Summary report, 7–18 November 2016

Marrakech Climate Change Conference - November 2016

 

マラケシュ気候変動会議が2016年11月7日から11月19日にかけてモロッコ・マラケシュで開催された。同会議は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第22回締約国会議(COP 22)、京都議定書第12回締約国会合(CMP 12)、さらにパリ協定発効に伴うパリ協定第1回締約国会合(CMA 1)で構成される。また並行して3つの補助機関(SBs)による会合、すなわち「科学的・技術的助言に関する補助機関」第45回会合(SBSTA 45)、「実施に関する補助機関」第45会合(SBI 45)、「パリ協定第1回特別作業部会」第2部(APA 1-2)も実施された。

マラケシュ気候変動会議の参加者は総勢22,500人を上回り、各国政府関係者約15,800人、国連機関、政府間組織及び市民社会組織の代表者約5,400人、報道関係者約1,200人が世界中から集まった。

マラケシュ会議の焦点はパリ協定の発効及び実施に関する問題で、COP、CMP、CMA、APA、SBI及びSBSTAの下で交渉が進められた。第1週目はAPA、SBI及びSBSTAの下で作業が集中的に行われ、これらの会合は11月14日月曜日と11月15日火曜日に閉会した。

第2週目は、APA、SBI及びSBSTAが閉会した後、CMAが開会した。COP、CMP及びCMAの合同ハイレベル・セグメントには70人以上の首脳並びに閣僚や代表団長が出席し、政治的意思の醸成が図られた。さらにCOPとCMPの下で作業が続けられ、11月17日木曜日、議長がCOPプレナリーの場で、「我々の気候及び持続可能な開発のためのマラケシュ行動宣言」を読み上げた。

本会議の期間中、COPの下でパリ協定の発効に関する非公式協議、並びにCOP議長の下でCMA 1会合開催に関する非公式協議が行われた。これらの非公式協議は立て続けに開催され、次回CMA会合の時期(2017年または2018年)や、適応基金がパリ協定においても役割を果たすべきかどうかなど、とりわけ「取り残された課題(orphan issues)」が集中的に議論された。

締約国は、35件の決定書(COPの決定書25件、CMPの決定書8件、CMAの決定書2件)を採択した。主なものは以下の通り。パリ協定に基づく作業計画の完了に関する指針の提供、並びに適応基金がパリ協定下で役割を果たすことの決定;パリ協定の発効とCMA開催準備の進展;キャパシティ・ビルディングに関するパリ委員会(PCCB)委任事項(ToR)の採択;気候変動影響起因の損失と被害の問題に取り組むためのワルシャワ国際メカニズム(WIM)執行委員会(ExCom)5カ年計画の承認;WIMのレビューに関する指針の作成;技術メカニズムを通じた気候技術の開発及び移転の強化;長期気候基金の問題への対処;緑の気候基金(GCF)及び地球環境ファシリティ(GEF)に対するガイダンスの提供;パリ協定9.5条(先進国による資金供与に関する隔年報告)に従って提供すべき情報を特定するプロセスの着手;ジェンダーに関するリマ作業計画の継続及び強化;UNFCCC第6条(教育・訓練・普及啓発)に関するドーハ作業計画の有効性改善;適応基金第3回レビューの委任事項採択;2016-2017年のUNFCCC基幹予算向け信託基金に対する貢献規模改訂の採択。

締約国会議(COP 22)

パリ協定発効及びCMA 1の準備:本項目は11月7日月曜日に提起され、その後COP議長が開催した非公式協議(通常CMA議長の下で開かれる非公式協議と並行して実施)で議論された。COPは11月18日金曜日に決定書草案を採択した。

非公式協議では、CMAから決定書を出すべきかどうか、出す場合は短い手続き的なものにすべきか、内容のあるものにすべきかという点で締約国間の意見が分かれた。また、この件に関するCOP決定書またはCMA決定書の初期草案を交渉のたたき台にすべきかどうかについても意見が分かれた。11月18日金曜日、交渉のたたき台にすることを締約国が承認する草案が提示された。作成の可能性がある決定書については、以下の点に議論が集中した:CMA 1の再開催時期に関する問題;パリ成果文書の下で義務付けられている課題のうち議題項目が決まっていないものへの対処;2018年の促進的対話の開催。

