Daily report for 17 June 2026
Bonn Climate Change Conference - June 2026
この日は熱い議論が繰り広げられる一日となった。参加者は、互いに、進展を「妨げている」と非難しあっていた。特に鮮明な意見対立が見られたのは、適応、技術、科学の議論であった。
緩和
緩和作業プログラム(MWP): SB非公式協議で、共同進行役のUrsula Fuentes Hutfilter (ドイツ)及びMaesela John Kekana (南アフリカ)は、「リフレクション・ペーパー」の改定版、非公式ノート、SB 64結論書草案を提示した。小島嶼国連合(AOSIS)及び独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)などは、文書の変更点を嘆き、挿入文を提案した。有志開発途上国(LMDCs)、アラブグループ、アフリカングループは、SB結論書でのリフレクション・ペーパーへの言及に異議を唱えた。
ハドルでの協議の後、ブラジルは、どの文書を回すかで、意見が一致しなかったと共同進行役らに報告した。ブラジルは、自国の能力の範囲で、締約国の意見を収集する非公式文書を作成し、締約国での審議に回すことができるとし、締約国も同意したと報告した。ブラジルは、会合期間外のワークショップ開催の提案など、他の意見対立のある項目でのオプションに注目した。このため、翌日での交渉時間の追加を要請、この会合へのSB議長らの出席も求めた。
適応
適応世界目標(GGA): SB非公式協議では、Ricardo Delano Marshall (バルバドス)が共同進行役を務め、SB議長らは、適応資金の3倍増への言及で意見対立があったと指摘し、多様な意見を理解し、今後の進め方を考えるための会議の開催を提案した。
G-77/中国は、条約及びパリ協定の原則に基づき実施されるGGAの作業に言及するパラグラフ、さらには決定書12/CMA.7の34項(2035年までに適応資金を少なくとも3倍にする提案)、及び決定書1/CMA.7の54項(気候資金作業プログラム)について、括弧で括ることの手順上の問題を提起した。EUは、反対し、標準の方法だと指摘し、締約国に対し、パラグラフごとに議論するよう提案した。EUは、英国、カナダ、ノルウェーとともに、今後の進め方に関するSB議長らの提案を支持した。
インドは、文書全体がカッコで括られている中に、括弧書きのパラグラフがあるのは、一部のパラグラフでは他よりも意見が集約している印と受け止められると論じた。日本は、現在の括弧書きの保持を希望し、テクニカル・タスクフォースで合意可能な文書を作成することに集中するよう求めた。
午後、SB議長らは、括弧つきの改定版文書草案を提示、この文書では、意見対立のあるパラグラフに代わり、以前の決定書の文章をそのまま引用している。議長らは、この新しい文書を非公式-非公式で議論するよう提案した。
アラブグループ、環境十全性グループ(EIG)、LMDCs、アフリカングループ、AOSIS、後発開発途上国(LDCs)、AILAC、GRUPO SUR、ロシア、内陸開発途上国(LLDCs)、ブラジルは、SB議長らの提案を支持した。EU、英国、ノルウェーは、文書の一部については判断を保留したいと述べ、カナダ及び日本とともに、テクニカル・タスクフォースの関するパラグラフは、非公式-非公式のみで議論することを希望した。
今後の進め方の議論は、夜に入っても続けられた。
資金
適応資金: SBI非公式協議で、共同進行役のKoosje Beumer-van der Loo (オランダ)は、文書草案の改定版を提示、これにはパリ協定専用に移行した後、適応基金の第5回レビューを行うことで合意したことが盛り込まれた。同共同進行役は、この日招集された代表団長会議では、他の未解決問題で合意に達することはなかったと報告、締約国に対し、次の手順上の結論書で合意するよう招請した:
- SBIは、基金理事会のメンバーの問題、パリ協定専用となるためのアレンジ、第5回レビューの開始に関係する問題の審議を継続する;
- SBIは、メンバーシップ、移行アレンジ、第5回レビューの問題の審議を、SBI 64の文書草案をベースに、SBI 65でも続けることで合意する、ただし、この文書は、締約国での合意を示すものではなく、決定書草案の数に予断を加えるものではないと指摘する。
午後、交渉が再開され、G-77/中国は、SBIが次を行うとする代案を提案した:
- 移行アレンジ、第5回レビュー、理事会のメンバーシップという「3項目」の審議を続ける;
- 移行アレンジ及び第5回レビューでは進展があったと指摘し、関連の文書草案で共通の理解が得られたと指摘する;
