Summary report, 16 May 2016

Bonn Climate Change Conference - May 2016

ボン気候変動会議は2016年5月16-26日の日程でドイツ・ボンにおいて開催された。この会議は、3つの補助機関(SBs)による会合、すなわち「実施に関する補助機関」第44回会合(SBI 44)、「科学的・技術的助言に関する補助機関」第44回会合(SBSTA 44)ならびに「パリ協定に関する特別作業部会」第1回会合(APA 1)から構成され、政府関係者が約1,900名、オブザーバーが1,500名、メディア関係者が100名近く参加した。

APA 1では、議題の採択やパリ協定によってAPAに定められた作業に関する初期的な意見交換を行い、今後の作業に関する結論書の採択が行われた。

SBI 44では、京都議定書のメカニズムやキャパシティビルディング、ジェンダー、国別適応計画(NAPs)等を含む実施に係る通常作業に関連した数件の結論書が採択された。さらに、自らが定める貢献(NDCs)の公開登録簿や適応報告書向けのモダリティ・手続きの整備等、パリ協定で定められた作業を開始した。

SBSTA 44では、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及び京都議定書に基づく方法論の問題や気候変動の影響、適応、脆弱性に関するナイロビ作業計画(NWP)を含む数件の結論書が採択された。また、SBSTA 44では、パリ協定で定められた問題の検討を開始。技術枠組みやパリ協定6条(協力的アプローチ)のモダリティ等について審議を始めた。

SB 44では、UNFCCC事務局長Christiana Figueresの任期最後の会合となった。5月26日(木)、SBI/SBSTA/APA特別合同プレナリーが開催され、事務局長の功績を称えた。全ての締約国とオブザーバーが、特にパリ協定の成立に極まれる事務局長の尽力に対して謝意と敬意を示した。これを受けて、Figueres事務局長は、各国政府、市民社会、事務局に対する感謝の言葉をとともに、パリで“変革の風をとらえた”として祝辞を述べた。

UNFCCC 及び 京都議定書のこれまでの経緯

気候変動に対する国際政治の対応は、1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。UNFCCCは、気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため、大気中の温室効果ガス(GHGs)の濃度安定化を目指して、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効し、現在197の締約国を有する。1997年12月、日本の京都で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP 3)に参加した各国の政府代表は、先進工業国及び市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に、6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことを約束し、合意が成立した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在192の締約国を有する。

2005-2009年の長期交渉: カナダ・モントリオールで2005年に開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)で、議定書3.9条に則り、京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第1約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することをその役割として定めた。

2007年12月にインドネシア・バリで開催されたCOP 13及びCMP 3では長期の問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP 13は「バリ行動計画」(BAP)を採択し、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することをその役割と定める「条約の下での長期的協力行動のための特別作業部会」(AWG-LCA)を設立した。 また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す期限については、2009年のコペンハーゲン会議までと定められた。

コペンハーゲン: 2009年12月の国連気候変動会議は、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。世間の大きな注目を集めた同会議は、透明性の問題やプロセスをめぐる論争が目立った。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成立し、その後COPプレナリー(全体会合)での採択に向けて提出された。それから13時間にわたる議論の末、各国の政府代表がコペンハーゲン合意に「留意する(take note)」ことで最終的に合意。さらに、AWG交渉グループの期限をそれぞれ 2010年のCOP16及びCMP6まで延長することで合意した。2010年には140カ国を超える締約国がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家の緩和目標や行動に関する情報を提出した。

カンクン: 2010年12月、メキシコ・カンクンで国連気候変動会議が開催され、「カンクン合意」がまとまり、2013年から2015年までのレビュー期間中に世界長期目標の妥当性について検討することで締約国が合意した。カンクン合意により、緑の気候基金(GCF)、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズム等の新たな制度やプロセスが創設された。また、技術メカニズムの下には、技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。

ダーバン: 2011年11月28日-12月11日、南アフリカ・ダーバンで国連気候変動会議が開催された。ダーバン会議の主な成果としては、2020年までに新合意の発効を目指し、2015年までに、「条約の下で、全ての締約国に適用可能な、議定書・法的文書・もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とした新組織、ADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)の発足についての合意が挙げられる。さらに、ADPには、2℃目標との関連で、2020年までの野心ギャップを埋める行動を模索するという役割も課された。

ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、国連気候変動会議はカタール・ドーハにて開催。「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成され、京都議定書の第2約束期間(2013 - 2020年)を定めるための議定書の改正事項や、ドーハにおけるAWG-KP及びAWG-LCAの作業完了、BAP交渉の終了等に関する合意も盛り込まれた。

ワルシャワ: 2013年11月11日-23日、国連気候変動会議はポーランド・ワルシャワで開催された。同会議では、締約国に約束草案(国家決定貢献案) (INDCs)に向けた国内準備の開始や強化を招請すること等を盛り込んだADP決定書が採択された。また、「気候変動に関連する損失・被害に関するワルシャワ国際メカニズム (気候変動の影響に伴う損失と被害のためのワルシャワ国際メカニズム) (WIM)」の設立を定めた決定書ならびに「ワルシャワREDD+枠組み」(REDD+: 途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減並びに森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素貯蔵量の強化の役割)の設立を定めた決定書等が採択された。

リマ: 2014年12月1-14日、国連気候変動会議はペルー・リマで開催。このCOP 20で「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for 気候 行動)が採択され、INDCsの提出や点検のプロセスに関する議論を含めた2015年合意に向けた交渉原案の要素等を詰めて合意交渉を始動させるとともに、プレ2020年の野心の強化に取り組むことを定めた。また、19件の決定書も採択され、WIMの運用推進や「ジェンダーに関するリマ作業計画」の策定、「教育や啓発に関するリマ閣僚宣言」の採択等が定めている。

ADP交渉(2015年): ADP 2-8は、2015年2月8日-13日、スイス・ジュネーブで行われた。会合の目的はCOP 20で定められた通り「気候行動のためのリマ声明」に付属する交渉原案の要素に基づく交渉テキスト作りにあり、ADP 2-8で採択されたジュネーブ交渉テキストが交渉の土台となった。

ADP 2-9は、2015年6月1日-11日、ドイツ・ボンで開催。ジュネーブ交渉テキスト(GNT)の整理や統合、分類などの作業や概念に関する議論が行われ、GNTの序文や総則/目的、緩和、適応、損失・被害、資金、技術の開発と移転、キャパシティビルディング、透明性、時間枠(タイムフレーム)、実施と遵守、手続きと制度に関する条項等が取り上げられた。また、ADPでは、ADPの役割やプレ2020年の野心に関する議論のための要素案等についても審議された。

ADP 2-10は、2015年8月31日-9月4日、ドイツ・ボンで開催された。今後の作業指針として、ADP2-9で簡素化・統合化した文書をベースにADP共同議長が作成した「ツール」の様々な部分について討議が行われた。「ツール」内のパラグラフ配置の検討や主要問題に関する概念的な議論が行われ、一部では文言の提案にまで発展するケースも見られた。なお、ADP共同議長には今後の交渉の基礎を成すノンペーパー修正版の作成という役割が託された。

ADP 2-11は、2015年10月19日-23日、ドイツ・ボンで開催された。ADP共同議長が作成した文書を起点とした文章ベースの交渉を開始するよう議長から提案された。修正版ノンペーパーをもって今後の交渉を進めることで合意し、事務局に対しては密接に関連するパラグラフやセクション内の重複箇所、整理できる分野等を特定した技術文書を作成するよう要請した。

パリ: 国連気候変動会議は、2015年11月30日-12月13日、フランス・パリで開催され、気候変動に関するパリ協定の成立に至った。パリ協定の目的は、産業革命以前と比べて世界の平均気温の上昇幅を2℃未満に抑制し、1.5℃未満に抑制する努力も追求すること。さらに、世界の適応力の向上、気候変動へのレジリエンス強化や脆弱性の緩和等が目的として定められた。協定は、2つの5カ年サイクルを設定した。1つ目のサイクルは、各国の異なる国情に照らし、「共通だが差異ある責任、及びそれぞれの能力」(CBDRRC)や個々の能力を反映させつつ、各締約国が毎回の貢献において前回よりも進歩させたNDCsを提出するというものだ。また、INDCで10年という時間枠(タイムフレーム)を設けられた締約国には、それらの貢献を連絡または更新することが義務付けられた。2つ目のサイクルは、2018年の促進的対話を受けて、2023年から開始される集団的努力に関するグローバル・ストックテイクである。すべての締約国は共通の透明性枠組みを用いて報告するものとされ、途上国については報告義務を履行するための支援が提供される。パリ協定は、特にGHGの排出削減と持続可能な開発への支援に資するとともに技術メカニズムに対して重要指針を供する技術枠組みに対する支援を行うメカニズムを定めている。パリ協定は、世界のGHG排出量のうち少なくとも55%以上を占める締約国55カ国の批准をもって発効する。

今次会議のレポート

SBSTA 44 及び SBI 44は5月16日(月)、APAは5月17日(火)に開幕した。 このレポートは、この3つの機関の議論について各々の議題を踏まえて総括する。

COPでは幾つかの会合内ワークショップ(in-セッション workshop)が開催された。長期資金に関するワークショップの概要については次のリンク先を参照。(http://enb.iisd.org/vol12/enb12669e.html)

また、技術メカニズムと資金メカニズムのリンケージに関するワークショップの概要については次のリンク先を参照。(http://enb.iisd.org/vol12/enb12672e.html)

京都議定書締約国会合(CMP)に基づく気候資金の諸機関によるクリーン開発メカニズム(CDM)に関する資金供給や活用の模索に関するワークショップの概要については次のリンク先を参照。(http://enb.iisd.org/vol12/enb12667e.html)

開幕プレナリー

COP 21/CMP 11議長であるフランスのSégolène Royalが開会宣言を行い、パリで敷かれた基礎の上に築き上げる“建設者(builder)”として行動するよう各国の交渉官に呼びかけた。これまでの業績に対する感謝の意を込めた満場総立ちの拍手で迎えられたUNFCCC事務局長のChristiana Figueresは「今日は我々全員にとって新たな時代の幕開けとなる」と宣言した。

次期COP 22/CMP 12の議長となるモロッコのSalaheddine Mezouarは、「COP 22は行動する会議となる」と述べ、気候資金、農業、回復力(レジリエンス)が焦点になると強調した。

開会ステートメント(声明文)発表の中で、幾つかのグループは、プレ2020年の行動をとり、実施手段(MOI)を提供しつつ、パリ協定に則って構築していくことが重要であると強調した。

タイはG-77/中国の立場で発言し、適応行動や損失・被害は2020年以降に先送りできない問題だと強調した。

EUは、国内でINDCsを実施することの重要性を強調した。オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場で発言し、COP 22について「実施と行動のCOP」と称した。

スイスは環境十全性グループ(EIG)の立場で発言し、パリ協定の実質的な内容とバランスを維持する必要があると強調した。コロンビアは独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)の立場で発言し、パリ協定合意の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議(CMA)に対し一貫性がありバランスのとれた一連の提案を行うよう提案した。

コンゴ民主共和国は後発開発途上国(LDCs)の立場から、「脆弱な国々はパリ協定を行動に移す道筋を先導している」と発言した。

パナマは熱帯雨林諸国連合(CFRN)の立場で発言し、透明性や市場メカニズムに関する明確な規則を求めた。

マリは、アフリカ・グループの立場から、COP 22では、包括的なルールに基づくプロセスの確保や適応行動の具体化、技術枠組みの精緻化等の項目を優先すべきだと主張した。

小島嶼国連合(AOSIS)の立場で発言したモルディブや中米統合機構(SICA)の立場で発言したホンジュラスは、気候行動の規模を拡大するよう求めた。

サウジアラビアは、アラブ・グループの立場で発言し、CBDRRC(共通だが差異ある責任、及びそれぞれの能力)の原則や手続きの透明性、全員参加の約束について強調した。

インドは、ブラジル、南アフリカ、インド、中国(BASIC)グループの立場から、支援のための枠組みを含めた透明性の枠組みが重要だと指摘した。

ヨルダンは、有志途上国(LMDCs)の立場で発言し、全ての問題に同じ重みをもたせて扱い、各組織の議題を必要に応じて再調整するよう求めた。

地方政府や地方自治体当局(LGMA)は、国連ハビタット3(国連人間居住会議)等、他の組織との連携を求めた。

女性とジェンダー団体は、自己満足の状態に陥ることに釘を刺し、野心を引き上げるべきだと述べた。

若者代表のNGOsは、パリ協定における世代間衡平性の認識を歓迎した。先住民を代表する団体は、先住民の専門知識を強調し、人権の尊重・保護・実現が必要だと強調した。

気候行動ネットワーク(CAN)は、透明性を確保する上で市民社会の役割が重要だと強調した。

クライメート・ジャスティス・ナウ! (CJN!)は、未だ検証されていない技術を使ってパリ協定を実施することを警告した。

ビジネス・産業関係非政府組織(BINGOs)は、測定・報告の共通ルールを策定する上で企業や産業界の専門知識を提供できるとの期待を表明した。

農業団体は、食料生産が世界の気候変動対策に脅かされることがないよう確保する必要があると強調した。

パリ協定特別作業部会(APA)

APAの開幕プレナリー(全体会合)が5月17日(火)に開催された。開会のステートメント発表の後、APAの非公式協議を開き、議題や作業構成に関して討議した。議題を採択した後は、議題の各項目について議論するため、コンタクトグループの会合、続いてオープンエンド型の非公式協議が行われた。

各議題項目についての議論の総括は下記の通り。続いてAPA結論書と閉幕プレナリーの総括を行う。

開幕ステートメント: COP 21/CMP 11議長Laurence Tubianaが開幕宣言を行った。

タイは、G-77/中国の立場から、あらゆる問題を同等に配慮するようAPAに求めるとともに、透明性枠組みにおける途上国への柔軟性を求めた。

アンブレラ・グループは、NDCsやグローバル・ストックテイク、透明性等におけるルールとガイダンスの重視を求めつつ、今後の作業の進め方については概念的な議論を行うよう提案した。

環境十全性グループ(EIG)は、APAに託された課題に対する締約国の理解は今次会合によって向上するはずだとし、会合後に技術面の意見書提出と共同議長による“リフレクション・ノート”の作成を提案した。EUは、宿題についての取り組みを見直すため会期中にストックテイク会合(点検会合)を実施する案を歓迎した。

小島嶼国連合(AOSIS)は、気候行動を実施するための資金にアクセスするための手続きを小島嶼開発途上国(SIDS)向けに簡素化するよう求めた。

アラブ・グループは、締約国主体の包含的なプロセスに期待を示した。

AILACは、環境十全性や人権の保護、NDCsを実行するための途上国向け支援を求めた。

ベネズエラは米州ボリバル同盟(ALBA)の立場から、気候変動が2030年の持続可能な開発(SD)アジェンダの実施を制限すると述べた。

マリは、アフリカ・グループの立場から、APAは包括的であるべきだとし、パリ協定で実現された“デリケート”なバランスを反映させなければならないと述べた上で、行動や支援の透明性に関するモダリティの基礎的要素について柔軟性や支援を含めて強調した。

後発開発途上国(LDCs)は、同アジェンダに関する全ての問題が平等にバランスをもって扱われることを保証するよう求めた。

労働組合NGO (TUNGOs)は、グローバル・ストックテイクの一つの要素として公正なる移行を含めるよう求めた。

女性及びジェンダーに関する団体は、すべての政策分野において気候への即応性を確保するため、ジェンダーに関するリマ作業計画を活用するよう要請した。

若年者非政府組織(YOUNGOs)は、「今ここに若者世代が手助けに来ている」と述べ、難しい決断を下す際は将来の世代のことを配慮するよう各国に求めた。

ビジネス・産業関係非政府組織(BINGOs)は、2030年アジェンダとの相乗効果を呼びかけ、COP 21以降の企業支援という“過去に前例のないメッセージ”を実現するための取り組みを求めた。

気候行動ネットワーク(CAN)は、これから必要なのは、野心の引き上げ、1000億米ドルの誓約に向けたロードマップ、プレ2020年の数値目標の強化、損失被害に関する支援における合意等であると強調した。

クライメート・ジャスティス・ナウ!(CJN!)は、“パリ精神に忠実であれ”と強調し、ジオエンジニアリングは“誤った解決策”だと一蹴した。

先住民団体は、NDCsに関する指針には、先住民の完全かつ効果的な参加を担保し、社会的セーフガード条項を盛り込むべきだと述べた。

組織事項: 役員選出: 5月17日(火)、Sarah Baashan (サウジアラビア) 及び Jo Tyndall (ニュージーランド)がAPA共同議長として選出された。また、5月26日(木)の閉幕プレナリーでAnna Serzysko (ポーランド)が連絡官(rapporteur)として選出された。

議題採択: 5月17日(火)、APAは議題に関する追加協議をするため全体会合(プレナリー)を一時中断。非公式協議が5月18日、19日に行われた。

5月20日(金)、APAのTyndall共同議長は、適応に関するコミュニケーションに関する一項目と作業計画の実施を確実にするための項目が盛り込まれたと説明しつつ議題案を紹介し、パリ協定7条12項 (適応に関するコミュニケーションの登録簿)に記された登録簿の問題はSBIで取り上げられると伝えた。その後、APAは議題案 (FCCC/APA/2016/L.1)を採択した。

作業構成: 5月20日(金)のAPAでは作業構成が取り上げられた。多くの途上国は全ての問題をバランスよく扱うよう求めた。

タイ(G-77/中国)及びマレーシア(LMDCs)は、平行して開催される会合を制限するよう求めた。スイスは、オーストラリア、ノルウェー、EU等の支持を受け、プレナリー会合でアイディアの交換を開始した後にコンタクトグループか分科会(スピンオフグループ)で審議することを提案した。コロンビアは、AILACの立場で、プロセスについては、今後もプレナリーを議論の場とするべきだと発言した。

EUとLDCsは、議題項目3~7(緩和、適応に関するコミュニケーション、透明性枠組み、グローバル・ストックテイク、実施・遵守)から作業を始めることを提案した。

全般的に迅速に作業を開始したいという意向がみられると指摘した上で、APAのBaashan共同議長は作業構成に関するオープンエンド型協議を行うため、一時休会した。これらの非公式協議は5月20日、21日に行われた。

