Summary report, 19 October 2015

国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)の交渉が、ドイツ・ボンにて、10月19日~10月23日の日程で開催された。「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会」の第2回会合第11セッション (ADP 2-11) でもある今次会議には、政府、オブザーバー組織、報道機関の関係者2,400名以上が参加した。

2015年12月にフランス・パリで開催予定の第21回締約国会議(COP 21)に向けた一連の準備会合としては、今回が最後の会議であり、2020年の発効を予定する「条約の下で、全ての締約国に適用可能な、議定書・法的文書・もしくは法的効力を有する合意成果」の採択という目標に向けた交渉の進展を目的とするものであった。

ADPのシナリオノート (ADP.2015.7. Informal Note)の中で、ADP共同議長を務めるAhmed Djoghlaf (アルジェリア)とDaniel Reifsnyder (米国)は、COP 21開幕時に提起する「パリ気候パッケージ草案」の作成をめざし、テキストを踏まえた交渉のペースを加速することを会合の目的と記した。また、合意書草案とワークストリーム1(2015年合意)の決定書草案テキスト、ワークストリーム2(プレ2020年野心)の決定書草案テキストとともに、ADP共同議長が準備したノンペーパー(ADP.2015.8.Informal Note and ADP.2015.9. Informal Note)を含めたテキストを足掛かりにテキスト・ベースの交渉を開始することを提案した。

ADP 2-11では、会期を通じて、合意や決定書テキストの個別項目に関する交渉を推進するための分科会(spin-off groups)が開催されたが、分科会で扱われない問題については中間の進捗評価を行ってオープンエンド型の会合で話し合った。

閉幕にあたって、10月23日(金)23時30分付の修正版ノンペーパーをADP2-11の作業の成果として、今後のADPの交渉の礎として役立てるよう提出することに締約国が合意した。また、締約国の要請を受け、事務局は、セクション内の関連パラグラフの紐づけや重複箇所を見つけ、内容を一切変更することなく文章を絞り込める箇所がないかチェックして、テクニカルペーパーを作成することになった。

UNFCCC及び 京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。UNFCCCは、気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため、大気中の温室効果ガス(GHGs)の濃度安定化を目指して、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効し、現在196の締約国を有する。1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国の政府代表は、先進工業国及び市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に、6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことを約束し、合意が成立した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉:カナダ・モントリオールで2005年に開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)で、議定書3.9条に則り、京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することをその役割として定めた。

2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP 13及び CMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP 13は、「バリ行動計画」(BAP)を採択するとともに、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会」(AWG-LCA)を設立して、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割付けた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す期限については、2009年のコペンハーゲン会議までと定められた。

コペンハーゲン:2009年12月の国連気候変動会議は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。世間の大きな注目を集めた同会議は、透明性の問題やプロセスをめぐる論争が目立った。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成立し、その後COPプレナリー(全体会合)での採択に向けて提出された。それから13時間にわたる議論の末、各国の政府代表がコペンハーゲン合意に「留意する(take note)」ことで最終的に合意。さらに、AWG交渉グループの期限をそれぞれ 2010年のCOP 16及びCMP 6まで延長することで合意した。2010年には140カ国を超える締約国がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家の緩和目標または行動に関する情報を提出した。

カンクン:2010年12月、メキシコ・カンクンで国連気候変動会議が開催され、「カンクン合意」がまとまり、2つのAWGの期限をさらに一年延長することでも合意が成立した。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃以内に抑えるには世界の排出量を大幅に削減する必要があることが認識された。また、2013年から2015年までのレビュー期間中に、世界の長期目標の妥当性について検討することで締約国が合意し、その際に気温上昇を1.5℃以内に抑制するという目標案を含め、世界の長期目標の更なる強化を検討するということでも合意した。なお、決定書1/CP.16には、MRV (測定・報告・検証)や、REDD+(途上国における森林減少や森林劣化からの排出削減や、森林保全、持続的な森林管理、森林炭素吸収源の強化策の役割)等、緩和に係わるその他の側面についても記載された。

また、カンクン合意によって、新たな制度やプロセスがいくつか創設された。その中に、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムがあり、技術メカニズムの下に技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。また、緑の気候基金 (GCF)が新設され、条約の資金メカニズムの運用機関と指定された。また、議定書の交渉トラックでは、CMPが、附属書Ⅰ国に対して、排出削減の野心レベルを引き上げるよう促し、土地利用・土地利用変化・林業(LULUCF)に関する決定書 2/CMP.6を採択した。

ダーバン:2011年11月28日-12月11日、南アフリカ・ダーバンで国連気候変動会議が開催された。ダーバン会議の成果として広範なトピックが挙げられるが、特に2013年から開始される京都議定書の第二約束期間の制定や条約の長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意等があった。また、「条約の下で、全ての締約国に適用可能な、議定書・法的文書・もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新組織としてADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)を発足させることでも合意した。なお、ADPの交渉は2015年中に完了させることとし、2020年には新合意の発効を目指すこととした。さらに、ADPには、2℃目標との関連で、2020年までの野心ギャップを埋めるための行動を模索する役割も課された。

ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、国連気候変動会議はカタール・ドーハにて開催。「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成され、京都議定書の第二約束期間(2013年-2020年)を定めるための議定書の改正事項やAWG-KPの作業を最終的にドーハで完了させるための合意等が盛り込まれた。また、AWG-LCAの作業完了やBAPの交渉終了についても合意が成立した。一方、2013-15年の世界目標の見直しや、先進国と途上国の緩和、京都議定書の柔軟性メカニズム、国別適応計画(NAP)、MRV、市場及び市場以外のメカニズム、REDD+等、さらなる議論が必要とされる多くの問題については、補助機関(SBIとSBSTA)に付託することとなった。

ワルシャワ: 2013年11月11日-23日、国連気候変動会議はポーランド・ワルシャワで開催された。ADPの作業続行を含め、これまでの会議で成立した合意項目の実施が交渉の焦点となった。この会議では締約国に「各国の約束草案」(INDCs)に向けた国内準備の開始や強化を招請すること等を盛り込んだADP決定書が採択された。また、「損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズム(WIM)」の設立を定めた決定書、ならびにREDD+の資金や制度的アレンジ、方法論の問題等について定めた7つの決定書をまとめた「ワルシャワREDD+枠組み」が採択された。

リマ: 2014年12月1-14日、国連気候変動会議はペルー・リマで開催された。リマ交渉の焦点は、2015年にパリで開催されるCOP 21の合意に向けた進展を図るために必要なADPの成果であり、2015年のできるだけ早期にINDCs提出用の情報とプロセスを策定することや交渉テキストの要素に関する進展が図れるかという点であった。

長丁場の交渉の末、「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for Climate Action)が採択されたが、これはINDCsの提出や点検のプロセスに関する議論を含め、2015年合意に向けた交渉を始動させるためのものであり、プレ2020年の野心の強化にも取り組むものであった。また、19件の決定書も採択されたが、そのうち17件がCOP、2件がCMPのもので、WIM(損失・被害のためのワルシャワ国際メカニズム)の運用推進、「ジェンダーに関するリマ作業計画」の策定、「教育や啓発に関するリマ閣僚宣言」の採択を定めている。

リマ気候変動会議は、2015年合意の交渉テキスト草案の要素の細目詰めの作業における進捗を把握し、INDCsの範囲や事前情報、INDCs提出後に事務局がとるべき行動等を含めたINDCsに関する決定書を採択したことにより、パリ会議に向けた基礎固めを行うことができた。

ADP 2-8: 2015年2月8日-13日、スイス・ジュネーブでADP 2-8が行われた。会合の目的は、COP 20で定められた通り、決定書1/CP.20 (気候行動のためのリマ声明)に付属する交渉テキスト草案の要素に基づく交渉テキスト作りであった。ADP 2-8で採択されたジュネーブ交渉テキスト(GNT)は、2015年合意に関する交渉の土台となる。

