Summary report, 11–22 November 2024
UN Climate Change Conference Baku - November 2024
バクー気候変動会議は、2週間の困難な交渉を終え、今後も長年にわたり、気候行動に情報を提供する、いわば節目となる合意として、気候資金の新しい集団数量目標(NCQG)を決定した。NCQGの決定書は、全ての行動者に対し、2035年までに、開発途上国の気候行動に対する資金供与の規模を拡大し、官民合わせて、少なくとも年1.3兆米ドルにするべく、共に努力することを求めている。さらに、2035年までに、先進国が主導し、官民、2国間及び多国間、その他の多様な資金源から、少なくとも年3千億米ドルの資金を、開発途上国の気候行動に供与するとの目標も定めた。開発途上国には、自主的な形で、資金貢献をすることが奨励されている。
このNCQGについて、締約国は、遅くとも2030年までに、重要な気候基金からの毎年の資金供与の金額を、2022年比で少なくとも3倍に増やす努力を追求することでも合意した。さらに、このNCQG決定書は、特に、後発開発途上国(LDCs)及び小島嶼開発途上国(SIDS)など、気候変動の悪影響に最も脆弱で、能力面でも制約の大きい諸国に対し、特に適応及び損失損害への対応のため、公共の無償融資ベースの資金及び譲渡性の高い資金供与の必要性を認めている。
この新しい目標は、2020年までに年1千億米ドルという目標の延長であるが、決定に至るまでには、極めて緊迫した交渉が続いた。先進国は、資金貢献者の基盤を拡大し、貢献可能な他の締約国も加えることを求めたが、開発途上国は、より高い目標額を求め、一部のものは、公的資金からの供与額及び資金動員額の明示を要求、LDCs及びSIDSは、両グループに配分される最低額の提示を求めた。
今一つの主要成果は、パリ協定の市場ベースの協力的実施(第6条2項及び第6条4項)の運用開始であった。締約国は、パリ協定の炭素市場設置のモダリティに関し、長年、交渉を続けてきたが、その目的は、世界の排出量全体の緩和の実現、合意された環境上のセーフガードの遵守、さらにはモニタリング及び報告作成に関する条項の順守であった。今回の運用開始で、パリ協定の目標に向けた進捗を支えることが期待される。
さらに、締約国は:ジェンダー作業プログラムを延長;適応世界目標(GGA)に向けた進捗を評価する指標の定義づけに関し、追加ガイダンスを提供;新しい損失損害基金とのアレンジを採択;そして地方コミュニティ及び先住民プラットフォームの実施を推進する作業部会のマンデートを延長した。
しかし、締約国は、次の項目などで合意に達することができなかった:
- グローバルストックテイク(GST)の成果の実施に関するダイアログ;
- 公正な移行作業プログラム;
- 適応委員会の進捗状況、効果性、及び実績のレビュー;
- 資金常任委員会の機能の第2回レビュー;
- 資金メカニズムの第7回レビュー;
- 技術メカニズムと資金メカニズムのリンク;
- 国家決定貢献(NDCs)の特性に関する追加ガイダンス;
- NDC策定に対するGSTからの情報提供に関する年次ダイアログ報告書;及び
- GSTプロセス全体の手順要素及びロジスティック要素。
意見対立が見られたのは、主に、条約及びパリ協定の統治組織の役割に関係する問題であった。そのほか、GSTの成果、特にエネルギー移行関連の成果を、これからどう生かしていくかでも意見対立が見られた。多数のグループや国の代表は、1.5℃の気温目標のオーバーシュート回避で重要と考えられる、2025年提出期限の次回のNDCs策定で合意が無かったことに、失望していた。
バクー気候変動会議は、2024年11月11日から22日、アゼルバイジャンのバクーで開催された。この会議は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第29回締約国会議(COP)、第19回京都議定書締約国会議(CMP 19)、第6回パリ協定締約国会議(CMA 6)、第61回科学的技術的助言のための補助機関会議(SBSTA 61)、第61回実施のための補助機関会議(SBI 61)で構成された。
対面式の出席を登録した人数は、合計66,778名、この内、締約国からは33,158名、オブザーバーは13,386名、メディア関係は3,575名であり、14,473名のサポート要員及び事務局のスタッフが会議を支えた。オブザーバーのうち、1,880名はホスト国のアゼルバイジャンの招待客であった。オンライン参加の登録人数は3,975名、この内、締約国から157名、オブザーザーから3,818名であった。
UNFCCC、京都議定書、パリ協定の簡略史
国際政治における気候変動への対応は、1992年のUNFCCCの採択から始まった、この条約は、「気候系への危険な人為的干渉」を回避するため、温室効果ガス(GHG)の大気濃度の安定化を目指し、気候変動での国際協力の基本的な法的枠組及び原則を規定する。この条約は、1994年3月21日に発効、現在197の締約国を擁す。
締約国は、UNFCCCの効果を高めるため、1997年12月に京都議定書を採択した。この議定書において、先進工業国及び市場経済移行国は、6種のGHGsの排出削減の数量目標を達成すると約束した。京都議定書は、2005年2月16日に発効、192の締約国を擁する。その第1約束期間は2008年から2012年、これに続く第2約束期間は、2013年から2020年とされた。
2015年12月、締約国は、パリ協定を採択した、この協定は、世界の平均気温の上昇を、産業革命前より2%増を大きく下回る水準に抑えることを目指し、さらに、1.5℃までで抑える努力を追求すると規定した。この協定は、締約国の気候変動の悪影響に適応する能力の向上も目指し、さらに資金フローを低GHG排出量で気候にレジリエントな開発の経路に合わせることも目指した。各締約国は、5年の間隔で、より高い野心のNDCsを、通知する。その後、2021年のジュネーブでの決議では、各国のNDCは、10年間、有効であるが、5年毎の更新も可能である。この協定は、さらに、全締約国の国別の報告に対する強化された透明性枠組(ETF)も規定する。協定実施に向けた全体の進捗状況は、GSTで、5年毎にレビューされる。このパリ協定は、2016年11月4日に発効、193の締約国を擁する。
最近の出来事
カトヴィツェ:カトヴィツェ気候変動会議は、2018年12月2日から14日に、ポーランドで開催された。締約国は、パリ協定での規定のうち、NDCsの緩和セクション、適応報告書、ETF、GST、及び資金の透明性の解釈及び実施を推進するための決定書をさいたk牛田。パリ協定第6条の協力的実施に関する議論では、結論に至らず、締約国は、2019年での作業終了で合意した。COPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃温暖化に関する特別報告書を、「歓迎」するか、それとも「留意」するかで、合意できなかった。
チリ/マドリード:チリ/マドリード気候変動会議は、2019年12月2日から13日、チリの議長職の下、スペインで開催された。参加者は、損失損害への技術支援を仲介するサンチャゴ・ネットワークを設立、5年間の強化されたリマ作業プログラム及びそのジェンダー行動計画(GAP)を採択した。さらに、COP、CMP、CMAの下でのカバー決定書3件も採択した。他の多くの項目、特に第6条及び長期資金の項目では合意に達せなかった。
グラスゴー:グラスゴー気候変動会議は、毎年の会合予定がCOVID-19のパンデミックで中断された後、2021年10月31日から11月12日、スコットランドで開催された。締約国は、パリ協定のルールブックの内、未決定の項目を最終決定し、第6条に関するガイドライン、ルール、及び作業プログラムを採択、ETFの下での報告フォーマットで合意した。3件のカバー決定書も採択され、その中には、緩和設備のない石炭火力の段階的削減、及び非効率な化石燃料補助金の段階的廃止が、初めて盛り込まれた。このほか、次の項目の設置も決まった:GGAに関する作業プログラム、さらにはこの重要な10年間に緩和の野心及び実施の規模を緊急に拡大するための作業プログラム;損失損害の資金調達に関するダイアログ;気候資金の新しい集団数量目標を決定するプロセス;海洋ベースの気候行動に関する年次ダイアログ。
シャルム・エル・シェイク:シャルム・エル・シェイク気候変動会議は、2022年11月6日から20日、エジプトで開催された。この会議で、締約国は、初めて、気候変動の悪影響に伴う損失損害に対応するための資金の必要性を認識し、基金及び資金アレンジを設定し、2023年にその詳細を議論することを決定した。この合意に至ったのは、緩和作業プログラム(MWP)の運用開始であり、さらにGGA枠組の策定開始である。2件のカバー決定書も採択され、この中で、締約国は:パリ協定の目標達成への経路を議論する、公正な移行に関する作業プログラムを設立;パリ協定第2条1(c)項(資金フローの一貫性)のスコープ及びこの条項と第9条(気候資金)の補足性に関する理解を進めるためのダイアログを開設した。
ドバイ:アラブ首長国連邦の気候変動会議は、2023年11月30日から12月11日に、ドバイで開催された。この会議では、パリ協定の下での第1回GSTの決定書が採択された、この決定書は、締約国に対し、次回のNDCsを1.5℃温暖化目標に合わせること、さらには、全てのGHGs、部門、及び分類全体を対象とする野心的で経済全体の排出削減目標を打ち立てることを奨励した。決定書は、このほか、次のグローバルな努力に対し、締約国による国家決定方式での貢献を求めている:2030年までに、再生可能エネルギーの能力を世界的に3倍に増強し、世界のエネルギー効率を年平均で2倍に向上させる;エネルギーシステムでの化石燃料からの移行を、公正で、秩序があり、公平な形で行い、この重要な10年間での行動を加速して、2050年までにネットゼロを達成する。
この会議は、開会プレナリーで、損失損害基金の運用開始の決定書が採択されるなど、高揚した雰囲気で開始され、GGAの枠組の採択、サンチャゴ・ネットワークのホスト国での合意、公正な移行作業プログラムの運用開始のほか、山岳地域に関するダイアログ、及び子どもに関するダイアログを、2024年6月の補助機関会合での開催が決定された。
バクー会議報告書
バクー気候変動会議は、11月11日月曜日、COP 28議長のSultan Al Jaberの開会宣言で開始、同議長は、「団結し、行動し、実現する」必要があると強調し、資金貢献が可能な全ての締約国に、損失損害基金の資本金への貢献を行うよう求め、気候資金として、確固とした新しい集団の数量目標(NCQG)の実現を促した。
COP 29議長のMukhtar Babayevは、COP 29は、「失ってはならない機会」であると述べ、公平かつ野心的なNCQGを実現することで、金融市場に強力なシグナルを送るよう促した。
UNFCCC事務局長のSimon Stiellは、「気候資金は慈善ではない」が、全ての締約国の利益になることだと述べ、世界の国家の3分の2が排出量削減の費用を出せないのであれば、全ての国がその代価を払うことになると強調した。
会議第1週の交渉は、主に補助機関(SBs)で行われた。その閉会プレナリーは、11月16日土曜日に開催され、締約国は、多数の結論書を採択、第2週の審議にかける文書草案を統治組織に送った。数件の項目では合意に達することができず、SBsは、さらなる審議の土台にするべき、いかなる文書も、統治組織に送ることができなかったが、統治組織自体で、合意を見出すことができた項目も存在した。
手順上の問題
手順規則:締約国は、手順規則草案(FCCC/CP/1996/2)のうち、投票に関する規則42以外を、適用することで合意した。議長職主導の協議では、手順規則書の採択の合意には至らなかった。
議題書の採択:11月11日月曜日の開会プレナリーでは、会議議題書が議論され、結局、締約国は、COP、CMP、CMA、SBI、SBSTAの議題書を採択した、これらの議題書には、締約国の議題提案を含まれておらず、さらに次の項目の議論の進め方に関しては、議長職が協議を招集するとの理解の下であった:山岳地帯;アフリカの特別なニーズ及び状況;資金メカニズムの第7回レビュー;気候関連の貿易制限を伴うユニラテラルな措置;損失損害に関するワルシャワ国際メカニズム(WIM)のガバナンス;UNFCCCの下での意思決定。これらの議題では、意見の一致に至らなかった。
役員の選出:閉会プレナリーで、締約国は、Adonia Ayebare (ウガンダ)を新しいSBSTA議長に、Julia Gardiner (オーストラリア)を新しいSBI議長に選出した。
将来会合の日付及び場所:この項目は、議長職協議で議論された。締約国は、閉会プレナリーで、2025年の統治組織会議の次期議長であるブラジル代表の意見発表を聞いた。ブラジルの環境気候変動大臣である、Marina Silvaは、COP 28は1.5℃目標のオーバーシュート回避に何が必要かを明らかにする「アラインメントのCOP」であったが、COP 29はこのミッションを遂げるために必要な実施手段を実現する必要があると強調し、先住民の女性による「共同での機織り」作業に注目し、世界は連帯、責任、相互の信頼をさらに高める必要があると指摘、COP 30の目標は、1.5℃目標を達成するに足る、野心的なNDCsを打ち出すことだと強調した。
最終成果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.9)において、COPは:
- 事務局長に対し、ブラジルとのホスト国合意の締結を要請する;
- 西ヨーロッパ及び他のグループの締約国に対し、COP 31、CMP 21、CMA 8の主催を申し出るよう求め、SBIは、該当地域に対し、2025年6月の第62回補助機関会合までの主催申し出を促していることを想起した;
- アフリカ諸国に対し、COP 32、CMP 22、CMA 9 (2026年11月)の開催申し出を求めた;
- SBI 62に対し、2025年中に、2026年及び2027年の統治組織会議の主催問題を審議し、決定書草案を提案して、関係組織の採択にかけるよう要請する。
オブザーバーの認定:COPは、リストに記載される全てのオブザーバーを認定することで合意し、組織名を変更したオブザーバーの名称に留意した。(FCCC/CP/2024/2)
信任状報告書:COP、CMP、CMAは、報告書を採択した。(FCCC/CP/2024/10-FCCC/KP/CMP/2024/6-FCCC/PA/CMA/2024/16)
補助機関の報告書:2024年海洋及び気候変動ダイアログの共同議長は、SB 60の会合期間中に開催されたダイアログの成果を報告し、締約国のNDCsに海洋ベースの緩和行動及び適応行動を含めるとの提案に注目した。COP、CMP、CMAは、それぞれ次の報告書に留意した:SBSTA 60報告書 (FCCC/SBSTA/2024/7及びAdd.1)、SBSTA 61報告書 (FCCC/SBSTA/2024/L.13)、SBI 60報告書(FCCC/SBI/2024/13, Add.1及びAdd.2)、SBI 61報告書(FCCC/SBI/2024/L.15)。
資金
新しい集団数量目標:COP 21は、CMAは開発途上国のニーズ及び優先策を考慮し、年1千億米ドルを下限とするNCQGを、2025年以前に設定すると決定した。CMA 3は、NCQGの設定作業の制度を設置した、これには2022-2024年の特別作業プログラムの設置、ハイレベル閣僚級ダイアログの招集、及び進捗状況のストックテイキングが含まれるほか、CMA 4、CMA 5、CMA 6での特別作業プログラム.への追加ガイダンスの提供も含まれた。
CMA 6での議論には、次の情報が提供された:2024年ハイレベル閣僚級ダイアログの報告書(FCCC/PA/CMA/2024/12)、及び特別作業プログラムの共同議長作成の報告書(FCCC/PA/CMA/2024/9 及び Add.1)、これには、交渉文書草案の「実質枠組」の提案も含まれた。
第1週の作業は、Fiona Gilbert (オーストラリア)及びZaheer Fakir (UAE)を共同議長とするコンタクトグループで行われ、同グループは、11月12日、13日、14日、15日、16日に会合した。第2週には、Yasmine Fouad (エジプト)及びChris Bowen (オーストラリア)を共同進行役とする閣僚級協議が招集され、目標の構造、数量、貢献者の基盤に焦点を当てて議論した。
コンタクトグループの作業では、供与され、動員された資金を追跡するための透明性アレンジを中心に議論し、多くのものは、ETFをこの目的に利用することを希望した。南ー南の自主的な資金貢献を行うかどうか、行う場合はどう捉えるかについて、かなりの議論が繰り広げられたほか、開発途上国の気候資金調達能力に対する障壁を除去するアクセス制度も議論した。
政治レベルでは、構造、数量、貢献の基盤に関する疑問点が、ぎりぎりまで、未解決のまま残された。構造に関し、先進国は、公的資金の供与及び資金動員を「コア」にし、それを投資という「層」で取り巻くことを要求した。開発途上国は、多くが、投資の「層」を拒否し、高い資本コスト、経済規模での劣勢、クレジットの評価、その他の障壁を理由とする、投資面の不公平を指摘した。
数量(金額)に関し、G-77/中国は、2030年までの1.3兆米ドルの供与、及び資金動員を要求し続けたが、配分の下限額の問題で、分裂した。小島嶼国連合(AOSIS)及びLDCsは、SIDSには390億米ドル、LDCsには2億2千万米ドルを下限とするよう要求した。独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)は、地域配分の下限を設定するよう求めた。先進国は、いずれの文書草案に入れる数量を示さなかったが、非公式には、2千億から3千億米ドルという話が浮上していた。
貢献者の基盤に関し、先進国は、気候資金を供与できる立場を、他の諸国にも拡大するよう求めた。中国、及び他の諸国は、南―南の気候資金の自主的な供与は、「本質的に異なる」ものだと指摘した。G-77/中国は、開発途上国への資金供与は先進国の義務だと強調した。
閉会プレナリーで、CMAは、決定書を採択し、新しい数量目標を3千億米ドルと設定した。キューバは、先進国のコミットメントがなかったことは遺憾であるとし、この決定書は、「資源での植民地主義」を増長させると述べた。さらに、3千億米ドルは、野心的なNDCsの実施には不十分であるとし、インフレ調整を提案した。
