Daily report for 11 December 2023

UN Climate Change Conference - United Arab Emirates Nov/Dec 2023

この日の議論は、大半が非公開で行われ、参加者は、待ちのゲームで、立ち尽くしていた。統治組織の非公開プレナリーの前半は、新しい決定書がほとんど出てこず、あまり安心材料にはならなかった。グローバルストックテイク(GST)の新しい文書は、深い懸念を招き、「まったく不十分だ(utterly insufficient)」と受け止められた。多くのものは、この文書では1.5℃目標という、この会合の「北極星(North star)」には届きそうになく、むしろ野心の後退だと感じた。

COPプレナリー

夜、COP 28議長のAl Jaberは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国会議(COP)28回会合の非公開プレナリーの第1部を開会し、締約国に対し、「決定をするのは今だ(time for decisions is now)」と述べた。同議長は、「1210日日曜日に招集した「変化をもたらすマジュリス(Changemakers Majlis)」からは新しい論調と協力の精神が出てきたと述べ、締約国に対し、1.5℃目標に手が届くよう、協力して努力するよう奨めた。その後、同議長は、COPでの多数の決定書の採択を求めた。

信任状報告書:COPは、信任状報告書(FCCC/CP/2023/10-FCCC/KP/CMP/2023/8-FCCC/PA/CMA/2023/14)を採択した。

手順規則書:Al Jaber議長は、この項目では合意に至っていないと指摘し、COPは、手順規則書草案(FCCC/CP/1996/2)のうち、規則42項以外の適用を続けると指摘した。

将来会合の日程及び場所:締約国は、決定書(FCCC/CP/2023/L.4)を採択し、20241111日月曜日から22日金曜日までCOP 29を主催するとのアゼルバイジャンの申し出、及び20251110日月曜日から21日金曜日までCOP 30を主催するとのブラジルの申し出を受け入れた。

アゼルバイジャンのエコロジー・自然資源大臣のMukhtar Babayevは、COP 29主催の自国の申し出を支持した東欧地域諸国に感謝を表明した。

ブラジルの環境・気候変動大臣のMarina Silvaは、COP 30Belém,で開催される予定だと述べ、アマゾン地域で会議を開催する象徴的な意味を指摘した。同大臣は、再生可能エネルギーの急激な増加と付随して化石燃料への依存度を削減する、新しいエネルギー・ミックスを導く、実のある結果を得て、COP 28を離れることに焦点を当て、緩和野心に合わせた実施手段が必要だと指摘した。

補助機関報告書:COPは、SBSTA 58報告書 (FCCC/SBSTA/2023/4/Add.1) 及びSBI 58報告書 (FCCC/SBI/2023/10/Add.1)に留意し、気候変動に関する政府間パネルIPCC)の第6次評価報告書に関する決定書((FCCC/SBSTA/2023/4/Add.1)、及び技術メカニズム及び資金メカニズムのリンケージに関する決定書(FCCC/SBI/2023/10/Add.1)を採択した。

条約附属書I締約国の報告及びレビュー:Al Jaber議長は、SBIはこの議題項目での作業を終了できなかったと指摘し、この項目はSBI 60の暫定議題書に記載されると指摘した。

条約非附属書I締約国の報告:Al Jaber議長は、SBIはこの議題項目での作業を終了できなかったと指摘し、この項目はSBI 60の暫定議題書に記載されると指摘した。

適応委員会の報告及び適応委員会の進展、効果性、実績のレビュー:Al Jaber議長は、SBIはこの議題項目での作業を終了できなかったと指摘し、この項目はSBI 60の暫定議題書に記載されると指摘した。

技術執行委員会及び気候技術センター・ネットワークの合同の年次報告書:COPは、決定書 (FCCC/SB/2023/L.9)を採択した。

条約の下のキャパシティビルディング:COPは、SBI 59から送られた決定書 (FCCC/SBI/2023/L.18)、及びSBI 58から送られた、キャパシティビルディングに関するパリ委員会の第2回レビューの委任条件に関する決定書(FCCC/SBI/2023/10/Add.1)を採択した。

後発開発途上国問題:Al Jaber議長は、SBIは結論書(FCCC/SBI/2023/L.24)を採択したと指摘した。

ジェンダー:COPは、決定書 (FCCC/SBI/2023/L.17)を採択した。

事務管理上、資金上、制度上の問題:予算、資金、制度の問題:COPは、SBI 58から送られた2つの決定書を記載する文書FCCC/SBI/2023/10/Add.1を採択した、一つは事務管理上、資金上、制度上の問題に関する決定書、一つは国際取引ログの予算に関する決定書である。さらにCOPは、SBI 59から送られた決定書 (FCCC/SBI/2023/L.14/)について、SBI閉会プレナリーにおいて、非締約国利害関係者の参加及び協力に関する政策及び基準の報告書への言及を除去すると口頭で改定された決定書 (FCCC/SBI/2023/INF.12/Rev.1)を採択した。

