Daily report for 11 November 2024
UN Climate Change Conference Baku - November 2024
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第29回締約国会議(COP 29)は、開会の1時間後には中断、議題書の追加協議が行われた。最終的には、全議題書が採択され、さらにパリ協定第6条4項メカニズムの決定書も採択された。
歓迎の辞
COP 28議長のSultan Al Jaberは、開会を宣言し、「団結、行動、実現」が必要だと強調、損失損害基金への資金貢献を呼びかけ、気候資金の新しい集団数量目標(NCQG)の確実な実現を促した。
COP 29議長のMukhtar Babayevは、COP 29は「逃してはならない瞬間(unmissable moment)」だとし、公平かつ野心的なNCQGを打ち出して、金融市場に強いメッセージを送ることを求めた。さらに、パリ協定第6条の炭素市場の運用開始は国家決定貢献(NDCs)の実施コスト削減に有用だと説明、次回のNDCsは第1回グローバルストックテイク(GST)の結果から情報を得るべきであり、これには、各国の状況や経路、アプローチを考慮する、公正で秩序ある形での化石燃料からの移行が含まれると指摘した。「COP 29は緩和についても沈黙するわけにはいかない(COP 29 cannot and will not be silent on mitigation)」と述べた議長のBabayevは、行動議題書(Action Agenda)はエネルギーグリッド及び有機廃棄物からのメタン排出量での行動を求めていると指摘した。同議長はさらに、各締約国は2024年末までに第1回の隔年透明性報告書(BTRs)を提出し、2025年までに国別適応計画を用意することが期待されていると想起した。
UNFCCC事務局長のSimon Stiellは、「気候資金は慈善活動ではない(climate finance is not charity)」が、全ての締約国の国益であるとし、さらに次のように述べた:「世界の3分の2の国が排出量削減の費用を出せないなら、全ての国がその代償を払うことになる(If two thirds of the world’s nations cannot afford to cut emissions, every nation pays the price)」。同事務局長は、一回のCOPで必要な全ての移行を実現できるわけではないと認めた上で、クリーン・エネルギー及び気候レジリエンスへのシフトを速やかに行う必要があると強調、適応の進捗状況の測定が重要であると指摘、BTRsは「手探りでの決定(making decisions in the dark)」の回避に役立つと強調した。
手順上の問題
手順規則書:締約国は、手順規則書草案(FCCC/CP/1996/2)のうち、投票に関する規則42項以外を適用することで合意した。COP 29議長職は協議を行う。
議題書の採択:議長のBabayevは、議題書に関する事前協議は会合前から始まり、開会式典後7時間にわたり続けられたと報告した。同議長は、締約国提案の議題項目を除く、暫定補足議題書の採択を提案したが、下記の項目に関しては議長が協議を行うと述べた:
- 山岳地帯、ただし議長はCOP 29においてハイレベルイベントを開催;
- アフリカ地域の特別なニーズ及び状況;
- 資金メカニズムの第7回レビュー;
- 気候関連の貿易を制限するユニラテラルな措置、補助機関(SBs)議長らと協調。
議長のBabayevは、COP 29議題書に関し、技術移転のポズナニ戦略計画はSBIで議論すると指摘、他の保留項目に関しては第2週に議長による協議を行うが、条約改定案及び条約第4条2(a-b)項の第2回適切性レビューは保留されると述べた。
第6回パリ協定締約国会議 (CMA 6)の議題書に関し、議長のBabayevは、GST実施ダイアログの議題項目を資金関連問題の議題項目の下に保持すると同時に、この議題小項目の位置づけがこの問題に関するSBIでの協議範囲に予断を加えるものではないとの脚注の挿入を提案した。EU、小島嶼諸国連合(AOSIS)、アンブレラ・グループ、環境十全性グループ(EIG)、後発開発途上国(LDCs)、独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)は、提案を受け入れる一方、資金に焦点を絞ったGST実施ダイアログへの懸念を表明した。大半の締約国は、GST決定書のマンデートは全て進めるべきだとし、CMA 6ではこれを議論する場が用意されるはずとの認識を示した。有志開発途上国(LMDCs)、アフリカン・グループ、アラブ・グループは、GST実施ダイアログの焦点は資金であると強調、合意成果の交渉再燃の動きを悲嘆した。LMDCsは、このダイアログは先進国から開発途上国への資金支援、及びNCQGの実施追跡に焦点を当てるべきだと強調した。