CMA 1の再開催時期については、2017年か2018年かで締約国間の意見が分かれた。2017年支持派(全て発展途上国)は、2017年にはAPAその他SBsの決定書の一部が整うためそれらを速やかに採択すべきだと主張し、パリ協定をめぐる政治的気運を考えると、2018年まで延ばすことで評判を損なうおそれがあると警告した。

先進国と一部の発展途上国は2018年のCMA 1再開催を支持し、2001年のマラケシュ合意は交渉に3年を要したこと、さらに同合意は規則「一式」だったことを引き合いに出した。またこれらの国は、2017年に再開催したものの全く決定書を採択しなかった場合の評判リスクを指摘した。発展途上国のあるグループが、「2017年はストックテイクの訓練を目的に再開催し、決定書の採択は一切行わない」という提案をしたが、他のグループが反対した。

パリ成果文書によって義務付けられている課題のうち議題項目が決まっていないものについて、先進国・発展途上国双方が、そのような「取り残された課題」を特定した。非公式協議では、以下に言及したCOP議長からの非公式ノートについて議論がなされた:NDCsの共通の時間枠;NDCsの調整;対応措置フォーラムの「実現」;適応努力の認識;資金メカニズムの運用機関へのガイダンス;LDCs基金(LDCF)及び特別気候変動基金へのガイダンス;資金に関する新たな全体的目標;資金に関する事前情報;教育・訓練・普及啓発。

一部の先進国は現段階で取り残された課題を列記することに反対し、APA議題にはパリ協定の実施に関するさらなる問題の項目があること、同項目にはパリ協定発効準備に関する小項目が含まれていることを指摘した。また、他の先進国は、CMAはCOPに対してCMA作業計画に関連した作業を引き続き引き受けるよう要請すべきだと強調した。さらに他の締約国は、まずCMA 1に義務付けられた課題を挙げるという段階的アプローチを取ることを提案した。一部の発展途上国グループが、全ての取り残された課題に包括的に対処し、全ての課題に対する取り組みを遅滞なく進める、あるいは課題に優先度を付けることを求めたのに対し、一部の先進国は、パリ成果文書によってCMA 1が義務付けられている課題は2つのみで、締約国が「再交渉する」ことを要請した。

適応基金もこの文脈において議論のテーマとなった。多くの発展途上国は、CMA決定書の解釈について、適応基金はパリ協定において役割を「果たす(will)」、「果たすべきである(should)」、「果たさなければならない(shall)」と捉えることを提案したが、他の締約国は、パリ協定で実際に使われている文言は、適応基金は役割を果たす「ことができる(may)」だと指摘した。

2018年の促進的対話に関しては、COP議長にガイダンスを与えるべきかどうか、また与える場合の方法について意見が分かれ、一部は文書の提出を提案したが、多くは締約国やオブザーバーと協議する必要があると主張した。また、一部締約国は議題項目を付けることを提案したが、他の締約国が反対した。さらに、あるグループは、野心及び支援の強化に関する2016年の促進的対話をベースに2018年の対話を行うことを提案したが、他から反対があった。

CMAプレナリーでは、ベネズエラとインドは、第39回国際民間航空機関(ICAO)総会で採択された決議に留意することを記した脚注を、決定書のパラグラフに追加し、同総会決議で示された懸念を反映させることを要請した。CMA議長のMezouar氏はそれらの懸念に留意すると述べた。11月19日土曜日、COPは決定書を採択した。

パリ協定第1回締約国会合(CMA 1)

パリ協定の実施に関する問題: 本項目が最初に取り上げられたのは11月16日水曜日で、CMA 1議長が開催した非公式協議で議論された。同協議と並行し、COP 22議長の下で、パリ協定発効とCMA 1の開催準備に関する非公式協議も開催された。これらの非公式協議の内容は、COPの項目下で要約されている(4頁参照)。

11月18日金曜日、CMA議長のMezouar氏は、決定書の同意及び採択を締約国に求めた。さらにMezouar議長は、決定書1/CP.21の83項(訓練、普及啓発、市民参加、情報公開)、及びパリ協定4.10条(NDCsの共通の時間枠の検討)をSBI 46での審議のために送付することを提案した。

インドの支持を得て、ボリビアは、SBIによるさらなる議論のために限定的な「緩和中心の」議題を送るという案は支持できないと述べ、様々な課題を「包括的な1つのパッケージ」として考えるべきであり、「残りの課題」に対してバランスの取れたアプローチを取るよう求めた。

