℃までの地球温暖化を抑制する異なる確率の数字に基づいたものであり、明確さを欠くと指摘し、これらの数字がどのようにして出されたのかを問うた。中国と米国は、炭素バジェット及びこれに関係する不確実性を求めるために使用したシナリオについて問い合わせた。米国は、文献で議論されている数値の全範囲を示すよう提案した。
フランスは、炭素バジェットが言及している年数を強調するよう求めた。インドは、炭素バジェットの合計から始めて、その後に炭素バジェットの残高に言及することを提案した。
マーシャル諸島及びセントキッツ・ネーヴィスは、地球平均気温またはGMSTの観点から地球温暖化を定義づける上で炭素バジェットには意義があるとする文章に関し、混乱する可能性があり、削除するよう提案したが、オランダ及び韓国はこれに反対した。
炭素バジェットに対する歴史的な排出量の意味合いに関し、スイスは、炭素バジェットのパラグラフの論理的な流れを改善するよう提案した。インド及びドイツは、1.5°Cの炭素バジェットは現在の排出伸び率からすると10-15年以内に尽きてしまうと指摘する表現を追加するよう提案した。
グレナダ、トーゴ、中国を含める数か国は、元となる報告書の関係の章とこのセクションとの不一致を指摘した。米国は、2℃目標の炭素バジェットと1.5℃目標のそれとを比較する文章の追加を求めた。
ある執筆者は、サウジアラビアからの質問に応え、「喫緊で安定した低下(an immediate and steady decline)」とは正味ゼロの炭素排出量を達成するため、今から始めて10年の軌跡をたどることを意味すると述べた。
非CO2の緩和に対する炭素バジェットの不確実性及び選択肢に関し、ベルギーは、グレナダの支持を得て、66%以上の確率をもって気温の上限を求めることは炭素バジェットが比較的小さいことを意味すると指摘した。
ある執筆者は、異なる非炭素化経路をたどることは非CO2緩和の可能性を変えてしまうとするフランス及びグレナダの意見に同調した。
米国は、炭素バジェット手法を使うことに対し、異なる経路を明らかにすることの有益性を質問した。スイスは、トリニダードトバゴの支持を得て、炭素バジェットの数字一本化での合意に向け努めるべく、検討するよう執筆者たちに要請した。インドはこれに疑義を唱え、オランダは、炭素バジェット方式での試算における不確実性に注目した。
C. 1.5℃の地球温暖化と合致する排出経路及びシステムの転換
WG III共同議長のJim Skeaは、木曜日午後にこのセクションを提起した。ある執筆者は、政府コメントの結果として行われたFGDの変更点を提示、この中には、カーボンバジェットとAR5との比較、非CO2排出量に関する情報などが含まれる。
C1:木曜日午後、参加者は、経路、非CO2排出量、カーボンバジェットを議論するこの小項目について一般的なコメントを述べた。一部のパラグラフを論じるため、一つのコンタクトグループが設立された。冒頭のステートメントに関し、執筆者たちは、四分領域の概念を導入、数件の編集上の変更を経て、このパラグラフで合意した。
C1.1:異なる排出経路及びシナリオを論じるこのパラグラフに関し、サウジアラビアは、オーバーシュートの経路を含め、全ての経路に言及するよう求め、この意見が主流を占めた。セントキッツ・ネーヴィスは、オーバーシュートなしもしくは限定的とする現在の焦点を希望した。金曜日、このパラグラフは審議され、受諾された。
C1.2:非CO2排出量の削減を論じるパラグラフについて、オーストラリアは、一部の経路で想定されるエネルギー需要量の高さに疑義を呈した。ブラジルは、一部の経路ではバイオエネルギーの需要量を高く想定していると指摘し、これらの需要が持続可能となるような適切な管理方法を議論することが重要だと強調した。
セントキッツ・ネーヴィスは、メタン及び非CO2ガスの精密な定量化を求めた。メキシコは、SPMにおいて非CO2排出量を定義し、この点に関する脚注をつけることなどを求めた。
金曜日午後、WG I副議長のNoureddine Yassaaは、このパラグラフに関するハドル会合から、バイオエネルギーに関係する管理手法を含めること、及び全てのモデル経路についての管理手法を含めることになったと報告した。これらの変更を行い、さらに2件の明確化を行った上で、このパラグラフでの合意がなされた。
C1.3:カーボンバジェットの残高に関するこのパラグラフの内容には、当初、最終草案に示された三件のパラグラフが含まれていたが、最終的なSPMでは、これらを一つに圧縮した。木曜日のプレナリーでは一般的なコメントが出され、その後、コンタクトグループで議論された。
カーボンバジェット残高に関し、日本及びサウジアラビアは、この文章の二件のバジェットの数字は1.5℃までの地球温暖化抑制における異なる確率の数値に基づいたもので、明確さを欠くと指摘し、これらの数字がどのようにして出されたのかを問うた。中国と米国は、カーボンバジェット及びこれに関係する不確実性を求めるために使用したシナリオについて問い合わせた。米国は、文献で議論されている数値の全範囲を示すよう提案した。
フランスとマーシャル諸島を共同議長とするコンタクトグループでは、木曜日の夕方と金曜日の朝、カーボンバジェットについて審議した。
金曜日午後、コンタクトグループ報告官でWG I副議長のJan Fuglestvedtは、このパラグラフは一貫性の向上と、不確実性を伝えるために改定されており、SPMでのバジェットの数字はAR5での数字より低くなっていると報告した。エジプトは一貫性を可能にするため、AR5のカーボンバジェットでの数値への言及を追加し、最新の推計値でAR5に提示されたカーボンバジェットの数字が無効になった印象を回避するよう要請したことから、長時間の議論が行われた。執筆者たちは、SR15で用いられた手法論、及びバジェットがこれまでの推計値とどう違っているかを説明した、この中で、直接観測値を検討したこと、非CO2排出量も考慮したこと、また1.5℃に特化したことが説明された。ここでの違いを説明するため、多様な脚注の記述が提案され、参加者は、結局、SPMでのカーボンバジェットの言及で合意し、以前の推計値への言及はしないことで合意した。
C1.4:金曜日夕方、太陽放射光管理(SRM)措置に関するこのパラグラフが、審議のため提起され、WG III共同議長のSkeaは、そのような措置のリスク及びそのような措置は海洋酸性化を緩和しないという事実を指摘する表現を最終草案に入れると述べた。このパラグラフは変更されることなく受諾された。
C2:この小項目は、温暖化を1.5℃で制限する経路を取り上げる。冒頭のステートメントではオーバーシュートがない、もしくは限定的なオーバーシュートで、地球温暖化を1.5℃で抑制する経路は、多様な部門において急速かつ広範囲の転換を必要としていると説明、非公式協議でこのステートメントが審議された。その後、改定された表現が提示されたが、その中では、投資の大幅な規模拡大が示唆された。このパラグラフは、ルクセンブルグ及びフランスの提案どおり、運輸部門への言及を追加し、多少の編集上の変更を経た上で、合意された。
C2.1:木曜日夜、1.5℃の温暖化で抑制する経路と2℃で抑制する経路を比較するこのパラグラフの審議が行われた。このパラグラフは、今後20年間のエネルギー、土地、都市及びインフラ、産業システムの各部門におけるシステム転換はこれまでのシナリオの記述よりも急速かつ顕著になると規定した。セントキッツ・ネーヴィスは、1.5℃の経路に伴う変化は歴史的に前例のない規模であるとの表現について、「説明し、概念を示し、明確にする(explained, contextualized, and clarified)」必要があると述べた。ある執筆者は、現在の世界経済の規模、世界人口の規模は前例のないものだと明言した。
非公式協議に続き、執筆者たちは、このステートメントは混乱させる可能性があるとして、気温上昇を1.5℃及び2℃で制限する経路が相似するとの言及を除去するよう提案し、グループもこれに同意した。このパラグラフは、さらなる編集上の改定を数件行った上で、合意された。
C2.2:オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで、地球温暖化を1.5℃までに抑制する経路でのエネルギーシステムに関するパラグラフについて、ドイツ、フランス、カナダ、グレナダ、スイス、EU、ベルギーは、1.5℃と合致する経路の下では一次エネルギーのうち石炭の割合が顕著に減少するとのFGDの文章について、確信度及び関連性が高いことから、再度挿入するよう求めた。サウジアラビア、エジプト、パキスタン、エストニア、米国は、特定の化石燃料のみを論じることに反対した。
ポーランドは、さらなる技術革新の必要性への言及を求めた。インドは、エネルギーの需要とエネルギーの必要性は異なると指摘した。
グレナダは、EUの支持を得て、本文の報告書に書かれているとおり、再生可能エネルギー技術を「劇的に改善する(improved dramatically)」方法への言及を提案した。さらにEUは、エネルギー効率の「急激な改善(radical improvements)」にも目を向け、ベルギーは、発電部門でのシステムの転換が起きようとしている可能性があるとの文章を提案した。
このパラグラフは、コンタクトグループでの議論に続いて、金曜日のプレナリーでも再度審議された。ドイツは、再生可能エネルギー、原子力、二酸化炭素回収貯留付きの化石燃料など、低炭素エネルギーの全てをリストするよう求めたが、サウジアラビア、米国、日本は反対した。フランスは、ベルギーの支持を得て、1.5℃経路での石炭の利用の記述を再度挿入するよう求めた、この説明は前回のSPM草案のセクションCから削除されていた。米国は、その後、他のエネルギー資源でも同様な記述を求めた。最終草案では、再生可能、原子力、CCS付きの化石燃料、天然ガスを網羅する。再生可能エネルギーが世界のエネルギーシステム転換の進捗にどのような影響を与えるか、コンタクトグループで議論された後、このパラグラフの文章は、プレナリーにおいて、そのような転換の「シグナルを与えている(signaling)」と説明するよう、改定された。このパラグラフは改定された通り、承認された。
C2.3:産業部門からの排出量に関するパラグラフについて、日本は、電化や水素、持続可能なバイオ・ベースの材料、製品の代替、炭素回収利用貯留など、新規の及び既存の技術や実施方法に言及するときは、「技術的に証明されている(technically proven)」を「技術的に可能な(technically possible)」に置き換えるよう提案した。エジプトは、このような新規の技術及び実施方法の展開には制度上及び経済上の制約に言及することを提案した。
土曜日、コンタクトグループでの議論の後、インドとノルウェーは、新規及び既存の技術及び実施方法は「多様な規模(at various scales)」で技術的に証明されていると規定するよう提案した。英国は、これらの大規模な展開は、多様な制約条件で制限されて「いる(is)」ではなく、「いる可能性がある(may be)」とするよう提案した。これらの変更を行い、さらに確信度の表現を高いから中程度に変えた上で、このパラグラフは承認された。
C2.4:1.5°C地球温暖化のオーバーシュートなしまたは限定的である場合の都市部及びインフラシステムの転換に関するパラグラフについて、ケニアは、土地計画及び都市計画の変更が必要な範囲を推計する表現を求めた。
Germanwatchは、EUの支持を得て、船舶輸送及び航空輸送での課題を強調し、この点に関し本体の報告書の文章を含めるよう求めた。サウジアラビアは、この部門からの排出量は「極めて小さく(minuscule)」、また他の国際機関で既に検討されているとして、これに反対した。
EUは、ドイツ及びスイスと共に、たとえば建設部門における資源利用効率、または「材料の代替(material substitution)」に言及するよう提案し、建築部門での電力需要の割合に関する表現を挿入するよう求めた。
エジプトは、ブラジル、サウジアラビア、エクアドルと共に、社会的、制度上、経済的な障壁は都市部及びインフラのシステム転換に向かう進路をさまたげる「可能性がある(may)」として、これらの障壁への言及に反対し、このような表現は途上国が直面する大きな課題を反映していないと述べた。ブラジルは、資金や技術の転換に対する障壁を指摘した。
土曜日の朝、コンタクトグループでの議論の後、土地計画及び都市計画策定方法を変更する必要性、および輸送及び建築部門での大幅な排出削減の必要性に関する文章に、中程度の確信度があるとの表現が付け加えられた。ベルギー及びノルウェーからの要請を受けて、電化への言及が含まれ、既に削除された文章に代わり、「大幅な排出削減を可能にする技術的措置や実施方法には多様なエネルギー効率オプションが含まれる(technical measures and practices enabling deep emissions reductions include various energy efficiency options)」とする文章が加えられた。これらの変更を行った上で、このパラグラフは承認された。
