Daily report for 27 November 2012

火曜日、AWG-KP、AWG-LCA、ADPが開幕し、SBIプレナリーも再開された。さまざまな交渉グループが開会ステートメントを読み上げ、これらの機関の下で各種の議題に対する最初の討議が行われた。さらに、 各種機関を通じ幅広い問題に関するコンタクトグループと非公式協議も始まった。

AWG-LCA

AWG-LCA議長 Aysar Tayeb (サウジアラビア)が開会し、ドーハで合意可能な問題については解決に向けて取り組み、合意できない問題については適切な“落としどころ”を見つけるよう締約国に呼びかけるとともに、締約国と行った会合間の協議を踏まえ、バリ行動計画の諸要素に関してバンコクで議論された意見や選択肢を反映するべく作成された非公式概要テキスト(FCCC/AWGLCA/2012/CRP.3) の紹介を行った。

開会ステートメント: 多くの途上国が中期資金に関して明確にする必要があると強調した。アンブレラ・グループは、2013年以降の事業を完全実施段階へ移行するよう要請し、早期開始資金の約束は全体として上回っていると強調した。キプロスは、EUの立場から、気候資金について EUは2013年以降も支援を継続し、2020年に向けて資金拡充に取り組むと述べた。ペルーは、コロンビア、チリ、コスタリカ、パナマを代表し、ダーバンでは締約国がAWG-LCA完了を決定したのであり、これは同交渉トラックの完結と次の実施段階を定義する必要があることを示唆するものだと述べた。また、実施のために具体的な役割を担った制度やプロセスの準備、COP18における懸案事項の解決、また必要な場合は補助機関やその他のプロセスに特定業務を移管する案を支持した。スワジランドは、アフリカン・グループの立場から、ドーハ会合では、先進国の緩和の取組みの比較可能性や遵守の枠組み; 明確な中期資金の目標などで合意を成立させなければならないと述べた。ナウルは、AOSISの立場から、科学に基づくレビューの範囲絞り込みを含め、ダーバンで規定された作業に専念するよう提案した。ガンビアは、後発開発途上国(LDC)の立場から、ドーハではADPに情報を提供するためのレビューの独立専門機関と共通算定ルール整備のためのプラットフォームを設置すべきだと述べた。中国は、BASICの立場から、AWG-LCAを成功裏に完了させることはバリ行動計画のすべての要素に対処し、持続可能な開発への衡平なアクセスや知的財産権(IPRs)に関する技術問題を含め、重要な問題を議論の対象から外さないことだと強調した。エジプトは、アラブ・グループの立場から、未決事項の合意をめざすべきだとし、合意が成立していない問題については条約の他の機関に委託することを検討すべきだと示唆した。

AWG-LCA 議長テキストについては締約国の意見が分かれた。中国、フィリピン、アラブ・グループ等は、幅広い見解の違いを反映させていると言及し、議長テキストを今後の作業の土台として活用する案を支持する一方で、アンブレラ・グループ、EIG、EU、カナダ等が反対を唱えた。一部から、コンタクトグループやスピンオフ・グループで共通点を見つけるための作業を開始するべきだとの提案が挙がった。こうした意見を受け、Tayeb議長は、概要テキストには締約国の意見を反映させていると言及した。

AWG-KP

AWG-KP 議長 Madeleine Diouf (セネガル) が第17回AWG-KP会合を再開した。ボンで行われた第17回AWG-KP第I部で採択されたものと同じ作業構成で再開会合の作業を続けることを提案するとともに、交渉を円滑にするための提案文書(FCCC/KP/AWG/2012/CRP.1)を紹介し、この文書は議論が進む中で修正していくと説明した。

Diouf議長は、2012年10月23-24日に韓国・ソウルで開催されたCOP準備会合や京都議定書第2約束期間に係る適格性の問題について議長が召集した非公式会合など、AWG-KP以外で行われた議論の最新状況を伝えた。

また、Diouf議長は、事務局がさらに2件のQELROsに関する提案書を受け取ったと述べ、文書 FCCC/KP/AWG/2012/MISC.1/Add.2 (第2約束期間の附属書I締約国 のQELROsに関する附属書I締約国からの情報)の中に盛り込んだことを伝えた。

開会ステートメント: アルジェリアは、G-77/中国の立場から、ドーハにおける成功のベンチマークは、2013年1月1日から施行される京都議定書の野心的な第2約束期間; 野心的な 附属書I国のQELROs; 第2約束期間を採択していない附属書I国向けの柔軟性メカニズムのアクセス制限; 余剰AAUの繰り越し問題になると指摘した。

