Summary report, 17 October 2016

44th Session of the IPCC (IPCC-44)

IPCC第44回総会は、2016年10月17-21日、タイ・バンコクで開催され、109カ国から300名が参加した。

IPCCで審議を行った項目は以下の通り。気候変動の脅威に対する地球規模の対応強化や持続可能な開発、貧困撲滅の取組みを検討する上で、産業革命前の水準比で地球が1.5℃温暖化する場合の影響とこれに係わる世界のGHG排出経路に関する特別報告書の骨子。2006年国別温室効果ガス(GHG)インベントリに関するガイドライン改訂に関する方法論報告書の概要。

IPCCは以下の項目に関する12点の決定書を採択した。+1.5℃の地球温暖化に関する特別報告書の骨子、IPCC信託基金プログラム及び予算、オブザーバーの認可、緩和・持続可能性・気候安定化シナリオに関する専門家会合、コミュニケーション及びスコーピングのプロセス、気候分析に関するデータとシナリオ支援に関するタスクグループ (TGICA)の今後、IPCCコミュニケーション戦略の見直し、IPCCの利害相反(Conflict of Interest: COI)ポリシーの見直し、IPCCスカラーシップ事業の見直し、2006年国別温室効果ガス(GHG)インベントリに関するガイドライン改訂に関する方法論報告書の概要、気候変動と都市に関するワークショップ。

IPCC略史

IPCCは、人為的気候変動や潜在的な影響、適応策や緩和策の理解に関する科学的、技術的、社会経済的な情報を、総合的で客観的、開放的、かつ透明性のある形で評価することを目的とし、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が設立した。IPCCは、195か国が加盟する政府間の科学的組織である。それ自体で新たな研究は行わず、気候関連のデータもモニタリングしない。その代わり、公表済みでピアレビューを受けた科学技術文献に基づいた知識の評価を行う。IPCC報告書は、政策との関連性を有することを志向するが、特定の政策を提案するものではない。

IPCCには、次の3つの作業部会(WGs)がある。作業部会I (WG I)は気候変動の自然科学的根拠について、作業部会II(WG II)は気候変動の影響、適応、脆弱性について、作業部会III(WG III)はGHG排出量の抑制や気候変動の緩和策を議論する。各WGは2名の共同議長と6名の副議長を有するが、第5次評価報告サイクルでは例外的にWG IIIの共同議長3名を置いた。各共同議長はパネルから託された作業部会に対するマンデート順守を指導し、実施においてはテクニカルサポートユニット(TSUs)の支援を受ける。

さらに、IPCCは、IPCC国別GHGインベントリ・プログラムを監督するための国別GHGインベントリに関するタスクフォース(TFI)を有し、これも他と同様にTSUの支援を受ける。上記プログラムは、国別GHGの排出量と除去量を計算し、報告するため、国際合意を受けた方法論とソフトウェアを開発、精緻化し、UNFCCC締約国における利用の奨励を目指すものである。

パネルは、一つの評価サイクルの全期間を担当する議長団を選出する。期間は5~7年で、IPCC評価報告書を作成する。議長団(ビューロー)は、全ての地域を代表する気候変動の専門家で構成され、IPCC議長を支援し、IPCCの業務を計画立案し、調整を図り、監視する。議長団はIPCC-42で実施した選挙でのIPCC-41決議に基づき31名から増員され、現在34名のメンバーで構成されている。議長団には、IPCC議長と副議長、各WGの共同議長と副議長、TFI共同議長とその議長団が含まれる。2011年、IPCC会議間隙中の業務を支援し、WGs間の調整を図る目的で、執行委員会(ExComm)が設立された。ExCommは、IPCC議長、IPCC副議長、各WG及びTFIの共同議長、ならびにIPCC事務局長と4つのTSUsの長を含める諮問メンバーで構成される。IPCC事務局はスイス・ジュネーブに設置され、世界気象機関(WMO)がホスト組織となっている。

IPCCの成果物:  IPCCは発足以来、数々の評価報告書、特別報告書(SRs)、テクニカル・ペーパーを作成、気候変動に関する科学情報を国際社会に提供し、専門家と政府による徹底したレビュー(査読)を受けてきた。

IPCC第1次評価報告書は1990年に完成、第2次評価報告書は1995年、第3次評価報告書は2001年、第4次評価報告書(AR4)は2007年、第5次評価報告書(AR5)は2014年に、それぞれ完成した。現在、評価報告書は、作業部会ごとの報告書をまとめた3部構成となっている。各作業部会の評価報告書は、政策決定者向けサマリー(SPM)、テクニカルサマリー、その基礎となる評価報告書の本文で構成される。各報告書の全てのセクションは3段階の徹底した査読プロセスを受ける。1回目は専門家による査読、2回目は専門家及び政府による査読、3回目は政府の査読である。その後、SPMは、それぞれ担当のWGにおいて行ごとの承認を受ける。続いて、評価報告書全体を対象とする統合報告書(SYR)が作成され、3つの作業部会の報告書で最も高い関連性のある項目をまとめ、その後パネルでSYRのSPMについて行単位の承認を行う。

IPCCはこれらの総合評価報告書に加え、気候変動に関係する特定の問題に注目した特別報告書(SRs)や方法論の報告書(メソドロジー・レポート)、テクニカル・ペーパー等を作成する。これまで以下のテーマに関する特別報告書(SRs)がある。土地利用・土地利用変化・森林(LULUCF) (2000年); 二酸化炭素回収・貯留(2005年); 再生可能エネルギー資源と気候変動の緩和 (SREN) (2011年);気候変動の適応推進を目的とする極端な現象及び災害のリスク管理 (SREX) (2011年)。テクニカル・ペーパーとしては、気候変動と水(2008年)に関する報告書などがある。

さらに、IPCCは、各国のGHGs報告書作成を支援するため、方法論報告書及びガイドラインも作成している。グッド・プラクティス・ガイダンス報告書は、2000年と2003年にパネルの承認を受け、国別GHGインベントリに関するIPCCガイドライン最新版 (2006年IPCCガイドライン)については、2006年に承認された。また、IPCCは、2006年国別GHGインベントリ・ガイドラインに対する2013年追補:湿地(湿地追補)を採択。京都議定書補足的方法論グッド・プラクティス・ガイダンス2013年改訂版(KP補足文書)も採択した。

また、IPCCは、2007年12月、「人為的気候変動に関する多くの知識を構築し、普及し、変化に対応するために必要な基礎を築く」というIPCCの業務と取組みについて、米国のアル・ゴア前副大統領と共同で、ノーベル平和賞を授与された。

インターアカデミーカウンシル(IAC)のレビュー:  AR4の不正確さに関するIPCCへの公的な批判やそれに対するパネルでの対応に対する世論の不満を受け、国連事務総長Ban Ki-moon及びIPCC議長Rajendra Pachauri(インド)は、IACに対し、IPCCのプロセス及び手順に関する第三者レビューを行い、IPCCの強化やIPCCの報告書の質を確保するための提案を行うよう要請した。

IACは、2010年8月の報告書においてレビュー結果を提示し、特に次の項目(IPCCの管理組織構造; 危機対応計画などのコミュニケーション戦略; 参加者選抜基準及び評価すべき科学技術情報のタイプなどでの透明性; 各WGによる不確実性の定義の首尾一貫性)に関する提案を行った。

IPCC-32:  総会(2010年10月11-14日、韓国・釜山)でIACレビューに関する提案が議論された。この問題に関して、パネルは、灰色文献や不確実性の扱い、以前の報告書の中の誤謬を議論するプロセス等、多数の決議を採択。また、精査が必要な提案に関しては、プロセスと手順、コミュニケーション、COI(利害相反)政策、ガバナンスと管理に関するタスクグループを設立した。

IPCC-33:  総会(2011年5月10-13日、アラブ首長国連邦・アブダビ)では、主にIACレビューに対するフォローアップに焦点が当てられた。パネルはExCommを設立し、COI政策を採択。IPCC報告書の手順に関して数カ所を変更した。

IPCC-34:  総会(2011年11月18-19日、ウガンダ・カンパラ)では、IPCC報告書の作成、査読、受理、採択、承認、刊行の改定手続き書が採択されたほか、COI政策の実施手順や情報公開フォームも採択された。

IPCC-35:  総会(2012年6月6-9日、スイス・ジュネーブ)では、IPCC事務局及びTSUsの機能を承認、コミュニケーション戦略を承認し、IACレビューの提案に関するパネル審議を終了した。

WGI-12及びIPCC-36: 総会(2013年9月23-26日、スウェーデン・ストックホルム)において、WGIは、同部会のAR5報告書「気候変動2013年:自然科学的根拠」を最終決定した。その後のパネルで、WGI SPMを承認し、テクニカルサマリー及び付属書を含む報告書本体を受理した。

IPCC-37:  総会(2013年10月14-17日、ジョージア・バツミ)で、IPCCの将来の作業に関するタスクグループの設置を決定した。さらに、2つの方法論報告書、湿地に関する追補及びKP補足文書を検討し、これらを採択した。IPCCは、IPCCの将来計画に関し、初期段階の議論を行った。

WGII-10及びIPCC-38:  総会 (2014年3月25-29日、日本・横浜)で、AR5のWGII報告書「気候変動2014年:影響、適応、脆弱性」を最終決定した。その後パネルは、WGII SPMを承認するため会合し、テクニカルサマリー及び付属書を含める報告書を受理した。

WGIII-12及びIPCC-39:  総会(2014年4月7-12日、ドイツ・ベルリン)で、AR5のWGIII報告書「気候変動2014年:気候変動の緩和」を最終決定した。その後、WGIII SPMを承認、テクニカルサマリー及び付属書を含める報告書を受理した。さらに、COP及びIPCCの将来作業等について議論した。

IPCC-40:  総会(2014年10月27日-11月1日、デンマーク・コペンハーゲン)は、IPCCの3つのWGsの結論を統合するSYRについて検討し、最終決定した。さらに、SYRのSPMについて行単位の承認作業を行い、長文のSYRについてはセクション単位で採択を行った。

IPCC-41:  総会(2015年2月24-27日、ケニア・ナイロビ)では、TGFの提案などIPCCの今後の作業について議論し、IPCC議長団及びTFI議長団(TFB)の人数、体制、構成を決定した。また、IPCCの成果物や発行時期、有用性、IPCCの体制、IPCC事務局及びIPCC TSUsそれぞれの役割、調整役代表執筆者(CLA)、代表執筆者(LA)の選抜及び支援に関するオプション、執筆・査読プロセスの改善等についての決定書も採択した。IPCCのPachauri議長の辞任を受け、Ismail El Gizouli(スーダン)がIPCC-42でIPCC新議長が選出されるまでの議長代行に任命された。

IPCC-42:  総会(2015年10月5-8日、クロアチア・ドゥブロブニク)では、IPCC議長、IPCC副議長、WG及びTFB共同議長、WGs副議長とTFBのメンバーを含めるIPCC議長団メンバーならびにTFBを選出した。パネルは、Hoesung Lee (韓国)を第6次評価サイクルのIPCC議長に選出した。

IPCC-43:  総会(2016年4月11-13日、ケニア・ナイロビ)では、第6次評価報告書(AR6)についてSRsや戦略計画も含めた議論を行った。IPCC-44では、「産業革命前の水準比で1.5℃地球が温暖化する場合の影響と関連する世界のGHG排出経路」、「気候変動、砂漠化、土地劣化、持続可能な土地管理、食料安全保障および陸域生態系におけるGHGフラックス」、「気候変動と海洋、雪氷圏」という3つのテーマに関する特別報告書(SRs)の作成で合意した。また、次の評価サイクルの一環で都市に関する特別報告書を準備するということでも合意した。