C2.5:オーバーシュートなしもしくは限定的なオーバーシュートでの1.5°Cへの経路における世界的及び地域的な土地利用の変換に関し、EUは、エネルギープロジェクト及び森林に必要な土地面積として示されている数値は、モデル予測から来ていると述べ、ブラジルの支持を得て、これらの数値では農業の生産性の急上昇を想定しており、その実施可能性が考慮されていない可能性があると指摘した。
ブラジルは、土地部門は地域レベルで検討された唯一の部門であるとの見方を示し、このSPMにおいては、エネルギー部門や廃棄物部門などの他の部門に対する「環境上の懸念(environmental concerns)」が適用されていないと指摘した。
米国は、資金や技術の移転に関する表現は別なセクションに保持したいと希望した。
サウジアラビアは、食糧とエネルギー生産のトレードオフへの言及を改善し、FGDにあった土地の需要競合リストを再挿入するよう求めた。
グレナダは、2℃目標が土地に与える影響のデータを再挿入するよう求め、さらに影響を受ける土地の推計値では全ての数値表現において、下限値を入れるよう求めた。
ポーランドは、持続可能な森林管理への言及を求めた。ドイツは、保全措置に関する表現を求めた。
オランダは、このパラグラフのステートメントの多くについて、その背景や合理性が理解できないと発言し、農地5億ヘクタールというのは、農地全体の三分の一に相当すると指摘した。インドは、最新の国連食糧農業機関(FAO)の森林資源評価によると、1990年から2015年の間に森林の面積は3%減少していると指摘した。
C2.6:1.5°C経路におけるエネルギー関連の緩和投資に関し、新しいパラグラフの草案が作成され、木曜日及び金曜日にコンタクトグループで議論されたが、これは異なる排出経路のコストに関し追加の情報をというサウジアラビア及びその他のプレナリーでの要請に応じたものである。サウジアラビアは、エジプトの支持を得て、コストのデータは政策立案者にとり極めて重要であるとコメントし、報告書本体には有用な詳細情報が多数あると指摘、たとえば1.5°C経路を支える2016-2050年のエネルギーコストは2℃と合致する経路の下での投資額より五千億ドル大きいと指摘した。これら諸国は、エネルギー供給投資コスト及び限界緩和コストの両方を説明する新しいパラグラフを求めた。
コンタクトグループにおいて、ある国は、供給側投資合計額を記述するよう要請したが、他のものは、既存の文章草案を希望した、この文書草案では、需要側及び供給側の両方の投資額を記載し、ベースラインと比較し、1.5℃経路達成に必要な額(「緩和(mitigation)」投資額)のみを計算していた。結局、供給側及び需要側の緩和投資を別々に記載することとなった。ある国は、1.5°C経路は世界のエネルギー投資を「再配分する(redistributing)」という表現に異議を唱え、最終的な表現では、再生可能エネルギーへの投資の規模拡大範囲を説明することとなった。金曜日のプレナリーにおいて、インドは、図の中でたとえば世界のGDPとか、エネルギー投資額とかの考えを入れるよう求めた。このパラグラフは改定されることなく承認された。
C2.7:1.5°C経路の合計コスト及び限界緩和コストに関するパラグラフは、C2.6と同様の状況で草案が作成され、同じコンタクトグループ及びプレナリー会合で議論された。
コンタクトグループで、各国は、1.5°C経路に関しては限定的な数の研究論文しか評価に利用できないという事実を示す文章を要請した。さらに多数の諸国は、総コストと限界コストとの違いに関し、明確な説明文を要請し、後者の限界コストだけでは、政策立案者の誤解を招く可能性がある、これは限界コストが極めて高くなる可能性があり、その場合、総コストも高いとは限らないためである。コンタクトグループから出てきた文章には、そのような説明は含まれておらず、ただ単に、文献では限界コストと総コストを区別していると指摘した。金曜日のプレナリーで、コンタクトグループの文章が改定されることなく採択された。
C3:このセクションは、二酸化炭素の除去(CDR)を扱うもので、最初、金曜日に議論された。冒頭のステートメントに関し、サウジアラビアは、オーバーシュートが高い1.5℃経路への言及を求めた。セントキッツ・ネーヴィスは、これに異議を唱え、オーバーシュートがない、そしてオーバーシュートが低い経路に焦点を当てたとして執筆者を称賛した。さらに、同代表は、SPMの他のセクションでは炭素回収貯留付きのバイオエネルギー(BECCS)を必要な規模で展開する可能性、さらにはオーバーシュートから排出量を下げるというCDRの有効性の両方に、疑問を唱えていると指摘した。
Friends World Committee for Consultationは、1.5℃へのオーバーシュートなし及び低オーバーシュートの経路には、行動の変化、個人消費、低(カーボン)濃度ダイエットが関わると指摘し、この点がSPMで適切に言及されているかどうか疑問視した。スイスは、「残滓の(residual)」排出量の扱いにおけるCDRの役割を明確にするよう求め、これに応じて、文章は、CDRの次の二つの役割を明らかにするよう書き直された:1.5°Cへの経路におけるプラスの排出量を補足する;オーバーシュート後に修正する。インドは、モデルは仮定のものだと指摘する表現を求め、この文章はこの点で改定されて合意された。
C3.1:CDR措置を説明するパラグラフに関し、WG III共同議長のSkeaは、FGDと比較した変更点について説明した、これには次が含まれる:多様なCDR技術を成熟度別にリストアップする;土地の回復、耐久性、アルカリ化への言及を含める;CDRの利用に関わるトレードオフへの言及。金曜日、このパラグラフは、追加の議論なしで合意された。
C3.2:1.5°C経路におけるBECCSと農業、漁業、その他の土地利用(AFOLU)の程度について、スイスは、インドの支持を得て、シナリオの関わりを伝えるため「予想された(projected)」成果であると明らかにする表現を求め、そのように変更された。EUは、BECCSの展開ポテンシャルの限界を土地面積の形で表現される可能性があるかどうかを問うたが、執筆者は、これは不可能であると説明、その理由として、土地の質は多様であり、何エーカーかというような共通の尺度に下げる努力が複雑になると指摘した。
ノルウェーは、BECCSを広範囲に展開する可能性の低さを指す「実用的でない(impractical)」という言葉は意図した意味を伝るものではないと論じた。執筆者は、このフレーズを削除することを提案し、この文章の残りの部分でも既に同じ意味合いが表現されていると指摘した。中国は、一部の1.5oC経路はBECCS自体を回避しているとの主張に高い確信度が付されたことに疑問を呈し、これは少数の研究論文のみに基づいた主張であると指摘、執筆者は、この確信度を中程度に引き下げることに同意した。これらの変更を行った上で、このパラグラフは同意された。
C3.3:金曜日夜、WG III共同議長のSkeaは、CDR及びその抑制要素に関するパラグラフはFGDと比較し、特に、オーバーシュートが大きければ大きいほど、より多くのCDRが必要になることを示すよう改定されたと指摘した。ある執筆者は、タンザニアの質問に応え、このパラグラフの最後の文章は、大気中からの1トンのカーボン抽出はもともとそれだけのカーボンを排出しないことより効果がない可能性があると伝えるものだと説明し、明確さを高めるためCDRではなく「正味マイナスの排出量(net negative emissions)」への言及を提案した。この変更を行った上で、このパラグラフは受諾された。
C3.4:CDR措置の影響に関するパラグラフは金曜日の夕方に議論された。ある執筆者は、スイスの要請に応じて、CDR措置には新規植林及び生態系の回復も含まれることから、CDRの「大半がマイナスな(mostly negative)」影響への言及は適切でないだろうと述べた。気候に対する影響に言及すべきかどうかの疑問に関し、ある執筆者は、大気中からのCO2の除去に加え、CDR措置にも気候アルベド効果があるが、この情報で文章を複雑化させたくないと述べた。スイスは、生態系の「機能及び(functions and)」サービスへの影響に言及するよう提案し、参加者も同意した。ブラジル及びノルウェーからの意見発表に応え、参加者は、新規植林及びバイオエネルギーは他の土地利用と競合「できる(can)」よりも「可能性がある(may)」とする表現で合意した。このパラグラフは受諾された。
C3.5:AFOLU-関連のCDR措置に関し、eSwatiniは、ジンバブエ、南アフリカ、タンザニアの支持を得て、「効果的なガバナンス(effective governance)」を求める表現に疑義を唱え、これを「持続可能な土地管理(sustainable land management)」への言及に置き換えるよう提案した。ドイツは、ドミニカ共和国、スイス、ノルウェー、アイルランド、ポーランド、ルクセンブルグの支持を得て、効果的なガバナンスは持続可能な土地管理よりも広範囲であると論じ、その中には特に参画手法の施行、炭素貯留量の保全、計測及び検証を行うことが含まれると述べた。執筆者たちは、両方に言及する表現様式を提案し、このパラグラフは承認された。
図SPM 3:この図は、地球規模の排出経路特性を示す図SPM.3a、及び1.5℃の地球温暖化に関係する四つの代表的経路の特性に関する図SPM.3bで構成され、水曜日夜及び木曜日朝のコンタクトグループ会合で議論された。木曜日午後、WG III副議長のAndy Reisingerは、コンタクトグループで合意が達成されたと強調し、これには主に単純な表現の導入及び題目部分の更なる明確化が含まれると述べた。これには図の中の代表的なモデル経路をより一般的な形でラベルし直す一方、報告書本体の章に対する参照可能性を提供し、記述された非CO2強制力の選び方を説明することが含まれた。
SPM 3bに関し、Reisinger副議長は、このグループの議論では異なる経路に伴う排出量とリンクさせる指標の特定と、政策規範性の回避との間で「緊張関係(tension)」があったと指摘した。同氏は、両方の立場の橋渡しを追求する表を提示した、これには特に代表的なモデル経路は規範性を意図するものではないと記述する脚注が含まれる。その後、同氏は、コンタクトグループの参加者が合意した計算方法(metrics)を読み上げた。金曜日、図SPM.3a及びSPM.3bは、コンタクトグループで修正された通りで合意された。
最終的なSPM文章:このセクションは地球温暖化の経路、1.5℃の地球温暖化に限定するために必要とされる転換、CDRを扱う。
小項目C1は、地球温暖化の経路に関するもので、下記を指摘する:
- 1.5°Cのオーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートのモデル経路において、地球規模の正味の人為的CO2排出量は、2030年までに2010年比で45%低下し、2050年ごろには正味ゼロに達する;
- 地球温暖化を2°C以下で抑制するには、CO2排出量は大半の経路で、2030年までに約20% (10–30% 四分範囲)低下し、2075年(2065–2080年の四分範囲)ごろには正味ゼロに達すると予想されている;
- 地球温暖化を1.5°Cで抑制する経路の非CO2排出量は、温暖化を2°Cで抑制する経路のそれと同様の大幅な削減を示す;
- 異なる緩和措置のポートフォリオは、異なる実施上の課題、並びに持続可能な開発とのシナジーやトレードオフの可能性に直面する;
- 地球温暖化の抑制には、産業革命前の時代以降の人為的なCO2排出量の地球規模累積合計値を制限する必要がある、すなわちカーボンバジェット合計量の内数で止める必要がある;
- 産業革命前以後の人為的CO2排出量は、2017年末までに、1.5℃でのカーボンバジェット合計値を約2200 ± 320ギガトンCO2 (GtCO2)減少したと推計され、これに伴うバジェットの残高は、現在の排出率42 ± 3 GtCO2/年で枯渇してしまう;
- 地球温暖化対策の選択はカーボンバジェット残高の推計値に影響を及ぼす;
- SRM措置は、評価された利用可能な経路のいずれにも含まれていない、ただし一部のSRM措置は、理論的には、オーバーシュートを低下させる効果がある可能性があり、大きな不確実性及び知識のギャップ、さらには相当大きなリスクに直面する。