5月23日(月)、Tyndall共同議長は、単独のコンタクトグループで全ての実質的な議題項目に関する審議を続け、24日、25日に技術的な詳細を詰めるためにオープンエンド型の非公式協議を行うものとし、それまでの進捗を振り返って今後の方向性を定め、結論書草案について検討するためのコンタクトグループを再開することを提案した。その後、APAは作業構成書を採択した。

決定書1/CP.21の緩和セクションに関する追加ガイダンス(パリの成果): この項目は5月23日(月)のコンタクトグループと24日(火)のオープンエンド型非公式協議で議論された。

ケニア(アフリカ・グループ)を含む多くの国々は、各国が決定するというNDCsの特徴を強調した。幾つかの国が規範的な指針に警戒感を示した。

多くの国がNDCsの多様性を反映させるようを求めるとともに、全てのNDCsで共通のガイダンスと、NDCsのタイプ別に具体的なガイダンスをつくるよう要求した。資格や能力の差異に言及し、中国は、LMDCsの立場から、先進国と途上国の差異化を求めたが、米国がこれに反対した。

インドは、中国とともに、NDCsに関する追加的ガイダンスはパリ協定3条(前進と支援を含むNDCs)との関係で行うべきだとし、衡平性やCBDRRCがNDC作成プロセスに情報を通知する方法に関して技術的な作業を求めた。

米国、スイス、オーストラリアは、この議題項目が緩和に限定されていると述べた。EU、南アフリカ、オーストラリア、コロンビア(AILAC)は、NDCsに関する定量化の必要を強調した。

テイラーメイド型ガイダンスを必要とする緩和のNDCsのタイプについては、特に経済全体の排出削減/抑制目標や、BAUや原単位目標、セクター別目標からの乖離、低排出開発戦略・計画・行動等があると各国から挙げられた。ノルウェーは、土地部門と市場に関して明確にするよう強調した。カナダは、ベースラインと予測に関する情報を強化する必要があると強調した。

NDCの報告のタイミングについては、ヨルダンが、LMDCsの立場で、LDCsとともに、特徴・情報・アカウンティングに関するガイダンスは、次回以降のNDCsサイクルだけに適用されると述べた。LMDCsは、NDCsの定期的な報告のための共通タイムフレームについて、途上国がNDCsを定期的に提出するために必要となるコスト全額を先進国が法的拘束力のある明確かつ運用と検証が可能な方法で提供するとしてコミットした場合にのみ適用されるべきだと主張した。

アカウンティングについては、パリ協定、条約、京都議定書をベースにするよう求め、環境十全性と二重カウント防止の原則を多くの国が強調した。LMDCsは、細かな運用手続き・モダリティよりも全般的な原則を求めた。“アカウンティング”をめぐる概念を明確にするべきだとの提案もあり、ブラジルは、算定(カウンティング)の単位ではなく、進捗をトラッキングする作業に集中すべきだと主張した。AILAC及びノルウェーは、土地利用に関する具体的なルールを求めた。

今後の道筋については、多くの国が、スコープを明確に定義した上で、意見書を提出する案を支持した。グレナダは、INDCを準備する中で直面する課題に関する技術文書を求めた。また、多くの国が、“会合期間外、期間前、または期間中”の技術ワークショップを探求する用意があると表明し、全ての国による参加を保証すべきだと主張する国も一部でみられた。南アフリカは、COP 22で追加審議を行うための作業計画を求めた。ニュージーランドは、アカウンティングのガイダンスについて、環境十全性を保障するための諸原則や基準、現行のアプローチの援用、全てのNDCsへの対応のしかた等への考えを中心とした意見書の提出を求めた。

パリ協定7条10項および7条11項で定められた、特にNDCsの1要素としてのものも含む、適応に関する報告に関する追加ガイダンス: 5月23日(月)のコンタクトグループと25日(水)のオープンエンド型の非公式協議で本件に関する話し合いの中で、適応に関する報告(コミュニケーション)の目的と他の課題との関連やガイダンスのスコープ、適応に関する報告に対するガイダンスと柔軟性とのバランスについての議論が行われた。

適応に関する報告の目的については、タイが、G-77/中国の立場から、各国のニーズや優先順位や計画を明確に伝えることによって行動に触媒作用をもたらすことが目的だと強調し、適応に関する報告書は、懲罰的ではなく適応に関する世界目標の達成に向けて途上国を支援するためのツールとみなすべきだと主張した。

エクアドルは、LMDCsの立場で、適応に関する報告に対して差異化したアプローチを求め、自主的かつ任意のアプローチが必要だと強調した。

報告書の中に“共通した最小限の要素”を盛り込むことを2~3の国が要求し、 進捗を追跡するためには“十分な詳細”が必要だと指摘した。また、いくつかの国が適応に関するコミュニケーションは締約国に報告のために更なる負荷を与えるものであってはならないと主張した。

米国は、適応に関する報告は、適応に関する既存のコミュニケーション手段に関連ある情報とNAPsに係る“ハイレベル”のサマリー(総括)とすべきだと提案した。インドネシアは、適応に関するコミュニケーションによって適応分野の野心を引き上げ、パリ協定2条(目的)への対応を強化することに役立てると指摘した。

多くの締約国が既存のコミュニケーション手段との関連やパリ協定の部分(グローバル・ストックテイクや透明性を含む)を特定した。

行動・支援のための透明性枠組みに関する法性、手順、ガイドライン: 5月23日(月)のコンタクトグループで初めて本件の議論が行われ、その後に24日(火)のオープンエンド型非公式協議で議論があった。枠組みのスコープと主要問題、“柔軟性”の概念、技術的作業の体制、条約の経験からの教訓などをテーマに議論がなされた。

枠組みのスコープ(範囲)と主要問題については、幾つかの国が、透明性枠組の全ての要素をバランスのよい形で扱う必要があると指摘した。ケニアがアフリカ・グループの立場から行動・支援の透明性を強調する一方、EUはNDCsの実施と進捗状況の追跡に枠組みが重要であると強調した。LDCsは、測定・報告・検証(MRV)システムで何をアカウンティングの対象とすべきか明確なガイドラインを策定すべきだとし、気候資金に関する運用上の定義の合意を求めた。

柔軟性については、柔軟性をいかに運用していくかという議論になり、多くの先進国と途上国が、途上国、特にLDCsやSIDS間の能力の差異に配慮するよう求めた。セントルシアは、共通報告様式とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の共通ガイドラインと測定基準の活用を求めた。

中国は、途上国向けの枠組み実施の支援を継続的に提供する方法を特定するよう求めた。インドは、LMDCsの立場で、差異化やCBDRRCの原則の運用ならびに体系的にモダリティや手順、ガイドラインに柔軟性を組み込むことを求めた。

サウジアラビアは、柔軟性には、体系的な適用と現行ガイドラインに組み込まれた柔軟性の2つの層があると指摘した。

EUとノルウェーは、柔軟性の全面適用には反対を唱えた。米国は、共通手順の文脈の中でのみ柔軟性について議論することができると発言した。

多くの国が、透明性枠組みの設計においては長期的に絶え間ない改善という原則を強調した。ニュージーランドは、IPCCの段階的アプローチ活用から学ぶよう提案した。米国とノルウェーは、報告とレビューが能力構築の機会であると指摘した。ケニアは、アフリカ・グループの立場で、特に透明性枠組みに効果的に参加するための途上国の政治的意思について強調した。

技術的作業の体制については、技術専門家レビューのガイドラインや透明性枠組みの法性や手続きの議論に入る前に報告に関するガイドラインについて討議するという段階的アプローチを幾つかの国が支持した。米国は、このアプローチは様々な要素の独自の特性を認識するものだと示唆した。サウジアラビアは、各国が意見書を提出することによって現在の要望点に関する初期的なマッピング作業を行い、その後、共通手順やガイドラインに関するギャップを特定・対応するという案を示した。

条約の下での他の作業分野からの教訓については、ペルーがAILACの立場でREDD+について強調し、透明性枠組みの法性、手続きやガイドラインがREDD+のガイドラインよりも優先されることはないと指摘した。

幾つかの国は、促進的意見交換(FSV)は能力のギャップや課題を教示してくれるとの見方を示した。ブラジルは、FSVの教訓の一つは、より一般的なガイダンスが“柔軟性”と同じ意味をもつのではなく、詳細なガイダンスの方が実施やレビューに役立つ可能性があると指摘した。メキシコは、適応委員会と後発開発途上国専門家グループ(LEG)に適応関連の技術的作業を任せることを提案した。

今後の道筋については、多くの国が集中的な意見提出を求めた。カナダは、マラケシュで技術作業を開始することを提案した。日本は、さらなる交渉のための作業計画を求めた。サウジアラビアは、現時点での意見書提出に反対した。南アフリカは、APAの他の議題項目やこの項目に適用しうる既存のガイドラインや法性を総括する文書を事務局が準備することを提案した。

グローバル・ストックテイクに係る問題: 5月23日(月)のコンタクトグループと24日(火)のオープンエンド型非公式協議で本件が取り上げられた。

グローバル・ストックテイクへのインプットやグローバル・ストックテイク実施法、グローバル・ストックテイクと2018年の促進ダイアログとの関連等について集中的に議論が行われた。

グローバル・ストックテイクへのインプットについては、多くの国が、IPCCや構成機関、補助機関の報告書ならびに透明性枠組みに関する成果物について言及した。いくつかの国が、非国家主体のインプットや地域情報について指摘した。また、多くの国が、緩和、適応、MOI向けのインプットは異なると指摘した。

クウェートは、G-77/中国の立場から、NDCs及び支援の動員に関する情報に係る全体的な評価について強調し、インド、アルゼンチン、ノルウェーとともに、適応支援の状況に関する情報を盛り込むよう求めた。

グローバル・ストックテイクの実施方法については、緩和、適応、MOIの性質の違いに応じたプロセスを幾つかの先進国が提案したが、多くの途上国が検討のための時間を十分にとって情報を利用できるようにする必要があると主張した。多くの国は、2013-2015年レビューに関する組織化された専門家対話(SED)に学ぶことを提案したが、サウジアラビアがこれに反対した。LMDCsは、国際評価及びレビュー(IAR)や国際協議と分析(ICA)の経験を生かすよう提案した。

アウトプットについては、2023年以降の高官級ラウンドテーブルに関するサマリー・レポート発表や議長サマリー発表等が提案された。一部の途上国は、2023年中にグローバル・ストックテイクを完了して締約国がNDCsを準備できるようにすべきだと主張した。

グローバル・ストックテイクと2018年の促進ダイアログとの関連については、促進ダイアログとグローバル・ストックテイクとのスコープは異なるものの後者は前者から学べるという一般認識がある。LDCsは、対話は締約国が野心を強化するための場を提供するものだと述べた。インドは、対話によって、どのように衡平性、持続可能な開発、貧困撲滅などが緩和努力の中で取り組まれているかを取り上げるべきだと述べた。アルゼンチンは、対話によって協定の早期発効を検討すべきだと述べた。

今後の道筋については、多くの国が意見書提出を求めた。ニュージーランドとAILACは、LMDCsが提起した今後の課題リストを歓迎した。そのリストには、決定書1/CP.21(パリ成果)に挙げられたリスト以上の情報に関する意見書提出やグローバル・ストックテイクと他の制度アレンジとの関係、手続きのフォーマット、科学の融合、SED創設、タイムフレーム、今後のアウトプット等が提案された。

実施推進と遵守促進に関する委員会の効果的な運用に関する法性及び手順: APAでは、5月23日(月)のコンタクトグループと25日(水)のオープンエンド型非公式協議で本件を取り上げた。議論のテーマは、実施推進と遵守促進のメカニズムの特徴、遵守委員会の作業に向けた作業を始動させるための誘因(トリガー)、委員会が講じうる行動等であった。

メカニズムの特徴については、促進的、非懲罰的、非対立的であるべきだとの意見が出る一方、各国の国情や能力に配慮しながらも世界共通の遵守メカニズムが必要だとの意見もあった。他方で、差異化を運用する必要があるとの指摘もあった。さらに、スコープに関して各国毎または全体の義務の両方を盛り込む案や、実施推進に関する拘束的な要素の有無、パリ協定の他のメカニズムとの関係などが議論された。

トリガーについては、自国付託型(self-referral)や、’締約国 - 締約国’型、技術専門家レビュー、事務局等を含む選択肢が提案された。

ある締約国は、非国家主体がトリガーを務めることに反対したが、締約国主導のプロセスに対する支持もあった。全ての段階で完全なる透明性が必要だとし、全プロセスを通じて関係国はずっと情報を受ける必要があるとの意見があった。また、透明性枠組みの成果(アウトプット)がトリガーとして、どのように活用されるかという点についても議論があった。多くの国がトリガーに関する技術文書を作成するという案を支持したが、さらなる議論を求めて反対する声もあった。

委員会による行動については、多くの国が、非遵守の原因を特定しなければならないとの意見を支持した。タイは、G-77/中国の立場から、支援の実施に対する資金メカニズムに対する勧告を出す案を支持した。一部の締約国は、遵守委員会がCMAに勧告を出せると指摘した。

パリ協定の実施に係る更なる問題: 5月23日(月)のコンタクトグループと25日(水)のオープンエンド型非公式協議で本件についての議論が行われた。

発効に向けた準備: 早期発効とその場合の手続きや事務的な調整事項などについて意見交換が行われた。

今後ありうる早期発効については、ベネズエラが、LMDCsの立場から、早期発効が一部で喧伝されるものの、ドーハ改正の批准や他のプレ2020年の行動に関しては同じ切迫感が見られないとの懸念を表明した。米国は、プレ2020年の公約を実現させて2016年には協定に参加すると強調した。

コロンビア(AILAC)、EU、米国は、早期発効を支持しつつ、LMDCsとともに、早期発効がルール策定プロセスに完全参加する締約国の権利に影響を及ぼしてはならないと強調した。LDCsは、早期発効はCMAに参加できるよう締約国に批准を行うインセンティブになるはずのものだと述べた。批准を遅らせる歪んだインセンティブにならないよう、準備作業を完了する明確な期限を設けるべきだとEUが示唆した。

手続きと事務的な調整については、協定が発効し発効後の第1回COPでCMA 1が開催される際にパリ協定の諸制度が運用開始になると事務局が説明した。

また、事務局は、2016年10月7日までに十分な批准数が確保できない場合、CMA 1がマラケシュで開催されると指摘しつつ、2つの選択肢を示した。第1の選択肢は、CMAがAPAや補助機関、構成機関の補佐を受けて作業計画を実施することで、それにはAPAの延長をCOP決定で定める必要がある。2つ目の選択肢は、CMAが第1回会合を延期し、COPに作業計画を続行し、中間見直しと適切な決定を行うようそれ以降のCOPで再開することを要請するというものだ。

スイス、EU、ペルー(AILAC)、米国、ノルウェー、日本は、具体的な期限を設けて延期するという案を支持し、その中で2018年を期限とする案も出された。アルジェリアは、LMDCsの立場で、作業計画が完了するまでAPAの期限を延長することを提案した。南アフリカは、延期案を支持し、COP 22で本件の理解を記した決定書を採択すべきだと付言した。

LDCsは、CMA 1延期を検討するのは、パリ協定の仮適用とドーハ改正の批准を検討した後のことだと強調した。ブラジルは、CMA 1延期が誤った政治的シグナルを送ることにならないかと懸念を示した。

AOSISは、オブザーバーが十分に議論には参加できるようにし、意思決定には参加しなかったという京都議定書の策定時の慣行を用いることを要求した。米国、インドネシア、南アフリカは、包摂性の原則を支持した。マリは、アフリカ・グループの立場で、全ての締約国による“実効性ある公正な”参加を求め、COP 22で本件に関するコンタクトグループの設置をする案を支持した。

CMA 1開催に向けた準備: AOSISは、CMA 1で採択すべき決定について述べ、作業を完了させるために必要なプロセスと誰がそれを行う責任を有するかという問題にかかわる手続きについての決定を下すべきだと指摘した。

パリ協定及び決定書 1/CP.21セクションIII(パリ協定に効力を与えるための諸決定)に基づき課された作業との関連で、作業計画の実施における調整や整合を促進および推進するため、補助機関や構成機関が成した進捗状況について中間点検を行いつつ、適宜、勧告を含む行動を講じること: パリ協定による作業を課された機関間の調整作業を増進するための方策について締約国が以下の論点について議論を行った。論点: COP 22以降のストックテイキング会合; パラレルな進展を確保する上で共同議長と議長国を補佐するコンタクトグループ; 補助機関や構成機関の議長に対するAPAへの報告招請等。EUは、決定書 1/CP.21 (パリの成果)の中に必要なモダリティ(手順)は全て盛り込まれていると述べた。

閉幕プレナリー: 5月26日(木)、APA閉幕プレナリーは開催された。項目3-8については、APAのTyndall共同議長が結論書草案(FCCC/APA/2016/L.3)を提起し、そのまま採択された。

モロッコは、COP 22議長国として、早期発効の場合の包摂性に関する協議について報告した。迅速な早期発効が各国の歓迎を受けていたことに言及した上で、議長国として本件に関する締約国との協議を継続する意向を示した。また、UNFCCCウェブサイトに協議のサマリーが掲載されると伝えた。

タイは、G-77/中国の立場から、議題項目の議論に集中するための基本的な質問事項の有用性; プレ2020年の行動を加速する必要性; APAの下での全ての問題にまたがる整合性を担保する重要性等を指摘した。EUは、建設的な作業方式を歓迎した。

アンブレラ・グループは、特に、透明性枠組みに関する専門家の作業開始; グローバル・ストックテイクに関する議論の継続; 適応をその構成要素の一つとするパリ協定のバランスの維持について強調した。

メキシコは、EIGの立場から、今後の早期発効を歓迎し、具体的な成果を出すために締約国がパリ精神を維持するよう促した。

LDCsは、技術文書とワークショップをもって進行させる合意が成立しなかったことに失望感を示し、今後の建設的な作業への期待を表明した。

マリは、アフリカ・グループの立場から、今後もAPAの諸問題をバランスよく扱うよう要請し、少数のドーハ改正事項の批准を含む、プレ2020年の野心や支援ギャップについて強調した。