IPCC-44報告

月曜日、IPCC議長のHoesung Leeは、会合の開会を宣言した。タイの天然資源環境大臣のSurasak Karnjanarat将軍は、今回の会合は、AR6の重要な通過点であり、1.5℃特別報告書に関し、重要な決定を行う会議でもあると発言、IPCCの評価報告書及び刊行物は、気候変動の国際協力に必要な情報を提供するという点で、関連性が高いと強調した。

持続可能な開発事務局次長Kaveh Zahediは、国連アジア太平洋経済社会委員会を代表して発言し、次の点を強調した: 気候変動と持続可能な開発との関係; 持続可能な開発目標(SDGs)及びパリ合意の実現には総合的系統的な解決策が必要;  2℃を大きく下回る温暖化に抑制し、自然災害の影響及び脆弱性に取り組むというパリ合意の目的を達成することの緊急性。

WMO事務局次長のElena Manaenkovaは、気候変動における意思決定を支援する上でWMO及びIPCCが果たせる役割の重要性を強調し、この点に関するWMOの多面的作業について説明、これには多数の情報源からのデータの統合、中間的な規模での情報の提供、適応支援が含まれると述べた。同次長は、特に、WMOのモデル間比較プロジェクト、及び海洋の熱量に関する作業、さらには、地球の気候の状況に関するWMOの年次ステートメント(WMO Annual Statements on the Status of the Global Climate)、地球の炭素バジェット(Global Carbon budget)に関する報告書に焦点を当てた。Manaenkova次長は、WMOの科学者及び開発途上国からの気象サービス者のIPCCへの強力な参画を主唱した。

UNEPのJacqueline McGladeは、ナイロビからビデオリンク経由で発言、パリ合意とともに、ハイドロフルオロカーボンの段階的廃止というキガリ(Kigali)での成果、さらにはバンカー燃料に関する国際民間航空機関での合意は、いずれもパリから始まったトレンドの不可逆性、加速化を明確に示すシグナルだと述べ、各国は「今まさに、約束を実行している最中だ」と述べた。同代表は、来週、UNEPの排出量ギャップ報告書(UNEP Emissions Gap Report)が発表される予定と指摘し、UNEPはIPCCを支援し、その重要なメッセージを一般に伝えていることを誇りに思っていると表明した。同代表は、パリ合意は挑戦と機会という長い道筋の一歩に過ぎないと強調し、このような努力を強化し、それが確かな科学で裏付けられることを保証するという点で、IPCCは極めて重要であると強調した。

UNFCCCのFlorin Vladuは、IPCCがUNFCCCの特別報告書作成要請を受け入れたことに感謝し、特にパリ合意では、1.5℃目標達成に向けた排出経路に関する特別報告書は2018年の促進ダイアログへの重要なインプットになると述べた。同代表は、2016年5月のUNFCCC補助機関会合で開催された特別会合で、世界の状況報告にIPCCがどのように貢献できるかの議論が開始されたことを歓迎した。同代表は、近く開催される第22回締約国会議(COP 22)をIPCCとUNFCCC参加者との一層の議論の機会にすることを求めた。

IPCC議長のLeeは、IPCC-44の「詰め込まれた議題(packed agenda)」の中で、特に次の2つの項目を指摘した: 気候変動の脅威、持続可能な開発、及び貧困撲滅の努力に対する世界的対応策強化の観点からみた、産業革命前比1.5℃の地球温暖化の影響及びこれに関係するGHG排出経路に関する特別報告書の概要; 国別GHGインベントリのIPCCガイドライン2006年版を推敲する手法論報告書の概要。同議長は、締約国のパリ合意目標達成を助けるという、この2つの報告書の政策関連性を強調した。

議題書の採択:  月曜日、IPCC議長のLeeは、暫定議題書(IPCC-XLIV/Doc. 1)を提出した。英国は、AR6の戦略計画を議論する機会を求め、ドイツ及びベルギーの支持を得て、TGICA転換の提案が承認されたなら直ちに作業を開始できるよう、影響及び気候分析のデータ及びシナリオに関するタスクグループ(TGICA)の将来に関する議論の早期開始を提案した。IPCC議長のLeeは、これに対し、AR6のスコーピング及び戦略計画は、その他のビジネスに関する議題項目で議論すると応じた。その後、IPCCは、議題書を採択した。

43回会合報告書案の承認:  月曜日、IPCC議長のLeeは、IPCC第43回会合報告書(IPCC-XLIV/Doc. 3)を提出、パネルはこれを採択した。

IPCCプログラム及び予算

収支表―監査報告書:  月曜日、IPCC議長のLeeは、監査済み2015年収支報告書の情報文書(IPCC-XLIV/INF. 1)を提出した。米国は、IPCC信託基金に対する寄付の件数と金額の低下に対する懸念を表明した。その後、IPCCは、年次収支報告書に留意した。

2016年、2017年、2018年、2019年の予算:  この項目(IPCC-XLIV/Doc. 2)は、月曜日と木曜日に議論された。月曜日、IPCC議長のLeeは、IPCC-42承認予算と対比させた2016年予算案を提出し、加盟国に対し、決定書草案を検討するよう求めた:加盟国に対し、それぞれの2016年分の寄付を行うよう促し、可能な場合は、複数年以上をプレッジ(誓約)するよう促す; 2017年の改定予算案を承認する; 2018年及び2019年予算に留意する。IPCC議長のLeeは、資金タスクチーム(FiTT)に対し、この問題を議論し、木曜日のプレナリーに報告するよう求め、さらに決定書草案が資金及び予算に与える影響を検討するよう求めた。

木曜日、IPCC議長のLeeは、FiTTの共同議長に対し、決定書草案の提出を求めた。共同議長のHelen Plume(ニュージーランド)は、FiTTでの議論を反映させるべく、多少の予算調整を行ったと述べた。

パネルは、決定書草案を採択した。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP.12)において、パネルは特に、TFI統治組織、スコーピング、専門家会議、及びワークショップに関しリストアップされた修正を、改定2017年予算案に含めるべきと決定する。パネルは、事務局に対し、旅費関連の経費削減案を作成し、IPCC-45に提出するよう要請し、さらにIPCC-45の前にパイロットベースで会合前ブリーフィングを行うことを提案、このブリーフィング会議を会合前ブリーフィング開催の価値の観点から、評価するよう求める。

資源の動員:  月曜日、IPCC議長のLeeは、第6次評価報告書サイクルの資源動員戦略に関する情報文書(IPCC-XLIV/INF. 9)を提出した。IPCC事務局長のAbdalah Mokssitは、AR6サイクルのIPCCの刊行物作成を支援するには、資金源を調達する必要があると指摘し、2016-2019年の段階及び2020-2022年の段階で提案されている資源動員戦略を提出した。同氏は、これには次のものが含まれると述べた: 資源動員戦略の作成; 全加盟国宛てのWMO、UNEP、IPCC連名の書簡作成; IPCCに寄付を行っていない24か国の大使を訪問。同氏は、IPCCの資金状況を示す2頁のリーフレットが作成済みで、事務局は、新たなパートナーの可能性あるものを特定したと述べた。

ドイツは、AR6刊行物を提供できるかどうかは資源動員戦略次第であることを戦略に明記するよう求め、IPCCの基幹ビジネス以外の全ての活動をプレナリーで評価するよう求めた。サウジアラビアは、IPCCは事前の資金約束の無い追加要請を受け入れるべきでないと述べた。

スイスは、IPCCの作業支援は各国政府の責任であると述べ、追加資源の調達では、政府への働きかけに焦点を当てることを提案した。英国は、IPCCは主に各国政府から資金を受けるべきだと述べ、新たな寄付者にアプローチする前に、加盟国宛ての書簡の結果を待つよう提案した。フランスは、パネルの独立性を確保するメカニズムの設置を求めた。

ブラジルは、特定のイベントでパートナーシップを組むことを提案し、エクアドルは、会議の計画策定において国連組織間の協力を得られる可能性があると指摘した。

IPCC議長のLeeは、組織内部ではパートナーの名前が挙がっているが、まだ先方と接触していないと明言した。ベルギーは、新しく名前が挙がった寄付者がだれかを尋ねた。事務局長のMokssitは、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行、欧州復興開発銀行、国際金融公社、世界銀行であると述べた。同氏は、FiTTはこの問題に関し追加審議をする用意があると述べた。

スウェーデンは、米国とともに、資源動員の方策は慎重なコスト管理と組み合わせる必要があると指摘した。中国は、事務局に対し、このような目標に向け、加盟国政府や国際機関とともに努力するよう求めた。米国は、現在の寄付額と評価規模で期待される寄付額を比較するのは有用な情報だろうと述べた。同代表は、経費削減に関し、会議参加コストを節減する機会を見出す必要があると述べた。

ブラジル、タンザニア、モロッコは、開発途上国のIPCC作業参加の能力が経費削減努力の中で損なわれるのを回避する必要があると強調した。日本は、開発途上国の科学者の能力向上を支援するため、既存のネットワークを強固にするよう求めた。

メキシコは、加盟国が実現可能な寄付をリストするのは有用だろうと述べた。マリは、一部の国連機関で広く行われている方法に合わせ、加盟国の予算上の寄付額と自主的な寄付額の定義づけを提案した。マダガスカルは、加盟国がWMOを通して寄付をし、IPCCへの寄付額と指定することを提案した。ナイジェリアは、寄付額が減少傾向にある理由を明らかにする必要があると述べた。

IPCC事務局長のMokssitは、提起された提案や懸念に応え、IPCCの原則に基づきこの戦略を推進すると強調した。同事務局長は、第6次評価報告書サイクルへの期待感に応えるには資源動員が必要であるとの「図式は明らか」と強調した。同事務局長は、経費を削減し、実際の寄付額を考慮して、資源を増加する方法を紹介、これらの方法の中には、IPCCの基本原則に合致するような組織とのパートナーシップの可能性拡大が含まれる可能性があると述べた。

IPCC議長のLeeは、全てのコメントや提案を記録していると述べた。その上で、IPCCはこの報告書に留意した。

オブザーバー組織の承認

月曜日、IPCC議長のLeeは、IPCCオブザーバーの地位に関する申請書(IPCC-XLIV/Doc. 4)を提出した。IPCC事務局は、この議題項目について報告し、10件の組織がオブザーバーの地位を要求しており、議長団は肯定的にレビューしていると指摘した。申請したオブザーバー組織は次のとおり: Climate Alliance; C40世界大都市気候先導グループ(Cities Climate Leadership Group); 気候と大気浄化のコアリション(Climate and Clean Air Coalition); 世界気候研究計画(World Climate Research Programme); 国際農業研究協議グループ(Consortium of International Agricultural Research Centers (CGIAR)); Friends World Committee for Consultation; Mary Robinson Foundation - Climate Justice;Intergovernmental Technical Panel on Soils; ルーヴァン・カトリック大学(Université catholique de Louvain); 太平洋共同体(Pacific Community)。

IPCCプレナリーは、追加コメントなしで、申請を受理し、決定書を採択した。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP.10)において、パネルは、10件の新しいオブザーバー組織の加入を決定した。

報告書

コミュニケーション及びアウトリーチ活動:  月曜日、IPCC議長のLeeは、この議題項目(IPCC-XLIV/INF.2)を提起した。IPCCコミュニケーション・オフィサーのJonathan Lynnは、この文書記載の活動に追加する活動を指摘し、UNFCCCのCOP開催都市及びその周辺国からの人々や若者が参加する活動に焦点を当てた。同氏は、IPCC議長のLeeとともに、この種のアウトリーチ継続の資金を求めた。