ADP 2-9: 2015年6月1日-11日、ドイツ・ボンでADP 2-9が開催。ジュネーブ交渉テキスト(GNT)の整理や編集、分類作業、及び概念的な議論が行われ、GNTの序文や総則/目的、緩和、適応、損失・被害、資金、技術の開発と移転、キャパシティビルディング、透明性、時間枠(タイムフレーム)、実施、遵守、手続きと制度に関する条項等の項目が取り上げられた。また、ADPでは、ワークストリーム 2に関する問題も討議され、特にADPの役割やワークストリーム 2に関する決定書に盛り込む要素案が審議された。都市環境の省エネや再生可能エネルギーの供給に関する技術専門家会合(TEMs)も開催された。

ADP 2-10: 2015年8月31日-9月4日、ドイツ・ボンでADP 2-10が開催された。締約国からの要請を受け、ADP共同議長は、ADP2-9で簡素化・統合化した文書をベースに今後の作業の指針となる「ツール」を作成した。各国の参加者は進行グループや「分科会」、進行グループの非公式会合で、ツールの様々な部分の議論を行った。また、ツール内のパラグラフの配置について検討し、主要問題の概念的な問題についての議論に入り、文章上の提案にまで発展したケースもあった。なお、ADP共同議長には、今後の交渉の基礎を成すノンペーパー修正版を作成する役割が託された。

ADP 2-11レポート

10月19日(月)、 ADP共同議長のDaniel Reifsnyder (米国)が、ADP 2-11の開会を宣言した。COP 20/CMP 10議長を務めたペルーの環境大臣Manuel Pulgar-Vidalは、ビデオメッセージを通し、これまでの作業を活かし、締約国間の総意となるテキスト作りに向けた、締約国には建設的な関与が必要だと示唆した。

COP 21/CMP 11議長を務めるフランスのLaurence Tubianaは、ノンペーパーを作成した共同議長の労力を讃えた上で、未だノンペーパーも野心的な内容になってはいないと指摘し、締約国に対して、明確、簡略かつ野心的なテキストの作成を求めた。

ADP共同議長のReifsnyderは、ノンペーパーに多数の締約国の支持が集まっていない点を認識し、ADP共同議長のノンペーパーはテキスト・ベースの交渉の叩き台として役立てることを意図したものだと参加者に念を押した。10月18日(日)夜に各国政府団の団長らと行った会議の内容を踏まえ、今回の会議では、「ADP共同議長シナリオノート」の追加資料として配布した「ADP 2-11の作業モードの更なる明確化(Further Clarifications on the mode of work at ADP 2-11)」に概要を記載した通り、今後の作業方針については、コンタクトグループ内で作業を進めるものとし、テキストに「必須項目(must-haves)」を入れ、「外科的な挿入(surgical insertions)」を行うことで、締約国の理解を得ていると共同議長が明言した。締約国はADP 2の議題(ADP/2013/AGENDA)の下で作業を進めることで合意した。

南アフリカはG-77/中国の立場から、バランスのとれたテキストを準備するという共同議長の役割が果たされていないのは残念だと述べた。また、スーダンもアフリカン・グループの立場から、この意見に支持を表明した。

南アフリカは、オープンエンド型の草案作成委員会の設置を促し、「必須項目」に対応するべく、スクリーンにテキストを映しながらライブで編集することを提案。その後、速やかにオープンエンド型ADPコンタクトグループの会合が開催された。

ADPコンタクトグループ

10月19日(月)、G-77/中国の提案を受け、ADP 共同議長作成のノンペーパーで削除された箇所に対応するべく、ADP 共同議長 Reifsnyderはコンタクトグループ会合を開いた。

今後の作業方式に関しては、G-77/中国案とADP 共同議長案のどちらを基に進めるか広範な議論が行われ、その後、オープンエンド型のコンタクトグループで議論を継続することが決まり、スクリーンにテキストを投映し、一条ずつ条文にあたって審議し、締約国からの提案について検討する方式が採用された。午後と夕方、ノンペーパーには締約国から数多くの“外科的な挿入” が提案された。

10月20日(火)、ADP 共同議長 Reifsnyderは、パリ合意パッケージに関する交渉の出発点として「修正版ノンペーパー」を利用し、非公開によるテーマ別の分科会 [緩和(3条); 適応と損失・損害(4条、5条); 資金(6条); 技術の開発・移転とキャパシティビルディング(7条、8条); 透明性(9条); 遵守(11条); ワークストリーム 2]で討議することを提案した。

多くの締約国は、それぞれの“必須項目”が削除されていたが、自分達が直接テキスト交渉にあたり、関連する決定書草案の議論を行うことで合意し、削除されていた箇所については分科会で追加することに同意した。

透明性の重要性について言及し、G-77/中国、メキシコ、マレーシア(LMDCs)は、分科会にオブザーバーも参加させるよう求めたが、日本はこれに反対を唱えた。ADP 共同議長 Reifsnyderは、一部の締約国の反対により、分科会へのオブザーバーの参加は認められない旨を説明した。

10月20日(火) 午後、 ADP 共同議長 Reifsnyderは、午前中に発行した修正版ノンペーパーには“不作為による脱落箇所”があったものの、あくまでも交渉の出発点となる文書であると説明した上で、分科会でなく、コンタクトグループにおいて、決定書草案の序文・定義・目的/総則、国際的な中間点検・パラグラフ等を扱うものとし、毎日議論の振り返り作業を行い、オブザーバーに対しては追加ブリーフィングを予定していると報告し、締約国がこれに同意した。

ADP 共同議長 Reifsnyderは、分科会の作業を削除された文案の議論から開始するよう勧めた。

また、遵守に関する分科会で最終的な条文(12-26条)の審議を行うことでも合意が成された。地球規模の実績評価(10条) 、序文及び目的/総則 (2条及び2-2条) についても、分科会で議論することとなった。

さらに、ADP コンタクトグループは、10月21日(水)午前と22日(木)夕方、各分科会の共同進行役が部会の進捗状況を報告する場が設けられた。10月21日(水)午前のコンタクトグループでは、分科会で取り上げられない項目に関する審議を行った。

10月22日(木) 夕方、共同進行役の報告を受け、 G-77/中国とベネズエラは、中間見直し会合がG-77/中国が出席しない中で開始されたことに強い反対の声を上げ、“今や自分達の意見はどうでもいい”という扱いになっているのではないかとの疑問を投げかけた。そこで、今後の方針を検討するための中間見直し会合を23日(金)午前中に改めて開催することが決定した。

10月23日(金) 午前、 ADP 共同議長 Reifsnyderが中間見直し会合を開き、 22日(木) 夕方に各種テーマ毎に行われた分科会(技術の開発・移転とキャパシティビルディング、ワークストリーム 2)の報告が行われた。

ADP 共同議長 Reifsnyderは、午後に実施する今後の方針に関する最後の見直し会合の前に、午前中にも分科会を開いて、締約国が検討できるようにテキストの整理作業を継続することを提案した。

南アフリカは、 G-77/中国の立場から、G-77/中国の調整会合が続けられている最中であるにもかかわらず、22日(木) 夕方に行われた中間見直しに対して“深い不満”を表明し、すべての締約国を“公平に扱う”よう求めた。

分科会の最終会合を経て、金曜夕方から再開されたコンタクトグループで会議の成果について検討し、今後の方針についての話合いを行った。ADP 共同議長 Djoghlafは、パリ会議では、締約国の反対がない限り、ADPで設置する分科会すべてをオブザーバー公開の下に行うと発表した。

南アフリカは G-77/中国の立場から、新テキストについては、バランスがとれていて、締約国が当事者意識を持てるものであるとし歓迎の意を示したが、ほとんど決定書のテキストを読み込むことができなかったことは遺憾であると述べ、テキストの完全性を維持するという前提は崩さずに、重複箇所を指摘し、文章をまとめられる部分を明示したテクニカルペーパーを事務局が作成するよう要請する提案を出した。

スーダンはアフリカン・グループの立場から、非公式協議で目的(2条)に関する議論が進展したと言及しつつ、オーストラリア(アンブレラ・グループ)とともに、他の分野については各国が自国のポジションを堅持したため交渉に入れなかったことが残念であると述べた。

ハリケーン・パトリシアの直撃が迫る中、 メキシコは、“この交渉を妥結させる”ことが喫緊の課題であると強調し、締約国はひとまず意見の相違を脇に置いて取り組むことが重要であると訴えた。