インドは、決定書の採択に反対し、議長職及び事務局に採択前のステートメント発表の情報を伝えたのは、「残念な出来事」だと指摘した。同代表は、先進国は排出量削減を進めるべきであり、さらに、開発途上国が行動できるような実施手段(MoI)を提供するべきだと強調、今回の形式の目標を拒否し、これは、開発途上国の実施、適応、緩和、レジリエンス、成長に影響を及ぼすと強調した。同代表は、開発途上国からの自主的な貢献を奨励することは、「非常に問題がある」とも述べた。議長のBabyevは、ステートメントに留意し、報告書に記録されると述べた。
ボリビアは、インドを支持し、決定書の採択を拒否、先進国は化石燃料の生産を増やしながら、開発途上国に野心的な排出削減目標を行うよう求めているとして、嘆いた。議長のBabayevは、ステートメントは会議報告書に記載されると述べた。
ナイジェリアは、3千億米ドルの目標は先進国の「主導」を表すものではなく、(途上国に対する)「侮辱(insult)」であるとし、締約国はこの決定書を受け入れるかどうか決定するべきだと強調し、自国は受け入れないと述べた。議長のBabayevは、ステートメントは報告書に記載されると述べた。
LDCsは、開発途上国のニーズと比較した野心の欠如を嘆き、数兆ドル単位のニーズに対し、10億ドル単位の目標が設定されたことに注目、損失損害が省かれていること、LDCs及びSIDSの下限額が設定されていないことを嘆いた。
パキスタンは、重い心と複雑な感情を抱えつつ、この場を離れることになると述べ、パッケージ全体、特にNCQG決定書で極めて重要なギャップがあると指摘、開発途上国はローンを組まざるを得ず、気候の危機は、債務の危機に変わっており、世界の格差は広がっていると嘆いた。
EUは、COP 29は金額を打ち出し、アクセスを改善し、適応資金を増額し、自主的な貢献の基盤を広げ、多国間開発銀行の役割を拡大することで、気候資金の新しい時代の始まりになったと指摘した。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.22)において、CMAは、特に:
- NCQGは、世界の平均気温の上昇を産業革命前より2℃を大きく下回る水準で抑えるとする、パリ協定第2条の達成加速化に貢献し、産業革命前より1.5℃の上昇に制限するための努力を追求し、低GHG排出量及び気候にレジリエントな開発への経路と資金の流れを合致させることを目指すと再確認する;
- 第1回GSTの成果を再確認し、この重要な10年間において、パリ協定の目標実施におけるギャップを解消して、野心の引き上げ、及び行動の強化を迅速に行う必要があると強調する;
- IPCCの第6次評価報告書の次の結論に留意する:気候目標を達成するには、適応及び緩和の資金供与を数倍に増やす必要がある;世界には、投資面のギャップを解消するだけの資本金が存在する;資本金を気候行動へ振り向けるには障壁がある;そしてこれらの障壁克服の鍵となるのは、各国政府による、公的資金の投入、及び投資家への明確なシグナル発出である。
- NCQGは、野心の引き上げと加速化に貢献し、開発途上国、特に気候変動の悪影響に脆弱で、能力も大きく制約されているLDCs及びSIDSなどでのニーズ及び優先度の変化を反映すると決定する;
- 多国間の金融体制の改革が重要であると再度指摘し、開発途上国が気候行動資金の調達で直面する阻害要因、たとえば高い資本コスト。財政面の余裕の無さ、持続可能でない債務レベル、移行コストの高さ、及び気候資金へのアクセスの条件付けなどに対応する必要があると強調する;
- 全ての行動者に対し、相互に協力し、全ての官民の資金源からの資金供与の規模を、2035年までに少なくとも年1.3兆米ドルに拡大可能にするよう求める;
- パリ協定第9条(資金)を再確認し、開発途上国の気候行動に対し、先進国主導での資金目標である1千億米ドルを延長して、2035年までに少なくとも年3千億米ドルに拡大すると決定する、この資金は、官民、二国間及び多国間のほか代替資金源など、多様で広範な資金源から得るものとし、意味のある野心的な緩和及び適応行動、さらには実施の透明性の概念の下で供与され、さらに、目標達成に向けた多国間開発銀行からの気候関連のアウトフローの全額、及び動員された気候関係の資金を計算に入れることは、締約国の自主的な意図であると認識する;
- 開発途上国に対し、南ー南資金協力など、自主的な形での貢献を奨励し、この行動は、いかなる締約国の開発状況や受益者の立場に影響を与えるものではないと確認する;
- 開発途上国、特に気候変動の悪影響に脆弱であり、能力も大きく制約されている、LDCs及びSIDSなどの諸国における、適応及び損失損害への対応には、グラントベースの公共資金、及び高度に譲渡型の資金が必要であると認める;
- 資金メカニズムの運用機関、適応基金、LDC基金、特別気候変動基金からの毎年のアウトフローを、遅くとも2030年までに、2022年比で少なくとも3倍に増額するための努力を追求すると決定し、これにより資金の割合の規模を大きく拡大する;
- 次を認識する:適応資金の劇的な規模拡大の必要性;損失損害の回避、最小限での抑制、及び対応を目的とする行動及び支援を緊急かつ強化する必要性;全ての部門及び題目分野を横断する、公正な移行を支援する努力継続の重要性、及び透明性、準備体制、キャパシティ・ビルディング、及び技術開発と移転など、クロスカッティングな努力を継続することの重要性;
- 締約国に対し、国家決定方式で、可能にする環境を強化し、気候資金調達の増額を図るよう求める;
- 開発途上国における低GHG排出量で気候にレジリエントな経路を取るため、及びNDCsと国別適応計画(NAPs)を実施するため、グラントや譲渡型、債務を生じない制度、及び財政上の余裕を得る措置などを用いて支援して、開発途上国での気候資金の規模拡大を図ることを目指す、「1.3兆米ドルへのバクー・ベレン・ロードマップ」を、CMA 6及びCMA 7の議長職のガイダンスの下、締約国と協議した上で、開始すると決定し、議長職らに対し、CMA 7(2025年11月)での作業をとりまとめた報告書の作成を要請する;
- 先進国は、行動及び支援のための透明性枠組(パリ協定第9条7項)のモダリティ、手順、及びガイドラインに則り、隔年で供与され、動員される開発途上国への支援に関する情報を、透明性及び一貫性がある形で、提供するものとし、他の締約国は、これを行うことが奨励されることを想起する、さらに先進国は、決定書18/CMA.1の附属書第V章に記載されるモダリティ、手順、及びガイドラインに則った、情報を提供するものとし、他の締約国はこれを奨励されることを想起する;
- 資金常任委員会(SCF)に対し、2028年以後、決定書の全要素の集団での進捗状況に関し、隔年で報告書を作成するよう要請する、さらに、SCFに対し、この報告書において、資金増額に向けた努力における地域バランスを考察するよう招請する、これには量的及び質的な後発を含めるとともに、LDCs及びSIDSに関する細分化情報も含めるよう要請する;
- 2025年及び2026年に供与され、動員された資金支援に関する文書を、2028年6月30日までに提出するよう招請し、さらにその後も、隔年ベースで、関連する情報を提供し、供与された集団の資金支援の全体像を提供して、GSTに情報を示すことも招請する;
- CMA 12(2030年)において、気候資金へのアクセスに関する特別評価作業を行い、アクセスに関する進捗状況を評価し、さらに強化する機会を特定すると決定する;
- GSTの一環として、2030年の決定書のレビューによるものも含め、決定書の実施状況を定期的に調査し、2035年以前に、今後の進め方に関する議論を開始すると決定する。
長期資金:長期資金作業プログラムは、プレ2020年の資金制度を審議するため、2011年に設立された。そのマンデートは、2016年に延長され、ポスト2020年の資金についても審議することとなった。このCOPの議題項目で、締約国は、ニーズに基づく資金プロジェクト(FCCC/CP/2024/7)、及び年1千億米ドルの資金動員目標の共同での達成に向けた進捗状況に関する第2回報告書 (FCCC/CP/2024/6/Add.3-FCCC/PA/CMA/2024/8/Add.3)を、レビューした。Madeleine Diouf (セネガル)及びOuafae Salmi (ベルギー)を共同進行役とする非公式協議は、11月12日、18日、21日に開催された。決定書草案は、さらなる審議のため、議長職に送られた。
先進国は年1千億米ドルの資金目標を達成したかどうかでは、意見が大きく分かれ、先進国は、達成を認めるよう求め、SCFの進捗報告書を引用した経済協力開発機構(OECD)の推計を指摘した。多数の開発途上国は、Oxfamのより低い推定額を使役したが、先進国は、これには気候資金源の全ての範囲が含まれていないと述べた。LDCsは、「革新的な資金源」を含めることを拒否した。開発途上国は、気候資金の共通の定義を求めたが、先進国は反対した。
アラブグループ及び有志途上国(LMDCs)は、決定書にNCQGのプレースホールダーを置くことを提案し、これにより長期資金作業プログラムは、NCQGに向けた進捗状況を追跡できると述べた。先進国は、これに反対し、NCQGの議論における透明性アレンジを指摘した。
最終結果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.14)において、COPは特に:
- 開発途上国の気候資金のニーズに対応するため、2020年までに年1千億米ドルを動員するとの目標を想起し、この目標は2025年まで延期されたことを想起する;
- この目標達成に向けた進捗状況に関するSCFの第2回報告書、及び底に記載された結論に留意する。
資金常任委員会の問題:SCFは、2010年に設立され、広範な議題項目に関する推奨案を提供する、この中には、資金メカニズムの運用組織に対するガイダンス案の作成、運用組織間の一貫性及び協調の維持、資金メカニズムのレビューに対する専門家からのインプット、気候資金フローの隔年での概要文書の作成が含まれる。
この議題項目では、COP及びCMAの下、次の数件のインプットについて審議する:SCF報告書(FCCC/CP/2024/6-FCCC/PA/CMA/2024/8);気候資金フローの第6回隔年評価及び概観(Add.1);第2回ニーズ決定報告書(Add.2);気候資金の定義に関する通常の実施方法報告書(Add.4);及びジェンダー主流化による気候行動及びレジリエンスの加速化に関する2024年SCFフォーラムのサマリー(Add.5)。
Clara Schultz (スウェーデン)及びAli Waqas (パキスタン)が共同議長を務める、COP/CMAコンタクトグループは、11月12日、13日、18日に会合したが、その後、さらなる審議のため、議長職に送られた。コンタクトグループでは、どの統治組織が決定書を採択するべきか、気候資金の運用上の定義、2024年SCF報告書への言及方法、SCFの将来のマンデートなどが議論された。
統治組織に関し、アラブグループ、LMDCs、アフリカングループは、COPのみの決定書を求めたが、EU、オーストラリア、カナダは、COPとCMAの両方での審議を求めた。
多数の先進国は、気候資金の運用上の定義を改定したSCFの作業努力を歓迎した。LDCsは、多様な定義づけ、報告作成、及び会計手法などの問題に対応していないと述べた。GRUPO SURは、開発途上国に供与される気候資金を特定する定義付けを求めた。米国は、報告書には締約国への推奨案が示されていないと指摘し、オーストラリア、カナダ、その他の先進国とともに、アフリカングループやLDCs、AOSIS、及び他の開発途上国が求めているような、追加審議は必要ないとの考えを示した。
ジェンダー及び女性の全ての多様性に関するSCFフォーラムの実質のアウトプットに言及するいつようがあるかどうかでは、意見が分かれた。今後の作業に関し、先進国は、SCFの作業量の多さを指摘、これ以上のマンデートを課さないよう求めたが、大半の開発途上国は反対した。
最終結果:決定書(FCCC/CP/2024/L.5)において、COPは:
- SCFの作業を審議する時間を配分することが重要だと指摘する;
- SCFは、気候資金の運用上の定義を更新したと指摘し、SCFはこの定義付け作業を現在も続けていると、再度確認する;
- 気候資金の考えにおいては、ジェンダー対応型の気候行動の促進が重要であり続けると指摘し、気候資金のジェンダー対応性に関するデータ及び情報の関連性に注目する;
- 第2回ニーズ決定報告書に記載される、十分に代表されていない開発途上国及び地域を優先するとの情報に留意し、関連する利害関係者に対し、この情報を活用するよう招請する。
CMAは、決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.11)において、パリ協定第2条1(c)項に関連する情報のマッピングに留意し、締約国に対し、資金フローを、低GHG排出量で気候にレジリエントな開発を目指す経路と合致させるため、建設的な議論を続けるよう奨励する。
SCFの機能の第2回レビュー:SBIで、この項目の議論を開始し、その後、11月15日に開催された、Clara Schultz (スウェーデン)及びAli Waqas (パキスタン)を共同進行役とする非公式協議で議論した。締約国は、決定書がCOPのみのものなのか、COPとCMAの両方での決定書となるかが決まるまでは、実質的な討議に入ることを躊躇した。
最終結果: SBIは、閉会プレナリーで、この問題の審議のSBI 63での継続で合意した。
緑の気候基金(GCF)の報告書、及び同基金へのガイダンス:GCFは、資金メカニズムの運用組織であり、COPに報告し、その指針を得るほか、パリ協定にも役割を果たす。COP及びCMAの下、締約国は、GCPの報告書(FCCC/CP/2024/3, Add.1)、及びSCFからのガイダンス草案(FCCC/CP/2024/6/Add.6-FCCC/PA/CMA/2024/8/Add.6)を審議した。David Kaluba (ザンビア)及びPierre Marc (フランス)が共同議長を務めるCOP及びCMAのコンタクトグループは、11月18日及び21日などに会合した。
締約国は、GCFの「ミクロ管理(micromanaging)」を回避する一方で、ガイダンスを提供する方法について、議論した。少数の先進国は、補足性及び一貫性強化に関する多国間気候基金の行動計画(Multilateral Climate Funds’ Action Plan on Enhancing Complementarity and Coherence)への言及を求めたが、アラブグループは反対し、GCFはこの計画を承認していないと指摘した。EU、米国、及び他の先進国は、隔年でのガイダンス提供を促したが、GRUPO SUR、インド、及び他の開発途上国は反対した。
締約国は、先住民のアクセスを向上させ、先住民への言及を増やす方法について議論した。紛争地域の国への言及方法も議論し、結局、「国家への衝撃(national shocks)」という表現を用いることとなった。AILACは、多数の支持を得て、GCFと技術メカニズムとの関係性、特に気候技術センター・ネットワーク(CTCN)との関係性を強化するべく、少数の文章の追加を要請した。さらに、CMA決定書でのNCQGに関するプレースホールダーも求めたが、先進国は反対した。議長職は追加協議を行った。
最終結果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.10)において、COPは、GCFとのアレンジを修正して、COP及びCMAによるGCFへのガイダンスの提供を可能にし、COP 31及びCMA 8までは毎年、その後は、隔年で提供することとしたほか、新しい資金補填の議論を開始する前年の会合でも、ガイダンスを提供することとした。COPは、隔年サイクル以外でも、締約国の要請があれば、提供される可能性があることを確認した。さらに、COPは、GCFについて、2030年までに500億米ドルの資金を効率的に管理できるようになると、同基金の専務理事がビジョンとして発表したことを指摘し、GCFに対し、CTCNとの協力関係を続け、開発途上国が技術にアクセスしやすくし、その影響を最大限に膨らませ、一貫性も強化することを奨励する。
COPは、GCF理事会に対し、下記を要請する:
- 資金供与の提案の処理時間を、2024年-2027年戦略計画に合わせて短縮し、資金へのアクセスのスリム化及び単純化を続ける;
- 地理的にバランスの取れる形で、地域への資金供与を改善する方法を検討する、これには、GCFの統治制度に沿う形で、全ての開発途上国地域での存在感を探求することが含める;
- 承認後の手順に関するモニタリング及び説明責任の必要条件が、目的に適合しており、直接アクセス組織の能力に制約があるかどうかを考慮していることを、確実にするための措置を検討する;
- 特に多国間の活動に対する供与配分、及び活動から生じる影響に関し、統合結果管理枠組と合致する形で、国別にモニタリング及び報告をする;
- 年次報告書において、このガイダンス実施のために取られたステップの情報を記載する。
COPは、理事会に対し、下記を求める:
- 緩和向けの資金と、適応向けの資金のバランスをとるため、さらなる努力を続ける;
- 第2回資金募集のため、最新のGAPを採択し、UNFCCC GAPの下での活動の実施に、積極的に貢献する;
- その意思決定においては、GCF政策に合わせ、気候変動の最前線にいる人々及びコミュニティへの配慮を組み込む、これには、先住民及び地方コミュニティを含める。
決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.17)において、CMAは、ガイダンスの提供は締約国からの要請により、及び各資金募集の最終年の前年に開催されるCMA会合において、FCCC/CP/2024/L.10記載の修正アレンジに基づき、COP経由で、隔年に提供することが可能であることを確認した。
地球環境ファシリティ(GEF)の報告、及び同ファシリティに対するガイダンス:GEFは、UNFCCCの資金メカニズムの運用組織である。締約国は、COP及びCMAの下、GEFの報告書(FCCC/CP/2024/8, Add.1)、及びSCFガイダンス草案(FCCC/CP/2024/6/Add.6-FCCC/PA/CMA/2024/8/Add.7)を、審議した。David Kaluba (ザンビア)及びPierre Marc (フランス)が、COP及びCMAのコンタクトグループの共同議長を務め、11月18日などで会合した。
コンタクトグループ会合では、開発途上国の隔年透明性報告書(BTRs)の作成を支援する上での、GEFの役割が注目を集めた。GRUPO SURは、他の支持を得て、ETFの求める報告作成システム開発への、長期の支援を求めた。アフリカングループは、BTR関係での能力開発活動に関する情報が明示されていないことへの失望感を表明した。締約国は、文中でのNCQGへの言及でも、合意しなかった。議長職は、追加協議を行った。
