Daily report for 15 November 2024
UN Climate Change Conference Baku - November 2024
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)補助機関(SBs)会合最終日の前日、締約国は、前例にたがわず、進展を図ろうと焦っており、特に第2週での審議が予定されていない項目での進展を図っていた。締約国は、少数の議題項目で、SB議長らの助けを求めていた。
資金
新しい集団数量目標:非公式協議で、共同進行役のFiona Gilbert (オーストラリア)は、改定文書を提示、共同進行役自身のオプションと締約国の提案を合わせて、透明性、アクセス、権利ベースの表現をスリム化すべく、「最善を尽くした」と指摘した。非公式な非公式協議の結果では、透明性に関するオプションの一つの削除、他の二つを合わせる可能性が提案された。
共同進行役は、土曜日の朝7時までに更新版を提示すると述べた。
資金常任委員会(SCF):SCFの第2回レビューに関する実施のための補助機関(SBI)の非公式協議で、共同進行役のAli Waqas (パキスタン)は、COPだけの決定書とするか、もしくはCOP及びCMAの2件の決定書とするかが決まるまで、実質審議に入ることには抵抗感が示されたと報告、SBI議長との協議を基に、2025年11月のSBI 63における、この問題の審議継続を提案、締約国も同意した。
COP、CMA、損失損害基金理事会の間のアレンジ:COP及びCMAでの非公式協議では、José Delgado (オーストリア)共同進行役を務め、締約国は、COP決定書草案及びCMA決定書草案に多少の改定を加えて、それぞれの審議に回すことで合意した。
決定書1/CMA.5のパラグラフ97に規定するグローバルストックテイク(GST)の成果実施に関するダイアログ:SBI非公式協議で、共同進行役のRicardo Marshall (バルバドス)は、非公式ノートの改訂版を来週のCMAでの審議に送って良いかどうか、尋ねた。
EU、後発開発途上国(LDCs)、米国、カナダは、この文書は追加審議の土台になると述べたが、ロシアは、グローバルストックテイク(GST)におけるユニラテラルな貿易措置への言及を検討するとのオプションが無ければ、承認できないと述べた。有志開発途上国(LMDCs)は、次の記述を入れるべきだと述べた:GSTにおいて、気候資金の新しい集団数量目標(NCQG)及び適応資金倍増に言及する;GSTは、国家決定貢献(NDCs)及び国別適応計画(NAPs)など、多様なプロセスを通して実施される。
アフリカングループ、LMDCs、ノルウェー、米国は、今週、モダリティや結論書草案の議論を追加するよう求めた。多数のものは、スコープに関係するモダリティの議論が行われており、特にインプット、アウトプット、及びハイレベル・ダイアログが議論されていると指摘した。
スコープに関し、アフリカングループは、議長職の協議ではスコープに関し、建設的な議論が行われていると報告、この議論が続けられている間、非公式ノートからスコープの記述を外すことを提案した。EU、独立中南米カリビアン連合(AILAC)、小島嶼国連合(AOSIS)、その他は、それぞれの希望するオプションを述べた。ブラジルは、スコープを、NDCs、NAPs、他の合意された気候目標の実施に向けた資金とするとのオプションの追加を要請した。環境十全性グループ(EIG)は、現在の3つのオプションは資金専用のスコープに偏っていると指摘した。
EUは、事務局に対し、GSTの成果を、各機関及び作業プログラムのマンデートに当てはめるというマッピング作業を行うよう要請したが、中国は反対した。ENVIRONMENTAL NON-GOVERNMENTAL ORGANIZATIONS (ENGOs)は、化石燃料の公平でフェミニストな段階的解消を求め、資金の追跡に対する信頼の欠如を指摘、信用性が必要だと述べた。
共同進行役らは、非公式ノート での意見の一致が無かったことを確認、締約国に対し、文章の「外科的な編集」を行うよう要請した。
緩和
緩和野心及び実施作業プログラム(MWP):SB非公式協議で、共同進行役のUrsula Fuentes (ドイツ)及びMaesela John Kekana (南アフリカ)は、締約国の審議にかける非公式ノートを提示した。
LMDCs、アラブグループ、ロシアは、これを議論の土台にすることを拒否し、このグループのマンデートを書き換えようとしていると指摘、GSTのフォローを中心にするよう求めた。アフリカングループ及びインドも、この文書はグループのマンデートを超えていると指摘、他の締約国は、文書を検討する時間が無かったが、全ての意見を捉えているようだとし、この文書での議論に参加する意思を表明した。
共同進行役らは、このノートを検討し、相互に話し合うよう、締約国に求め、自分たちは、SB議長らと協議し、土曜日にも議論する時間を設けるよう要請すると述べた。