AOSISは、グローバル・ストックテイクに関する作業を始める必要があると強調し、能力が不足している国々が資金に迅速にアクセスするための手続きを簡素化すべきだと指摘した。

LMDCsは、COP 22までに数値化された気候資金のロードマップを作成するよう求めるとともに、ドーハ改正事項の批准よりもパリ協定の早期発効を優先させることによって生じる政治的なアンバランスへの懸念を示した。

ニカラグアは、ALBAの立場から、先進国に対して、ドーハ改正事項の批准を最優先させ、母なる地球を保護するために気温上昇を1.5°C未満に抑制するという目的を達成する義務を履行するよう要請した。

AILACは、技術的な問題が野心を阻む原因になってはならないと述べ、COP 22で適応や緩和、透明性、グローバル・ストックテイクに関する作業が開始できるよう期待すると述べた。

インドネシアは、補助機関間での調整が必要だと強調した。ウクライナは、二重カウントを防止する透明性枠組みのルールや手順の策定がマラケシュの重要任務だと強調した。フィリピンは、国内の深刻な干ばつに注意を喚起し、その緊急性を強調しつつ、年間100億米ドルの資金支援に向けた早期で予測可能な進展を求めた。

研究関係及び独立の非政府組織(RINGOs)は、能力構築に向けて途上国の研究機関などと協力して取り組むと表明した。

女性・ジェンダー団体は、ジェンダーに対する配慮をもって気候問題に取り組むことが確実に効率的で適切な対応を可能にするのだと主張し、NDCsに衡平性に関する情報を盛り込むよう求めた。

青年代表NGOのYOUNGOsは、締約国に対して、できるだけ早期にパリ協定に批准するよう求めるとともに、プレ2020年の行動を講じることを忘れないことも重要だと強調した。

CANは、プレ2020年の行動・支援、2016年促進ダイアログ、ハイレベルな気候資金のイベント、キャパシティビルディング作業計画、ハイレベルなチャンピオンに関する作業等に特化するよう求めた。

CJN!は、市民の生活手段や命が失われているという“壁の外側”に繰り広げられる現状を再認識するよう各国政府の代表に求め、“各国の公平な分担”に応じて今すぐ排出削減する必要があると述べた。

農業関係者は、レジリエンス強化と低排出型の開発によって気候変動の影響に対処する必要があるとし、研究や拡張サービスへの投資を求めた。

永らく環境の守護者であったという、その独自の重要な視点を強調し、先住民は、第15条(遵守)に基づき構築されたメカニズムは先住民の視点や懸念を考慮に入れなければならないと主張した。

APA連絡官のAnna Serzyskoから報告書案(FCCC/APA/2016/L.2)の紹介があり、APAはこれを採択した。

閉会にあたり、Tyndall共同議長は、マラケシュで実質的な作業に集中できるようAPAの今次会合を一時中断(延期)すると述べた。また、この延期措置はAPAの標準的な慣行の除外対象とすると述べ、APA会合は午後9時3分にいったん保留された。

APA 結論書: APAはその結論書(FCCC/APA/2016/L.3)の中で、APAの全ての実質的な議題項目に関する作業を開始したことに言及し、以下の決定を記している。

  • 共同議長に対して、APA 1再開会合に向けたシナリオ・ノートの準備を招請
  • パリ協定の署名、批准書の寄託、受諾または承認を未だ行っていない締約国に対して、それを行うよう奨励。
  • 早期発効に関して次期COP 22議長国が執り行う協議を歓迎。
  • 共同議長に対して、8月30にまでに、実施の推進と遵守の促進を促すような委員会の特徴と要素に関して概念的な思考を発展させるべく締約国を支援する基本的な質問リストの一式を準備するよう要請。

また、APA第1回会合の作業構成のモダリティについて、APAは、単一コンタクトグループでの作業継続; 作業の方向性を定め、中間に見直し、閉会するという流れで会合を開催; 非公式協議を通じて6つの議題項目に関する技術的作業を実行という内容で合意している。また、結論書には、共同議長がAPA 1再開会合の前に十分余裕をもって進行役を発表することが記された。

さらに、APAは、2016年9月16日までに議題項目3-6に関する意見を提出するよう締約国に招請することで合意している。

実施に関する補助機関

組織事項: SBI議長Tomasz Chruszczow (ポーランド)が5月16日(月)に開会宣言を行い、条約の非附属書I国の国別報告書に記載された情報に関する小項目については保留とした暫定議題 (FCCC/2016/SBI/1)の採択を締約国に招請した。また、SBI副議長Zhihua Chen (中国)がこの小項目について非公式協議を行うことが伝えられた。

タイは、G-77/中国の立場から、NDC登録簿に関する議題項目について、パリ協定4条12項(NDC登録簿)という記述を見出しから削除して修正することを要求し、サウジアラビアの支持を受けたが、アンブレラ・グループとEUが反対した。公開登録簿で適応の取り組みを把握することを検討することを多くの締約国が求めた。

討議の後、Chruszczow議長は非附属書I国の国別報告書に関する小項目は保留のままで議題を採択することを提案し、締約国の合意を受けた。NDC登録簿に関する項目については議題に含めず、今後の方策について更なる協議を開くことで合意した。

5月20日(金)、Chruszczow議長は、項目5(NDC登録簿)に関する協議の結果を報告し、締約国はパリ協定4条12項(NDC登録簿)に記された公開登録簿の運用と利用に向けた手順・手続きの策定という見出しに変更することで合意した。また、パリ協定7条12項(適応に関するコミュニケーション登録簿)に記された公開登録簿の運用と利用に向けた手順・手続きの策定という新項目の追加についても合意がなされた。

エジプトは、この変更は適応と緩和の行動の両方に一つの登録簿をつくることを意味すると示唆した。米国は、現時点でSBIが出来ることは修正議題を承認し、これらの項目の運用についてはこの先の段階に残しておくことだけだと明言し、Chruszczow議長がこれを確認した。その後、5月16日に暫定議題に代わるSBI修正議題(FCCC/SBI/2016/L.2)が採択された。

5月26日(木)、SBI副議長のZhihua Chen (中国)主宰による附属書I国の国別報告書に関する小項目についての非公式協議で合意が成立しなかったとChruszczow議長が伝えた。Chruszczow議長はこの件をSBI 45の暫定議題に含めることを提案し、SBIでの合意が成立した。また、暫定議題に「SBI 44ではこの小項目を議題に含めることで合意に至らず、議長からの提案を受け、SBIでは当該の小項目をSBI 45暫定議題に含めることを決定した」との脚注を入れることが決まった。

国際協議分析(ICA): 2つのFSVワークショップが開催。5月20日(金)の会合のハイライトについては次のサイトを参照: http://enb.iisd.org/vol12/enb12671e.html。

5月21日(土)の会合のハイライトについては次を参照: http://enb.iisd.org/vol12/enb12672e.html

SBIに委任された会合等: SBIは委任されていた以下の会合等を開催した。

委員の選任: Chruszczow議長は5月26日、本件に関する協議でSBI連絡官の選任に至らなかったことを伝え、適用される手続き規則案22.2に則り、次回の会議で後任が選出されるまでSBI連絡官Sidat Yaffa (ガンビア)が続投することを伝えた。

附属書I国の報告: 意見書の提出状況と第2回隔年報告書(BRs)のレビュー: この小項目(FCCC/SBI/2016/INF.1)は5月16日(月)のSBIプレナリーで最初に取り上げられ、SBIは意見書提出の状況と第2回BRsのレビューについて留意した。

6回国別報告書(NCs)と第1回BRsの編纂・統合: この小項目(FCCC/SBI/2016/INF.1)は5月16日(月)のSBIプレナリーで最初に取り上げられた後、Anne Rasmussen (サモア)・Helen Plume (ニュージーランド)共同議長を務める非公式協議で議論された。非公式協議では、結論書に以下のSBIプレナリーで最初に取り上げられた後、Anne Rasmussen (サモア)・Helen Plume (ニュージーランド)が共同議長を務める非公式協議で議論された。非公式協議では、結論書に挿入する文言案として、第6回国別報告書(NCs)の編纂・統合報告書の章にGHG排出トレンドに関する情報の記載や全ての章に記載を入れる等が出された。短い議論の後で、第6回国別報告書(NCs)の編纂・統合に関する情報は“時代遅れ”であり、第2回隔年報告書(BRs)の編纂・統合についてはSBI 45で議論する予定であることを認識しつつ、この小項目の下のSBI議題の中で言及された文書について単純に留意することで締約国は合意した。

5月25日(水)のSBIプレナリーで結論書が採択された。

SBI 結論書: 結論書 (FCCC/SBI/2016/L.1)で、SBIは2014年に事務局が作成した附属書I国からの第6回国別報告書(NCs)と第1回隔年報告書(BRs)の編纂・統合について留意し、附属書I国からの第2回隔年報告書(BRs)については、SBI 45で審議することに留意。

国際評価分析 (IAR) (2014-2015年): この小項目 (FCCC/SBI/2016/INF.1)は、5月16日(月)のSBIプレナリーで最初に取り上げられた後、Xiang Gao (中国)・Helen Plume (ニュージーランド)が共同議長を務める非公式協議で議論された。

5月18日(水)の非公式協議では、結論書草案の内容やその提出先、IARの手順・手続きの修正(その実行組織を含む)について意見交換を行った。

論書草案の内容については、方法論や報告書に関する義務の履行に関する評価や多国間評価のスコープにMOIを含めるという勧告、手続きに関する結論書草案だけを作成するの案が出された。多くの締約国は、SBIが2017年中

修正を実施すべきだとの意見を示した。

5月25日(水)のSBIプレナリーで結論書が採択された。

SBI 結論書: 結論書 (FCCC/SBI/2016/L.12)でSBIは特に以下に留意。

  • IAR多国間評価セッションをSBI 41、42、43で開催し、その際に先進国が評価を受けたことに留意。
  • これらの締約国の実績については、それが第1回IARで得られた経験の一部を成しており、決定書2/CP.17,パラグラフ26(2016年の第1回IARに基づく手順・手続き修正)に記された手順・手続きの改正に関する情報となることに留意。
  • 今回のIARラウンドが決定書2/CP.17附属書IIパラグラフ1(IARの目的)の全体的な目標の達成と信頼醸成に寄与していることに謝意をもって留意。
  • COP 22での検討に向けた決定書草案(FCCC/SBI/2016/L.12/Add.1)提起。

国別報告書(NCs)準備に向けたガイドライン改正: この小項目 (FCCC/SBI/2016/INF.4/Rev.1)は、5月16日(月)のSBIプレナリーで最初に取り上げられた後、Fatuma Hussein (ケニア)・Helen Plume (ニュージーランド)が共同議長を務める非公式協議で議論された。

5月26日(木)の非公式協議で、Chruszczow議長が懸案事項の解決のために各政府代表のトップと行った協議についてブリーフィングを行った。形式や長さ、言語などを含め、ガイドラインの中で特定された情報のコミュニケーションに関して記されたガイドライン草案で一つ残っていたパラグラフ(パラグラフ71)について、合意に達することができなかった。

一方、手続きに関する結論書草案では合意が成立し、残りの1パラグラフを除く全てについて合意が成立したとの理解となり、残り1パラグラフについてはSBI 45で審議されることになった。

結論書は5月26日(木)のSBIプレナリーで採択された。

SBI 結論書: 結論書 (FCCC/SBI/2016/L.22)で、SBIは以下に留意。

  • NCsに関するUNFCCC報告ガイドラインの改正についての審議継続。
  • 2016年5月13-14日に開催されたワークショップの際の報告ガイドライン改正における進展を認識。
  • ガイドライン改正案のテキストについて、パラグラフ71の括弧書きのテキストを除き、結論書の附属書に記載された通りの文言で合意。
  • NCsに関するUNFCCC報告ガイドライン改正に関する議論をSBI 45で完了し、COP 22での審議に向けて提言を提出することを目指し、パラグラフ71の括弧書きのテキストの検討を継続することで合意。

非附属書I報告書作成: NCs記載情報: SBIは、5月16日(月)のプレナリーにおいて、この項目の保留を決定した。

資金援助及び技術支援の供与: SBI開会プレナリーでは、5月16日(月)、この小項目を審議し、地球環境ファシリティ(GEF)から隔年更新報告書(BURs)作成に関係するGEFの活動について報告を受けた(FCCC/SBI/2016/INF.2)。その後、議長Chruszczowは、関心のある締約国との非公式協議を開催した。

プレナリーにおいて、イランは、プロジェクト支援を受けていない理由に関するイランの問合せに対するGEF事務局の無反応を指摘した。5月26日(木)、SBIは結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.11)において、SBIは特に:

  • GEFに対し、BURs作成に関係する活動に関し、詳細な情報の提供を続けるよう招請し;
  • 2016年5月24日現在、多数の非附属書I締約国BURsが未提出であると指摘し、第1回のBURsが未完成で未提出の非附属書I締約国に対し、可能な限り早期に提出するよう推奨し;
  • GEFの下部組織に対し、BUR作成を目的とする非附属書I締約国のプロジェクト案の作成及び提出を推進し続け、プロジェクト案に対応するよう奨励し;
  • 非附属書I締約国に対し、Global Support Programme(世界支援計画)の下で利用可能な技術援助及び支援を受ける機会を活用するよう奨励し;
  • 技術支援の提供における非附属書I締約国NCsに関する専門家諮問グループ(CGE)の貢献を認識し、附属書II先進締約国及び行える立場にある他の先進締約国に対し、CGE作業計画の実施に対し資金源を提供するよう促し、さらに事務局に対し、非附属書I締約国による透明性関係の能力向上を支援する活動を実施するよう促し;
  • 事務局に対し、2016年開催の関連する地域ワークショップの結果など、関係する進捗状況について、SBI 45において報告するよう要請する。

BURsの技術分析: 5月16日(月)、SBIは、SBI 43以後に発表されたBURsの技術分析に関するサマリー報告書に留意した。

パリ協定4.12条(NDCレジストリ)に規定する公開レジストリの運用及び利用のためのモダリティ及び手続きの作成: 本項目(FCCC/SBI/2016/INF.6)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーにおいて、「パリ協定4.12条に規定するNDCsのレジストリ」という暫定議題書項目の下で、審議された。

5月17日(火)のSBIプレナリーにおいて、タイはG-77/中国の立場で発言し、適応報告を事務局が維持する公開NDCレジストリに記録するよう求めた。韓国はEIGの立場で発言し、アクセス可能で簡単なNDCレジストリの創設を求め、マリはアフリカングループの立場で発言し、その目的、機能、特性を明らかにする必要があると強調した。

5月20日(金)のプレナリーにおいて、SBIは、この議題項目の新しい題目で合意した後、当該議題項目に関し、Gertraud Wollansky(オーストリア)及びMadeleine Diouf Sarr(セネガル)を共同進行役とする非公式協議を開催することで合意した。

非公式協議において、締約国は、レジストリのモダリティ及び手続き、並びに作業構成に関する意見交換を行い、数か国は、この項目を審議する単一のコンタクトグループを設置して、適応報告レジストリについて審議するとの提案を繰り返した。

レジストリに関し、多数のものは、透明性、ユーザーフレンドリーであること、一般のアクセス可能性に重きを置いた。一部のものは、適応及び緩和に関する情報を記載し、2部に分けられる可能性がある単一のレジストリを提案した。

結論書草案の議論では次のパラグラフに焦点があてられた: SBI 44における締約国の本項目に関する意見表明に留意する; レジストリに関する作業とSBI及びAPA議題項目の下での項目との結びつきを指摘する。長時間の議論ののち、締約国は、締約国の意見に留意して、SBI及びAPAの2件の議題項目のリンクに関するパラグラフを削除することで合意した。さらに締約国は、「事務局は適切な場合、臨時レジストリの改善を続ける」ことを認識し、文章の追加を決定した。

5月26日(木)のプレナリーにおいて、締約国は、結論書草案について、そのパラグラフ1の「及び第4条12項(and Article 4, paragraph 12)」を「第4条12項に言及する(referring to Article 4, paragraph 12,)」に置き換え、パラグラフ3の「レジストリ」の後に、「決定書1/CP.21、パラグラフ29に言及するとおり(as referred to in Decision 1/CP.21, paragraph 29)」を加えるという変更を口頭で行ったうえ、結論書草案で合意した。

SBI結論書: 口頭での修正を行った結論書(FCCC/SBI/2016/L.18)において、SBIは:

  • パリ協定4.12条(NDCレジストリ)に言及する決定書1/CP.21、パラグラフ29(NDCレジストリのモダリティ及び手続きの作成)に則り、審議を開始したことを指摘し;
  • NDCsの臨時公開レジストリを開発する方法に関し、事務局が提供する情報に留意し、さらに事務局が、適切な場合、この臨時レジストリの改善を続けていくことを認識し;
  • 決定書1/CP.21、パラグラフ29に言及する公開レジストリの運用と利用のためのモダリティ及び手続きに関する締約国間の意見交換に留意する、これにはこの議題項目での作業とSBI 44議題項目6(適応報告レジストリ)及びAPAでの作業との結びつきも含める;
  • SBI 45においてもこの問題の審議を継続することで合意する。

パリ協定7.12条(適応報告レジストリ)に言及する公開レジストリの運用及び利用のモダリティと手続きの開発: この議題項目は、初め、5月20日(金)、SBIプレナリーにおいて、締約国間の協議後にこの議題項目が追加され審議された。SBIは、Georg Børsting(ノルウェー)及びMadeleine Diouf Sarr(セネガル)を共同進行役とする非公式協議を開催することで合意した。

非公式協議において、締約国は、作業構成について議論し、この議題項目とNDCレジストリに関するSBI議題項目とを一つのコンタクトグループで議論するかどうかでは意見が分かれた。一部の締約国は、適応報告を報じるツールとしてのNDCsの役割を強調し、努力の重複に警告した。他のものは、2つの異なる議論の場を持つよう求め、SBIの議題項目は、「微妙なバランス(delicate balance)」のものだと強調し、適応報告を提出するツールは他にもあると指摘した。

