Daily report for 13 May 2017

Bonn Climate Change Conference - May 2017

ボン気候変動会議は13日(土)も続いた。APAコンタクトグループの会合が午後に行われ、適応委員会、LDC専門家会合(LEG)、資金に関する常設委員会(SCF)、緑の気候基金(GCF)の締約国と代表者間の交流を促すための会合が開かれた。午後には、SBI、SBSTA、APAの合同プレナリー非公式会合も開催された。また、非公式協議の他“宿題”とされた各種イベントも終日開催されていた。

SBSTA

パリ協定 68 (非市場アプローチ): 最重要原則については、非公式協議で、非コモディティー化を原則の一つとする提案が出されたが、いくつかの国がパリ協定はすでに諸原則について言及しているとして、原則論の挿入に反対した。また、数カ国が、UNFCCCやその他の多国間フォーラムの作業重複を防止するとの文言を入れるのか質問した。二、三の国から、政策や戦略といった非市場アプローチ (NMAs)の事例を盛り込むかという質問があがった。 Hugh Sealy共同進行役 (モルディブ) は、あらゆる選択肢を残しておくためにNMAsのリスト化は避けるべきだと主張した。透明性に関する新たな要素の追加が二、三の国から提案された。NMAsの枠組の機能については、ある国から追加の議論を求める声があがり、NMAsは市場アプローチ (6条2項・6条4項)の社会経済的影響に対応すべきだとある締約国グループが主張した。パリ協定に記された3つの目的を全てのNMAsが達成する必要があるか否かという問題については締約国の意見が分かれた。次回の編集まとめは5月15日(月)に提供予定。

資金源の会計処理手順 (パリ協定97): Outi Honkatukia共同進行役(フィンランド)は非公式協議で、公的介入を通じて動員した支援に関する議論を主導した。いくつかの途上国は、報告手順に関する議論の前に、定義に関する議論を行うべきだと主張した。支援枠組によって動員された投資を気候資金としてカウントできるか否かの疑問が出る一方で、一部の先進国はカウント可能とすべきだと主張した。あるグループは、レバレッジをかけた投資全体を一投資主体に帰属させるべきではないと主張した。他方で、因果関係の特定や多国間開発銀行による支援の帰属先の特定、ダブルカウンティング等の課題も示された。協議は継続する。

パリ協定の技術枠組: Elfriede More (オーストリア)が非公式協議の共同共同進行役を務めた。共同進行役からの2つのノンペーパーについて各国が意見を示した。

枠組の構成については、いくつかの国が、枠組に関する将来的な更新情報を通知するため定期的な評価との整合性について明確にすることを求めたが、一部の国が議論は“時期尚早”として反対した。

TECとCTCNの作業がどのように枠組と適合するのか両組織の意見を聴取すべきとの提案が複数から出された。技術対応と技術サイクルを把握することに多くの国が歓迎したが、後者についてはある締約国が反対を唱えた。

枠組はNDCの実施と“転換的な変革(transformational change)”を支援すべきだと某グループが強調したが、“転換的な変革”という表現に反対する意見が出された。

枠組の原則については、一般的な内容だけを記載する方が良いとの意見が一部から出されたた。また、結論書草案に原則を記載することに数カ国が反対した。共同進行役がノンペーパーと結論書草案を修正予定。

SBI

“宿題イベント”:多国間評価 (MA): ポルトガル、ルーマニア、 ロシア、スロべニア、スペイン、米国がプレゼンテーションを行った。米国の代表は、過去と現在の排出量のトレンドについては語れるが、今後の政策については語ることができないとした上で、GDPの増加にも拘わらず2005年以降の米国内の排出量が減少したことを報告した。これを受けて、2005年以降の排出量が減少した理由や市場メカニズムに関する計画の有無、GCFへの資金拠出、気候政策の経済的メリットに関する評価が行われているか等の質問が出された。

MAの結論として、SBI議長のTomasz Chruszczowはカーボン・プライシングやエネルギー効率をアップさせる措置、再生可能エネルギーの普及や森林に関するイニシアティブを共通政策とみなすべきだと結んだ。

キャパシティビルディングに関するパリ委員会(PCCB):前日の議論の総括として、モデレーター役のAri Huhtalaは午前、既存のプロセスとの補完性を図る必要があると指摘し、知識の管理・共有やPCCBのために様々なレベルで今後考えられる作業分野の調整等の大枠を示した。今後、作業計画やその他の問題に関する議論とりまとめのため非公式にPCCBが開催予定。