マリは、2016年6月に、IPCC議長のLeeの出席を得て開催されたワークショップを称賛し、このワークショップには、フランス語圏のアフリカ諸国から多数の国会議員や若い研究者が参加したと述べ、開発途上国でのアウトリーチ努力の継続を求めた。IPCC事務局は、ベルギーからの質問に応え、コミュニケーション・アクション・チームの構成に関する情報を提供した。スペインは、2050年の気象予報を見せる短いビデオで構成されたWMOのキャンペーンに言及し、このような安価でインパクトのあるコミュニケーションを求めた。

パネルは、この議題項目に留意した。

TSUs設置の現状:  月曜日、IPCC議長のLeeは、WG共同議長の口頭での報告を求めた。WGI共同議長のValérie Masson-Delmotte(フランス)は、WGI TSUは設置済みであり、1.5℃特別報告書支援の体制が整っていると述べ、2016年及び2017年の予算を説明し、このTSUは追加スタッフを募集中だと指摘した。同共同議長は、WGI TSUのホスト組織はフランスのパリ・サクレー大学(Université Paris Saclay)であると報告した。

WGII共同議長のHans-Otto Portner(ドイツ)は、WGII TSUのオフィススペースをリースし、スタッフを増員中と述べた。同共同議長は、WGIIのTSUホスト組織はドイツのアルフレッド・ウェゲーナー研究所(Alfred-Wegener-Institute)であると報告した。WGII共同議長のDebra Roberts(南アフリカ)は、TSUの南アフリカ部門での進展について報告し、科学者支援の行政制度が策定されており、南アフリカのクワズール・ナタール大学(University of Kwazulu Natal)がホストになると述べた。

WGIII共同議長のJim Skea(英国)は、WGIII TSUはIPCCの作業を支援するに「十分なほど確立」されていると述べ、WGIII TSUのホスト組織は、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)であると報告した。さらに同共同議長は、TSUのインド部門を、WGIII共同議長のPriyadarshi Shuklaが率いるアフマダバード・インド経営大学院(Indian Institute of Management)に設置することも進展していると指摘した。

TFI共同議長のKiyoto Tanabe(日本)は、TFI TSUは「シームレスに」機能しており、新しい TFI TSUの長が就任したと述べた。同共同議長は、TFI TSUのホスト組織はこれまでどおり、地球環境戦略研究機関(Institute for Global Environmental Strategies)であると報告した。

パネルは、これらの口頭での報告に留意した。

開発途上国のIPCC活動への参加:  この項目(IPCC-XLIV/INF.4)は、月曜日と火曜日に議論された。月曜日、事務局は、開発途上国のIPCC活動への参加に関する文書を提出、この文書には次の5つの行動が記載された: 参加を強化するための地域の及び各国の計画作成; コミュニケーションをフォローするためUNEP及びWMOにコミュニケーション(情報)を伝達; IPCCの会合に先立つブリーフィング及び研修の会合; IPCCの執筆者及び査読者の募集公開; 新規執筆者への訓練及び指導。

議論の中で、チャド、コモロ諸島、マリ、スイスなど多数の国は、各国の窓口の能力を高め、強化するよう求めた。ノルウェーは、IPCCは各国の窓口と密接に協力する必要があると述べ、各国の窓口の連絡先を最新の情報に更新するよう促した。

南アフリカは、提案された行動はIPCC-41での議論と決定に基づくものだと述べ、その実施を促した。スワジランドは、提案された行動は連続で行える可能性があると示唆した。エチオピアは、この提案を支持し、これで自国の政治家の参加度が高まり、さらに若い研究者の参加が強化されることを希望した。

タンザニアは、開発途上国からの参加を妨げている障壁の解消を求めた。コンゴ、マリ、ベニン、トーゴは、一部の研究者の参加を阻害し、開発途上国からの文献の考察を妨げている言語障壁の役割を強調した。

インドネシアは、開発途上国出身の査読編集者、寄稿執筆者は少数であると嘆き、特に次の項目を提案した: 開発途上国出身の科学者の職業経験を考察に入れる; キャリアの浅い科学者の参加を増やす; 途上国でのIPCCデータのデータベースを作成する。チャドは、IPCCに対し、修士号取得を目指す研究者に無償で融資するよう求めた。ジンバブエは、若い科学者に対し、ワークショップの枠を超えた支援を求め、研究資金の供与も入れるよう求めた。米国は、この問題をIPCC奨学金プログラムとともに議論することを促した。

情報へのアクセスに関し、インドは、ベニンとともに、国際的ピアレビューを受けたジャーナルに途上国の専門家がアクセスしやすくすることを促し、そのような情報源としての国別報告書の活用を提案した。米国は、UNEPの図書館機能の状況に関する最新情報を求めた。事務局は、IPCCとUNEPのパートナーシップ合意は数日のうちに最終決定されると指摘した。スイスは、このパートナーシップは、完全な透明性とIPCCの自治原則に基づく必要があると指摘した。フランスは、評価報告書作成プロセスでのこの合意の重要性を指摘した。UNEPは、文書手続きが一部未完のままであるが、制度自体は近く最終決定される予定と明言し、パネルに対し、UNEPは入手可能な全ての情報及びコミュニケーション資源をIPCCに提供する用意があると確言した。WGII副議長のAndreas Fischlinは、万一の場合に備え、他の組織の支援を求めることを提案した、たとえばETHチューリッヒ図書館(Zurich library)であるが、これは過去にも科学文献をIPCCの利用に付しており、ここがAR6作成プロセスの間も執筆者や他のもののアクセスを可能にすることを申し出た。

地域活動について、ベネズエラは、最近、中南米・カリブ海地域でIPCCのプレナリーが開催されたことがないと指摘し、IPCCのイベントの地域バランス改善を求め、WGIII副議長のRamon Pichs-Madruga及びドミニカ共和国の支持を得た。ニジェールは、IPCCと地域組織間の一層の協調を求め、スペインは、気候変動オフィスのイベロアメリカン・ネットワーク(Iberoamerican Network of Climate Change Offices)に注目した。ジンバブエは、IPCC議長団を通し、IPCCの地域レベルの行動計画策定に参加することが重要だと強調した。レソトは、後発開発途上国出身の専門家の参加を高める必要があると述べた。

会合前ブリーフィングに関し、英国は、会合前ブリーフィングを開催する目的は支持したが、米国、フランス、ドイツとともに、そのような会合が予算に与える影響を指摘した。米国は、ブリーフィング会合で何が達成されるかが明確でないと述べた。事務局は、ブリーフィングにより国内窓口は自国の科学者のIPCC作業への参加に関する最善の方法について、情報を共有できると述べた。WGIII副議長のPichs-Madrugaは、会合前ブリーフィングは開発途上国のプレナリー会合参加の準備に役立つだろうと述べた。ドイツは、ブリーフィングは評価サイクル期間中に1、2回開催できるのではないかと述べ、予算の限界を指摘し、会合前ブリーフィングではなく、会合期間中のブリーフィングを求めた。IPCC議長のLeeは、会合前ブリーフィングの予算への影響に関する質問に応え、提案された行動が資金に与える影響は2016年、2017年、2018年、2019年の予算に関する議題項目の下で評価されると述べた。

University College LondonのLeo Meyerは、最近開始されたIPCCでの開発途上国の参加強化のプロジェクトについて、プレゼンテーションを行い、当初はAR6におけるアフリカの気候科学者の参加人数増加を目指していたと述べた。同氏は、このプロジェクトの活動にはワークショップやe-学習講座、さらにはAR6の執筆者または査読編集者への就任を希望するアフリカの研究者に対する訓練が含まれたと述べた。Meyer氏は、2017年の資金調達は依然問題で、現在資金を募集中であると指摘し、パネルのメンバーからのフィードバックや質問を歓迎した。ドイツは、地域科学サービスセンター(Regional Science Service Centers)など、自国にある同じようなイニシアティブに焦点を当てた。

経済協力機構(ECO)は、開発途上国の参加強化では、政府間組織が重要な役割を果たせると強調し、ECOはキャパシティビルディング活動を通して一種の貢献を提供する用意があり、さらに中央アジア、コーカサス、東アジア地域でのコミュニケーション・ネットワークの役割を果たせると強調した。

パネルは文書(IPCC-XLIV/INF.4)に留意した。

IPCCカーボン・フットプリント:  火曜日、IPCC議長のLeeは、この議題項目(IPCC-XLIV/INF. 5)を提起した。事務局は、IPCCのカーボン・フットプリントの主な貢献要素は旅行関連の排出量であると強調した。米国は、議長団の会議及び執行役員会議(ExComm)をプレナリー会合と同時開催することを提案し、さらに遠隔地からの積極的な参加を推進する方法を見出すことを提案した。

手順上の問題

IPCCCOI(利益相反)政策のレビュー:  この項目(IPCC-XLIV/Doc. 13)は、火曜日に最初の審議が行われた。議論に続き、COI小委員会は、COI開示書式改訂版及び、木曜日の審議に付す決定書を提出した。

火曜日、IPCC副議長及びCOI小委員会委員長のYouba Sokonaは、小委員会の次の提案に焦点を当てた: IPCC-XLIV/Doc. 13の附属書記載の宣言書改訂版を用いて、申請者からより詳細な情報を受け取る; この書式には職歴書(CV)の添付を求める; COI委員会の人数を15名から8名に削減する; 専門家諮問グループを廃止し、必要なときのみ専門家を雇う; 実施手順の第7項を改定し、統合報告書のTSUに務める専門職職員のCOI書式は、IPCC議長団ではなくIPCC COI委員会が評価するようにする。

米国、日本、ドイツは、これらの提案を支持したが、開示書式については提案があった。米国は、書式に記入するよう求められるのはだれであるかを明らかにすべきだと述べた。数か国は、書式の記入方法で不明な点がないよう、特定の表現を明確化するよう求めた。英国は、利益相反の評価は、申請者がIPCC活動に参加可能となる前に終わらせるべきと付言した。スウェーデンは、どのようなタイプのフィードバックを申請者に戻すのか質問した。

米国、ベルギー、サウジアラビアは、利益相反と受け止められる場合に何をすべきか、提案することを示唆した。

サウジアラビアは、プロセスを客観的で無制限に保持していく必要があると強調し、この政策は開発途上国の科学者のIPCC作業への参加を妨げる可能性があると指摘した。同代表は、利益相反があるかないか、委員会の決定に委ねるのではなく、申請者が明確に判断できるような書式にすべきだと述べた。同代表は、この文書にさらなる改定を加えた上で、パネルでの議論に戻すことを提案した。

木曜日、COI小委員会委員長のSokonaは、決定書草案及び改定された書式(IPCC-XLIV/CRP. 6)を提示した。

WGII副議長のSergey Semenov、サウジアラビア、ロシア、ドミニカ共和国、アルジェリアは、書式に曖昧さがありうるとして懸念を表明し、サウジアラビアは、他の国際機関の政策から学び、当委員会の方で当該書式を改定し、将来会合に問題の再提起を行うことを提案した。ドイツ及び英国は、パネルは書式のみを検討しているので、政策を検討しているわけではないと強調した。 WGIII副議長のAndy Reisingerは、ハンガリーの支持を得、どの程度の詳細が求められるのか、及び情報のタイプについて、明確な考えが得られるよう、COI書式に書き込み例をつけることを提案した。

米国は、専門家諮問グループの廃止が予算に与える影響について質問し、ベルギーの支持を得て、当該委員会のメンバーは、定足数を満たす努力を軽減するため、個人的にではなく、バーチャルな形でも会議に出席可能とすることを示唆した。