ブラジルは、CMA決定書の9項(APAの下でのさらなる問題の継続審議)によって既に追加の問題が包括的に扱われていると指摘し、ボリビアの反対を再考するよう要請した。マリ、コスタリカ(AILAC)、アメリカ、モルディブ(AOSIS)、コンゴ民主共和国(LDCs)及びEUを含む多くの締約国が議長案を支持し、一部の国は同提案がパリ協定に合致していると主張した。

非公式協議の後、ブラジルは、「SBI 47でこれら問題の審議を始める」という案に賛成できるかどうかを締約国に問うようCMA 1議長に要請した。

南アフリカはBASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)の立場から、プレ2020年の課題を「次回会合で同等に優先させる」という条件で、同グループが提案を支持すると述べた。

CMAはブラジルの提案に合意した。

最終結果:CMAの3部構成の決定書はFCCC/PA/CMA/2016/L.3に含まれている。CMAは、パリ協定の発効及び署名について、とりわけパリ協定を批准、受諾または承認した締約国に祝意を表し、まだ行っていない国に対して早急に批准書、受諾書、承認書または加入書を預託するよう求めた。

パリ協定に基づく作業計画完了後、CMAは主に以下を行うものとする:

  • COPに対し、決定書1/CP.21(パリ成果文書)に記されている取り決めに従って引き続きパリ協定に基づく作業計画の実施を監督し、作業を加速させることを要請し、さらに審議及び採択のために、遅くともCOP 24と並行して開催されるCMA 1-3にそれらの結果を提出するよう求める;
  • COPに対し、適応報告(とりわけパリ協定7.10条及び7.11条に言及されているNDCsの一部としての報告を含む)に関連した追加指針に関する作業を引き続き監督することを要請する;
  • COPに対し、パリ協定7.12条(適応報告書)に言及されている公開登録簿の運用及び利用に関する手順・手続きの策定を引き続き監督することを要請する;
  • COPに対し、SBSTA、SBI、APA、及び本条約に基づいて構成された組織が、決定書1/CP.21(パリ成果文書)セクションIIIで要請された作業計画の取り組みを加速させ、それらの結果を遅くともCOP 24に提出するよう働きかけることを求める;
  • COPに対し、APAがパリ協定の実施とCMA 1の開催に関する追加事項について引き続き審議するよう働きかけることを要請する;
  • パリ協定に基づく作業計画実施の進捗状況を検証するために、CMA 1-2においてCOP 23との合同会議を開催することを決定する。

適応基金について、CMAは、適応基金がパリ協定において役割を果たすべきことを決定する。同基金は、COP 24及びCMP 14と並行して開催され、適応基金のガバナンス・制度的取り決め・セーフガード・運用手順の問題に対処するCMA 1-3での決定に従い、それら決定に合致するものとする。

マラケシュ行動宣言

国家首脳、政府及び代表団は、COP 22、CMP 12及びCMA 1のハイレベル・セグメントに参加するために、モロッコ国王、ムハンマド6世の寛大なお招きを受け、ここアフリカの地、マラケシュに集い、気候と持続可能な開発のための実施と行動という新たな時代への転換を告げるために、ここに声明を発する:

  • 現在この地球は、かつてない驚異的な速さで温暖化が進み、我々にはこの問題に緊急に対応する義務がある;
  • 本条約の下でパリ協定が採択され、迅速に発効したことを歓迎する。パリ協定は、野心的な目標を掲げ、包括的で、各国の異なる事情を考慮し、公平さと、共通だが差異ある責任及び各国の能力に関する原則を反映している。我々は、本協定の完全実施にコミットすることを確認する;
  • 今年は世界中並びに多くの多国間フォーラムにおいて、気候変動に関する気運の急激な高まりが見受けられた。政府だけでなく、科学界、産業界などあらゆる種類・レベルの世界的な取り組みによって後押しされたこの勢いが、もはや後戻りすることはない;
  • 我々がなすべきことは、今すぐこの勢いに乗り、共に固い決意で温室効果ガス削減と気候変動適応のための取り組みを推し進めながら、持続可能な開発のための2030年アジェンダ並びに持続可能な開発目標(SDGs)に対して貢献と支援をすることである;
  • 我々は、緊急性の高い優先課題として、気候変動の取り組みに対する最大限の政治的コミットメントを要請する;
  • 我々は、気候変動の影響に最も脆弱な国々との固い結束を呼びかけると共に、それらの国が適応力を向上し、レジリエンスを強化し、脆弱性を低減するための取り組みを支援する必要性を強調する;
  • 我々は、全ての締約国に対し、貧困撲滅、食糧安全保障の確保、農業における気候変動問題への厳しい対策を目的とした取り組みを強化し支援することを要請する;
  • 我々は、現在の排出軌道と、パリ協定が目指す長期的気温の実現に必要な経路とのギャップを縮めるために、野心を早急に引き上げ、締約国間の協力を強化することを要請する;
  • 我々は、先進国から発展途上国に提供されるものも含めて、気候プロジェクトへの資金の量・流れ・アクセスを増やすと共に、能力及び技術の向上を図るよう求める;
  • 我々、先進国締約国は、1,000億米ドルの資金動員目標を再確認する;
  • 我々は、発展途上国、LDCs、並びに特に気候変動の悪影響に脆弱な国々の特定のニーズと特別な事情を考慮し、2020年よりも十分早くに、さらなる気候行動と支援を行うことを全会一致で要請する;
  • 我々、京都議定書締約国は、ドーハ改定文書の批准を奨励する;
  • 我々は、多くの取り組み、特に世界気候行動のマラケシュ・パートナーシップ自体がマラケシュで発足したことに注目し、全ての非国家主体に対して、我々と共に緊急かつ野心的な行動及び動員に参加し、自らの重要な成果を生かすよう連帯して呼びかける;
  • パリ協定の目的達成に必要な経済の移行は、さらなる繁栄と持続可能な発展に大きな好機をもたらす;
  • マラケシュ会議は、国際社会が一丸となって現代の最大課題に取り組むというコミットメントにおける重要な転換点となる;
  • 我々は、実施と行動の段階に進むにあたり、現在そして未来の世代のために、団結、希望、機会を呼び起こす決意を改めて表明する。

パリ協定第1回特別作業部会第2部(apa 1-2)

決定書1/CP.21(パリ成果文書)の緩和セクションに関する追加指針:本項目(FCCC/APA/2016/INF.1)が最初に審議されたのは11月7日月曜日で、締約国は、Gertraud Wollansky氏(オーストリア)とSin Liang Cheah氏(シンガポール)が共同進行役を務める非公式協議に合意した。非公式協議では以下の3つの小項目が共に取り上げられた:NDCsの特性(パリ成果文書決定書の26項に規定);NDCsの明確性、透明性、理解を促進する情報(28項に規定);締約国のNDCsの計算(31項に規定)。

締約国は、非公式協議で以下に焦点を当てた:3つの小項目とパリ協定6条(協調的アプローチ)及び13条(透明性枠組み)との潜在的な関連性;策定すべき指針;NDCsの特性;締約国のNDCsの計算(本条約及び京都議定書に基づく既存の取り決めを土台にすることを含む);明確性を促進する情報;さらなる作業。

策定すべき指針について、締約国は主に以下を提案した:議論すべき各小項目のサブテーマの特定;全ての締約国に共通する全般的な情報及びNDCの各タイプに固有の情報への着目;NDCsの集合的インパクトを統合する方法の検討。多くの締約国はパリ協定及び決定書1/CP.21を指針の土台に挙げた。

中国はLMDCsの立場から、サウジアラビアはアラブ・グループの立場から、NDCsの範囲を定義し、分野横断的問題として運用指針に差異化を反映させる必要があると主張したが、ニュージーランドが反対した。アメリカは、締約国は共通の道を進むものの、スタート地点やペースが異なることを認識した指針にすべきだと強調した。

NDCsの特性について、締約国は主に以下を提案した:NDCsの各タイプの特性の詳細化;明確かつ一般的で持続性がありシンプルな指針;LDCsへの柔軟性。

ボリビア(G-77/中国)、コロンビア(AILAC)、アラブ・グループ及びオーストラリアは、NDCsには各国が自主的に決定するという性質があると強調した。クウェートはNDCのタイプの多様性を考慮する必要があると主張し、アルゼンチンは提供すべき固有の情報を特定することが重要だと指摘した。

ブラジルは、特性を適用するのは将来のNDCs提出時にすべきだと述べ、それによって締約国も事務局もグローバル・ストックテイクのための情報を整理・収集しやすくなると述べた。

