Daily report for 10 December 2023
UN Climate Change Conference - United Arab Emirates Nov/Dec 2023
資金交渉担当者は、多様な問題での決定書草案を捻出するべく、この日の殆どを会議に費やしたが、他の交渉担当者は、対応措置及びサンチャゴ・ネットワークの非公式協議で会合した。しかし、多くの目を引いたのは、議長職のMajlisであった。具体的な提案が出されているわけではないが、議論では、和解しようと、オリーブの枝が差し出されていた。
Majlis(マジュリス)
議長のAl Jaberは、Majlisの目的は「ハートからハートへの(heart to heart)」議論を育てることだと強調した。同議長は、野心の引き下げは受け入れられないとし、だれもが柔軟性を持ち、自己の利益ではなく共通便益を考え、保留問題では推奨できる表現を提示するよう促した。
COP 28 CEOのAdnan Aminは、閣僚たちに対し、次の2つの疑問点に焦点を当てるよう求めた:緩和に関する変換可能な野心の引き上げを行うと同時に、正当かつ公平な転換及びそのための資金要求に対応する方法;適応資金と行動のギャップの解消に取り組むための信頼できる方法。
欧州連合は、世界の排出量は2025年までにピークに達する必要があり、化石燃料の削減など、広範な措置を実施すれば、全ての排出量の急速な削減を実現可能であると指摘した。同代表は、転換は生産者及び消費者の両方にとっての課題であると認識、転換を支えるには、措置のバランスを取るべきだと述べた。同代表は、EUはパートナーとともにそのようなパッケージを見出す用意があると指摘し、緩和技術は最も緩和が困難な部門のためにとっておくべきだと指摘した。同代表は、多数の開発途上国は支援、キャパシティビルディング、技術を必要としていると述べた。
スペインは、適応及びレジリエンスは公的な適応資金の増額、及び多国籍開発銀行の役割の強化で実現されると強調した。同代表は、今回のCOPでは債務膨張の問題を議論できると指摘した。
コロンビアは、決定を行うため、力のあるものがだれか、そしてどこかを考えるよう求めた。同代表は、UNFCCCの目標達成では、メカニズムが重要だと強調し、再生可能エネルギーを3倍にするのは、金利5%の資本にアクセスできないものには困難であると強調し、新しい経済取引を求めた。
スイスは、環境十全性グループ(EIG)の立場で発言し、2025年に提出予定の国家決定貢献(NDCs)について、ガイダンス策定が必要だと強調した。同代表は、いかなる差異化でも、パリ協定に規定しないものには反対するとし、人権、ジェンダーの平等、世代間の衡平性に根ざした成果にすることが重要だと強調した。
中国は、「走者の第1組(first batch of runners)」は、より早く走るべきで、遅れてくるものたちを後押しし、パリ協定の目的達成に必要な平均速度にするべきだと述べた。
ツバルは、適応資金の倍増など、気候資金の強化が必要だと強調した。
ドイツは、再生可能エネルギーを増やし、石炭の段階的廃止を実現するのは簡単ではないと認識した。同代表は、化石燃料の段階的廃止ではなく、化石燃料の排出量を議論するだけでは十分ではないと強調し、合同の解決策があると信じるとし、1.5℃目標に合致するよう、表現の議論をすることを求めた。
日本は、締約国間の違いを認識し、全ての国がGHG排出削減に向け、最善を尽くすべきだと指摘し、能力のある国は、資金援助を提供し、技術移転を図るべきだとし、日本はこの点、最大限の努力を尽くしていると指摘した。同代表は、適応資金の集団供与の倍増が優先策であると強調した。
ボリビアは、同志開発途上国(LMDCs)の立場で発言し、偽善や虚偽、不正に対応するよう促し、先進国に対し、1.5℃目標達成の名前で、自身の義務を開発途上国に転嫁し、気候の正義の概念を捻じ曲げていると指摘した。
バングラデシュは、先進国の共感と理解を求め、その指導者たちに対し、バングラデシュやツバルのような脆弱な諸国に暮らすものの立場に立つよう求めた。同代表は、進展を達成するには政治的な意志と信頼が必要だと強調した。
サモアは、小島嶼諸国連合(AOSIS)はGSTでの最も高い野心を見ずしてCOP 28を離れるわけにはいかないと述べ、同グループは、化石燃料の段階的廃止、及び関連する補助金の廃止を希望すると述べた。
ノルウェーは、GSTはパリ協定を実現しているかどうかの試金石であると述べた。さらに同代表は、全ての国が2025年までに排出量のピークを迎えなければならないわけではないが、全体の排出量はそれまでにピークを迎える必要があると指摘した。
アイルランドは、次の必要性を強調した:リスク軽減行動;革新的な資金制度のための新たな資金源の発掘;化石燃料の金融の段階的廃止。
