Daily report for 16 March 2015

第三回国連世界防災会議(WCDRR)の3日目が開催され、「災害リスク管理:今後の課題」および「都市部における災害リスク軽減」に関する2つの閣僚級ラウンドテーブルが実施された。この日の午後にはハイレベルなパートナーシップの対話型議論として「リスクを考慮した投資:官民パートナーシップ」が開催された。

レジリエントな観光産業や、災害がもたらす移転に関する備え等、様々な課題に関するワーキングセッションが開催された。世界銀行、日本政府、および各種パートナーが、ポスト2015年のレジリエントな目標に向け、資金調達とその推進を拡大・維持する方法および災害・気候リスクのためのプログラムを検討するための、レジリエンス対話の特別セッションを開催した。

この日の夕方には、防災に関する取組みと、ドキュメンタリーに関する2種類の表彰式が開催された。

主要委員会

終日の「さらなる非公式の会合」に続き、提案された政治宣言を議論するための時間を残すため、可能な限り本文を仕上げ、主要委員会は午後遅くに再び開催された。本文に関する多くの修正は合意されたが、夕方の時点で国際協力、技術移管、人権に関する記載および発展に関する権利に対する問題および CBDR(共通だが差異ある責任)が未解決のままであった。議論は夜間まで継続された。

全体の意見交換

各国の代表:各国代表は一日に渡り、声明を公式に発表し、防災に関する各国の取組みを強調した。

ハンガリーはスロベニアとクロアチアの協力の成功により、2014年のムール川の洪水被害を限定的に抑えることになったことを例示し、越境協力の重要性を述べた。イスラエルは防災、対応、復興の支援は相互同意の原則に基づき実施されるべきであると発言した。エチオピアは、防災と広範囲のポスト2015年開発アジェンダの連携について言及し、7月にアジスアベバで開催される第3回開発資金国際会議の成功に積極的に取り組む姿勢を示した。

一部の代表が、大型サイクロン・パムの大損害を受けたバヌアツへの復興支援を表明した。

政府間およびその他の機関:政府間組織およびその他の組織の代表は、一日にわたり声明を公式に発表した。

国連後発開発途上国 (LDC)、内陸開発途上国 (LLDC)、小島嶼開発途上国(SIDS) 担当上級代表はこれらの脆弱な国々の特別な状況がポスト2015年防災枠組で考慮されていることを歓迎し、2015年国連防災白書によると、SIDSの将来の年間損害額が全体の社会的総支出の約20%にのぼることになると発言した。

閣僚級ラウンドテーブル

災害リスク管理- 今後の課題:エクアドルの María del Pilar Cornejo 危機管理庁長官が議長を務め、各国大臣に対し各国の災害方針の促進に関する経験を発表するよう呼びかけた。多くの発言者は国家レベルでの災害準備と対応を支援するための各国の法的措置と政策措置について説明し、同時に地域、村レベルでの備えを強化するための機構設立の重要性についても述べた。多くの国が強いリーダーシップと、地域社会の関与、貧困削減、民間部門の関与、早期警告システムの開発、予防、そして気候変動の軽減と適応の重要性について強調した。国連機関の要人 は、防災と災害リスク管理の重要要素である説明責任、平等性と法の実効性を強調した。

スーダンは土地の劣化と生物多様性の減少が災害に与えるマイナス要素について述べた。モーリシャスは食料保障基金、インド洋地域における気候変化情報交換センターそして地方自治体向けの適応オプションのツール等を含んだ国家的、地域的な予防措置について述べた。アラブ首長国連邦は災害リスク管理を成功させる最善策は全ての政府機関とNGOの協力にあると発言した。スペインはスペインの国民保護政策は国政に組み込まれているとして、能力強化は「代替不可能」であると発言した。教皇庁は宗教と文化的伝統はレジリエンスの貴重な源泉であると発言し、会議の成果では、先住の伝統だけでなく、それ以外の宗教伝統にも言及すべきであると発言した。アフリカ連合は連合内における防災に関する意識の高まりと政治的な関与がみられるとし、国家的な防災対策室は大統領や総理大臣直属に設立されていると報告した。