締約国のNDCsの計算について、多くの発展途上国は柔軟性が必要だと主張した。インドは差異化を「織り込む」ことを求め、アラブ・グループは発展途上国の手法とアプローチは国ごとに決定されるべきだと述べた。ケニア(アフリカ・グループ)とEUは前進を促す指針の策定を求め、アルゼンチンはNDCのタイプに応じた「多層的な説明責任」の適用を提案した。

アラブ・グループとイランは、パリ協定3条(NDCs、前進及び支援を含む)に規定されているように、NDCsの範囲全体に焦点を当てるべきだと主張したが、アメリカとスイスが異議を唱えた。LMDCsは、技術及びキャパシティ・ビルディング支援の計算に関する指針の策定を提案したが、EUが反対した。多くの国が、決定書1/CP.21の31項(NDCsの計算に関する指針)が指針策定のベースになるという点に同意した。

明確性を促進する情報に関しては、決議書1/CP.21の27項(NDCsを報告する国が提供すべき情報)に示されている情報を義務化すべきかどうか、また特性と情報を同時に審議すべきかどうかについて締約国間の意見が分かれた。

ブラジルは、目的固有の一部情報は定量化すべきだと述べたが、他の国は質的なNDCsに柔軟性をもたせるべきだと強調した。セントルシアはカリブ共同体の立場から、NDCsの集計的効果の測定に不可欠な情報を特定するよう提案した。

多数の締約国は、全ての締約国に共通する一般的な指針と、NDCタイプの差異から生じる特別な指針とを区別することを支持した。LMDCsは、先進国により詳細な情報提供を求めると主張した。

さらなる作業に関しては、モルディブ(AOSIS)その他の国が、2018年までの作業計画を策定するよう求めた。多くの国は文書の提出(指針となる質問を用いる可能性あり)を提案し、一部は技術ワークショップの実施または技術文書の作成を義務付ける案を提示した。またブラジルは締約国のみ対象のワークショップを、アメリカは「負担にならない」意見の共有を提案した。アラブ・グループは、技術的作業は時期尚早だと指摘した。

ニュージーランドは、文書提出の場合、以下の項目を含めることを提案した:指針の目的;決定書1/CP.21の関連項目との関係性;提出されたINDCsとNDCs、及びリマ会議とパリ会議からの指針をベースにする方法;そして作業を構築し進展させる方法。締約国は、ワークショップではなくAILACとLMDCsが提案したラウンドテーブルを開催することで合意した。

適応報告(とりわけNDCsの一部としての報告を含む)に関する追加指針:本項目(FCCC/APA/2016/INF.2)が最初に審議されたのは11月9日水曜日で、締約国は、Richard Muyungi氏(タンザニア)とBeth Lavender氏(カナダ)が共同進行役を務め、適応報告の目的、要素、関連性、手段、柔軟性、及びさらなる作業を議題とする非公式協議に合意した。

目的について、多くの締約国は、適応の認知度を高め、グローバルな適応目標の達成に向けて団結して前進することを理解する必要があると強調した。アルゼンチンはG-77/中国の立場から、適応に関する世界的目標を実施可能にする必要があると主張した。コロンビア(AILAC)とジャマイカ(AOSIS)は、目的を合理化することを求め、AILACは、それによって適応行動を促進・強化すべきだと述べた。スーダンはアフリカ・グループの立場から、適応行動の促進・強化を支援関連の問題から切り離すよう提案した。

要素について、複数の締約国は、パリ協定が、優先課題、実施、支援のニーズ、計画及び行動に言及していると述べた。サウジアラビアはアラブ・グループの立場から、適応に関する取り組み・行動の資金その他費用をさらに記載することを求め、一部の発展途上国はMOIなしで適応行動を取っているため、このような情報は有用だと指摘した。AOSISは、提供された支援を明記するよう求めた。

関連性について、多くの国はグローバル・ストックテイクとの関連を強調した。G-77/中国は、適応報告によってグローバル・ストックテイクに有用な情報がもたらされることを求めたが、ニュージーランドは、適応報告は自主的なものであるため、よくても有意義なグローバル・ストックテイクに「貢献」できる程度だろうと指摘した。ノルウェーその他の国はNAPsとの関連を挙げ、アラブ・グループはそれが出発点になりうると述べた。EUとアメリカは、透明性枠組みとの関連を指摘した。