小項目C2は、地球温暖化を1.5°Cで抑制するために必要な転換に関するものであり、次を強調する:
- オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃で抑制する経路は、エネルギー、土地、都市部、インフラ(これには運輸や建築を含める)、産業のシステムにおける急速かつ遠大な変換を必要とするとみられる;
- これらのシステム変換は、その速度という意味では、必ずしも前例がないとは言えないが、その規模という意味では前例がなく、全ての部門での大幅な排出量削減、広範な緩和オプションのポートフォリオ及びこれらのオプションに対する投資の顕著な規模拡大を意味する;
- オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制する経路は、今後20年間の内に、2℃経路より急速かつ明確なシステム転換を示す;
- エネルギーシステムにおいては、オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制するモデル化された地球規模の経路(文献で検討された)は、一般に、エネルギー効率の向上によるものも含め、低エネルギー利用でもエネルギーサービスの需要を満たし、エネルギー最終用途の電化を2°Cと比較して早めることを示す;
- オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制する経路での産業部門からのCO2排出量は、2050年に2010年比で約75-90% (四分範囲内)低くなる、これと比べ、2°Cの地球温暖化では50-80%である;
- そのような削減は、新規の、並びに既存の技術及び実施方法の組み合わせを通して達成可能であり、これには、電化、水素、持続可能なバイオベースの材料、製品の代替、炭素回収利用貯留が含まれる;
- これらのオプションは、規模は異なるが技術的には実証されている、しかし、これらの大規模な展開は、特定の概念の下での経済的、資金上、人的能力、制度上の制約で制限される可能性がある;
- オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制する経路では、建築部門のエネルギー需要に対する電力の割合が2050年には2010年比で約55-75%になる、これに対し2°Cの地球温暖化では2050年で50-70%である;
- 運輸部門では、低排出な最終エネルギーの割合が、2020年の5%以下から2050年には約35-65%に上昇する、これと比べ2°Cの地球温暖化では25-45%である;
- 世界的及び地域的な土地利用の転換は、オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制する全ての経路でみられるが、その規模は、追求した緩和ポートフォリオに依存する;
- 温暖化を1.5°Cで抑制する経路において、2015年から2050年にかけてのエネルギー関連の緩和投資額は年平均合計で2015年の米ドル価額にして約9千億ドルと推計される、これはエネルギー供給投資額の年平均合計で、2015年の米ドル換算で1兆6千から3兆8千億に相当し、2015年から2050年の期間におけるエネルギー需要投資額の年平均合計で、2015年の米ドル換算7千億から1兆ドルに等しく、1.5°C経路でのエネルギー関連投資額合計は2°C経路と比較し、約12%増加するに等しい;
- オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までで抑制するモデル経路は、21世紀中の限界緩和コストの世界平均での広範囲なディスカウントを予想しており、その範囲は2℃以下で地球温暖化を制限する経路のほぼ3倍から4倍になる。
小項目C3はCDRに関するもので下記を強調する:
- オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制する経路は全て、CDRを21世紀中に100-1000 GtCO2の規模で利用すると予想する;
- CDRは、残りの排出量を補うために用いられ、大半の場合、正味マイナスの排出量を達成、ピークのあとは、1.5℃の地球温暖化の経路に戻る;
- 数百GtCO2でのCDRの展開には、多数の実施可能性及び持続可能性における制約を受ける;
- 近未来の顕著な排出削減及びエネルギー需要及び土地需要を下げる措置は、BECCSに依存することなく、CDRの展開を数百GtCO2に限定することができる;
- 既存の可能性あるCDR措置には、新規植林及び再植林、土地の回復及び土壌炭素隔離、BECCS、大気からの直接の炭素回収貯留、耐久性の強化、海洋のアルカリ化が含まれる;
- これらの措置は、その成熟度、潜在的可能性、コスト、リスク、共同便益、トレードオフという意味で大きく異なる;
- 一部の経路は、需要側の措置及びAFOLU関連のCDR措置への依存を高めることにより、BECCSの展開を完全に回避する;
- 1.5°Cをオーバーシュートする地球温暖化の経路は、今世紀中の後半でのCO2排出量残高を超えるCDRに依存し、2100年までに1.5℃を下回る経路に戻る、オーバーシュートの幅を大きくするにはより多くの量のCDRが必要となる;
- このためCDRの展開の速度、規模、社会的な受容可能性の限界が、オーバーシュート後に1.5℃以下の地球温暖化に戻る能力を決定する;
- 炭素サイクル及び気候系への理解に関しては、正味マイナスの排出量が、ピーク後に温度を低下させる効果については未だ限定的である;
- 最近の可能性あるCDR措置は、大規模に展開するなら、土地、エネルギー、水、または栄養素に顕著な影響を与える可能性がある;
- 自然の生態系の回復や土壌カーボンの隔離といったAFOLU関連のCDR措置の一部は、生物多様性の改善、土壌の質、現地の食糧安全保障といった共同便益をもたらす可能性があるが、土地の炭素貯留量や他の生態系の機能及びサービスを保全し保護するため、持続可能な土地管理を可能にするガバナンスシステムが必要となる。
このセクションには二つの図が含まれる。SPM.3aは、世界の排出量経路の特性に関する図で、オーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までに抑制する経路、及びより高いオーバーシュートとなる経路での世界の正味の人為的CO2排出量を示す。
SPM.3bは、1.5℃の地球温暖化との関係における四件の代表的なモデルの特性に関する図であり、可能性ある緩和手法の範囲を示すほか、エネルギーや土地利用の予測、さらには将来の社会経済的発展の想定条件という、経済成長、人口の伸び、衡平性及び持続可能性などでも大きく異なるものを示す。
D. 持続可能な開発の概念及び貧困撲滅の努力における世界の対応の強化
このセクションは、最初、金曜日の朝に議論された。
D1:この小項目では、パリ協定の下で提出された各国の現在の緩和野心宣言が、世界の排出量にもたらす成果の推計値を論じる。各国政府が金曜日に議論した最終草案の冒頭ステートメントは、当初、国家決定貢献 (NDCs)と1.5°C目標とのギャップに言及していたが、サウジアラビアは、エジプトの支持を得て、NDCsへの言及に反対し、NDCsはSR15のマンデート及び合意された概要の範囲外であると論じた。両国代表は、NDCsは可能性ある約束にすぎず、支援を条件とする場合もあると論じた。このパラグラフは、コンタクトグループで更なる議論がなされ、その会合で、執筆者たちは、NDCsを説明するための代わりの文章を提案した。これは二つの国が拒否、その両国は、提案されている文章は依然「パリ協定の下で提出された野心(ambitions submitted under the Paris Agreement)」に言及していると指摘し、この表現はたとえNDCsと言う用語を使わなくても、NDCsが主題であることを明らかにしていると述べた。多数の国が、マンデート及びその元となるサイエンスはNDCs及びパリ協定の両方への言及を論じていたと主張した。
土曜日に改定された文書がプレナリーに提示されたが、この文書ではNDCsへの言及が除去される一方、パリ協定には言及している。数か国は、この改定文書の審議に同意した。これに反対したのは、サウジアラビア、エジプト、エクアドルで、パリ協定への言及に反対し、セントキッツ・ネーヴィス、マーシャル諸島、ベルギー、グレナダ、フランスも反対意見を表明、NDCsへの明確な言及をする以前の様式を希望した。多様な諸国が議論を進める方法を模索したが、意見の一致には至らなかった。
意見の一致が無かったことから、WG III副議長のSkeaは、IPCCの手順は異なる意見を説明するよう求めており、要請があれば記録しなければならないと規定すると指摘した。同副議長は、最も重きをおかれた意見はコンタクトグループ文書であり、これはパリ協定に言及する一方でNDCsには触れていないと指摘し、これを受け入れるよう提案し、サウジアラビアとエジプトは、IPCC-48の報告書において自国の反対意見を記録するよう要請した。これに基づき、このパラグラフは承認された。
D1.1:このパラグラフは、地球温暖化を1.5°Cに抑制する経路に関するもので、金曜日のプレナリーで議論された。サウジアラビアは、NDCsへの言及に反対し、これはUNFCCCからのSR15のマンデートを超えており、不適切なほど政策規範的であると論じた。EUは、多数の国の支持を得て、IPCC-44で合意されたSR15の概要は1.5°C目標と比較した緩和及び適応のオプション開発のペースを評価することをマンデートとしており、政策立案者たちは1.5oCという高い目標と比較したNDC野心の規模の評価を期待もし、必要としていると論じた。
オランダは、多数の国の支持を得て、文書草案は政策関連であるが政策規範的ではないと論じた。トリニダードトバゴは、他の小島嶼開発途上国の支持を得て、NDCの評価は極めて重要であると強調した。これらの論点に応え、D1.1 及び小項目D1の冒頭ステートメントの両方で受け入れ可能な別な表現を見出せなかったコンタクトグループの会合で、二つの国は、NDCsの範囲(scope)には緩和と適応の両方が含まれているが、この文書草案は緩和に不適切なほど焦点をあてていると論じた。土曜日のプレナリーに戻った際、WG III共同議長のSkeaは、両方のパラグラフに関するコンタクトグループの表現で、NDCsには言及せず、パリ協定には言及するという文書を提示し、サウジアラビア及びエジプトは会議報告書の中で両者の反対意見を記録するよう要請した。これに基づき、このパラグラフでの合意がなされた。
D1.2:このパラグラフは、大きな影響及びそれに伴う課題を結果として生じるオーバーシュートの軌跡に関するもので、土曜日に提示されたとおりで合意された。
D1.3:このパラグラフは、1.5℃をオーバーシュートなし、もしくは限定的なオーバーシュートで地球温暖化を抑制する課題は(野心的に)低いと認めるもので、土曜日に提示された通りで合意された。
D2:この小項目は、持続可能な開発、貧困撲滅、不平等の削減に対する気候変動の影響回避を扱っており、従来は、セクションAの小項目の一つに入れられていた。土曜日の朝、冒頭ステートメントの改訂版がプレナリーに提出されたが、この改訂版では地球温暖化を2℃ではなく、1.5°Cで抑制した場合、緩和と適応のシナジーを最大限にし、トレードオフを最小限にすれば、気候変動の影響回避はさらに大きいものになると強調した。
中国は、1.5℃までの地球温暖化に抑制するなら持続可能な開発の「達成は容易になる(easier to achieve)」という表現に異議を唱え、緩和に伴うトレードオフが大きくなる可能性を指摘した。ある執筆者は、この表現は文献の中に強固な基礎を持つものであると応え、2℃と1.5℃シナリオの比較で重要な差異のある影響を予想している例として、生態系及び貧困を挙げた。さらなる協議及び改定に続き、この冒頭ステートメントは合意された。
D2.1:このパラグラフは、気候変動の影響及び対応と持続可能な開発とのリンクに関するもので、原本では、セクションAの小項目の一つに含まれており、ハドルで議論された。土曜日の朝、参加者は、議論することなく、このパラグラフとその新しい記載箇所を承認した。
D2.2:このパラグラフは、悪影響の不均衡な分布への対応推進に向けた倫理及び平等面の考察に関するもので、本来はセクションAの小項目の一つに含まれていた。土曜日朝、参加者は、追加の議論なしで、このパラグラフとその新しい記載箇所を承認した。
D2.3:このパラグラフは、緩和と適応を可能にする条件に関するもので、本来はセクションAの別な小項目を構成していた。土曜日朝、原案文書の凝縮したバージョンが、追加の議論なしに受諾された。
D3:適応オプションに関するこの小項目の冒頭ステートメントは、提示された通りで受諾された。このステートメントでは、各国の国情に特有の適応オプションを、オプションを可能にする条件と共に慎重に選択するなら、持続可能な開発及び貧困削減に便益があると説明する。