- 適応基金理事会のメンバーシップに関する協議を、SBI 64の文書草案に基づき、SBI 65でも続けることで合意する。
長時間の議論では、次が話し合われた:各項目に言及するのではなく、3つの異なる「マンデート」に言及する;第5回レビューでの進展を指摘、移行アレンジでも進展か;クリーンな文章への言及削除; SBI 65でも、SBI 64での作業及びその進展をベースに、この3件の問題の審議を継続する;審議中の多数の決定書草案に関し、異なる解釈も可能とする「建設的なあいまいさ(constructive ambiguity)」を提案する。
多数の改定、ハドル、SBI議長に対する断続的な提案の後、締約国は、SBI結論書で合意した。
技術
気候技術センターのホスト: SBI非公式協議では、Stig Svenningsen (ノルウェー)が共同進行役を務めた。
G-77/中国は下記を提案した:
- SBIは、国連環境プログラム(UNEP)をホストとして推薦する;
- SBI結論書草案に次を記載する:UNEPには、協調、協力、パートナーシップの探求を奨励する、可能性あるパートナーとしては、国連工業開発機関(UNIDO)、及び国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)、さらには関連する他の機関があげられる;
- 覚書(MoU)に記載する要素のリストにある、UNEPの役割及び責任のセクションでは、関連のオプションを削除し、協調、協力、パートナーシップへの言及のみを保持する。
LDCs、AILAC、太平洋小島嶼開発途上国(P-SIDS)、EU、アフリカングループ、カナダ、英国、日本は、ホスト組織、MoUの要素、結論書草案での合意を歓迎し、SBI 65では、UNEP及び事務局の作成したMoUの全文を審議することになると指摘、さらに、SBI 64で作成された決定書草案をベースに、審議が続行する予定であると指摘した。
アラブグループは、技術関係の交渉では不公平な扱いを受けたと非難し、アラブグループの文案が検討されなかったと指摘、自分たちは、CTCのホストの議論を進める立場にないと強調、SBI議長にこの問題を提起するよう促した。他のグループ及び締約国は、アラブグループに対し、CTCホストに関する合意を妨げないよう懇願した。アラブグループは、CTCホストでの進展をブロックしたいわけではないと強調した。技術の項目での公平な扱いの必要性を強調し、SBI議長は、CTCホスト、技術執行委員会及び気候技術センター・ネットワークの合同年次報告書、技術メカニズム支援の第2回定期評価に関する解決策を見出す必要があると強調した。
共同進行役らは、SBI議長には、今後の進め方で合意に達せなかったことを報告し、アラブグループの懸念も伝える予定。
技術メカニズム及び資金メカニズムのリンク: SBI非公式協議では、Céline Phillips (フランス)が共同進行役を務め、保留された問題の解決を図り、次の点で合意した: 緑の気候基金戦略計画の2028-2031年のプログラム・サイクルは、技術メカニズムにとり重要であると強調する; 事務局に対し、両メカニズムのリンクの状況に関する最新の情報の文書作成を要請する; SBI 70 (2029年6月)に対し、両メカニズムのリンクの進捗状況及び課題の審議を続け、決定書草案を作成して、COP 34 (2029年11月)での審議にかけるよう要請する; SBI 76 (2032年6月)に対し、両メカニズムのリンクの審議継続に関する決定書草案を作成し、 COP 37 (2032年11月)の審議に書けるよう要請する。
締約国は、結論書草案での合意達成を歓迎し、G-77/中国は、この項目での進捗が見られたのは、初めてであると強調し、EUは、他の議題項目の審議でも同様の精神が発揮されて欲しいと希望した。
その他の問題
公正な移行作業プログラム(JTWP): SBコンタクトグループ共同議長のFederica Fricano (イタリア)は、次のパッケージでの合意を求めた: JTWPのレビューの委任条件 (ToR); JTWP第5回レビューの主要メッセージ、次の第6回レビューの結果を記載する箇所を示すプレースホールダー、公正な移行メカニズム(JTM)の運用開始に向けた要素リストを記載する非公式ノート。同共同議長は、この非公式ノートは、SB 65に送られる予定であると説明した。
EU、LLDCs、AOSIS、AILAC、ブラジル、ノルウェーは、このパッケージを妥協の精神で受け入れることができると述べた。