最終結果: 決定書 (FCCC/CP/2024/L.11)において、COPは:
- GEFに対し、LDC基金及び特別気候変動基金の事務管理では、損失損害対応の資金アレンジ全体における一貫性及び協調性の向上に向け、貢献するよう要請する;
- GEFに対し、プロジェクトが数件の実施組織に集中するのを緩和するため、広範な実施組織の参画を図るよう求め、さらに、GEFパートナーシップのレビューの考えの下、実施組織の数を増大する際は、全地域の開発途上国の国内組織及び地域内組織、特に十分な代表性を得ていない地域に焦点を当てるよう促す;
- GEFに対し、支援供与の際は、地方の能力を向上し、国の所有権を強化する方法を検討するよう促す;
- GEFに対し、技術及びイノベーションに焦点を当てるプログラムの規模拡大の機会を探るよう奨励する;
- GEFに対し、LDC基金の事務管理では、LDCの立場を抜け出そうとする開発途上国での円滑な移行を推進し続けるよう要請する;
- GEFに対し、開発途上国のGEFの資源に対するアクセス及び資源の利用を推進するため、開発途上国での制度アレンジ及びキャパシティ・ビルディングへの支援を継続し、GEFプロジェクトでの知識の共有及び南-南学習事項の共有を推進し、さらなる協力可能な分野を探求するよう要請する;
- COP及びGEFの間の覚書を修正すると決定し、これにより、COP及びCMAは、COP 31及びCMA 8までは毎年、それ以後は隔年で、さらに新しい資金募集の議論を開始する前年に開催される会合で、GEFに対するガイダンスを提供することとし、さらに、締約国の要請があれば、隔年のサイクル以外でもガイダンスを提供できると確認する。
決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.18)において、CMAは:
- GEFに対し、2025年の年次報告書に、次に関する情報を記載するよう要請する:供与された資金が、報告作成システムの持続可能性を支える活動に使われているかどうか、さらには、開発途上国の制度能力を強化しているかどうか;
- GEFに対し、透明性のためのキャパシティ・ビルディング・イニシアティブの支援実現性を高める方法、及びプロジェクトサイクル間のギャップ解消を可能にする活動、タイムリーに支援を供与する方法、各国の報告作成システムの持続可能性を高める方法、及び開発途上国によるETFの下での必要事項を継続して達成するために必要とされる労働力を確保する方法について、検討するよう要請する;
- ガイダンスは、隔年で、締約国の要請で、さらにはGEF資金募集の最終年の前年に開催されるCMA会合において、提供されることを確認する。
COP、CMA、損失損害基金理事会の間のアレンジ:損失損害基金は、気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国における、損失損害への対応を支援するため、2022年に設立された。極端な天候現象及び緩慢に発生する現象など、気候変動に伴う経済的かつ非経済的な損失損害への対応に、支援を提供することを目指す。この基金は、2023年に運用が開始され、組織としての運用はUNFCCCの資金メカニズムに委ねられた。さらに、締約国は、世界銀行に対し、4年間の暫定期間において、当該基金の事務局のホストとして、及び受託者の役割を果たすよう招請した。
締約国は、SCFが作成したアレンジ草案(FCCC/CP/2024/6/Add.8-FCCC/PA/CMA/2024/8/Add.8)を、COP及びCMAの下で審議した。Jose Delgado (オーストリア)及びAmena Yauvoli (フィジー)が共同議長とするコンタクトグループは、11月13日及び15日に会合した。AOSISは、次のように理解していると強調した:損失損害基金は、資金メカニズムの運用組織の一つとして、資金メカニズムのレビューに含まれる。
最終結果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.2 及び FCCC/CMA/2024/L.3)において、COP及びCMAは、COP、CMA、損失損害基金理事会の間のアレンジを承認する、これによりこのアレンジは発効する、さらにCOP及びCMAは、同理事会に対し、このアレンジの実施状況を、COP及びCMAに対する年次報告書の中で、報告するよう要請する。
損失損害基金の報告書、及び同基金に対するガイダンス:損失損害基金は、資金メカニズムでは3番目となる運用組織である。締約国は、損失損害基金の報告書(FCCC/CP/2024/9-FCCC/PA/CMA/2024/13 及び Add.1)を、COP及びCMAの下で審議した。Jose Delgado (オーストリア)及びAmena Yauvoli (フィジー)が共同議長を務めるコンタクトグループは、11月13日に、最初の会合を開催、締約国は、基金理事会の初年度での作業を称賛した。先進国は、同理事会の報告書及び作業を歓迎し、追加のガイダンスを規定しないことを希望したが、多数の開発途上国は、決定書の実質的な要素、特に長期的な資源動員戦略の特定を希望した。多数の開発途上国は、先進国に対し、プレッジを実際の貢献合意に変えるよう促した。
最終結果: COPの決定書(FCCC/CP/2024/L.6)及びCMAの決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.12)において、COP及びCMAは、可能な限り早期の、プレッジ変換を促し、同基金理事会に対し、関連する締約国の参画を得て、プレッジの時期を得た変換を実現し、貢献合意またはアレンジの全面的な執行により、基金の資源の予測可能性を高めるよう促す。
適応基金関係の問題:適応基金は2001年に設立、京都議定書の締約国のうち、気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国での適応プロジェクトに資金を供与する。適応基金の資金の一部は、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)の下での活動で生じた収益の一部が含まれる。2016年、締約国は、適応基金がパリ協定においても、役割を果たすとの決定を行った。上記の議題項目は、CMP及びCMAの下でのコンタクトグループ及び非公式協議で議論され、Ralph Bodle (ドイツ)及びIsatou Camara (ガンビア)がそれぞれの共同議長及び共同進行役を務めて、11月13日、19日、20日、21日に会合した。
主な問題点の一つは、適応基金をパリ協定専用に移行する問題であった。この基金の移行に関する適用基金理事会(AFB)の作業について、EU、環境十全性グループ(EIG)、英国、米国、カナダは、第6条4項メカニズムからの収入の一部が、近く利用可能になることを期待し、理事会に対し、関連する法規定文書の修正と採択を求めた。アラブグループ、LMDCs、アフリカングループは、この件はCMP及びCMAから収入の一部の利用可能性を確認するまでは最終決定できないと述べた。アラブグループ及びアフリカングループは、適応基金の京都議定書からパリ協定への移行に関するいかなる表現にも反対したが、EIG、EU、英国、その他は、この件が優先するとし、関連のフレーズの保持を支持した。
ジェンダー対応型の資金、及びジェンダー対応型の気候資金供与に関する2024年SCFフォーラムに関するパラグラフについて、アラブグループは、どちらも適応基金問題とは関連性がないとし、両方のパラグラフの削除を希望したが、カナダと米国、その他は、反対した。ジェンダー対応型の資源に関する表現については、決定書3/CMP.18(適応基金問題)での合意された表現に合わせるなら、柔軟に対応すると表明するものもいた。
最終結果: CMP決定書(FCCC/KP/CMP/2024/L.1)及びCMA決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.10)においては:
- 自主的な資金支援を含める資金の供与で、認証排出削減量に課せられる収入の一部に追加的な資金の規模拡大が急務であると強調する;
- 多年にわたる資金貢献を含める、適応資金の適切性及び予測可能性を促進するための行動は、継続することが重要であると強調する;
- プロジェクトは、適応基金のガイドライン及び政策に沿い、各地の状況に合わせる必要があると強調する、この中には、多様なグループとの初期評価及び協議を通すものも含める;
- AFBに対し、AFの作業のジェンダー対応性について、関連する識見を考慮し、改善の余地がある分野を検討するよう招請する、これには、ジェンダー対応型の資金供与による、気候行動の加速化及びレジリエンスの強化に関する2024年SCFフォーラムのサマリー報告書に記載するものも含める;
- 適応基金の京都議定書からパリ協定への移行期間においては、AFBの活動の継続性を維持する必要がある、たとえば開発途上国の適応支援へのアクセス可能性の保持が必要だと強調する;
- SBI 62に対し、適応基金がパリ協定のみで役割を果たす場合の問題点を議論し、それぞれCMP 20及びCMA 7に対し、推奨案を示すよう要請する。
CMAは、さらに:
- 適応基金への資金貢献が重要であると強調する、特に先進国に対しては、適応に対する気候資金の供与額を2025年までに、2019年比で少なくとも2倍に増額するよう促す;
- 適応基金の資本家を強化する上での、第6条4項メカニズムからの収入の一部の役割可能性を認識する;
- 適応基金に対し、GGA枠組実施に向けた努力の一環としての基金の活動に関する最新情報、及び支援範囲の情報を、提出するよう要請する。
適応基金倍額化に関する報告書:COP 26において、先進国は、2025年までに適応への資金貢献を2倍に増額すると約束した。(決定書1/CMA.3) GSTの結果からは、先進国に対する、この目標達成に向けた進捗情報報告書の提出が求められた。CMAの下、締約国は、その最初の報告書(FCCC/PA/CMA/2024/15)について審議した。Jens Fugl (デンマーク)及びMaria Luwalhati Tiuseco (フィリピン)を共同議長とするコンタクトグループは、11月18日、手順上の結論書を採択した。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.4)において、CMAは、適応資金倍額に関するGST結果に応じる努力がなされたことに留意する。
パリ協定第2条1(c)項、及びその第9条との補足性に関するダイアログ:パリ協定代2条1(c)項は、低GHG排出量で気候にレジリエントな開発に向けた経路と、資金フローを合致させるという全体目標を規定し、第9条は、気候資金に関する締約国の義務を扱う。この両方の条項の関係性が、議論の的となった。2022年、締約国は、この問題を扱うワークショップを少なくとも年1回開催するための、専用のダイアログを設置した。
CMAは、このダイアログの共同議長報告書(FCCC/PA/CMA/2024/11)を審議した、これにはBen Abraham (ニュージーランド)及びElena Pereira (ホンジュラス)をそれぞれ共同議長及び共同進行役とするコンタクトグループ及び非公式協議が、11月12日、13日、18日に会合っした内容も含まれる。
全ての締約国は、このダイアログの共同議長らの業績に感謝した、しかし、第2条1(c)項の意味合い、及び第9条との関係性の解釈では、特に民間部門の役割に関し、意見が分かれた。AOSISは、カナダ及びその他の者の支持を得て、将来のワークショップではSIDSのニーズへの対応を増やすよう求めた。締約国は、将来のワークショップのテーマに関する意見発表に、どの組織を招請するべきか、議論した。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.5)において、CMAは、ダイアログの共同議長に対し、2025年に開催されるワークショップを、参加性が高く、オープンで、透明性のある形で開催するための努力を続けるよう奨め、参加者の代表性を確保し、締約国及び非締約国利害関係者の参画性を推進し、全ての締約国に関連性のある内容にすることを目指すことを奨励した。さらに、CMAは、締約国、構成組織、資金メカニズムの運用組織、気候資金の金融機関、オブザーバー及びオブザーバー組織、その他のものに対し、2025年に議論するべき問題に関する意見書の提出を招請した。
資金メカニズムの第7回レビュー:資金メカニズムのレビューにおけるCMAの役割のあるなしが議論された。議長のBabayevは、議長職協議では合意に達しなかったと報告、規則16を適用、この項目は、COP及びCMAの次回会合の議題に加えられると述べた。
緩和
緩和野心及び実施の作業プログラム:MWPは、この極めて重要な10年間における緩和の野心及び実施の規模拡大を目指し、2021年に設立された。毎年、少なくとも2回のグローバル・ダイアログを開催し、投資に注目するイベントも開催する。さらに緩和関連のテーマを議論する場を提供し、特定の部門における追加の緩和行動のガイドとなる決定書を採択する。
この項目では、作業プログラム実施の進捗状況、機会、障壁を議論した。11月12日、14日、15日にはSB非公式協議で、11月16日にはSB閉会プレナリーで議論したほか、11月19日には、CMAの非公式協議で議論、いずれもUrsula Fuentes (ドイツ)及びMaesela Kekana (南アフリカ)が共同進行役を務めた。
多数の先進国及び開発途上国は、次回のNDCsにおける1.5℃目標への言及を求めた。少数のものは、GSTから緩和に関しハイレベルなメッセージを出す必要があると強調、これはCMAのカバー決定書で行えるとの指摘もあったが、GST実施のダイアログが適切だとの指摘もあった。LMDCs、アラブグループ、アフリカングループは、将来のダイアログ及び投資中心イベントでの手順への注目を希望し、締約国主導のテーマの選択、先進国と開発途上国の代表性のバランス、分科会方式の廃止を主張した。
締約国は合意に達することができず、SBsは、規則16に従い、SB 62の議題に入れることとなり、CMAでの審議に向けた決定書の送致は見送られた。
第2週でもCMAの下での協議が続けられたが、意見の隔たりは残ったままであった。アフリカングループは、ダイアログ及び投資中心イベント、2025年中の作業の手順、MWP共同議長らに対する題目選択へのガイダンスなどを改善するよう提案した。AOSISは、次を要請した:気候変動への対応の緊急性など、最新の科学を反映させる;題目の選択での参画性を高める。EIGは、MWPによるNDCsの実施支援方法に言及し、GSTの成果に対応する方法も明らかにするよう提案した。EUは、GSTの緩和成果の全体的な実施に関する進捗状況報告書の作成を提案した。
11月20日のストックテイキング・プレナリーで、Dion Travers George (南アフリカ)は、閣僚級協議では、締約国の考える成果やバクーから発信する必要がある政治的なメッセージとは何かに注目して議論したと指摘、さらにこれらの成果やメッセージをMWPの議題項目の下に置くべきか、それとも他の議題項目の下に置くべきか、議論したと述べた。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.23)において、CMAは、特に、2024年では、「都市、ビルディング、都市のシステム」の題目でのグローバル・ダイアログ及び投資中心イベントにおいて、集中した意見交換が行われ、その主要な結論は2024年年次報告書に取りまとめたと指摘、特に作られた環境、国際協力、都市間の協力、社会文化的及び経済的な側面、都市計画に関する結論を記載したと指摘した。
CMAは、事務局に対し、作業プログラムの共同議長のガイダンスを受け、将来のグローバル・ダイアログ及び投資中心イベントは、次のような形で開催するよう要請する:
- 招請する専門家の地域バランス及びジェンダー・バランスを高める;
- バーチャル方式での参加の機会を拡大するなどして、各締約国、特に開発途上国からの参加者を増やす;
- ダイアログ及びイベントの議題項目、小項目、及び指針となる質問事項の決定に、締約国が貢献できるようにして、透明性を高める;
- 投資、グラント、譲渡型のローンなど資金へのアクセスに関し、締約国を支援する、仲介機能を強化する;
- 地域の観点からの理解を深める。
CMAは、さらに:
- 今回の会合における次の議論に留意する:投資可能なプロジェクトを国家が決定、所有する形で開発するため、各国政府、金融関係者、他の利害関係者間の協調関係を強化し、緩和行動の実施を推進するデジタル・プラットフォームの創設;
- このプラットフォームの設計及び機能に関する意見書を提出し、SB 62での意見交換に情報を提供するよう招請する。
パリ協定第6条問題:第6条2項の協力的アプローチに関するガイダンス:第6条2項は、NDCsの実施における自主的な2国間協力の推進を希望する締約国に対し、原則及びガイダンスの枠組を提供する、特に参加締約国の認可を得て利用する、国際的に移行する緩和成果(ITMOs)の取引に関する原則及びガイダンスの枠組を提供する、なおこのクレジットは、企業を含めるいかなる組織でも、利用することができる。
この小項目は、11月12日と13日、SBSTAの非公式協議で議論されたほか、11月18日に、CMAでのコンタクトグループ及び非公式協議でも議論された。いずれも共同進行役は、Maria AlJishi (サウジアラビア)及びPeer Stiansen (ノルウェー)が務めた。議論されたのは、協力的アプローチの定義づけ、認可、報告での不一致などであり、意見の違いが見られた問題の一つは、国際レジストリの機能性、及び第6条4項レジストリ及び各国の国内レジストリとの相互運用可能性であった。最終的には、閣僚級協議で議論されたが、非公式協議では、技術的な問題の議論が続けられた。
アフリカングループは、定義づけについては柔軟な姿勢を示す一方、他の締約国のNDCs達成に用いられるITMOsと、他の国際的な緩和目的に用いられるITMOsとは、区別する必要があると指摘した。認可フォーマットについて、AOSISは、義務化要素を最小限にするよう求め、さらに締約国が使うことができる自主的なテンプレートの作成も求めた。
認可の変更の許容可能性では、意見が分かれ、一部の締約国は、最初の移行(first transfer)前の変更を支持し、認可は国家の特権であると指摘したが、他の締約国は、いかなる変更にも反対すると述べた。英国は、最初の移行後は、不可抗力など、例外的な状況に限り、認められると規定するよう求めた。