D3.1:人間のシステム及び自然のシステムの脆弱性を軽減する適応オプションに関するこのパラグラフについて、ニカラグアは、適応と持続可能な開発のシナジーをリストする文章(sentence)の中で農業と林業のリンクを強調するよう提案した。この提案では合意されなかった。サウジアラビアは、シナジーのリストの中に数部門が抜けていると指摘し、持続可能な開発への言及を削除するよう提案したが、この言及はいずれにしても保持された。非公式のハドルの結果、適応オプションは、「もし十分に管理されるなら(if well managed)」持続可能な開発の側面と多くのシナジーを持つと特定することで合意した。その後、このパラグラフは、受諾された。
D3.2:このパラグラフは、持続可能な開発への悪影響をもたらすトレードオフまたは不適応を生む結果となる適応オプションに関するもので、本来は、劣悪な策定で施行された適応オプションにのみ言及していたが、スペインは、持続可能な開発に悪影響を与える適応に「不適応(maladaptation)」という用語を使うよう主唱した。
タンザニア、エクアドル、ブラジルは、劣悪な適応努力やその効果に注目する文章の中での集約農業の例示に疑問を呈したが、エルサルバドルは、都市インフラのマイナスの影響を説明する文章について尋ねた。ブラジルとチリは、両方の例の削除、並びに影響のリストの削除を提案した。インドは、SPMの別な箇所のステートメントでは集約農業は1.5℃目標達成に不可欠としており、劣悪な適応に集約農業を含めるのは矛盾すると指摘した。
金曜日夕方、参加者は、このパラグラフで合意したが、これには非公式グループの提起した変更点が含まれた、具体的には、特に農業を集約化し、都市インフラを拡大するようなプロジェクトでの悪影響の可能性に対する言及を除去した。
D3.3:このパラグラフは、適応及び緩和オプションの効果増大に関して提示され、多少の編集面での修正を加えて合意された。
D3.4:適応と緩和のシナジーとトレードオフに関し、参加者は、生態系機能への言及について議論し、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(Intergovernmental Science Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services (IPBES))で用いられる用語に合わせ、生態系の「機能及びサービス(functions and services)」に言及することで合意した。さらに、再植林と合わせ新規植林への言及も追加することで合意した。これらの変更を行い、このパラグラフは合意された。
D4:この小項目は、持続可能な開発目標(SDGs)を横断するシナジーとトレードオフに関係する緩和オプションを扱う。その冒頭ステートメントは、土曜日に合意された。
D4.1:このパラグラフは、1.5°C経路のSDGsとのシナジー及びトレードオフを論じており、土曜日の朝に第一回の審議が行われた。サウジアラビアは、この小項目に新しいパラグラフを追加し、1.5°C及び2°Cを下回る緩和経路は土地関連の措置に依存する場合が多く、これは食糧生産と競合し、世界の食料安全保障にマイナスの影響を与えうると記載する。参加者は、これらの食糧安全保障上の懸念をD4.3に追加することで合意した。
D4.2:このパラグラフは持続可能な開発と最も顕著なシナジーを持つ1.5℃経路を論じており、土曜日の朝に議論された。エジプトは、経路に対する障壁も記載されるべきだとし、さらにサウジアラビアの支持を得て、「1.5℃温暖化した世界において、持続可能な開発を達成し、貧困を撲滅し、不平等を削減するための条件を認識する(acknowledging the conditions for achieving sustainable development, eradicating poverty, and reducing inequalities in a 1.5°C warmer world)」という新しい文章を提案した。執筆者は、インドに対する回答で、このパラグラフで高い確信度が最初に与えられたのは、限定的なエネルギー需要は高度のシナジーに関係することが研究で示されているからだと明言した。
このパラグラフは、条件に言及せずに、持続可能な開発、貧困の撲滅、不平等の削減が温暖化を抑制する可能性を示す文章を追加して、合意された。
D4.3:このパラグラフは、土地ベースのCDR、及び他の土地集約型緩和オプションがSDGsに与える影響を論ずる。土曜日の朝、このパラグラフに食糧安全保障の懸念も含めるようサウジアラビアが提案した後、シナジー及びトレードオフに関する図SPM.4と共に、このパラグラフを議論するハドル会合が開催された。
このパラグラフは、食糧安全保障と大規模な土地関連措置の展開の間で競合が起きる可能性を指摘するよう改定した上で、合意された。
D4.4:このパラグラフは、化石燃料への依存度が高い地域における持続可能な開発のリスクを論じており、土曜日のプレナリーで提起され、サウジアラビアは、多様な政策パッケージに広く言及するよう求め、たとえば炭素価格化や化石燃料補助金など、特定の政策を選び出すことに反対した。同国の懸念は、より一般的で簡潔な表現で記載された。さらにエジプトの提案した、エネルギーコスト、国際競争、資産の減価償却など、実施関係の課題、及びドイツの提案した共同便益を最大限にする可能性への言及も含まれた。これらの変更を行った上で、このパラグラフは合意された。
D4.5:土曜日の朝、一定範囲の SDGsのトレードオフを解決できる再配分政策に関するこのパラグラフは、米国が政策への一般的な言及の方が受け入れやすい可能性があると提案したのに応じて、ある執筆者が「再配分(redistributive)」政策への言及は文献で支持されていると明言した後、このパラグラフは受諾された。
D5:この小項目は、地球温暖化のリスク抑制において、投資、政策手法、行動の変革が果たす役割を論じており、さらに1.5°Cの目標達成における持続可能な開発の重要性にも触れているもので、金曜日のプレナリーで短時間議論され、そこでは、投資に言及する場合には、緩和と適応への言及の分画を含めるようFGDを改定したとの説明がなされた。この文書は、改定なしに合意された。
パラグラフのD5.1、D5.2、D5.3、D5.4は、土曜日朝のハドルで審議され、土曜日午後のプレナリーに提起され、検討され、このプレナリーにおいて、ハドルから提示されたものに多少の改定を加えて受諾された。
D5.1:この小項目は、緩和及び適応のためのインフラ投資への資金誘導を論じており、機関投資家、アセットマネージャー、開発銀行または投資銀行による民間資金の動員、さらには公共ファンドの供与が関わる可能性がある。本来の表現では、特に、世界の貯蓄額をインフラ投資へ振り向けることに言及していた。このパラグラフは、土曜日に合意された。
D5.2:適応資金に関するこのパラグラフは、知識のギャップ、コスト推計、適応のニーズ及び障壁の支援資金を論じる。本来の表現では、推計コストの数値を225億米ドル以上としていたが、非公式協議において、この記述は除去された。このパラグラフは、土曜日に合意された。
D5.3:このパラグラフは、エネルギーシステムの年平均の投資ニーズを論じ、2016年と2035年の間に約2.4兆米ドルとしている。原本の記述では、特に低炭素エネルギー技術及びエネルギー効率に対する年平均投資額の倍増、及び今後20年間の化石燃料の採掘及び転換に対する投資額の約25%減少について議論した。
このパラグラフは、低炭素エネルギー及びエネルギー効率への投資増額、化石燃料部門の投資額の減少、世界のインフラ投資の再配分への言及を削除するよう改定され、土曜日に合意された。
D5.4:増進資源及び投資の動員を推進できる政策パッケージに関するパラグラフもハドルで議論されたが、プレナリーでもさらに改定され、サウジアラビアは、多様な政策パッケージに広く言及するよう求め、特定のパッケージの選び出しに反対した。この懸念は、より一般的で簡潔な表現により対応された。さらに、エジプトの提案したエネルギーコスト、国際競争、資産の減価償却などの多様な実施関連の課題への言及、ドイツの提案した共同便益の最大化の可能性への言及も含まれた。これらの変更の上、このパラグラフは合意された。
D5.5:新しい破壊的な技術や実施方法、気候主導のイノベーションに関するこのパラグラフは、土曜日の朝、長時間議論された。インドの懸念に応え、そのような技術への「公的な(public)」支援への言及が挿入された。さらにインドは、市場だけでなく公的支援が必要だというのがUNFCCCプロセスでの開発途上国の立場だと述べ、意見対立のある問題に関する文献は、議論の両方の立場を反映させたものでなければならないと述べた。ブラジルは、「市場進出(market uptake)」を「民間部門の参画及び採用(private sector engagement and adoption)」に置き換えることを提案した。執筆者は、そのような言及は報告書本体に強固な基礎があるものではないと指摘し、「イノベーションの普及(innovation diffusion)」を代わりの表現として提案した。
非公式協議の後、最終的な表現では技術の普及にインセンティブを提供する政策ミックスに言及する表現とした上で、このパラグラフは受諾された。
D5.6:土曜日、教育、情報、コミュニティ手法に関する一つのパラグラフが提示されたとおりで、承認された。
D6:1.5℃での地球温暖化の抑制を推進する社会及びシステムの移行及び転換に関する小項目の冒頭ステートメントは、土曜日、提示されたとおりで合意された。
D6.1:社会正義及び平等に関するこのパラグラフは、金曜日の夜に検討され、議論なしで承認された。
D6.2:気候耐性の開発経路に関するこのパラグラフは、金曜日の夜に審議された。ある執筆者は、インドからの質問に答え、「非国家行動(non-state actors)」という用語は、市民社会(単数または複数)、並びに民間部門を指すとし、市民社会の例は報告書本体の章にリストされていると指摘した。ジンバブエ、スイス、シンガポールの意見発表を受け、「始点(starting points)」が異なることによる、気候耐性開発経路のポテンシャルの違いに対する言及は、異なる「体系的な脆弱性(systemic vulnerabilities)」への言及に変えられた。
ボリビアは、貢献の強化が必要とされるもののリストで、先住民にも言及するよう提案したが、執筆者は、このステートメントは文献で支持されていないと論じた。同じ文章において、「貢献(contributions)」という用語は、「努力の強化(enhanced efforts)」に置き換えられた。このパラグラフの要素は政策規範的である、あるいは行動を教唆するとの懸念に対応した変更が行われ、このパラグラフは受諾された。
D6.3:1.5°Cの経路と協力及び持続可能な開発の関係に関し、インドは、協力は何を意味するかを問うた。執筆者たちは、モデル化演習においては、協力とは各国が世界的な緩和努力に参加する程度を指すと説明し、より明確にするため、「国際協力(international cooperation)」という用語を用いるよう提案した。そのような改定や、明確性のための他の編集を行った上で、このパラグラフは受諾された。
D7:このセクションは、国際協力及び気候行動の能力向上を論じる。金曜日の夜、非国家行動者及び国際協調に関する冒頭ステートメントの改定文書は、非公式グループからプレナリーに送られた、この文書では国際協力は開発途上国及び脆弱な地域による取り組みを可能にする極めて重要なものであると記載する。これは受諾された。
D7.1:パートナーシップの役割に関するこのパラグラフは、議論なしに受諾された。
D7.2:このパラグラフでは、受け入れ可能なマルチレベルのガバナンスの強化に対する協力を論じており、WG II共同議長のDebra Robertsは、改定されたパラグラフはFGDの様式と比較し、技術及び資金への言及を強めており、ジェンダー対応政策の表現も含めると指摘した。米国は、最終草案には含まれていない「責任ある(accountable)」ガバナンスへの言及を支持した。
ある執筆者は、このセクションは集約的行動の国際的な側面を強調すると同時に、国際レベル、国内レベル、国内小地域レベルのリンク構築も目指すと指摘した。この執筆者は、ジェンダー「対応型(responsive)」政策はジェンダーに「敏感な(sensitive)」とも言及可能であるとするエジプトの発言に同意した。エジプトは、サウジアラビアの支持を得て、革新的な資金だけでなく、資金一般にも言及する必要があると強調した。