午後には、PCCB2017-2019年繰越作業計画やキャパシティビルディング・ポータルに関する指針、その他の関係機関と資金メカニズム運営機関の連携を含む未決の議題項目すべて (PCCB/2017/1/4-9)について、PCCBによる決定書の採択が行われた。作業計画については、全体的なアプローチから成り立つものであるとし、オブザーバーからの意見を適宜募りつつ詳細についてはセッションの間にとりまとめるとPCCB共同議長が説明した。

閉会に際して、共同議長は、会合の成功はPCCBのメンバーとオブザーバーのおかげであると謝意を示した。

政府間会合の調整:コンタクトグループで、Collin Beck議長 (ソロモン諸島)は、非締約国のステークホルダーの参加拡大に関する意見を募った。5月9日(火)に開催されたワークショップについては多数の称賛の声があがったが、これについては事務局が報告書をまとめる予定。

利益相反の防止措置(セーフガード)を目的として非締約国ステークホルダー間の差別化を図る案については、すべての締約国が全員参加(inclusiveness)と透明性を支持したが、セーフガード措置の必要性や参加条件については各国の意見が割れた。

米国は、利益相反政策の提案は “コンセプトの誤用”であると意見した。サウジアラビアは、プロセスに社会経済的な利益を含める必要があると強調した。ノルウェーは、オーストラリアの支持を受け、“国ごとに異なる参加”の基準を定義することは困難だとして反対した。カナダは、あらゆるステークホルダーのグループを参加させるよう求めた。日本は、パリ協定を実施するには、すべてのステークホルダーが参加しなければならないと発言した。

エクアドル、中国、キューバ、ウガンダは、LDCsの立場から、意見の提出を求めた。 セネガルは、アフリカグループの立場から、全員参加への同意を示しつつ、ルールは必要だと指摘した。中国は、手続き上の平等は必ずしも実質上の平等につながるものではないとし、“マネジメント改善”を求めた。

EUは、ノルウェーとオーストラリアの支持を受け、介入や対話等によるステークホルダーの参加拡大手続きを提案した。フィリピンは、ステークホルダーの参加拡大に係る資金面の影響について質問した。

共同議長により結論書草案の修正が行われる予定。

SBI/SBSTA

対応措置:公正なる人員交代に関するペーパー(FCCC/TP/2016/7)が事務局より紹介され、その有用性について多くがコメントした。Andrei Marcu共同進行役 (パナマ)は、共同進行役が今後作成するリフレクション・ノート案に対するインプットを求めた。いくつかの途上国はケーススタディや会期と会期の間の作業、技術専門家グループによる作業継続を求めたのに対し、一部の先進国からは、会期中に作業を行い、今後のリフレクション・ノートは2018年レビュー中に作成すべきだとして“最小限の中立的な”結論を示唆しつつ、反対を唱えた。国際機関との協働の価値については意見が一致した。

APA

Sarah Baashan共同議長(サウジアラビア)がコンタクトグループの議長を務めた。適応委員会、LEG、SCF、GCFより、パリの成果から生じた各々の役割と進行中の作業について報告があった。

イランは、LMDCsの立場から、APAと“相関関係”のある進捗のペースを強調し、APAが気候資金のギャップを埋めるための提案を確認し、MOIに関して両SB間の分業について明確にする必要があると強く主張した。

エチオピアは、LDCsの立場から、適応委員会およびLEGが各々の作業を完了してCOP 23向けの合同報告書作成を奨励することや、適応努力を認識する手順に関する役務をCOP 23からSBIに付託し、その結果を2018年のCMAで審議すること等をAPA共同議長に提案した。ボツワナは、アフリカグループの立場から、関係機関に指針を出す必要があると強調した。

オーストラリア(アンブレラ・グループ)、EUをはじめとする国々は、関係機関による進捗を歓迎した。

質問を受けて、SCFは、隔年評価報告書は支援のMRVに関するAPAの作業に関係が深いギャップや気候資金の流れを明確にするものだと強調した。適応委員会は、COPを通じてCMAに報告することを明言した。