手段について、G-77/中国、ノルウェー、EUその他の国は、各締約国が報告に最も適した手段を選べるようにすべきだと述べた。メキシコは地域レベルの適応報告を提案し、報告書の提出もありうると述べた。エクアドルはLMDCsの立場から、既存の手段の利用を支持した。AOSISは報告作成が負担にならないようにすべきだと強調し、多くの国が支持した。

柔軟性について、スイスはAPAが提供する指針を最小限にするよう提案した。日本は、各国に役立つ基本情報があれば便利かもしれないと述べた。アメリカはエグゼクティブ・サマリーの形式を提案したが、LMDCsはハイレベルの報告に反対し、適応の認知度を高めるという目標が損なわれるおそれがあると述べた。

さらなる作業について、LMDCsとアラブ・グループは、締約国からの提出文書に基づき、NDCsの一部として適応報告に関する統合報告書を作成することを提案した。ニュージーランドは異議を唱え、事務局が共通のテーマで同項目に関する締約国の提出文書をまとめるという案を提示した。EUとカナダは、技術文書(適応報告に関する現行の指針をまとめたものを含む)の作成を事務局に要請する案を支持した。

締約国は、情報ノートの作成を事務局に要請すること、及びその後に以下を実施することに合意した:新たな提出文書;提出文書の統合報告書;ワークショップ。

行動及び支援の透明性枠組みに関する方法・手続き・指針(MPGS)本項目(FCCC/APA/2016/INF.3)が最初に審議されたのは11月7日月曜日で、締約国は、Andrew Rakestraw氏(アメリカ)とXiang Gao氏(中国)が共同進行役を務める非公式協議に合意した。

非公式協議では、締約国が以下に関する枠組みの問題を審議した:透明性枠組みに関するMPGsの主な要素の特定;既存の測定・報告・検証(MRV)の仕組みからのMPGsの情報収集、並びに(柔軟性を必要とする)発展途上国に対する柔軟性の反映;2017年から2018年にかけての作業計画。

要素について、シンガポールはG-77/中国の立場から、パリ協定13条(透明性枠組みの強化)の“shalls”と“shoulds”に沿ってMPGsの要素を定めるべきだと強調した。多くの締約国は、パリ協定13条及び同決定書の関連要素全てを検討することを支持した。EUは、締約国が定義すべき3つの指針(報告;技術専門家レビュー;多国間審議)をセッション前に提出することで全体的合意が得られていることを指摘した。アメリカは報告の要素(目標年での締約国のNDC達成に関するセクションを含む)を提案した。ブータンはLDCsの立場から、少なくとも5年ごとにレビューを行うよう求めた。

柔軟性について、ニュージーランドとカナダは、指針の各要素に照らして柔軟性の問題を提起することを支持した。中国、サウジアラビア(アラブ・グループ)及びフィリピンは、本条約に基づく現行のMRV枠組みが二分構造であることを強調し、要素ごとに変えるのではなく、差異化を枠組み構造に体系的に組み込むべきだと主張した。

2017年から2018年にかけての作業計画について、一部の国は、この問題に関しては作業計画がCOP 22の最も重要な成果になると強調した。明確な作業計画の必要性については多くの国が同意したが、さらなる文書提出、技術ワークショップ及び/または技術文書の必要性とその種類に関しては意見が分かれた。

文書提出とワークショップについて、中国とブラジルを含む複数の国は、締約国に対しMPGsの全ての要素に関する意見の提出を求めることを支持した。EU、ペルー、AILACを含むその他の国は、報告書作成に焦点を当てることを支持した。アラブ・グループとブラジルは、提出文書からワークショップのテーマが得られるだろうと述べた。LDCs、ニュージーランド、ノルウェー、アメリカ及びカナダは、事務局がワークショップへの助言となる統合報告書その他文書を作成することを提案したが、アラブ・グループが時期尚早だと述べた。

グローバル・ストックテイクに関する問題:本項目(FCCC/APA/2016/INF.4)が最初に審議されたのは11月8日火曜日で、締約国は、Nagmeldin G. Elhassan氏(スーダン)及びIlze Prūse(ラトビア)が共同進行役を務める非公式協議に合意した。