共同進行役作成の結論書草案に関し、締約国は、次に関するパラグラフ草案を削除した: 事務局に対する情報ペーパー作成要請; 今後の審議に向けたインプットとなる文書提出の招請; 会期中ワークショップ開催。さらに締約国は、他のレジストリ、さらにはSBI及びAPAの議題項目とのリンクへの言及方法も議論した。

SBIプレナリーは、5月26日(木)、結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.19)において、SBIは、パリ協定7.12条(適応報告レジストリ)に言及する公開レジストリの審議開始を指摘し、SBI 44議題項目5との既存のまたは可能性あるリンク、臨時レジストリに関する事務局の継続作業、適応計画遂行に関し事務局が維持するウェブサイト、APAでの作業に関するものなど、この問題に関し、締約国がSBI 44において表明した意見に留意する。SBIは、SBI 45においてもこの問題の審議を継続することで合意する。

京都議定書メカニズム: CDMのモダリティ及び手続きのレビュー: この小項目は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、その後Karoliina Anttonen(フィンランド)及びTakalani Rambau(南アフリカ)を進行役とする非公式協議で議論された。

非公式協議において、ある締約国は、二重計算、クレジット期間の長さ、ホスト国の利益など、未解決の問題を結論書草案の文章に反映させるよう求めた。別な締約国は、合意のない問題の記載に反対し、そのような項目のリストで合意されたことは一度もないと指摘した。締約国は、そのようなリストが必要かどうか、レビューの進捗状況を把握するための事務局のマンデートの範囲、この項目をCMP 12において終了するかどうかについて、異なる意見を交わした。

意見が異なることから、共同進行役は、結論書に脚注をつけて締約国提出文書へのウェブリンクを示し、一部の締約国がモダリティ及び手続きの変更が必要だと感じる箇所がわかるように変更した。一部の締約国はウェブリンクの記載に難色を示し、他の者は提出文書というのは該当箇所の特定が難しすぎるとして懸念を表明したが、締約国は、この改定された結論書で合意した。

5月25日(水)、SBIは、結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.13)において、SBIは:

  • 事務局に対し、クリーン開発メカニズム理事会(EB)採択の既存の規則に基づき、現在のCDMのモダリティ及び手続きを補足する、認定国家当局の活動プログラム及び役割に関する原則レベルの定義づけそして/または必要条件を含める条項草案の作成を要請し;
  • (この小項目に関する締約国提出の文書に言及する脚注とともに)CDMのモダリティ及び手続きに対する変更追加の必要性に関する意見が分かれたままであると指摘し;
  • SBI 45において結論を出すべく、この議題小項目の審議を継続することで合意する。

共同実施(JI)指針のレビュー及び手順書草案の実施: この小項目(FCCC/SBI/2015/L.30, FCCC/SBI/2016/INF.7及びINF.8)は、初め、5月16日のSBIプレナリーで審議された。その後、Dimitar Nikov(フランス)及びGerald Lindo(ジャマイカ)を進行役とする非公式協議で議論された。

非公式協議において、事務局は、JIモダリティ及び手順の草案の実施及びJI指針に関するJI監督委員会(JISC)の提案書を提出した。(FCCC/SBI/2016/INF.7及び8) 締約国は、この議題項目はCMP 12において結論付けるべきことで合意すると同時に、パリ協定6条(協力的手法)の実施においては、JIの教訓を捕捉することが重要であると強調した。

締約国は、当初、JIモダリティ及び手順の草案に対するJISC推奨の改定案を総体的に支持すると表明したが、提示されたすべての改定案の受理には難色を示した。締約国は、CMP決定書草案を含める結論書草案で合意した。提案された決定書草案において、CMPは、JI指針に対するいかなる改定も採用することなくそのレビューを終了すると決定し、SBI結論書草案はJI指針のレビューに関係するこれまでの経験で得られたこと、及び学んだことを示すものだと指摘する。

SBIは、5月25日(水)、結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.8及びAdd.1)において、SBIは: JI指針のレビューで行った作業は結論書附属書に記録される通りであることで合意する; この問題に関する決定書草案(FCCC/SBI/2016/L.8/Add.1)をCMP 12での審議及び採択にかけることを推奨する; SBIはこの議題小項目の審議を終了したと指摘する。

CDM EBの決定に対する上訴の手配: この項目(FCCC/SBI/2012/33/Add.1)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、その後、Karoliina Anttonen(フィンランド)を進行役とする非公式協議で議論された。

締約国は、非公式協議においては、この項目で合意に達しえず、締約国がこの項目を再度審議する会合を特定する手続き上の結論書について検討した。締約国はどの会合で審議を再開するかで合意することができなかったことから、進行役のAnttonenは、手順規則書案の規則16項が適用され、この項目はSBI 45において審議されることになると述べた。

5月26日(木)のプレナリーにおいて、SBI議長のChruszczowは、手順規則書案の規則10(c)項及び16項に基づき、この項目は次回会合の暫定議題書に記載されることになると説明した。同議長は、次回会合での議論の土台としてどの文書を用いるかを透明にしておくのが有用であろうと述べた。同議長は、結論書草案を提案し、その後、締約国はこれを採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.23)において、SBIは、SBI 45において、特に上訴メカニズムの文書案(FCCC/SBI/2012/33/Add.1)に基づき、この項目の審議を続けることで合意する。

LDCsに関係する問題: この項目(FCCC/SBI/2016/7)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議された。その後、Mamadou Honadia(ブルキナファソ)を進行役とする非公式協議で議論された。

非公式協議において、締約国は、先進締約国及びそれを行う立場にある他の締約国に対し、資金のギャップを埋めるよう招請するパラグラフを含める結論書草案について議論した。「それを行う立場にある他の締約国(other parties in a position to do so)」という表現の削除を提案し、「資金のギャップ(finance gap)」という表現に躊躇した後、締約国は、このパラグラフを削除し、多少の改定を加えた合意可能な表現を挿入した、この表現では、後発開発途上国基金(LDCF)の資金不足を指摘し、締約国「及びその他のもの(and others)」に対し、「LDCFそして/またはGCF(the LDCF and/or the GCF)」への資金供与を行うよう促す。締約国はその他の改定を加えて、結論書草案で合意した。

5月25日(水)、議長Chruszczowは、結論書草案を提起した。SBIは、締約国及び他の者に対しLDCFへの資金供与を促すパラグラフに対し、「締約国及びその他のものに資金供与を行うよう(parties and others to contribute)」を「資金供与の追加(additional contributions)」に置き換え、「そして/またはGCF(and/or the GCF)」を「そして資金メカニズムの運用組織(and the operating entities of the Financial Mechanism)」に置き換えるという、中国による口頭での改定、それに続き米国がひねりを加えた改定を行ったうえで、この結論書を採択した。

東チモールは、LEGの5か年サイクルの作業計画は脆弱な諸国の国別適応行動計画、または国家適応行動計画(NAPAs)実施を助けるものだと発言し、LDCFへの資金供与の追加は有用であると指摘した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.6、口頭での改定を追加)において、SBIは特に:

  • LDCsでの適応を支援するLEGの作業の指針とすべくLEGが作成したビジョンを歓迎する、すなわち: LDCsにおける適応能力の構築、回復力の強化、気候変動に対する脆弱性の軽減における実証可能な成果の達成; GCF及び他の資金源から資金供与を受け、確固とした質の高いNAPsの策定及び、そのNAPsにおいて特定される優先的な適応ニーズの実施; LDCsにおける組織だてられた適応計画策定プロセスの存在;
  • 各国のNAPs策定及び実施プロセスに対するGCFからの資金供与にアクセスするため、LEGがGCF事務局と協力して技術的指針及び助言の提供を進めたことに感謝の意を表し;
  • 2016年5月17日現在、NAPAsの実施において、及びNAPsの策定及び実施プロセスにおいて、34のプロジェクト提案が出され、総額2億2600万米ドルの資金要請があり、技術的にはGEFをクリアし、LDCFからの資金を待っている状況であると指摘し;
  • 2016年3月31日現在、これらのパイプラインにある(待機中の)プロジェクトで利用できる資金は980万米ドルに過ぎないと指摘し;
  • LDCFにおける資金不足に懸念を表明し、LDCF及び資金メカニズムの運用機関に対し追加の資金を供与するよう促し、さらに緊急かつ喫緊の適応ニーズに対応し、中長期の適応計画策定及び実施の能力を構築し、NAPsの策定及び実施プロセスを成功裏に遂行する上では、NAPAsの全面的な実施が重要であると認識し;
  • 締約国及び他のものがCOP 21において、2015年12月5日の時点で総額2億5200万米ドルに上るLDCFへの資金供与を約束したことに対し感謝の意を表し、これらの締約国に対し、可能な限り早期にその約束を実際の資金供与に換えるよう奨励し;
  • 2016年5月19日現在で総額99億米ドルのGCFへの資金供与がなされたことに対し、締約国への感謝の意を表し;
  • NAPsの策定及び実施プロセスの遂行におけるLDCsの進捗状況に留意し;
  • 締約国及び関連の組織に対し、LEG作業計画の実施に対する支援を提供し続けるよう招請する。

国別適応計画: この項目(FCCC/SBI/2016/7)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、続いてMamadou Honadia(ブルキナファソ)及びBeth Lavender(カナダ)を進行役とする非公式協議で議論された。

非公式協議において結論書草案を審議した締約国は、NAP作成に対するGCFの資金提供の準備態勢を評価する上でのそれぞれの経験について、文書を提出するよう締約国に求めるパラグラフの草案について議論した。一部のものは2017年に適応委員会が行うことが予想される作業及び締約国の経験に関するインタビューの可能性から、文書の提出要請に反対した。他のものは、2016年に経験を集約することは、情報を提供するものであるとし、提出文書はインタビューより総合的なものであると指摘した。結局、締約国は、この問題に関しては「適応委員会及びLEGの作業に期待し(looks forward to the work of the Adaptation Committee and the LEG)」、「これらの組織の報告書においてそのような作業に関する情報が提供される(to inform on such work being provided in their reports)」(ことに期待する)という表現で意見が集約した。

5月26日(水)、SBIは結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.9)において、SBIは特に:

  • NAPs策定及び実施プロセスは、適応計画の策定プロセス及び行動の実施に対する締約国の効果的な参画を推進すると認識し;
  • さらにNAPs策定及び実施プロセスは、締約国による優先策、ニーズ、ギャップを特定するプロセスへの参画、及び適応行動の強化を助けると認識し;
  • NAPsの策定及び実施プロセスに対するGCF資金へのアクセスに関する情報提供について、LEG及び適応委員会が、それぞれのマンデートを満たすべく行ってきたこれまでの進捗状況に対し、謝意を持って留意し、
  • LEG及び適応委員会とGCFとのさらなる約束を待望し、それぞれの報告書においてその約束に関する情報を記載するよう要請し;
  • NAPsの策定及び実施プロセスに対するGCFからの融資にアクセスする上での各国の経験に関する適応委員会及びLEGの作業を待望し、さらにそのような作業に関する情報がそれぞれの報告書に記載されていることを期待し;
  • COP 22に対し、NAPsの策定及び実施プロセスでの経験及び供与された支援を含め、その進捗状況に関する情報を提出する期限を2017年10月4日に変更するよう推奨し;
  • NAPsの策定及び実施プロセスに関係する報告書作成の強化に関する審議を継続し、SBI 46においてもAPAの下で議論されるべき関連の活動を考慮に入れ、審議を継続することで合意したと指摘する。

適応基金の第3回レビュー: この項目は、5月16日(月)のSBIプレナリーで提起され、続いて、Gemma O’Reilly(アイルランド)及びRichard Muyungi(タンザニア)を共同進行役とする非公式協議で議論された。

プレナリーにおいて、AOSISは、適応基金の役割が重要であると強調し、タイはG-77/中国の立場で発言し、プレ2020年及びそれ以後のさらなる強化を促した。

非公式協議における議論では、レビューの目的や範囲、情報源など、委託条件(ToR)に関する草案が焦点となった。目的に関し、あるグループは、適応基金の資金源の適切性を確保するための表現を提案した。範囲に関し、締約国は次の項目について審議した: アクセスのモダリティで得られた学習事項に関する表現; 資金源の動員及び効果的な利用についての言及を含めるかどうか、及び制度面のリンクと関係性; 効果及び透明性の評価。情報源に関し、締約国は次を提案した: 適応に関する技術的検証プロセスへの言及; 関連のCMA決定書; WIM報告書。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.10)において、SBIは、COP 22/CMP 12に対し、適応基金の第3回レビューを附属書に記載するToRに則り行うとする添付の決定書草案について審議し、採択することを提案する。

適応基金の第3回レビューに関する附属書記載のToRは、当該基金及びその運用の効果、持続可能性、適切性を確保することが目的であり、当該レビューで参照すべき情報源のリストも提供するが、これに限定されるものではないと説明する。さらにToRは、当該レビューの範囲は、該当する日付までに実施された進捗状況、及び当該基金の運用及び実施で学習した事項を対象とすると規定し、さらに当該レビューでは特に次の項目に焦点を当てると規定する:

  • 持続可能、予測可能、適切な資金源の提供、及び各国が主導し、資格を有する開発途上締約国のニーズ、見解、優先性に基づく具体的な適応プロジェクト及びプログラムに対し資金を供与する資金源の動員;
  • 適応基金へのアクセスに関するモダリティの適用、プロジェクト承認手順、承認された適応プロジェクトの成果と影響、気候資金に直接アクセスするための準備体制プログラム、及び地域プロジェクトのためのパイロットプログラムで得られた学習事項;
  • 適応基金と他の適応向け資金供与制度との間の計画性、プロジェクトの一貫性及び補足性;
  • 適応基金のための制度アレンジ。

技術メカニズムの定期的評価の範囲及びモダリティ: この項目は、初め5月16日(月)のプレナリーで審議され、Kishan Kumarsingh(トリニダードトバゴ)及びGabriela Fischerova(スロバキア)を進行役とする非公式協議に回された。

非公式協議において、締約国は、定期的評価に対するインプットの情報源に関する結論書草案について、意見交換を行った。ある締約国は、行動及び支援の透明性に関する作業を定期的レビューに対するインプットの情報源とすることに懸念を表明し、これは決定書1/CP.21(パリ会議の成果)で特定されていないと指摘した。ある締約国は、インプットの情報源は、可能な限り多くのものを含めるべきだと指摘した。

タイミングに関し、ある締約国グループは、この項目をCOP 22で終了させることが重要であると強調した。この項目をCOP 22での議題項目に保持するかどうか、及び提出文書のタイミングについては、意見が分かれた。

SBIは、5月26日(水)のプレナリーで結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.5)において、SBIは、レビューの範囲として技術メカニズムの効果、及びパリ協定10条(技術開発及び移転)の観点から見た支援の適切性に焦点を当てることで合意する。定期的評価のための範囲及びモダリティを精緻化するにあたっては、次の項目からのインプットを取り入れることになる: CTCNのレビュー; グローバル・ストックテイクのモダリティの策定; 行動及び支援の透明性に関する作業; 技術枠組の考察。SBIは、締約国及びオブザーバー組織に対し、定期的評価のための範囲及びモダリティに関するそれぞれの意見を、2017年1月25日までに提出するよう招請する。

キャパシティビルディング: 条約の下でのキャパシティビルディング枠組実施に関する第3回レビュー: この項目(FCCC/SBI/2016/3, 4及びMISC.1; FCCC/TP/2016/1)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、続いてCrispin d’Auvergne(セントルシア)及びPaul Watkinson(フランス)を共同進行役とする非公式協議で議論された。この項目の議論は、他のキャパシティビルディングに関する小項目と連続で審議された。

5月26日(金)、キャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラムが開催された、概要については次を参照: http://enb.iisd.org/vol12/enb12671e.html

非公式協議において、事務局は、影響分析、情報交換、結果に対する国内制度の影響、及び他のUNFCCC組織の活動に関し、締約国が提起した質問に答えた。締約国は、第5回ダーバンフォーラムの成果、ならびにキャパシティビルディング枠組第3回総合レビューに関するテクニカルペーパー(FCCC/TP/2016/1)から結論書草案を引き出す方法に関し、意見交換を行った。各国は次の項目を強調した: 国家主導の手法及び国家の所有権: 影響の評価; 組織的なキャパシティビルディング; 国内の調整; 資金アクセスのためのキャパシティビルディング。さらに締約国は、実施支援において先住民、女性及び民間部門が果たす役割を強調した。

5月26日(木)、SBIは、結論書及び決定書草案を採択した。

SBI結論書: 条約の下でのキャパシティビルディング枠組の第3回総合レビューに関する結論書(FCCC/SBI/2016/L.21)において、SBIは、この問題の審議を開始したが結論には至らなかったと指摘し、COP 22での審議にかける決定書草案を提起するとの観点から、SBI 45において、結論書の附属書である決定書草案に基づき審議を続けることで合意する。

京都議定書の下でのキャパシティビルディング枠組実施の第3回レビュー

5月26日(木)、SBIは結論書を採択した。

SBI結論書: 京都議定書の下でのキャパシティビルディング枠組の第3回総合レビューに関する結論書(FCCC/SBI/2016/L.20)において、SBIは、SBI 45でのこの議題小項目の審議継続を決定する。

キャパシティビルディングに関するパリ委員会のToR: 非公式協議において、締約国は、ToRに関する事前準備されたリストについて意見を共有した、これには次の項目が含まれる: 期間; 性別問題; 議長職; クロスメンバーの規則; オブザーバーの参加; 年次作業計画; 手続き規則; 決定。締約国は、定足数、透明性、条約内外の組織及び制度との協力の追加を提案した。

締約国は、キャパシティ・ビルディングのためのパリ委員会(PCCB)に対し次の要請を提案した: ダーバン・フォーラムの成果を考慮に入れる; 他のUNFCCC組織及びUNFCCC以外の組織とキャパシティビルディング活動で協力する; 報告及び評価を行う標準化されたツールを用意する。締約国は特にPCCBの構成及び意思決定に関するパラグラフについて意見が分かれ、一部のものは満場一致原則を支持した。

5月26日(木)、SBIは結論書を採択した:

SBI結論書: PCCB ToRに関する結論書(FCCC/SBI/2016/L.24)において、SBIは:

  • PCCB ToRに関する決定書草案(FCCC/SBI/2016/L.24/Add.1)を、COP 22の審議にかけるよう推奨する;
  • 締約国に対し、SBI 46においてPCCBの作業を開始するとの観点から、ToR草案に概要を示すとおり、PCCBの候補者について検討するよう招請する;
  • 締約国に対し、2017年のPCCBの年次注目分野またはテーマに関するそれぞれの意見を2016年8月29日までに提出し、SBI 45での審議にかけ、この問題に関する提案を行い、COP 22での審議にかけるよう招請する。

条約第6条: この項目(FCCC/SBI/2016/5及び6)は、初め5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、続いてAlbert Altarejos Magalang(フィリピン)を進行役とする非公式協議で議論された。プレナリーにおいて、YOUNGOsは、NDCsの実現を確保するため、一般の参加に焦点を当てることを強調した。

第4回ACEダイアログは、5月18日(水)(http://enb.iisd.org/vol12/enb12669e.html)及び5月19日(木)(http://enb.iisd.org/vol12/enb12670e.html)に開催された。

非公式協議では、条約第6条に関するドーハ作業計画の実施に関し、これまでの進捗状況の中間レビューに焦点を当て、ドーハ作業計画を実施する中で経験したギャップ及び障壁について意見を共有し、さらに関係するニーズ、推奨、次の段階の提案について、意見交換を行った。締約国はベストプラクティス、学習事項に関し意見交換を行い、ACEダイアログでの進捗状況を指摘、一部のものはさらに多くのことを行う必要があると強調した。

SBIプレナリーは、5月26日(木)、結論書を採択した。ドミニカ共和国は、ACEダイアログの開始を歓迎し、第6条国内窓口の第1回会議を2016年5月27日に開催すると発表した。同代表は、全ての締約国に対し、それぞれの窓口となるものの名称を事務局に通知するよう招請し、決定書草案は「第6条は、今後長年にわたり我々とともにあるとの明確なサイン」を出すものだと述べた。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.15)において、SBIは特に:

  • 会合期間中の年次ACEダイアログは、ドイツ・ボンでのSBI会合に合わせての開催を続けると結論し、さらにACEダイアログの会合では、第6条の6つの要素の統合に関するグッドプラクティス及び学習事項に焦点を当てるべきだと結論づける;
  • 締約国、オブザーバー、他の利害関係者に対し、第4回ACEダイアログの構成に関するフィードバック、及び第5回ダイアログでの議題に関する意見を、2017年1月25日までに提出するよう招請し;
  • SBIは、ドーハ作業計画の実施における進捗状況について中間レビューを終了し、その効果を高めることに関する決定書草案(FCCC/SBI/2016/L.15/Add.1)を、COP 22での審議用に提案すると指摘する。

対応措置: このSBI/SBSTA合同の項目とその小項目(FCCC/TP/2016/3及びFCCC/TP/2016/4)は、5月16日(月)のSBIプレナリー及びSBSTAプレナリーにおいて提起された。その後、SBI議長及びSBSTA議長の指導の下、Andrei Marcu(パナマ)及びNatalya Kushko(ウクライナ)の支援を受け、SBI/SBSTA合同コンタクトグループで議論された。

議論の中心となったのは次の項目: 協力を強化できる分野; 対応措置に関するフォーラム改善のための作業計画の焦点、活動、要素、これには実現可能なもの、タイムラインを含める; 将来の特別技術専門家グループのToR; 専門家ワークショップの可能性及びアレンジ。

フォーラム及び作業計画の改善: 5月26日(木)、SBIは結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SB/2016/L.2/Rev.1)において、SBIは特に:

  • 開発途上国に対し、対応措置実施の影響に関する評価、及びそれぞれの経済多角化イニシアティブの評価において、テクニカルペーパーを指針として利用するよう推奨し;
  • 締約国は、作業計画に関する業務において、これらテクニカルペーパーに記載する情報を考慮に入れると指摘し;
  • 改善されたフォーラムの下での作業を強化するワークショップについて、これを開催するとのGulf Cooperation Council(湾岸協力理事会)諸国の申し出を歓迎し;
  • COP 22における経済多様化及び持続可能な発展に関するハイレベルイベント開催について、一部の締約国が関心を寄せていると指摘し;
  • 附属書Iに記載する対応措置の実施の影響に関する作業計画を、SBI議長及びSBSTA議長の指導の下、実施することで合意し;
  • 特別技術専門家グループは、附属書IIに記載するToRに則り、機能するものとすることで合意し;
  • 事務局に対し、SBI議長及びSBSTA議長の指導を受け、特別技術専門家グループの活動も含め、作業計画の実施を支援するよう要請する。

結論書の附属書Iには、改善されたフォーラムの作業計画(2016年6月から2018年11月)の作業計画を記載し、附属書IIには、特別技術専門家グループのToRsを記載する。

パリ協定の下でのモダリティ、作業計画、機能: 5月26日(木)、SBIは結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SB/2016/L.3)において、SBIは特に、締約国及びオブザーバー組織に対し、対応措置実施の影響に関するフォーラムのパリ協定の下でのモダリティ、作業計画、機能に関するそれぞれの意見を、2016年9月12日までに提出し、次回会合でこれらを検討するよう招請する。

議定書3条14項(対応措置の実施)に関係する問題、及び決定書 1/CP.10(適応と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画)の実施の進捗状況: 5月26日(木)、議長のChruszczowは、この項目の審議を終了させることはできなかったと述べた。同議長は、SBI 45の議題にこれらの項目が含まれることを会議報告書に記載するよう要請し、締約国もこれに同意した。

長期世界目標の次回レビューの範囲: この項目は、5月16日(月)のSBIプレナリー及びSBSTAプレナリーで審議され、Leon Charles(グレナダ)及びGertraud Wollansky(オーストリア)を共同議長とするSBI/SBSTA合同のコンタクトグループ及び非公式協議で議論された。

大半の締約国は、作業の重複を避けるには、グローバル・ストックテイクのモダリティで合意された後、次回のレビューの範囲について議論すべきことで合意した。締約国は、2018年の促進ダイアログに関係し、共同議長が作成した結論書草案に追加する分を提案した。一部の締約国は、促進ダイアログへの言及に懸念を示し、これについてSB 46までは行われる作業がないと指摘した。

一部のものは、COP 22において、レビューに関するワークショップを検討する意思があると表明したが、他のものは、そのタイミング及び有用性について懸念を表明した。SB 46において、補助機関は、次回定期レビューの範囲を「検討する(consider)」のか、「検討し改良する(consider and refine)」のか、それとも「検討し修正する(consider and modify)」のかについて、若干の討論が行われた。結局、締約国は、「次回レビューの範囲を検討し(consider the scope of the next review)」、「それを改良する(refine it)」ことで合意した。さらに締約国は、次回レビューの範囲をあまり確定しないことに関する会合期間中ワークショップ開催の可能性についても言及することで合意した。

5月26日、SBIは結論書草案を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SB/2016/L.1)において、SBIは、次回定期レビューの範囲について、2018年までにCOPの審議に向け提案を出すとの観点から、検討を行うというCOP 21からのマンデートを想起する。締約国は、APAの下でのグローバル・ストックテイク、2018年促進ダイアログ、及び技術検証プロセスに関連する作業を指摘し、次回定期レビューの範囲については、2013-2015年レビューにおける関連の経験を考慮に入れ、SB 46において検討し、これを改良することで合意した。

SBIは、この問題に関する会合期間中ワークショップは有用である可能性があり、SB46で審議される可能性があると指摘する。

性別問題: この項目(FCCC/TP/2016/2)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、その後、Martin Hession(EU)及びWinfred Lichuma(ケニア)を共同進行役とする非公式協議で議論された。

性別対応政策に関する2つのワークショップは、5月18日(水)(http://enb.iisd.org/vol12/enb12669e.html)及び5月19日(木)(http://enb.iisd.org/vol12/enb12670e.html)に開催された。

非公式協議において、締約国は、結論書草案の文書に対する期待感について議論した。事務局は、性別問題への配慮を取り入れるための指針及びツールに関するテクニカルペーパー(FCCC/TP/2016/2)の概要について説明し、性別対応型気候政策に関するSBI 44ワークショップの成果を取りまとめた。多数の締約国及びグループは、性別に関するリマ作業計画について、COP 22で延長することを提案した。締約国は、作業計画を設立したこれまでの決定書も含め、リマ作業計画に則り、SBI 42及び44の性別問題ワークショップの成果を踏まえ、さらにテクニカルペーパーも考慮し、構築することを提案した。

一部の国は、リマ作業計画向けの資金が不十分との記述を削除するよう提案したが、他のものは反対した。ある国は、「国情により(subject to national circumstances)」との表現を追加し、SBI 45におけるCOP 22用の決定書草案作成への言及、さらには結論書草案の附属書に記載する締約国からのインプットに関する言及を削除するよう提案した。一部のものは、国情への言及保持を提案、さらには附属書に言及することなく決定書草案に言及することを妥協案として提案した。締約国は、これらの残された問題で合意することができなかった。SBIプレナリーは、5月26日(木)、結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.16)において、SBIは特に:

  • 性別対応気候政策に関するSBI 44での会合期間中ワークショップの成果、及び事務局作成のテクニカルペーパーを歓迎し;
  • 性別に関する2年間のリマ作業計画、及びその支援において受理した寄付に謝意を表し;
  • 当該作業計画の継続及び強化を支援すると表明し、締約国及びオブザーバーに対し、当該作業計画の継続及び強化において可能性ある要素及び指針原則に関し、それぞれの見解を2016年8月29日までに提出するよう招請し;
  • 締約国及びオブザーバーに対し、性別のバランス達成目標及び性別対応型気候政策の目標達成に向けた進捗状況に関する情報を提供するよう招請し;
  • COP 22での審議にかける決定書草案を作成するとの観点において、SBI 45においても、この問題の審議を継続することで合意する。

政府間会合: 本項目(FCCC/SBI/2016/2)は、初め、5月16日(月)のSBIプレナリーで審議され、その後、SBI議長のChruszczowを議長とするコンタクトグループで議論した。

コンタクトグループにおいて、参加者は、COP 22/CMP 12の組織構造、政府間プロセスの組織構造について、オブザーバーの役割も含め、議論した。多数のものは、オブザーバーの参画改善の議論を支持した。BINGOsは、認識された既定のインターフェースを提案、CANは、文書提出の機会を増やすよう提案した。モロッコは次期COP/CMP議長の立場で発言し、この問題に引続き参画すると保証した。今後の進め方に関し、EUは、会合期間中ワークショップ、文書提出、またはベストプラクティスの検証を提案した。

ある諸国グループは、COP 22において、決定書1/CP.21(パリ会議成果)のパラグラフ135(地域社会及び先住民の知識及び努力の強化に関する)に言及する緩和及び適応のベストプラクティス共有を目指すプラットフォームを立ち上げると記載するよう求めた。

締約国は、利益相反問題で意見が分かれた、特に非国家行動者の参加と条約の目的とでは利益相反が起きるリスクを明らかにし、これを回避するための手順に関し、SBI 45に対する報告書を作成するよう事務局に要請するとの提案について、意見が異なった。その結果、締約国は、SBI 44の報告書の中で、これらの議論に留意するとの文章を入れることで合意し、さらに締約国及びオブザーバーに対し、SBI 46で開催される予定の非国家利害関係者の参画のさらなる強化の機会に関する会合期間内ワークショップの利点を生かすよう招請することで合意した。

5月26日(木)、プレナリーにおいて、SBI議長のChruszczowは、結論書草案のパラグラフ18に言及する会合期間中ワークショップは締約国及びオブザーバー組織に対し、それぞれが選択するいかなる題目に関しても互いの意見を交換する機会を提供すると指摘し、この見解をSBI 44の報告書に記載すると指摘した。その後、SBIは、結論書を採択した。

エクアドルはLMDCsの立場で発言し、結論書のパラグラフ23(オブザーバー組織加入の既存の手順及び実施方法に関し事務局が提供する情報に留意する)を削除し、利益相反を最小限に抑えるためのモダリティを明確にするようにと求めるパラグラフを挿入するよう求めた。議長Chruszczowは、SBIは既に結論書を採択しており、今回の会合においては、投票なしで、この問題の再検討を行えないと指摘した。

LMDCsは、エジプトの支持を得て、エクアドルは採択の前に求めたことを確認した。LMDCsを支持する多数の諸国は、利益相反に対応することの重要性に留意するよう求めた。

EUは、この問題では意見の一致がないと述べ、非国家行動者の利益相反は、SBI 46の会合期間中ワークショップで議論できると指摘した。米国は、NGOs及び非国家行動者の参加を制約する表現は支持できないと述べた。オーストラリアは、利益相反が何を意味しているかは明らかになっていないと強調し、その挿入に反対した。締約国による非公式協議ののち、議長Chruszczowは、締約国の表明した意見は今会合の議事録に全て反映されると述べた。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.14)において、SBIは特に:

  • マラケシュでのCOP22/CMP 12のアレンジを行う際は、開放性、透明性、参加性の原則が重要であると強調し;
  • COP 22においては、気候資金に関する第2回隔年ハイレベル閣僚ダイアログ、気候行動に関するハイレベルイベント、及び促進ダイアログという3つの義務化されたイベントを開催することが重要であると強調し;
  • 締約国に対し、緊急問題として、COP 23/CMP 13及びCOP 24/CMP 14の主催を申し出るよう招請し;
  • SBI 48において、会合の頻度及び組織構成シナリオのさらなる審議を行うことで合意し;
  • 実質的な事項の審議においては、オブザーバー組織からの貢献が貴重であると再確認し、UNFCCCプロセスがパリ協定の実施及び運用開始に向かい動く中、オブザーバー組織の効果的な参画を一層強化する必要があると認識し;
  • 非締約国利害関係者の有効な参画を一層強化する機会に関し、SBI 46において、会合期間中ワークショップを開催し、決定書1/CP.21(パリ会議の成果)の規定の実施を強化すると合意し;
  • 事務局に対し、このワークショップに関する報告書を作成し、SBI 46の審議にかけるよう要請し;
  • 締約国、オブザーバー組織、及び関心のある国連組織に対し、非締約国利害関係者の有効参画を一層強化する機会について、それぞれの意見を、2017年2月17日までに提出し、決定書1/CP.21((パリ会議の成果)の規定の実施を強化するよう招請し;
  • 事務局に対し、これら提出文書に記載されたそれぞれの意見について、サマリー報告書を2017年4月30日までに作成するよう要請し;
  • 緩和及び適応に関するベストプラクティスの経験について、全体的かつ統合的な形で情報を交換し、共有するためのプラットフォーム設置に関する事務局の作業に留意し、SBI 46までにそのような作業の実施に関する情報を追加するよう求める;
  • オブザーバー組織の加入に関する現行の手順及び実施方法に関する事務局提供の情報に留意する。

事務管理上、資金上、制度上の問題: 資金及び予算の問題: この小項目(FCCC/SBI/2016/INF.3及びINF.5)は、初め、5月17日(火)のSBIプレナリーで審議された。SBIは、SBI議長のChruszczowが関心のある締約国と協議し、結論書草案を作成することで合意した。5月26日(木)のプレナリーで、議長のChruszczowは、この問題はSBI 46での継続審議が予想されるとし、事務局はSBI 45での審議に向けノートを作成すると説明した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.17)において、SBIは特に:

  • 2016年4月29日時点における貢献(寄付額)の状況に関する情報に留意し、明示した貢献分及び料金を支払い済みの締約国に対し、謝意を表明し、1996-2005年分の貢献分未払いの締約国に対し、可能な限り早期に支払うよう促す;
  • 自主的に貢献を行った締約国に謝意を表する;
  • 事務局長に対し、COP 22及びCMP 12の審議に回す決定書草案を作成するとの観点から、2016-2017年の2か年における貢献分明示額の改定に関する情報ノートを作成し、SBI 45の審議にかけるよう要請する;
  • 国連システム内の組織構造の概要に関係する情報に留意する、これらの情報は締約国が予算プロセスの効率化を図り、透明性を高める際に情報を提供する可能性がある(FCCC/SBI/2016/INF.5)、さらに事務局に対し、SBI 45向けに、この文書のさらなる精緻化を進める情報文書を作成するよう要請する;
  • UNFCCC事務局長の立場を、これまでの事務総長補佐(Assistant Secretary-General)から事務総長次官(Under-Secretary-General)に昇進させ、D2の地位の一つを事務局長補佐のレベルに昇進させ、事務局長次官の役割を果たすことにするという国連事務総長の決定に留意し;
  • これらの問題に関し、COP 22の審議にかける決定書草案(FCCC/SBI/2016/L.17/Add.1)、及びCMP 12の審議にかける決定書草案(FCCC/SBI/2016/L.17/Add.2)を提案する。

事務局のレビュー継続: この小項目は、初め、5月17日(火)のSBIプレナリーで審議された。SBIは、SBI 46においてこの小項目を審議することで合意した。

条約の下で構成された組織の一員である個人の特権及び免責: この小項目は、初め、5月17日(火)のSBIプレナリーで審議され、その後、Peter Horne(オーストラリア)を進行役とする非公式協議で議論された。

非公式協議において、締約国は条約アレンジ草案の承認に関し締約国間では準備ができていないと指摘し、この問題の審議をCOP 22及びCMP 12で終了させるとの提案を行うことで合意した。

SBIプレナリーは、5月25日(水)、結論書を採択した。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.4)において、SBIは、この問題に関する締約国の見解に留意し、COPはこの問題の審議をCOP 22で終了させることを提案する。

京都議定書の下で構成された組織の一員である個人の特権及び免責: この小項目は、初め、5月17日(火)のSBIプレナリーで審議され、その後、Horneが進行役を務める非公式協議で議論された。

SBI結論書: 結論書(FCCC/SBI/2016/L.3)において、SBIは、この問題に関する締約国の見解に留意し、CMPがCMP 12においてこの問題の審議を終了させることを提案する。