グアテマラは、AILAC (独立中南米カリビアン諸国連合)の立場から、「締約国がこれぞ自分達のテキストだ」と初めて称することが出来る文書を得たとし、今次会議には各国の立派な精神が示されたと賛辞を送った。

EUは、テキストについて、交渉の叩き台とみることは出来るとしながらも、期待したほどのペースで交渉は進まず、パリ合意を実現するためには多大なる努力が必要だと強調した。

バハマも、切迫度が失われていると焦燥感を示し、自国の首都に持ち帰るため、もっと“完全な”文書を期待していたと述べた。

マレーシアは、LMDCsの立場から、今や締約国は自らのテキストを携えており、プロセスの信頼性も回復したと述べ、ハリケーン・パトリシアを念頭に、損失・被害の重要性を強調した。

トルコは、将来世代のための合意の重要性について言及し、プロセスとADP 共同議長への信頼を持続させるよう求めた。

ロシアは、今週行われていたことは “交渉”ではないと述べ、追加の交渉会合を要請した。オーストラリア(アンブレラ・グループ)は、ADP共同議長の新テキストに関するアイデアを受け入れると発言した。

数々のオプションを削除することなく、テキストの合理化と統合化を図るためのオプションを提示するテクニカルペーパーを事務局が作成するものとし、些少な省略箇所の修正を入れた2015年10月23日23時30分付のノンペーパーをパリ交渉の土台として提起するということで締約国が合意した。

スピンオフ(分科会)の対象外項目:10月21日(水)、締約国は、定義(1条)に関する議論は時期尚早と述べ、文書に挿入された用語への懸念を記した。米国、ブラジル、ロシア、ボリビアは、「REDD+」の定義を入れることに反対し、LMDCsの立場で発言したマレーシアとともに「気候強制力(climate forcers)」の挿入にも反対した。

サウジアラビアはアラブグループの立場で発言し、「気候資金(climate finance)」の定義について、プレースホールダーを入れるよう要求した。ボリビアは、REDD+の代案として森林の総合的持続的管理のための緩和及び適応合同手法実施メカニズムを定義づけるよう提案した。

さらに締約国は、差異化についても議論した。

決定書草案に関し、スーダンはアフリカン・グループの立場で発言し、パリ会議の成果に予断を加えないよう「合意(Agreement)」を括弧で括ることを提案した。中国は、次の新しい題目を提案した:「UNFCCCの下でのパリ実施合意(Paris implementing agreement under the UNFCCC)」。

その後、締約国は、次の関連事項を議論した:合意の発効を準備する政府間準備委員会の設置;発効前INDCsの約束更新向に関するプレースホールダーの挿入;後戻りなし(no back-sliding);貢献を緩和行動に限定しない;先進国の国家決定貢献(約束草案:NDCs)での実施手段(MOI)の通知。

スピンオフグループ:序文及び目的/総則:序文及び目的(2条)/総則(2 bis条)のスピンオフグループは、George Wamukoya (ケニア)とAya Yoshida (日本)を共同進行役として、10月21日(水)と23日(金)に会合した。

10月21日(水)、締約国は、序文の議論を開始し、特に「持続可能なライフスタイル及び持続可能な消費パターン(sustainable lifestyles and sustainable patterns of consumption)」及び「社会及び経済の開発推進の重要性(the importance of promoting social and economic development)」という新しい文案について議論した。

一部の締約国は、次の事項に関する既存の文章を統合するよう提案した:人権;先住民及び地域社会の権利;途上国の特別なニーズ及び状況。数カ国の締約国は、作業モードに懸念を表明し、「未だに文章をまとめている状態」と嘆いた。

目的に関し、特に次の項目に関する文章の追加が提案された:長期目標;持続可能な開発;対応措置;条約の目的推進;国情。数名のものは、この条項の論理を再考し、合意の目的をより明確かつ簡潔に表現することを支持した。他のものは、全体を削除するよう提案、各セクションの目的は、そのセクションに記載されると述べた。

2bis条に関し、この条項を不可欠かつ独立したセクションと考えるもの、及びこのセクションは不要で、他のスピンオフグループの議論と重なると考えるもので、意見が分かれた。ある締約国は、国際的な時間枠設定に対抗し、国家によるNDCsの期間決定に焦点を当てた。

別なものは、途上国の行動はMOIに左右されるとし、INDCsに言及する必要性を強調した。ある締約国は、全ての合意署名締約国に適用される万国共通の法的義務を提案した。

ブラジルは、2条のスリム化に関する非公式協議の進行役を務め、スピンオフグループへの報告差し戻しで同意した。

10月23日(金)午前中、一部の締約国は、序文に関する新しい文案で議論を進める意思があると表明し、ある締約国グループは、非公式会議からの橋渡し案(妥協案)を提示した。

一部の締約国は、手続きに懸念を表明し、挿入文案の中には許可なく外されたものがあると指摘、この中には占領下の人々の権利や持続可能なライフスタイルが含まれていると指摘した。ある締約国は、一部の挿入文の「政治的特質(politicized nature)」を懸念した。

他の締約国は、文章の差し戻しに警告し、ADP共同議長のノンペーパーと合わせ、この文書を今後の交渉の指針として議論するよう勧めた。ある締約国は、序文として2つのオプションを提示するよう提案し、短い簡潔な文章を希望するものと、長文の文章を希望するものとで意見が分かれたと指摘した。他の数名は、これに不同意で、括弧付きの一つのオプションを求めた。多数のものは、括弧は一貫した形で用いられておらず、紛らわしいと述べた。共同進行役のWamukoyaは、まだ合意されたものは何もないとし、文書全体が括弧で括られていると見るべきだと説明した。

2条に関し、一部の締約国は、特に母なる大地の健全性(integrity of Mother Earth)及び労働力の正当な移動(a just transition of the workforce)に言及するよう要求した。他のものは、合意の目的は条約の実施の更なる強化で説明されるべきと指摘した。

締約国は、この文書をコンタクトグループに送った。

緩和:緩和(2条)に関するスピンオフグループは、Franz Perrez (スイス)とFook Seng Kwok (シンガポール)を共同進行役とし、10月20日(火)、22日(木)2回、23日(金)1回、会合した。さらにこのグループは、22日(木)の夜、非公式な非公式会議(informal informals)を開催した。

このグループは、改定版ノンペーパーで削除されていた要素の挿入を開始し、その後、パラグラフごとの交渉を行った。一部の締約国は、橋渡し案を提示したが、文書のスリム化の困難さから、共同進行役のPerrezは、この文書に記載する概念の概要や時間枠に基づき、組織だった議論を続けるよう提案した。同共同進行役は、橋渡し案を提示した締約国同士での調整を求めた。

緩和目標に関し、特に次の提案がなされた:締約国のタイプまたは特殊事情や共通するが差異のある責任とそれぞれの能力(CBDRRC)への言及を排除し、目標を「惑星(planetary)」のものとした;貧困撲滅、経済発展、正味ゼロ排出量、気候ニュートラリティーへの言及を削除した;GHGsを「気候強制力(climate forcers)」に置き換えた。

別な橋渡し案は、共通するが差異のある責任(CBDR)に則り、貧困撲滅が途上国の最優先課題であることに留意し、先進国と途上国で異なる時間枠での排出量のピーク達成を提案した。

締約国の緩和貢献に関し、基幹分野が特定された、これには次が含まれた:差異化;貢献の策定、通知、実施;その特性;タイプ(貢献/約束/行動)及び法的様式;進展と野心;設計規則または特徴;NDCsと支援の関係;技術パラメーター、これにはタイミングやハウジング(housing)が含まれる。

締約国は、NDCsの事前情報リストが合意文書に帰属するかどうかで意見が分かれた。締約国数カ国は、差異化を最初に取り扱うことを強調し、これには、このセクションで特定された全ての分野に差異化を適用するのか、それとも一部のものだけに適用するのかが含まれると述べ、あるグループは、このセクションをCBDRRCの原則を認識する文章から始めるよう提案した。