パリ協定第6条4項のメカニズムの規則、モダリティ、及び手順: 科学的技術的助言のための補助機関(SBSTA)の非公式協議で、共同進行役のKate Hancock (オーストラリア)及びSonam Tashi (ブータン)は、現在の文書草案をベースに、スリム化のための橋渡し案を提案するよう求めた。
締約国は、インプットを提供、主に、タイミングや認可に関し、それぞれの希望するオプションを説明した。EIGは、タイミング及び認可に関する記述を組み合わせるよう提案、ツバルは、大半の項目で、意見の不一致が続いているとし、共同進行役にクリーンな文書の作成を委任する前に、さらなる審議を行うよう求めた。
共同進行役らは、今後の進め方に関し、SBSTA議長と協議する予定。
クリーン開発メカニズム(CDM)の問題:SBSTA非公式協議で、共同進行役のKarolina Anttonen (フィンランド)及びAlick Muvundika (ザンビア)は、SBSTA結論書草案の改訂版、及びその附属書として京都議定書締約国会議(CMP)決定書草案を提示した。
CMP決定書草案の議論で、英国は、一部の締約国による、CDM信託基金から適応基金への資金の移行に関する疑義について、CMP 16で認可された前回の移行に対する監査役の調査は、その移行方式に関するもので、合法性に関するものではないと説明した。LMDCsは、文書では資金の移行先を、適応基金及び第6条(メカニズム)としており、これは支持できないと説明、適応基金のみに移行するのであれば、考える余地があると表明したが、EIGはこれに反対した。
SBSTA結論書草案には、次の二つのオプションが含まれる:決定書草案をCMP 19の審議と採択に回す;または、附属書の決定書草案に言及することなく、SBSTA 63での審議を続ける。EU、アフリカングループ、英国、ノルウェーは、前者のオプションを支持したが、LMDCs及びブラジルは、後者のオプションを希望した。共同進行役らは、第3のオプションとして、付属の決定書草案への言及を伴う、SBSTA 63での審議継続を提案したが、これを支持する締約国はなかった。EU及びノルウェーは、文書草案をSBSTA議長及び議長職に回すことを提案した。
共同進行役らは、今後の進め方に関し、SBSTA議長と協議する予定。
適応
適応世界目標(GGA)の問題:SB非公式協議の共同進行役は、Tina Kobilšek (スロベニア)が務めた。締約国は、70のパラグラフと多数のオプションで構成される文書草案について審議し、改定案やスリム化案を表にした。
適応指標の定義づけプロセスに関する議論では、次に焦点を当てた:専門家グループにさらなるガイダンスが必要かどうか;指標の数を特定するかどうか;指標の(非)集約性;適応の実施手段の提供を追求する指標を定義づけるかどうか。トルコは、子供ための指標を含めることを提案し、ブータン及びカザフスタンは、山岳地帯に特化した指標を支持した。EIGは、技術専門家間のジェンダーバランスを求めた。
決定書2/CMA.5のパラグラフ35 (SBsにGGAの審議を要請)に関しては、次を議論した:気候リスクを理解する上での、IPCCの役割、及び先住民の世界観の役割;将来の会合で、このパラグラフ35項を独立した議題項目にするかどうか;GGA枠組のレビューとGST 2とのタイミング。
締約国は、「移行型の適応」という概念への言及に反対し、この定義に関する事務局の報告書(FCCC/TP/2024/8)を検討する時間がないと強調した。
共同進行役らは文書を改定する予定。
適応委員会の報告書:SB非公式協議で、共同進行役のLina Yassin (スーダン)は、非公式ノート改訂版へのコメントを求めた。アフリカングループは、このノートに関し、いかなる実質的な意見発表も拒否、代わりに会議室ペーパーを提示した。多数の参加者は、非公式ノートと会議室ペーパーには重複箇所が多いと指摘し、共同進行役らに対し、この二つを統合するよう求めた。アフリカングループはこれに異議を唱え、非公式ノートは会議室ペーパーと同じ立場のものではないと述べた。
議論の行き詰まりを認めた、共同進行役らは、同委員会の2024年報告書を歓迎するだけとすることを提案し、締約国もこれを支持したが、多数のものは、「最低限」の結果に失望を表明した。
適応委員会の進捗状況、効果性、実績のレビュー:非公式協議の共同進行役は、Geert Fremout (ベルギー)が務めた。締約国は、今回の会合で合意に達する見込みはないことを認めた。カナダ及びオーストラリアは、次回会合までの文書提出を招請するよう促したが、アフリカングループは、反対した。締約国は、SB 62までこの問題を審議を延期する手順上の結論書を志向した。EU及びノルウェー、その他は、進展の無さに深く失望したと述べた。米国は、締約国は悪化する気候のリスクへの対応を支援するというこの委員会の作業を再度遅らせることを「恥とするべきだ」と述べた。