金曜日夕方、改定文書が出され、多国間のガバナンスは強化され、信頼されるものにする必要があると規定する改定文書が、このパラグラフに関するハドルから提起され、受諾された。
D7.3:途上国における1.5℃での気候抑制への対応を支援するための国際協力を論じるパラグラフに関し、WG II共同議長のRobertsは、改定されたパラグラフはFGDの方式と比較し、特に国内資源の重要性に焦点を当てていると指摘した。中国は、国際協力は、実施を可能にする条件として「極めて重要である(is critical)」ことを反映する表現を提案し、インドの支持を得て、国内での実施における国際協力の重要性を強調した。タンザニアは、「国際協力(international cooperation)」という用語の明快さを求めた。ザンビアは、UNFCCCプロセスは資金及び技術を「可能にする(enabling)」より「供与する(providing)」と表していると発言した。
金曜日夕方、ハドルからの改定文書が審議された。ある執筆者は、国際協力という用語はSR15のマンデートに含まれると明言した。この執筆者は、インドからの質問に応え、このパラグラフでの国際協力の役割という言及について、これは資金「の供与(provision of)」よりも、「へのアクセス(access to)」の方が、より正確な文献の表現であると述べた。このパラグラフは、受諾された。
D7.4:努力の結集による気候変動への世界的対応の強化に関するこのパラグラスは、金曜日の朝に最初の審議が行われた。中国は、「努力の結集(collective efforts)」が何を意味するか明らかにするよう求めた。金曜日の夜、非公式に合意された文章が提示された。その文章では、異なる状況及び能力を反映させる形で、効果性と共に衡平性も考慮に入れ、全てのレベルでの努力を結集することに焦点を当てた。このパラグラフは、その後、多少の編集上の修正のうえで、受諾された。
図SPM.4:この図は、気候変動の緩和と持続可能な開発の間のシナジー及びトレードオフの可能性を示しており、最初は、木曜日のコンタクトグループで議論され、その会合で参加者は、部門の明確化、緩和行動とSDGsの間のシナジー、トレードオフの明確化など、修正点を提案し、緩和の結果として気候変動の影響を回避する場合の便益など、文献におけるギャップを特定するよう提案した。
土曜日のプレナリーで、サウジアラビアは、この図は「文献の誤引用(misrepresentation of the literature)」であるとし、この図ではSDGsと緩和オプションの関係、トレードオフと機会コストが明確になっていないと述べた。同代表は、世界の気温を1.5°C(の上昇)で抑えるため支払われるべきコストの「巨額さ(hefty)」を強調した。
執筆者たちは、この図はシナジーとトレードオフの説明であり、評価した文献を反映し、表5.2に示した元となる報告書及びその参照文献を統合していると答え、政策立案者から受けたコメントを基に変更するなど、プロセスの透明性を指摘した。
セントキッツ・ネーヴィス及び英国は、提示された通りの図の保持を希望した。WG II共同議長の Robertsは、この図は SR15の革新的な要素の一つであるとの見方を示し、この章全体はSR15作成へのUNFCCCの招請に示されたマンデート「を網羅しそれを超える(over and above)」ものだが、合意されたIPCCのSR15概要に確固とした根拠を置くものだと指摘した。この図は合意された。
最終的なSPMの文章:このセクションは、持続可能な開発の概念及び貧困撲滅の努力において、世界的な対応強化を議論する。
小項目D1は、パリ協定の下で提出された各国の現在の緩和及び野心を反映する経路は、たとえ2030年以後の排出削減の規模及び野心を極めて挑戦的に増大させることで補ったとしても、地球温暖化を1.5°Cまでで抑制することはないと認識する。
この小項目は次のパラグラフを含める:
- オーバーシュートなしか、限定的なオーバーシュートで地球温暖化を1.5℃までで抑制する経路は、2030年までに明確な排出削減をする必要がある;
- この目標をオーバーシュートする経路は、より大きな影響及びそれに伴う課題を生む結果となり、この中には実施上の課題からして達成できない可能性がある速度とボリュームでCDRの規模拡大及び展開を図る必要性が含まれる;
- 温室効果ガス排出量を削減する行動の遅延で生じる課題には、コスト厖大化のリスク、長期的な柔軟性の減少、不均衡に配分された影響などが含まれる。
小項目D2は、1.5℃での地球温暖化の抑制により回避される気候変動の影響は、持続可能な開発、貧困撲滅、不平等の軽減に対してより大きくなると認識し、次の項目に関するパラグラフを含める:
- 1.5°Cまたは2°Cの地球温暖化と開発目標とのリンクを評価するための、確立された枠組としてのSDGs;
- 特に貧困で不利な状況にある人口に対する地球温暖化の悪影響や、緩和、適応の不均衡な配分への取り組みを助ける倫理及び衡平性;
- 緩和及び適応の条件、これにはマルチレベルのガバナンス、制度能力、政策手法、技術革新と移転、資金の動員、人間の行動及び生活様式(lifestyles)の変革の推進が含まれる。
- 小項目D3は、適応オプションは各国の国内状況に特有のものであると認識し、1.5℃の地球温暖化であれば、トレードオフはあっても、持続可能な開発及び貧困削減を利する可能性があると認識し、次に関するパラグラフを含める:
- 適応オプションと持続可能な開発のシナジー;
- 持続可能な開発のためには、悪影響に不適応となる可能性、これにはGHG排出量の増加、水の利用、ジェンダー及び社会的な不平等、自然の生態系への侵入が含まれる;
- 適応及び緩和オプションを参加性が高く統合的な形で、各国政府の支援を得て実施する;
- 排出量を緩和すると同時に緩和と適応トレードオフの脅威もある適応オプションのシナジー 及びコスト節減。
小項目D4は、1.5°C経路と合致する緩和オプションに焦点を当てると共に、SDGsを横断する多数のシナジー及びトレードオフにも注目し、次に関するパラグラフを含める:
- SDGsとシナジーを持つ1.5℃経路、及び緩和とSDGsとの間でのトレードオフの可能性を持つ1.5℃経路;
- 低いエネルギー需要量、低い材料消費量、GHG原単位の低い食糧消費量を含める1.5℃経路は、持続可能な開発及びSDGsに関し、最も顕著なシナジー及び最も少ないトレードオフを有すると同時に、1.5℃での温暖化の制限も助ける;
- 新規植林及びバイオエネルギーの供給など、大規模な土地関連の措置の展開に依存する1.5℃及び2℃経路、管理が悪ければ食糧の生産及び食糧安全保障と競合;
- 歳入及び雇用を化石燃料に高度に依存する地域において、1.5°C経路と合致する緩和、並びにそれに伴う課題に対応する目的での経済部門及びエネルギー部門の多角化推進政策による、持続可能な開発のリスク;
- 部門及び人口を横断する再配分政策の投資ニーズ、これは貧困層及び脆弱な人口を1.5°C経路での緩和投資全体に対し小さい割合であるとして、これらの人口を覆い隠してしまう。
- この小項目には、SDGsを用いる一方で、コストや便益は含めない形で、緩和オプションと持続可能な開発のリンクを表示する図も含まれる。
小項目D5は、持続可能な開発及び貧困撲滅の概念において1.5℃の地球温暖化がもたらすリスクを制限する転換について議論する、これは適応及び緩和への投資、政策手法、技術革新の加速化、行動の変革を高めることで可能になる。
この小項目には次に関するパラグラフが含まれる:
- 緩和及び適応のインフラに対する投資へ資金を振り向け、公共の資金の供与と共に、民間の資金を動員する;
- 気候耐性を強化する投資を計算するデータの不足などの知識のギャップ、能力の限界や適応資金へのアクセスなどの障壁;
- エネルギーシステムの年間平均投資額として世界のGDPの約2.5%相当が必要;
- 資源動員を推進する政策ツール、これには世界の投資及び貯蓄をシフトすることによるもの、市場及び非市場ベースの制度によるものが含まれ、これに公平性を確保する措置を付ける;
- 産業及び資金では、新規の破壊的な可能性もある技術及び実施方法を広範に採用する必要がある可能性;
- 広範な行動の変革を加速化する上での教育、情報、コミュニティ手法の便益、及び政策面の影響結果の一般の受け入れ可能性及び配分及び手順で受け止められる公平性。
小項目D6は、持続可能な開発の支援には社会的転換及び変換が必要であると記述し、次に関するパラグラフを含める:
- 社会正義及び衡平性は1.5°C地球温暖化の経路の根幹;
- 概念及び脆弱性が異なることから、気候耐性の開発経路も異なる可能性;
- 緩和及び適応の課題やコストの少なさは持続可能な開発と一致し、貧困、不平等、国際協力の欠如は1.5℃経路とは不一致。
小項目D7は、可能にする環境を提供するための能力強化を論じ、次に関するパラグラフを含める:
- 非国家の官民の行動者、機関投資家、銀行システム、市民社会、科学研究所とのパートナーシップ;
- 強化され信頼できるマルチレベルのガバナンスでの協力、特に非国家行動者、多様なガバナンスレベルにおける部門別及び部門横断の政策協調、ジェンダー・センシティブ政策、革新的な資金調達、技術開発及び移転での協力を含める;
- 開発途上国及び脆弱な地域において可能にするものとして重要な国際協力;
- 全てのレベルでの努力の集積、状況及び能力の違いを反映させ、衡平性及び効果性を考慮に入れる。
ボックスSPM 1:SR15の中心にある根幹の概念
月曜日の午後、参加者は、SR15の中心にある根幹の概念に関するボックスSPM.1の審議を開始した。概念はこの会議の週一杯、初めて登場するたびに、審議され、一部はハドルでも議論された。
世界の平均表面温度:GMSTの定義に関し、参加者は、他の問題の中でも、特定の参照期間からの「逸脱(departures)」をそのような期間からの「偏差(anomalies)」と表現できるかどうかを議論したが、前者の表現を保持することで合意した。
火曜日、参加者は議論を続け、引用された主要な方法に加え、GMSTでの変化を表面近くの世界平均気温での変化を用いて近似値を求められるかどうか 、できる場合にはそれをどのように反映させるか、審議した。一部の国は、このような規定は政策立案者にとっては技術的過ぎるとみなしたが、たのものは、異なる推計手法の存在に注目する価値を強調した。非公式なハドルの後、参加者は、追加の規定に多少の改定を加えた上で保持することに同意し、この定義は承認された。
産業革命前:この定義は、1750年頃の大規模な産業活動の開始に先立つ複数の世紀の期間を指し、産業革命前のGMSTの近似値を求めるときは、1850-1900年を参照期間として用いた。火曜日、この定義がコメントなしで合意された。
地球温暖化:米国からの明確化要請に応えて、この文章は、現在の温暖化傾向が数十年間であると特定するように改定された。改定された定義は火曜日に承認された。
正味ゼロのCO2排出量:火曜日、参加者は、「約(approximately)」という言葉がこの定義の中で、CO2排出量と除去量のバランスを見定めるのに必要かどうか議論した。一部のものはこの言葉の方が正確であるとみなしたが、他のものは、この言葉は曖昧さをもたらすと論じた。参加者は、この修飾語を削除すると合意した。さらに参加者は、そのようなバランスの時間範囲を導入する方法について議論し、結局、「特定の期間にわたり(over a specified period)」という表現で合意した。その後、合意されたこの定義は、特定の期間にわたり、人為的なCO2排出量が人為的なCO2除去量と世界的にバランスがとれたときに、正味ゼロのCO2排出量が達成されたと指摘する。
CDR:火曜日、参加者は、特にこの定義においてCO2「利用(utilization)」への言及を入れるというサウジアラビアの提案について議論し、スイスは、この分野での興味ある展開に注目し、EUとオランダは、そのような利用が長期間の除去に結びつく保証はないと警告した。サウジアラビアの提案は、受諾されなかった。
CDRの対象となる吸収源を説明する文章に関し、パキスタンは、ウクライナの支持を得て、「自然のCO2吸収源(natural CO2 sinks)」はCDRから除外されると記述する文章の削除を提案、そのような吸収源の人為的な強化を対象とする場合に、それだけを特定して除外するのは混乱させる可能性があると論じた。ブラジルは、ベルギー、ドイツ、マーシャル諸島の支持を得て、この文章の保持を提案し、これは対象範囲を特定していると指摘した。インドは、吸収源の「提案され、進行中の(proposed and ongoing)」強化への言及を定義づけするよう提案したが、数か国が異議を唱えた。非公式協議からは、吸収源の「既存の及び可能性ある(existing and potential)」人為的 強化と言及する文章が作成され、この改定された定義が承認された。