サウジアラビアは、利益相反が明らかな場合、あるいはそう受け止められる場合にどうするか、政策の策定を求め、一部の組織では特別な事情がある場合にこの規定を免除していると指摘した。

非公式会議後、小委員会委員長のSokonaは、現在のCOI政策の観点から書式を読むなら、懸念材料の一部は和らぐのではないかと報告した。同委員長は、利益相反を構成するものを定義づけるCOI政策パラグラフへの言及、パラグラフ自体の記載など、書式を改定するよう提案し、書式に「はい(yes)」と答えても、それは必ずしも利益相反の存在を意味するわけではないと明言した。同委員長は、これらの変更を記載する書式について、採択を受ける用意があると示唆した。

米国は、決定書の冒頭で、執筆者チームには異なる見解や関係先を持つ個人を含めるべきとのIPCC COI政策12パラグラフの規定を想起するよう要請した。

続いてパネルは、プレナリーで改定されたとおりの決定書を採択した。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP. 6)において、IPCCは次のとおり決定する:

  • IPCC COI政策の附属書Bを附属書1記載のCOI開示書式に置き換え、これを採択する、このCOI開示書式はCVを付して提出されるべきとの要請も含む;
  • IPCC COI政策の実施手順における、COI専門家諮問グループ(EAG)に関するパラグラフ23及び24、さらには実施手順のパラグラフ3、4、10、17におけるEAGへの言及を削除する;
  • 実施手順のパラグラフ7の「IPCC議長団(IPCC Bureau)」という表現を「COI委員会(COI Committee)」に置き換える;
  • 完全で関連性のある情報の提供を求め、確保するため、COI開示書式を改定する;
  • 実施手順のパラグラフ5の最後に次の表現を追加し、最後の文章を開始する: 「調整役代表執筆者、代表執筆者、もしくは査読編集者が作業を開始する前に(Before a Coordinating Lead Author, Lead Author or Review Editor can start working)」; その後の「(then)」を削除する;
  • IPCC COI委員会の作業方法のパラグラフ(f)に含まれるフレーズ「自身で(in person)」を削除する。これにより、COIメンバーはCOI会議へのバーチャルな出席が可能になる。

第6次評価報告書(AR6)の製品

1.5℃の地球温暖化の影響及び関係するGHG排出経路に関する特別報告書の概要:  パネルの出席者は、会合期間を通し、この項目(IPCC-XLIV/INF. 6. Rev. 1)について議論した。月曜日、この項目が提示され、出席者はコメントを述べ、その後科学的運営委員会で議論し、火曜日に追加コメントを得るべく、概要の改訂版が提示された。その後、プレナリーは、水曜日にこの問題についてさらに議論し、SR概要の再度の改定版を採択、木曜日に決定書が採択された。

月曜日、IPCC副議長で、SRのスコーピングに関する科学的運営委員会の委員長であるThelma Krugは、2016年8月にジュネーブで開催されたスコーピング会議の報告書を提出した、この中には、SR作成のタイムライン、各章の説明が含まれた。同副議長は、専門家として589名の候補者名を受け取り、このうち86名の専門家が選ばれたが、その51%は開発途上国出身であると指摘した。同副議長は、意見交換を進めるべく、テーマ及び疑問点を指摘した、運営委員会作成の背景説明文書に焦点を当て、全てのIPCC窓口及びオブザーバー組織に質問状を送り、報告書の形式や構成、内容に関する意見を求めていると述べた。さらに同副議長は、スコーピング会議では概要の各章の草案について、全ての出席者の意見が一致したと指摘した。

多数の国は、UNFCCCの要請に沿い、1.5℃温暖化に伴う影響及び排出経路に焦点を絞った簡潔で短いSRを求めた。時間枠があまり残されていないことから、多数の者は、重複を避け、報告書の政策関連性を確保する必要があると強調した。タンザニアとルクセンブルグは、第4章(地球規模の対応強化)と第5章(強化された対応の実施方法)がどう違うのか明確でないと述べ、モロッコは、章を統合すると該当章の一部を損なうことにならないか疑問視した。他のものは、問題の一部はAR6の後の章で論じることも可能だと指摘した。ブラジルは、政治的に中立な報告書にするよう促し、読みやすく簡潔な報告書というのも重要だが、必要かもしれない分析結果を限定してはならないと述べた。さらに多数の国は、報告書へのアクセスしやすさも重要だと強調した。数か国は、端的で焦点を絞った政策決定者向けサマリー (SPM)を提案し、ベルギー及びルクセンブルグは、現在のSPMはテクニカルサマリーに換えることができると提案した。

反対に、サウジアラビアとロシアは、提示された通りのSR概要の承認を求め、1.5℃温暖化が取り上げられたのはUNFCCCの政治的決定であったと指摘し、サウジアラビアは、概要の議論を再開することに警告し、再開するなら今週末までに合意できないことになると述べた。

タンザニア、チリ、ザンビアは、温暖化2℃ではなく、1.5℃の温暖化に焦点を絞るよう促した。

セントルシアは、影響に特化した章は一つだけであると嘆き、SRでは影響を第一に優先すべきと述べた。スペイン及びその他は、影響にもっと注意を向けるよう提案した。米国など、一部の国は、概要に記載される要素の全てにおいて、ピアレビューされた文献が利用可能かどうか疑問視し、中国を含める数か国は、ピアレビューされた文献の科学的信頼性及び客観性を強調した。

南アフリカは、開発途上国からの文献を評価する「格別な努力(special efforts)」を求めた。フィリピンは、開発途上国ではモデル研究能力が限定されていることを認識する必要があると述べた。

日本は、気候感度及び排出量の不確実性情報が含まれていると強調した。メキシコ、チリは、短命な気候汚染物質を含めるよう求めた。カナダは、世界的、地域的な情報源を含めること、一定範囲の影響を対象とすることを支持した。同代表はさらに、報告書の中の約束草案(INDCs)への言及を回避するよう求め、これは時間の経過とともに変化すると期待されると指摘した。

火曜日、科学的運営委員会のKrug委員長は、SR概要の改訂版(IPCC-XLIV/CRP. 1)を提出した。同委員長は、改定された概要はスコーピング会議の精神を保持する一方、パネルの提案にも配慮していると強調し、バランスをとっていることに注目するよう求めた。改定された概要では、報告書の焦点を絞るため、次のことが規定された: 影響と経路に関する1つの章を除き、全ての章の長さを削減した; 4章と5章を統合し、気候変動の脅威に対する世界的対応の強化及び実施に関する1つの章とした; 図表を除き5-8頁の短いSPMを提案した。パネルの他の提案に関し、Krug委員長は、社会的な影響と自然への影響の相互依存性を考慮し、統合して考察されるべきというのが運営委員会の確信であると述べ、さらに執筆者に対し、IPCCの原則に則った十分な科学的根拠のある資料のみを含めるようにとの注釈の追加を提案した。さらに同委員長は、概要の各章に記載された箇条書きリストは暗示的なもので、その長さは、既存の文献の観点から調整可能だと指摘した。

サウジアラビアを除く数か国は、改訂版はバランスがとれており、概要を明確にしているとして支持し、その長さの短縮を歓迎した。

サウジアラビアは、概要は本来暗示的な特性を持ち、その内容は科学的な利用可能性に依存すると強調した。米国は、ハンガリーの支持を得て、概要の各章に関する箇条書きは暗示的特性を示すとの表現の追加を提案し、ノルウェー、ドイツ、その他とともに、IPCCの原則に則ったピアレビュー済み文献に基づく評価を行う必要があると述べた。

サウジアラビアは、第4章と第5章の統合は遺憾であるとし、比較基準として2℃もしくはそれ以上の温暖化に言及するよう求め、緩和行動が大きく拡大された場合、及び加速化された場合のスピルオーバー効果にも言及するよう求めた。

英国は、ベルギー、ルクセンブルグ、日本、ノルウェー、スペイン、アイルランド、スウェーデン、コンゴ、その他とともに、第2章では比較目的で2℃の温暖化に向けた緩和経路にも明確に言及するよう求めた。

セントルシアは、マーシャル諸島及びバハマとともに、影響を論じる部分の拡大を求め、可能なら2つの章にし、地球規模、地域規模、部門別、その他の影響を論じるよう求めた。WGII副議長のFischlinは、影響に関する章を1つの大きな章にすることの利点を指摘し、この問題に関し総合的な理解を得ることに役立つと述べた。

ソロモン諸島は、ニカラグア、エルサルバドル、エクアドルとともに、損失と被害への明確な言及を求めた。

オランダ、オーストリア、スペイン、その他は、テクニカルサマリーを含めるよう求めたが、ノルウェーは反対した、ベルギーは、テクニカルサマリーは各章のサマリーに基づくことを提案した。オランダ、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルグは、5-8頁というSPMに割り当てられた中に図表を含め、さらに短い報告書にするよう提案したが、ノルウェーとモロッコは反対した。アフガニスタンは、AR5と同様、地域影響を表の形で入れることを提案した。

水曜日、Krug委員長は、改定した概要草案及び決定書草案を提出した。同委員長は次の点を強調した: SPMの長さとしては10頁以下を提案、これには図や冒頭のステートメントも含める; 第2章では2℃の温暖化への言及を追加する; 適応能力の限度への言及を第3章に追加する; 第4章のマイナスの排出量への言及に代わり、正味ゼロの排出量とする。参加者は、主に2℃かそれ以上の地球温暖化への言及、及び正味ゼロの排出量への言及について議論した。

セントルシアは、決定書のパラグラフの文章に関し、次のような懸念を表明した: 2℃と比較した1.5℃の温暖化に焦点を当てる文献を評価する、必要な場合は、高度な温暖化と比較すると記述するパラグラフは、報告書が1.5℃の影響及び排出経路に焦点を当てるのではなく、むしろ1.5℃と2℃の比較に焦点を当てる可能性を示唆する。米国、WGIII副議長のReisinger、マーシャル諸島、ドイツ、ジャマイカの支持を得た同委員長は、決定書の当該パラグラフを削除し、概要の影響及び排出経路に関する箇条書きの中で、2℃またはそれ以上との比較に言及することを求めた。WGIII副議長のDiana Ürge-Vorsatzは、温度とのリンク付けは社会科学の文献や温度と直接にリンク付けできない数量化ボトムアップ文献など、一部の文献を除外する可能性があると述べた。サウジアラビアは、概要を支持し、比較が必要な個所がどこかの決定では科学者を信頼すべきだと述べた。

Krug委員長は、コメントに対応し、排出経路及び影響に関する各章に、「文献が必要な場合は、2℃と比較した1.5℃、さらに高い水準の温暖化との比較(1.5℃ compared with 2℃ and, where warranted by the literature, comparison with higher levels of global warming)」という表現の追加を提案した。セントルシア、ブラジル、中国は、この変更への支持を表明した。

正味ゼロの排出量に関し、日本とフィリピンは、「正味ゼロ(net zero)」という表現を削除し、「現在及び新たに登場してきた緩和オプション、及びそれに伴う機会と課題を評価する(assessing current and emerging mitigation options and associated opportunities and challenges)」との表現のままにしておくことを提案した。ノルウェーは、正味ゼロへの言及を保持するよう求め、排出量と吸収源による除去量とのバランスに関係する問題を取り上げることが重要だと述べた。