タイミング及び計算/透明性に関し、ある締約国は、単純な事前検討プロセス及び約束増加の調整手続きを要求した。

計算に関係する規則及びガイダンスに関し、締約国は、「ハイレベルオプション」を明らかにし、一部の締約国は、これをパリ合意の透明性セクションで論じるよう求めた。

一部の締約国は、多数の異なるパラグラフの関係性を指摘し、セクションの概要が作成される前に、表現の議論に全面的に参加することの困難さを強調した。

10月23日(金)、共同進行役のPerrezは、同グループはスリム化の「重心(center-of-gravity)」手法に倣ったと指摘し、各国とも協力して橋渡し案を得たと指摘した。同共同進行役は、グループでの議論に基づき作成した新しい文書を提示した。

締約国は、この新しい文書について審議した、この文書は次の事項を中心に作成された:集団の長期目標;個別の努力;差異化された努力;進展;野心;情報;特徴;タイミング;その後の通知(communication);ハウジング;透明性と報告;計算(accounting);手法及びガイダンス;長期戦略;対応措置;ユニラテラルな措置;地域経済統合体;集団的手法;支援;枠づけ(framing);国際輸送の排出量;REDD+;持続可能な開発支援メカニズム。締約国は、多少の編集上の修正を行った。

国家決定緩和貢献/約束の通知に関するオプションについて、締約国は、タイミングに関する表現を含めることとした。締約国数カ国は、今後の進め方について質問し、更なる文章挿入が適切かどうか質問した。締約国数カ国は、自分たちの問題が捕捉されていないとして懸念を表明、さらに、このセクションは他と重複するとして懸念を表明した。締約国は、この文章を更なる作業のたたき台にすることで合意し、これをコンタクトグループの議論に送った。

適応、損失・被害:適応(4条)、損失・被害(5条)及び関連の決定書に関するスピンオフグループは、Andrea Guerrero (コロンビア)とGeorg Børsting (ノルウェー)を共同進行役として、10月21日(水)、22日(木)、23日(金)に会合した。

適応(4条)に関し、締約国は、グローバル目標/長期ビジョンについて議論し、「適応能力を強化する(enhancing adaptive capacity)」の括弧を外すことで合意した。ある締約国は、文書の多数の箇所に「特に脆弱な(particularly vulnerable)」途上国という表現を含めることの合理性を尋ねた。

緩和と適応のレベル同士の関係について、突然の気候変動に対する人々及び生活の回復力という表現に、「条約の条項/原則に沿う(in line with the provisions/principles of the Convention)」緩和努力、及び緩和とは無関係の適応の必要性という表現が追加された。このパラグラフの2つのオプションについて協議し、改定した後、ある締約国は、バランスが回復したとして、当該表現を取り下げ、締約国は、一つのオプションの削除で合意した。

適応の人権及び性別対応に関し、参加者は、多様な文案を検討、違いを解決するため二者協議を行うことで合意した。さらに締約国は、適応行動の手法及びガイダンスに関するスリム化案を検討した。

適応の決定書に関し、締約国は、地域協力に関する表現を挿入し、条約の下での適応の制度アレンジの一貫性及び効果性をレビューし、さらに既存の作業及びプロセスを活用することとした。

損失・被害(5条)に関し、参加者は、国際協力及び連帯に関するパラグラフの削除で合意した。

別な締約国は、制度アレンジに関する表現を提示し、合意の下で締約国会議の役割を果たす締約国の会合(CMA)は適応枠組の一貫性及び効果性を高めるため、これを推敲すべきと述べた。 

ある締約国は、文書全体において、「途上国(developing countries)」という表現とともに「及び支援を必要とする他の締約国(and other parties in need of support)」を加えるよう要請したが、ある締約国グループは反対した。この問題は、脚注を付すことで解決した。

あるグループは、「非正統な(unorthodox)」手続きへの懸念を表明し、参加者に対し、他の締約国の提案を変更するのは控えるよう求めた。別な締約国は、資金に関するスピンオフグループで適応支援問題を取り上げることを提案した。

10月23日(金)、締約国は、スリム化された合意及び決定書の改定版を議論した。合意文書の中で、共同進行役のGuerreroは、緊急性、脆弱性、キャパシティビルディング、技術に関する特定の表現を合意書のどこに移したか、さらに数カ国の締約国の意見表明に応じて省略を修正し、文法を直した箇所がどこか、説明した。

締約国2カ国は、適応行動の手法及びガイダンスに人権が入っていないと強調し、別な締約国は、主として国家主導のプロセスである適応の重要性が、適切に反映されていないとして、懸念を表明した。

ある締約国グループは、「通知(communication)」が単数であることを懸念し、適応行動の手法及びガイダンスのパラグラフで削除された分に記載されていた概念まで、スリム化オプションでは失われているとして懸念を表明した。

締約国は、これらの懸念に対応し、文書の調整を図ることで合意した。支援の適切性に関する表現は合意の関係条項に置くべきとの一締約国の懸念表明に対し、締約国は、「(適応支援の文章は、6条、7条、8条、9条で検討されるべき)」とのマーカーを置いた。

損失・被害に関する合意文章について、締約国は、両方のオプション全体を、それぞれ別な括弧で括った。

適応に関する決定書文章について、締約国は、新しいアイデアを入れたパラグラフをそれぞれ括弧で括り、締約国による議論の機会がなかった概念を示した。さらに締約国は、「そして適応の計算方式を用いる(and to use adaptation metrics)」も括弧で括った。

損失・被害に関する決定書文章に関し、締約国は、両方のオプション全体をそれぞれ括弧で括った。

締約国は、この文書を現状のまま、コンタクトグループへ送ることで合意した。

資金:資金(6条)のスピンオフグループは、Georg Børsting (ノルウェー)とDiann Black-Layne (アンティグア・バーブーダ)を共同進行役とし、10月20日(火)、22日(木)、23日(金)に会合した。

このグループは、省略箇所の議論から始め、その後、合意草案のオプションの明確化を追求した。21日(水)午前中、一部の締約国は、制度アレンジに関する文章のスリム化に向け、非公式会合を開催、事前通知の明確化を議論した。22日(木)、このスピンオフグループは、共同進行役が作成したスリム化合意文章の新しい繰り返し箇所について議論した。

ある締約国グループは、途上国向け資金源の予測可能性、規模拡大、アクセスを強調したほか、適応の資金明確化も強調した。

ある締約国は、特に次の項目を強調した:気候に優しい資金動員の集団的努力、これには国内資金の動員も含める;政府開発援助の役割を認識する;経済的な現実;資金の規模拡大はそれ自体で終わるものではないこと。同代表は、可能な資金提供者のリストを人為的に限定し、気候資金に関する先進国への通知を制約することに反対した。別な締約国は、これに応じて、提案の一部は法的特性で問題があるとし、条約改革のマンデートなどないと指摘した。

締約国は、「繰り返し(repetitive)」の対話と評される会議に参加、差異化で意見が分かれたほか、「変化する経済的な現実(changing economic realities)」と称される問題でも意見が対立した。ある締約国グループは、先進国の義務を途上国の自主的努力と同等にしようなど、交渉の「開始点にもならない(a non-starter)」とし、そのような自主的努力は、CBDRRCの原則を弱める、あるいは「責任を転嫁する(shift responsibility)」理由にならないと述べた。

一部の締約国は、この問題から離れて次に移るよう求め、今回の会議参加者レベルでは差異化に関する意見集約はできないだろうとの意見を表明したが、他のものは、このような困難な問題を議論し、閣僚たちがパリで交渉できる文書を提供するのが、このスピンオフグループの責任だと強調した。

資金源に関し、締約国は、文案を提示し、多様な資金源を志向する考えを記載したパラグラフと、政府開発援助と明確に区別される公的資金を主要な資金源とする考えを記載したパラグラフを統合するかどうか議論した。

規模(scale)に関し、ある締約国は、GCF及び気候資金の規模拡大を認識し、「ダイナミックな合意(a dynamic agreement)」では数値の規定より努力の進展を表す表現が望まれると述べた。

適応と緩和の支援のバランスについて、ある締約国グループは、「50-50」の配分、ニーズに基づく手法との表現の保持が重要だと強調した。

締約国は、多様なパラグラフを検討し、文案を提示し、アイデアを明確にし、オプションを統合する作業を継続した。気候資金に関するハイレベルセグメントのパラグラフは削除された。