ブラジル、南アフリカ、インド、中国(BASIC)は、協調及び協力的な成果を挙げるべく、議長に協力する用意があると表明、アフリカン・グループは、SBsに対し、サンチャゴ・ネットワーク諮問理事会の作業について、特にガバナンス上の懸念に関し、協議するよう求めた。
締約国は、議長職の協議にゆだねる項目を補足暫定議題書から排除し、残余の項目の番号を調整することで合意した。下記の文書が採択された:
- COP補足暫定議題書(FCCC/CP/2024/1/Add.2);
- CMP補足暫定議題書(FCCC/KP/CMP/2024/1/Add.1);
- CMA補足暫定議題書(FCCC/PA/CMA/2024/1/Add.1)、ただしGST実施ダイアログの位置づけに関する脚注を付す;
- SBI議題書(FCCC/SBI/2024/15/Add.1)、パリ協定第13条の報告及びレビュー関連の資金援助及び技術支援の供与に関する議題項目を付す;
- SBSTA補足議題書(FCCC/SBSTA/2024/8/Add.1)。
COPにおける作業構成書:下記に関するコンタクトグループを招集:
- 長期資金;
- 資金常任委員会(SCF);
- 緑の気候基金(GCF)の報告書、及び同基金に対するガイダンス;
- 地球環境ファシリティ(GEF)の報告書、及び同ファシリティに対するガイダンス;
- 損失損害基金の報告書、及び同基金に対するガイダンス;
- COP、CMA、損失損害基金間のアレンジ;
- 条約の長期世界目標の定期レビュー及びその達成に向けた全体の進捗状況。
下記に関し、議長による協議が招集される:
- 将来会合の日付及び場所;
- ワルシャワ国際メカニズム(WIM)に対するCOPの権限及びガイダンス;
- 資金メカニズムの第7回レビュー;
- UNFCCCプロセスでの意思決定。
CMAにおける作業構成書:下記に関するコンタクトグループを招集:
- パリ協定第6条8項の非市場アプローチ枠組の作業プログラム;
- NCQG;
- SCF問題;
- GCFの報告書、及び同基金に対するガイダンス;
- GEFの報告書、及び同ファシリティに対するガイダンス;
- 損失損害基金の報告書、及び同基金に対するガイダンス;
- COP、CMA、及び損失損害基金理事会の間のアレンジ;
- 適応基金関連問題;
- パリ協定第2条1(c)項の範囲及び第9条との補足性に関するダイアログ;
- 適応資金全体の供与額倍増に関する報告書;
- 技術実施プログラム。
次に関する非公式協議が招集される:
- GSTダイアログの年次報告書;
- NDCsの特性に関する追加ガイダンス;
- 実施促進・遵守推進委員会の問題。
CMAは残余の議題項目をSBsに回した。SBsの閉会プレナリーにおいて、CMA議長は、会議第2週での作業モダリティを提案する予定。
CMPの作業構成書:クリーン開発メカニズム(CDM)の問題、及び適応基金問題に関するコンタクトグループが招集される。議長のBabayevは、京都議定書コミットメントの野心引き上げに関するハイレベル閣僚ラウンドテーブルの報告書について、意見の隔たりが残っていると報告、締約国は議長によるさらなる協議招集で合意した。
SBsにおける作業構成書:次に関する合同の非公式協議が招集される:
- GSTプロセス全体の手順要素及びロジスティック要素;
- 適応世界目標に関する問題;
- 適応委員会報告書;
- 適応委員会の進捗状況、効果性、実績のレビュー;
- WIMの2024年のレビュー;
- 緩和野心及び実施作業プログラム;
- 農業及び食糧安全保障に関する気候行動実施の共同作業;
- 技術執行委員会及び気候技術センター・ネットワークの合同年次報告書。
次に関する合同コンタクトグループが召集予定:WIM執行委員会(ExCom)及びサンチャゴ・ネットワークの合同年次報告書;公正な移行作業プログラム;対応措置実施の影響に関するフォーラム。
アフリカン・グループは、サンチャゴ・ネットワーク諮問理事会の決定について説明を求めた。SBSTA議長は、同理事会の決定はWIM ExCom及びサンチャゴ・ネットワークの合同年次報告書に記載されているとし、同報告書の全要素を審議することになると述べた。
SBIは、事務管理上、資金上、制度上の問題に関するコンタクトグループの招集で合意、適応基金問題の審議はSBI 62まで延期した。
SBI及びSBSTAは、残る実質的な全項目に関し、それぞれ非公式協議をしょうしゅうすることで合意した。
オブザーバーの認定:COPは、リストアップされた全オブザーバー組織を認定することで合意し、名称変更した組織に留意した。(FCCC/CP/2024/2)