国別適応計画:SBI非公式協議で、共同進行役のMeredith Ryder-Rude (米国)は、スリム化文書へのコメントを求めた。各グループでの調整のため、会合は、短時間、中断した。審議再開時、G-77/中国は、バランスがとれていないとして、この文書を拒否、実施手段供与という先進国の義務が書かれていないとして嘆き、NAPの策定及び実施への資金供与における民間部門への言及に異議を唱えた。EU、米国、オーストラリアは、適応を主流にするとの表現を入れるよう要請した。
共同進行役らは、オプション付きの新しい文書を作成する予定。
LDCsの問題:SBI非公式協議で、共同進行役のEphraim Shitima (ザンビア)は、改定された文書草案へのコメントを求めた。サウジアラビアは、実質的な審議に入る前に、文書全体、CMA決定書草案の全てのパラグラフ、SBI結論書でのCMA決定書への言及を、括弧でくくるよう求め、SBI議長は、ガバナンス問題でのハイレベル協議を開催した。オーストラリアは、LDC専門家グループ(LEG)には、GGA枠組及びGSTの実施支援というCMAからの明確なマンデートが出ていると指摘した。
長時間の議論の後、締約国は、この文書の審議を開始した。COP決定書草案に関し、米国は、条約第4条9項の下でのLDCsの特定のニーズ及び特別な状況を認識するとのパラグラフを、次に置き換えることを提案した:「条約の第4条9項、並びに、パリ協定の序文において、締約国に対し、LDCsの行動への資金供与及び技術移転に関しては、LDCsの特定のニーズ及び特別な状況を十分に考慮すると規定していることを認める(recognizing Article 4.9, of the Convention and the preamble to the Paris Agreement on parties to it taking full account of the specific needs and special situations of the LDCs in their actions with regard to funding and transfer of technology)」。 共同進行役のShitimaは、この文章は決定書15/CP.26 (LEG)のマンデートの延長)と同じであると述べた。
米国は、LDCsはNAPsの実施に対する資金援助の提案策定でも課題に直面すると指摘することを提案した。利害関係者の役割を歓迎するとのパラグラフについて、インドは、先住民及び「地方コミュニティ(and local communities)への言及を求めた。
非公式な非公式協議で議論が続けられる予定。
その他の問題
気候変動の影響に伴う損失損害のワルシャワ国際メカニズム執行委員会、及びサンチャゴ・ネットワークの合同年次報告書:SB非公式協議で、共同進行役のPasha Carruthers (クック諸島)は、新しい文書草案へのコメントを求めた。締約国は、この文書は発行されたばかりだと指摘し、まずは調整が必要だと強調した。非公式な非公式協議で議論が続けられる予定。
技術メカニズムと資金メカニズムのリンク:SBI非公式協議では、Stephen Minas (ギリシャ)が共同進行役を務めた。締約国は、COP決定書草案を議論し、改定や統合、括弧書き、削除などを提案した。ノルウェー及び米国は、そのような情報及びデータは既に別途提案されていると指摘し、技術のニーズ評価結果の実施に対する、地球環境ファシリティ及び緑の気候基金による資金供与など、技術メカニズムと資金メカニズムのリンクに関する情報及びデータを取りまとめた技術報告書の作成を、事務局に要請することに反対した。G-77/中国は、この要請の保持を主張した。
締約国は、SBI 62でもこの問題の審議を続けることで合意した。
技術移転に関するポズナニ戦略プログラム:SBI非公式協議では、Duduzile Nhlengethwa-Masina (エスワティニ)及びStig Svenningsen (ノルウェー)が共同進行役を務め、この問題の審議終了の影響、そしてそれが戦略プログラム自体に与える影響を議論した。アフリカングループは、最後の二つの地域センターからの報告書(そのうちの一つはアフリカ地域センターの報告であるが)を審議するという、手順上の原点(procedural home)を失うことに警鐘を鳴らした。
意見の一致がなかったことから、共同進行役らは、多くの括弧書きを含む文書をSB議長らに提出する予定であり、SB議長らは、今後の進め方について、議長職のガイダンスを仰ぐ予定である。
キャパシティビルディング問題:SBI非公式協議の共同進行役を務めたCristina Carreiras (EU)及びNatalie Flores González (ドミニカ共和国)は、前日に、COP決定書草案で合意したと指摘、改定されたCMA決定書草案への意見発表を求めた。
G-77/中国は、冒頭に、決定書1/CMA.5 (GST成果)の文章、特にパラグラフ114 (キャパシティでのギャップを認め、その迅速な解消の必要性を認める)、及びパラグラフ120 (資金メカニズム及び適応基金の運営機関からのキャパシティビルディング支援を強化する)を挿入することを求めた。EU、米国、日本は、この特定のパラグラフを抽出することにはメリットがないと述べた。
