Curtain raiser

Marrakech Climate Change Conference - November 2016

マラケシュ気候変動会議が本日開幕。11月7日から11月18日までの日程で開催される。この会議では、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC) 第22回締約国会議(COP 22)及び京都議定書第12回締約国会合(CMP 12)、さらには11月4日のパリ協定発効に伴いパリ協定第1回締約国会合(CMA 1)が行われる。また、実施に関する補助機関第45回会合 (SBI 45)と科学的・技術的助言に関する補助機関 第45回会合(SBSTA 45)、パリ協定第1回特別作業部会第2部 (APA 1-2) も開催される。

2016年5月のボン気候変動会議では、APA、SBI及びSBSTAがパリ協定の採択に関する決定書1/CP.21に概要が記されたパリ協定の実施に不可欠な多くの課題に関する交渉を開始した。すなわち、各国が削減目標として決定した貢献分(NDCs)の特徴に関する追加指針(ガイダンス); NDCsの明瞭性、透明性、理解の促進に向けて締約国に提供される情報に関する追加指針; 締約国によるNDCsのアカウンティングに向けた指針; 公開登録簿の運用・利用に向けた手順・手続き; 協定の下で締約国のNDCsによってカバーされる吸収源及び除去の双方による人為的排出量に応じた締約国による調整をベースとした二重カウントの防止を確保するための指針; パリ協定第6条(協力的アプローチ)に関する問題; NDCsの構成要素を含む、適応報告書に関する追加指針; 公的介入を通じて提供・動員された資金源に関するアカウンティングの手順; 技術枠組みの精緻化; グローバルストックテイクのための入力情報源; グローバルストックテイクの手順、に関する交渉である。CMA 1では上記の問題や追加的な問題について審議することになる。マラケシュ会議では、同作業が続けられる予定だ。

UNFCCC 及び 京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。UNFCCCは、気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため、大気中の温室効果ガス(GHGs)の濃度安定化を目指して、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効、現在197の締約国を有する。1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国の政府代表は、先進工業国及び市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で「附属書I国」と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に、6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことを約束し、合意が成立した。京都議定書は2005年2月16日に発効し、現在192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉: カナダ・モントリオールで2005年に開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP 1)で、議定書3.9条に則り、京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書I国の更なる約束を検討することをその役割として定めた。

2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP 13及びCMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップの合意に至った。COP 13は「バリ行動計画」(BAP)を採択するとともに、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会」(AWG-LCA)を設立し、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割付けた。また、AWG-KPの下では、附属書I国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す交渉期限については、2009年のコペンハーゲン会議までと定められた。

コペンハーゲン: 2009年12月の国連気候変動会議は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。世間の大きな注目を集めた同会議は、透明性の問題やプロセスをめぐる論争が目立った。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成立し、その後COPプレナリーでの採択に向けて提出された。それから13時間にわたる議論の末、各国の政府代表がコペンハーゲン合意に「留意する(take note)」ことで最終的に合意。さらに、AWG交渉グループの期限をそれぞれ2010年のCOP 16及びCMP 6まで延長することで合意した。2010年には140カ国を超える締約国がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家の緩和目標または行動に関する情報を提出した。

カンクン: 2010年12月の国連気候変動会議はメキシコ・カンクンで開催され、「カンクン合意」を採択し、2013年~2015年のレビュー期間に世界の長期目標の妥当性について検討することでも合意した。また、カンクン合意によって、新たな制度やプロセスがいくつか創設された。緑の気候基金(GCF)やカンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムが新設され、技術メカニズムの下に技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。

ダーバン: 2011年11月28日-12月11日、南アフリカ・ダーバンで国連気候変動会議が開催された。ダーバン会議では、「条約の下で、全ての締約国に適用可能な、議定書・法的文書・もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新組織、「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会」(ADP)の発足について合意し、この新合意の2020年までの発効を目指し、2015年中にADPでの交渉を完了させることが定められた。さらに、2℃未満に気温上昇を抑える目標との関連で、2020年までの野心ギャップを埋める行動を模索するという役割もADPに課された。

ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、国連気候変動会議はカタール・ドーハで開催され、その成果として「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書がまとめられた。この決定書のパッケージには京都議定書の第二約束期間(2013~2020年)を定めるための議定書の改正事項やAWG-KP やAWG-LCAの作業完了、BAPの交渉終了についての合意も盛り込まれた。