閉会プレナリー: SBI閉会プレナリーは、5月26日(木)に開催された。

タイはG-77/中国の立場で発言し、特に: ICAは促進的なものであるべきで、透明性のためにも開発途上国におけるキャパシティビルディングのニーズを明確にさせるものであるべきだと述べ; 先進国に対しLEGの支援を求め; 対応措置のマイナスの影響から生じる開発途上国のニーズに取り組むための行動を明らかにする必要があると強調した。

EIGの立場で発言した韓国、EU、アンブレラ・グループは、FSVを歓迎すると同時に、PCCBのためのToRを歓迎した。

EUは、市場メカニズムの将来の利用に関する明確な決定を指摘し、議論を終了させる用意があることを示した。同代表は、アンブレラ・グループとともに、適応報告レジストリに関する当初の意見交換、及びCOP 22議長職の下でのWIMレビューに関する非公式協議での意見交換を認識した。

AOSISは、WIMレビュー、適応基金の第3回レビュー、及びCDMのモダリティ手順の「再設計(redesign)」またはレビューを優先させるよう求めた。マリはアフリカングループの立場で発言し、WIMを強調し、その作業計画の立ち上げの進展が遅れていることへの懸念を表明した。

LDCsは、残された次の追加議題項目の議論も終了させる必要があると強調した: 技術メカニズムの定期的な評価; 条約の下での長期世界目標の次回定期レビューの範囲; パリ協定4.12条及び7.12条に規定する公開レジストリのモダリティ及び手順の開発。

コスタリカはAILACの立場で発言し、3つの補助機関同士の密接なつながりを強調した。

RINGOsは、研究は意思決定及び実施の根拠となると強調した。

女性及び性別問題のグループ(Woman and Gender)は、最も影響を受けやすい人々の権利を保護するよう求め、組織的な分析を行い、性別問題に敏感なデータを設置するよう求めた。

先住民グループは、適応行動は利用可能な最善の科学、伝統知識、先住民の知識、さらには地方の知識システムに基づき、これらを指針とすべきであると強調した。

YOUNGOsは、将来世代は集団として課題に直面し、責任を負うことになると指摘し、自分たちのイニシアティブをより多く取り入れるよう求めた。CANは、化石燃料企業など、条約の目的に反して運営される利害関係者からこのプロセスを守ることを確保するための解決策を求めた。CJN!は、政府間アレンジに関し「結論が出せなかった(failed conclusions)」ことへの一部の締約国の失望感に共感sすると述べた。

議長Chruszczowは、パリ・マンデートで規定された挑戦を受けて立ったとして、締約国に感謝し、SBIが報告書(FCCC/SBI/2016/L.7)を採択した後、午後7時31分、SBI 44を閉会した。

科学的技術的助言のための補助機関

SBSTA議長Carlos Fuller(ベリーズ)は、5月16日(月)、会合を開会した。

組織上の問題: 締約国は、IPCCの評価報告及び世界の状況把握に関する議題小項目を、「パリ協定14条に規定する世界の状況把握に、IPCCの評価報告が情報を提供できる方法に関する助言(Advice on how the assessment of the IPCC can inform the global stocktaking referred to in Article 14 of the Paris Agreement)」と改定した上で、議題書(FCCC/SBSTA/2016/1)を採択し、作業構成書で合意した。

ナイロビ作業計画: この項目(FCCC/SBSTA/2016/INF.1及びINF.4)は、初め、5月16日のSBSTAプレナリーで審議され、その後Beth Lavender(カナダ)及びJulio Cordano(チリ)を進行役とする非公式協議で議論された。

多数の締約国は、NWPの下での進捗状況に対する満足感を表明、非公式協議では、当該計画の下での追加の活動について推敲する方法に焦点を当てた。締約国は、それぞれが提案する活動の「なぜ、誰が、何を」という要素に関する詳細な提案書を提出、その後、NWPの下で将来行われるはずの活動の概要を示す結論書草案の中にこれらの要素を組み込んだ。

5月26日(木)の閉会プレナリーにおいて、SBSTAは結論書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.9)において、SBSTAは特に:

  • 適応委員会、LEG、他の関連組織に対し、決定書1/CP.21の下の新しいプロセスを支援する目的で、NWPの下で行われる活動について提案を出すことを検討するよう招請し;
  • 事務局に対し、SBSTA議長の指導の下、NWPの下で行われる予定の適応委員会及びLEG推奨の活動について、これらを実施するよう要請し;
  • NWPパートナー組織及びIPCCを含める他の関連組織に対し、国レベルそして/または地方レベル、もしくは特定部門における適応及び回復力の指標に関する情報を、2017年9月20日までに事務局に提出するよう招請し;
  • 事務局に対し、国別適応目標及び指標に関する意見交換を行うため、さらにこれらの目標及び指標が持続可能な開発、さらには2015-2030年の防災のための仙台枠組の概念における防災の目標及び指標とどのように関係するのか意見交換を行うため、適応委員会が2018年に開催する会議に情報を提供すべく、これらの提出文書を活用するよう要請し;
  • 適応委員会及びLEGに対し、適応の効果及び適切性をレビューするそれぞれの作業に情報を得るため、提出文書の考察を行うよう招請し;
  • 事務局に対し、国レベル、小国内レベルでの適応の知識のギャップを埋めるために貢献できるよう、特に政策決定者、IPCCを含める研究者及び科学者の社会、実践者、金融機関の相互協力を促進するよう要請する。

健康に関し、SBSTAは:

  • 締約国、NWPパ^トナー組織、その他の関連組織に対し、次の項目に関する情報を2016年8月29日までに提出するよう招請する: 人間の健康に対する気候の影響についての最近の研究; 熱帯病など、新しいもしくは新しく出てきつつある健康問題、及びこれらの問題が社会や経済の構造に与える影響; 気候変動が人間の健康や労働現場の生産性に与える影響、これは職業面の健康、安全性、社会の保護に影響する; に与える;
  • 事務局に対し、SBSTA 45において、開催される第10回窓口フォーラムに情報を提供するため、これらの提出文書を活用するよう要請し;
  • 事務局に対し、健康及び適応をテーマとする第10回窓口フォーラムを開催し、(2017年5月)のSBSTA 46での審議にかける統合報告書を作成するよう要請し;

人間の居住に関し、SBSTAは:

  • 事務局に対し、NWPのマンデートの範囲内で人間の居住の分野におけるイニシアティブをまとめた文書を作成し、SBSTA 46での審議にかけるよう要請し;
  • 締約国、NWPパートナー組織、その他の関連組織に対し、人間の居住及び適応の分野におけるそれぞれの最近の努力に基づき、グッドプラクティス、学習事項、利用可能なツール及び手法といった題目に関する情報を、2017年9月20日までに提出するよう招請し;
  • 事務局に対し、SBSTA 47に合わせ開催される予定の第11回窓口フォーラムに情報を提供できるような提出文書を活用するよう要請し;
  • 事務局に対し、人間の居住及び適応のテーマを中心とする第11回窓口フォーラムの開催を計画し、これに地方自治体政府の講演者を含めるよう要請し;
  • 事務局に対し、第11回窓口フォーラムで議論されたテーマ及び提出文書の統合報告書を作成し、SBSTA 48での審議にかけるよう要請する。

生態系及び水資源に関し、SBSTAは:

  • 締約国、NWPパートナー組織、その他の関連組織に対し、次に関する情報を2017年1月25日までに提出するよう招請し: 生態系及び生態系と関係する水資源などの分野における適応計画策定プロセスに関係する学習事項及びグッドプラクティス; 生態系に根差した適応の実施のモニタリング及び評価における学習事項及びグッドプラクティス; 生態系ベースの適応が可能にする回復力の緩和及び排出量の削減が緩和及び適応に与える利益を評価するためのツール;
  • 事務局に対し、関連のNWPパートナー組織と協力し、これらの提出文書の統合報告書を作成し、SBSTA 46での審議にかけるよう要請し;

経済多角化に関し、SBSTAは:

  • 締約国及びNWPパートナー組織、その他の関連組織に対し、適応の行動及び計画で、経済多角化を進めることができ、緩和の共同便益も有するものに関係する学習事項及びグッドプラクティス; に関する情報を2017年9月20日までに提出するよう招請し;
  • 事務局に対し、これらの提出文書を全てとりまとめて、その他の文書とし、SBSTA 47での審議にかけるよう要請する。

さらにSBSTAは、次の行動などをSBSTA議長の指導の下、事務局の支援を得て推敲することになると結論する:

  • 既存のNWPパートナー組織の参画を強化し、新しいパートナーシップを形成する、パートナーシップには次のものが含まれる: 地方自治体政府や民間部門、科学的組織、学会、先住民及び伝統的な地域コミュニティーを代表する組織、宗教及び神霊団体、性別の構成組織、青年団体、マスコミ;
  • 最終利用者のための知識へのアクセスを改善し、その利用可能性を高める、これには適応知識ポータルを経由するものも含める、たとえば適応知識ポータルと他の知識プラットフォームとを結びつける;
  • NWPの下での会議、ワークショップ、その他の関連活動における、UNFCCCの国別窓口の参加を強化し、NWPの下で得られた知識アウトプットを各国に普及する上でのこれら窓口の役割を強化する、これには適応知識ポータルを経由するものも含める;
  • 知識の共有及び訓練活動を行うための地域センター及びネットワークを確保し、地域、国、小国家レベルでの成果の普及を図る;
  • 適応委員会及びLEGと協力し、NAPsを策定し実施するプロセスについて、NWPパートナー組織、その他の関連組織と連絡をとる;
  • 性別問題への配慮を改善し、適応計画作成プロセスのツール及び手法の中に、伝統知識、先住民の知識、地方の知識システムを含める。

パリ協定の下での技術枠組: この項目は、初め、5月16日(月)のSBSTAプレナリーで審議され、その後Gabriela Fischerova(スロバキア)及びKishan Kumarsingh(トリニダードトバゴ)を進行役とする非公式協議で議論した。

非公式協議において、締約国は、この枠組は技術メカニズムに指針を与える戦略文書であるべきだとの考えを中心に意見を集約した。締約国数か国は、枠組の目的を推敲するよう提案したが、他の者は、それはすでに協定の中で紹介されていると発言した。結論書草案において、締約国は、技術枠組の内容、特性、特徴、中身に関する当初の見解のとりまとめ文書を添付した、この中には、枠組の目的、役割、主要テーマが含まれた。先進国2か国は、結論書草案の中に「気候関連(climate-relevant)」技術と特定していることを強調した。

あるグループは、この附属書をCOP 22での議論のたたき台として用いるよう提案した。一部の締約国は、これでは提出文書が不要になると述べたが、他のものは、両方を用いることが有用ではないかと指摘した。さらに締約国は、COP 22はどのように進めるべきか、たとえば締約国の意見のとりまとめなど、どのような補足資料の作成を事務局に要請することが役立つかについて意見を交わした。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.8)において、SBSTAは特に:

  • 事務局に対し、パリ協定の実施に関連する条約内外の気候技術の開発と移転の活動及びイニシアティブをマッピングする情報ノートを作成するよう要請する、これにはCOP 7で採択され、COP 13で強化されたとおり、条約4.5条(環境的に十全な技術及びノウハウの先進締約国から他の締約国への移転、またはこれらへのアクセス)の実施を強化するための意味のある、効果的な行動枠組の実施状況に関するものも含める;
  • 締約国に対し、技術枠組の推敲に関するそれぞれの意見を2016年9月15日までに提出するよう招請する、これには内容、特性、特徴、目的、テーマを含めるものとし、事務局は締約国提出文書を取りまとめ、SBSTA 45の審議にかけるものとする;
  • この問題の審議をSBSTA 45においても継続することで合意する。

農業: この項目(FCCC/SBSTA/2015/INF.6及びINF.7; FCCC/SBSTA/2016/MISC.1)は、初め、5月16日(月)のSBSTAプレナリーで審議され、その後Heikki Granholm(フィンランド)及びEmmanuel Dumisani Dlamini(スワジランド)を進行役とする非公式協議で議論した。

農業システム、先住民の知識、規模による違いに配慮し、さらには共同便益の可能性、緩急開発での経験共有、社会経済、環境、性別問題の側面も含める現場の活動も考慮に入れ、適応措置を明らかにしていくためのワークショップは、5月20日(金)に開催された。そのハイライトは右記を参照; http://enb.iisd.org/vol12/enb12671e.html

2回目のワークショップは、農業-生態系地帯と牧草地や耕作地の実施方法やシステムなどの農場システムの違いを考慮に入れ、持続可能な形で生産性を強化し、食料安全保障や回復力を高めるための農業の実施方法及び技術を識別し、評価することに関するもので、5月23日(月)に開催された。そのハイライトは右記を参照: http://enb.iisd.org/vol12/enb12673e.html

非公式協議において、締約国は、SBSTA 43で開催されたワークショップは成功であったこと、報告書にはその成果が反映されていたことで合意した。締約国は、グッドプラクティス; 経験、学習事項を記録する寄託場所として、プラットフォームもしくは知識ハブを創設することを支持していた。締約国は、プラットフォームについての考え、さらには、パリ協定の内容に基づき、今後SBSTAでの農業問題の議論をどう進めていくか、あるいは進めていくべきかどうか、全般的な考えについて、文書提出を求めることを提案した。

さらに締約国は、SBSTA 44で達成した作業を記載するとの意図において、結論書草案を審議した、これには次が含まれた: ワークショップ報告書の審議; 締約国及びオブザーバーからの提出文書に留意; 会合期間中ワークショップを2回開催; SBSTA 45において、ワークショップ報告書の審議を継続することで合意。ある開発途上国グループは、SBSTAはSBSTA 40で決定されたとおり、科学的、技術的作業を継続してきたと指摘するパラグラフの中に「条約の目的、原則、条項に基づく、条約第9条(Article 9 of the Convention, on the basis of the objective, principles and provisions of the Convention)」への言及を挿入するよう提案した。先進国数か国のこの挿入に反対した。

閉会プレナリーにおいて、議長Fullerは、このグループはこの問題の論議において結論を出すことができなかったと説明し、手順規則案第16項に従い、SBSTA 45においてもこの問題を議論することになると説明した。

科学とレビュー: 研究及び体系的観測: この項目は、5月16日(月)のプレナリーで審議され、Ann Gordon(ベリーズ)及びChristiane Textor(ドイツ)を共同進行役とする非公式協議で議論した。非公式協議では、事務局に対し、ワークショップ開催を企画し、1.5℃シナリオへ言及するよう求めることに注目が集まった。

ワークショップの可能性に関し、そのようなワークショップの焦点に関し、数件のオプションが検討された、この中には、アフリカ、都市、緩和行動の共同便益が含まれた。多様な先進国は、ワークショップ開催の可能性に反対し、研究ダイアログでの議論からは、ワークショップの必要性やそのテーマが出てきていないと指摘した。締約国は、妥協案として、研究面でのギャップを明らかにすることに関係し研究計画及び研究機関が行っている活動について、文書提出を求めたことから、これらの研究計画及び研究機関が開催した地域ワークショップに言及することで合意した。

1.5°Cシナリオに関し、ある締約国グループは2つのパラグラフを提案した。一つは、科学者社会に対し、1.5°Cシナリオに関係する情報のギャップへの対応を続けるよう奨励するとの表現。2番目の提案は、世界気候研究計画(World Climate Research Programme (WCRP))に対し、「Coupled Model Intercomparison Project」のフェーズ6という気候モデル実験を調整するもののシナリオ設計を再検討する場合には、1.5℃シナリオを優先するよう求める提案が含まれる。ある締約国は、提案された2つのパラグラフに反対した。さらなる非公式協議ののち、締約国は、これらのパラグラフについて合意に達することができなかったため、これらのパラグラフは草案から削除された。

SBSTA結論書: 結論書A(FCCC/SBSTA/2016/L.17)において、SBSTAは:

  • 地球気候観測システム(GCOS)、IPCC、WCRPの発表したステートメント、並びに第8回研究ダイアログ会議に関するSBSTA議長作成の情報ノート、研究ダイアログにおいては緩慢に発生する現象を考察するよう提案するWIM執行委員会からSBSTA議長宛の書状に留意し;
  • 第8回研究ダイアログ会議を歓迎し、SBSTA議長に対し、次回以降のダイアログ開催前にはポスターセッションを開催するとの計画を続けるよう招請し;
  • SBSTA議長に対し、SBSTA 45までに、研究ダイアログに関するサマリー報告書を作成するよう要請し;
  • IPCCはその第6次評価報告サイクル期間中、3つの特別報告書及びGHGインベントリに関する手法論報告書を作成する予定との情報を歓迎し;
  • 関連する研究プログラム及び研究機関に対し、SBSTA 46において開催予定の研究ダイアログ会議では、地域ワークショップなどの活動を含め、それぞれが行っている努力についてプレゼンテーションをし、関連性ある気候研究及びデータの情報及びギャップを明らかにするよう奨励し;
  • 締約国に対し、SBSTA 46及びその後に開催される研究ダイアログで考察可能な題目に関し、2017年4月10日までに文書を提出するよう招請する。

パリ協定世界状況把握過程に対するIPCC評価報告書の情報提供方法に関する助言: この議題は、5月16日(月)のプレナリー、及びNagmeldin Elhassan(スーダン)とFrank McGovern(アイルランド)を共同進行役とする非公式協議で議論された。

この議題項目に関し、世界状況把握過程に対するIPCC評価報告書の情報提供方法に関する助言を話し合うSBSTA-IPCCスペシャルイベントが、5月18日(水)に開催された。この議論のサマリーは右記参照: http://enb.iisd.org/vol12/enb12669e.html

非公式協議の議論では特に次の点に焦点が当てられた: IPCC第6次評価報告サイクルの特別報告書に関する言及方法、2013-2015年レビューでのSEDの認識、情報のギャップ対策の奨励。

ある締約国は、この項目に関するSBSTA-IPCCスペシャルイベントのSBSTA議長情報ノートへの言及に反対し、さらにこのイベントに関しSBSTA議長が作成する報告書への言及にも反対した、これらの言及は草案から削除された。

SEDに関し、2カ国を除く全ての締約国は、SEDはIPCC評価報告による世界状況把握過程への情報提供方法に関し、有用な学習事項を提供できると認識した。長時間の議論の後、締約国は、脚注において、SEDではなく2013 - 2015年レビューに言及し、その「成功及び欠点」を指摘することで合意した。