さらに締約国は、合意のダイナミズム、及び次の事項に特に言及することについて、異なる意見を表明した:可能にする環境;国内資源の役割;気候資金動員を推進するステップ。

10月23日(金)、スピンオフグループは、スリム化された合意草案の議論を終了し、決定書草案の審議に移り、締約国は、追加文案を提示した。

締約国数か国は、文案を提示したが、これには次の事項が含まれた:気候資金の効果を高める方法;REDD+活動実施に向けた、適切で予測可能、持続可能な資金源の提供;途上国の気候行動支援資金のベースの規模拡大。

あるグループは、特に次の表現を提案した:先進国に対し、途上国締約国の気候行動に対する資金源を拡大し、2016年は700億米ドル、2018年は850億米ドルに引き上げ、2020年に1千億米ドルという現在の約束の達成を図る。あるグループは、最近の経済開発協力機構(OECD)/気候政策イニシアティブ報告書の結論を指摘し、次の決定書の表現を提案した:気候変動行動のための新しい多国間資金供与基金の相当な割合を、条約及びその議定書の資金メカニズムを通し流通するよう要請する。

ある締約国は、次の事項に関する情報等、事前通知の情報に関する必要条件について、文案を提案した:異なる資金源から動員された気候資金の予想される水準の明確化;政策、プログラム、優先性;多様な資金源からの気候資金の動員及び誘導を可能にする環境を整備する行動の一層の強化;NDCs実施の投資計画、これには野心レベル引き上げの実施に必要とされる資金調達を含める。

別なグループは、先進国による資金供与の進展状況を評価するプロセスを提案した、これには次の事項が含まれる:適応と緩和の資金源のバランスを確保する;途上国の戦略、優先性、ニーズと合致する;資金源の適切性及び予測可能性を改善し、二重計算を回避するための努力。

締約国は、改定された文書をコンタクトグループに送った。

技術開発と移転、及びキャパシティビルディング:技術開発と移転(7条)及びキャパシティビルディング(8条)のスピンオフグループは、Tosi Mpanu-Mpanu (コンゴ民主共和国)及びArtur Runge-Metzger (EU)を共同進行役として、10月20日(火)、22日(木)、23日(金)に会合した。

技術に関し、このグループは、合意文書のパラグラフごとの交渉を始める前に、保留された省略箇所の議論を開始した。

ある諸国グループは、可能にする環境は投資を呼び込むとの規定に反対し、投資は「低炭素及び気候耐性技術を展開する(to deploy low-carbon and climate resilient technology)」との表現を提案した。

他のものは異なる意見を表明し、実施のための協力行動及び支援には、「特に(inter alia)」投資を呼び込める環境整備が必要だと述べた。さらに、技術の普及及び吸収に対する障壁を解決するとの表現でも、締約国の意見は分かれた。

グローバル目標に関し、一つのグループは、緩和野心は技術支援を伴ってこそ達成可能になると強調し、供給側の問題解決には技術の利用可能性の評価が必要だと強調した。他のものはこれに反対し、そのような目標の数値化は難しく、「偽装した約束(disguised commitment)」になると述べた。

環境十全技術の研究、開発、応用に対する支援に関するオプションについて、ある締約国グループは、反対を表明し、多くのものは、この問題はこのセクションの最後で扱うことを提案した。

ある締約国グループは、条項の目的をスリム化した文案を非公式に作成したが、ある一つの締約国は、合意の遵守メカニズムについては何の合意もなされていないとして、「shall」の代わりに「should」とするよう求めた。

一部のものは、「加速し規模を拡大する(accelerate and upscale)」との表現を削除するよう求めたが、他のものは、これを文書に残すことを希望した。ある一つの締約国は、「性別に敏感な(gender-sensitive)」を「性別に対応する(gender-responsive)」に置き換えるよう要請し、このグループはその要請に同意した。

10月23日(金)、会議が再開され、共同進行役のMpanu-Mpanuは、合意文書改定版を提示、このグループは、決定書草案の議論を開始した。締約国は、知的所有権の文章がどこからきたのかを明らかにした。

ある締約国は、技術のニーズ評価(TNA)プロセスをどのように強化するか明確にするようTECに求める表現について、TECは既にこの分野で期待される以上の進展を遂げており、この表現は必要ないのではないかと指摘した。

別なものは、CMA、及び決定書記載の他の全ての組織に言及する箇所は、全て括弧で括るよう求めた。

あるものは、TNAプロセスに関するパラグラフの主題はCOP 21の議題書に掲載済みであるとし、この問題に関する決定書の表現を待つべく、プレースホールダーを置けるのではないかと述べた。

キャパシティビルディングに関し、一部の締約国は、たとえば後発開発途上国及び小島嶼開発途上国など、特定の締約国グループを指定してキャパシティビルディングの差異化を図ることを提案した。

このグループは、締約国の提案を審議するため非公式に会合し、パラグラフのスリム化に関する数件の提案を検討した。一部の締約国は、アイデアが失われているとして懸念を表明し、文書のこのセクションに再挿入するよう要請した。他の締約国は、進展の無さに焦燥感を示し、締約国に対し、妥協案の受け入れを要請した。

キャパシティビルディングをどのように行うべきか、だれが支援すべきかに関し、締約国は、現在のオプションを交渉のたたき台にすることで合意し、さらに制度アレンジでの非公式な作業でも合意した。

10月23日(金)、共同進行役のRunge-Metzgerは、非公式な非公式会合(informal informals)の成果を指摘し、制度アレンジに関するオプション案を歓迎した。教育、訓練、啓発(8 bis条)に関し、締約国は、この表現を現状のまま保持することで合意した。

決定書の文章に関し、あるグループは、同グループの橋渡し提案に焦点を当て、キャパシティビルディング枠組みの第3回レビューの結果に予断を加えることは避けるべきと指摘し、成果に基づいて行動する必要性を強調した表現にするよう求めた。一部のものは、現時点で新しい文案を追加する機会がなかったことに懸念を表明し、適切な機会に追加できると保証されるのなら、先に進むことができると述べた。

締約国は、技術開発及び移転、及びキャパシティビルディングに関する改定文書をコンタクトグループに送ることで合意した。

透明性:透明性(9条)に関するスピンオフグループは、Fook Seng Kwok (シンガポール)とFranz Perrez (スイス)を共同進行役として、10月21日(水)、22日(木)、23日(金)に会合した。

このグループは、締約国の外科的挿入案について、送られてきた文書に記載されていないものから議論を開始し、その後、文書のパラグラフごとの議論を行った。

透明性の確立及び枠づけに関し、差異化の扱いと二分化を協調させるかどうかで意見が分かれた。一部の締約国は、差異化よりも確実性が重要であると述べた。

文書にどのくらい詳細な内容を入れるかでも意見が分かれ、一部のものは、短く簡素なパラグラフを求めたが、他のものは原則及び多くの実質的な内容を求めた。締約国は、非公式に協議し、透明性システムの確立に関する4件の明確なオプションを作成した、これらオプションはそれぞれ次の事項を行う:二分化を強調する;二分化なしの柔軟性に言及する;3層の差異化;詳細な内容は加えず、単に透明性を確立するのみ。

途上国に移行期間を提供すべく、文章を挿入するとの提案について、締約国数か国は、既定の時間枠に対する懸念を表明し、締約国により時間規模は異なる可能性が高いと指摘、既に一般枠組みに移行の考えが組み入れられていると指摘した。

透明性システムの目的に関し、締約国は、パラグラフの論理を明確にする必要があると指摘、次の事項が不可欠な概念に含まれると述べた:排出量と除去量;緩和及び適応の両方での進展;評価とレビュー;比較可能性。

締約国は、行動と支援のセクションを分離するかどうかで意見が異なり、共同進行役のKwokは、透明性と世界的進展状況調査とのリンクづけを検討するよう勧めた。一部のものは、適応と緩和の違いを指摘し、それぞれでMRVの理解が異なっていると指摘した。締約国は、議論を反映するため、共同進行役がパラグラフに「軽度の処理(light treatment)」を加えることで合意した。