キプロスは、EUの立場から、EUが他の締約国の批准時期にかかわらず第2約束期間を即時実施すること、環境十全性に基づく幅広い参加と柔軟性の必要性、余剰AAUの繰り越し問題の解決の必要性などを強調した。

オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、京都議定書の第2約束期間は2013年1月1日から8年の期間実施する必要があると強調するとともに、“ここドーハでは京都議定書の 柔軟性メカニズムの便益が脅かされている”との懸念を示し “メカニズムへの幅広いアクセス”を確保するよう求めた。

リヒテンシュタインは、環境十全性グループ(EIG)の立場から、ドーハの目的は京都議定書 第2約束期間の作業を完了させることだと強調し、第2約束期間の長さ; 野心レベル; 第2約束期間への円滑な移行という3つの懸案事項の概要を示した。ナウルは、AOSISの立場から、ドーハで検討すべき最重要課題は附属書I国の約束の野心レベルであるとし、これまでの誓約の中で挙げられたQELROsは挑戦目標の尺度として“まるで不十分”であるとの見方を示した。

スワジランドは、アフリカン・グループの立場から、今次会合では第2約束期間中に適用するルールと必要な改正事項だけに専念すべきであり、その結果として生じる修正項目については今後の検討課題として補助機関に付託すべきだと強調した。

サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、附属書I国が科学とIPCCの報告書に沿って引き上げた排出削減目標を約束として掲げるよう求めた。

パプアニューギニアは、熱帯雨林諸国連合の立場から、連合としては5年間の第2約束期間を希望するが、今後発表されるIPCC第5次評価報告書の内容に沿って大幅な削減目標を義務付ける中間見直しのメカニズムや各国参照レベルに基づくREDD+の取組み、追加の4ヶ年の約束期間で環境十全性を保護するような国別MRV制度などが盛り込まれる場合においては、8ヶ年の約束期間を検討する用意があると述べた。

フィリピンは、アルジェリア、アルゼンチン、ボリビア、中国、キューバ、コンゴ民主共和国、ドミニカ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、インド、イラン、イラク、クウェート、マリ、モーリタニア、ニカラグア、パキスタン、パラグアイ、サウジアラビア、スリランカ、スーダン、ベネズエラを代表して、先進国の締約国は2020年までに排出量を90年比で最低でも40-50%、2017年までに最低でも25-40%削減するというQELROsを約束すべきだと要請し、第2約束期間に参加しない先進国には排出削減数値目標を約束するよう促すとともに、柔軟性メカニズムへのアクセス権を与えるべきではないとの主張を繰り返した。

中国は、BASICの立場から、先進国が科学と歴史的責任に沿って野心レベルを引き上げるべきだとし、COPか CMPの下で野心の議論を続けるよう提案した。

国際排出量取引協会(IETA)は、BINGOsの立場から、算定ルールの改善は“絶対に不可欠”であるとし、幅広い需要に対応できるよう炭素市場へのアクセス拡大を締約国に奨励した。

クライメート・アクション・ナウは、環境NGOの立場から、第2約束期間の約束をしている国々を評価する一方で、約束のレベルが“危険なほどに不十分である”と糾弾し、 野心の引上げ、より環境を保護できるような柔軟性メカニズム、余剰AAUの繰り越し禁止などを求めた。

フレンズ・オブ・アースは、クライメート・ジャスティス・ナウを代弁して、世界を窮地に陥れるような8ヶ年の約束期間で合意を固定するならば、我々は「ドーハが第2約束期間を確実にした」というような“嘘”をついて結託するつもりはないと述べた。

先住民のCONCLAVEは、先住民の人権、土地の権利、慣習的な権利、伝統的な知識を認識し、尊重し、すべての新たな合意の中にこれらを盛り込むよう求めた。

その他の問題: ガンビアは、アフリカン・グループの立場から、現在議論の俎上にあがっている数値は “非常に低い”とし、野心について議論する場を設けるよう提案し、ナウル(AOSIS)の支持を得た。Diouf 議長は、この提案を議題項目3(AWG-KPの下での附属書I締約国のさらなる約束の検討)としてコンタクトグループで議論することは可能だと述べた。

議題3に関するAWG-KPコンタクトグループ: AWG-KPのDiouf 議長が会合を開き、コンタクトグループとスピンオフ・グループの中で作業を継続することを説明した。また、ドーハで解決すべき未決事項は、第2約束期間の長さ; 緩和の野心; 2013年1月1日以降の第2約束期間の法的および運用面の継続性; 柔軟性メカニズムの参加資格; 余剰AAUの繰り越し問題であると説明した。