UNFCCCプロセスにおける意思決定プロセス:Al Jaber議長は、この問題に関する議長職協議では合意に達していないと指摘した。このため、この問題は、COP 29の暫定議題書に記載される。

CMPプレナリー

信任状報告書:CMPは、(FCCC/CP/2023/10-FCCC/KP/CMP/2023/8-FCCC/PA/CMA/2023/14)を採択した。

補助機関報告書:CMPは、京都議定書の下での国際取引ログの管理者による報告書(FCCC/KP/CMP/2023/6)に留意した。

クリーン開発メカニズムの問題:CMPは、決定書 (FCCC/KP/CMP/2023/L.2)を採択した。

京都議定書の下でのキャパシティビルディング:CMPは、FCCC/SBI/2023/10 and Corr.1)に記載されるSBI 58結論書に留意した。

京都議定書の約束の野心引き上げに関するハイレベル閣僚級ラウンドテーブルの報告書Al Jaber議長は、締約国は意見の一致に至ることができなかったと指摘、この問題は、CMP 19の暫定議題書に記載される予定。

事務管理上、資金上、制度上の問題:CMPは、2つの決定書を採択した一つはSBI 58から送られた文書に記載される決定書FCCC/SBI/2023/10/Add.1、及びSBI 59から送られた文書にSBI 59閉会プレナリーにおける口頭での改定を加えた決定書 (FCCC/SBI/2023/L.14/Add.2)である。さらに、CMPは、国際取引ログの予算に関する決定書(FCCC/SBI/2023/10/Add.1)を採択した。

CMAプレナリー

信任状報告書:CMAは、信任状報告書(FCCC/CP/2023/10-FCCC/KP/CMP/2023/8-FCCC/PA/CMA/2023/14)を採択した。

補助機関報告書:CMAは、SBSTA 58から送られたIPCC6次評価報告書に関する決定書 (FCCC/SBSTA/2023/4/Add.1)を採択した。

開発途上国の報告作成に対する資金援助及び技術支援の提供:CMAは、決定書 (FCCC/PA/CMA/2023/L.2)を採択した。

適応委員会の報告及び適応委員会の進捗、効果性、実績のレビュー:Al Jaber議長は、SBIはこの議題項目での作業を終了できなかったと指摘し、この項目はSBI 60の暫定議題書に記載されると指摘した。

技術執行委員会及び気候技術センター・ネットワークの合同年次報告書:CMAは、決定書 (FCCC/SB/2023/L.10)を採択した。

パリ協定の下でのキャパシティビルディング:CMAは、キャパシティビルディングに関するパリ委員会の技術的進展の年次報告書に関する決定書(FCCC/SBI/2023/L.19)、及びキャパシティビルディングに関するパリ委員会の第2回レビューに対する委任条件についての決定書(FCCC/SBI/2023/10/Add.1)を採択した。

事務管理上、資金上、制度上の問題:CMAは、COPが採択した決定書(FCCC/SBI/2023/10/Add.1)を採択した。

緩和

パリ協定第64項(メカニズム)の規則、モダリティ、手順:非公式協議、共同進行役のKate Hancock (オーストラリア)及びSonam Tashi (ブータン)は、締約国に対し、意見の不一致が残っている決定書草案のパラグラフ、特に次の項目に焦点を当てるよう求めた:緩和貢献ユニット(MCUs)の認可;クリーン開発メカニズム(CDM)の新規植林及び再植林活動の第64項メカニズムへの移行と登録;認可された第64項排出削減量(A6.4ERs)のメカニズム・レジストリから国際レジストリの締約国別セクションへの移行;除去量及び手法論の必要条件に関するメカニズム監督機関の提案。締約国は、前夜に開催された非公式な非公式協議での議論を振り返り、それぞれの立場及び懸念を明らかにし、橋渡し提案を作成した。

MCUsの認可に関し、2つのグループは、他の多くのものの反対を受けつつも、ホスト締約国は既に発行された MCUsに対する認可ステートメントを提供する可能性があると規定するバラグラフの削除を提案し、このような規定は、収入の一部(shares of proceeds)に関係する相応の調整、及び世界の排出量全体の緩和(OMGE)が適用されるとの逆インセンティブを提供するとして、懸念を表明した。あるグループは、この点で抜け穴が生じることを回避するため、事務局によるテクニカルペーパーの作成を要請した。

このパラグラフを支持するものは、次のように発言した:認可は、主権者の特権である;認可は、第1回の移転の前にのみ行うことができるが、MCUは、メカニズム・レジストリに置かれたままであり、抜け穴を作る可能性を排除する;第62項の下でのものと似たような柔軟性が、第64項の下でも必要である。あるグループは、MCUsを認可された6.4ERsに変換する際、相応の調整に関係する全ての必要条件の対象となるよう、セーフガードを置くとの表現の追加を提案した。