適応を入れるためのオプションに関し、締約国数か国は、「達成(achievement)」ではなく、情報、学習事項、グッドプラクティスの共有に言及するよう求めた。

締約国は、パラグラフの内容では意見が一致せず、一部は「報告とレビュー(reporting and review)」とし、他は「範囲と将来のアレンジ(scope and future arrangements)」とした。このグループは、ある締約国の要請を受け、改定文書に注釈を付け、理解の違いを表すことで合意した。

一部の締約国は、合意条項を短いものにし、柔軟性を保持するほか、広範な参加を可能にするよう提案し、詳細は決定書用に残すか、CMAの審議に回すよう求めた。他のものは、これに警告し、締約国は「何に署名しているのか知っておく必要がある(need to know what they are signing up to)」と述べた。

残りの条項に関する議論では次の事項を検討した:特定の用語や「レビュー(review)」、「評価(assessment)」などで新しい表現が必要になる可能性;他の条項で扱うことができるクロスカッティングイシュー;技術移転とキャパシティビルディング、及び資金援助の必要性;モントリオール議定書に基づくキャパシティビルディングへの支援について、これを継続できる新しいメカニズムの可能性。

締約国は、10月23日(金)に会合し、レビュー/将来のアレンジ(review/future arrangements)に関するスリム化された提案を議論し、オプションの数を7から3に減らした、多くのものは、改定された合意文書を今後の交渉のたたき台にすることを支持した。

締約国数か国は、作業モードや今後の進め方に関する混乱を指摘し、「取りまとめた(compiled)」決定書について議論する時間がなかったことから、これを改定合意文書案と同等に扱うべきでないとして、懸念を表明した。

締約国は、コンタクトグループにこの文書を送った。

世界的な進捗状況調査:世界的進捗状況調査(10条)に関するスピンオフグループは、Roberto Dondisch (メキシコ)とGeorge Wamukoya (ケニア)を共同進行役として、10月21日(水)と23日(金)に会合した。

10月21日(水)、この条項の構成と論理、盛り込まれた概念を議論した。世界的進捗状況調査の目的に関し、締約国は、特に次の項目を検討した:合意実施評価における役割と条約の目的との結びつき。一部の締約国は、条約4.2(d)条、7.2(e)条、10.2(a)条への言及を求めたが、他のものは反対した、さらに集約的影響のレビューへの言及が要請されたが、他の締約国グループは反対した。

進捗状況調査で焦点となる可能性がある分野として、緩和、適応、MOIが議論され、締約国は、範囲(scope)には少なくとも実施の退行要素を含める必要があることに同意した。将来の約束期間に情報を与えるため、先取り要素を含めるべきかどうか、合意の目的達成に必要な貢献レベルと比較した貢献の集約計算をモニタリングすべきかどうかでは、意見が一致しなかった。

一部の締約国は、範囲(scope)は遂行された行動の世界的集約であるべきとし、締約国のNDCsの「適切性評価(assess the inadequacy)」に用いるべきでないと強調した。他のものは、個別に収集されたデータを集団努力の評価へのインプットにする可能性があり、確固としたMRV枠組みが必要だと指摘した。

10月23日(金)、このスピンオフグループは、次の事項を中心として、スリム化された文書案を議論した:目的とアウトプット;範囲(scope);プロセス;インプット;タイミング。決定書に関し、参加者は、設計と法性に関する挿入案を提示した。

参加者は、合意の中の他の条項との相互参照方法についてコメントし、この文書をADP共同議長に送ることで合意した。

遵守と最終条項:遵守(11条)と最終条項(12-26条)に関するスピンオフグループは、Sarah Baashan (サウジアラビア)とAya Yoshida (日本)を共同進行役とし、10月21日(水)、22日(木)、23日(金)に会合した。

10月21日(水)、このグループは、多数の条項への挿入文案のうち省略されていたものを集め、遵守に関する文章をスリム化し、題目を中心としてまとめるためのオプションを議論した。

10月22日(木)、共同進行役は、スリム化した遵守に関する文章案を提示した。参加者は、多数の条項に関する追加文案を検討した。合意において役割を果たす組織及び制度アレンジ(15条)に関し、メカニズム、CMA決定書、CMAガイダンスの文案が提示された。

追加要求事項及び意思決定の権利(17条)に関する提案には、次の事項が含まれた:締約国に対し、合意の一員として、または意思決定参加を目的として、NDCsの提出を要請;NDCsの提出タイミング及び法的拘束力の特性;非懲罰的遵守手続きのプレースホールダー;総則参照(2 bis条)。

その他の文案には次のものが含まれた:改定条項(19条)及び合意の最後での附属書Xへの言及;24条を入れる予定の箇所のプレースホールダー。発効(18条)に関し、UNFCCC事務局は、締約国に対し、次の情報を告げた:12月のパリ会議で合意が採択された後、署名のため、合意文書を開示するのは最短で2016年4月22日;各国のGHG排出量割合の決定には、UNFCCC締約国インベントリ、もしくは気候変動に関する政府間パネルが第5次評価報告書で用いたデータセットのいずれかを利用可能。改定(19条)及び附属書(20条)の内容及び範囲に関し更なる審議が行われた。参加者は、非公式作業継続で合意した。

10月23日(金)、共同進行役のBaashanは、次の3つの文書を提示し、締約国は、これをADP共同議長に送ることで合意した:遵守(11条)に関するスリム化された合意文書;最終条項(12-26条)に関するスリム化された合意文書;スリム化された決定書案。

ワークストリーム 2ワークストリーム 2のスピンオフグループは、Aya Yoshida (日本)とGeorge Wamukoya (ケニア)を共同進行役とし、10月20日(火)から23日(金)にかけて会合し、改定された決定書案(ADP.2015.9.InformalNote)を議論した。

このグループは、決定書案のパラグラフごとの審議を行う前に、省略箇所に関する議論から会議を始めた。

条約の下での過去の合意及び決定書の遵守に関するパラグラフ及び序文について、次の事項を含める変更案が提示された:CBDRRCに則り、先進国が先導する形での、条約の全面的、効果的、持続的な実施強化;全ての締約国に対する適用可能性の確保;現在のプレ2020年の約束/プレッジに関する野心水準の引き上げ;隔年更新報告書を未提出の非附属書I締約国に対し、その提出を奨励する;先進国の緩和約束及び途上国支援に関する2016-2017年レビューの実施。

ある締約国は、透明性プロセスへのタイムリーな参加に関する表現を削除するよう提案し、その代わりに、「緩和措置の実施における進展を実証するため(in order to demonstrate progress in the implementation of the mitigation measures)」、及びカンクン合意の下でのプレッジの実施における進展を実証するためとの表現の追加を提案した。

認証排出削減量(CERs)の自主的取り消し(cancel)に関する提案には、次の事項が含まれた:CERsに限定されない数量化排出削減への言及;京都議定書の全ての柔軟性メカニズム。ある締約国は、「多数の締約国(many Parties)」について質問し、CERs、排出削減単位、割当量単位、除去量単位の自主的取り消しに関するスリム化を提案した。別な締約国は、懸念を示し、文章を括弧で括るよう求めた。

技術検討プロセス(TEP)の強化に関し、締約国は、次の表現を追加した:条約の資金メカニズム組織に対し、支援の効果的な協調及び供与を強化するため、TEMsへの参画を奨励する;環境十全性技術の移転に対する支援の供与;対応措置の社会経済に与えるマイナスの影響に関する条約条項の実施を評価する。

適応のTEPに関し、共同進行役は、適応専門家が参加できるよう、10月21日(水)に議論することで合意した。締約国数か国は、これが前例となることを恐れ、ワークストリーム 2の下での緩和の議論では、緩和専門家の参加は求められていないと指摘した。

適応委員会共同議長のJuan Pablo Hoffmaister (ボリビア)は、次の事項に関する質問に応えた:同委員会が技術支援及びガイダンスを提供する方法;埋めるべきギャップ;ボトムアップ手法のユーティリティー;同委員会はTEMsに類似する活動を行うのかどうか;同委員会のマンデートには、適応活動強化方法の評価が含まれるかどうか。