非公式協議では、以下に関して締約国間の意見が分かれた。手順;一般的・包括的情報源と特定の情報源;グローバル・ストックテイクの成果;今後の進め方。

手順に関しては、多くの国が、本プロセスには技術的及び政治的側面があると考えていた。日本はニュージーランドの支持を得て、技術対話の報告書など各側面から明確な成果を出すことを提案した。コロンビアはAILACの立場から、政治的側面の結果を出すために、技術的側面に対処する特別作業部会を実施することを提案した。

ブラジルは、とりわけ技術・分析段階でグローバル・ストックテイクの範囲の各要素に対して枠組み対話を設けることを提案した。サウジアラビアはアラブ・グループの立場から、段階が2つだと決めるのは時期尚早だと強調した。イランはLMDCsの立場から、行動と支援のつながりを強化し、実施の潜在的障害を特定するよう求めた。

情報源について、多くの締約国は、科学情報は主にIPCCから取得すべきであることに同意し、IPCCなどの情報源と情報そのものを区別するよう求めた。EUは、情報の管理方法について審議することを要請した。複数の締約国から情報の非網羅的リストを作成するという提案があり、多くの国が支援動員に関する情報の重要性を強調した。また複数の国が、特に持続性の観点から、特定のリストに合意しようとする試みに警告を発した。

グローバル・ストックテイクの範囲とその情報について、多くの発展途上国が公平性を強調した。ボリビアは、各国の歴史的責任、エコロジカル・フットプリント、開発・技術能力を考慮した公正で公平な炭素予算の分担を主張した。ソロモン諸島はLDCsの立場から、「パリ協定は気候変動の暴走に十分対処できるかどうか」を見極める上で、グローバル・ストックテイクは極めて重要だと強調した。

南アフリカは、グローバル・ストックテイクの範囲について、未来を見据え、過去も振り返るものにすることを支持した。一部の国は、「適応、緩和、MOI、支援」以外にも要素がないか検討することを提案した。

成果について、LMDCsは国際協力の促進を提案し、AOSISは気候関連融資の統合を支持した。AILACとEUは、行動を促して野心を向上させるべきだと主張した。サウジアラビアはアラブ・グループの立場から、グローバル・ストックテイクと本条約の目的を引き合いに出した上で、一般原則を強調した。ニュージーランドは「成果(outcome)」と「結果(output)」を混同しないように警告した。

今後の進め方について、ブラジルは共通の時間枠に関するAPAの議題項目が必要だと述べた。追加された提案には、事務局に統合報告書と技術文書の作成を要請すること、会合期間中に技術ワークショップを開催することが含まれた。多くの国は、より的を絞った質問を指針としたさらなる文書提出が有用だと述べた。

実施推進及び遵守促進に関する委員会の効果的な運用に係る手順と手続き:本項目が最初に審議されたのは11月7日月曜日で、締約国は、Janine Felson氏(ベリーズ)とPeter Horne氏(オーストラリア)が共同進行役を務める非公式協議に合意した。

締約国は、非公式協議で以下について議論した。メカニズムの範囲と機能;各国の能力と実情;委員会による行動のトリガー;既存の制度・組織と委員会との関係;関係締約国の参加;今後の進め方。

範囲と機能について、多くの国は包括性が必要だと強調し、罰則を科すのではなく、実施を促す一般的なアプローチを求めた。アンティグア・バーブーダはAOSISの立場から、法的拘束力のある規定の場合、委員会は遵守、さもなければ行動の促進に焦点を当てるべきだと述べた。

EUは、委員会は単独の組織で、遵守の達成を支援する促進的機能を有するべきだと強調した。マリはアフリカ・グループの立場から、個々の国別評価と全体的な進捗評価を並行して行う必要があると主張した。アメリカは、実効性のある説明責任が必要であると強調した。

各国の能力について、ニュージーランドは、全ての締約国が自国のNDCsの実施に対して等しく説明責任を負うべきだと述べた。イラン(LMDCs)、チリ(AILAC)、及びマリ(アフリカ・グループ)は、国の潜在能力とコミットメントの実施能力との関係を強調した。

トリガーについて、イラン、ニュージーランド、ブラジル、パキスタン、アメリカを含む多くの国は、委員会が自己トリガー型であるべきだと主張したが、他の選択肢も提示された。

既存の制度及び組織との関係について、締約国は、本条約のMOIメカニズム、パリ協定の透明性、キャパシティ・ビルディング、及びグローバル・ストックテイク・メカニズムとの関連性を強調した。EUは、本メカニズムが透明性を有し、他のプロセスの法的取り決めを尊重すべきだと主張した。