都市部における災害リスク軽減:南アフリカ共和国のPravin Jamnadas Gordhan 協調統治・伝統業務大臣がセッションの議長を務め、都市化の傾向は政策立案者に新たな課題を与えており、その教訓は今後の計画プロセスに組み込まれるべきであるとした。

各国大臣と各国のハイ・レベルな代表は規約設立と効果的な土地利用計画の重要性について検討し、最も脆弱な地域の住民が災害の脅威にさらされていることを述べた。多くの代表が都市部における気候に関連した災害によるリスクについて述べ、ガーナは防災に対応した建設計画を要請した。中国は自国における自然エネルギー源への移行戦略を含んだ適応計画を発表した。ブラジルは「貧困層における都市化」を含む都市部でのリスクに関する自国の取組みを紹介した。

ウガンダとガーナは、代表の中でも特に、都市部の産業や設備は分散化すべきであると主張し、一方でトリニダード・トバゴはレジリエンスに向けた人間中心のアプローチを奨励する人々社会開発省の取組みを紹介した。エジプトは政府主導による都市基盤整備の方針と郊外居住地 の改善に使用される固定資産税の適用等を含む都市計画の経験を紹介した。日本は1995年の大震災後の兵庫における復興の取組みを紹介し、生活の復興と、防災訓練を通じた地域社会への予防策の組み込みを強調した。

ザンビア、ヨルダン、ネパール、マダガスカル等を含むその他の国は 都市部と国家的な計画プロセスにおいて防災政策を主流化させることを述べ、災害に強い社会基盤構築に向けた投資を奨励するには官民の連携が必要であると述べた。国連人間移住計画は、地方自治体の強権化と都市部住民へ向けた認識向上の重要性を述べた。

ハイレベルなパートナーシップの対話型議論

リスクを考慮した投資-官民パートナーシップ:トルコの Fuat Oktay・AFAD総裁が議長を務め、強固な官民パートナーシップによる防災が持続可能な開発の推進力となるという対話を紹介した。

基調講演者であるアクサアジアのGaëlle Olivier氏が50年前と比べ、現代の災害数は5倍に増え、対応コストは10倍に増加していることを 紹介した。Olivier氏は保険業界は全世界の資産の3分の1にあたる30兆米ドルの運用資産を保有していることを述べた。Olivier氏は業界は政府や規制団体がリスクの更なる理解、予防、管理を含む、責任を持った投資を行えるよう、政府・規制団体と保険業界が積極的に協力すべきであると強調した。

ジャーナリストのDavid Eades氏の進行によるパネルディスカッションでは、官民の上級代表者が、民間部門において投資された納税者の税金は1米ドルあたり3米ドルから8米ドルの範囲で運用し得たことに基づき、防災と「より良い復興」に向けた復旧管理の達成に向けた官民パートナーシップの決定的な重要性について同意した。パネリストは民間部門においては、グローバル化された経済におけるサプライチェーンの分断が引き起こすコストを鑑み、パートナーシップを求める強いインセンティブが存在すると述べ、政府間と社会間における信頼構築が必要不可欠であると強調した。パネリストは災害レジリエンス枠組のための「法の制定」を公共部門に対して求め、民間部門に対しては、災害後のビジネス継続性を保障するために効果的な投資を行うという役割を求めた。

ワーキングセッション

レジリエントな観光業界へ向けて:メディア特派員のVeronica Pedrosa氏がセッションを進行した。基調講演において、ドイツの Thomas Silberhorn 経済開発協力大臣が観光業界を全ての防災と災害リスク管理プロセスにおける民間部門のパートナーに含めることを要請した。

パネリストは続いてポスト2015年防災枠組における観光業界の協力の必要性について議論し、オーストラリアの災害レジリエンスにおける国家戦略を聴講した。パネリストは続いてキューバが、弱い経済にも関わらず、嵐による災害からの復旧における新しい災害予防措置をどう実現したか、その詳細を討議し、そしてサモアにおいて、旅行者に対し潜在的なリスクについて効果的な情報伝達を行える早期気候警報システムの確立に関する経験について議論した。パネリストは続いて災害時におけるホテル業界の役割と、 ホテルと観光地をより災害対策ができたレジリエントなものにするための監査可能なシステムである「ホテル・レジリエント・イニシアチブ」を紹介した。参加者はとりわけ、テロに対する観光業のレジリエンス構築とレジリエンス促進に関する保険業との連携、そして災害に対応するための業界横断的アプローチの構築に関する質問を投げかけた。