多数の先進国は、ワークストリーム 2での適応の議論に反対し、次の事項を求めた:CTCN、後発開発途上国専門家グループ、適応委員会など、既存の資源及び制度を効果的に活用する;ワークストリーム 1の決定書案の議論において、提案されたTEPの要素を審議する;各国に対し、他の組織での適応議題項目の議論に参加するよう奨励する。

途上国締約国は、適応の「極めて重要な(crucial)」特性を強調し、次の事項を指摘した:緊急性感覚を注入する必要性;ワークストリーム 2のマンデートは適応の共同便益に言及している;適応は生存問題であり、緩和と同等とするに値する;ハイレベルな参加の必要性。

ある締約国グループは、スリム化案を提示し、適応のTEPは条約の下での他の努力と重複せず、リンクや一貫性を与えると説明した。

締約国にドーハ合意の批准を促すことに関し、一部のものは「そうしてほしいと願っている(and wish to do so)」の削除を提案したが、別なものは、これは微妙な問題であり、この表現はそのままにしておくべきだと指摘した。

10月23日(金)、締約国は、全てのスリム化された文案を組み入れた文書をレビューした。支援のセクションに、先進国の緩和約束の実施におけるギャップのレビューを再挿入し、適応のセクションにTEPに関する代替オプションを統合した締約国は、このスリム化文案をコンタクトグループに送ることで合意した。

閉会プレナリー

10月23日(金)夜、ADP共同議長のReifsnyderは、この1週間を通した締約国の熱心な作業に感謝した。

COP 20/CMP 10議長職でペルーのJorge Voto-Bernalesは、結果として得られた文書は法的合意文書に変換するだけのものになっていないとし、締約国は、交渉の効果を高めるため、適切な手続き及び法性を見出す必要があると述べた。

次期COP 21/CMP 11議長職のLaurence Tubianaは、責任感を共有するよう求め、妥協の精神を見つけるよう締約国に求めた。

ADP共同議長のReifsnyderは、今後の進め方に関するG-77/中国の提案を提示し、締約国もこれを受け入れることに同意した、この提案では、各セクションの重複部分及び密接に関係するパラグラフを特定し、文章の内容を変更することなくスリム化が可能な分野を特定するため、事務局においてテクニカルペーパーを作成し、省略箇所を訂正した上で、10月23日時点での改定ノンペーパーをCOP 21のADP第2回再開会合に送るとしている。

ADP報告官のYang Liu (中国)は、本会合の報告書(FCCC/ADP/2015/L.4)を提示、締約国はこれを採択した。ADP共同議長のReifsnyderは、午後7時42分、ADP 2を中断した。

ADP 2-11の簡易分析

 “Nobody said it was easy
Its such a shame for us to part
Nobody said it was easy
No one ever said it would be this hard
Oh, take me back to the start
–The Scientist, Coldplay

“簡単な事だとは誰も言ってない
僕たち、仲違いするなんて恥ずかしいよ
簡単な事だとは誰も言ってない
こんなに大変な事になるなんて今まで誰も言ってくれなかった
あぁ、スタート地点に戻してくれ

コールドプレイ 「サイエンテイスト」

前回、2015年8月に行われたADP会合を終えた交渉官は、共同議長の交渉テキストがパリ合意パッケージの土台になるとの期待感に気分を高揚させていた。実のところ、交渉のテーブルに残される相当なボリュームのテキストから合意を生み出すという辛い交渉が待ち受けるという締約国の不安を和らげることがADP共同議長に期待されていたが、6週間後にADP 2-11でボンに戻った担当者らは、大勢が「バランスを欠き、今後の交渉の土台としては容認しがたい」と考えるADP共同議長テキストの公表を受けて、ぐっと期待が萎んだ。

今次会議は、5週間後に迫るパリ気候変動会議に合意文書を間に合わせるべく、テキスト交渉のペースを上げなければならなかったが、交渉ペースの加速化が無理だということは週内には明白となり、むしろ交渉ペースは鈍化した。

ADP共同議長テキストに納得できない締約国は、テキスト再編集作業を行い、骨の折れる文章の集約と分類作業に入った。6月及び8月と9月のADP会合で実現した多くの妥協点も失われ、各国は2015年2月のジュネーブ交渉時点のポジションに回帰してしまった。

この簡易分析では、ADP 2-11の内容と成果、パリまでの課題を省察する。

NOBODY SAID IT WAS EASY~誰も簡単な事だとは言ってない

各国交渉官がボン入りするまでに、ADP共同議長はそのシナリオノートで明言している通り、オープンエンド型の草案委員会で交渉テキストの第1回読み合わせを行いたいと考えていた。大量の交渉作業は、6月のADP 2-9で指名された進行役を座長とする分科会にゆだねられたが、交渉テキストに対する不満が噴出し、議長のプランは頓挫することとなった。

ADP 2-11の前に作成されたADP共同議長の“ノンペーパー” は、2015年2月のADP 2-8で採択された90頁の「ジュネーブ交渉テキスト」をベースにして、過去8カ月の間に提起された各国の意見やポジションに配慮しながら、パリ合意テキスト草案、合意およびプレ2020年の野心に関する決定書の草案を盛り込むものだった。ADP共同議長のノンペーパーでは、ジュネーブ交渉テキストを効果的に20頁にまとめ、9頁を合意テキスト草案(26箇条); 11頁を決定書草案 (ワークストリーム 1 及び 2)に割いていた。しかし、一部の締約国は、ノンペーパーの合意草案について、先のADP 2-10で到達した着地点や「つなぎ提案」に焦点を当てるというよりも、実質的に重大な多くの決定をパリ以降に残すか、単純に“忘れた”恰好になっているとの印象を抱いた。

その結果、ADP 2-11は不穏な雰囲気の中、始められることになった。“お話にならない”と一部の締約国が称したADP共同議長の「ノンペーパー」がどのように受け止められるのか多くの参加者は見守った。文書自体は簡潔ながらも集中的な交渉の枠組みになるものと期待されたが、あるオブザーバーが指摘するように、ADP共同議長のテキストによると自国の見解が顧みられることすら無いのではないかと締約国の信認を失うこととなった。議長テキストは、「包括性」と「締約国の当事者意識の証」を犠牲に「明快さ」と「簡潔さ」を実現するという「トレード・オフ」の賜物だと数カ国の参加者がほのめかした。

ADP共同議長テキストを土台にした交渉には全ての締約国が前向きではない。多くの国が “バランスが悪い”と考えるテキストに対して、締約国が当事者意識を持ち直せるよう、会議の出席者は再び複雑な文章の編纂作業をし直すこととなった。

振り出し(スタート地点に)に戻る?

ADP共同議長テキストについては、本当に重要な部分だけ「外科的な挿入」を行うということで各国が合意したものの、多くの国が編集プロセスを長らく主張してきた自国の見解を復活させるための手段として利用した。今回の統合テキストは、オブザーバー数名が指摘するように、「まるでADP 2-9や10などが無かったかのように」、ADP 2-9や10で実現した妥協点が覆り、ジュネーブ交渉テキストに記された各国の主張に戻っている。

このプロセスの結果が、合意草案が31頁、ワークストリーム 1に関する決定書テキスト草案が20頁と著しく膨れ上がった交渉テキストで、両方に複数のオプションと幅広く対照的な意見が併記された。また、ワークストリーム 2に関するテキストは別途、8頁の文書に収められた。

ADP 2-11では、文章上の編集・編纂・簡略化作業に終始し、実際の文言に関する交渉へ移行しなかったため、多くの締約国がテキストに対する当事者意識を回復することが出来たと歓迎する一方で、それを上回る多くの国々が、パリに不可能な任務を背負わされたとして不安が高まった。

他方で、ADP 2-11の目に見える成果は、ADP共同議長のノンペーパーの構成はほぼ変わらなかったことだと強調し、あるオブザーバーは「些細なことに見えるかもしれないが、どれだけ多くの肉付けが加わろうとも、合意の骨子はそのまま整っている」と所感を漏らした。ジュネーブ交渉テキストと比べれば、ADP 2-11で出てきたテキストは、はるかに短くなって、上手く整理されたものの、パリ交渉に向けて良い下地づくりが出来たとは言い難いということは万人が認めるところであった。