関係締約国の参加について、全ての締約国は、参加国がプロセスに全面的に関与できるようにすべきだと強調した。

今後の進め方について、締約国は、共同進行役の質問を受けて文書を提出することで合意し、多くの国は特定の期限を設けることを提案した。複数の締約国は、委員会の効果的な運用に必要な手順及び手続きを規定し、それらの手順や手続きで対処できる要素を詳細化し、文書提出のさらなる作業に対応することを支持した。一部の国は、事務局または共同進行役が、締約国の提出文書に基づいて技術文書または統合報告書を作成することを提案した。アメリカは、他の多数の国と共にワークショップを提案したが、LMDCsが時期尚早だと反対した。ガンビアはLDCsの立場から、本セッションで作業計画を策定するよう求めた。

パリ協定の実施に関するさらなる問題:本項目が最初に審議されたのは11月7日月曜日で、締約国は、APA共同議長のBaashan氏とTyndall氏が共同進行役を務める非公式協議に合意した。

非公式協議では、以下に関する3つの議題小項目が共に取り上げられた:パリ協定発効の準備;CMA 1の開催準備;作業計画実施の調整と一貫性を促進し、必要に応じて行動(提言を含む)を取るための、パリ協定及び決定書1/CP.21セクションIIIで要請された作業計画に関連した補助機関及び構成組織による進捗状況評価。

適応基金がパリ協定でも役割を果たせるように準備作業を進めるというCOPからの要請について、締約国は、APA 1-2の場で、CMA 1の開催準備に関する議題項目で同問題を審議することに合意した。

ブラジルは、パリ協定の実施に関する課題でまだ提起されていないものとして、以下を特定した:NDCsの共通の時間枠;発展途上国の適応努力の認識;資金メカニズムの運用機関に対する初期ガイダンス;教育・訓練・普及啓発。締約国はさらに「取り残された課題」を特定し、最終的に、決定書1/CP.21の作業計画で取り上げられていない可能性のある課題9件のリストを作成した。

EUは重複について警告し、これら項目の一部はSBsで対処できるか、既にCMAに「居場所」がある可能性があると述べた。

締約国の要請を受けて、共同議長はこれら「取り残された課題」の初期リストを作成し、締約国は、COPに提言すべきかどうか、またこれら課題をどこでどのように扱うべきかについて審議した。複数の発展途上国及びグループは、共同議長が作成したリストに記載された全項目を包括的に扱うことを求めたが、他から反対が上がった。

CMA 1の開催準備について、締約国は以下に対して合理的アプローチを取ることを支持した:締約国の信任状;オブザーバー組織の承認;議長団役員の選出。

進捗状況の評価について、南アフリカは、表明された支援に関する隔年報告の手順を審議することを提案し、中国とツバルが支持したが、アメリカが反対した。スイスは、これらの手順は隔年報告に関する議論(BRs)に該当すると指摘した。

適応基金について、締約国は以下を審議した:APAの作業完了のために取り組むべき重要課題;本件に関するAPAの任務遂行に必要な措置;本任務に関するAPAの作業において検討すべき関係性。

多数の発展途上国は、適応基金がパリ協定において役割を果たすよう要請した。オーストラリア、EU、アメリカ、スイス(環境十全性グループ)を含む様々な先進国は、この問題はさらなる議論の必要があり、とりわけこれまで学んだ教訓を考慮する必要があると述べた。発展途上国は、適応基金は既にパリ協定の運用化に貢献していると強調し、この件に関する手続き上の決定を支持した。

アメリカは以下に関する懸念を明確にした:運営組織が京都議定書締約国ではない国を確実に含めること;適応基金をパリ協定以降の資金構造に適合させること;適応基金の有効性の評価;全ての資金供給源への合意;セーフガード政策の検証。

EUはさらに以下を加えた:適応基金はCMPの監督下にあるが、他にCMAの監督下にある資金提供機関がないこと;適応基金の第3回レビューは「通常業務」ではないこと;適応基金の業務に関する取り決めを検証する必要があること。EUは、解決すべき課題、タイムライン及び終了日を盛り込んだ明確な作業計画に合意することを求めた。

ツバル(LDCs)とアルゼンチンは、提起されていた法的問題が解決する可能性があると強調した。G-77/中国は、遅くとも2018年までに、CMAは早急に必要な取り決めを行うことができると指摘した。

 

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