各国は、報告での不一致を特定し、対応するためのプロセスに関し、「顕著な(significant)」不一致、または「持続する(persistent)」不一致とは何かに関するガイダンスの規範性を議論した。英国は、「顕著な」不一致の定義を二重計算に結びつけるよう提案したが、EUは、より広範で「段階的な(graded)」定義づけが必要だとの見解を示した。AOSISは、情報の質的な面、量的な面の両方での不一致に対応するよう求めた。多様な締約国は、レビュワーが特定した不一致の一部では、パリ協定実施遵守委員会と連携するリンクの詳細を決める必要があると強調した。LMDCsは、不一致の結果に関する表現に反対した。
ENVIRONMENTAL NGOs及びYOUTH NGOsは、環境十全性を確保する上で、要求される条件を薄めることに警告し、WOMEN AND GENDERは、公正な移行、女性のエンパワーメント、ジェンダーの平等、利害関係者の意見発表及び協議の義務化が記載されていないとして、悲嘆した。
国際レジストリに関し、米国は、締約国のITMOs関係の行動については、データを追跡し、技六する以上の機能性をもたせることに反対し、この機能を拡大するには、広範な作業プログラムが必要であり、各締約国は、国内制度を国際レジストリに合わせるため、制度の再構築が必要になるかもしれないと警告した。アフリカングループは、このレジストリは発行を要求されている訳では無いと指摘し、レジストリのない国には、国際レジストリを利用する、クレジットの認定、移行、利用を容認することを支持した。GRUPO SUR、AOSIS、LDCsも同様の見解を示した。多数のものは、締約国が国内レジストリを策定できるよう、キャパシティ・ビルディングが必要だと強調した。
11月20日のストックテイキング・プレナリーで、Grace Fu (シンガポール)は、閣僚級協議から、可能な着地点が明らかになったと報告、国際レジストリはユニットの動きを追跡する「アカウンティング層」とし、事務局は、ユニットの移動や保有など、レジストリ外の追加機能を提供するという、「二層のレジストリシステム(dual layer registry system)」にし、国際レジストリには、ユニット発行の機能を持たせないことで、決着が図れそうだと指摘した。Simon Watts (ニュージーランド)は、他の問題でも建設的な意見交換が行われたと指摘した。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.15)において、CMAは:
- 各協力的アプローチからのITMOsの使用認可において、各参加締約国が含めるべき要素を決定し、規定する;
- 事務局に対し、各参加締約国が、上記パラグラフに記載する情報を提供する際に利用可能な、ユーザーにやさしい、自主基準のテンプレートを作成し、公表するよう要請する;
- ITMOsの使用認可における変更は、既に初回の移行を終えた緩和成果には、適用されず、影響もしないと決定する、ただし、参加締約国が、二重計算を回避する目的で、これらの変更の状況を特定し、管理プロセスも明らかにした場合は、この限りではない;
- 各参加締約国は、協力的手法からのITMOsの情報を、合意された電子フォーマットを用いて、毎年、初期報告書、または更新した初期報告書を作成し、提出することが要求されると指摘する;
- 提出された情報に関し、事務局が行う一貫性チェックの結果は、中央アカウンティング及び報告プラットフォーム上で公表され、同一の協力的手法に関し、ある参加締約国が報告した情報、そして/または参加締約国同士で報告した情報に一貫性があるか、ないか、または結果が入手可能でないかが、表示されると決定する;
- 一貫性チェックにおける不一致については、関連する参加締約国が合意された電子フォーマットで改訂版を提出し、事務局が、一貫性が達成されたと検証した場合に、修正されると決定する;
- 締約国に対し、二重計算回避のため、一貫性チェックで不一致を特定されたITMOsの、NDCs達成目的での使用は行わないよう要請する;
- 第6条4項メカニズムのレジストリと参加締約国のレジストリと、国際レジストリとの接続は、保有する情報やデータの閲覧を可能にするほか、認可された第6条4項排出削減量の行動の歴史も閲覧可能にし、認可された第6条4項排出削減量をITMOsとして、全レジストリに適用される相互運用制度と合致する形での移行を可能にすると明記する;
- 事務局に対し、協力的アプローチへの締約国の参加を支援するため、締約国が使用を認可した、もしくは認可する意図を有する緩和成果ユニットの発行を可能にする、レジストリ・サービスを提供するよう要請する。
第6条4項により設置されるメカニズムの規則、モダリティ、手順:パリ協定第6条4項は、CMAの権限及びガイダンスの下、メカニズムを設置し、GHG排出量の緩和に貢献し、持続可能な開発を支援する。パリ協定第6条2項は、各国間、及び各国間及び各国と組織の間の自主協定による緩和成果の取引に焦点を当てるが、第6条4項は、CMAの監督下、第6条4項監督機関の管理の下での中心的なメカニズムを設置する。
本章項目は、SBSTAの開会プレナリーで議論され、締約国は、実質的な議論を行うことなく、当該監督機関による2つの基準の採択に留意する決定書を採択した。その後、11月12日及び15日には、SBSTAでの非公式協議で議論された後、11月13日及び18日には、CMAの下でのコンタクトグループ及び非公式協議で議論された。これらの議論の共同議長及び共同進行役は、Kate Hancock (オーストラリア)及びSonam Tashi (ブータン)が務めた。
アフリカングループは、当該メカニズムのレジストリと国際レジストリとのリンクについては、既に決定がなされており、新しい決定書を出す場合は、この点を考慮する必要があると指摘した。大半の締約国は、認可プロセスは、第6条2項の協力的アプローチ及び第6条4項メカニズムの両方で同一のものであるべきで、スリム化も必要だと強調した。
AOSISは、認可は発行より遅くなってはならないと強調、そのような認可が認められる場合は、発行後2年以内という期限を設けるべきであると述べたが、アフリカングループ、GRUPO SUR及びその他は、これに反対した。AILACは、クレジット後のモニタリング期間に関するガイダンスの提供を支持し、日本は、ベースラインのツール及びメカニズム・レジストリの実施に関する議論を求めた。
GRUPO SURは、CDM新規植林及び再植林プロジェクトの第6条4項メカニズムへの移行の議論を支持した。少数の締約国は、監督機関に対し、移行を求めるCDMプロジェクトの追加性の審議を要請するとのEU案に疑義を呈した。
最終結果:決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.1)において、CMAは:
- 監督機関による次の標準の採択に留意する:「標準:第6条4項メカニズムの手法論の策定及び評価に第5章B項(手法論)の必要事項の適用(Standard: Application of the requirements of Chapter V.B (Methodologies) for the development and assessment of Article 6.4 mechanism methodologies)、及び「標準:第6条4項メカニズムにおける除去量を含める活動の必要事項(Standard: Requirements for activities involving removals under the Article 6.4 mechanism);
- 監督機関は、上記の標準を速やかに推敲すると共に、規制の安定性を図り、これらの標準の適用における進捗状況を、CMAに対する年次報告書に記載すると指摘する。
決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.16)において、CMAは:
- 第6条4項監督機関に対し、関心ある利害関係者、独立した科学者や技術専門家、現地のコミュニティ、と協議し、関連する場合は先住民の知識、科学、及び慣習を含める形で、監督機関としての作業への支援を請い、必要な場合は、提案をレビューし、独立した科学的技術的な助言を得るよう要請する;
- 監督機関に対し、採択済みの標準、ツール、手順に対する頻繁な改定を回避して、規制の安定性を確保すると同時に、最善の科学を反映する改善は続けるよう要請する;
- 監督機関に対し、ベースライン、下方修正、標準化ベースライン、需要抑制、追加性、リーケージに関する作業の迅速化を図り、さらに、クレジット期間後のモニタリングや逆転リスクの評価、修正措置など、非永続性や逆転についても作業を早めるよう、奨励する;
- ホスト締約国は、NDCsそして/または他の国際的な緩和目的を達成するため、発行済の第6条4項排出削減量による緩和貢献を認可することが可能であると決定する、ただし、下記に示す期間内に認可ステートメントを監督機関に提示すると決定する、この期間とは:緩和貢献第6条4項排出削減量の、メカニズム・レジストリ出入の前である発行日から、適用され、適応目的の収入の一部として既にレジストリに送られた緩和貢献第6条4項排出削減量の相応の調整を行う場合の必要条件が適用される、さらに世界の排出量全体の緩和が実現した時点で、キャンセルされる;
- 監督機関に対し、発行日からホスト締約国が認可ステートメントを提出するまでの期間に制限を設ける必要があるかどうかを議論し、決定し、CMA 7に対する年次報告書の中で、報告するよう要請する;
- 参加締約国による国内レジストリとメカニズム・レジストリとの接続は、自主的なものであると決定し、この接続は、認可された第6条4項排出削減量の移行を可能にすると同時に、二重計算を回避し、保有する認可済み第6条4項ERsのデータ及び情報、並びに行動史の抽出及び閲覧を可能にする。
パリ協定第6条8項に規定する非市場アプローチ枠組の作業プログラム:パリ協定第6条8項は、持続可能な開発及び貧困撲滅の考えの下、締約国によるNDCsの実施を支援し、緩和及び適応の野心を引き上げることを目指す非市場アプローチ(NMAs)の枠組を規定する。この小項目は、11月12日及び13日、SBSTAの下でのコンタクトグループ及び非公式協議で議論された。これらの共同進行役及び共同議長は、Kristin Qui (サモア)及びJacqui Ruesga (ニュージーランド)が務めた。
今回の会合では、NMA枠組の作業プログラムの第1フェーズ(2023年―2024年)では、進捗状況及び成果に対し、迅速かつ簡易的な評価作業を実施し、第2フェーズ(2025年ー2026年)での実施スケジュールの改善及び提案を行うことが、課題となった。開会コンタクトグループにおいて、事務局は次に注目した:ウェブ上のプラットフォームに記録されたNMAsは皆無である;SMSTA 60では指定国内窓口は52であったが、今回は78カ国の国内窓口が指定された。
第1フェーズの評価に関し、LMDCsは、NMAsが各国のNDCs実施をどのように支えたか、量的な評価を行うよう提案した。熱帯雨林諸国連合及びLMDCsは、第2フェーズにおいても、第1フェーズの題目の審議を続けるよう求めた。
第2フェーズに関し、次が提案された:特定のテーマを深く掘り下げて議論するため、スピンオフグループ方式を用いる;個別のNMAsの登録を可能にするため、ウェブベースのプラットフォームを更新する。
最終結果: 結論書(FCCC/SBSTA/2024/L.15)において、SBSTAは、作業プログラム活動の第2フェーズ実施に向けたスケジュールを提案するため、実施の第1フェーズに関し、迅速かつ簡易的な評価が行われ、CMAでの採択にかける決定書草案が提示されたことを歓迎した。
決定書(FCCC/SBSTA/2024/L.15/Add.1)において、CMAは:
- 締約国は、第1フェーズにおいて、作業プログラム活動に関する全要素を特定し、枠付けしたと指摘、さらに事務局は、NMAプラットフォーム及びそのユーザーママニュアルを作成したと指摘する;
- 第2フェーズでは、作業プログラム活動の全面的な実施に焦点を当てる予定であると想起する;
- 事務局に対し、NMAプラットフォームの開発状況を定期的に報告するよう要請、さらに、NMAsグラスゴー委員会の各会合では、NMAプラットフォームの活動に関する量的な報告書の提出を要求、第6条8項の国内窓口の数、提出されたNMAsの件数などの情報の記載を求める;
- 関心のある締約国に対し、NMAsの事例をNMAプラットフォームに記録し、紹介するよう奨励する;
- 次に関する文書提出を招請する:NMAプラットフォームの利用に対する障壁と可能な解決策;NMAプラットフォームの可能性を発揮する上での課題;NMAsによるNDC実施支援の可能性。
NDCの特性に関する追加ガイダンス:CMAは、2024年にNDCsの特性に関する追加ガイダンスを議論することで、2018年に合意していた。CMAは、この項目を、Sin Liang Cheah (シンガポール)及びFederica Fricano (イタリア)を共同議長とするコンタクトグループで議論した。
締約国はNDCの特性で合意できなかった。AOSIS、EIG、その他は、NDCsを1.5℃目標に合わせることなどの追加特性を指摘したが、LMDCs及びアラブグループは、NDCsは国家決定の特性を持つことから、追加の特性を特定するべきでないと強調した。
締約国は、この項目の議論を終了するか、別な日まで延期する、それとも2025年のNDCs提出に向け、情報を提供するべく、議論を続けるかで、合意できなかった。
最終結果: CMAは、CMA 8 (2026年11月)で、この項目の審議続行を決定した。
条約の長期世界目標の定期レビュー、及び達成に向けた全体的な進捗状況:2010年、締約国は、世界の平均気温を産業革命前より2℃上昇の範囲内に抑えるべく、世界のGHG排出量を削減するという長期目標で合意、この目標の適切性、及び目標に向けた進捗状況を、7年毎にレビューすると決定した。第1回レビュー(2013年-2015年)の成果は、産業革命前より1.5℃の気温上昇で抑える努力を追求するという、パリ協定の目的に寄与する要素となった。第2回の定期レビューは、2022年に終了した。この議題項目は、Jolene Cook (英国)及びLeon Charles (グレナダ)を共同議長とするコンタクトグループで議論された。
締約国は、定期的レビュー継続の可否で合意できなかった。米国及びその他は、不必要だとの見方を示したが、LDCsやその他は、将来の定期レビューに向けた準備作業を提案した。次に、いつ、この項目を議論するかでも、意見が分かれた。
最終結果:決定書(FCCC/CP/2024/L.7)において、COPは、COP 30でのこの項目の審議継続を決定する。
国際航空輸送及び海上輸送の燃料からの排出量:この議題項目は、Jakob Wiesbauer-Lenz (EU)及びPacifica Achieng Ogola (ケニア)を共同進行役とする非公式協議で議論された。締約国は、長年の見解を繰り返すのみで、次の文章で合意できなかった:国際民間航空機関及び国際海事機関の代表者による、今回の会合への出席に感謝し、両機関に対し、提案されている目標が開発途上国に与える影響について、評価するよう求め;共通するが差異のある責任の原則への言及も要請した。
最終結果:11月18日の閉会プレナリーで、SBSTAは、SBSTA 62でのこの議題項目の審議継続で合意した。
クリーン開発メカニズム(CDM)の問題:CDMは、京都議定書の下で設立された市場メカニズムである。この項目は、Karoliina Anttonen (フィンランド)及びAlick Muvundika (ザンビア)を共同進行役とするSBSTAの下での非公式協議、及びCMPの下でのコンタクトグループ及び非公式協議で議論された。主な項目は:CDMの運用、プロセス、及び制度の段階的な打ち切りのタイムラインを設定する;CDM信託基金から他の分野に資金を移行する。後者の資金の移行先については、次の3つのオプションが示された:適応基金;第6条4項キャパシティ・ビルディング;第6条のインフラストラクチャー。
SBSTAでは、審議が続けられたが、締約国は合意に至らず、規則16に従い、この項目は、SBSTA 62の暫定議題に入れる予定である。しかし、この議題項目は、CMPの議題でもあることから、CMPは、第2週もこの項目の審議を続けた。
SBSTA及びCMPの非公式協議で、事務局は、CDM信託基金の年末の収支予想など、締約国の提起した質問に応え、スタッフの再配置に関わる保障、及び発行手数料など、多様な不確実性があると説明、各国が発行の締切日を決定して初めて、正確な推計額が得られると指摘した。事務局は、2025年では、1278万米ドルが利用可能であろうと指摘した。
AOSIS、EU、AILAC、その他、大半の締約国は、CDM活動中止の日付を、可能な限り最も早くすることを支持した。LMDCs、アラブグループ、ブラジルは、今回の会合でのタイムライン決定に反対し、CMP 20での審議継続を希望した。LMDCsは、第6条4項の議論では追加の必要条件が議論されており、これは多数のCDMプロジェクトの第6条4項メカニズムへの移行を妨げる可能性があると指摘した。
大半の締約国は、適応基金への移行を支持したが、他の移行先を加えるかどうかでは、意見が分かれた。英国は、適応基金と第6条活動の両方への移行を支持し、どの第6条活動かを特定しないことを希望した。EIGは、第6条への資金の移動は、ローンではなく、再配分にするべきだと指摘した。LMDCsは、適応基金のみへの移行なら考えても良いと述べた。アフリカングループは、適応基金と第6条キャパシティ・ビルディングの2つへの移行を希望したが、AOSISの支持を得て、適応基金のみへの移行という代案を支持した。
コンタクトグループの閉会会合で、共同議長は、文書での合意がなかったとし、括弧書きの文書草案を議長職に送る予定と報告した。
最終結果:決定書(FCCC/KP/CMP/2024/L.3)において、CMPは:
- CDMの実施を監督し、その運用への利害関係者の関与を保持するため、執行理事会、パネル、事務局は、2023年9月23日から2024年11月7日まで努力を重ねてきたことに留意する;
- 附属書記載のとおりに、特定の部門範囲での認証、そして/または検証の機能を執り行うものとして、執行理事会が暫定的ながら認定した組織で、既に認定された組織を、運用組織として認定する;
- 非対応の認定国内当局の問題への対応における執行理事会での進捗状況に留意し、執行理事会に対し、必要があれば、非対応の認定国内当局について、フォローし続ける要要請する。
京都議定書のコミットメントの野心引き上げに関するハイレベル閣僚級ラウンドテーブルの報告:議長のBabayevは、議長協議でも合意が得られなかったとして、規則16が適用されると報告した。.