結論書草案に関し、LMDCsは、非公式ノートはさらなる交渉のベースとなるものではなく、この問題に関するさらなる作業に予断を加えるものでもないと記載する改定を提案した。締約国は、議論の後、この文書を承認した。アフリカングループは、第6回ダイアログのため、追加のスペースを用意し、JTMの運用開始プロセスを論じられるようにすることを提案した。EU及び日本は懸念を示したが、締約国は、結局、SB議長らに対し、SB 65までに非公式の会合期間外会議で協議するよう求める、より広い表現で合意した。
ToRに関し、LMDCsは、JTWPのレビューに情報を提供するインプットに関する記述の改定を提案、JTWPの実施支援を目的とする、条約、パリ協定、及び関連する国連機関の下での関連の制度に関する、マッピング及び統合報告書は、補足性及び一貫性を持たせるはずだ(should)ではなく、持たせる可能性があるとすることを提案した。英国などは、ToRの議論を再開しないよう求めたが、 サウジアラビアは、交渉はまだ終わっていないと述べた。
長時間の議論も暗礁に乗り上げたことから、共同議長のJoseph Teo (シンガポール)は、「補足性及び一貫性がある場合には」インプットに含まれる可能性があるとする代案を提示し、ToRを救うよう求めた。締約国は、この提案に同意した。
共同議長のFricanoは、ToRでの合意及びSB結論書草案での合意に感謝し、満場の拍手の中で、コンタクトグループの閉会を宣言した。
対応措置: SBコンタクトグループで、共同議長のPeter Govindasamy (シンガポール)は、SB 64結論書草案を含める文書の3回目の改訂版、及びSB 64での議論をまとめた非公式ノートを提示した。
結論書草案に関し、対応措置実施の影響に関するカトヴィチェ専門家委員会(KCI)に対し、第2回グローバルストックテイク(GST 2)の技術評価のため、統括報告書を作成するよう要請するパラグラフについて、2つのオプションを議論した。アフリカングループ、アラブグループ、チリ、中国、その他の開発途上国は、この報告書に情報を提供するための文書提出を招請し、この報告書をSB 65で審議し、KCIにGST 2へのインプット提出を要請することを支持した。英国及びカナダは、KCIに報告書の作成を要請し、それを2027年2月までにGST 2に提出するよう求める、単純な要請を希望した。
G-77/中国は、KCIに対し、報告書作成の際、SB議長らからのGST 2のガイダンスを考慮に入れるよう求めるとの文章の削除を提案した。英国、EU、カナダ、ニュージーランドは、SB議長らのGST 2への「指針となる質問(guiding questions)」に言及することを提案した。
SBsは、SB 65でも、SB 64の非公式ノートをベースに、この問題の審議を続けることで合意したとのパラグラフに関し、G-77/中国は、非公式ノートにはこの議題項目のスコープを超える問題が含まれていると述べ、これらの削除を提案した。カナダは、非公式ノートでの合意の欠如を指摘し、結論書草案の当該パラグラフの削除を提案した。
共同議長らは、このコンタクトグループの持ち時間がなくなったことを締約国に告げ、SB議長らのガイダンスを得る予定だと述べた。
研究及び組織観測: SBSTA非公式協議では、Frank McGovern (アイルランド)及び Patricia Nying’uro (ケニア)が共同進行役を務め、エルニーニョ現象への言及、及び1.5℃を達成可能で保持することへの言及などで意見対立が続いた。このため、共同進行役らは、新しく、短縮版の文書草案を提示した。多数の締約国は、この結論書草案の議論に、長時間を費やしたことに深い遺憾の念と焦燥感を表明する一方で、共同進行役の提案の議論に加わった。
AOSISは、少数のパラグラフの削除を主張した。サウジアラビアは、一つのグループに文書の拒否権を持たせるべきではないと述べた。AOSISは、自分たちの「譲れない線」を主張するあらゆる権利があると指摘し、
交渉は夜に入っても続いた。
気候エンパワーメント行動(ACE): SBI非公式協議で、共同進行役のArne Riedel Escobar (ドイツ)は、結論書草案に関する意見発表を招請した。
G-77/中国は、次を提案した:行動計画草案に関する文書提出の招請; 事務局に対し、文書提出のテンプレート作成を要請; 事務局に対し、資源の利用可能性を条件に、ACE作業プログラム及びその新しい作業計画の実施を支援するという各国のACE国内窓口の役割に関するワークショップを、アゼルバイジャンでの気候ウィーク4(Climate Week 4)に合わせ、開催するよう要請。予算への影響を懸念する声が挙がる中、締約国は、結局、文書提出の招請、文書提出テンプレート作成の要請の削除、各国のACE国内窓口の能力及び技能の向上という現在の作業計画の下での活動を指摘、事務局に対し、キャパシティビルディングの機会の創出を要請。