合計のカーボンバジェット:コンタクトグループでの改定を受け、この言葉は産業革命前から人為的CO2排出量が正味ゼロに達したときまでの期間において推計された正味の地球規模の人為的CO2排出累計と定義され、他の人為的排出量の影響を考慮し、一定の確率で地球温暖化を一定レベルに制限する結果となるものとされた。この定義は提示されたとおりで合意された。
残余のカーボンバジェット:コンタクトグループでの議論に続き提起されたこの定義は、一定の開始時点から人為的CO2排出量が正味ゼロに達した時までで推計された正味の地球規模人為的CO2排出累計は、他の人為的排出量の影響を考慮し、一定の確率で、地球温暖化を一定レベルに制限するする結果となるものとされた。これは追加のコメントなしで合意された。
温度のオーバーシュート:木曜日、コンタクトグループでの議論の後、数か国は、この定義にはオーバーシュートはどのように緩和される可能性があるかという説明を含めるべきでないと述べた、このため、CDR及び他のGHGsの削減/排出への言及は除去された。その後、この定義は合意された。
排出経路:木曜日、コンタクトグループでの「経路(pathway)」の定義の改定の後、参加者は、この定義の意味は多すぎることで合意し、「オーバーシュートなし(no overshoot)」、「限定的なオーバーシュート(limited overshoot)」、「より大きなオーバーシュート(higher overshoot.)」の対象となる排出経路の分類の説明を提案した。インドは、排出経路は次のとおりであることを明らかにする定義づけを要請した:モデル依存;特定の国において排出増加または低下の軌跡ではない;世界的に集約され、仮定された。これらの懸念に対応して改定された定義で合意された。
影響:気候変動による特定の影響のリストに関し、サウジアラビアと南アフリカは、このていぎは全ての影響を指すか、一切リストすべきでないと述べた。
ある執筆者は、元となる科学報告書の用語集の定義は科学文献に基づく言葉を用いるが、SPMの定義はAR5の定義に基づき構築されるべきで、三つのWGsを横断して一貫性を持つべきだと指摘した。
非公式協議の後、参加者は、特定の影響の例を削除するとの一人の執筆者の提案を取り入れた定義づけを承認した。
リスク:この定義は改定なしに合意されており、人類社会及び自然系への気候関連の害はその害と影響を受けるシステムの脆弱性及び曝露の相互作用の結果として生じる悪い影響結果の可能性を含める。
気候耐性の開発経路:この定義は金曜日に議論された。米国は、この定義の次の言及に懸念を表明し、これは範囲が広すぎると述べた:「全ての規模及び経済を横断する衡平な社会の変革(equitable societal transformations across all scales and economies)」。ある執筆者は、気候耐性開発経路の軌跡は地球規模ではなく、コミュニティや国家など全てのレベルを含めており、全ての国家及び経済を指すと説明した。この執筆者は、この表現はAR5に基づくものであり、定義で言及する衡平性関連の要素は文献での提案通り、社会の変革という考えからにおいて正当化されると指摘した。議論は非公式協議に移された。金曜日の夜、次のように改定された定義づけで合意された:「持続可能な開発をマルチな規模で強化する軌跡、及び衡平な社会の及びシステムの変革及び転換により貧困を撲滅する努力(trajectories that strengthen sustainable development at multiple scales and efforts to eradicate poverty through equitable societal and systems transitions and transformations)」。
WGs I、II、IIIの合同閉会会合
土曜日午後、WGsは、WGsのSPMを承認し、そのもととなる報告書を受け入れ、IPCCプレナリーに送った。合同会合は、午後2時50分、閉会した。
IPCC-48の議題項目及び決定
IPCC-48は、月曜日朝、金曜日午後、土曜日午後に会合し,プレナリーは進捗状況報告書を聴き、多数の決定書を採択した。
資金安定性に関する特別タスクグループ
月曜日朝、参加者は、ATG-資金の報告書(IPCC-XLVIII/Doc.3)を審議した。ATG-資金共同議長のThelma Krugは、IPCCの資金状況は改善したが、まだ長期資金の安定性に注目する必要があり、ATG-資金は他の国連機関における関連の経験を探究すべきであるとした、IPCC-47の合意を想起した。同共同議長は、資金貢献において各国政府が直面する障壁についての第2回アンケートには12か国しか回答しなかったと指摘した。
ATG-資金共同議長のYouba Sokonaは、次を指摘した:2018年初頭の信託基金の残高は530万スイスフラン;2018年9月25日時点で受理した貢献合計額は440万スイスフラン;9月30日時点でのプレッジ合計額は550万スイスフラン。歳出側に関し、同共同議長は、2018年予算として承認されたのは790万スイスフラン、9月19日付の2018年の歳出額は460万スイスフラン、2018年末で予定される歳出合計額は570万スイスフランで十分予算内である。
Sokona共同議長は、加盟国からのさらなる回答を刺激する電子フォーラムが設置されると述べ、パネルに対し、他の国連機関で成功裡に行われているのと同様、外部の専門家の採用を検討するよう推奨した。
ドイツは、日本、スウェーデン、ベルギーの支持を得て、そのような外部専門家への委託条件及びその予算への影響に関する詳細を求めた。Krugは、これに応えて、そのような詳細はIPCC-49に提出されると述べた。
スイスは、国連の評価基準に基づき貢献を検討するよう提案し、資金における外部コンサルタントの有用性に疑義を唱えた。同代表は、IPBESはフランス政府からの資金専門家の応援という便益を受けたと指摘し、各国に対し、IPCCでもそのような手法を検討することを奨励した。
日本は、2018年度において信託基金への寄付額を50%増加したと指摘し、同様の寄付の継続を約束した。
韓国は、ベルギーの支持を得て、電子フォーラムという考えを歓迎した。同代表は、2009年以後の同国の毎年の寄付額がおおよそ12万スイスフランであると指摘し、2020年まで引き続き寄付を行うとの約束を指摘した。同代表は、第六次評価サイクルのSYR TSUに対し、毎年44万1千スイスフランを寄付するとの同国のプレッジに焦点を当てた。
タンザニアは、IPCCに対する初めての寄付が他の国からの更なる寄付を刺激することを希望すると表明した。バングラデシュは、将来、寄付を開始する意図があると指摘し、マリは、過去の寄付を想起し、啓発のためにも同様の寄付を行うことが重要だと強調した。スリランカは、自国が2019年に寄付を開始すると発表した。
ガーナは、緑の気候基金及び地球環境ファシリティからの貢献の可能性について質問し、Sokona共同議長は、その予想を探る努力が行われていると指摘した。
土曜日、パネルは、ATG-資金に関する決定書を採択した。
最終決定:決定書(IPCC-XLVIII/Doc.3)において、パネルは特に下記を行う:
IPCCの信託基金に寄付を行った全ての加盟国政府に対し、感謝の意を表し、初めて寄付を行った多くの国、さらには寄付額を増加した国に対する感謝を指摘した;
IPCC事務局に対し、IPCCの資金安定性に関する外部コンサルタントの委託条件及びそのような機能の予算面の影響をIPCC-49に提出するよう要請する;
IPCC事務局に対し、資金専門のスタッフを補充し、IPCCの資金安定性に関わる問題の作業を行う可能性について、IPCC加盟国政府と共に探究するよう要請する。
進捗状況報告
気候変動と都市に関する国際会議:WG II共同議長のRobertsは、この会議の報告書 (IPCC-XLVIII/INF.1, Rev.1)を提出し、2018年3月5-7日にカナダのエドモントンで開催されたこの会議はパネルに対し特に次を検討するよう推奨した:
- AR6の完成後に専門家会議を開催し、都市レベルの地方別モデル研究に焦点を当てるよう、第七次評価サイクルに推奨する;
- 都市に関する政府間組織と気候変動の科学に関する政府間組織との協議の頻度を上げる;
- IPCCアウトリーチイベントにおいて都市への注目を含める;
- 将来の評価サイクルにおけるクロスカッティングな題目としての都市。
ドイツは、この会議はパネルが共催者であるが、それ自体はIPCCの会議でないと指摘し、将来は、同種のイベントにおけるパネルの役割を明確にするため、更なる努力をするよう要請した。
パネルはこの報告に留意した。
地域向けの気候情報評価に関する専門家会議:WG I共同議長のMasson-Delmotteは、この報告書(IPCC-XLVIII/INF.5)を提出し、2018年5月16-18日にイタリアノトリエステで開催された専門家会議ではそのような情報に関しWGを横断する協調を推進することなどが指摘された。同共同議長は、特に次の項目に関するプレナリーでの議論に注目した:AR6の地域別地図の範囲、これは主要な地図の特性を識別し、元の情報の追跡可能性(traceability)を確保する必要性。同共同議長は、この報告書に記載する会議からの推奨事項のサマリーを指摘した。パネルはこの報告書に留意した。
短寿命気候強制力に関する専門家会議:TFI共同議長のKiyoto Tanabeは、2018年5月にスイスのジュネーブで開催されたこの専門家会議の報告書(IPCC-XLVIII/INF.4)を提出した。同共同議長は、TFIの議長団及び科学運営委員会が提案した将来のTFIの作業について報告した。特に次を提案した:
- 国別SLCFインベントリの報告書作成を開始しようとする諸国を支援すべく、現在のSLCFインベントリにおけるギャップを明らかにするため専門家会合を開催する;
- 第7次評価サイクルにおけるSLCFインベントリの新手法論報告書作成の可能性を含め、今後の作業計画を策定する。
共同議長のTanabeは、スイス及びノルウェーの資金供与に感謝した。
ノルウェーは、スイス、メキシコ、チリの支持を得て、手法論報告書の作成を早める、特にAR6サイクルに早めるよう求めた。同代表は、スウェーデンと共に、IPCC-48がその報告書の中で専門家会議開催の提案に留意すること、並びにSLCFsの将来作業に関するTFIからの追加提案をIPCC-49での審議にかけるよう提案した。
日本は、第六次評価サイクルにおけるSLCFsに関する作業を現在進行中の作業とどのように調整するか、IPCC-49での評価を推奨した。フィンランドは、TFIあ2019年5月にその作業を終了する前に過度な負担をすることに警鐘を鳴らした。
パネルは、この報告に留意した。
国別GHGインベントリに関するタスクフォース:TFI共同議長のEduardo Calvo Buendiaは、報告書(IPCC-XLVIII/INF.3)を提出、2006年IPCC国別GHGインベントリのガイドライン2019年精緻化版のこれまでの進捗状況をレビューした。同共同議長は、最終的な政府レビューは2019年1月28日から3月4日の間に行われ、その後、2019年5月に日本で承認のための会合が行われると指摘した。その他の活動に関し、同共同議長は、特にAFOLUワークシートでの進捗状況を指摘、異なる排出源から1000件以上の新しいデータが排出要素データベース(Emission Factor Database)に追加されたと指摘した。パネルはこの報告書に留意した。
WGs I、II、IIIの第一回合同会合でとられた行動の受容
土曜日午後、IPCC議長のLeeは、参加者に対し、WGs I、II、IIIの合同会合でとられた行動、及び合同会合から送られたSPMの受け入れを求めた。
サウジアラビアは、報告書の技術評価におけるNDCsへの言及、はSPMでのパリ協定への言及に「相当な意見の不一致(substantial disagreement)」を表明し、テクニカル・サマリーと元となる報告書のセクションリストはパネルのマンデートの枠外であると考えると述べた。
米国は、パネルによるSR15の受諾は報告書の結論の支持を意味するものではなく、SPMの承認はその主要なメッセージを全て支持することを意味するものではないと強調した。同代表は、米国は「アメリカ人(American people)」に有利な条件がない限り、できるだけ早い機会にパリ協定から撤退するつもりであると再度述べた。
エジプトは、 NDCsとリンクする経路はこれらのNDCsに示される条件、特に開発途上国の条件次第であると強調した。