適応
適応世界目標の問題:適応能力を高め、レジリエンスを強化し、気候変動に対する脆弱性を軽減するための適応世界目標(GGA)は、パリ協定第7条の下で設置された。CMA 3において、締約国は、このGGSの詳細を定める作業プログラムを開設、CMA 5では、気候に対する適応及びレジリエンスに関する題目別及び範囲別の目標などを定めるGGA枠組を設立したほか、適応指標の定義づけを目指すプロセスも開始した。
この議題項目は、初めに、Tina Kobilšek (スロベニア)及びLamin Dibba (ガンビア)を共同進行役とするSB非公式協議で議論された。締約国は、適応指標の定義づけ作業の進捗状況報告書(FCCC/SB/2024/6)を議論し、専門家グループに追加のガイダンスを提供する必要があることで合意したが、次の項目では、異なる意見を表明した:指標の具体的な数値及びその内容;グローバルな集約と地域及び国家レベルの特化とのバランスをとる;MoIを追跡する指標の必要性、開発途上国は、これを希望したが、EU、英国、日本、カナダ、その他は拒否した。次の項目では意見が分かれた:GGAを独立した議題項目にする必要性;GGAとGSTの関係;公表が遅くなった移行型適応に関する事務局作成のテクニカル・ペーパー(FCCC/TP/2024/8)に関し、実質的な議論を行うかどうか。SBsは、結論書(FCCC/SB/2024/L.12)において、決定書草案をCMA 6に送致することで合意した。
決定書草案の議論は、CMAの非公式協議でも続けられ、その後、Franz Tattenbach Capra (コスタリカ)及びEamon Ryan (アイルランド)を共同進行役とする閣僚級協議、及び議長職協議でも議論された。
最終結果:決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.20)において、CMAなどは、GGAの指標に関し:
- 指標に関する技術専門家の作業では、顕著な進展が見られたことを認める;
- CMA 7が、指標の最終リストを決定することを確認する;
- 専門家による共通の手法及び手法論の適用、題目別及び規模別の目標を横断する協調関係の強化、世界規模の指標数削減の優先のため、ガイダンスを追加する必要があると認識する;
- 専門家の検討にかける追加基準を特定する;
- 最終結果には、世界的に適用可能で、多様な適応行動を捉えるメニューを構成する指標として、管理可能な100件以下の指標を含める可能性があり、締約国は、どの指標に関し報告するか、選択できると決定する;
- これらの指標は、特定の生態系、子どもたちの脆弱性、MoIの追跡などに利用されると決定する;
- SB議長らに対し、これらの指標に関する意見を提出するよう専門家に招請し、SB 62の4週間前には報告書を発行可能にするよう要請する。
GGAとGSTの関係性に関し、CMAは:
- 指標に関する報告を行う締約国は、適応の進捗状況の評価の方法を特定し、情報を提供することで、GSTプロセスのテクニカル・フェーズにフィードインするべきと決定する;
- 締約国に対し、適応報告書を更新し、GGAの枠組を考慮して、自国のBTRsを作成するよう求め、事務局に対しては、GGA目標達成に向けた進捗状況をレビューし、結論を第2回GST向けの統合報告書に記載するよう要請する;
- 第2回GSTの後、GGA枠組のレビューを行うと決定する。
- CMAは、さらに:
- GGAの問題は独立した議題項目であると確認する;
- 適応に関するハイレベル・ダイアログを設置し、各CMA会合の前後に招集する;
- IPCCが行った、気候変動の影響及び適応の評価に関する1994年版のテクニカルガイドラインの改定及び更新の作業を歓迎し、SBSTAに対し、SB 62において特別イベントを開催し、 for the IPCCから進行中の作業に関する最新情報の提供を求めるよう招請する;
- 移行型適応に関する事務局のテクニカルペーパーに留意し、事務局に対し、このペーパーのサマリーを作成するよう要請する。
適応委員会報告書:適応委員会は、適応行動の実施促進を目的として、2010年に、カンクン適応枠組の一環として設立された。このカンクン適応枠組は、専門家のガイダンスを提供し、アウトリーチを強化し、条約及びパリ協定の実施を支援する目的で、適応に関するUNFCCCの行動を世界的に推進するための枠組である。SB 60では、合意を得やすくするため、適応委員会報告書と適応委員会のレビューは、別々に審議することが決定された。
締約国は、Lina Yassin (スーダン)及びGeert Fremout (ベルギー)を共同進行役とする非公式協議を開催し、最初に、適応委員会の作業及びアウトプットを議論、これらとGGA指標の作業との関係などを議論した。その後は、中身の議論より、交渉のモダリティが議論の的となり、アフリカングループは、共同進行役作成の文書草案を繰り返し拒否した。
最終結果:結論書(FCCC/SB/2024/L.9)において、SBSTAは、COP及びCMAに対し、適応委員会の2023年報告書及び2024年報告書(FCCC/SB/2023/5 and FCCC/SB/2024/4)を歓迎するよう提案し、受け入れられた。
適応委員会の進捗状況、効果性、実績のレビュー:Lina Yassin (スーダン)及びGeert Fremout (ベルギー)を共同進行役とする非公式協議が開催され、このレビューをCOPの権限で行うか、CMAの権限でも行うかで意見が分かれた。ノルウェーは、橋渡し案を提案、今回のレビューはCOPの決定書をもって最終決定されるが、既存のマンデートを反映させるべく、COP及びCMAの両方の下で、新たなレビューを開始することを示唆した。アフリカングループ、アラブグループ、LMDCsは反対した。EU及びノルウェー、その他は、進捗の行き詰まりへの失望感を表明した。米国は、この委員会の作業の遅れを恥とするべきだと述べた。
最終結果:11月16日の閉会プレナリーで、SBsは、この問題を、追加審議のため、SB 62に送致すると決定、COP及びCMAもそれぞれの閉会プレナリーで、送致を確認した。
国別適応計画:NAPsはカンクン適応枠組の一環として設立され、適応能力及びレジリエンスを構築し、気候変動の影響に対する脆弱性を軽減することを目的とする。NAPsの策定及び実施の進捗がなかったことから、COP 24は、LDC専門家グループ(LEG)及び適応委員会と協力し、適応行動のさらなる推進を開始した。
締約国は、Meredith Ryder-Rude (米国)及びAntwi-Boasiako Amoah (ガーナ)を共同進行役とするSBIの非公式協議を開催、SB 60から送られた非公式ノートを議論したが、次の重要項目で意見が分かれた:NAPsの策定及び実施のためのMoI提供という先進国の義務に言及するかどうか;適応資金の供給者としての民間部門の役割;適応の本流化を図る表現。締約国は、SBs結論書では合意できず、決定書草案を第2週のCOPでの審議継続に回すことを決定した。COPの非公式協議が招集され、締約国は、決定書草案を推敲したが、結局、意見の一致には至らなかった。
最終結果: 結論書(FCCC/SBI/2024/L.18)において、SBIは、SBI 61で作成された文書草案を、COP 29での審議に装置した。手順上の結論書で、COPは、SBI 21(?)に対し、今回の会合で作成された決定書草案に基づき審議継続を求めた。
LDCs関係問題:LEGは、2001年に設立され、開発途上国によるNAPsの策定及び実施の支援を目的とした。LEGは、1年に2回会合し、技術ガイドラインやペーパー、訓練活動、及びワークショップなど、多様なモダリティを用いて、作業プログラム実施の進捗状況をレビューする。
Rik den Hoedt (オランダ)及びEphraim Shitima (ザンビア)を共同進行役とする非公式協議が開催され、次の項目を議論した: 2024年8月のLEG第46回会合の報告書;NAPsの策定及び実施への資金援助へのアクセスでLDCsが直面する困難;LEGとGGA及びGSTとの関係性、これには、この項目が、COP及びCMAの議題項目なのか、それとも, or the COPのみの議題項目なのかという問題も含まれる。
最終結果: 結論書(FCCC/SBI/2024/L.17)において、SBIは:
- NAPsの策定及び実施時に考慮されるべき、NAPプロセスの技術ガイドラインについて、GGA目標を反映するべく、更新したことを歓迎する;
- COP 31で予定される、LEGのストックテイクに向けたステップについて、SBI 63でも審議を続け、COP 30及びCMA 7 (2025年11月)での審議に向けた決定書草案を提案することで合意する。
決定書(FCCC/SBI/2024/L.17/Add.1)において、COPは:
- LEGに対し、2025年の早い段階で、NAP執筆ワークショップを開催するよう要請し、GCFの下でのLDCsの直接アクセス組織を常時招請するよう奨励する;
- LEDのマンデートの次回レビュー前、中間点において、LEGの進捗状況及び委任条件のレビューのストックテイクを、CMAと並行して、行うと決定する。
損失損害
ワルシャワ国際メカニズム執行委員会及びサンチャゴ・ネットワークの合同年次報告書:WIMは2013年に設立された構成組織で、気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国における、極端な現象及び緩慢に発生する現象など、気候変動の影響に伴う損失損害関係のマンデート実施を任務とする。WIM執行委員会(ExCom)は、5年間の繰り返し作業計画で、その作業を実施し、5件の題目別専門家グループの作業を監督する。2019年, 締約国は、損失損害に関する技術的な支援を仲介する目的で、サンチャゴ・ネットワークを設立した。CMA 4は、ExCom及びサンチャゴ・ネットワークの年次報告書は合同の形で審議すると決定した。
この項目の非公式協議は、Pasha Carruthers (クック諸島)及びFarhan Akhtar (米国)が共同進行役を務め、11月13日、14日、15日、及び16日に開催された。締約国は、合同年次報告書(FCCC/SB/2024/2)について議論し、サンチャゴ・ネットワークの運用開始での大きな進展を歓迎した。AILACは、地域オフィスの速やかな設置を求め、アフリカングループは、アフリカには少なくとも2箇所の地域オフィスを設置するよう要請した。LDCsは、サンチャゴ・ネットワークの資金と新しい損失損害基金に対するプレッジとは、明確に区別されると強調された。AILAC及びアフリカングループは、ネットワークへのプレッジの未達分の達成を促した。非公式な非公式協議での追加審議の後、締約国は、次の項目に関し、可能性ある着地点を指摘した:サンチャゴ・ネットワークの地域オフィス;損失損害に関係する異なる組織間の一貫性及び補足性;損失損害の情報報告書を発行する可能性。大半の締約国は、進捗状況をまとめた、共同進行役の非公式ノートを、統治組織に送ることを希望したが、アフリカングループは反対した。SBsでは合意に達しなかったことから、この問題は、SB 62で、再度審議される。しかし、合同年次報告書の審議は、下記に示す、WIMの2024年レビューと合わせ、COP及びCMAの下で続けられた。
2024年のWIMのレビュー:SB 60において、締約国は、SB 61で行われるレビューの委任条件を決定した。このレビューは、11月12日、義務化イベントとして開始され、締約国は、これまでのWIMの実績への失望感を表明、「低い野心と不十分な」メカニズムであったと嘆いた。開発途上国は、WIMのアウトプットは「達観的で学術的な専門用語」及び言語での障壁があり、利用が困難だと強調し、ボトムアップ方式の強化し、実務者や地方コミュニティ、先住民のさらなる積極的な参画を得ることを提案した。さらに、参加者は、損失損害でのニーズ及びギャップに関する年次報告書の作成をWIMに求めることを提案した。
締約国は、11月13日などで、Pasha Carruthers (クック諸島)及びFarhan Akhtar (米国)の主導する非公式協議で会合し、次の項目を議論した:WIMの知識の集大成へのアクセス可能性を高める;WIM、サンチャゴ・ネットワーク、及び損失損害基金間の協調及び一貫性を強化する;世界の損失損害状況に関し、定期的に報告書を作成する可能性;行動及び支援に関するWIM専門家グループの作業、さらには、各国国内の損失損害窓口の作業。合意に達することはできなかった。
11月18日のCOP/CMAの非公式協議で、締約国は、この項目を、WIM ExCom及びサンチャゴ・ネットワークの合同年次報告書と合わせて審議した。11月20日に開催された議長職の協議では、WIMの統治組織は、EU及び米国の主張どおり、CMA単独なのか、それとも、G-77/中国が論じるとおり、COPも統治組織なのかが、議論された。しかし、合意には至らず、締約国は、統治組織で採択された決定書は、ガバナンスに関する議論の結果に予断を加えるものではないとする脚注を挿入する方法を続けることで合意した。
最終成果:決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.9)において、CMAは、特に:
- ExComによる作業計画実施の進捗を歓迎し、さらにサンチャゴ・ネットワークの運用開始に向けた諮問理事会及び暫定事務局の作業進捗も歓迎する;
- 本決定書の附属書に記載する、サンチャゴ・ネットワークの諮問理事会の手順規則を採択する
- SBsに対し、SB 62においても、合同年次報告書及び2024年WIMレビューの審議を継続し、決定書草案を統治組織(単数/複数)の2025年11月の会合での審議に回すよう要請する.
COPは決定書(FCCC/CP/2024/L.4)において、CMAの決定を承認する。
グローバルストックテイク
決定書1/CMA.5のパラグラフ97に規定する、グローバルストックテイクの成果実施に関するダイアログ: このダイアログは、2024年に採択されたGST決定書(1/CMA.5)により設立された。締約国は、SB 60において、このダイアログの運用開始に関する議論を開始したが、そのスコープに関する意見は大きく分かれた。このダイアログは、GST決定書の資金のセクションで設立されたことを強調する一部のものは、資金に焦点を当てるべきと主張した。他の多数のものは、このダイアログは、資金だけでなく、GSTの全成果の実施を追跡するべきと強調した。締約国は、この問題のCMA議題書での位置づけ、特に資金関係問題の項目に入れるべきか、それともGST関係の問題という項目に入れるべきかで、意見が分かれた。このため、開会プレナリーにおけるCMA議題書の採択が遅れた、さらに、Ricardo Marshall (バルバドス) and Patrick Spicer (カナダ)を共同進行役とする非公式協議でも、この問題に多くの時間を割くこととなり、議長職主催の協議でも、この問題が取り上げられた。
最終結果: 議長職は、SB 62での、この問題の審議継続、及びCMA 7での採択を目指す決定書草案の作成を提案、CMAもこれに同意した。
決定書1/CMA.5のパラグラフ187に規定するNDCの策定へのGSTの情報提供に関する年次ダイアログ報告書:CMA 5は、SB議長に対し、GSTの成果を次回のNDCsの策定に組み込む方法に関し、知識交換を進めるため、このダイアログを毎年開催するよう要請した。このダイアログの第1回は、2024年6月のSB 60で行われた。
最終結果:閉会プレナリーで、議長のBabayevは、協議は合意に至らず、規則16が適用されると報告した。
グローバルストックテイク・プロセス全体の手順要素及びロジスティック要素:GSTは、パリ協定の枠づけとなるメカニズムの根幹である。GSTは、パリ協定の全分野での努力及び結果の全体を評価するプロセスである。18か月のテクニカル・フェーズを経た、ドバイ会議では、このストックテイクのテクニカル・フェーズの結論に対する対応策を示す、政治フェーズの終了が課題であった。ドバイで、締約国は、第1回GSTの経験をレビューし、将来のGSTの機能改善を図ることで合意した。
最終結果:CMAは、SB 62において、非公式ノート及びその附属書を基に、この問題の審議を続け、 決定書草案を提案して、CMA 7での審議及び採択にかけることを要請した。
条約の下での報告
温室効果ガスのデータ・インターフェース:締約国は、条約及び京都議定書の報告要求に基づき、GHGのインベントリ報告書を提出する。GHGのデータ・インターフェースは、締約国提出の情報へのアクセス、検索、分類をしやすくするためのオンライン・ツールである。SBSTAは、結論書(FCCC/SBSTA/2024/L.11)を採択した。
附属書Iの報告:国別報告書及び隔年報告書の提出状況及びレビュー:SBI は、報告書(FCCC/SBI/2024/INF.10)に記載する情報に留意した。
隔年報告書のとりまとめ及び統合:SBIは、この報告書(FCCC/SBI/2023/INF.7)に記載する情報に留意し、SBI 62でのこの問題の審議継続で合意した。
国別GHGインベントリ・データ報告書:SBIは、報告書(FCCC/SBI/2023/15 及び FCCC/SBI/2024/17)に記載する情報に留意し、SBI 62でのこの問題の審議継続で合意した。
テクニカル・レビューの年次報告書:隔年報告書及び国別報告書で報告された情報のテクニカル・レビュー:SBSTAは、2024年報告書(FCCC/SBSTA/2024/INF.5)に記載する情報に留意した。
GHGインベントリのテクニカル・レビュー:SBSTAは、2024年報告書(FCCC/SBSTA/2024/INF.2)に記載する情報に留意した。
GHGインベントリ及び他の報告された情報のテクニカル・レビュー:SBSTAは、結論書(FCCC/SBSTA/2024/L.10)を採択した。
非附属書I締約国の報告:国別報告書記載の情報:SBIは、この問題の審議を、SBI 62でも継続することで合意した。
資金援助及び技術支援の提供:開発途上国での条約規定の計測、報告、検証の実施に対する支援の提供の項目は、SBIの下での非公式協議で議論され、Julia Gardiner (オーストラリア)及びSandra Motshwanedi (南アフリカ)が共同進行役を務めた。締約国は、合意に達せず、規則16に従い、SBI 62の議題項目に、この項目を入れる予定。
非附属書I締約国の隔年更新報告書のテクニカル・レビューに関するサマリー報告書:2024年の各国の隔年更新報告書に対する技術分析に焦点が当てられ、SBIは、2024年9月3日に公開された180件の技術分析サマリー報告書に留意した。
専門家諮問グループ(CGE)の報告書:CGEは、開発途上国による国別報告書の完成を支援する。この項目は、Mausami Desai (米国)及びXiang Gao (中国)が共同進行役を務めるSBIの非公式協議で議論された。
最終結果:結論書(FCCC/SBI/2024/L.16)において、SBIは、CGEに対し、2025年の作業計画の策定及び実施においては、次の活動を検討するよう要請する:
- NDCs、隔年更新報告書、及びBTRsの作成で直面した問題、制約条件、学習事項、およびキャパシティ・ビルディングのニーズに関するテクニカルペーパーの更新を続ける;
- 開発途上国によるBTRsの作成及び提出を促進する作業に焦点を当てる、これには、ETF電子報告ツールの利用によるものも含める;
- BTRsの技術専門家レビューを受ける開発途上国に対し、技術的な助言及び支援を提供する;