チリは、地球温暖化を1.5℃で抑制する上での緩和の重要性を強調、適応、損失損害を最小限に抑える、及び資金増額に焦点をあて、1.5℃の世界を実現する上で必要な資金は、2℃の世界に適応するための資金より、はるかに少額であると指摘した。
サウジアラビアは、排出量に焦点をあてるのではなく、特定のエネルギー資源を攻撃する試みに対し、懸念を表明した。排出量のピーク達成に関し、同代表は、先進国と開発途上国を差異化し、実施手段を強化し、全ての低排出技術の規模拡大が必要だと指摘した。
ブラジルは、緩和と適応は気候変動の原因である開発モデルの転換とリンクさせるべきだと強調した。同代表は、全てのものが行動を起こす必要があり、経済的及び技術的な手段を公平に共有する必要があると強調した。
英国は、適応の重要性に着目し、先進国は適応資金を実現しなければならないと指摘した。同代表は、全てのものが同じペースで動くわけではないと認め、実施手段が重要だと認識した上で、化石燃料の段階的廃止を促し、この化石燃料の段階的廃止を含め、共通の表現及び着地点を見出すことへの希望を表明した。
南アフリカは、自国は野心的なNDC実施に必要な支援の10%以下しか受け取っていないと述べ、野心のギャップではなく、実施手段にギャップがあると指摘した。
マーシャル諸島は、2040年までに何もなされなければ、自国の国民は移動を余儀なくされる、これはそれぞれの家、文化、祖先を廃するに等しいことを、想起した。
オーストラリアは、NDCsを1.5℃目標に沿うものにし、再生可能エネルギーを3倍に増やし、エネルギー効率を倍増し、化石燃料が稼働していないことを強調した。
ミクロネシア連邦は、二酸化炭素以外のガス、特にメタンに関し、緊急に行動する必要があり、これは平等と正義の問題だと強調した。
イラクは、パリ協定には反するが、化石燃料の段階的削減、または段階的廃止、さらには化石燃料補助金への言及を拒否した。
フランスは、気候目標を達成するには、資源を持たない国に、可能な限りの資源を引き寄せる必要があると強調し、パリ協定第2条1(c)項 (資金フローの調整)の作業は、議論を反らせるものではなく、不可欠なものだと強調した。同代表は、化石燃料に関する強力なメッセージの発信を促し、緩和及び適応問題への対応に、資金パッケージを用いるよう促した。
キューバは、現在の交渉文書は適応と緩和の扱いのアンバランスが続いていると嘆き、緩和文書では、共通するが差異のある責任及びそれぞれの能力(CBDR-RC)が薄められたり、弱められたりしていると嘆いた。同代表は、適応資金の倍増、衡平性を含めるGSTの成果、正当な転換の文書で、各国の能力に基づく異なる経路を認識するよう求めた。
フィリピンは、次の4項目を議論しなければならないと強調した:約束、遵守、創造力、気候資金。同代表は、キャパシティビルディング及び技術移転の規模拡大が必要だと強調し、さらに適応世界目標(GGA)に関し、ともに努力する必要があると強調した。
コスタリカは、1.5℃目標達成に向け、行動を加速化する必要があると強調した。同代表は、緩和行動と適応行動のリンク、特に森林部門でのリンクを指摘し、気候資金ではこのような行動の多様な便益を認識するよう求めた。
議長のAl Jaberは、このイベントを閉会し、このグループを「変革を起こすマジュリス(Changemakers Majlis)」と称することを提案した。同議長は、このプロセスを完全な透明性を持って運営していくと約束し、参加者に対し、野心的な成果をあげるよう求めた。
適応
適応世界目標の作業プログラム:オブザーバーに公開された代表団長協議で、COP 28 CEOのAdnan Aminは、補助機関議長作成の文書に関する意見発表を招請した。少数のグループ及び締約国は、この文書は相当量の作業を必要としているが、交渉のたたき台になるとの見方を示した。
全体を網羅する問題に関し、一部の先進国は、全ての締約国が適応を行うべきだと指摘し、少数の開発途上国グループは、この文書では一貫して開発途上国に言及するよう求めた。独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)は、パリ協定第7条2項は適応を全てのものが直面する地球規模の課題とする一方、地方や地域的な効果を伴うとしていることを想起した。
文書の序文に関し、LMDCs、アラブグループ、フィリピン、インドネシアは、CBDR-RCへの言及を支持し、一部のものは、「各国の国情に鑑み(in light of national circumstances)」というパリ協定の表現を追加するよう求めた。米国、ノルウェー、他の先進国は、この言及を拒否した。
実質的な目標に関し、先進国及び開発途上国は、2030年までの目標達成というタイムラインについて、懸念を表明した。