議長のLeeは、このステートメントはIPCC-48の報告書草案に含まれると指摘した。合同会合の行動は受諾された、この中にはSPM (IPCC-XLVIII/Doc. 5)の承認、元となる報告及びテクニカル・サマリーの受け入れを含まれる。
グローバルストックテイクの観点から見たIPCCの将来の作業構成
グローバルストックテイクの観点から見たIPCCの将来の作業構成に関するタスクグループの進捗状況報告(IPCC-XLVIII/INF.2, Corr.2)を含める議題項目は、金曜日の朝、パネルで審議された。タスクグループ共同議長のEric Brunは、同グループが提案した行動計画をレビューし、同グループは望むべくは開発途上国からの報告官を求めていると指摘した。同共同議長は、パネルに対し、同グループの行動に留意し、タスクグループの頭字語(TG-FWLGST)にも留意するよう求めた。IPCCは、進捗状況報告に留意した。
IPCC利益相反政策の実施
IPCC副議長のKrugは、この報告書を提起し、利益相反が明らかとなったことはないと指摘し、任命された専門家は全てそれぞれの役割につくことを認められたと指摘した。IPCCはこの報告に留意した。
IPCC奨学金プログラム
金曜日の朝、IPCC奨学金プログラムに関し報告(IPCC-XLVIII/Doc.4, Rev.1)したIPCC副議長でサイエンス理事会の議長でもあるKo Barrettは、奨学金プログラムの資金供与を決定する評議員会の指名候補者名を提示した。同議長は、パネルに対し、次の4名の評議員会の評議員候補を提示した:
- Hironori Hamanaka、元環境省審議官、地球環境戦略研究機関の元理事長、日本;
- Fatima Denton、国連大学理事、Institute for Natural Resources in Africa、ガーナ;
- Jose Goldemberg、São Paulo Research Foundation、ブラジル;
- Mary Robinson、元アイルランド大統領、国連人権委員会の元高等弁務官。
土曜日、パネルは、奨学金プログラムの評議員会の指名候補を承認する決定書を採択した。
IPCC-49の場所と日付
土曜日の午後、IPCC事務局長のMokssitは、IPCC-49は2019年5月に日本の京都で開催されると発表した。
閉会プレナリー
閉会プレナリーにおいて、韓国は、SR15の「歴史的な(historic)」受諾を歓迎し、ネルソン・マンデラの言葉を想起した:「実行されるまでは全て不可能に思える(Everything seems impossible until it’s done)」。
IPCC議長のLeeは、「熱心に待望される(keenly awaited)」SR15とそのSPMに貢献してきた全てのものに感謝した、この中には執筆者、TSUs、WG共同議長も含まれる。同議長は、「誇りを持てるSPM(an SPM we can be proud of)」に焦点を当て、各国政府はこのSPMを直ちに、UNFCCC COP 24のタラノア・ダイアログなどでも、利用開始できると述べた。
議長のLeeは、土曜日の午後3時41分、会議閉会の槌を打った。
IPCC-48の簡易分析
SR15:IPCCは道を照らす
参加者が韓国のIncheonでのIPCC第48回会合に集まる中、IPCC議長のHoesung Leeは「IPCCの歴史でも最も重要な会議の一つ(one of the most important meetings in the history of the IPCC)」と呼ぶ会議に対する世界の関心はかつてないほど高まっている。この会議で承認された1.5℃の地球温暖化の影響に関する特別報告書は、IPCCの特別報告書として初めてでも最後のものでもないが、そのタイミングや歴史、内容がこの特別報告書をユニークなものにしている。あるベテランの参加者は、その登場を評価し、この報告書を不確実性という霧を通して、前方に岩があるとの明確な警告を発して安全な航路を照らし出す「灯台(lighthouse)」の性格を持つと述べた。この簡易分析は、SR15とその主要なメッセージをレビューし、IPCC、UNFCCC、さらにはそれ以上のものにとりどれだけの意味を持つかを検討する。
旅の原点
SR15は、2015年にパリ協定を採択した決定書でのUNFCCCの要請を受け、IPCCが作成した。締約国はこの協定の一環として、地球温暖化を産業革命前のレベルより2°Cの上昇で制限すると合意し、さらに野心的な1.5°C上昇での制限に向け努力を追求することでも合意した。しかし、1.5℃目標の原点は、これをさらに遡る2008年に小島嶼諸国連合が委託した研究や、その後にこれら諸国及び環境主義者がかけてきた圧力にあり、この結果、2010年のUNFCCCカンクン合意において、初めての1.5℃目標の記載が実現できた。SR15は、パリ協定の構成上、さらなる野心に関する極めて重要な根拠となる。
SR15の作成作業は、多くの意味で画期的なものであった。重要なことは、SR15が、一つの報告書の作成にIPCCの三つの作業部会が協力してあたった初めての例であり、自然科学者や経済学者、地球科学者が共通の大義のため学際を超えざるをえなくなった。さらにSR15は、圧縮された時間規模で完成し、その概要を議論すべく代表執筆者が第1回の会議を開催した18ヶ月後には最終決定された。この報告書には、40以上の国から90名を超える調整役代表執筆者、代表執筆者、査読編集者が参加し、これを133名の寄稿執筆者が支援した。これらの執筆者は、SR15のため、科学文献のレビューにおいて、6千件以上の参考資料を評価した。
報告書からの主要メッセージ
この報告書のおそらくは最も強力なメッセージは、気候政策に最も精通しているものにとっても驚きであった、それは1.5℃と2℃の地球温暖化目標という二つの異なる、しかしそれほど離れてはいない岸辺にあてられた光のシグナルがあまりにも違うことであった。三年前、各国政府が1.5℃という大望の目標を約束した際は、2℃の温暖化と比較してどれだけのリスクが回避されるかとか、この目標に向かう経路がどのようなものか、あまり知られていなかった。
今回の報告書が明らかにしているように、1.5°Cの温暖化は、たとえば重要な海洋生態系の許容値に達する、さらには温暖な海の珊瑚礁の70-90%が失われるなど、大きな影響があるとされる。現在の排出速度では、これが20年から30年の間に起こるとみられる。
しかし2°Cの温暖化シナリオでは影響は相当規模大きいものになる。この報告書の結論によると、2°C目標は、1.5°C目標と比較し、次の可能性が高くなることを意味する:気候で決定される生息範囲を失う陸上生物種が倍増する;失われる永久凍土の面積が200万平方キロほど増加する(数世紀にわたり)、気候関連の水資源圧力に曝される人口が平均2倍になる(一部の地域ではさらに急増するが);気候関係のリスクに曝される人口が数億人規模で増加し、貧困に落ち入れやすくなる。
IPCCは、このような暗いニュースの中に一筋の希望の光をさす。SR15のもう一つの主要メッセージは、地球温暖化の1.5oCでの抑制は今でも可能である、しかし容易ではないということである。10年余り先の2030年までに、人為的なCO2排出量を45%という前例のないほど低下させる必要があり、2050年までには2010年比で正味ゼロにする必要がある。このことは、産業部門のCO2排出量を2050年に2010年比で75-90%削減することを意味する。オーバーシュート(すなわち目標を超えたあと目標に戻ること)を回避する1.5℃経路の大半は、二酸化炭素除去(CDR)技術を大規模な利用が関わるが、それ自体が問題を招く可能性があり、ただ単に達成不可能かもしれない。これには大気からの直接の炭素回収貯留や強制的風化、海洋のアルカリ化、さらには新規植林やバイオエネルギーなど前例のない規模での土地利用の変化や田の土地利用との競合が必要で、農業や食料システム、生物多様性、他の生態系サービスに大きな影響を及ぼす可能性があるものなど、不確実で未成熟の技術が含まれる。CDRなしの経路は、運輸やエネルギー利用などの分野における広範な行動様式の変革による大幅な排出削減を含めるシナリオに依存する。
SR15からのお持ち帰りメッセージは、持続可能な開発の達成と1.5℃での地球温暖化抑制とのシナジーである。さらに1.5℃目標を達成する経路の多くは、人間の健康またはエネルギーへのアクセスのように、分散型の再生可能エネルギーへのアクセスやマイクログリッドなどの新しい技術を転換可能な重要分野でのSDGs達成を推進する。この報告書は、地球温暖化との戦いは熱波やオゾン汚染、マラリアのような昆虫媒介の疾病による健康面のリスクを軽減することを示している。しかし水資源欠乏地域では淡水化により多くのエネルギーを使い、化石燃料の生産に依存する経済への悪影響などのリスクやトレードオフがある。この報告書は、影響の分布が不均一である場合は気候変動の悪影響と同様、気候変動緩和措置の悪影響が貧困層及び脆弱者に不当にかかるといけないので、管理化された転換や衡平性への懸念意識のために国際協力が必要になると強調した。
波立つ水
多数のIPCCメンバーは、IPCC-48でこの政策立案者向けサマリー(SPM)をレビューするのは異常なほど困難であったと指摘した。緊張関係の大半は、UNFCCCプロセスにおける未解決問題からこぼれ落ちてきた。金曜日から土曜日の朝遅くまでの論争の火種となった問題の一つは、SPMでパリ協定に言及すべきかどうかであった。結局、参加者は深更の会議では開かれたことがない規則書に手を伸ばす以外に策がなくなり、共同議長は意見の一致がなかった場合の手順規則を提起、サウジアラビアとエジプトは、最終的な会議報告書に留保の意を記録した。
世界の気温上昇を1.5℃までで制限することが異なる国々に過激なほど異なる影響を与えるというSR15に不可欠な結論で、政治的な敏感さは一層高まった。海水面上昇及び熱帯暴風雨に脆弱な小島嶼国出身の一人の参加者にとっては、1.5℃への明確な道筋を描くことは「生存の(survival)」問題であった。化石燃料に依存する経済では、野心的な気候変動緩和の便益と輸出収入の巨大損失とを秤にかける必要がある。
このような緊張関係は、SR15がUNFCCCプロセスの下での野心的努力に向け強力に推進する要素を構成するとの理解も相まって、元となる科学をSPMにどのように表現すべきかに関し大きく異なるビジョンをもたらす結果となる。たとえば米国及び他の国は、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を記載するだけでなく、原子力、ガス、炭素回収貯留付きの化石燃料の割合も示す1.5℃の経路を見ることを希望した。ドイツなど多様な欧州諸国は、このエネルギーミックスにおける石炭の急激な割合低下を説明するよう希望した。サウジアラビアと他の国は、1.5℃と2℃目標での緩和コストの違いを限界コストの形で表現し、野心的な代替案が極めて高コストであると表現することを望んだ。この議論を通して、科学者及び共同議長は、最終結果には基となる評価を正確に反映することを確保する課題が与えられた。SPMの要素の一部はプロセスにおいて強烈さを失う可能性があるが、科学の緊急のメッセージは依然として輝いている。
航路図を描く
SR15は、UNFCCCのパリ協定にとり決定的な重要性を持つ。AR15は、計画されたとおり、この12月のタラノア・ダイアログへのフィードインに間に合うよう提示された、このダイアログはこれまでの集団の努力の進捗状況を調査する。締約国が2020年の期限に向け、パリ協定の下での気候行動の新しいプレッジや更新されたプレッジ、すなわち国家決定貢献(NDCs)を締約国が策定するなか、この報告書は、大きくのしはかるものとなる。ダイアログの期間中、この報告書を審議するスペシャルイベントの開催が予定されており、COPプレナリーでは基調講演が行われる。
SR15は、気候変動の交渉における様々な目的で多くの国が利用するであろう。この報告書が特別な意義を持つ小島嶼諸国は、NDCsの野心引き上げに向けた強力な武器としてこの報告書を振り回すであろうし、COP 24でのパリ協定作業計画の審議終了に向けさらなる努力を促すだろう。他のものは、特に化石燃料に依存する経済の転換コストがひるむほど高く、正当な転換に対する国際的な支援が必要であると強調するためこの報告書を用いるだろう。米国は、この報告書で明らかにされた行動のコストの高さは気候変動と戦うための投資より、社会的に望まれる投資が好まれることを意味すると論じる可能性が高い。