- 報告作成の必要条件に関するキャパシティ・ビルディングの資料を作成する。
SBIはさらに:
- CGEは、資金面の制約により、2024年には、地域ワークショップを2回しか開催できなかったと指摘し、CGEの毎年の作業計画の全面的な実施には、それを支えるだけの資金の取得が重要であると強調する;
- CGEに対し、条約及びパリ協定の下での他の専門家グループや構成組織との協力関係を強化し、さらに、関連する多国間のプログラム及び組織とも協力を進める一方で、CGEの2025年の作業計画実施と重なることは避けるよう奨励する。
京都議定書の下での報告
京都議定書の国際取引ログ管理者の報告:CMPは、2024年の報告書(KP/CMP/2024/5)に留意した。
第2約束期間の最終的なとりまとめ及びアカウンティングの報告書:CMPは、この報告書に留意し、この議題項目の審議を終了した。
パリ協定の下での報告
強化された透明性枠組の報告作成ツール:SBSTAは、Daniela Romano (イタリア)及びFredrick Ouma (ケニア)を共同進行役とする非公式協議を開催し、次を議論した:IPCCと協力し、IPCCのソフトウェアとのツールのインターオペラビリティを維持する;SBSTA 61における関連のマンデート・イベントでのプレゼンテーションで言及されたツールの強化、行動の統合を進める;これらの最新情報の周知を図るため、SBSTA 62において、マンデート・イベントを開催する。
最終結果: 結論書(FCCC/SBSTA/2024/L.12)において、SBSTAは:
- ETFの下での共通の報告用の表、及び共通の表形式での電子式報告作成ツールについて、最終バージョンのタイムリーな完成を歓迎する;
- 事務局に対し、テクニカルな訓練ワークショップの開催を続けるよう要請する;
- 事務局に対し、IPCCと協力し、このツールとIPCCのソフトウェアのインターオペラビリティを維持するよう要請する;
- 事務局に対し、ETF報告ツールの改善を図り、その進捗状況を締約国に知らせるためのイベントのSBSTA 62での開催を要請する。
開発途上国に対する資金援助及び技術支援の提供:この項目の議論では、ETFの実施において、開発が直面する課題に焦点が当てられ、Ole-Kenneth Nielsen (デンマーク)及びSandra Motshwanedi (南アフリカ)を共同進行役とする非公式協議が開催された。締約国は、第1回BTRs作成への支援の提供に対する事務局の努力を歓迎した。開発途上国グループは、次の項目などに注目した:条約及びパリ協定の下での報告作成に対する支援の移行;パリ協定の下での報告要求増加に応えるための資金的なニーズの評価、及び次回のGEF資金補填における、これらのニーズへの配慮;GEFの資金状況は、ETFでの報告義務を満たすには不十分であること;開発途上国における国内のキャパシティ・ビルディングの必要性。
締約国は、SBIでは合意に達せず、この問題は規則16に則り、SBI 62の議題に入れることになる。いずれにしても、締約国は、結局、CMAの下では次の合意に達した。
最終結果:決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.13)において、CMAは:
- 開発途上国の透明性に関するキャパシティ・ビルディングに対し、継続的に支援を供与することの重要性を強調する;
- ETFの実施におけるキャパシティ・ビルディングを実現するための事務局の努力を歓迎する、特に地域でのオンライン及び対面式のワークショップ開催を歓迎する。さらに、事務局に対し、これらのキャパシティ・ビルディング活動を、小地域に適合させることを奨励する;
- 開発途上国におけるETFの国別報告書の作成及び提出では、政府主導で、体系的、制度化されたプロセスへ移行するためのキャパシティ・ビルディングが重要であると強調する;
- 事務局に対し、GEF及びその実施機関と協議し、開発途上国の第1回BTRs作成での経験に関する情報交換を推進するため、SB 62でワークショップを開催するよう要請する、これらの情報には、供与された資金へのアクセス、及び持続可能なETF実施に適したものかどうかも含める;
- 事務局に対し、CMA 7の3週間前までにこのワークショップのサマリー報告書を作成するよう要請する。
技術移転及び開発、そしてキャパシティ・ビルディング
技術執行委員会(TEC)及び気候技術センター・ネットワーク合同の年次報告書:この項目では、TEC及びCTCNの合同年次報告書(FCCC/SB/2024/3)を審議する。交渉は、Carlos Fuller (ベリーズ)及びElfriede More (オーストリア)を共同進行役とするSBs非公式協議で行われた。SBsは、11月16日の閉会プレナリーで、COP及びCMAの採択にかける決定書草案を提案した。
最終結果:決定書(FCCC/SB/2024/L.11)において、COPは:
- TEC及びCTCNの協調及び協力の強化に感謝し、両組織の作業が最大の効果をもたらすよう、協調を続けるよう奨励する;
- 両者の機能をレビューすると決定し、気候技術センターについては、CTCNの実施の効果性に関する第1回及び第2回の独立したレビューの結論、並びに技術開発及び移転の問題に関するパリ協定の実施支援する技術メカニズムの組織に対し、提供される支援の適切性の第1回定期評価の結論を考慮した上で、その委託期間をCOP 30まで延長するかどうかを決定する;
- CMAに対し、このレビューへの参加を招請する。
決定書(FCCC/SB/2024/L.10)において、CMAは、機能のレビューへの参加を決定し、さらに気候技術センターの委託期間を、CMA 7まで延長するかどうかの決定を行うと決定する。
両方の決定書において、COP及びCMAは、SBI 62に対し、このレビューを開始し、それぞれの決定書草案をCOP 30及びCMA 7に提案するよう要請する。
技術メカニズムと資金メカニズムのリンク:この項目では、技術メカニズムと資金メカニズムのリンク、協調、協力について、締約国及び他の利害関係者の提出文書、及びこれらの提出文書及びで開催されたワークショップの成果に関し、事務局が取りまとめた統合報告書(FCCC/SBI/2024/16)を考慮に入れて、議論が展開された。Ekaterine Mikadze (ジョージア)及びStephen Minas (ギリシャ)を共同進行役とするSBIの非公式協議が招集された。
技術的なニーズの評価の結果を実施する目的での、GEF及びGCFの支援の供与など、技術メカニズムと資金メカニズムとのリンクに関する情報及びデータをまとめたテクニカル報告書の作成に焦点が当てられた。締約国は、意見の一致に至らず、SBI 62での審議継続で合意した。
最終結果:SBIは、11月16日の閉会プレナリーで、手順上の結論書を採択し、この問題をSBI 62での追加審議に回すことを決定、11月23日、議長のBabayevも、これを確認した。
技術移転に関するポズナニ戦略プログラム:ポズナニ戦略プログラムの気候技術活動の多くは完了していることから、この項目の議論では、このプログラムの実施の進捗状況、成功例、及び学習事項のストックテイキングが行われた。締約国は、COP 29での審議及び採択のための決定書草案を提案するとの観点から、技術に関するGSTの結果についても議論し、開発途上国のNDCs、NAPs、技術的なニーズの評価、技術行動計画で識別され、優先度が高いとされた活動、及び長期戦略の実施支援を目指した。Duduzile Nhlegenthwa-Masina (イースワティニ)及びStig Svenningsen (ノルウェー)を共同進行役とする非公式協議が、SBI及びCOPの下で招集された。
次の項目が議論の焦点となった:この議題項目の審議を継続するかどうか、この議題項目の審議終了がポズナニ戦略プログラムの終了を意味するかどうか、このプログラムの延長は可能かどうか。締約国は、次の項目も議論した:GST決定書(1/CMA.5)で設立された技術実施プログラム(TIP)の運用開始に役立てるため、ポズナニ戦略プログラムから学んだ教訓の情報を捕捉する最善の方法。
最終結果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.3)において、COPは:
- 事務局に対し、TECのガイダンスの下、GEFと協議し、ポズナニ戦略プログラムの進捗状況、課題、プログラムの実施で得られた学習事項及び成功例など、このプログラムの評価報告書を作成し、SBI 64(2026年6月)の審議にかけるよう要請する;
- SBIに対し、COP 31 (2026年11月)の審議にかける決定書草案を提案するとの観点で、この報告書の議論を進めるよう要請する、その目的は、開発途上国のNDCs、NAPs、技術的なニーズの評価、技術行動計画、及び長期戦略で特定され、優先策とされたものなど、活動の実施を支援し、TIPに情報を提供するためである。
技術実施プログラム:この新しいプログラムは、GST決定書(1/CMA.5)で設立された。Duduzile Nhlegenthwa-Masina (イースワティニ)及びStig Svenningsen (ノルウェー)を共同進行役とする非公式協議は、SBI及びCMAの下で招集された。
次の問題を中心に議論された:TIPのモダリティ、及びその統治制度。モダリティに関し、締約国は、TIPには会合期間中ダイアログを含めるべきことでは、おおよその合意を得たが、その回数及び題目などでは意見が分かれた。G-77/中国は、グローバルなダイアログと地域ダイアログの両方の開催を提案し;第2の要素として、資金メカニズムの運営機関から資金を得る、国内のイノベーションハブ及び実施アクセレレーターを構想した。EUは、TEC及びCTCNは、開発途上国の国内能力を構築することで、実施機能を実現することを希望した。英国は、TIPの実施面を議論するのは時期尚早だと指摘した。
統治制度に関し、EU及びノルウェーは、TIPはCMAの権限下であるべきと主張、アフリカングループ及びLDCsは、COP及びCMAの両方とする案を支持した。GST成果をフォローするべきかどうかも議論された。
CMA閉会プレナリーで、チリは、TIPの開始を歓迎、技術メカニズムと資金メカニズムのリンク付けの進捗状況は、別な議題項目でも議論されることに注目した。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.8)において、CMAは:
- TIP推敲プロセスの開始を決定する;
- SBI 62に対し、UNFCCCウェブサイト掲載の、バクーでの議論に関する文書に基づき、この問題を審議するよう要請する、ただし、この文書草案は締約国間の一致した意見でないと認識した上で、TIPに情報を提供し、さらなる推敲を進めるため、決定書草案を作成して提案し、CMA 7での審議及び採択にかけるよう要請する。
キャパシティ・ビルディングの問題:この項目の議論では、キャパシティ・ビルディングのパリ委員会(PCCB)による2024年の技術進捗状況報告書(FCCC/2024/SBI/19)を審議した。SBIの下、Cristina Carreiras (EU)及びNatalie Flores González (ドミニカ共和国)を共同進行役とする非公式協議が招集され、主に、PCCBの作業において、キャパシティ・ビルディングに関するGSTの成果を反映させる方法が、議論された。
最終結果:SBI 61から送られたPCCBの技術的進捗状況の年次報告書に関する決定書(FCCC/SBI/2024/L.13 お及び FCCC/SBI/2024/L.12)において、COP及びCMAは:
- 締約国及びその他に対し、2024年年次報告書に記載するPCCBの提案を議論するよう招請する;
- PCCBの2025年度の注目分野、具体的には、開発途上国のNDCs及びNAPsの実施強化を目的とする、総合投資戦略、銀行で受け入れ可能なプロジェクト、利害関係者の参画を策定するためのキャパシティ・ビルディングに留意する;
- 締約国及び関連する組織に対し、PCCBの活動実施に向け、支援と資金を提供するよう招請する;
- 条約及びパリ協定の実施において、開発途上国には能力面でのギャップやニーズが今も存在すると指摘する。
CMAは、さらに:
- 開発途上国のNDCsの策定及び実施の能力向上の活動について、PCCBの識別作業が進展しているとして歓迎する;
- パリ協定第11条3項では、全ての締約国は開発途上国による協定実施の能力向上のため協力する、さらに、先進国は、開発途上国のキャパシティ・ビルディング行動への支援を強化すると規定していることを想起する;
- PCCBに対し、決定書 1/CMA.5、特にパラグラフ111から120に規定する、GSTの関連成果を、年次報告書の情報に取り入れるよう招請する。
SBI 60から送られたPCCBの第2回レビューに関する決定書(FCCC/SBI/2024/L.2/Add.2 及び FCCC/SBI/2024/L.2/Add.3)において、COP及びCMAは:
- 2020年、2021年、2022年、2023年のPCCBの技術的進展年次報告書を歓迎し、これらに記載される提案に留意する;
- 条約及びパリ協定の下でのキャパシティ・ビルディング活動の実施においては、効率を向上させ、重複を回避する必要があると再確認する;
- PCCBの第2回レビューに関する統合報告書を歓迎する;
- PCCBの第1回レビューでの優先分野の特定は、次を可能にすると認識する:同委員会の作業の集約と指針に有用;条約の下でのキャパシティ・ビルディング活動の一貫性及び協調性の向上;現在及び発生しつつある、能力面のギャップ及びニーズを特定し、これらに対応する方法を提案する;啓発及び知識や情報の共有を進める方法の提案;さらには利害関係者や条約の内外の組織及び行動者の参画を促進する;
- PCCBの作業は、附属書に規定する優先分野を指針とすると決定する;
- PCCBの委任期間を5年延長すると決定し、COP 34及びCMA 11 (2029年)において、その進捗状況をレビューし、延長の必要性を検討すると決定する;
- SBI 68 (2028年)に対し、PCCBの第3回レビューの委託条件作成を開始し、COP 33及びCMA 10 (2028年)での審議に向け、決定書を提案するよう要請する;
- PCCBに対し、その第9回会議において、附属書に記載する優先分野及び活動に基づき、延長期間に関する作業計画を作成し、COP 30及びCMA 7の審議にかけるよう要請する;
- PCCBに対し、新しい作業計画で合意するまで、現在の作業計画を、延長するよう要請する;
- 締約国及び関連の組織に対し、PCCBの作業計画実施に向け、支援及び資源を提供するよう招請する。
条約の開発途上国でのキャパシティ・ビルディング枠組の実施に対する第5回総合レビューの委任条件を定める、SBI 60から送られた決定書(FCCC/SBI/2024/L.2/Add.1)において、COPは:
- 開発途上国でのキャパシティ・ビルディング策組の実施に対する第5回包括レビュー(レビュー)を行うとの決定書を再確認し、その委託条件を採択する;
- 締約国、条約の構成機関、資金メカニズムの運用組織、条約の関連プロセスの代表、及び他の非締約国利害関係者に対し、レビューに関する意見書の提出を招請し、事務局に対し、これらの提出文書に基づき、テクニカル報告書を作成し、SBI 62での審議にかけるよう招請する;
- SBI 62に対し、提出文書を考慮し、委任条件に基づき、レビューを開始するよう要請し、その作業をSBI 63で終了して、決定書草案を提案し、COP 30での審議にかけるよう要請する。
その他の問題
公正な移行作業プログラム:CMA 4は、次の認識を持って、この公正な移行作業プログラムを設立した:気候危機に対する持続可能で公正な解決策は、全ての利害関係者が参加する、有意義で効果的な社会全体の対話の中から見出すことができるはずである;低排出量への世界的な移行は、持続可能な経済発展及び貧困撲滅の機会を与えるとともに、挑戦ももたらす。この作業プログラムの下、公正で公平な移行経路について、エネルギー、社会経済、労働力などの側面から議論する、ダイアログ、及び毎年のハイレベル閣僚級イベントを開催する。Georg Borsting (ノルウェー)及びKishan Kumarsingh (トリニダード・トバゴ)を共同議長とするコンタクトグループが、SBsの下で招集され、その後、CMAの下で議長職協議が開催された。
次の議題を中心に議論された:緩和野心、及び公正な移行と1.5℃目標の考察、さらには化石燃料からの移行の社会経済的機会の認識;教育及び技能育成の重要性、適切な雇用と給与の確保;労働の権利及び人権の確保;資金面のギャップ、及び公正な移行のためのMoIの提供;ユニラテラルな貿易措置。LMDCs、ロシア、他の少数のものは:化石燃料からの移行の社会経済的機会の認識を拒否し;気温目標に関するパリ協定の表現の採用を求め;ユニラテラルな貿易措置に抗議した。G-77/中国は、資金面のギャップを埋め、公正な移行に対するMoIの提供を求めた。LDCs及び英国は、公正な移行を確保するには、技能を向上させる必要があると強調し、オーストラリアは、人権に関する意味のある協力を求めた。
11月15日に開催されたSBsの下での非公式協議の最終回で、締約国は、共同議長らが作成した文書草案について議論した。AOSIS、EIG、EU、GRUPO SUR、アフリカングループ、その他は、この文書草案をCMAでのさらなる審議に回すことを支持し、LMDCs、オマーン、ロシアは、これを拒否、自分たちの意見が取り入れられていないと指摘した。11月16日の閉会プレナリーで、SBsは、合意に達しなかったとして、この問題をCMAに送致した。
最終結果:閉会プレナリーで、議長職は、この問題は合意に至らなかったと報告し、SB 62での審議継続と、CMA 7での採択に向けた決定書草案の送致を提案、CMAもこれを支持した。
条約、京都議定書、パリ協定の下での対応措置実施の影響に関するフォーラムの問題:この項目では、フォーラムの年次報告書、及び対応措置実施の影響に関するカトヴィツェ専門家 (KCI)、及び5か年作業計画策定作業の継続に焦点が当てられた。Xolisa Ngwadla (ボツワナ)及びMagnús Örn Agnesar Sigurðsson (アイスランド)を共同議長とするSBコンタクトグループで交渉が行われ、その後、COP、CMP、CMAの下でコンタクトグループが招集された。
SBsは、11月16日の閉会プレナリーで、合意に達せなかったと結論づけ、この項目を、COP 29、CMP 19及びCMA 6に送り、SB 61で作成された文書草案を考慮して、審議することとなった。COP/CMP/CMAの下、Mattias Frumerie (スウェーデン)及びAndrei Marcu (ホンジュラス)を共同進行役とする非公式協議が招集された。
議論の中心となったのは、このフォーラム及びKCIではマイナスの影響に焦点を当てるべきかどうかであり、特に先進国の気候政策が開発途上国に与える越境影響、及びユニラテラルな貿易措置のマイナスの影響に焦点が当てられた。英国、米国などの締約国は、気候行動の共同便益も認識するよう求めた。その後、この問題は、議長職協議で議論された。
最終結果: 決定書 (FCCC/CP/2024/L.13-FCCC/KP/CMP/2024/L.5-FCCC/PA/CMA/2024/L.19)において、COP、CMP、CMAは:
- 事務局が作成したグローバル・ダイアログの報告書を認め、これは全ての網羅したものではないと認識する;