実質的な問題
補助機関報告書:共同議長らは、SB 60で招集された海洋及び気候変動ダイアログの成果を報告し、各締約国のNDCsに海洋ベースの緩和及び適応行動を記載するとの締約国の提案に注目した。
損失損害基金の報告書、及び同基金に対するガイダンス:損失損害基金理事会の共同議長は、同理事会はCOP及びCMAから委任された課題は全て完了したと報告、この基金の全面的な運用が可能になり、プレッジを貢献協定にするべく、資金寄付者と議論する用意があるとして、これを祝した。
パリ協定第6条4項規定メカニズムの規則、モダリティ、手順:議長のBabayevは、決定書草案FCCC/PA/CMA/2024/L.1を提起した、この決定書は、パリ協定第6条4項メカニズムの運用開始を可能にするため、パリ協定第6条4項監督組織が採択した2件の基準(手法論の基準及び除去量の基準)に「留意する(takes note)」もの。同議長は、第6条4項の作業はコンタクトグループで続行すると明言、参加者に対し、採択された決定を受け入れるよう求めた。
ツバルは、事前協議なしに、開会プレナリーで決定書を採択することへの不安感を表明、この決定書にはパリ協定の締約国主導のプロセスの考えが十分に反映されていないとし、懸念を表明した。
京都議定書第2約束期間のとりまとめ及び計算の最終報告書:CMPは、報告書に留意し、この議題項目の審議を終了した。その後、ブラジルは、中国の支持を得て、小項目での決定事項の説明を要請、非公式協議の招集を求めた。議長のBabayevは、議長職の方で議論の場を設けると述べた。
京都議定書遵守委員会の報告書:CMPは、同委員会の第9回年次報告書(FCCC/KP/CMP/2024/2).に留意した。
京都議定書の国際取引ログ管理官の報告書:SBIは、CMPにおいて、FCCC/KP/CMP/2024/5記載の報告書に留意することを推奨した。
研究及び組織観測:COMMITTEE ON OBSERVATION SATELLITES (COS)及びCOORDINATION GROUP FOR METEOROLOGICAL SATELLITES (CGMS)は、年次報告書を提示、人工衛星はこの惑星を理解する上で「極めて重要なツール(vital tools)」であると述べ、石油施設、ガス施設からの高濃度メタンの漏れ出しをピンポイントで見つける能力に注目した。
廊下にて
バクー気候変動会議は、暗中模索の中、開会した。(会場には窓がなく、曇天であろうがなかろうが見通しはきかなかった。) 入場を待つものは、そこここに集まり、米国の選挙結果の影響について議論していた。米国バイデン大統領の国際気候政策上級顧問は、記者会見の席上、連邦政府が代わっても民間部門や地方行政府のクリーン・エネルギー拡大に向けた動きまで止まるわけではないと発言した。トランプの一期目におきた混乱を覚えているものは、「前と同じさ(Very déjà-vu)」と指摘、「気候変動との戦いは一国の政治サイクルよりも大きな問題だが、今回は1.5℃目標を達成するかどうかを決める段階だ」と述べた。
インスピレーションに富んだビデオを含める、輝かしい開会式典が行われた後、会議は中断され、議題書の採択に向けた努力が続けられた。開会前にも代表団の長が集まり、早朝3時まで議論したが、結局、合意に達せなかったのである。
締約国はこの日の大半をかけて、第1回グローバルストックテイク(GST)のフォローアップ方法を議論し、GSTはGSTの成果の実施に関するダイアログを設置した。各国の意見の隔たりは大きく、たとえば、全ての締約国にエネルギー移行努力への貢献を求める声が挙がった。このダイアログは、GST決定書の資金のセクションにおいて設定されたが、そのスコープが議論の的となった。GSTの実施に対する資金供与なのか、それとも、GST決定書実施の全体を追跡するためのものなのか?参加者は、このパラグラフの「出どころ」で意見が一致せず、このため、今後の進め方でも合意できなかった。議長職は、二者間協議とグループ協議を往復し、資金の下でのダイアログの位置づけに関する、各国の柔軟さを探り、結局、ダイアログの位置づけはそのスコープに予断を加えるものではないとの脚注を入れることで決着した。
この会議は暫定議題書の採択で開始されるべきと考えたものも多かったが、この点でも議論が続けられた。実際、前回の補助機関会合でも同じことが起きている。このような遅れは受け入れられないと発言するものは、それぞれ異なるものの責任を指摘した。
夜に入り、締約国は、結局、次のように合意した:GSTダイアログに関する脚注は議題書に記載される、締約国提案の議題項目の大半は、議長職による協議にかけられる予定。とはいえ、午後の会議時間が無駄となり、COP 29議長の言では、気候野心を高めるため「逃してはならない瞬間(unmissable moment)」が失われる結果となった。