Krug議長は、コメントに応えて、正味ゼロへの言及削除を提案した。サウジアラビアは、正味ゼロへの言及がない概要を受け入れる準備はできていないと発言し、この表現は、本来「マイナスの排出量(negative emissions)」であったと指摘した。Krug議長は、「新たに登場する緩和オプション(emerging mitigation options)」というのはマイナスの排出量を含めるに足る広義なものだと述べた。ノルウェーとアイルランドは、マイナスの排出量を取り上げていることへの信頼感を表明し、Krug議長の提案通りの文章を支持した。WGII副議長のSemenovは、「正味ゼロの排出量(net zero emissions)」を「ゼロの正味排出量(zero net emissions)」とし、「ゼロ、マイナスの排出手法論を含める(including zero negative emission methodologies)」に言及することを提案した。

このような変更を行った上で、パネルは概要の文章で合意した。

木曜日、米国は、このSRはパネルの報告書として最も高いプロフィールを持つものの一つだと指摘し、十分な文献で支持される結論とするなど、最高の基準を守るよう促した。

参加者は、文献上のギャップの分析に執筆者が参加する必要があることを、文書中の該当題目に記述する場合の最善の方法について議論し、それにより題目の明示リストを修正することになるかどうかで意見が分かれた。IPCC議長のLeeは、Krug議長に対し、関心のある諸国と非公式に協議し、合意できる表現を見出すよう要請した。

その後、パネルは、ギャップの分析を題目の明示リストに結びつけるよう改定した決定書を採択した。s

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP. 2.Rev. 2)において、パネルは、このSRはUNFCCCの招請に応じるものだと指摘し、附属書1に記載する通りの「1.5℃地球温暖化」SRの概要で合意する。パネルは、この報告書は1.5℃に関連する文献、特にAR5以後に入手可能となっている文献を、IPCC指針に則り評価すると決定する。さらにパネルは、附属書1の概要に記載する箇条書きの文章は、執筆者に暗示を与えるものとみるべきで、明確に特定された科学面のギャップを考慮に入れるべきと決定する。

SRの概要には次の5つの章が含まれ、合計で225頁に及ぶ: 枠組と内容の説明(15頁); 持続可能な開発の概念の下、1.5℃(温暖化)と合致する緩和経路(40頁); 1.5℃の地球温暖化が自然系及び人間のシステムに与える影響(60頁); 気候変動の脅威に対する世界的対応の強化及び実施(50頁); 持続可能な開発、貧困撲滅、不平等の削減(20頁)。このSRは、2018年9月のIPCC-48での承認が予定される。

国別GHGインベントリのIPCCガイドライン2006年版を改善するための手法論報告書の概要:  この項目(IPCC-XLIV/Doc.12)は、月曜日に第1回の審議が行われ、TFI共同議長は、木曜日に概要の改定版と決定書を提出、パネルはこれを採択した。

月曜日、TFI共同議長のTanabeは、8月に開催されたスコーピング会議の概要を説明し、この報告書で提案されている要素、特に次の項目に焦点を当てた: 2006年ガイドラインに倣い概要の章と5部で構成される単独の手法論報告書; 必要な場合にのみ最新情報を提供; 顕著な違いがある場合は、デフォルトの排出係数及びデフォルトのパラメーターを更新; 既存のガイドラインに追加するまたは別な説明を付ける。

オランダは、より典型的なデフォルト係数を求め、地球規模のIPCCのデフォルト係数は、最後の手段としてのみ用いるべきと述べた。

韓国は、ベルギーと日本の支持を得て、排出源からのGHG排出量の直接計測値を含めるよう提案し、それにより推計値の正確さが高められると指摘した。スイスは、米国とともに、遠隔感知をパリ合意のボトムアップ・モニタリング・システムとどう組み合わせるかを問うた。

トーゴは、2019年の改訂版報告書に沿うソフトウェアについて質問し、フランス語に翻訳することの重要性を強調した。TFI共同議長のEduardo Calvo Buendíaは、ソフトウェアの問題は次回のタスクフォース議長団会議で議論されると述べた。

フィリピンは、国別インベントリ管理システムに関するガイダンスの重要性を強調した。共同議長のCalvo Buendíaは、この可能性について議論することになると指摘した。

米国は、水力発電用貯水池の排出量は世界の排出量の1%に及ぶ可能性があると指摘し、浸水地(flooded lands)の問題は詳細に議論されるべきと述べた。ブラジルは、この問題は科学的には熟していないと指摘し、改定に予断を与えるべきでないと述べた。

メキシコは、チリとともに、黒色炭素(black carbon)を手法論報告書に追加するよう提案した。共同議長のCalvoは、マンデートは現在のガイドラインの推敲であり、黒色炭素を含めるには遅すぎると指摘した。

ベルギーは、ガイドラインの2019年改訂版を2016年に亡くなったJim Penman博士に捧げるとの自身の正式提案を想起した。多数の参加者が、この提案を支持、このことは会議報告書に記載され、それにより2019年に実現される。パネルは、Penman博士の思い出のため、1分間の黙とうを捧げた。

IPCC議長のLeeは、ドイツ、デンマーク、米国の支持を得て、パネルは報告書概要を提示されたとおり採択し、同時にタスクフォース議長団による詳細の議論を認めることを提案した。ブラジルは、これに反対し、浸水地(Flooded Lands)に関する7.3章の改定を求め、目次案において改定が見込まれる章でも改定が必要ない場合もあると明記する脚注を含め、反対した。

木曜日、TFI共同議長のCalvo Buendíaは、改訂版(IPCC-XLIV/CRP.4)を提出、変更点に焦点を当て、これらの変更点は文書の精神や構成を変えるものではないと述べた。TFI共同議長のTanabeは、文書に盛り込まれていないコメントに応えた、この中には、現在の目次は検証や地方の排出係数及び国別GHGインベントリ―の開発の目的で直接計測を論じていることも含まれた。同共同議長は、タスクフォース議長団は次の項目を議論すると述べた: 2019年改訂版に基づくIPCCインベントリ・ソフトウェアの最新版; 国別インベントリ管理システムに関するガイダンスを別な章もしくは第1部のセクションにするとの提案; 執筆者の候補指名及び選抜を行う際の部門横断的専門性への配慮。

フィリピンは、浸水地がない場合に発生する排出量の係数解析への言及を削除するよう提案し、ブラジルはこれに反対した、その後、TFI 共同議長が浸水地は特異な分類で多様な手法が利用可能と明言したことから、フィリピン代表は提案を撤回した。パネルはこの概要で合意した。

メキシコは、チリ、ベルギー、ケニアに代わり発言し、IPCCは次回のプレナリーにおいて、TFIのマンデートを改定し、手法論報告書で黒色炭素のような短期気候強制力要素に関係する手法論問題を論じることができるようなプロセスの開始を提案した。ブラジルは懸念を表明し、黒色炭素はガスではなく、UNFCCCでは規制されないと述べた。日本は、予算への影響について注意喚起した。

最終決定:  最終決定書(IPCC-XLIV/CRP. 4)において、IPCCは、国別GHGインベントリのIPCCガイドライン2006年版を改定する手法論報告書の作成を決定し、合わせて、国別GHGインベントリのIPCCガイドライン2006年版(2006年IPCCガイドライン)のフォーマットに従い、概要の章と5つの部で構成される一つの手法論報告書のフォーマットにすると決定、そのタイトルは、「国別温室効果ガスインベントリの2006年IPCCガイドラインの2019年改訂版(2019 Refinement to the 2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories)」とすると決定する。さらにパネルは、本決定書付属書記載のこの報告書作成のための委託条件及び報告書の目次の両方を採択する。

気候変動及び都市に関するワークショップ:  この項目(IPCC-XLIV/Doc. 9)は、火曜日に第1回の審議が行われ、木曜日に決定書が採択された。

火曜日、WG II共同議長のDebra Robertsは、この項目を提起し、都市は緩和と適応の両方の機会を提供すると指摘し2018年に国際パートナーと共同で国際会議が開催されると発言した。同共同議長は、都市連合(Cities Alliance)、C40、国連ハビタット機関(UN-HABITAT)の資金供与を指摘した。

米国は、ワークショップの概念は支持したが、ベルギー及びドイツとともに、予算面の懸念、特に旅費関係の懸念を指摘した。同代表は、予算の線の承認なしで、開催案を支持することを提案した。ドイツは、HABITAT IIIも気候変動関係の問題を議論していると指摘し、会議を遅らせることもオプションとなりうると述べた。

マリは、セントルシア及び南アフリカとともに、開催案を支持し、マーシャル諸島とともに、地域問題に焦点を当てるよう求めた。

ベルギーは、IPCCの広範な参加を求め、WGI及びWGIII共同議長の参加を促した。サウジアラビアは、IPCCはこの問題に関する科学文献に焦点を当てる必要があると強調した。

木曜日、WGII共同議長のRobertsは、決定書草案を提出、改定された決定書は次のようなコメントに対応していると述べた: 地域問題への特別な注目; 早期にワークショップを開催し、AR7サイクルでの都市に関するSR作成に向けた研究のきっかけを作る; このワークショップに割り当てられた予算の50%削減。

ベルギーは、旅費支援はIPCC信託基金からではなく別な資金源からも得る予定と明記する文章改定案を提出した。

ナイジェリアは、ワークショップの成果が各国政府にとり関連性のあるものとなることを希望し、ノルウェーは、広範な聴衆にこの成果が普及することを求めた。C40は、このワークショップに対する支援を表明し、都市関連問題に関するIPCCの参加を支持した。

パネルは、提案された改定を盛り込む決定書を採択した。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP. 3)において、パネルは、附属書Iに記載する、気候変動と都市に関する国際会議の開催案を承認した。この附属書は、この会議の特別な目的として特に次を挙げている: AR5以後の都市と気候変動に関する科学文献、データ、その他の知識の情報源の現状を把握し、AR6サイクルの一環としての作業進行を図る; AR7の気候変動と都市に関するSRでの評価に向けた新しい研究を誘起するため、重要なギャップを特定する; 都市のシステムと気候変動との間の体系的なリンク、シナジー、トレードオフを考慮に入れ、新たな評価枠組を開発する。

緩和、持続可能性、気候安定化シナリオに関する専門家会議:  この項目(IPCC-XLIV/Doc. 7)は、火曜日に審議され、木曜日に決定書が採択された。

火曜日、WG-III共同議長のSkeaは、この項目を提起し、この専門家会議の開催はノルウェーの提案であり、その後のIPCC-43でAR6においてこの問題を適正に議論すると決定されたことを受けたものと指摘した。同共同議長は、この専門家会議は次の二つの主要目標を論じることを意図すると発言した: ハイレベルな気候目標とシナリオとの間で、より良いリンクを確立し、これらの目標達成を可能にするため必要とされる短期及び中期の実際的なステップを確立する; 開発のニーズ及び持続可能性の観点から見た気候への対応。

多数の参加者は、この会議への支持を表明、開催を申し出たノルウェーに感謝した。さらにこの専門家会議を2017年の可能な限り早い時期に開催し、その成果を1.5℃SR及び他のAR6の報告書にインプットできるようにすることを支持した。

ベルギー、サウジアラビア、エジプト、WGIII副議長のPichs-Madruga、及びその他のものは、この作業に他のWGsの科学者が参加することの重要性を強調し、サウジアラビアとエジプトは緩和中心の手法は回避する必要があると強調した。オーストラリアは、政策科学者に注目し、ハンガリーは、ボトムアップの文献及び代替手法を含めるよう求めた。

米国は、コスト負担軽減のため、この専門家会議の関連組織との共催を検討するよう提案した。

マリ、エジプト、その他は、開発途上国の参加を確保する必要があると強調した。

WGIII共同議長のSkeaは、パネルに対し、将来の作業、特に1.5℃SRとAR6サイクルの他の報告書との間でWGs間の統合を進める必要があり、それこそがこの専門家会議開催の主要目的であると確言した。