- フォーラム、及びそのKCIの2026年-2030年の作業計画を採択し、事務局に対し、その実施を支援するよう要請し、さらにKCIに対し、作業計画にある活動ごとに実施のタイムライン及びモダリティを、2025年の年次報告書に記載するよう要請する;
- フォーラムに対し、KCIの年次報告書に基づき、統治組織の会合において、KCIの作業に関する問題及びプロセスの問題を考察し、フォーラムの年次報告書に記載するよう要請する。
COP、CMP、CMAは、最新の手順規則を採択し、フォーラムからの提案に基づき:
- 既存の公正な移行枠組、ガイドライン、ツールの多様性を認識する;
- 特に開発途上国における、利用可能なデータ、制度能力及び人的な能力、法的枠組及び規制枠組の重要性を認識する;
- 締約国に対し、NDCsの開発及び実施においては、労働力の公正な移行を組み込み、適切な仕事、質の高い雇用を創設するよう奨励する;
- 締約国に対し、対応措置の社会的経済的影響結果について、質と量の両面で報告し、既に報告した締約国には、報告を続け、強化するよう奨励する;
- 事務局に対し、締約国がBTRsで報告した対応措置に関する情報をまとめた統合報告書を作成し、これをKCIの第13回会合に提示するよう要請する。
京都議定書遵守委員会の報告書:CMPは、同委員会の第9回年次報告書(FCCC/KP/CMP/2024/2)に留意した。
パリ協定の実施推進及び遵守促進委員会の問題:この項目では、委員会の年次報告書(FCCC/PA/CMA/2024/7)を議論、Paulette Bynoe (ガイアナ)及びArne Riedel (ドイツ)を共同進行役とする非公式協議が、CMAの下で招集された。
NDCレジストリにおいて、現在有効なNDCの記載を確保するための記録手順の更新、及びこれを決定書に盛り込む最善の方法に関する、同委員会の提案に焦点が当てられた。締約国は、同委員会のモダリティのレビューを延期することで合意した。
最終結果: 決定書(FCCC/PA/CMA/2024/L.7)において、CMAは:
- 同委員会の効果的な運用のモダリティ及び手順の第1回レビューを、CMA 9 (2027年11月)まで延期すると決定する、その理由は、同委員会がこれまでに、これらのモダリティ及び手順を実施した経験に限界があるためであり、同委員会は、近く見込まれるNDCsの通知、及びBTRsやパリ協定第9条5項に基づく隔年情報報告書の提出で、これらのモダリティ及び手順の実施経験を得られるはずだと指摘する;
- 同委員会に対し、モダリティ及び手順の第1回レビューは、CMA 9での審議及び採択にかける提案書を作成するとの観点で、行うよう要請する。
結論書(FCCC/PA/CMA/2024/L.6)において、CMAは、同委員会の年次報告書の第II章B項に記載する問題を議論し、CMA 7でもこの章の審議を続けると結論した。
ジェンダー:この項目では、ジェンダーに関する強化されたリマ作業プログラム及びそのGAPの実施状況の最終的なレビューについて議論し、ジェンダーの構成に関する2024年報告書(FCCC/CP/2024/4)、及びジェンダー対応型の気候政策、計画、戦略、及び行動の実施に関する統合報告書(FCCC/CP/2024/5)を議論した。SBIの下で、Marc-André Lafrance (カナダ)及びRuleta Thomas (アンティグアバーブーダ)を共同進行役とする非公式協議が開催され、その後、COP及び議長職の下での協議が招集された。
議論の中心は、人権及び多様性の表現、MoI、及び作業プログラムの将来であった。人権、及び多様な女性の問題に関し、AILAC、EU、ブラジル、米国、チリ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、WOMEN AND GENDERは、表現を支持したが、アフリカングループ、ロシア、インドネシア、イラン、サウジアラビアは反対した。締約国は、先住民、地方コミュニティ、女性に対する暴力の表現方法も議論し、アフリカングループ、AOSIS、AILAC、中国、ブラジルは、MoI提供の必要性を強調した。
作業プログラムに関し、締約国は、ジェンダーの構成における進捗状況の無さを認め、米国、US、YOUTH NGOs、WOMEN AND GENDERは、5年目の中期レビューを伴う10年プログラムを提案、オーストラリアは、5年のGAPを伴う10年作業プログラムを求め、アフリカングループは、5年の作業プログラムを求めた。締約国は、このほか、次の表現方法も議論した:関連する国連機関との協調;生物多様性条約及び国連砂漠化防止条約に言及するかどうか;ジェンダー窓口への支援。
11月24日のCOP閉会プレナリーで、COPは、決定書(FCCC/CP/2024/L.12)のパラグラフ23を、口頭で下記のとおり改定した上で、採択した:「事務局に対し、全ての予算案において、事務局自体の組織構造におけるジェンダー平等の効果が確保するよう奨励し、全体コストを増加せず、効率も損なわれないことを条件に、関連の部局にジェンダー窓口を設置するよう奨励する(encourages the Secretariat to consider making sure that all budget proposals have considered the effects on gender equality in its own organizational structure and to appoint gender focal points in relevant departments, provided this does not add to the overall cost or decrease efficiency)」。
メキシコは、プログラムの10年延長及び5年のGAPを歓迎する一方、人権については、暴力の無い生活をする女性の権利、健康な環境に対する権利、環境保護、土地へのアクセスなどに関し、より強い表現を希望した。AILAC、カナダ、チリは、リマプログラムが延長され、政策や行動にジェンダーへの配慮が組み込まれることを歓迎、AILAC及びカナダは、COP 30でのGAPの採択を求め、チリは、MoIの欠如を指摘した。
アフリカングループは、成果を歓迎し、これはジェンダー・バランス及び女性のエンパワーメントを達成する上で重要だと指摘する一方、一部の用語の使い方に懸念を示し、さらにMoIの欠如により、アフリカ諸国は、プログラムを実施する上で限られた国内資源しか利用できないと嘆いた。
最終結果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.12)において、COPは:
- ジェンダー構成に関する報告書に留意する、この報告書によると、SB 58及び60では、締約国代表団におけるジェンダー・バランスが達成されたが、締約国代表団での女性の人数は、SB 25以来、変化していないか年ごとに減少しており、構成機関でのジェンダー・バランスの目標達成は、一律ではない。
- 気候の長期目標を達成するには、UNFCCCプロセスの全ての面で、そして国家レベル及び地方レベルの気候政策立案及び行動において、女性が、完全で、意味のある、平等な立場で参加し、リーダーシップをとることが、極めて重要であると認める;
- 国連の各組織に対し、それぞれの既存の政策において、ジェンダー及び年齢で分けたデータを本流に据えるべく、締約国と協力するよう奨励し、さらに、そのガバナンスの全てのレベルを通して、メカニズム及びプログラムを実施可能にし、極端な現象及び緩慢に発生する現象の影響に関するデータを含める、データの収集及び分析に最善の科学を適用しようとする締約国を支援するよう奨励する;
- 締約国に対し、ジェンダーに関する強化されたリマ作業プログラム、及びその後のGAPを実施するための努力などの情報を、それぞれの国別報告に記載するよう招請する;
- ジェンダー対応型の実施及びMoIは、締約国の野心引き上げを可能にするほか、国家決定の優先策に則った、ジェンダーの平等、労働力の公正な移行と適切で質の高い仕事の創設を進めると指摘する。
ジェンダーに関する作業プログラムの延長に関し、COPは:
- 10年間の延長を決定する;
- この作業プログラムの実施のレビューは、SBI 70 (2029年6月)から開始するものとし、SBI 71 (2029年11月)でレビューを終了し、レビュー結果に関する決定書草案を、COP 34 (2029年11月)での審議に向け提案すると決定する;
- SBI 62に対し、新しいGAPの作成を開始し、COP 30での審議に向け、決定書草案を提案するよう要請する;
- SBI議長に対し、事務局の支援を受け、SB 62で、テクニカル・ワークショップを開催するよう要請する、このワークショップでは、レビューで明らかにされた進捗状況、課題、ギャップ、優先策を考慮し、さらに統合報告書に記載される情報及びフォーマットやスコープに関する意見書を考慮した上で、GAP活動の設計を進め、新しいGAPの策定に情報を提供するよう要請する;
- 関連する公的組織及び民間の組織に対し、気候資金のジェンダー対応性を高め、女性の能力強化を図るよう招請する;
- 締約国、関連する公的組織及び民間の組織に対し、気候資金のジェンダー対応性を高め、女性の能力のさらなる構築を図り、草の根の女性の組織。先住民、特に先住民の女性、さらには地方コミュニティにも、簡易的な気候資金へのアクセスを提供するよう奨励する;
- 開発途上国における、ジェンダー作業プログラム及びそれに続くGAPの実施に対する支援を、条約の関連条項に則り、規模を拡大することの緊急性を強調する。
COPは、事務局に対し、下記を続けるよう要請する:
- ジェンダーに関する強化されたリマ作業プログラム、及びこれに続く全てのGAPを支援し、モニタリングするため、上級のジェンダー窓口という立場を維持する;
- ジェンダー構成の年次報告書を作成し、ジェンダーの観点を構成組織プロセスへの組み込みの進捗状況に関する隔年統合報告書を作成する;
- 構成機関及び事務局のスタッフのキャパシティ・ビルディングに支援を提供し、それぞれの作業分野において、関連機関と協力して、ジェンダーの見解の統合を可能にする;
- 各国のジェンダー及び気候変動窓口の技能及び能力を構築し、強化するための支援を推進する;
- 関連するUNFCCCの会議における各国のジェンダー・気候変動窓口の参加を支援する。
さらにCOPは:
- 事務局に対し、事務局の組織構造でのジェンダー予算の利用を検討し、全ての部局にジェンダー窓口を設け、全ての予算案では、全体コストを押し上げることなく、効率を向上する限り、ジェンダーの平等への配慮を行うことを奨励する;
- 締約国、事務局、及び関連機関に対し、強化されたジェンダー作業プログラムの実施に当たっては、男性及び少年、そして変更の受益者が、エージェントとして、及びジェンダー平等を達成するため及び気候変動における全ての女性及び少女のエンパワーメントのための、戦略パートナー及び協力者として、全面的に参画できるようにすることを奨励する。
農業及び食糧安全保障に関する気候行動実施の共同作業:4年間の農業及び食料安全保障に関する気候行動実施の共同作業は、気候変動への適応及び取り組みにおける農業の役割を認識し、2022年に開始された。この項目には、構成機関の農業関連作業に関する統合報告書の作成、ワークショップの開催、及び関連のプロジェクト及びイニシアティブに関する情報共有を目的とするオンライン・ポータルの開発などの事務局の作業が含まれる。
この項目に関する非公式協議では、Una May Gordon (ベリーズ)及びClaudia Heidecke (ドイツ)が共同進行役を務め、オンライン・ポータルへの提出用のテンプレート、及び含まれるべき要素を議論した。
最終結果: 結論書(FCCC/SB/2024/L.8)において、SBsは:
- オンライン・ポータルに関する事務局のプレゼンテーションを歓迎する;
- 事務局に対し、附属書記載の概要に基づき、ポータルへの提出用のテンプレートを開発するよう要請する;
- 事務局に対し、附属書記載の要素のリストに合わせ、オンライン・ポータルの開発を進めるよう要請する。
研究及び組織的観測:このSBSTAの議題項目では、地球気候観測システム(GCOS)及び世界気象機関からの最新情報、地球観測用人工衛星委員会及び気象衛星協力グループの報告書、さらには2024年地球情報デーの報告書を審議した。Patricia Nyinguro (ケニア)及びFrank McGovern (アイルランド)を共同進行役とする非公式協議が開催され、2024年が記録上最も暑かった一年になろうとしていることの認識、観測におけるギャップの捕捉と対策、IPCCの作業の認識を中心に議論した。
SBSTAは、11月16日のプレナリーで、結論書を採択した。
最終結果: 結論書(FCCC/SBSTA/2024/L.17)において、SBSTAは:
- 2023年WMO温室効果ガス広報、及びWMO気候状況報告書の2024年更新版に留意し、地球の気候系の現状に対する深刻な懸念を表明する、特に産業革命前から現在に至る排出量がもたらした長期的な温暖化の結果、2023年にはGHG大気濃度の最高記録が観測され、さらに2024年が記録上最も暑い一年になろうとしているとの観測結果を懸念する;
- 緩慢に発生する現象、及び極端な現象の両方で、世界的な気候系の変化が発生しているとの情報に留意する;
- 大気圏、水圏(海洋及び沿岸地帯を含める)、雪氷圏、生物圏、砂漠及び高山地帯、そして重要で脆弱な生態系に関するデータにはギャップがあり、これに対処する必要があると認識する;
- 締約国に対し、最新のGCOS地球気候モニタリング原則を審議し、組織的観測の協調を進めるよう奨励する;
- SBSTA議長に対し、次回及びその後の地球情報デーにおいて、全てのものに対する早期警戒イニシアティブ実施の進捗状況に関し、関連組織のプレゼンテーションを求めることを検討するよう要請する;
- 適応を支援するため、組織的な観測を維持し、拡大することが緊急に求められていると強調し、さらに極端な現象及び気候現象の影響を最も受けやすいものを保護する地球規模のイニシアティブである、全てのものに早期警戒を、実現することも、緊急に求められていると強調する;
- 組織的観測への資金ファシリティによる継続的な努力を指摘する、このファシリティは、現在、LDCs及びSIDSにおける組織観測を優先している、さらにこのファシリティに対し、より多くの国へも支援の手を差し伸べるよう招請し、締約国及び関連組織に対し、組織観測コミュニティに対する支援供与の一層の強化を奨励する;
- デジタル技術の発達、及びAIや機械学習などの新規の手法を用いる、地球の観測、予測、評価の革新的なシステムの開発を認め、解決策の開発及び展開ではギャップがあることに留意する;
- 締約国及び関連組織に対し、オープンなデータ共有システムを設置してこれの支援を続け、オープンで信頼性があり、目的に合わせた、データ製品の開発を奨励する;
- 地球情報デー2025年のテーマ及び開催方法に関する、意見書の提出を招請する;
- SBSTA議長に対し、地球情報デーでは、この結論書で明らかにされた組織観測上のギャップにどう対応するか、プレゼンテーションを行うよう、科学者コミュニティを招請することを奨励する。
気候エンパワーメント行動(ACE)の問題:この作業では、UNFCCCの第6条(教育、訓練、啓発)及びパリ協定第12条の運用可能にすることを検討する。ACEは、持続可能で低排出な生活様式な生活態度、及び行動を促進する、次の6つの優先分野に注目する:気候変動の教育、啓発、訓練、一般の参加、情報公開、及びこれらの問題での国際協力。2021年、締約国は、10か年のACE作業プログラムを採択、2022年に、これを精緻化する4年行動計画が承認された。
SBI非公式協議では、Nathalie Flores González (ドミニカ共和国)及びArne Riedel (ドイツ)が共同進行役を努め、過去2回のSB会合で合意に至らなかったACEの2023年のサマリー報告書に加え、2024年の年次報告書を審議した。締約国は、この非公式協議へのオブザーバー組織の参加を招請し、オブザーバー組織から称賛された。このフォーマットでの妥協案達成を受け、締約国は、次の文章を議論した:過去及び将来のイベント、提出文書、報告書;社会の全てのメンバーによる気候行動参画を可能にする;政策立案にACEの要素を組み込む。ACE作業プログラムの中間レビューに向け提出する文書に、どの要素を入れるかでは、意見が分かれた。
最終結果: 結論書(FCCC/SBI/2024/L.14)において、SBIは:
- 事務局に対し、2025年11月のACE会合期間内イベント開催に関し、COP 30及びCMA 7の議長職をサポートするよう要請する;
- SB 64で予定される作業プログラムの中間レビューに関係するACE実施について、文書の提出を招請する。
地方コミュニティ及び先住民のプラットフォーム(LCIPP):LCIPPは、パリ協定で設立され、COP 23で運用が開始されたプラットフォームで、UNFCCC内における、先住民及び地方コミュニティの参画を進め、経験の情報交換、知識の共有を支援する。その促進的作業部会(FWG)は、地方コミュニティ、先住民、締約国の代表で構成される。COPは、SBSTA 60から送られた決定書(FCCC/SBSTA/2024/L.1)を採択した。カナダは、FWGの作業を称賛し、締約国に対し、この作業への参画及び参加の継続を奨励した。
最終結果: 決定書(FCCC/SBSTA/2024/L.1)において、COPは:
- 自然のステュワードシップ及び気候面のリーダーシップにおける先住民及び地方コミュニティの役割及び貢献を認め、彼らは気候変動から不相応な影響を受けていることも認める;
- LCIPPの機能実施の進捗状況、及び2025年から2027年のLCIPP作業計画草案を含めるFWG報告書の進捗状況を歓迎する;
- FWGのマンデートを継続すると決定する;
- 締約国に対し、LCIPP及びFWG会議への積極的な参加を奨励する;
- 締約国に対し、FWPの会議、及びLCIPPの義務化イベントでは、国連の公用語以外の言語でも同時通訳を提供するよう招請し、事務局に対し、そのような同時通訳に必要なアレンジを手配するよう要請する;
- FWGに対し、LCIPPのスコープ及び機能に関する提案を行い、2028年-2031年の作業計画草案を作成し、SBSTA 66経由で、COP 32の審議にかけるよう要請する;
- FWGの次回のレビューは2027年に行うことを決定し、SBSTAに対し、SBSTA 66でレビューを行い、COP 32に送る決定書を採択するよう要請する;
- 締約国及び各組織に対し、LCIPPの機能実施のため、資金援助を提供するよう招請する。
ハイレベルチャンピオン:グローバルな気候行動のマラケシュ・パートナーシップは、各国政府と非締約国利害関係者間での協力を可能にし、環境及び社会経済面の移行を通してパリ協定の実施を確保し、野心の引き上げを促進する。各国政府と多数のイニシアティブ、及び非締約国利害関係者が行うワークストリームの相互の連絡を改善するため、COPは、2名のハイレベルチャンピオンを任命する。
最終結果: 決定書(FCCC/CP/2024/L.15)において、COPは:
- 非締約国利害関係者は、条約の目的、及びパリ協定の目標達成のため、締約国を支援し、進展に貢献するという重要な役割を有し、積極的に参画していると認識する;