結論書草案に関し、締約国は、SBI 65 (2026年11月)で、SBI 64からの非公式ノートに基づく審議を継続し、COP 31及びCMA 8 (2026年11月)での審議に向けた決定書草案を作成することで合意した。
政府間会合のアレンジ: SBIコンタクトグループで、共同議長のFelix Wertli (スイス)及びKaveh Guilanpour (ジョージア)は、 文書草案の最新版に対する意見発表を招請した。
中国は、自国の根本的な懸念事項が取り上げられていないと主張、アラブグループの支持を得て、締約国は参加者の登録をレビューし、検証するよう「招請される(invited)」ではなく、「要請される(requested)」ことを提案、さらに国連総会決議 2758 (国連における中華人民共和国の法的権利の回復)または一つの中国の原則への言及を提案したが、日本は反対した。英国は、この問題は外部での議論が進行中だと指摘し、「保留にする(parking)」ことを提案した。
UNFCCCプロセスの効率に関し、中国は、議題が積みあがることの影響を検討し、締約国のオーバーフロー・バッジの登録の影響を考察するよう招請するとの文章を削除するよう提案した。南アフリカは、現在の文章では、ブザーバー組織の代表が地域的にアンバランスであることを認めていないと述べた。
締約国は、SBI 65 (2026年11月)で審議を継続するのか、それともSBI 66 (2027年6月)で審議を継続するのかでも意見が分かれた。EU、カナダ、ニュージーランドは、SBI 65での審議継続を支持したが、アフリカングループ及びアラブグループは、SBI 66での審議継続を希望した。EIGは、UNFCCCプロセスの効率に関し、次期COP 31の交渉担当議長職が、次期COP 31議長職と共同で非公式協議を開催し、SBI 66に報告することを提案した。アフリカングループは、そのような法的プロセスの明確化を求めた。
アフリカングループは、効率の追求で、予算が削られたり、議題項目が外されたりすることが、あってはならないと強調し、英国の支持を得て、プロセス内の議題及びマンデートは、気候変動への対応に必要なものであると認識することを提案した。
ハドルでの協議の後、締約国は、SBI 66での審議継続などで合意した。参加者の登録に関し、中国は、締約国:に対し、次を要請する文章を提案、締約国も同意した: 統治組織(COP/CMP/CMA)及び補助機関(SBa)の会合へは、法的資格のある代表のみを指名する; バッジの適切な管理を確保するべく、自国の参加者の登録は、慎重にレビューし、検証する; プロセス及び登録の健全性及び秩序が乱れるのを防ぐための措置をとる。
これをもって、締約国は、SBI結論書草案に合意した。
廊下にて
参加者が保留議題項目での作業完了焦る中、交渉会議室は荒れた空気になったところもあり、室外でも、熱い論争が繰り広げられた。参加者は、他のものが議論の進展を拒否(veto)したり、妨げたり(block)する動きを、「人質を取るようなものだ(hostage-taking)」などと、苦情を述べていた。
研究及び組織観測の交渉では、特に小島嶼開発途上国が苛立ちを見せており、この日の昼は、広範な諸国連合が、化石燃料の権益を守ろうとする動きを非難した。
公正な移行作業プログラムに関し、共同議長らは、いわば「帽子からウサギを取り出す」ような手品で、最後の最後の習慣に、だれもが受け入れられるような表現にたどりつくことができた。代表団長会議は成果を出せなかったが、適応基金の交渉担当者らは、何とか議論を救ったばかりでなく、進展があったと言える状態にまでもっていった。妥協が妥協を呼んで、この結果に至ったのであり、このためには、自分たちの柔軟性を最大限発揮したのだと、全ての立場の締約国が強調していた。
しかし、技術的な問題に関しては、先進国及び開発途上国の多くが、強く懇願したにも関わらず、アラブグループは頑としてそのスタンスを変えなかった。ここでの行き詰まりを解消する方法をみつけられるかどうかは、SBI議長の腕にかかっている。ある長年の交渉担当者は、「プレナリーで大きく膨れ上がらないことを願うしかない」と、困難な最終日となることを予想し、身構えていた。
ボン気候変動会議のサマリー及び分析は、2026年6月22日、次のurlに掲載する予定: enb.iisd.org/bonn-climate-change-conference-sb64-sbi64-sbsta64