米国は、目標に加えて、適応を開発の本流に据えるのを加速し、気候情報及び早期警戒システムの開発及び実現を進め、水及び食糧インフラストラクチャーのレジリエンスを高めることで福利(well-being)を改善し、健康及び生態系も改善するなど、全体を網羅する原則を提案した。ロシアは、レジリエンスを高める教育を的に絞るよう提案した。
EIGは、進捗を図るためのベースラインが存在しないと指摘した。LMDCsは、全ての目標は柔軟性を有し、国家決定のものであるべきだと述べた。
手順上の目標に関し、G-77/中国は、2030年を全ての目標を持続可能な開発目標に合致させるタイムラインにすることを提案した。ノルウェーは、計画策定には時間がかかると指摘し、2030年はリスク評価の目標年にし、2035年を計画の目標年にすることを提案した。
実施手段(MoI)に関し、後発開発途上国(LDCs)は、実施手段はほとんどが失われていると述べたが、米国は、むしろ多すぎるくらいだと述べた。
G-77/中国は、アフリカングループ及びAOSISと共に、冒頭の文章の中で先進国はMoI及びを提供すると特定し、資金は譲渡性が高く、グラントベースで提供されるべきだと述べた。EIGは、MoIは幅広い感覚で論じられるべきだと述べた。日本は、「新しく追加的な(new and additional)」資金の削除を提案、気候資金の新しい集団数量目標では現在議論が進行中だと指摘した。米国及びEUは、MoIを文書草案に使われるコスト見積もり手法よりも、パリ協定同様の構成することを求めた。
アフリカングループ、AOSIS、AILAC、LDCsは、適応可能するものとの表現を拒否した。
AOSIS及びLDCsは、それぞれの特別な状況を「極めて重要(crucial)」との認識を示した。LMDCs、アルゼンチン・ブラジル・ウルグアイ(ABU)は、特に脆弱である諸国と表現するパリ協定第7条の構成を希望した。
さらなる作業に関し、多数の開発途上国グループは、GGAを独立した議題項目にするよう求め、LMDCsは、SBsとCMAの両方の議題項目にすることを求めた。
指標に関するダイアログについて、AOSISは、そのモダリティ、インプット、アウトプットを明らかにしてほしいと希望した。アラブグループは、2つのワークショップの開催を提案した。米国及び英国は、指標の作業を構成機関で行うことを提案した。
Aminは、閣僚級協議を続ける予定。
損失損害
ワルシャワ国際メカニズム:非公式協議で、共同進行役のLucas di Pietro (アルゼンチン)は、参加者に対し、サンチャゴ・ネットワークの事務局を置くことに関する国連防災機関(UNDRR)及び国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)との覚書について、コメントを求めた。
長時間のハドル会合で、締約国は、文書草案の法的な立場や明確性を改善する「外科的な(surgical)」変更を議論した。次の点が合意された:
- MoUはWIMのガバナンスの問題の議論に予断を加えるものではないと記述する;
- UNDRR及びUNOPSは、関連するサービス及びサポートを提供するにあたり、国連の全地域にある地域オフし及び小地域オフィスを「活用する(make use of)」ではなく、「利用可能にする(make available)」と明記する;
- UNFCCC事務局の法律チームに対し、緊急事態におけるホスト組織の責任に関するパラグラフを強力なものにするよう招請する;
- ネットワークの事務局は、UNOPS及びUNDRRのそれぞれの受託者の「原則及び(principles and)基準」に則り、ネットワークに一貫性のある形で供与される資金の配分を管理、指導するものとする;
- ネットワークの資金供与をどのように行うべきか、合意された表現を記載する特定の決定書への言及。
共同進行役のdi Pietroは、コメントは法律チームの手で文書に組み込まれると述べ、さらに、改定文書は最終の文書草案の形式でオンライン掲載される前に、承認のため、非公式に共有されると述べた。最終文書には、COPそして/またはCMAでの採択に向けた決定書草案が附属書として含まれる予定。
対応措置
条約、京都議定書、パリ協定の下での対応措置実施の影響に関するフォーラムの報告:非公式協議では、共同進行役のAndrei Marcu (ホンジュラス)及びGeorg Børsting (ノルウェー)が作成した新しい文書に焦点があてられた。
ある先進国は、他の少数の諸国の支持を得て、フォーラムの機能のレビュー、作業プログラム、モダリティに関する文書に注目する必要があると考え、SB 60 (2024年6月)までの審議の延期を提案した。これら諸国は、代わりに、フォーラムの作業計画の中間レビューに焦点を当てることを提案した。少数の開発途上国グループは、反対し、文書はバランスがとれているとみない、その全体の審議を続けるよう求めた。締約国は、決定書草案の全ての要素に対するコメントに進み、共同進行役に対し、ドバイで実施可能な成果に関する立場の違いを議長職に伝えるよう要請した。