パネルは、提起された提案で合意し、2017年3月後半に専門家会議を開催することで合意した。

最終決定: 決定書(IPCC-XLIV/CRP. 11)において、パネルは、本附属書記載の専門家会議開催案を採択すると決定する。この附属書は次のように記載する: 専門家会議の目的は、異なる研究コミュニティ間での協議を開催し、AR6での評価に向けた文献作成とリンクする学際間研究活動を刺激する; 専門家会議は、緩和関係の専門家及び利害関係者が参加する; ノルウェーは、会議の主催を申し出た。

TGICAの将来

この項目(IPCC-XLIV/Doc. 8)は、火曜日に最初の審議が行われ、木曜日に決定書が採択された。

火曜日、TGICA共同議長のTimothy Carterは、次のものを含める決定書草案を提出した: TGICAの機能転換を目的とする戦略計画及びマンデート、委託条件の改定を行う特別タスクフォースを設立する; TGICAのマンデートは、マンデート及び委託条件の改定案がパネルの承認を受けるまでは、その活動を継続することである; IPCC事務局に対し、暫定期間の間、TGICAでの事務管理上の支援のニーズを満たすため、どのような資源が可能か探究するよう要請する。

米国は、コスト負担軽減のためUNEPが追加スタッフを提供する可能性などを認めるよう、文章を編集した。多くのものはこの改定案を支持した。カナダは、フルタイムの人件費の半分に相当する事務管理サポート費の支援を申し出た。

マリは、タスクフォースの構成について質問し、多数の開発途上国とともに、TGICAの活動継続の重要性を強調した。ドイツは、今回の会合においてタスクフォース共同議長を任命するよう提案した。

スイスは、TGICAはIPCC WGsの機能の「外にある(exogenous)」として嘆き、よりよい統合のため、WG副議長ではなくWG共同議長がタスクフォースの議長を務めることを提案したが、WG共同議長の一部を含め、多数の参加者がこれに反対した。

IPCC議長のLeeは、米国の改定案を含めた決定書草案で意見が一致したと指摘し、TGICA共同議長及び参加者に対し、非公式に会合しタスクフォースの構成について議論するよう求めた。

木曜日、WGIII副議長のReisingerは、特別タスクフォースの非公式会合について報告した。同副議長は、会合ではWG副議長を含め、広範な代表及び関心を得たと指摘した。同副議長は、参加者は特別タスクフォースの共同議長任命について検討し、WG-I副議長のEdvin Aldrian及びWG-II副議長のFischlinを共同議長として推薦すると決定したと述べた。同副議長は、タスクフォースのオープンエンドな特性を強調し、他の者の参加も歓迎すると述べた。

パネルは、決定書草案を採択した。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP.8)において、パネルは、AR6及びその後のサイクルにおいて、IPCCのニーズを満たすべくTGICAの機能を転換する戦略計画、マンデート及び委託条件の改定を策定するため、特別タスクフォースを設置すると決定する。パネルは、TGICAに対し、IPCC-46より遅くならない時期にパネルがマンデート及び委託条件の改定を承認するまでは、TGICAの活動を継続するよう要請する。パネルは、 IPCC事務局長に対し、暫定期間において、TGICAに事務管理上の支援を提供する方法について、パートナー組織と協議するよう要請する。

AR6のコミュニケーション

コミュニケーション及びスコーピング・プロセス:  この項目(IPCC-XLIV/Doc. 5)は、水曜日に第1回の審議が行われた。決定書を改定するため、少人数のグループが非公式に会合し、木曜日には、改定決定書が採択された。

水曜日、IPCC事務局のJonathan Lynnは、決定書草案を提出、この決定書はスコーピング会議の前に行われる可能性があるコミュニケーション関連のイニシアティブを記載する。

米国と日本は、これらの活動が予算に与える影響を質問し、米国は、それを理由としてワークショップ共催への言及削除を提案した。スイスは、決定書草案で示唆される活動は、暗示的であり、このリストに限定されるべきでないと指摘した。

数か国は、参加強化の考え自体は支持したが、事前のスコーピング活動への利害関係者の参加には懸念を表明した。米国は、利害関係者の参加は一部の利害関係者を他よりも優先することに結び付く可能性があるとして懸念を表明し、そのようなことは避けるべきだと述べた。ドイツとボツワナは、資源のある国は利害関係者と協議しやすく、このためプロセスのアンバランスにつながる可能性があるとの見解を示した。日本は、スコーピング・プロセスは、偏見のないものであるべきで、利益相反も避けるべきだと強調し、ベルギーは、全ての利害関係者のバランスをとり、公平に扱う必要があると強調した。ブラジルは、バーチャルな会議であれば広範な参加を得られる可能性があると指摘した。ブラジルとベルギーは、パネルの政府間としての特性を強調した。

マーシャル諸島、ザンビア、ボツワナは、スコーピング活動において必要な専門家の参加を確保するには、開発途上国の国家窓口を支援する必要があると強調した。南アフリカは、インド及びインドネシアの支持を得て、スコーピング・イベントでの開発途上国の科学者及び専門家の参加を推進するため、資源を提供するよう求めた。同代表は、ベルギーとともに、若い研究者の参加を得る努力を求めた。

IPCC議長のLeeは、米国、ブラジル、英国、ドイツ、ザンビア、及び他の関心のあるメンバーを含める少人数のグループがIPCC副議長のSokonaと会合し、決定書草案を改定することを提案した。

木曜日、IPCC事務局のLynnは、決定書草案を提出し、この文章は過度に政策規範的になることを避けるべく編集されたと指摘し、各国政府との協議におけるWG議長団の重要な役割を強調した。

パネルは決定書草案を採択した。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP.9)において、IPCCは、スコーピング会議の準備段階では、関連のWG議長団は次のことを検討すると決定した: 問題及び質問を明らかにすべく、オブザーバー組織にスコーピング前のアンケートを回覧する; 各国の窓口及びオブザーバーと協力し、スコーピング・プロセスに貢献できる行動者を特定する; プレ・スコーピング活動を透明性のある形で行う。

IPCCコミュニケーション戦略のレビュー:  この項目(IPCC-XLIV/Doc. 6)は、水曜日に提起され、木曜日に決定書が採択された。

水曜日、IPCC事務局のJonathan Lynnは、このレビューはコミュニケーション戦略を現在の実施方法に沿うものにするためのものだと指摘し、提案の予算への影響はないと指摘した。同氏は、主要な変更点に着目、これには特に次のものへの言及を含めると強調した: 専門外の聴衆へのアウトリーチとアクセスしやすさ; 一部の派生製品の価値; IPCC事務局長がIPCCの結論を提示する時がありうるという事実; 執筆者チームによる明確な文章の執筆を支援するための研究またはワークショップ; ソーシャル・メディア。

インド、ナイジェリア、タンザニア、その他は、アクセスしやすさとアウトリーチの重要性を強調した。さらにインドは、ソーシャル・メディアへの言及及び技術的な変更を歓迎したが、オランダは、インフォグラフィックスの利用強化を提案した。

南アフリカは、AR5での経験に関し、執筆者及び他の者からのフィードバックを集めることを推奨した。

マダガスカルは、多数のIPCCの文書が英語のみとなっていると指摘し、コモロ諸島の支持を得て、IPCC文書を国連用語に翻訳する困難さを強調した。

ベルギーは、スイス、フランス、ドイツの支持を得て、IPCCの結論の内容について語るのはパネルの選ばれたメンバーにしておくべきだとし、このことは、IPCC事務局長の役割の議論の中で、何らかの形で明らかにされるべきだと述べた。

マーシャル諸島は、コモロ諸島とともに、IPCCの結論の普及には、自分たちの地域内に専門家を置く必要があると指摘し、アウトリーチのため専門家を訓練する可能性を示唆した。

ノルウェーは、スイスの支持を得て、全てのWGs及びTFIのアウトリーチ及びコミュニケーションのため、現在のような4つの異なるウェブサイトではなく、単一のウェブサイトまたはプラットフォームとするよう求めた。同代表は、さらに、モバイル・プラットフォームの開発探求を提案した。

ドイツとサウジアラビアは、アウトリーチではパネルが承認し合意した正確な表現を用いなければならないと述べた。さらにドイツは、寄付者政策の下、外部の資金源からの資金調達についても議論するよう求め、資金的な制約条件からすると、執筆者にわかりやすい表現を教えるためのワークショップ及び研修を行う必要があるかどうか、疑問視した。

サウジアラビアは、科学者が自身の立場で発言しているにもかかわらず、あたかもIPCCの立場で発言しているように見える事態は避ける必要があると強調し、IPCCが一部のステートメントに同意しない場合は、たとえ評価を受けた報告書で使われている表現であっても、IPCCの結論として伝えるべきではないと強調した。

CRPは、これらのコメントを考慮に入れるため、追加で改定を行い、木曜日にプレナリーに提出した。

木曜日、事務局のLynn氏は、この項目(IPCC-XLIV/CRP. 7)に関する決定書草案を提出した。同氏は、受け取ったコメントは文書に反映されていると述べ、これには次のものが含まれると述べた: 表現の明確さ及びアクセスのしやすさ; 翻訳; 承認された製品について公的な立場で発言する人々。同氏は、より詳細な文章の提供との提案に関し、コミュニケーション実施計画は必要とされる詳細度に達していると述べた。同氏は、さらに、コミュニケーション戦略は政策立案者を超え、広範な聴衆のことを考えたものだと指摘した。

パネルは、この文書に記載される決定書草案を採択した。

最終決定:  本決定書(IPCC-XLIV/CRP.7)において、パネルは次のことを行う: 本書附属書に記載するIPCCコミュニケーション戦略の最新版を採択する; 執行委員会(ExComm)に対し、この改定に沿う形で実施計画も更新するよう要請する; 執行委員会に対し、IPCCが緊急の問い合わせにも速やかに対応できるよう一連の手順を検討するよう要請する; 執行委員会に対し、実施計画を引き続きレビューするよう要請する。

IPCC奨学金プログラム

この項目(IPCC-XLIV/Doc. 10)は、水曜日に第1回の審議が行われ、木曜日には、多少の変更の後、決定書が採択された。

水曜日、IPCC副議長及びサイエンス理事会議長(Science Board Chair)のKo Barrettは、IPCC奨学金基金のサイエンス理事会及び事務局は奨学金プログラムをレビューしたと指摘し、その中で、特に次のことがわかったと指摘した: 奨学金を授与された24名の学生のうち13名の学生は卒業していない; 進捗状況監視の内部レビュー手順は不十分; 資金調達にはIPCC事務局にはない人材が求められる。その上で同議長は、3つのオプションの概要を説明した: 明らかにされた欠点をただすため、プログラムの規模を拡大する; サイエンス理事会に対し、IPCC奨学金プログラム基金の利用について、パートナーシップを組む可能性を明らかにするよう要請する; サイエンス理事会に対し、開発途上国でのキャパシティビルディング活動を強化する代替オプションの評価を義務付ける。

バハマは、レバノンとともに、博士課程の学生に対し、1.5℃の気温上昇が温暖化に与える影響など、IPCCの作業と関連性のある題目での研究を奨励することもできると発言した。

ナイジェリアは、若い気象学者たちに短期の訓練を行うことを提案し、バハマは、ポストドクトラル課程での支援の提供を提案した。

米国は、基金をTGICAとの関係で明らかにされた開発途上国のニーズ支援に利用できると述べ、オランダとともに、開発途上国の専門家及び執筆者の参加支援にも利用可能だと述べた。