しかしながら、受難のADP 2-11は、交渉テキストの肥大化やコンセンサスという資本の喪失に止まらなかった。今次会議の特徴は、手続き論争の高度化とも言えるだろう。各国はADP共同議長への信頼を回復させるような作業方式や、プロセス、テキスト、そして交渉ペースの十分な加速化について合意するため、苦労し、なんと9つもの分科会でテキストの異なる要素を検討することになった結果、交渉プロセスは分断化され、大局観を得るのが次第に困難になったと残念がる声がいくつも挙がった。ADP 2-10の時でさえ、分科会によって作業方式がバラバラになるため、交渉の場を“もっと集権化”するよう調整すべきではないかと懸念する声があがっていた。ADP 2-11の会期中ずっと、現段階の交渉において、果たして分科会がパリ合意のために有効な場と言えるのか、意見は分かれた。

また、「透明性」の問題も論議を呼ぶ分野であった。一部の締約国の訴えにもかかわらず、分科会ではオブザーバーの参加を認めず、非公開方式となったため、不満を募らせた市民社会代表の多くがソーシャルメディアを通じて会議場に関する不平不満をぶちまけた。京都議定書の交渉が、ほとんど大会議場で行われ、交渉の進展に関する評価や締約国への責任追及、交渉プロセスの後方支援という面で、市民社会が重要な役割を果たしたことを思い起こしながら、“秘密主義アプローチ”は正当化できないと示唆する国も一部にあった。結局、この点については、パリでのADP会合で是正し、締約国の反対が無い限り、分科会へのオブザーバー参加を認めることになった。

NO ONE EVER SAID IT WOULD BE THIS HARD

~こんなに大変な事になるなんて今まで誰も言ってくれなかった

ADP 2-11会議場を後にした多くの参加者は、「今次会議の成果文書はパリ交渉の前に手にしておきたかったものからは程遠い」という次期COP 21議長のLaurence Tubianaの発言に同感だった。これまでの会合の勢いに乗れずに会議の焦点は今や、テキストを土台とする交渉ではなく、透明性の低い政治交渉に軸足を移すということに不安が生じている。

政治レベルでますます重要なのは、政治的な駆け引きや歩み寄りを行うことによって、明らかに前途困難という展開となった技術的な交渉に対する指針を与えることである。それでも、テキスト交渉にあたった多くの出席者は、政治レベルでは技術的に複雑な交渉プロセスに対する経験が乏しく、駆け引きの結果として最終合意を案出できたとしても、ようやく勝ち取った妥協の産物が犠牲になってしまうのではないかと不安視している。

この先の波乱を恐れ、ボン会議閉幕までの数時間、パリ会議に向けた今後の対策を検討した。ADP共同議長にまた別の修正版テキスト作成の権限を与えることには大方の締約国は難色を示し、自国の主張が戻ったテキストを維持する方が良いとの意見だった。結局“テキストの内容を変更することなく”、重複箇所を見つけ、文章を簡略にできる部分を特定するテクニカルペーパーの作成を事務局に依頼することとなった。

このテキストを踏まえて、パリでは各国の首脳や閣僚が参加する中で、各国政府代表がどのように作業を進めることになるのか、注目されるところだ。COP 21の前に各国首脳が招待されているのは短時間の会合だけだが、“閣僚が入ってきたら交渉官は出ていくことになるのか”が気になる点だとの声も聞かれた。とはいえ、パリ合意に到達するための政治的意思は今も存在するだろうが、合意がどれだけ野心的になるかという点や実施に向けた準備が出来るのかという点には疑問符がつけられる。これが、ADP 2-11での大方の所感であった。

期待される短い合意文の具体化に必要な決定書テキストづくりに取り組む時間がほとんど取れなかったADP 2-11。パリ合意パッケージは、合意と決定書のテキスト両方を意味する。決定書テキストで“方法(how)”の部分の詳細を定めたら、合意に “中身(what)”を詰め込むという好循環によって、決定書テキストの中で問題への対応“方法”に関する言質を細かく定めたら、合意テキストの中で各国が妥協をするという流れが期待されていた。しかし、ADP 2-11 では、交渉の進展を阻む悪循環が生じた。各国は、決定書テキストの内容が分からない状態で合意のテキストからは一切文言を削除することを嫌がった。しかし、その一方で、合意テキストの内容が分からない状態では決定書に関する作業を行うことは困難であるとも感じた。

ADP 2-11の閉幕直前になって、参加者は野心的な合意に至るまでの緊急性を否応にでも思い知らされた。史上最大級の“ハリケーン・パトリシア”がメキシコ湾岸を直撃しそうだという一報を受け、メキシコの代表は、沿岸部の住民避難のため政府が必死の作業を行っていると報告し、各国の意見の違いを横に置き、この先の作業に集中しようと全ての締約国代表の感情に訴えかけた。台風被害に見舞われた人々との団結が表明される一方、多くの会議出席者は国際的な気候政策の意思決定レベルと、激化する気候変動の影響を受ける現実社会との亀裂の深まりに思いを馳せた。

京都議定書の交渉に向けたベルリンマンデート採択から20年。そして、京都議定書の発効から10年。ボン会議場を後にする気候レジーム参加国の政府代表は、未だに、人類未曾有の試練に立ち向かうための明確な道筋を探すために四苦八苦している。パリ気候変動会議は、新時代の難題を前に、実効性あるグローバルな対応策を最終的に打ち出せるか、灯を照らす役割を担う。しかし、ADP 2-11では、いかなる合意形成にも程遠い現実が証明された。今やパリ会議までに残される時間は5週間だけ。その間に、11月8-10日にフランス・パリで行われる政治レベルのプレCOP会合での対応を含む善後策を検討しなければならない。閉幕の全体会合で、議長国となるフランス代表は、パリ会議までに “自分達で出来る限り、あらゆる協議を行って”準備するよう締約国に呼びかけた。「着陸時にもっと厄介なのは乱気流の方だ」と手練れのオブザーバーは語る。たとえ激しい揺れの中を移動することになっても、パリ合意という安全な着地点が見つけられるよう願うばかりだ。

今後の会議予定

CCDAVアフリカの気候変動と開発(Climate Change and Development in Africa (CCDA))の会議シリーズは、気候及び開発関係のコミュニティーの主要利害関係者が透明性ある議論を推進することで、気候の科学と開発政策のリンクを可能にするため企画されたフォーラム。日付:2015年10月28-30日  場所:ジンバブエ、ビクトリア・フォールズ  連絡先:アフリカ気候政策センター  電話:+251-11-551-7200  ファクシミリ:+251-11-551-0350  電子メール:[email protected]  wwwhttp://www.climdev-africa.org/ccda5

プレCOPCOP 21/CMP 11議長職は、パリ・パッケージの主要な政治問題を議論するため、90か国の閣僚を招聘し、プレCOPを開催する。日付:2015年11月8-10日  場所:フランス、パリ  連絡先:COP 21/CMP 11議長職  電子メール:[email protected]  www:http://www.e-registration.fr/MAEE/Delegations/

2015G20指導者サミット:Group of 20 (G20)議長国のトルコは、G20指導者サミットを開催する。G20会議は、開発、気候変動、気候変動のための資金、貿易、成長、雇用など、優先分野における実質的成果を挙げての会議終了を目指す。日付:2015年15-16日 場所:トルコ、Antalya 連絡先:トルコ外務省  電子メール:[email protected]  wwwhttps://g20.org/

UNFCCC COP 21COP21及び関連の会議は、パリで開催される。 日付:2015年11月30日-12月11日 場所:フランス、パリ 連絡先:UNFCCC事務局 電話:+49-228-815-1000 ファクシミリ:+49-228-815-1999 電子メール:[email protected]  www:http://www.unfccc.int

CCACハイレベル・アセンブリー:短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)のハイレベル・アセンブリーは、CCAC閣僚とCCACの進捗状況を評価するパートナー組織の長の集まりで、CCACの将来作業の方向性に関しインプットし、短寿命気候汚染物質に関係する最新の施策及び科学面の進展について学習する。 日付:2015年12月8日  場所:フランス、パリ  連絡先:CCAC事務局  電話:+33-1-44-37-14-50  ファクシミリ:+33-1-44- 37-14-74  電子メール:[email protected]  wwwhttp://www.ccacoalition.org/

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