- 2026年―2030年においてもハイレベルチャンピオンの任命を継続し、COP議長職に代わり、ハイレベルな参画を得て、自主的な努力、イニシアティブ、及び連合の努力を強化し、規模の拡大を続けると決定し、事務局長、及び新旧の議長職と協力し、ハイレベル・イベントを毎年開催すると決定する。
事務管理上、資金上、制度上の問題:予算、資金、及び制度上の問題:締約国は、Lenneke Ijzendoorn (オランダ)及びZita Wilks (ガボン)を共同議長とするSBIコンタクトグループで会合し、国k連監査理事会の報告書(FCCC/SBI/2024/INF.7 and Add.1)、及び資金貢献及び料金の現状(FCCC/SBI/2024/INF.11)、並びに2024年-2025年の事務局の作業プログラム(FCCC/SBI/2024/INF.9)に、留意することで合意した。
最終結果:COPは、SBI 60及びSBI 61から送られた決定書(FCCC/SBI/2024/L.4 及び L.11)を採択、CMAもこれらを承認した。COP及びCMPは、それぞれの決定書において:
- 基幹予算に対し、タイムリーに資金貢献を行った締約国への感謝を表明する;
- 締約国に対し、今回の2年期の基幹予算そして/または前期の基幹予算に対する資金貢献を全額支払うよう強く促し、基幹予算に対する未払額の多さに懸念を表明する;
- 副次的活動のための信託基金への資金貢献の未払により、地域気候ウィークなどの活動及びイベントが中止となり、バーチャル会議プラットフォームなどのツールも実施されない一方で、一部の事務局の費用は増額されているとして、懸念を表明する;
- 事務局に対し、基幹予算の再配分における透明性を高めるよう要請し、副次的活動の信託基金に対する資金調達を要請する;
- 事務局に対し、予算管理プロセスの透明性を高めるため、たとえば、四半期ごとに報告書を作成するよう要請し、これを遅くとも2025年の第1四半期から開始するよう要請する;
- 事務局に対し、義務化イベントかどうかにかかわらず、各活動の特性を2026年-2027年プログラム予算書の中で、明示するよう奨励し、2026年-2027年のプログラム予算を策定する際は、2024年-2025年のプログラム予算での義務化活動実施で直面した課題を考慮に入れるよう要請する;
- 事務局に対し、義務化活動及びアウトプットの提供を優先し、統治組織及び補助機関の会合、さらには義務化イベント及び構成機関の会合における、開発途上国の参加を確保するよう要請し、その努力に関し、締約国に情報を提供するよう要請する。
閉会セグメント
UNFCCC事務局長のSimon Stiellは、11月24日日曜日早朝の閉会プレナリー終了時に、 said the NCQGは人類のための保険政策であり、このため「その保険料の全額が期限内に支払われて」初めて、機能すると述べ、次回のNDCsは、再生可能エネルギー拡大、及び化石燃料からの離脱という約束を実現するものにするべきだと強調した。
議長のBabayevは、NCQGなどの達成事項に焦点を当て、これは今後数十年の間に、数十億から数兆に膨らむと強調し、全ての行動を確固とした透明性を持って行う必要があると指摘し、2024年末にはBTRsを提出しなければならないことを想起した。
EIGは、NCQGを歓迎し、化石燃料離れは全てのものにとり、最も安全な道であると強調し、COPにおける、人権、ジェンダー、世代間の平等での進展のなさを嘆いた。
アンブレラグループは、NCQGは開発途上国における気候変動への野心的な対応を支援すると強調、SIDS及びLDCsの特別な状況が反映されていないことへの失望を表明した。
アフリカングループは、進捗状況はアフリカ地域の希望からは程遠いと述べ、NCQGは「少なすぎ、遅すぎ、曖昧すぎる」と指摘、適応のニーズだけでも4千億米ドルに及ぶと強調し、ニーズに合った資金を求めた。同グループは、第6条に関する決定書を歓迎し、これは実地のプロジェクトをサポートすると述べ、公正な移行を進めるための政治的な意思の欠如を指摘、GSTの決定書がないことに失望したとも述べた。
アラブグループは、NCQG及び第6条の決定書を歓迎し、共通するが差異のある責任及び平等の原則を再確認し、先進国は緩和を先導するべきだと主張した。同グループは、公正な移行経路に至る道は多様であると認識し、NDCsにおける各国の道筋の多様性を尊重するよう求めた。
AOSISは、資金の野心引き上げを求め、1.5℃目標の達成の必要性を強調、GSTダイアログでの進展のなさに失望し、全ての成果はMoIに注目して実施されるべきだと述べた。AOSISは、MWPの野心の低さ、及び公正な移行の後退は遺憾であるとし、第6条決定書、及び海洋と気候変動のダイアログの成果を歓迎した。
GRUPO SURは、ブラジル、エクアドル、パラグアイ、ウルグアイの立場で発言し、NCQG及び第6条の決定書を歓迎し、COP 30までに進捗をさらに早めるよう求め、新しいNDCsは全体として、1.5℃目標に合わせることになると指摘し、適応資金のMoIは、SIDS及びLDCsに、より多く供与されるべきだと指摘した。同グループは、女性及び少女、子ども、先住民、及び障害者を含め、人権を肯定することは、貧困撲滅、公正な移行、及び持続可能な開発の実現を助けると強調した。
LDCsは、気候変動は権利と生存の問題であると述べ、NCQG、MWP、適応、損失損害での成果に対し、深い失望感を示した。LDCsは、全ての問題において、自分たちのグループの特殊な状況が無視されていることを懸念した。
AILACは、MoIでは一部の結論が出されたが、緩和やGSTのフォローでは、化石燃料からの離脱強化となっていないとし、人権を主流にするよう求めた。
ブラジル、南アフリカ、インド、中国は、連帯を示す必要があるとし、パリ協定に基づいて作業する必要があると強調、これこそウィンウィンな協力の鍵となると述べた。これら諸国は、NCQGの成果に留意し、先進国の資金義務を特定するべきと述べた。中国は、気候変動での国際協力の約束を再確認し、南ー南協力の継続も確言した。
CLIMATE ACTION NETWORK、DEMAND CLIMATE JUSTICE、WOMEN and GENDER、TRADE UNIONsは、失敗したシステムに合法性をもたせることに警告した。
INDIGENOUS PEOPLES ORGANIZATIONSは、COPの非倫理的な手法と成果を批判し、気候の不正義を継続するためのローン及び他の方法による、資金植民地主義を拒否した。
YOUTH NGOsは、NCQGの数量は露骨な侮辱だとし、全ての締約国に対し、ジェノサイドからの資金引き上げを求めた。
BUSINESS AND INDUSTRY NGOsは、バクーでの施策は十分ではないとし、貿易と気候のつながりについて議論するよう奨励した。
会合の閉会:事務局は、今回の会合において義務化された活動を実施するには、380万ユーロを信託基金に追加する必要があると報告した。COP、CMP、CMAは、それぞれの報告書(FCCC/CP/2024/L.1, FCCC/KP/CMP/2024/L. 2, FCCC/PA/CMA/2024/L.2)を採択した。COP、CMP、CMAは、次の表題の決定書(FCCC/CP/2024/L.8-FCCC/KP/CMP/2024/L.4-FCCC/PA/CMA/2024/L.14)も採択した:「アゼルバイジャン共和国政府及びバクー市の人々への感謝の表明」。
議長のBabayevは、2024年11月24日日曜日の午前5時11分、会合閉会の槌を打った。
バリ気候変動会議の簡易分析
「絨毯は、この地方の伝統的な言語である。しかし、現代の世界的な現象を表現することにも使える。」 – アゼルバイジャンの芸術家、Faig Ahmed
パリ協定は、気候変動と戦う規範や手段を織り込んだリッチなタペストリーとなることを意図して、作られた。バクー会議の成果は、この注意深くおられた美術品の下から、絨毯を引っ張り出した。気候行動への支援を期待していた開発途上国は、必要な額を大きく下回る資金で、バクーを離れることとなった。エネルギーの移行に向けた一斉行進を期待していた先進国及び開発途上国も、失望して、バクーを離れた。これほど新しい布が、すでにボロボロになりかけている。
各国は、パリ協定からドバイでの合意まで、糸を織り込み、バクーに至り、これらの糸が集まって、パリ協定が形付けられた。この協定の相互に絡み合ってできたモチーフは、各国の行動、支援の供与、報告、及び努力のストックテイクの方法を、規定してきた。2020年以降、各国はそれぞれ、国家決定貢献(NDCs)を提出し、第1回グローバルストックテイク(GST)を終了した。このように、各国は、国家決定の形で、その道筋を編みこみ、気候危機の規模に基づく、パッチワークを作り上げた。バクーでは、パッチワークの最後の一片となる、新しい集団数量目標(NCQG)を打ち出し、開発途上国の気候野心を支援するはずであった。
今回は、2年続けて、閉会プレナリーが、各国による多数のそして多様な失望感表明の場となった。一部のものは、進展を妨げているのは少数の締約国だとして、憤慨していたが、どの問題のことか、そして誰の発言かにより、「少数の」国は、多様な範囲の国を指していた。この簡易分析は、新しい資金目標に関し、採択された決定書、そして採択されていない決定書のパッケージ、緩和、カーボン市場、適応、ジェンダーに関する決定書を論じる。バクー会議は、パリ協定の野心引き上げ能力への懸念を悪化させ、ぼろぼろになりつつある多国間交渉の景観で、関連性を持たせられるかどうかの懸念をもたらした。
永続するように作られた
一つの絨毯には物語がある。世代から世代へ受け継がれながら、絨毯のパターンは、最初に織られたときと変わっていない、しかし見方は異なっているかもしれない。バクーで、各国は、パリ協定、特に昨年のGSTから、それぞれ異なる物語を見て取った。あるものにとっては、パリ協定の格子状に組まれたメカニズム、すなわち、GSTは次の野心的なNDCsに情報を提供するべきというのは、ドバイで合意されたエネルギー移行パッケージのフォローを意味する、しかし他のものにとっては、資金とまともに向き合い、開発途上国のニーズに合わせた支援の約束という、バクーのレガシーを築くことを意味した。エネルギーや資金で、どこが最初に動くのか、顔を見合わせる中、残念ながら、2つの問題が下方への悪循環をもたらした。
NCQGに関する2年間の作業プログラムは、「ad hoc」と呼ばれたが、実は、2009年に発表された1千億米ドル目標の即席という特性を避けようとした表現である。当時は、空中から落ちてきた数字のように見えた。この目標の実現が遅れたこと、及び明確な計算方法が示されなかったことで、信頼が弱められた;バクーでも、先進国が一千億米ドルを超えたかどうかが議論された。NCQGについて、各国はラウンドテーブル会議を開催、専門家の報告書をレビューしたが、この報告書では、必要な資金規模を数兆ドルとしている。実践的な情報を得たプロセスという膜に覆われているが、バクーでの交渉及びその成果からは、誰もが知っていることが明確になった:すなわち、資金は極めて政治的な問題であるということだ。このため、2009年での失敗の多くが繰り返されることとなった。
先進国は、最後の最後になって、ようやく新しい資金目標の金額を出してきた。G-77/中国は、1.3兆米ドルを求め、他のグループは、先進国からの公的資金として、4400億、6000億、9000億米ドルの数字を期待したが、先進国の文書は、裕福な開発途上国も資金貢献国に入れようと、プレースホールダーをつけていた。中国や湾岸諸国は、これに関心を示さず、さらに米国でのトランプの再選は、米国がパリ協定を再度離脱する可能性を意味した。2009年とは異なり、EUは、最後のハドルで孤立することになり、年3千億米ドルは侮辱であり、ジョークだとするキューバやインド、ボリビア、ナイジェリア、市民社会の怒りの矛先に上げられてしまった。
この3千億米ドルは、官民、二国間や多国間、その他の資金源など、多様な資金源から出される予定である。資金源の網を広げようと、決定書は、開発途上国に南ー南ベースでの資金貢献を奨励しているが、すでに多くのものがそのような資金貢献を行ってはいる、ただし、資金メカニズムを通してのものではなく、透明性レベルも低い。
しかし、数量だけが問題なのではなく、現在のシステムに見られる、顕著な不平等も問題である。過去2年以上の議論で、開発途上国は、世界の金融や投資のシステムは開発途上国や気候行動の期待に応えていないことを明確にした。資金常任委員会による気候資金フローの2か年の展望は、全ての資金源からの資金フローの大半が、東アジア、北欧及び西欧、北米に流れていることを確認している。官民の気候資金は、最も気候に脆弱な国を無視し、規模が大きく、急速に経済成長を続けている国に注ぎ込まれている。後発開発途上国(LDCs)及び小島嶼開発途上国(SIDS)は、議長職提案の文書では、それぞれ2200億米ドル及び390億米ドルという最低限の資金配分が削除されたことで、議長職協議の席を立ってしまった。
あるオブザーバーは、航空輸送税や債務免除のような実務的なオプションを検討する機会を逃したと指摘した。交渉の最終段階では、「バクーからベレンへの1.3兆米ドルへのロードマップ」が決定書に持ち込まれ、グラント、譲渡型、及び債務を生じない制度、財政面の余裕をもたらす措置などを検討することとなった。年7兆米ドルという化石燃料の補助金など、気候行動から他の優先策に流れる資金については、一切言及がないが、このような沈黙は資金に限ったことではない。
バクーで採択された決定書には、化石燃料への言及はほとんど見られない。GSTの成果の実施、NDCの特性に関するガイダンス、公正な移行の作業プログラムに関するダイアログの運用開始など、化石燃料からの移行を示唆する決定書は後回しにされた。どの場合も、草案の最終版は、化石燃料のことなど、囁きもしていない。GSTダイアログの文書は、昨年のGST決定書にあるエネルギー移行に関するパラグラフに言及していたが、結局、採択されなかった。あるSIDSの交渉担当者は、このエネルギーに関する表現の弱さに、怒りを覚えたと述べた。
アラブグループ及び有志開発途上国(LMDCs)は、緩和やGSTのエネルギー移行パッケージの議論を、パリ協定の再編成の試みと捉え、NDCsの特性に関する議論は低炭素経済に向けた各国の模索に反していると指摘した。
GSTダイアログに関する代表団長らの議論で、AOSIS、AILAC、EU、その他は、緩和こそ、GSTのフォローアップでのギャップであると指摘し、化石燃料に言及せず、ドバイでの緩和の提案も反映していない、極めて弱い決定書よりも、決定書なしのほうが良いと希望した。
パターンを紡ぐ
アゼルバイジャンの絨毯は、幾何学模様のパターンで知られているが、バクーで、各国は、パリ協定を多様な角度で紡ぎ続けた。資金やエネルギー移行の議論が、政治的な関心の大半を占めていたが、締約国は、適応や第6条の炭素市場などでも、パリ協定やそのルールブックでの未完成部分を仕上げようと、織り込みを続けた。ジェンダーの問題も、クロスカッティングに絡まってきた。
最近まで、適応世界目標は、パリ協定の目標の中でも、最も議論されてこなかった項目であった。これを実体のあるものにするのは困難であった。締約国は、ドバイではこの目標で合意し、バクーでは、目標に向けた進捗状況を測る指標の定義づけの議論を進めた。締約国は、この指標定義づけプロセスに関係する専門家に対し、追加のガイダンスを提供し、実施手段を含める、100件以下の指標という「管理できる」リストを作成することで合意した。
バクー会議で、NCQGに続いて、第2の突破口となったのは、パリ協定の下での炭素市場の全面的な運用開始に向けた交渉が、最終的に妥結したことであった。第6条4項の手法論及び除去量の必要条件は、第1日目に採択され、さらに、第6条2項でも進展があった。この第6条2項の協力的アプローチ、及び第6条4項のメカニズムでの合意を得たことで、炭素クレジットの記録、発行、取引を開始できるようになった。
炭素市場に批判的な目を向けていたものも、国際取引される緩和成果に関する情報の非一貫性の公表など、一定の透明性が得られたと指摘したが、国際民間航空機関のオフセットスキームを利用しようとする航空会社からの需要で、オーバーフローするのではないか、懸念した。
重要なことは、第6条2項の決定書により、事務局は、レジストリ・サービスを提供できるようになり、緩和成果ユニットの発行など、国際レジストリに不可欠なサービスを提供可能になったことである。このことは、国内レジストリの設置に苦労している国も、第6条2項の協力的手法への参加できるようになり、従来は投資対象ではなかった地域のグローバルな炭素市場への参加が可能になることを意味する。
第6条4項の発行は、早ければ2025年から開始される。そのほとんどは、クリーン開発メカニズム(CDM)から第6条4項メカニズムに移行されるクレジットである可能性が高い。CDMクレジットの「追加性」をチェックするプロセスを追加する試みもあったが、このような「追加性の追加」の審査は行われない。各国は、自国のクレジットの第6条4項メカニズムへの移行に自信を持っていることから、CDMの「最終的な終了」になることを希望するものもいる。
適応及び第6条問題は、気候の「根幹の」テーマであると、広く見られている。社会的な平等(social equity)の問題は、困難であることが確実になった。資金から適応に至る広範な問題に関し、少人数の諸国グループは、国連の先住民の権利宣言の下での先住民の明確な権利が無視されているとして、先住民と地方コミュニティを同列に置こうと論戦をはった。ジェンダーの議論は、さらに難しいものとなった。アラブグループ及びロシアは、「ジェンダーへの対応性(gender responsiveness)」に言及することに反対し、アフリカングループとともに、「ジェンダーの多様性(gender diversity)及び「インターセクショナリティ」という用語にも異議を唱えた。これは人権と気候変動を絡ませることへの締約国間の分裂を象徴している。
Con-fiar(スペイン語で信頼)
ブラジルの環境気候変動大臣であるMarina Silvaは、閉会プレナリーで簡単なポルトガルのレッスンを披露した:confiar (信頼する)は、com (ともに)とfio (糸)をあわせた言葉である。アゼルバイジャンの女性たちが何世紀にもわたり絨毯を織ってきたように、アマゾンの女性たちも織物を織ってきた。彼女たちは織ることでコミュニティを築き、信頼関係を築いてきた。気候変動枠組条約(UNFCCC)のプロセスへの信頼は、極めて低い状態が続いてきた。しかし、必要な資金を募り、皆のための気候政策を実施するためには、信頼の必要性が、これまで以上に増している。
バクーにむき出しで残された絨毯を繕うためにも、信頼が必要なのである。2025年のベレンでの会議に向け、国連の気候交渉の正当性を救う必要があるのではないか。パリ協定は目的に合うものかどうか、疑問が高まる中、その基本設計は、各国を刺激し、気候の危機という課題に立ち上がらせるものだということを示す必要があるが、残された時間は短い。現在のNDCsでは、3℃温暖化の世界に将来世代に残すことになる。UNFCCC事務局長のSimon Stiellが指摘するとおり、これはパリ協定前より、ましかもしれないが、安全な惑星からは程遠い。新しいNDCsの提出は、2025年2月が期限であるが、この期限を守れそうな国は少数と見られる。他はベレン会議が近くなってから発表すると見られる。支援が限られ、不均等に分配される中、開発途上国に対し、パリ協定に野心的なNDCsの形という糸を織り込みよう求めるには、信頼こそが、まさに必要とされるのである。