AWG-KPのJukka Uosukainen 副議長(フィンランド)は交渉を円滑に進めるための議長案(FCCC/KP/AWG/2012/CRP.1)の文書を踏まえて議論を行い、土曜日に文書を簡潔にまとめて議長に提出することが最終的なゴールであると説明した。

その後、野心と余剰AAU繰り越し問題の関係ならびに京都議定書第2約束期間の継続期間について締約国がコメントを発表した。協議は継続する。

AWG-KP スピンオフ・グループ (数値/テキスト): AWG-KPの数値/テキストに関するスピンオフ・グループが火曜日午後に開催され、オーストラリア、カザフスタン、モナコがそれぞれ第2約束期間のQELROs案について数値とその根拠を含めて発表した。その後の各発表に対する質疑応答では、参加者が発表された数値とデータを明確にするよう質問した。

ノルウェーは、提出済みのQELROsを明らかにする短いプレゼンテーションを行った。協議は継続する。

ADP

ADP 共同議長のJayant Moreshwar Mauskar (インド)は、バンコクでの進展を認識し、2015年までに合意を成立させる重要性を強調しつつ、この目標を達成するため、締約国にはバンコクでの精神を維持して協調するよう求めた。

開会ステートメント: アルジェリアは、G-77/中国の立場から、ADPでの議論は締約国が主体となるべきであり、全締約国が参加し、透明性をもって、衡平性とCBDR原則に則った成果を出すべきであると主張した。

エジプトは、アラブ・グループの立場から、成果ベースの目標への合意; 条約の諸原則の順守; 緩和、適応、実施の手段の検討 を求めた。オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、ADPがその責務を果たすために必要な作業を進めるための明確なプランを作成するよう求めた。

EUは、ドーハでバランスのとれた成果を出せるよう、ADPの作業で次のステップについて合意をまとめ、2015年の合意採択に向けて政治的な機運をつけられるような決定書につなげなければならないと述べた。スイスは、EIGの立場から、将来の合意には法的実効性と全世界の参加が必要であり、国の違いを認識しつつ、比較可能で透明性のある数値目標を含めなければならないと述べた。

ナウルは、AOSISの立場から、ダーバン・プラットフォームの下で設立されたプロセスの中で、条約に基づく、ルール・ベースで法的実効性のあるレジームを強化するような新議定書を策定させなければならないと述べた。ガンビアは、LDCsの立場から、ドーハの優先課題は京都議定書に基づく法的拘束力を有する批准可能な第2約束期間の採択と資金面の強力なコミットメントであると述べた。

パプアニューギニアは、熱帯雨林諸国連合の立場から、REDD+実施を主要な要素として盛り込んだ明確で野心的な行動計画と作業計画を採択するよう求めた。コンゴ民主共和国は、インド、中国、フィリピン、エルサルバドル、ドミニカ、エジプト、サウジアラビア、ボリビア、アルゼンチン、パキスタン、スリランカ、スーダン、ベネズエラ、マレーシア、エクアドル、ニカラグア、アルジェリア、イラン、中国(BASIC)を代表し、ADPは条約の諸原則を“再交渉、再起草、再解釈” するための場ではないと主張した。

チリは、コロンビア、コスタリカ、パナマ、ペルーを代表し、各国の状況の変化や途上国が低炭素成長モデルへと移行するためのインセンティブの必要性について言及した。エクアドルは、ALBA諸国の立場から、ダーバン・プラットフォームの将来は、ドーハにおける京都議定書に基づく野心的で法的拘束力を有する約束の採択と密接な関係があると述べた。

スワジランドは、アフリカン・グループの立場から、2020年までの緩和に関する作業が野心のギャップを埋める更なる機会を提供するものの、京都議定書やAWG-LCAの約束に代わるものではないと強調した。

CANは、環境NGOの立場から、昨今の深刻な異常気象は現在の世界が危険な道筋に置かれていることを警告するものであるとし、先進国に排出削減目標を90年比で少なくとも40%以上に引き上げるよう要請した。クライメート・ジャスティス・ナウは、ドーハが野心について大した話し合いをすることもなく先進国が自国の約束から逃避しようとした節目の会議として位置付けられるようになるのではないかとの懸念を表明した。

先住民は、先住民の統治制度や伝統的知識や技術に対する認識を盛り込んだ人権重視の包括的アプローチを求めた。TUNGOsは、すべての労組が持続可能性と安全な気候の社会的正義を実現する移行を希望していると述べた。YOUTHは、衡平性こそが唯一公平であるばかりか、条約の下で最も効果的な経路であると示唆した。