ワルシャワ: 2013年11月11日-23日、国連気候変動会議はポーランド・ワルシャワで開催され、「各国の約束草案」(INDCs)の作成に向けた国内準備の開始や強化を締約国に要請する決定書がADPで採択された。また、気候変動の影響に係る「損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズム(WIM)」や「ワルシャワREDD+枠組み」(森林減少や森林劣化、森林吸収源の保護や持続可能な森林経営、森林吸収源の強化)の設立を定める決定書が採択された。

リマ: 2014年12月1-14日、国連気候変動会議はペルー・リマで開催された。COP 20は「気候行動のためのリマ声明 (Lima Call for Climate Action)」を採択。プレ2020年の野心の強化に取り組む一方、2015年合意の交渉始動に向けて2015年合意の交渉原案文の要素やINDCsの提出や合成のプロセス等の細目を詰める作業を実施することとなった。WIMの運用推進や「ジェンダーに関するリマ作業計画」策定、「教育や啓発に関するリマ閣僚宣言」の採択等に関して、合計19件の決定書が採択された。

パリ: パリ気候変動会議は2015年11月29日から12月13日にかけてフランス・パリで開催され、気候変動に関するパリ協定の採択という成果を上げた。パリ協定は、産業革命前との水準と比較して世界の平均気温の上昇を2℃未満で維持し、産業革命前の水準から1.5°Cまでの気温上昇に抑制するための取り組みや、気候変動に対する世界の適応力の向上やレジリエンスの強化、脆弱性の低減等の目標を定めた。また、パリ協定は、2種の5年サイクルを設定した。1つがNDCs提出に関するサイクルで、各国で異なる状況を勘案し、共通するが差異ある責任や各国の能力を反映させ、前回の貢献よりも次回には貢献内容を進化させることを示すものだ。2025年までという期間をNDCに盛り込んだ締約国には2020年までに新たなNDCの通達を、2030年までという期間を盛り込んだ締約国には貢献についての連絡や更新が要請された。2つ目が、2018年の促進ダイアログ後の2023年から開始される集団的な取り組みに関するグローバル・ストックテイクのサイクルである。すべての締約国は、共通の透明性枠組みを利用して各自の取り組みを報告する義務を負うが、途上国は報告義務を履行するための支援を受けられる。パリ協定は、GHG排出量の緩和に貢献し、持続可能な開発及び技術メカニズムに対して包括的な指針を下す技術枠組みを支援するメカニズムを定めている。

直近の関連会合ハイライト

パリ協定署名式典: パリ協定署名式典は、2016年4月22日、ニューヨーク国連本部で行われ、174の国と欧州連合(EU)がパリ協定に署名し、15の国が批准文書を寄託した。

ボン気候変動会議: ボン気候変動会議は2016年5月16-26日、ドイツ・ボンにおいて開催され、「実施に関する補助機関」(SBI)及び「科学的・技術的助言に関する補助機関」(SBSTA)の第44回会合ならびに「パリ協定に関する特別作業部会」第1回会合(APA-1)が行われた。APA 1では、パリ協定より託された作業に関する初期の意見交換が行われ、今後の作業に関する結論書が採択された。

SBI及びSBSTAでは、通常の議題項目に関する結論書の採択に加えて、パリ協定の採択に係る決定書1/CP.21による作業も開始された。SBIではNDCのための公開登録簿や適応報告書向けの手順・手続きの整備、SBSTAでは技術枠組みや第6条(協力的アプローチ)の手順に関する作業が開始となった。

モントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28): 2016年10月10-14日、モントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)がルワンダ・キガリで開催された。MOPでは、2016年の議定書改正に関する合意を目指し、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)に関する「ドバイ・パスウェイ」が焦点となった。モントリオール議定書の「キガリ改正」が採択され、先進国と途上国の双方によるHFCの段階的廃止のスケジュールが定められた。

GCF14回理事会: 緑の気候基金の理事会は2016年10月12-14日、韓国・松島で開催され、27カ国の緩和・適応関連10事業に対する7億4500万米ドルの資金供与が承認された。

IPCC-44: IPCC第44回総会は2016年10月17-21日、タイ・バンコクで開催され、1.5℃の地球温暖化に関する特別報告書や国別GHGインベントリに関する2006年IPCCガイドライン改訂に向けた方法論報告書の概要等に関する12の決定書が採択された。

パリ協定発効: 世界のGHG排出量の55%以上を占め、批准国が55カ国以上という二重の要件を満たして30日を経て、パリ協定は2016年11月4日に発効した。現在までに100カ国がパリ協定に批准している。

Further information

Participants

National governments
Democratic Republic of the Congo
US
Negotiating blocs
European Union

Tags