中間レビューに関し、締約国は、このフォーラム及び影響に関するカトヴィツェ委員会(KCI)による実施に向けた活動の提案を記載する4つのパラグラフを審議した。一部の締約国は、自分たちの提案がリストに掲載されていないとして懸念を表明する一方、文書の審議をする意思を表明した。次の2つの活動について、大きな意見の隔たりがあった:地域の事例研究、電気自動車(EV)産業への補助金提供に伴うプラスの影響及びマイナスの影響に関する啓発。
事例研究に関し、締約国は、KCIに既に提出された3件の事例研究の作成に与えられた時間の欠如を懸念し、他のものは、国連の各地域の事例研究を加えることに熱を入れた。
EV産業への補助金提供の影響に関し、多数の締約国は、低排出の輸送産業または部門の範囲拡大を提案した。2つの開発途上国は、妥協の精神とリストのバランスをとるため、ユニラテラルで越境の措置の影響を研究する活動の追加を提案し、2か国の一方は、カーボンプライシングに関するものにすべきだと特定した。
機能のレビュー、作業プログラム、モダリティに関し、締約国は、過去の会合で既に表明した意見を繰り返した。一部のものは、プラスの実績を考え、このフォーラムの、そしてKCIの機能と作業分野を同じにしておくことに熱心であったが、他のものは、フォーラム及びKCIを「さらに良くするため(make them even better)」強化してほしいと述べた。
モダリティに関し、多くの開発途上締約国及びグループは、フォーラム及びKCIの会合の会期及び頻度を延ばすことを希望した。一部の先進国は、現在の会期及び頻度の保持を希望し、KCIのメンバーシップを拡大し、各オブザーバー構成グループの代表を含めるよう求めた。
機能及び活動の両方での議論では、フォーラム及びKCIは対応措置のマイナスの影響のみに注目するのか、それともマイナスとプラスの両方の影響に注目をするのか、懸念が出てきたようであった。
共同進行役は、文書を改定し、これを議長職に送り、指示を求める予定。
廊下にて
COP 28議長職は、会合の当初から、透明なプロセスを約束していた。交渉時間が少なくなり、少数の重要問題の議論は宙に浮く中、透明性は戦略的に利用された。GGAに関する代表団長会合(HoD)、及び全閣僚が会議するカウンシルのMajlisの両方とも、一部のオブザーバーに公開され、オンラインで放映された。
あるオブザーバーが指摘したとおり、このことは、「重要なプレーヤーに光を当てた(shone the light on the key players)」のである。一部のものは、HoDの公開を進めるなら、GGAに関する文書案での合意が進展するのではないかと感じた。この方式が、非公開で行われたGSTの議論より、生産性が高いかどうかは、まだわかっていない。閣僚たち及び交渉担当者らは、正式な会合が予定されていない会議室9を出入りするのが見られた。GST文書の議論が行われているとのうわさが流れ、あるオブザーバーは、これは「マジュリスからの微調整案を待っている(awaiting tweaks from the Majlis)」のだと述べた。
Majlisの劇場型のパーフォーマンスからは、具体的な提案も妥協案もでてこなかった。しかし、熟練のオブザーバーは、「形式はともかく、再生可能エネルギーへのシフトを机上に載せるとの暗示(a hint that support, in one form or another, for shifts to renewables are on the table)」と見た。多くのものは、化石燃料からの転換は困難であると認識し、支援、技術移転、キャパシティビルディングの提供も同様だと指摘した。夜、米国と中国の間で新たな、または改定版の共同声明が出されるとの噂が流れ、参加者は戸惑っていた。ベテランのオブザーバーは、会議の数週間前に出されたSunnylandsステートメントの野心的な更新を希望するとともに、バランスは、「別な方向に傾く(tip the other way)」のではないかと恐れていた。米国と中国の二者間合意の文言は文書に盛り込まれることが多く、グラスゴーの石炭を巡る表現でもそうであった、このため、両者の動きは、土壇場での決定的な動きになる可能性がある。
この日の終わりで、一つだけはっきりしていることがあった:正当な転換経路の問題が、気候プロセスを制していることである、ある参加者が指摘したように、作業プログラムの議論を制したわけではないが、GST及び資金フローのアラインメントの議論では、存在感を増してきた。