長時間議論した後、締約国は、次のノルウェーの橋渡し案で合意した:キャパシティビルディングのパリ委員会に対し、年次報告書の中で、GST成果の統合に関する情報を記載する、特にキャパシティビルディングに関わるパラグラフ111-120に関する情報を記載するよう求める、実効パラグラフを追加する。
これで、CMA決定書草案は合意された。
GSTプロセス全体の手順及びロジスティックの要素:SB非公式協議の共同進行役であるThureya Al Ali (UAE)及びPatrick Spicer (カナダ)は、意見の集約をまとめたCMA決定書草案を提示した。
締約国は、初期のコメントを発表、この文書を検討するだけの時間が無かったと指摘し、括弧書きになっていない箇所では意見の一致がないと強調した。LMDCsは、第2回GSTへのインプットにおける「都合の良いものを摘まむ(cherry-picking)」ことに反対し、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とIPCC以外の情報源とのバランスをとるとの記述を求めたが、これはEIGが反対した。AILAC、LDCs、EU、EIG、南アフリカ、、オーストラリア、ブラジル、その他は、IPCCに対し、報告書の発表をGSTのタイムラインに合わせるよう招請した。エジプトは、IPCCの信用を損なうのではないかと警告し、GSTとの合致要請は、科学の質に影響する可能性があると指摘した。
EU及びオーストラリアは、GSTの技術フェーズの短縮を求める括弧書きパラグラフの削除を求め、AOSISは、アフリカングループの支持を得て、開発途上国の参加支援の供与について、強い表現を求め、アフリカングループは将来のGSTプロセスでの開発途上国の専門家の参加を強調した。
GST成果をフォローする必要性、及びGST成果を審議するハイレベル委員会の構成では、意見が分かれた。EIGは、GST成果の実施及びNDCの策定に関わるハイレベルな閣僚の参加を求めた。
共同進行役は、文書の改訂版を作成する予定であり、非公式な非公式協議を奨励した。
研究及び組織観測:SBSTA非公式協議では、Patricia Nyinguro (ケニア)及びFrank McGovern (アイルランド)が共同進行役を務め、括弧書きの箇所など、文書草案の議論が続けられた。LMDCs及びアラブグループは、IPCCの短寿命気候強制力に関する報告書及び都市に関する報告書の概要への同意を歓迎することに反対し、これには科学的データが含まれていないと指摘した。EU、マダガスカル、ベリーズ、バングラデシュ、他の多くのものは、この言及の保持を支持した。気温の記録に関する「歴史的(historic)」、「現在進行中の(ongoing)」、「累積(cumulative)」の排出量という表現では、意見が分かれたままであった。
強化された透明性枠組の下での報告作成ツール:SBSTA非公式協議の共同進行役であるDaniela Romano (イタリア)は、結論書草案への意見発表を求めた。締約国は、事務局に次を要請することで合意した:IPCCと協力し、このツールとIPCCのソフトウェアの相互運用性を保持する;ツールをさらに強化し、SBSTA 61での関連する義務化イベントでのプレゼンテーションで示された行動を組み込む;ツールの更新情報を伝えるため、SBSTA 62でも義務化イベントを開催する。
締約国は結論書草案で合意した。
廊下にて
参加者のこの日の議論に関する展望は、どの項目に注目するかで、異なっていた。予定通りの経路をたどった項目に、さよならしようとするものもいたが、京都議定書のクリーン開発メカニズムの会議から出てきたベテランの参加者は、「もう殺してしまった(Kill it already)」と弁解した。別な参加者は、技術移転のポズナニ・プログラムについて、同じような感情を持っていた。
他方、補助機関の議長らは、少数の適用項目の救済を求められていたが、適応委員会の項目では救済は遅すぎたようであり、議論の再開には6か月間待つ必要がある。しかし、多くのものが希望していたのは、後発開発途上国の議題項目が、条約とパリ協定の統治組織の役割に関する論争の犠牲にならないことであった。あるオブザーバーは、「一番支援を必要としているものを人質にとるとは、信じられない」と述べたが、この問題は、COPとCMAのそれぞれの権限を巡る議論の高まりでさらに悪化した。
資金に関し、オブザーバーは会議を中継するCCTVの画面を見ようと集まっていたが、画面はとぎれとぎれであった。夜まで居残ったものもいたが、あまり情報は得られなかった。締約国は、一つのオプションの削除と二つのオプションの統合で合意する可能性があると報告された。共同進行役らの新しい文書はスリム化されたが、大きな問題点―数量、貢献者の基盤、適格性―は、議論されないまま残った。交渉担当者は、今夜のうちに交渉を終わらせ、文書を議長職の手に渡さなければならない。補助機関の閉会プレナリーで、それぞれの議題項目の議長職ストックテイク会合での運命を知ることになる。