南アフリカは、奨学金プログラムの運用では一層の透明性が必要だと指摘した。多数の国は、カリブ海及び他の小島嶼開発途上国からの参加が限定的であると指摘し、奨学金を授与する学生の選抜で地域バランスをとる必要があると指摘した。マリは、フランス語圏の学生が奨学金プログラムに参加するには課題があると指摘した。

少数の国は、奨学金を授与された者をAR6報告書のスコーピング会議以後のIPCCの作業により多く参加させるべきだと述べた。

奨学金を授与されたものの進捗状況に関し、多数の国は、博士号の研究には賞金で支援される2年間より長い期間が必要だとし、奨学金を授与されたものの博士課程修了はいずれ実現するだろうと述べた。

ベルギーは、IPCC奨学金プログラムの現在の課題はプログラム自体の放棄を求めるものではないとし、プログラムの欠陥を改善するオプションの探求を促した。

IPCC奨学基金の理事会に関し、一部の参加者は、直ちに理事会を再構成するよう促し、候補者の指名期限は過ぎていると指摘したが、他のものは、奨学金プログラムの将来の作業が明確になったところで初めて、候補者の指名を行うべきだと述べた。

パネルは、サイエンス理事会に対し、受理したコメントに鑑み、パートナー組織を含め、更なる協議を重ね、オプションの再検討と一定の提案を行い、IPCC-45の決定に委ねることを義務付けると決定した。この決定書は木曜日に採択された。

最終決定:  決定書(IPCC-XLIV/CRP5)において、パネルは、サイエンス理事会に対し、IPCC奨学金プログラムのレビューの結論に鑑み、IPCC奨学金プログラムの今後についてオプションを検討し、IPCC-45でのパネルの審議にかけるため、提案書を提出するよう要請する。

議長団メンバーの役割

木曜日、事務局は、文書(IPCC-XLIV/INF. 3)を提出、会合期間外会議への議長団メンバーの出席について、明確なガイダンスがないと指摘し、この文書は現在の実施方法を示していると述べた。

スイスは、ドイツとともに、全ての議長団メンバーの出席が重要だと述べ、一部のメンバーの参加を妨げる「差別的な(discriminate)」状況の回避を促した。

TFI共同議長のCalvo Buendíaは、現在最も広く行われている手法は会合期間外の会議出席に関心があるかどうか、議長団メンバーに口頭で尋ねる方法であると述べた。WGIII副議長のPichs-Madrugaは、現在の実施方法には柔軟性があると強調した。ドイツは、現在の実施方法を正確に記すべく、修正した改定文書の発行を求めた。

WGIII共同議長のSkeaは、AR6のサイクルでは議長団を横断する一層高度な協調が必要だと指摘し、全ての会議に出席するための旅行の回数を明らかにするなら、計画を立てるのに役立つだろうと述べた。

少数の国は、この項目の議論の先延ばしを提案したが、米国は反対した。米国は、この問題は、FiTTで議論されるべきだと述べた。

IPCC議長のLeeは、この問題をFiTTで議論することを提案し、パネルは提案通りに決定、事務局に対し、出されたコメントに留意し、これを会議報告書に記載するよう求めた。

その他のビジネス

木曜日、IPCCは、次の3つの問題を議論した: 共催ワークショップの報告; AR6のスコーピング・プロセス及び戦略計画策定; UNFCCCの下でのグローバル・ストックテイクとIPCCとのリンク。

事務局は、共催ワークショップ「IPCC作業部会を横断する気候リスク及び持続可能な解決策に関する総合研究: AR6支援を目的とするAR5の学習事項(Integrated research on climate risk and sustainable solutions across IPCC working groups: Lessons learnt from the AR5 to support the AR6)」(IPCC-XLIV/INF. 8)の成果を提出した。事務局は、IPCCの基金から24名の開発途上国及び経済移行国出身の専門家を支援したと述べ、AR6のスコーピング会議の前に、詳細な提案が利用可能になると述べた。

Future Earthは、自分たちの優先策の一つはIPCCに貢献することであり、現在の研究を進め、科学者社会がAR6及びSRsに貢献できるようにすることであると強調した。

パネルは、その後、この文書に留意した。

AR6のスコーピング・プロセス及び戦略計画は、水曜日に初めて議論され、その後木曜日にも議論された。水曜日、IPCC議長のLeeは、スコーピング・プロセスに関する数件の質問に応え、AR6の総合スコーピング・プロセスはAR5と同じであると答えた。同議長は、IPCC事務局長は各国政府にアンケートを送付すると説明し、そこでのインプットに基づき、IPCC議長は、ビジョン・ペーパーを作成、その後さらなるコメントを求めて、再送付されると説明した。同議長は、このビジョン・ペーパー及び2回の各国政府からのインプットはスコーピング会議へのインプットとして提出されると述べた。同議長は、このアンケートはAR6での新しいものだと指摘した。

数か国は、戦略計画におけるスコーピング・プロセスの段階を明確にするよう求めた。英国及びルクセンブルグは、アンケートに対する回答の提出期限の延期を提案した。英国は、さらに、統合報告書のスコープも最初から検討することを提案した。

米国は、スイスの支持を得て、スコーピング前のアンケートは関連するWG議長団の承認を受けることを提案した。英国とルクセンブルグは、アンケートに関する変更を支持し、英国は、新しいアンケートは既に送付されているものより優位にすることを提案した。ドイツは、アンケートをスコーピング・プロセスへのインプットとして利用する方法には不確実性があると指摘した。

ドイツを含め、数名のメンバーは、AR5プロセスの教訓から学ぶよう求め、タンザニアとマリは、食料安全保障や干ばつといった一部の問題でアフリカ地域に関連性のあるものが適切に取り上げられていなかった経験を引用した。

IPCC議長のLeeは、WGとTFIの共同議長、及び事務局で構成される少人数のスコーピング・プロセスに関するグループを招集し、スコーピング・プロセスをより明確なものにし、その結果をパネルの理解を得るため提出するよう提案した。

木曜日、IPCC議長のLeeは、各国政府からのインプットを募集するプロセスについて再度発言し、このプロセスはAR6全体のためのプロセスであることを確認した: すなわち統合報告書、クロスカッティングイシュー及び作業部会報告書のためのものである。同議長は、各国政府はこのアンケートで制約を感じることはないとし、追加のコメント及び文章を含めることは可能だと述べた。同議長は、IPCC副議長及びWG共同議長が議長のビジョン・ペーパーを作成するとし、これは2月末に利用可能になると述べた。

数か国は、ビジョン・ペーパーに副議長とWG共同議長が加わり、統合報告書のスコープが早期に出てくることなど、このプロセスへの支持を表明した。多数のものは、2016年11月14日までというアンケートの提出期限は延長すべきと述べた。英国は、他の支持を得て、このプロセスやスコーピング・プロセスの提出期限を文書にし、各国の窓口に回覧するよう求めた。

戦略計画に関し、ドイツ、英国、米国、タンザニア、その他は、海洋と氷雪圏に関する特別報告書、及び気候変動、砂漠化、土地の劣化、持続可能な土地管理、食料安全保障、陸域生態系のGHGフラックスに関する特別報告書という2件のSRsは同じ会議で並行して承認されるべきと強調した。IPCC議長のLeeは、IPCC ExCommがこのような懸念を理事会に提起すると述べた。

UNFCCCプロセスに関し、フランスは、INFCCCにおけるグローバル・ストックテイクとのリンクを検討するとのIPCCの約束に焦点を当て、IPCCの報告書作成とグローバル・ストックテイクとの間で密接な調整を行うことの重要性を強調した。

IPCC事務局は、UNFCCCはまだグローバル・ストックテイクのモダリティーを推敲していないと述べた。同代表は、グローバル・ストックテイクとIPCCのサイクルとを合わせるには、IPCC製品の手順規則をレビューする必要があると指摘した。ブラジルは、国家決定貢献(NDCs)の時間枠を検討する必要があると指摘し、UNFCCCは共通の時間枠の問題を検討すべきだとの見解を示した。オランダは、10年間のサイクルとし、5年ごと、または必要に応じ、中間報告をすることが考えられると述べた。

事務局は、来年の手順規則レビューの際、この問題に関する提案が出されることが期待されると述べた。

IPCC-45の場所と日程

IPCC議長のLeeは、次回の会合主催を申し出るよう加盟国を招請した。コスタリカは、会合主催への関心を表明し、事務管理上の手配をする必要があると述べた。

メキシコも、次回会合を主催する意思があると述べ、コスタリカとこの問題を議論すると述べた。

会合の閉会

木曜日午後、UNEPは、図書館施設に関する法律上のアレンジはIPCCの署名を待つだけの最終段階にあると述べ、この施設により開発途上国の専門家がピアレビュー文献にアクセスできるようになってほしいとの希望を表明した。

国連食料農業機関(FAO)は、IPCC報告書に有用なインプットとなる可能性がある2つの会議が近く開催されると指摘した: 一つは2017年1月の気候、食料安全保障、土地利用に関する専門家会議; もう一つは、FAOと世界土壌パートナーシップの土壌に関する政府間パネル(ITPS)、国連砂漠化防止条約(UNCCD)の科学・政策インターフェース(SPI)、そしてWMOが計画中の炭素に関する専門家会議である。

閉会にあたり、IPCC議長のLeeは、今回の会合でパネルが議論した決定書を再度指摘し、これらはAR6作成に向けた重要な一歩であったと述べた。同議長は、政策立案者は決断力をもって行動したと述べ、今の責務はパネルによる科学的作業の実現であると述べた。

IPCC議長のLeeは、午後5時42分、会議閉会の槌を打った。

IPCC-44の簡易分析

IPCC-44: 始まりの終わり

気候変動に関する政府間パネルの第44回総会は、気候変動での国際行動にとり最善の時期に、タイのバンコクで開催された。10月初旬、パリ合意発効に十分な数の国の正式批准で、2016年11月4日時点での合意発効が確実になった。これと同時に、国際民間航空機関(ICAO)の下、190の国が、国際航空輸送の排出量オフセットで合意した。IPCC会議開会の2日前には、モントリオール議定書において、強力な温室効果ガスであるハイドロフルオロカーボン(HFCs)の地球規模での段階廃止スケジュールを盛り込んだキガリ改定文書(Kigali Amendment)の採択が発表された。合わせると、世界各国は、この2週間の間に、何十年と言わないまでも、何年もの間議論してきた問題で共通の立場を見出したことになる。

バンコクでは、それほど目覚ましい成果が期待されているわけではないが、このような積極的な動向は、パネルにも影響を与えたようであり、多数の実質的な議題が建設的な雰囲気の中で議論された。本会合の終了時には、2つの重要な報告書、1つは地球温暖化を1.5℃以下に抑えることに関する報告書、もう1つは2006年国別GHGインベントリ・ガイドラインの改良に関する報告書の概要が承認され、同時に、緩和、持続可能性、気候安定化シナリオに関する専門家会議、及び気候変動と都市に関するワークショップの開催も承認された。さらにパネルは、利害相反に関する誓約書様式の改定版でも合意し、影響及び気候変動のデータ並びにシナリオ支援に関するタスクグループ(TGICA)の将来、IPCC奨学金プログラム、コミュニケーション戦略、その他AR6発行に向けた準備作業での問題、さらにはこれを実現するための予算に関し、決定を行った。

この簡易分析では、IPCC-44全体の作業や国際的な気候変動政策の観点から、IPCC-44で議論された重要問題を考察する。主な焦点は特別報告書であり、さらにUNFCCCでの議論に間に合うよう情報を提供すべく、多様なAR6製品の発行準備をする中、IPCCの今後の作業にも注目する。