BINGOsは、投資奨励と企業参画につながるとして、将来の合意に知的財産権保護を盛り込むことを要請した。

SBI

開会ステートメント: 多くの途上国が、十分な資金供与を通じて強制的でも懲罰的でもない方法で国際協議・分析 (ICA) を実施し、LDCs以外の途上国の国別適応計画にも支援を提供する必要があると注意を喚起した。アルジェリアは、G-77/中国の立場から、カンクンで発足した追加的な報告要件を満たす実施の強化策を求めた。

EUは、資金メカニズムの第5次レビューは、さまざまな運営機関の分業がいかに強化されうるか全体像をつかむための好機となるとの見方を示した。EU 及びアンブレラ・グループは、ICAの技術専門家向けのモダリティーと手続きについて合意するよう求めた。また、多くの締約国が、ドーハで合意することが必要な問題は、損失・損害; 適応委員会の作業計画; 気候技術センター・ネットワーク(CTCN)設置場所についてのCOP承認の勧告および諮問委員会の構成に関する討議の継続であると指摘した。

ガンビアは、LDCsの立場から、LDC 基金に関する問題とNAPAの支援継続を強調した。ナウルは、AOSISの立場から、特に、非附属書I締約国の国別報告書の編纂; キャパシティビルディング支援の強化; 非附属書I 国の国別報告書に関する専門家諮問グループ(CGE)の責務を拡大させて継続すること等を求めた。ALBAは、資金メカニズムが“形骸化”してはならないと述べ、資金資源に関する決議を速やかに行うよう求めた。熱帯雨林諸国連合は、REDD+活動の実施のための資金供与の欠如と新規および追加的な早期開始資金の供与不履行に対する懸念を示した。インドは、知的財産権問題の “あらゆる側面”に対処する必要を強調した。

TUNGOsおよびGENDERは、国内の脆弱なグループを対象として気候変動対策を立案すべきだと強調した。

BINGOsは、条約を実施に移す際は、企業や他のオブザーバー組織からの情報をインプットする新たなチャンネルが保証されなければならないと述べた。先住民は、UNFCCC交渉を補佐する技術的な諮問機関の設置を求めた。YOUTHは、適応の先に進んで損失・損害の補償に取り組むべきだと主張した。

LDCsに関する諸問題: Pepetua Latasi (ツバル)は、LDC専門家グループ (LEG)の報告書を紹介した。いくつかの締約国が国別適応計画のガイドラインを歓迎した。ガンビアは、LDCsの立場から、国別適応計画の実施に対する懸念を示し、資金源の透明性と追加性を強調した。ニカラグアは、SICAの立場から、条約6条に基づく教育・訓練に関するプログラムの採択を提案し、リスク評価よりも損失・損害の検討を重視すべきだと述べた。非公式協議が開催される。

また、下記の議題項目についても簡単に討議が行われ、コンタクトグループまたは非公式協議での議論に付されることになった。

・適応委員会の報告

・国別適応計画

・技術執行委員会の報告(SBSTAとの合同協議)

・CTCN関連の問題: 諮問委員会の主管および構成

・技術移転に関するポズナニ戦略計画

・キャパシティビルディング (条約)

・遵守手続きに係る手続き及びメカニズムについての京都議定書改正

・CDM理事会の決定に対する上訴のためのメカニズム及び制度的な取決め

・約束期間リザーブの設計の見直し

・国際取引ログの管理者レポート

・事務管理、資金、および組織制度上の事項

その他の問題: EUは、UNFCCCの下で気候変動に関する意思決定における女性の役割強化について決定書草案を提出する意思があると表明し、アイスランド、スイス、チリがこれを支持した。

廊下にて

AWG-KPでの作業に入ると、真っ先に参加者の頭に浮かぶのは京都議定書の第2約束期間の問題である。第2約束期間に参加しない国の柔軟性メカニズムへの参加資格の問題をめぐる二つの対立軸のうち、どちらが譲歩することになるか議論する声が多く聞かれた。NGOのある参加者は言う。「誰かが譲らねばならないが、メカニズムへの参加が第2約束期間に署名するためのインセンティブになると考えれば、どちらの側を支持しているのかは自明のことだろう」

さらに元気が出る話をお伝えすると、ブラジルがアマゾン熱帯雨林の森林減少率を前年と比較して27%低下させ、これまでで最も低い森林減少率となったと発表したことで、この一報は参加者の拍手喝采を浴びた。まだ開幕から間もないということもあって、多くの参加者の話題は、2011年の温室効果ガス濃度が最高水準を記録したとするIEA報告書であった。ある途上国の政府代表は「これで途上国が法的義務を課されなくても大半の先進国よりも大きな努力をしていることが分かる」とコメントした。

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