災害がもたらす移転に関する備え:パキスタンの前国家災害委員長であるNadeem Ahmed中将が議長を務めた。セッション開始にあたり、中将は防災と災害対応において移転は多くの場合、最も困難な要素であることを述べた。パネリストは包括的な防災と開発戦略において、災害前と災害後に関わらず、計画された移転は 最終手段であるべきこと、そして単独の解決策ではないという点に合意した。国際移住機構のWilliam Lacy Swing事務局長は、 ポスト2015年防災枠組において、人口増加が移動性や移転についてより注目されるべきであると述べた。フィリピンの国家災害リスク削減委員会のAlexander Pama氏は強化された災害前リスク評価が台風時における一時的移転に関する国家の決断に果たした役割について、具体的な事例を紹介した。パネリストは生活面の支援の重要性と、移転先における新たな社会経済的な脆弱性を生み出すべきでないと述べ、「移転計画はただの住宅提供プロジェクトではない」ことを強調した。他のパネリストは、法的な枠組、権利に基づいたアプローチ、地方政府と地域共同体における参画と能力開発の重要性を述べた。ジョージタウン大学のSanjula Weerasinghe氏は、とりわけ、気候変動への適応の観点から、計画移転に関する国際的な指針が必要であると述べた。参加者はパキスタン、ラテンアメリカとカリブ海、シリアおよび他の地域における移転に関する経験を交換した。

授賞式

フィルム部門:メディア特派員のVeronica Pedrosa氏が司会進行し、UNISDR、アジア放送協会およびヨーロッパ放送協会によって設立された第1回の国際防災に関するテレビドキュメンタリーの 優秀賞の受賞者を発表した。最終選考に残った12本のうち、4本が優秀賞として選定された。ディスカバリーチャンネルの“Rebuilding Sichuan”(四川の復興)が最優秀テレビドキュメンタリー賞を受賞し、NHK(日本放送協会)の 「釜石の”奇跡”」が最優秀ヒューマン・ストーリー賞を受賞した。最優秀調査賞はフィリピンのGMAネットワークの“It’s Time”(時間だ)とBBCパノラマの“Britain Underwater”( 水中のイギリス)が共同受賞した。最優秀革新的ドキュメンタリー賞は英国のドラゴンフライ・フィルム・アンド・テレビジョン・プロダクツの “Vets in the Disaster Zone” (被災地の獣医)が受賞した。

リスク部門:グローバル・リスク・フォーラムのWalter Ammann氏が2015年の式典を案内し、Margareta Wahlström氏によってこの賞が、先回り型のリスク管理の中核、すなわち地域社会に根付いた革新的な取組みを広めるものであることについて説明があった。ミュンヘン再保険協会のThomas Loster氏が62の国からの145個の応募の中で沢山の革新的なプロジェクトが存在したことを紹介した。2015年の賞は、全インド自治体協会の、インドのプネの山腹および川沿いのスラム街において、参加型可視化ツールを用いてリスクの自己測定と計画を実行するプロジェクトに従事する女性たちの取組みが受賞した。

非公式な廊下での対話

多くの代表は、月曜日の「さらなる非公式の場の議論」が行き詰まった状況を打開することを望み、ある代表は「グローバルな枠組を望むのであれば、グローバルに関与するべきだ 」と発言し、最終成果物に対する主体的な関与の必要性を強調した。ある経験豊富な代表は、占領地についての記載を含む、準備プロセスを通じて議論されてきた問題は、簡単にはここで解決されないと感じていた。内容に関して、ある交渉者は「同じ部屋に沢山の象を入れること」は賢明ではないと指摘した。このオブラートに包んだ言い回しは、枠組の中に災害リスク管理における人権主義的なアプローチを含めようとする試みについての発言であった。

残り期間が二日となり 、現在も密室で議論が続き、ある代表は「すべての期待は満たされないだろう」と打ち明けた。

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