CDM活動の移行に関し、ある開発途上国グループは、特定の状況の下、移行措置の対象となっていないプロジェクトの移行及び登録を認めるという、プロジェクトの移行承認に関係するパラグラフについて、目的の明示を求めた。

認可された6.4ERsの移行に関し、締約国は、国際レジストリとメカニズム・レジストリの接続について議論し、ある締約国は、他の多くのものの支持を得て、独立したまたは単独のレジストリへの言及を求めた。あるグループは、国内レジストリの代わりに国際レジストリの利用を希望する締約国に対し、(国際レジストリの)利用を認める決定書が必要だと強調した。

除去量及び手法論に関し、締約国は、CMA 6 (2024)における、これらの問題に対する推奨案の採択を見据え、さらなる議論が必要であることでは合意したが、これをどのように委任するかでは意見が分かれた。多様なオプションについて議論が繰り広げられ、これらの文書を採択する、暫定的に採択する、歓迎する、またはその作業を認めるかどうかなどが議論された。多数のものは、「補助機関から出てきた推奨案は全て改定の対象となる(every recommendation coming out of the Supervisory Body is subject to a revision)」という前例を作りかねないと警告し、このような事例は、メカニズムのガバナンスの健全性を損なうと述べたが、他のものは、これら2つの文章は、「本質的なもの(constitutional)」であり、このため採択を必要とするとの所感を述べた。多数のものは、補助機関に対し、文書改定の一般的なマンデートではなく、改定を求めるという目標を絞ったマンデートを希望する一方、項目のリストでは合意が無いと指摘した。各国は、メカニズムの運用開始及び環境十全性の両方を確保するよう求めた。さらに、締約国は、2つの文書を等しく扱うかどうかでも意見が分かれ、あるグループは、除去に関する推奨案に対し、より深刻な懸念を持っていると述べた。

共同進行役は、インプットに基づく新しい文書バージョンを発行すると、締約国に告げた。非公式協議は夜も続けられた。

廊下にて 

COP 28は、「待ちのゲームwaiting game」、あるいは「牛が家に戻ってくるのを待つwaiting for the cows to come home」段階に突入した。パリ協定第6条の議論以外は全て地下に潜ったことから、多くのものは、新しい文書草案のリリースを待ちつつ、どこが落としどころになるか、推測が飛び交っていた。

さらに、多くのものは、締約国グループが協議を行っているチャンネルについても、混乱していた。協議を行っていたのは、議長職や今週初めに任命された共同進行役の閣僚らだけではない、UNFCCC事務局長のSecretary Stiellも、さらにはドバイに戻ってきた国連事務総長のAntónio Guterresも協議を開催していた。熟練の参加者は、「水面下では多くのことが出てきている(A lot is bubbling under the surface」」とし、「問題は、それがどこで表に出てくるか、出てきたとしても、我々の意に沿うものかどうかだ(the question is when it will surface, and whether we will like it when it does)」と述べた。

午後遅くに出されたGST草案への反応は、素早く、しかも激怒していた。化石燃料の段階的廃止または段階的削減を求める表現が含まれるとの希望は打ち砕かれた。文書は、締約国が行うことが「可能な(could)」行動のリストを提案するにとどまった、これらの行動には次が含まれた: 

  • 新規かつ緩和措置のない石炭火力発電の認可の制限;
  • 緩和及び除去技術の進歩; 
  • 2050年まで、2050年以前、または2050年前後(by, before, or around 2050)」のネットゼロを達成するため、化石燃料の消費及び生産を「削減する(reducing)」。

オブザーバーは、圧力をかけ続け、人間の鎖を作り、夜遅くの協議に向かう閣僚級たちを待ち受け、その責任を問い、命と生活がかかっているのだと訴えた。

多数の閣僚たちは、文書に対して、等しく強固な立場をとった。少数のものは、「アラカルテのレストランの範疇を越えている(We are beyond an à la carte restaurant)」と強調した。多数の先進国及び開発途上国の閣僚らは、この文書は自分たちが受け入れできるものからすると、「足らない、あまりにも足らない(short, way short)」と述べた。小島嶼開発途上国の閣僚らは、「我々の死亡証明に署名するため、ここに来たのではない。黙って、水中の歯かに行くことはしない(We did not come here to sign our death warrant. We will not go silently to our watery graves)」と述べた。

疲労困憊した参加者は、代表団長協議の場を立ち去りながら、COP28に残された短い時間の間に、この「無意味なオプションリスト(meaningless list of options)」から、どう動くことができるか、疑問に感じていた。 

地球交渉速報のCOP 28サマリー及び分析は、20231216日土曜日、右記に掲載予定:bit.ly/enb_cop28  

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Participants

National governments
Azerbaijan
Negotiating blocs
European Union

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