情報のギャップに関し、ある締約国グループが提案し、2つの締約国が反対した、科学者社会に対し、1.5°Cシナリオに関するものも含め情報のギャップへの対応を奨励するとのパラグラフについて、意見対立があった。長時間の交渉の後、締約国は、合意に達せず、更なる協議を行った。締約国は、意見対立のあるパラグラフに代わり、インフォーマル・インフォーマル(informal informals)で合意した表現にすることで合意した、この表現によると: 産業革命前比1.5°Cの地球温暖化の影響に関する2018年特別報告書は第1回世界状況把握に関連性があると指摘、この報告書を含め、IPCC第6次評価報告サイクルで作成予定の制作品を列挙したIPCC決定書を歓迎する。

5月26日(木)、SBSTAプレナリーは結論書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.16)において、SBSTAは:

  • この問題に関するSBSTA-IPCCスペシャルイベントを歓迎し、当該イベントでは豊富な情報交換が図られたと認識し;
  • 世界状況把握におけるIPCC評価サイクル制作品の重要性を認識し、IPCCの作業をUNFCCCに効果的に伝えることの重要性を指摘し;
  • IPCCの作業計画策定時、及び第6次評価サイクルの制作品決定時には、COP 21の成果を考慮に入れるとしたIPCCの決定書、並びに第6次評価サイクルで予定される制作品を列挙するIPCC決定書を歓迎し;
  • 締約国に対し、IPCC評価報告からの世界状況把握への情報提供方法に関し、それぞれの関係の経験を考慮に入れた文書を、2016年9月12日までに提出するよう招請し;
  • 世界状況把握に関するAPAの関連作業を考慮に入れ、SBSTA 45においてもこの問題の考察を続けることで合意する。

長期世界目標の次回定期レビューの範囲: この項目についてはSBIのセクションにまとめられる。SBSTAは、5月26日(木)のプレナリーで結論書を採択した。

対応措置:この項目についてはSBIのセクションにまとめられた(14頁参照)

条約の下での手法論問題: GHGデータ・インターフェース: この小項目は、5月16日(月)のSBSTAプレナリーで議論され、Elsa Hatanaka(日本)を進行役とする非公式協議でも議論された。現在、附属書I及び非附属書I締約国では報告書作成指針が異なることから、締約国は、データ関係作業への指針について、更に時間をかけて理解し決定する必要があると認識した。締約国は合意に達せず、UNFCCC暫定手順規則書案16項に則り、SBSTA 45でもこの問題を議論する。

GHGのCO2換算量の共通の計算方法: この小項目は、初め、5月16日(月)のプレナリーで議論された。Washington Zhakata(ジンバブエ)及びTakeshi Enoki(日本)が非公式協議の共同進行役を務めた。

非公式協議において、締約国は、次のどちらにするか議論した: 本議題項目の終了; その考察を2021年まで延期; 項目の審議を続け、締約国及びオブザーバーの文書提出を求める。多様な先進国は、共通計算方式の考察延期を支持し、APAにおいてこの問題を審議していくと指摘したが、多様な開発途上国は、この項目の審議継続と文書提出の要請を希望した。締約国は、この項目の再検討をSBSTA 46と特定することで合意し、APAにおいて共通計算方式の利用に関する締約国の文書提出を求めることで全般的な合意がなされた。

5月26日(木)、SBSTAプレナリーは結論書草案を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.3)において、SBSTAは、締約国のNDCsの計算はIPCCの評価を受けた共通の計算方式に則り行われることを確保するため共通計算方式の指針を推敲するようにとCOPからAPAへ要請が行われたことに留意し、このため、この審議をSBSTA 46まで延期することで合意する。

バンカー燃料: 5月16日(月)、SBSTAプレナリーは、この小項目(FCCC/SBSTA/2016/MISC.2)を審議し、SBSTA議長が主導する非公式協議でも議論した。5月17日(火)のプレナリーで、EUは、締約国に対し「パリ会議の精神を国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)にも持ち込む」ことを奨励した。

5月26日(木)のプレナリーで、SBSTAは結論書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.7)において、SBSTAは: ICAO及びIMO事務局の報告した情報に留意し、ならびにこの情報に関し締約国が表明した見解にも留意し; ICAO及びIMO事務局に対し、将来のSBSTA会合においても関連する作業に関し報告を続けるよう招請する。

附属書I締約国のGHGインベントリのレビューを目的とするレビュー専門家訓練計画: この項目は5月16日(月)のプレナリーで審議され、SBSTA議長の指導する非公式協議でも審議された。

5月26日(木)、SBSTAは結論書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.6)において、SBSTAは、訓練計画の実施は2015年9月に開始されたと指摘、この訓練計画を受講した専門家による指針を利用した附属書I締約国GHGインベントリの技術レビューという経験は未だ得られていないと指摘する。SBSTAは、訓練計画の成果を評価できるだけの情報は入手可能になっていないと認識し、SBSTA 46において訓練計画の成果の評価を審議することで合意する。

京都議定書の下での手法論問題: 土地利用・土地利用変化・林業(森林、吸収源活動) (LULUCF): この項目は、初め、5月16日(月)のSBSTAプレナリーで審議され、その後Jose Antonio Prado(チリ)及びMaya Hunt(ニュージーランド)を進行役とする非公式協議で議論された。

非公式協議において、締約国は、森林の定義においては再植林または新規植林の定義を満たさない0.05ヘクタール以上の土地への多年生木本植物を用いた再植生を、CDMの下では適格とするという提案について審議した。締約国はこの点に関する文書草案の提出に同意し、共同進行役は提案された表現を用いる会議室ペーパー(FCCC/SBSTA/2016/CRP.1)を公表した。締約国数カ国は、他の種類の植生についてはその法性及び手順に関しさらなる作業が必要であると指摘した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.15)において、SBSTAは:

  • 事務局に対し、再植生活動に関するワークショップの報告書を作成し、SBSTA 45での審議にかけるよう要請し;
  • 決定書2/CMP.7、パラグラフ6(CDMの下での追加的LULUCF活動の可能性に関し)に規定する作業計画について、SBSTA 45においても審議を継続し、この問題に関する決定書草案を提案し、CMP 12での審議と採択を図ることで合意し;
  • 決定書2/CMP.7、パラグラフ5(排出源の排出量及び吸収源の除去量のより包括的な計算)、パラグラフ7(不永続性のリスク)及びパラグラフ10(追加性)に言及する作業計画に関し、CMP 12で審議し可能なら採択を図るための決定書草案を提案する、もしくは成果を報告するとの観点で、SBSTA 45においても審議を継続することで合意する。

京都議定書附属書Aに記載するGHGsのCO2換算値計算時の、計算方式の選択が与える影響: この項目は、5月16日(月)のプレナリーで短時間議論され、Washington Zhakata(ジンバブエ)及びTakeshi Enoki(日本)を共同進行役とする非公式協議でも議論された。

協議において、一部の締約国は、この議題項目終了を提案、「CDM自体の寿命が終わりに近づいている」と指摘し、APAにおいてもこの問題に関する議論が平行して行われていると指摘した。他の締約国は、この問題をSBSTAの議題に残しておくよう希望し、京都議定書の第3約束期間が考えられるなら、この問題を関連性があると強調した。締約国は、CMPにおいて第3約束期間の審議が行われるまでこの議題項目を保留とすることで合意した。

5月26日(木)、SBSTAプレナリーは、結論書草案を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.2)において、SBSTAは、計算方式の選択の影響に関する評価作業を延期し、CMPが京都議定書第3約束期間の審議を開始した場合にのみ、この項目の議論に戻ることで合意する。

CDMプロジェクト活動の新規植林及び再植林としての枯渇林を有する土地への再植林: この項目は5月16日(月)のプレナリー、及びJosé Sanhueza(チリ)を進行役とする非公式協議で審議された。

非公式協議において、共同進行役のSanhuezaは、この問題はSBSTA 32以来、進展のないままで審議されてきたと想起し、前回のSBSTA会合においてこの問題に関する文書提出を求めたにも拘わらず、いかなる文書も受け取っていないと想起した。ある締約国は、枯渇林を有する土地をCDM新規植林及び再植林活動に含めることの合理性を説明した。他の締約国は、この提案の環境十全性への懸念を提起、この議題項目の終了を提案した。2回の非公式協議後もこの項目終了に関する意見の一致は得られなかったことから、締約国は、SBSTA 46でもこの項目の審議を続けることで合意した。

5月26日(木)、SBSTAプレナリーは結論書草案を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.4)において、SBSTAは、SBSTA 46においてもこの項目の審議を続けることで合意する。

市場及び非市場メカニズム: 多様な手法のための枠組; 非市場ベースの手法;新規市場ベース手法: この議題項目及びその小項目は、初め、5月16日(月)のSBSTAプレナリーで連続して審議された。その後、SBSTA議長のFullerは関心のある締約国と非公式協議を開催した。

プレナリーにおいて、議長のFullerは、会合前の協議では締約国はパリ協定6条(自主的な協力手法)の運用開始を最も効率よく進めようとする熱意を示していたと報告した。SBSTAは、5月26日(木)、結論書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.10)において、SBSTAは、締約国提出文書及び関係するテクニカルペーパーやワークショップ報告書で収集された情報など、これまでの努力に留意し、これらの項目の次回審議はSBSTA 50において行うことで合意する。

パリ協定6条に関係する問題: 6.2条に規定する強力的手法に関するガイダンス; 6.4条で設置されたメカニズムの規則、法性、手順; 6.8条に規定する非市場手法枠組の作業計画: この項目及びその小項目は、初め、5月16日(月)のプレナリーで、さらにHugh Sealy(モルディブ)及びKelley Kizzier(EU)が共同議長を務めるコンタクトグループで審議された。締約国は、3つの小項目に等しい時間枠を割り当て、バランスをとる形をとり、非公式会議で審議することで合意した。

国際取引される緩和成果(ITMOs)(6.2条)に関する非公式協議で、締約国は、ITMOsの特性、タイプ、ガバナンスのアレンジ、さらにNDCs数量化に必要なものも含め、対応するための調整について、意見交換を行った。一部の締約国は、6.2条の拘束力のある規定を運用可能にするため、ガイダンスを求めた。

緩和及び持続可能な開発(6.4条)のメカニズムに関し、締約国は、このメカニズムとCDMとの類似性と差異について意見交換を行った。多数の締約国は、パリ協定では全ての締約国がNDCsを有しており、内容が変化していると強調した。多数の締約国は、二重計算を回避し、環境十全性を確保することの重要性を強調した。この項目の範囲にREDD+を含めるかどうか、パリ協定5条(吸収源及び除去量)とリンクさせるかどうかについて、締約国の意見は分かれた。

非市場手法(6.8条)に関し、締約国は、非市場手法の定義付け及びその範囲に関し意見交換を行った。ある国は、非市場手法は移転可能なユニットを生み出すことなく、結果を出しており、市場も関わっていないと指摘した。ある締約国は、この手法はニーズに基づくものであり、結果に基づくものではないと指摘した。一部の締約国は、現在条約の下で行われている作業との重複を避けるよう促した。非市場手法を厳密に強力的なものとするか、それとも国内のものとするかについて、締約国の意見は分かれた。

5月21日(土)、共同議長は、各小項目に関するリフレクション・ノートを発表、これまでの3回の非公式会議において締約国が表明した一般的な見解を示した。締約国は、これらのリフレクション・ノートは非公式なものでいかなる立場をもつものでもないことで合意した。

5月26日(木)、SBSTAは結論書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.11, L.12及びL.13)において、SBSTAは、COP 22においてこれら小項目に関する共通の理解達成に焦点を当てることで合意し、締約国及びオブザーバー組織に対し、2016年9月30日までに文書を提出するよう招請することで合意する。

パリ協定9.7条の下での公的干渉で提供され動員される資金源算定の法性: この項目は、5月16日のプレナリーで審議され、その後、Rafael da Soler(ブラジル)及びOuti Honkatukia(フィンランド)を共同議長とするコンタクトグループ、及び非公式協議で審議された、これらの審議において締約国は結論書草案に入る可能性のある要素について「知恵を出し合った(brainstormed)」。締約国及びオブザーバーがこの問題に関する提出用文書を作成する際に、検討する可能性がある3つの指針的疑問点の法的な立場が論議された。事務局からの法律アドバイザーは、これら指針的疑問点には何の法的立場もなく、締約国を拘束するものではないことを確認した。締約国は、共同議長作成の結論書草案に若干の変更を加え、5月21日(土)、この結論書に同意した。

5月26日(木)、SBSTAプレナリーは結露書を採択した。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.5)において、SBSTAは、締約国及びオブザーバー組織に対し、2016年8月29日までにそれぞれの意見を提出するよう招請し、さらに次の項目に関係する指針的疑問点について検討するよう招請する: このような資金源算定の既存の法性; 算定のための法性で作成する必要があるもの; そのような算定法性を作成するタイミング。

さらにSBSTAは、事務局に対し、SBSTA 45期間中に期間中ワークショップの開催を計画し、この問題に関するSBSTAの作業について情報を伝えるよう要請、さらにSBSTA 46の前には、この期間中ワークショップ及び文書提出で得られる情報をまとめたテクニカルペーパーを作成するよう要請する。

他の国際機関との協力: この項目(FCCC/SBSTA/2016/INF.3)は、初め、5月16日(月)のSBSTAプレナリーで審議された。事務局は、事務局の協力活動について報告し、IPCCは、IPCC 43の決定事項について報告した、後者には産業革命前比1.5°Cの地球温暖化の影響に関する特別報告書を作成する件が含まれた。

SBSTA結論書: 結論書(FCCC/SBSTA/2016/L.14)において、SBSTAは、事務局と他の政府間組織との協力活動のサマリーに留意する。

閉会プレナリー: SBSTAのプレナリーは、5月27日(木)に開催された。タイはG-77/中国の立場で発言し、次の項目を重要問題として強調した: 強化されたプレ2020年行動; MOIの規定: 農業における適応; 資金の算定。同代表は、透明性枠組における進捗を歓迎し、これは柔軟で、包括的、バランスのとれたものであるべきだと強調した。

アンブレラ・グループは、非市場及び市場手法の議論の進捗に注目し、プレ2020年には市場メカニズムを確保できるよう、更なる技術面の議論を期待した。同代表は、WIMに関する議長職の非公式協議を歓迎し、マラケシュでのレビューを待望すると述べた。

EIGは、IPCC評価報告による世界状況把握への情報提供方法に関する議論を歓迎し、 2013 - 2015年レビューでの作業と世界状況把握との「統合しないまでも、密接にリンクする(closely linking, if not integrating)」ことを提案した。同代表は、文書提出に対する最小限の指針もないこと、パリ協定6条に関係する問題についてのワークショップ開催での意見の不一致に懸念を表明した。

LDCsは、NWPの活動及び技術枠組の議論への更なる参加を待望すると述べた。同代表は、農業に関し結論に達しなかったことへの失望感を表明し、脆弱な農業従事者保護を目的とする具体的な行動がとれるよう「気候変動族(climate change family)」の参加を希望した。

EUは、研究ダイアログ及びIPCCスペシャルイベントへの支持を表明し、これらは世界状況把握への重要なインプットとなる可能性があると述べた。同代表は、技術枠組みに関する締約国の「実際的な参加(pragmatic engagement)」を歓迎し、技術の部門横断的な役割を強調した。

AOSISは、IARのサイクルと世界状況把握とを2018年の可能な限り早期に同調させ、2018年促進的ダイアログへのインプットとするよう求め、科学者社会に対し、1.5ºCシナリオに関する研究を提供するよう促した。同代表は、COP 22におけるWIMレビューへの参加を待望した。

マリはアフリカングループの立場で発言し、TEMs、特に適応に関するTEMを歓迎し、実際的な行動を明らかにし、その規模拡大を図るため、「ワークショップ以上のもの」を求めた。同代表は、世界状況把握へのインプットとしてIPCCの情報を含めることを歓迎した。

コスタリカはAILACの立場で発言し、NDCレジストリに関する議論、IPCC評価報告書が世界状況把握にフィードインできる方法の助言に関する議論が開始されたことを歓迎した。同代表は、ICAOにおいて世界的な市場ベースメカニズムで合意に他する必要があると強調した。

女性及び性別問題グループは、貧困との闘い、食糧安全保障がないこととの戦いにおいて、最前線にいるのが女性であると強調し、農業ワークショップにおいて性別への配慮が含まれたことを歓迎し、性別に対応する適応のための資金調達で効果のある方法を求めた。

YOUNGOsは、農業での進展が限定的であったとして悲嘆し、締約国に対し、食糧安全保障は待つことができない問題だと想起した。同代表は、IPCCによる世界状況把握への情報提供応報というのはさらなる注目を必要とする分野だと指摘した。

BINGOsは、SBSTAの「範囲拡大(expanded scope)」を認識し、今回の会合においてパリ協定6条で進展がなかったことへの失望感を表明した。

CANは、締約国に対し、「何を気候資金に入れるのか」で合意に達し、「新規かつ追加的(new and additional)」の定義でも合意に達するよう求めた。

CJN!は、REDD+及び緩和と適応共同プロジェクトを非市場メカニズムとして開発するよう求め、気候変動に対する農業の脆弱性を強調した。

農業従事者グループは、食糧生産を脅かさない形で、気候変動に対応するには、研究とその伸張、発明及び技術移転が必要であると強調した。

先住民グループは、セーフガードを適用し、REDD+の非炭素便益を確保することの重要性を強調し、パリ協定の実施において、これらは基本的な行動者として役割を果たせると強調した。

その後、SBSTAは、本会合報告書草案(FCCC/SBSTA/2016/L.1)を採択し、SBSTA議長Fullerは、午後7時49分、閉会の槌を打った。

ボン気候変動会議の簡易分析

「千里の道も一歩から始まる」 -老子 (中国の哲学者)