Baashan共同議長は、APA結論書にはこうした議論を反映させると述べた。

適応報告書: Nicolas Zambrano Sanchez共同進行役(エクアドル)は、手段や柔軟性に関する意見を求めた。途上国に対する追加的な負担を回避する必要があることで締約国は合意した。協定13条8項 (気候の影響および適応に関する情報)に基づく報告書が一手段となりうるとの指摘も一部からあがった。「締約国は手段を選択できる」と指摘し、指針のためのいくつかの共通要素に集中するべきだとの意見も数カ国からあがった。Beth Lavender共同進行役(カナダ)は、以前締約国が提出したリストを合体させた要素表を紹介した。共同進行役は非公式ノートを更新することになったが、締約国に対しては上記表について相談するよう促した。非公式協議が続けられる。

グローバルストックテイク (GST): 共同進行役 Xolisa Ngwadla (南アフリカ)はインプットに対する意見を求めた。下記の論点〔決定書1/CP.21のパラグラフ 99 (GSTに対するインプット情報源)がインプットの非網羅的リスト作成のベースとなる;適応・緩和・MOIに関するインプットのバランスを保証すべき; IPCCは利用可能な最良の科学の源である〕について各国は合意した。さまざまな途上国が損失被害に関するインプットを求めたが、一部の先進国はこれを含める根拠があるのが疑義を示した。また、途上国側が衡平性に関するインプットについて言及したが、先進国の一部は衡平性について別のワークストリームを設けることに反対した。また、一部の国は、IPCCとIPCC以外の情報源のバランスをとる必要があるとし、国以外の主体からの情報を選別する基準を設ける必要があると強調した。

追加事項:適応基金以外の事項: Sarah Baashan共同議長(サウジアラビア)が進行役を務めた。新たに合同での資金に関する数値目標を設定するプロセスについては、多くの途上国が、交渉の方式や手順を確認するため本項目に関する議論の役目をCMAに託すべきだと提案した。本項目を“至急” 取り上げるべきとの意見があがる一方で、CMAの議題に入れるべきだとしてCMA1での審議に反対する意見もあった。また、SBIで本項目を審議することへの反対意見もあった。

その後、Baashan共同議長は、締約国は対応措置フォーラムの問題を関連するSBI/SBSTAの審議に提起できる点; 適応努力の認識手順の策定という役務の必要性や資金に関する隔年報告書の手順が既にCOPの作業として組み込まれているか否かという論点についての意見の相違; 資金メカニズム運営機関やLDCF及びSCCFに対する(初期の)指針に関する議論を統合できるかという議論等について“寸評”を行った。

5月15日(月)までに共同議長の非公式ノート初回とりまとめ結果を提示予定。

SBSTA/SBI/APA合同非公式プレナリー

APA、SBI及びSBSTAの議長陣がパリ作業計画に関連する各々の議題の下での論点のつながりを示した。事務局の進捗トラッカーが有効であると指摘する声が複数からあがった。

モルディブは、AOSISの立場から、透明性枠組とGSTの交渉で損失被害を取り上げるべきだと述べた。

いくつかの途上国が、適応報告書やグローバルな資金目標に関するGSTとAPAの項目、技術移転や動員された資金の会計処理に関するSBSTA項目とNDCの指針および透明性との関連性について意見を述べた。スイスは、不自然な関連づけをすることに警戒感を示しつつ、合同会合の価値について強調した。中国は、NDCの指針に関するAPAの作業と資金情報に関するSBI/SBSTAの作業をつなげる合同協議を提案した。

グアテマラは、AILACの立場から、現在対応中の問題やその他議題項目からのインプットの必要性、最終的な決定書を作成する場、追加的なインプットの余地の有無等の疑問点から導かれる相関関係についての共通理解を促した。

サウジアラビアは、対応措置の実施による影響に関する改善フォーラムを求めた。

両議長は、合同イベントに向けた提言について触れ、関連性に関する“コミュニケーション(報告書)”がCOP 23で発行されると述べた。

廊下にて

一週目の議論が終わり、今回の会議がパリ協定に生命を吹き込めるものかと各国の政府代表は振り返りを行った。ここ数日の交渉については、順調で活気があったとして前向きな参加を歓迎する声は多く、特に多国間評価については建設的かつ友好に締約国が参加するのが難しいだけに各国政府の代表は概ね好意的な受け止めをしていた。しかし、議題項目による交渉の進捗状況にばらつきがあると懸念する声も漏れ聞く。そんな話を引き継いで、APAのJo Tyndall共同議長は「SBI、SBSTA、APAの議長陣は、さながらボーイズバンド、“ワン・ダイレクション”の生まれ変わりだ」と称する。今後は込み入った作業が待ち受けており、我々は“ポリリズム”を奏でる集団だという認識をもつ方がいいと手練れの交渉官が語っていた。

以上

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