報告書は、IPCCの待望の第六次評価報告(AR6)の作成プロセスにもフィードインされ、AR6における1.5°Cシナリオの扱いを強めるような研究の豊富さを高める。SR15に対する研究の反応の強さは執筆者たちまで驚かせた、執筆者たちは当初、研究を推進するIPCCプロセスの能力を想起し、引用できる文献は限定的になると懸念していた。SR15のタイムラインは陸上及び海洋の吸収源などの分野における重要なギャップを生む結果となる一方、多くの文献は、来年、二つの特別報告書、すなわち気候変動と土地に関する特別報告書、及び変化する気候における海洋及び氷雪圏に関する特別報告書で論じられる予定であり、より多くの研究論文の評価から利する予定である。
SR15は、持続可能な開発及びSDGsの追求で重要な役割を果たす、報告書におけるシナジーとトレードオフのメッセージは気候変動の交渉の場を大きく超え、開発コミュニティに共鳴するであろう。パネルは、「気候変動の脅威、持続可能な開発、貧困撲滅努力への地球規模の対応強化(strengthening the global response to the threat of climate change, sustainable development, and efforts to eradicate poverty)の概念に基づき、この報告書を作成するようにというUNFCCCの要請に同意するのに慎重であった。気候行動は貧困削減などの社会的に不可避な行動と両立するとともに、必要でもあるとの論点にとり、この報告書は重要な防壁になるであろう。しかしまた、開発優先策においても極めて重要な食料生産、健康、貧困撲滅などでの広範囲な悪影響を回避するには、一部の参加者が回避は困難と繰り返し警告していた気候行動と社会行動とのトレードオフを適正に管理されなければならないという明確な警告の役割も果たす。
世界を代表する気候変動の科学的権威は、最大限の野心が極めて重要であり、前例のない規模で直ちにコースの変更を広めて初めて1.5℃以下の地球温暖化にとどめることになるという明確なメッセージを発していた。しかしSR15の影響は、そのメッセージに対する世界の反応に依存する、灯台は旅人が実際に灯台の警告に従い、沈没を回避するよう舵を切って初めて、価値あるものになる。UNFCCCプロセスは(SR15の警告に)応じるであろうか?各国政府は野心引き上げ努力を倍加するか?この報告書がかつてないほどメディアの関心を集め、気候行動ネットワークというNGOの連合の追跡調査では、この報告書の発表前でさえ、世界中で2400件を超えるニュース記事が出ていた。今や全ての目が、ポーランドのカトヴィツェでの12月のUNFCCC締約国の集まりに向けられている、この会議ではこれまでの努力の進捗状況を調査し、パリ協定の2020年の発効を可能にする作業計画の最終決定に向け努力する。この会議におけるSR15の受諾は、この報告書の究極の影響を示す最初のものになるであろう、しかし高らかな警報としての重要性はすでに明らかになっている。
今後の会議予定
気候への民間投資の会議:2018年緑の気候基金(GCF)気候への民間投資会議は、気候に対する民間投資のただ一つの世界会議であり、民間部門の主要な行動者が集まり、気候活動投資の革新的なやり方を探求することが期待される。 日付:2018年10月10-11日 場所:韓国、Incheon 連絡先:GCF事務局 電話:+82-32-458-6059 ファクシミリ:+82-32-458-6094 email:info@gcfund.org www:https://gcfconference.com/
第7回気候変動とアフリカの開発に関する会議(CCDA-VII):この会議は、「アフリカでのパリ協定実施を支援する:政策から行動まで」をテーマに開催され、アフリカの国家決定貢献(NDCs)を調査し、行動可能な気候干渉を定義づける。African Climate Policy Centre (ACPC)が企画する会議は、Climate for Development in Africa (ClimDev-Africa) Programmeの支援で毎年開催される。ClimDev-Africaは、多様なアフリカ開発機関のコンソーシアムである。 日付:2018年10月10-12日 場所:ケニア、ナイロビ 連絡先:African Climate Policy Center email:https://www.uneca.org/contact/African_Climate_Policy_Center www: https://www.uneca.org/ccda7
第3回健康と気候に関する世界会議:このイベントは、気候変動と健康に関する世界的な行動推進を目指す。次の項目に焦点を当てる:島嶼国の国内気候変動計画に健康面を組み込むため、健康医療面の指導者に権限を与える;気候変動と健康の国別プロフィールによる証拠の作成;気候耐性の健康医療システム構築による実施;島嶼国における気候耐性健康医療システムを支援する資金メカニズムへのアクセスを容易にする。この会議はWHOが企画する一連の会議の第3回であり、革新的で地理的に分散した手法が用いられる。 日付:2018年10月16-17日 場所:グレナダ、St. George’s www:https://www.paho.org/
緑の気候基金理事会の第21回会合:緑の気候基金(GCF)理事会の第21回会合は、7月1-3日に開催され、多数の決定書で合意に至らなかった第20回理事会会合に続くもの。 日付:17-20 October 2018年10月17-20日 場所:バーレーン、Manama 連絡先:GCF Office of Governance Affairs 電話:+82-32-458-6038 ファクシミリ:+82-32-458-6094 email:info@gcfund.org www:https://www.greenclimate.fund/
2018年北極圏議会:毎年の北極圏議会は、北極に関する毎年の国際会議として最大のものであり、国や政府の長、閣僚、議員、官僚、専門家、科学者、実業家、ビジネスリーダー、先住民代表、環境主義者、学生、活動家、その他穂局の将来に関心のあるものが出席する。 日付:2018年10月19-21日 場所:アイスランド、レイキャビク 連絡先:secretariat@arcticcircle.org www:http://www.北極circle.org/assemblies/future
TFI— 2019年精緻版を推敲する第4回代表執筆者会議:これは、2019年精緻版を承認する前の最後の代表執筆者会議である。この会議に先立つ10月21日には調整役代表執筆者、査読編集者、運営グループの会議が行われ、続いて10月27日第31回TFI議長団会議が開催される。 日付:2018年10月22-26日 場所:イタリア、ローマ 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www:http://www.ipcc.ch
カトヴィチェ気候変動会議のプレCOP:このプレCOPでは、12月の国連気候変動会議に先立つ政治的議論のため政府関係者が集まる。民間部門の参加も見込まれる。 日付:2018年10月24-27日 場所:ポーランド、カトヴィチェ 連絡先:COP 24次期議長 email:cop24@mos.gov.pl www: http://cop24.gov.pl/
大気汚染と健康に関する世界会議:大気汚染と健康に関する世界会議の第一回会合では、副題である「大気の質を改善し、気候変動と戦いー命を救う(Improving air quality, combatting climate change - saving lives).」を考察する。このイベントは世界保健機関(WHO)が、UNEP、WMO、UNFCCCと協力して開催する。 日付:2018年10月30日から11月1日 場所:スイス、ジュネーブ 連絡先:WHO email:aphconference@who.int www:http://www.who.int/airpollution/events/conference/en/
2018年CVFバーチャル気候サミット:気候脆弱性フォーラム(Climate Vulnerable Forum (CVF))は、気候変動の影響を最も受けやすいものへの支援増大を図るべく、世界の政治指導者のサミットを開催する。サミットは、UNFCCC COP 24に先立ち会合し、各国の新しい努力に注目し、1.5℃経路をたどることで得られる気候のリスク及び機会について、健康、雇用、その他の便益という意味での展望を共有すると同時に、広範な国際援助を構築する。さらにこれを可能にするため、必要な資源や資金の確実な供与を推進する。 日付:2018年11月22日 場所:バーチャル空間 連絡先:マーシャル諸島CVF議長職 電話:+692-625-2233/3445 ファクシミリ:+1 212 9833202 email:info@thecvf.org www: https://thecvf.org/events/2018-cvf-virtual-summit/
カトヴィチェ気候変動会議:カトヴィチェ気候変動会議には、COP 24のほか、京都議定書の締約国会議、科学的技術的助言のための補助機関及び実施に関する補助機関の会合、パリ協定締約国会議が含まれる。 日付:2018年12月2日―14日 場所:ポーランド、カトヴィチェ 連絡先:UNFCCC事務局 電話:+49-228-815-1000 ファクシミリ:+49-228-815-1999 email:secretariat@unfccc.int www: https://unfccc.int/cop24/ and http://cop24.katowice.eu/ and http://cop24.gov.pl/
WG I - AR6第2回代表執筆者会議:この会議はカナダで開催される。 日付:2019年1月7-13日 場所:カナダ、バンクーバー 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www:http://www.ipcc.ch
WG II - AR6第1回代表執筆者会議:この会議は南アフリカで開催される。 日付:2019年1月21-25日 場所:南アフリカ、ダーバン 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www:http://www.ipcc.ch
WG I/II/III –気候変動と土地に関する特別報告書の第4回代表執筆者会議:この会議はWG IIIの企画で開催される。 日付:2019年2月11-15日(未確定) 場所:未定 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www:http://www.ipcc.ch
気候変動への適応に関する第2回中南米シンポジウム:このイベントは中南米における気候耐性促進を目指すもので、研究や現場プロジェクト、ベストプラクティスでの再現可能な経験を紹介する。シンポジウムが目指すのは:中南米で研究を行っている、そして/または気候変動プロジェクトを実施している学生、実務者、政府機関関係者に、それぞれの業務を紹介する機会を提供し、情報交換を推進し、事例研究やプロジェクトから派生した手法論及び経験を議論する場を提供し、ネットワークつくりのプラットフォームを提供し、協力の可能性を探る場を提供する。国際気候変動情報プログラム(ICCIP)は、国際パートナー及び現地のパートナーと共にこのシンポジウムを開催する。 日付: 2019年2月20-21日 場所:ペルー、リマ 連絡先:Svenja Scheday, ICCIP email:svenja.scheday@haw-hamburg.de www:https://www.haw-hamburg.de/en/ftz-nk/events/latinamerica2019.html
WG III – AR6第1回代表執筆者会議:この会議の開催場所は後日決定される。 日付:2019年4月1-5日 (未確定) 場所:未定 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch
第2回統合報告書スコーピング会議:この会議の開催場所は後日決定される。 日付:2019年4月8-14日 (未確定) 場所:未定 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www:http://www.ipcc.ch
IPCC-49:この会議では、2006年版の国別GHGインベントリのガイドラインに対する2019年瀬地番が承認される予定。 日付:2019年5月8-12日 場所:日本、京都 連絡先:IPCC事務局 電話:+41-22-730-8208/54/84 ファクシミリ:+41-22-730-8025/13 email:IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch
追加会合は右記を参照:see: http://sdg.iisd.org/