2015年12月にパリ協定の採択という大きな転換点に達して以降、公式交渉としては初の気候変動会議となったが、“光の都”パリの記憶を今も鮮やかに残した関係者がボンの会議に結集した。パリ気候変動会議から5カ月経ったものの、依然として気候行動の強化に向けた機運は高く、史上最多の175カ国が4月に行われたハイレベルのパリ協定署名式典に参加。17カ国がすでに批准書を提出済みである上、世界の二大排出国が2016年中の批准を公約しており、本来の期限である2020年を前にした発効が多くの頭をよぎった。会議参加者にとっては、パリ会議の成功という栄に浴して胡坐するのではなく、協定の運用開始に必要な技術的作業に素早く取り掛かることによって“パリの精神”を持続させられると世界に誇示さなければならないというプレッシャーがかかった。

歴史的なパリ会議の影を引きずって、ボン会議は地味に開催されたものの、そこには野心的な議題があった。今次会議は協定の発効準備に向けてパリで設置された機関である、「パリ協定特別作業部会」(APA)の初会合でもあった。ボン交渉開幕にあたり、COP 21議長を務めたSégolène Royalは「全参加者が“礎を築く人”となり、“ルール作りのパリCOP”から“技術的作業のマラケシュCOP”への移行を実現させなければならない」と呼びかけた。2つの常設補助機関であるSBI及びSBSTAでも、これまで「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」が舞台の中心となって、パリ会議に至るまでの道筋で先送りしてきた膨大な課題リストに着手することが期待された。

この簡易分析では、ここボン会議で、パリ協定の運用開始に必要な土台づくりの作業を首尾よくスタートさせられたかどうか、APAの作業だけでなく、3つの補助機関の作業間の重複や相乗効果などを見ながら検証する。それは整合性のとれた将来の気候レジーム構築に向けた重要な企てとなるべき任務である。さらに、ボン参加者がより技術的な作業モードに入って11月のマラケシュCOP成功に向けた地ならしができたか検証する。

“パリの成果”を整理する

全体で36頁に及ぶパリ協定及び付属の決定書は非常に複雑で、条約の補助機関や構成機関が実施する数多の業務や役割のバランスを慎重に配慮した内容となっている。したがって、ボン会議参加者の最初の仕事はパリの成果をひとまず“荷ほどき”して、これらの任務の狭間にあるギャップやシナジー効果、重複部分を特定することであった。今次会合に先駆けてCOP 21議長とCOP 22の次期議長が発行したリフレクション・ノートを携え、これらの様々な役割を整理しつつ、各国はこの“荷ほどき作業”を様々な方法で行った。

APAでは、最初の4日間をAPAの議題交渉に費やした。議題の議論は部外者には些末な事柄に思われるが、これから何カ月にもわたり交渉を行う問題の枠を決める重大事である。

これらの交渉は適応報告書に関する項目追加につながり、それによって多くの途上国の目に“緩和中心”過ぎるとみられてきた暫定議題の溝を埋めることになる。多くの参加者は、これらの交渉に流れていた前向きな精神について触れ、それがいかに議題のバランス調整を導いたかと解説した。APAの実質交渉入りは遅れたが、それもSBIとSBSTAでパリ会議までの準備段階で棚上げにされていた国別適応計画や政府間会合の調整、CDM 理事会の決定に対する上訴等の問題に関して“キャッチアップ”する余地を与える結果につながった。

作業の重複を回避して整合を図るべく、3つの補助機関の各種業務の重複をチェックする作業が始まった。APAで最初に関連項目を審議できるようにするため、条約に基づく定期点検や測定基準に係る範囲ならびに各種アプローチ及び非市場アプローチの枠組みに関するSBI及びSBSTAの交渉は先送りすることが決まった。

UNFCCCプロセス内外の様々な機関の一貫性を担保するための取り組みも行われた。そうした調整機能を託された具体的な機関は存在しないが、この問題に対応するべく、ボン会議では様々な進展がみられた。COP 21議長国とCOP 22の議長国が音頭を取って会期中に共催した合同ストックテイキングイベント(中間見直し会合)では3機関における進展を俯瞰した。また、APAは、その他機関による関連する進展についての中間見直しも議題に追加した。その他、“制度的な調整”も会期中に行われた様々なイベントの主題となり、技術メカニズムと資金メカニズムのリンケージに関するワークショップやIPCC-SBSTA特別イベント等でのテーマになった。また、後者においては、5年毎のグローバル・ストックテイクと7年毎のIPCCの評価報告書のサイクルを同期させるという問題についても討議された。

ボン会議では、各国交渉官が、いかに既存のメカニズムを土台にしながら過去の経験に学びながら整合性の問題を改善するかという課題に取り組み出した。条約と京都議定書による豊富な経験という資産を活用し、自らの作業に関連する部分は何か決定する作業に取り掛かった。この点について、SEDに学び、パリ協定のグローバル・ストックテイクを実施するよう多くの国が求めた。また、これについては、IPCC議長がパリ協定を“真に科学に立脚させた”と評価した。

また、現在は測定・報告・検証(MRV)が基本となっている条約の枠組みの作業について、新たなレジームの透明性の枠組みでは、国際協議分析(ICA)及び国際評価点検(IAR)を基礎とする必要があるという点が一般的に認識された。

この点について、ボンで促進的な意見交換において率直かつ建設的な対話が行われたことを歓迎する声が多く聞かれた。対話の場において途上国13カ国が隔年更新報告書(BUR)を提出し、将来の透明性レジームの契機となることが期待された。

これらのリンクやパラレル会合は有益な演習場であるとみて、議論が一歩先へと進むことを期待する声もあがった。一方で、COP 22で問題を深堀りするための土台になるはずの技術文書や技術ワークショップを要請する決議なしでボン会議を後にすることを嘆く声もあった。

順調なスタートを切った技術作業

整合性と調整という両面で、各国交渉官はまさに“時計仕掛けのような正確な”作業進行が求められる上、パリの政治交渉から離れて“技術的な作業モード”へ移ることが要求された。パリ協定の“ルールブックづくり”や各国の行動を支援する制度メカニズムの強化、パリ協定の発効準備など、進展が期待された分野はまさに技術的な性質をもつ内容に思われた。

パリ協定のルールブックについては、2週目の交渉で議論が行われ、APA議題の全ての実質的な項目に関して前向きな意見交換ができたと多くが評価した。しかし、透明性の枠組みやグローバル・ストックテイクに関して忌憚のない議論が行われたのは、それが概念的な話だったためであり、各国が“悪魔は細部に宿る”という突っ込んだ議論に入るのは今後のことだとの見方もある。

SBIとSBSTAの下でも、協定に関する実施を支えるような重要な技術作業が進み、適応基金第3回レビューに関する委託条件や、キャパシティビルディングに関するパリ委員会、対応措置の実施による影響いついての作業計画に関する技術専門家グループ特別会合について合意することができた。

それでも、さまざまな機関の議題に係る多くの“技術問題”が政治的に重要な含意をもつことがボンで明白になったので“政治交渉が破綻するとの憶測”が過度に取り沙汰されたのだと示唆するオブザーバーもあった。

パリ協定は、それを構成する要素と先進国・途上国間の差異化問題の“解決策”の両面において複雑かつデリケートなバランスの上で練り上げられた合意である。協定に織り込まれた“建設的な曖昧さ”は協定採択のための必要条件であったが、それは多様なる解釈の共存を許すことになった。協定の骨組みに肉付けする作業が始まれば、全ての補助機関における大変の議論がこれに影響を受ける。「未解決の政治問題に対応せずに、技術問題に注力しよう」との呼び声にみられるよう政治的含意を歓迎しない向きがある一方で、こうした事態は避けられないもので、京都議定書のルールブック交渉の際も相当な政治論争が巻き起こったと回想する声もあった。

これは緩和に関するAPAの議論で既に見られる兆候だ。経済全体にあたる絶対値の数値目標か原単位目標か、あるいは先進国/途上国といったタイプ別にNDCsの指針を提供するべきか否かで各国の意見は分かれた。

国家間の「差異化」の議論も透明性や遵守の議論のなかで再燃した。この概念をパリ後のレジームに関するルールにも持ち込もうと目論む国々が、各国の事情を踏まえてた柔軟性ある共通の手続きをどのように設計すべきかという議論でも同じことを試みた。

SBIでは、各国のNDCsや適応報告書のための1つか2つの公開登録簿向けのモダリティ・手続きに関する議題があったが、これらの問題を合同または個別に扱うべきかという問題において不協和音―すなわち適応と緩和に同じ資格を与えようとする長年の途上国側の要求を反映する不和―が生じ、進展が見られなかった。

いみじくも一部で指摘されたように、ボン会議で実現したのは“技術交渉”への移行というよりは、パリで定められた技術作業の開始であり、それによって2016年11月のマラケシュCOPの成功に向けた下準備である。

マラケシュ行きの荷造り

マラケシュで技術作業を行うための土台づくり用のツールには、作業計画や意見書の募集、事務局からの技術文書の要請や技術ワークショップ等がある。この点については、SBIとSBSTAは実質的な成果をもたらした。例えば、新しくSBSTAの議題に加わった「公的資金の会計処理手続きについては、パリ協定の下での資金の透明性との関連でこれら全ての要素を盛り込んだ明確な作業計画を作ることで締約国の合意が成立した。

一方、APAのスコアカードはまだら模様だ。UNFCCCの歴史に重要な節目を残した後の移行期というのは決して簡単ではないとあるベテラン交渉官は指摘する。それはしばしば議題闘争を伴い、最初の進みは遅い。こうした観点からすると、APA初会合は比較的にみて成功を収めたとの見方が多かった。初代の(女性)共同議長がスムーズに選出され、議題をめぐる第1週の協議では建設的な雰囲気が支配し、それが締約国と新APA共同議長との間での信用と信頼の醸成につながった。

しかしながら、技術文書やワークショップ(会期前・会期と会期の間・会期中)開催について多くの議論が行われたものの、APAの結論書には殆どの議題項目に関する意見書提出の招請が盛り込まれただけだった。これでは準備不足のまま、誰もが相当な作業量を予想するCOP 22に突入してしまう公算が大きいと悲嘆したくなる。パリ協定の“迅速なる”発効が水平性のかなたに見えてくれば、この土台作業の遂行がさらに切迫感を帯びた急務となる。ボン会議では、未だパリ協定への加盟に向けた準備を行っている国々が、発効後に残される技術作業への参加から排除されないよう担保する必要があるとの点で合意がなされた。今後の協議では、ボン会議にみられた建設的な議論を踏まえてCOP 22議長が采配を振るうことができるだろう。

次のステップ: COP 22

ボン会合には、“実施と行動のCOP”との呼び声が高まるCOP 22に向けて、幅広く基礎固めを行う役目も期待された。「実施」の面では、COP 22は、今回の会合ではあまり注目を浴びなかった項目―例えばボンでは議題にならなかった“損失被害”などのテーマを多数取り上げることになる。マラケシュでは、資金に関する促進ダイアログ、“プレ2020年”の野心ならびに実施のテーマ等に関してイベントが予定されており、年間1000億米ドルの資金供与の公約が明確な形になり、2020年までの行動が2020年以降の期間に関する交渉の影に霞んでしまうのではないかと懸念する途上国の不安解消に一役買うことになろう。

「行動」の面では、ボン会議は、都市や企業、市民社会など国家以外の主体への参加の呼びかけを改めて表明した。それは今や彼らのUNFCCCプロセスへの積極参加なくしてパリ協定の目的は完璧に実現しえないという“所与の”サインだと見る向きが多い。

気候変動に対する行動の緊急性を認識する者にとっては、当初の期待よりも出足が遅れたものの、パリ協定の重荷をおろしたという意味では、ボン会合は重要な進歩をみることができた。また、ボン会合で技術的な作業を開始することができ、このたび退任するChristiana Figueres事務局長の言葉を借りれば“各国がパリ協定に託したビジョンに命を吹き込むために”不可欠な作業に着手したことになる。そうした意味で、今次会合は、UNFCCCがパリで勝ち得た勢いをなんとか維持し、その重大な任務を成し遂げるべく軌道に乗ったと世界にシグナルを発信したと言えよう。

今後の会議予定

7回クリーンエネルギー閣僚会議(CEM 7): CEMの24か国のエネルギー閣僚は、CEM7で会合、気候及びクリーンエネルギーの課題に対応できるよう、CEMをより野心的、効果的なものにするというCEM 2.0バージョンの全面的な実施を図る。各閣僚は、これまでの進捗状況を評価し、優先性が高く、影響の大きい分野での進捗を図るため、新しいキャンペーン及び努力を開始する。各国が国内クリーンエネルギー目標を実現し、時間をかけて野心を引き上げるための確信や能力を構築していくという「パリからの道筋(road from Paris)」において、CEMは、実施フォーラムとして重要な役割を果たす予定である。  日付: 2016年6月1-2日  場所: 米国、カリフォルニア州、サンフランシスコ  連絡先: CEM事務局  電子メール: CEMSecretariat@hq.doe.gov www: http://energy-l.iisd.org/events/seventh-clean-energy-ministerial-cem7/www.cleanenergyministerial.org

50回GEFカウンシル会議: GEFカウンシルは、次の分野において地球環境上有益な新規プロジェクトを承認するため、年2回会合する: 生物多様性、気候変動の緩和、化学品及び廃棄物、国際的水資源、土地の劣化、持続可能な森林管理というGEFの注目分野; 持続可能な都市、商品流通チェーンからの伐採品排除、アフリカのサブサハラ地域における食料安全保障のための持続可能性及び回復力に関する、GEFの統合手法プログラム。6月9日、同カウンシルは、LDCF及び特別気候基金の第20回会合を同じ場所で開催する。  日付: 2016年6月6-9日  場所: 米国、ワシントンDC  連絡先: GEF事務局  電話: +1-202-473-0508  ファクシミリ: +1-202-522-3240  電子メール: secretariat@thegef.org www: https://www.thegef.org/gef/council_meetings/50th/docs

アジア・クリーンエネルギーフォーラム: アジア・クリーンエネルギーフォーラムは、アジア地域の気候及びエネルギー安全保障を支援する政策や技術、資金について、ベストプラクティスの情報を交換する場を提供しようと2006年以来開催されてきた。  日付: 2016年6月6-10日  場所: フィリピン、マニラ  連絡先: アジア開発銀行  電話: +63-2-632-4444  ファクシミリ: +63-2-636-2444  電子メール: cleanenergy@adb.org www: http://www.asiacleanenergyforum.org/

アフリカ・カーボンフォーラム: 第8回アフリカ・カーボンフォーラムは、気候変動に関係する最新の投資、資金、開発の機会に関し、参加者に情報を提供する。議論される項目は: パリ会議後の世界状況においてアフリカが有する機会; NDCsで提示された地域変換型開発のための政策オプション及び機会;気候耐性型開発の革新的なプロジェクト、プログラム、投資機会、たとえばアフリカ再生可能エネルギーイニシアティブ(Africa Renewable Energy Initiative)及び適応及び損失と被害に関するアフリカン・イニシアティブ(African Initiative on Adaptation and Loss and Damage); 気候資金源及びそのアクセス方法、これには持続可能な開発のための市場ベース手法も含める; ナイロビ枠組パートナーシップの下での協力的イニシアティブ、これはCDMにおける開発途上国の参加水準、特にアフリカ、サブサハラ地域の諸国の参加水準の向上を目指す。  日付: 2016年6月28-30日  場所: ルワンダ、Kigali  連絡先: UNFCCC事務局Vintura Silva  電子メール: vsilva@unfccc.int www: http://www.africacarbonforum.com/2016/english/objective.htm

2016年レジリエントな都市: 都市部の回復力及び適応に関する第7回年次グローバルフォーラム: 400名を超える専門家及び実務者の参加が期待されるフォーラムでは、都市部の回復力及び気候変動への適応に関係する一連の課題に焦点があてられる予定、この中には、参加性の高い回復力戦略、回復力のある都市に向けた資金調達、計測及びモニタリングでの進展、回復力及び適応の計画策定、ガバナンスと協調、資源管理、回復力のあるインフラが含まれる。参加者は、ネットワークつくり、新しいパートナーシップ構築、アイデアやベストプラクティスの情報交換を行うことができる予定。  日付: 2016年7月6-8日  場所: ドイツ、ボン  連絡先: ICLEI – Local Governments for Sustainability  電子メール: resilient.cities@iclei.org www: http://resilientcities2016.iclei.org/

5回アジア太平洋気候変動適応フォーラム2016年: アジア太平洋適応ネットワーク(APAN)は、国連開発計画、ADB、世界水パートナーシップ、国連環境計画などとともに、このイベントを開催、テーマは「適応を開発の主流に(Mainstreaming Adaptation into Development)」で、食料安全保障及び適応向け資金などの題目に焦点を当てる。  日付: 2016年10月17-19日  場所: スリランカ、コロンボ  連絡先: APAN  電子メール: info@asiapacificadapt.net www: www.asiapacificadapt.net

ハビタットIII: 第3回国連人間居住計画(ハビタットIII)は、持続可能な都市開発に対する政治的約束の更新を確実なものとし、進捗状況及びこれまでの達成状況を評価し、貧困に対応し、新しく登場しつつある課題を明らかにし、これに対応することを目指す。この会議は、行動本位の成果文書を作成するほか、新都市アジェンダ(New Urban Agenda)の採択が期待される。  日付: 2016年10月17-20日  場所: エクアドル、Quito  連絡先: UN-Habitat  電話: +1-917-367-4355  電子メール: Habitat3Secretariat@un.org www: https://www.habitat3.org/

IPCC-44: IPCC第44回総会は10月に開催予定。  日付: 2016年10月、日付は未定  場所: スイス、ジュネーブ、またはオーストリア、ウィーン  連絡先: IPCC事務局  電話: +41-22-730-8208/54/84  ファクシミリ: +41-22-730-8025/13  電子メール: IPCC-Sec@wmo.int www: http://www.ipcc.ch

UNFCCC COP 22/CMP 12: COP 22/CMP 12において、締約国は、特にパリ協定発効準備の継続で会合する予定。  日付: 2016年11月7-18日  場所: モロッコ、マラケシュ  連絡先: UNFCCC事務局   電話: +49-228-815-1000  ファクシミリ: +49-228-815-1999  電子メール: secretariat@unfccc.int www: http://unfccc.int/

(IGES-GISPRI仮訳)

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