Daily report for 20 November 2025
UN Climate Change Conference - Belém, November 2025
この日は、気候コミュニティにとり、思い出に残る一日となった。思い出に残るのは交渉の進展ではない。パビリオンの一つで火災が起き、会場内の全員が避難する羽目になったからである。
議長職協議
手順規則書の採択:COP 30議長職のLiliam Chagasは、COPが別な決定を行わない限り、手順規則書草案を、投票に関する規則42項を除き、適用し続けることで合意することを提案した。同議長職は、これはこの規則書草案が毎回自動的に適用されることを意味すると指摘した。ただし、この項目自体は、手続き上、将来の暫定議題書にも記載され続ける。
アラブグループは、意見の違いが続いていることから、この項目を保留にしておいてもよいと表明した。YOUTH NGOsは、この項目の議論を続けるよう求め、多数決での決定にすれば、このプロセスの効果性も高まると強調した。事務局は、カナダからの質問に応え、将来の暫定議題書にもこの項目を入れることで、締約国は、いつの会議でも、この項目を保留にするかどうか決定できると、明言した。ハドルが開催された後、EUは、COP 31でもこの問題の審議を続けるよう求めた。
議長職は、この協議での意見の一致はなかったと、COPに報告する予定。
UNFCCCプロセスでの意思決定:COP 30議長職のLiliam Chagasは、この問題は、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの提案に基づき、COP 19で初めて議論されたと想起し、締約国は、この問題を手順規則書の議論とは別に議論し続けてきたと指摘した。
ロシアは、この提案を行ったのは、COPの下での行動に一貫性がないこと、実施方法と乖離していること、議長職の権限に問題があることなどを懸念したためだと想起した。EUは、この問題はCOP 19以後、あまり議論されていないと指摘し、透明性及びプロセスの効率向上に関し、実質的な結論書を採択するに至った、政府間問題のアレンジ(AIM)というSBIの議題項目の下で、議論する方がよいと提案した。EUは、この提案で合意できない場合は、COP 32まで審議を延期してはどうかとも述べた。これに同意したウクライナは、自国の提案を取り下げた。YOUTH NGOSは、AIMの下でのこの項目の議論を支持した。ロシアは、独立した審議の場を設けるに値するとし、COP 31で議論するよう求めた。
議長職は、COP 31でのこの項目の審議続行で合意するよう、COPに提案する予定。
地方コミュニティの参画強化:COP 30議長職のMarco Túlio Scarpelli Cabralは、文書草案改定版への意見発表を招請した。
INDIGENOUS PEOPLES ORGANIZATIONSは、文書は大きく改善されたとして、感謝を表明し、カナダ、EU、サウジアラビア、小島嶼諸国連合、中国、日本の支持を得て、多少の編集を提案した。日本は、SBSTA 64において、会合期間中ワークショップを開催する場合の、予算への影響を明らかにするよう求めた。事務局は、ワークショップの開催コストは、約100,000ユーロであると指摘した。
議長職は、この決定書をCOPに送り、その採択にかける予定。
技術レベルの交渉
クリーンな開発メカニズム(CDM):CMP非公式協議で、共同進行役のPeer Stiansen (ノルウェー)及びAlick Muvundika (ザンビア)は、新たなCMP決定書草案を提示、これは、締約国の意見及び締約国グループからの提出文書に基づき作成されたと説明した。有志開発途上国(LMDCs)及びアラブグループ以外の締約国は、この文書を支持した。
共同進行役は、意見の一致には至らなかったと、議長職に報告する予定。
京都議定書の国際取引ログの予算問題(ITL):CMP非公式協議で、共同進行役のAbzeita Djigma (ブルキナファソ)は、議論の進捗状況を想起し、次の項目では、締約国の支持が得られたと指摘した:ITL信託基金から200万米ドルを移転する、ただし、移転先は未定;未使用の資金残高から移転されるべき金額へのプレースホールダーを削除する、ただし、未使用の残高からの移転額の特定は難しいと指摘する。同共同進行役は、移転先について合意することを目指し、ハドルを開催するよう招請した。
ハドルが開催されたが、締約国は意見の一致に至らなかった。EU及びスイスは、対応措置支援に支出される金額の特定に反対した。大半の締約国は、第6条2項のインフラストラクチャーの構築、特に国際レジストリの開発に、200万米ドル全額を移転するよう希望したが、第6条2項には150万米ドル、補足活動信託基金に50万米ドルを移転することにも柔軟性を示した。さらに、後者の50万米ドルは、対応措置など、多様な議題項目に使用することも可能だと指摘した。LMDCsは、第6条2項と対応措置で、200万米ドルを半分に分けることを希望した。
共同進行役のAbzeita Djigmaは、合意には至らなかったと議長職に報告する予定。
義務化イベント
適応に関するハイレベル・イベント:COP 29議長職及びCOP 30議長職合同の義務化イベントの第2日、参加者は、適応資金、及び適応世界目標(GGA)の枠組の実施とその目標などを議論した。地球環境ファシリティのCEOで議長のCarlos Manuel Rodríguezは、各国は、気候変動の防止や適応よりも、気候を害する活動の方に多くの資金を投資していると述べ、気候資金の主な資金源は各国の公共投資であると想起し、異なる省庁間で「政治的に一貫した姿勢をとること」が重要だと強調した。緑の気候基金のAchala Abeysingheは、世界の適応資金は2022年から2023年の間に削減されたと報告し、適応資金は公共のグラントや譲渡型ローンに限定されない、他の金融関係行動者も含まれると強調した。その後の議論では、地域の、及び国内の、適応経験に焦点が当てられ、次の課題が議論された:
- 既存の適応資金へのアクセスに関する課題、及びその質の問題;
- 2030年までに適応資金を3倍に増額するとの新しいコミットメントの必要性、昨年採択された気候資金に関する新しい集団数量目標は十分かどうか;
- GGA目標に向けた進捗状況を測るための指標の採択;
- 適応計画の策定において、自然ベースの解決策が果たす役割。
公正な移行に関する第3回年次ハイレベル閣僚級ラウンドテーブル:この義務化イベントは、パリ協定の目標達成に向けた経路を議論し、公正な移行作業プログラムから得られる行動可能な成果への期待感を議論する機会であった。
メキシコの環境自然資源省長官のAlicia Bárcenaは、自然資源抽出主義及び不正義からの離脱を促した。ポーランドの気候及び環境の国務長官であるKrzysztof Bolestaは、公正な移行は容易ではないが、気候政策のカギでもあると指摘し、ポーランドにおいて、鉱山部門から再生可能エネルギー部門へと雇用転換を行うと同時に、国内総生産を2倍に増やし、欧州での主要な電池及び電動バスの生産者になった経験に焦点を当てた。
COP 30 CEOのAna Toniは、先住民の役割を強調し、公正な移行経路の開発及び実施では、先住民の参加を確保する必要があると強調した。UNFCCC事務局次長のNoura Hamladjiは、グリーンな経済発展の果実を収穫するには公平性が必要だと強調した。
オブザーバー組織は、次を強調した:
- 公正な移行作業プログラムの包括的な実施には、常設の制度上の本拠となるメカニズムが必要である;
- UNFCCC、世界貿易機関、国際労働機関の間の組織的なダイアログにおいて、貿易と環境の関係性、及び労働者の権利を議論する;
- 食料安全保障、環境の管理、農村部コミュニティの福利における、農業従事者の役割の重要性、及び気候資金及び規制スキームにより、これら農業従事者を支援する必要性;
- 公正な移行における地方政府及び地方自治体の役割;
- 化石燃料産業の労働者に対する支援、これにはリスキルや包括的なパッケージを含める;
- 先住民の権利の尊重、これには、エネルギー移行に伴う鉱山業に関連する、自由で、事前の、情報を得た同意、及び自主的な孤立(isolation)を含める;
閣僚及び参加者は、次の項目にも焦点を当てた:
- サイエンスの役割、これには気候変動に関する政府間パネルによる利用可能な最善の科学(情報)の提供を伴う、さらに、1.5℃目標の死守、特に気候変動に関する各国の義務についての国際司法裁判所の諮問意見に照らし合わせて;
- 化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギーの転換、これには化石燃料補助金の廃止を含める;
- 国家決定の公正な移行経路における、エネルギー貧困の撲滅、及びエネルギー安全保障の確保;
- 公正な移行作業プログラムの非部門別の特性;
- 各国の起点の違い、及び共通するが差異のある責任及びそれぞれの能力の原則、及び条約の他の原則を順守する必要性、これには、先進国に対する2050年までの実質ゼロ排出量達成の要求、及びそれ以後の実質マイナスの排出量を続け、開発途上国に対し、カーボン・バジェットの余地を提供することの要求;
- 実施手段の必要性;
- 開発途上国での公正な移行に対し、ユニラテラルな貿易制限措置が与えるマイナスの影響。
廊下にて
(気候変動の)前線に立つ科学者及びコミュニティは、長年にわたり、気候変動の現実の影響、生活を変える影響について、世界に警告を発してきた。ベレンの気候変動会議で、交渉担当者たちは、そのような影響を実際に味わうこととなった。「初めに洪水、そして今度は火災、何というCOPなんだろう」とは、パビリオンから突然、数メートルの炎が噴き上がる中、避難してきた参加者の言であった。
サイドドアから逃げてきた参加者は、うだるような暑さの中、次の指示がでるのを待っていた。熱帯性の小雨が降りだした後、参加者は、火災は鎮火し、重い傷害を負ったものはいなかったと知らされた。この事件は、参加者間の助け合いの精神を呼び起こしたようで、見知らぬ者同士が、避難困難者を助けたり、ボランティアが、水を配ったり、だれもが同僚や家族を探したりしていた。結局、参加者は、会議再開の情報が更新されるまで、宿泊場所に戻るよう指示された。午後に非公式協議が予定されていた唯一の議題項目である「第6条の議論が台無しだ」と、炭素市場推しの参加者は、指摘した。
ブラジル当局が、会場となっていたテントでの火災再燃のリスクをなくそうと、掃除にいそしむ中、事務局は、地方コミュニティに関する決定書草案、及び山岳地方に関する決定書草案を発表した。あるオブザーバーは、「統治組織の採択を待つ決定書が積みあがっていくのを見るのはうれしいが、一番重大なパッケージである包括的なMutirão決定書と化石燃料移行ロードマップのは、まだ出てこない」と指摘した。多くのものは、今日の映像を見ながら、議長職がこの焦げ付いた交渉の場から、何らかの果実を収穫できるのかどうか、疑問に思っていた。
COP 30の地球交渉ブレティンのサマリーと分析は、2025年11月25日火曜日に右記でダウンロード可能:https://enb.iisd.org/belem-un-climate-change-conference-cop30