特別報告書

バンコクでの会議は、IPCC第6次評価報告書作成サイクルの2回目の会合であり、パネルは、早速、活動を開始した: 今会合では、1.5℃地球温暖化に関する特別報告書及び国別GHGインベントリ・ガイドライン2006年版改良に関する概要草案作成に関し、8月に開催された2回のスコーピング会議の成果を検討した。

1.5ºC(の地球温暖化に関する特別報告書作成は、UNFCCC締約国の要請に応じるものであり、これらの締約国は、パリ合意の下、「世界の気温上昇を1.5℃までに制限する努力の追求」で合意した。この1.5℃という地球温暖化目標は、いわゆる「高い野心連合(High Ambition Coalition)」で先進国と連携した多数の脆弱な諸国が抱いていた野心の無さへの懸念に呼応し、2015年パリでのUNFCCC交渉の終盤で登場した。多くのものは依然として、この目標を願望の目標と捉えているが、これら多数の脆弱な諸国は、受け入れられたと考えられる2℃目標の影響自体、これらの諸国や一部の生態系、特にサンゴ礁及び北極にとり、既に深刻なものとなっており、1.5℃での気温上昇の保持は、これら脆弱な諸国にとり極めて重要とみられる。

端的に言うなら、現在の排出率においては、5年以内に、温暖化を1.5℃以下で抑える良い機会をもたらすような正味のCO2の量など、排出しつくしてしまうということで、大半の分析は一致している。このような5年が過ぎた後は、1トン排出するごとに、その分を何らかの形で除去しなければならない。大気中のカーボンを永久かつ持続可能な形で除去する技術は、まだ明らかになっておらず、必要な規模での実験も行われていない。

今回の会議では、1.5℃特別報告書はIPCC刊行物の中でも最も注目される可能性があることが繰り返し指摘された。とはいえ、この主題について十分な文献があるかどうかは、まだ明らかになっていない。この疑問に応えるには、高度な統合が必要となる、トップダウンモデルをボトムアップの研究に組み込むだけでなく、広範な学際を横断する自然科学、社会科学の高度な統合である。執筆者は、IPCC評価報告書の基盤である厳格な基準を満たす必要があり、さらに米国代表の言を借りれば、「評価報告書で取り上げられなった数件の報告書(a few reports do not an assessment make)」が必要である。

さらに評価報告書に対する無数の手法論上の課題もある、文献が十分かどうかだけでなく、ベースラインや指標、異なる分析手法、想定条件、特に不確実性に関する疑問である。同時に、結論(発見事項)は、単純で、アクセスが容易、専門的でない形で表現される必要がある。疑問点の難しさ、疑問に答えるため設定する必要がある想定条件の多さからすると、この報告書では多くの細かな表現が求められるが、これは多数の多様な聴衆でも容易に理解できる報告書という政策立案者の理想に反する。

今回の会議で、パネルは、小島嶼諸国などの要求どおり、影響に関する章に焦点を当て、緩和と適応オプションのセクションは統合することで合意した。この特別報告書が高度な検証を受けることは確かである。このため、多くのものは、IPCCがこの特別報告書を適正に作成し、確固とした報告書を発表することが、極めて重要であると強調した。

1.5ºC特別報告書は、その政治特性から、多くの関心が寄せられたが、バンコクで議論された、技術性の高い文書である2006年国別GHGインベントリ・ガイドラインの2019年改良版の作成も極めて重要である。この報告書は、インベントリ・ガイドラインの特定のセクションを更新、推敲、または新たなガイダンスの形で改定することで構成される。この改定版は、同時に、各国が自国の合計排出量の計算に用い排出係数の変更を伴う可能性があり、各国のGHG収支計算に深刻な影響を与える可能性がある。パリ合意後の報告書作成の正確な特性はまだ交渉する必要があるが、ガイドラインの政治的影響は増大していくはずである。

バンコクでは、たとえば、自国の排出量計算に氾濫域数値が導入されていることから、ブラジルは、湿地に関する章の改定に対し、懸念を表明した。これは科学者が整理すべき問題だが、意見や手法での違いはあるはずだ。しかし各国のGHG排出量及び除去量の計算や報告に共通の手法論を提供するのは、IPCCの重要な役割の一つであり、これがなければ、気候変動に対する世界的な協調行動は、相当困難なものになる。

政策関連性に向けた動きの加速化

これまでのIPCC評価報告書は、我々が何をすべきか(すなわち、一般的に言って、排出量を劇的に削減し、2080年までに正味でマイナスの排出量に動くには、我々は何をすべきか)について、理解するのを助けてきた。今の疑問は、これをどうすべきかである。IPCC議長のHoesung Leeが繰り返し発言したとおり、第5次評価報告書は気候変動の影響及び対応策について、リスクという枠を用いて考察したが、AR6では、解決策ベースの手法をとっている。

実際、1.5℃特別報告書を考える場合、政策立案者や一般人が最も関心を寄せるのは、課題解決の実施可能性、すなわち、パリで交渉された目標を達成するには、どのような政策や行動を、十分なスピード感と効果性を持って用いることができるかである。このような実施可能性は、物理的、技術的な観点だけでなく、経済的、社会的、政治的な観点からも分析されなければならない。これらの疑問に答えようとする場合、IPCCは、経験的証拠が少なく、歴史上の経験もほとんどない分野をたどっていくことになる。解決策が非現実的な場合は、解決策ベースの手法において、この点を明らかにしていかなければならないだろう。IPCCがこのようなありがたくないニュースを提供しなければならないかもしれないというのは、厄介なことだが、我々が直面する課題を理解し、行動をとろうとする場合には、極めて重要でもある。

この特別報告書は、2022年前半の完成が期待されているAR6報告書で補足されることを覚えておくのは重要である。AR6の執筆者の指名は、2016年11月に開始する。他方、1.5℃特別報告書で評価の対象となる文献は、2017年10月までに、公表用に提出される必要があり、レビューに入れてもらうには、2018年4月までに受理される必要がある。

その後、1.5℃特別報告書は、2018年に予定されるUNFCCCの「促進ダイアログ(facilitative dialogue)」に対する情報提供に間に合うよう、同年9月までに作成され、これに続くIPCC報告書がグローバル・ストックテイクプロセスという、パリ合意の下で設定された長期目標達成に向けた進捗状況を評価するプロセスに対し、どのように情報を提供していくかを、窺い知ることになる。

UNFCCC及びパリ合意は、一部のものが現実とのギャップと呼ぶものの影響を受けている。多くのものは、IPCCが少なくとも宣言された目標の実現可能性を、可能な限り明確にし、このような目標が必然的にもたらすものは何か、行動をとること、とらないことの影響は何かを明らかにすることで、このギャップを埋めるのではと、IPCCに期待している。

今後の会合日程

IPCCアウトリーチ・イベント:  ベトナムに特化して、IPCCの知見と研究が紹介される。日程: 2016年10月24-25日   開催地: ベトナム・ハノイ  連絡先: IPCC 事務局  TEL: +41-22-730-8208/54/84  FAX: +41-22-730-8025/13  email: IPCC-Sec@wmo.int  www: http://www.ipcc.ch

51GEF理事会:  地球環境ファシリティ (GEF)は年2回理事会を開催。理事会では、GEFの中核分野にあたる生物多様性、気候変動の緩和、化学物質と廃棄物、国際水域、土地劣化、持続可能な森林管理等の地球環境便益を有する新プロジェクトの承認を行う。また、コモディティ・チェーンにおける森林伐採の廃止やアフリカ・サブサハラ地域の食料安全保障をめざした持続可能性やレジリエンスを考慮しつつ、持続可能な都市に関するGEFの統合アプローチ・プログラムにあたる新プロジェクトの承認を行う。さらに、理事会はGEFの事務局や関連機関に対するガイダンスを提供する。10月25-27日のGEF理事会に先行し、市民社会の諸団体(CSOs)との協議を10月24日に実施。また、後発開発途上国(LDCs) 基金 (LDCF) 及び特別気候変動基金 (SCCF) の第21回会合も同じく米・ワシントンで10月27日に開催。  日程: 2016年10月24-27日  開催地:  米国ワシントンD.C.  連絡先: GEF事務局  TEL: +1-202-473-0508  FAX: +1-202-522-3240  email: 事務局@thegef.org  www: http://www.thegef.org/council-meetings/gef-51st-council-meeting

UNFCCC COP 22:  国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第22回締約国会合(COP 22)は、パリ協定の発効を中心とする様々な課題について討議する。日程: 2016年11月7-18日 開催地: モロッコ・マラケシュ 連絡先: UNFCCC 事務局  TEL: +49-228 815-1000  FAX: +49-228-815-1999  email: 事務局@unfccc.int  www: http://unfccc.int/

IPCC “気候変動・海洋・氷圏に関する特別報告書スコーピング会合: 特別報告書の骨子について討議予定。日程: 2016年12月6-9日  開催地: モナコ・モンテカルロ 連絡先: IPCC事務局  TEL: +41-22-730-8208/54/84  FAX: +41-22-730-8025/13  email: IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch

TFI - IPCC排出係数データベースに関する第14回編集幹事会:  本件に関するTFI会合はインドネシアで開催。日程: 2016年12月13-16日 開催地: インドネシア・バリ  連絡先: IPCC事務局  TEL: +41-22-730-8208/54/84  FAX: +41-22-730-8025/13  email: IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch

TFI - IPCC排出係数データベース (EFDB)向けデータ(農業、林業、その他の土地利用部門)データに関する第13回専門家会合/ データ(廃棄物部門)に関する第14回専門家会合:  本件に関するTFI会合はインドネシアで実施。日程: 2016年12月14-15日  開催地: インドネシア・バリ  連絡先: IPCC事務局  TEL: +41-22-730-8208/54/84  FAX: +41-22-730-8025/13  email: IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch

気候変動・土地利用・食料の安全保障に関する専門家会合:  IPCCと食糧農業機関(FAO)の共催イベント。 日程: 2017年1月23-25日 開催地: イタリア・ローマ  連絡先: Climate and Environment division (NRC)  TEL: +39-6-570 52714  email: NRC-Director@fao.org www: http://www.fao.org/nr/aboutnr/nrc/en/

緩和・持続可能性・気候安定化シナリオに関する専門家会合:  様々な研究団体間の対話促進、AR6評価に向けた文献につながる学際的な研究活動の活性化、緩和関係の専門家とステークホルダーの交流などを目的とした会合。日程: 2017年3月下旬  開催地: ノルウェー  連絡先: IPCC事務局  TEL: +41-22-730-8208/54/84  FAX: +41-22-730-8025/13  email: IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch

土壌有機炭素に関する国際シンポジウム:  FAO、地球土壌パートナーシップ(GSP)の土壌に関する政府間技術パネル(ITPS)、国連砂漠化対処条約(UNCCD)の科学・政策インタフェース(SPI) 、WMOが共催するワークショップ。日程: 2017年4月4-6日  開催地: イタリア・ローマ  連絡先: Ronald Vargas(GSP)  email: ronald.vargas@fao.org www: http://www.fao.org/global-soil-partnership/en/

IPCC45回総会:  AR6関連のレポート、国別GHGインベントリに関する2006年版IPCCガイドライン精緻化のための方法論報告書や1.5℃の地球温暖化に関する特別報告書等について討議予定。日程: 2017年4月3-9日 (要確認) 開催地:  要確認 連絡先: IPCC事務局  TEL: +41-22-730-8208/54/84  FAX: +41-22-730-8025/13  email: IPCC-Sec@wmo.int  www: http://www.ipcc.ch

さらなる会合情報についての参照先: http://climate-l.iisd.org/

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